モバP「天才とチョコレート」 (37)

モバマスSSです


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はよ


池袋晶葉「やあ諸君。今年もついにこの日が近づいてきたな」


晶葉「一昨年は全自動チョコ作成機に任せきりにしてしまい」


晶葉「去年はせっかく技術の粋を集めて作ってみたら、これも発明かと笑われてしまった」


晶葉「噂には私はあまりバレンタインデーに関心がないのではないかと言われているそうだが……」


晶葉「興味がない訳ではないぞ。私だって女子だからな」


晶葉「へへん、素晴らしいチョコレートを期待していたまえ!」




晶葉「む、これは一体……チョコの見栄えが良くないぞ……?」


晶葉「なに、失敗か……まあいい、失敗は成功の母だからな」


晶葉「……」パクッ


晶葉「味は良いのだが、勿体無いな……」


晶葉「喜んでくれる……よな?」


――事務所


晶葉「……仕事だと?」


P「ああ。どうしても晶葉に頼みたいと、話が来てな」


晶葉「……そうか」


P「すまないな。せっかくの14日、オフだったのに」


晶葉「いや、大丈夫だ。私だってアイドルだしな」


晶葉「それでどんな仕事なんだ?」


P「ああ、ステージで数曲歌ってくれってさ。それとバレンタインだから参加者にチョコを配ってほしいそうだ」


晶葉「ふむ……しかし、何故私なんだ」


P「それは、これを見てくれ」


晶葉「なになに……『科学技術の祭典』?」


P「そうだ。大学の研究室とか、企業の研究部門……そういったところが主催するイベントだよ」


晶葉「……ほう、見覚えのある名前も何人か載っているな。研究室も見学させてもらったところばかりだ」


P「で、晶葉のファンの方が主催者の中に何名かいるそうで……是非とも、だそうだ」


晶葉「……そうか」


晶葉「ふふん、私も有名になったということだな!いいぞP、引き受けると伝えてくれ」


P「いいのか?」


晶葉「ああ。技術者としての私じゃなく、アイドルとしての私をお披露目できるんだ。こんなチャンスを逃すのは勿体無いじゃないか」


P「……ありがとな。別な日をオフに出来るよう、ちゃんとスケジュール合わせるよ」


晶葉「ああ、よろしく頼む」


――後日


晶葉「……つまり、会場に来てくれた皆の分のチョコも、私が作れということか?」


P「ああ。その通り」


P「数量限定とはいえ、ある程度の量はないといけないからな」


P「それに晶葉のファンだって中にはいるだろうし」


晶葉「ふむ……ファンのためか」


P「安心しろ、晶葉。誰も上手に作れとは言ってない」


P「確かに食べられないようなレベルでは問題だが……そこは晶葉を信用するよ」


P「それに少しくらいの失敗ならファンだって許してくれるだろうさ」


晶葉「……そういうものなのか?」


P「天才少女も失敗はするんだって知ったら、もっと好感を持ってくれるかもしれないしな」


晶葉「……失敗を恐れてはいけないということか。なるほどな」


晶葉「もっとも、この私が失敗することなどありえない事だがな!」


P「そうか、それじゃコーヒーでも淹れてもらおうかな」


晶葉「む……」


P「ははは、冗談だ」


晶葉「別に、出来ない訳ではないんだぞ?」


P「そうだったな」


晶葉「とにかく、だ。どれくらいの量を作ればいいんだ?」


P「ざっと百以上は必要だな」


晶葉「となると……あまりのんびりしている時間はなさそうだな」


P「始めから全自動チョコ製造機は使うなよ?」


晶葉「何を言う。使うつもりはないぞ」


晶葉「……君が手作りだと認めてくれなかったしな」


P「そもそも、ロボが手作り出来てチョコが手作り出来ないはずがないだろ」


晶葉「むぅ……」


P「とにかく、それはどうしてもの場合の最終手段な。なるべく手作りで頼む」


晶葉「しかし、何故手作りなんだ。確かにバレンタインデーだが……」


P「そこは……ほら。晶葉も分かるだろう」


晶葉「?」




P「この前、○○大学の教授に招待されて研究室に行ったろ」


晶葉「ああ、あれか」


P「その時に何か気付かなかったか?」


晶葉「……やけに視線を感じたな。特に工学部の棟に入ってからだ」


P「つまり、そういうことだ」


晶葉「?」


P「まあ、まあ。気にしなくていいよ。晶葉は男性ファンも多いってことさ」


P「誰だって、手作りチョコをもらうのは嬉しいからな」



晶葉「そ、そうか……しかし、作るとなると量がある分大変だな」


晶葉「……面白い、全部作ってみせようではないか!」


P「そうか。頼んだぞ」


晶葉「……ああ、そうだ。君も手伝いたまえ」


P「え、俺が?」


晶葉「味見くらいは出来るだろう?」


P「ああ、それくらいなら……」


晶葉「ふふふ、覚悟するがいい」


P「お手柔らかに……って、どんなの作るんだよ」


晶葉「……やった、やったぞP!」


晶葉「これは上手く行った……完璧だ!」


晶葉「おいP、聞いてるのか……む?」




P「……はい、ええ、その件に付きましては……」


P「……分かりました、ではそのように……」




晶葉「忙しそうだな……仕方ないか」


ヒョイッ パクッ


晶葉「……うむ、我ながら完璧だ。へへん」


晶葉「しかし、Pに渡すチョコも考えなくてはな」


晶葉「今回ばかりは、ちゃんとしたものを作るか。発明と思われてしまうのは癪だしな……」


P「すまん晶葉、呼んだか?」


晶葉「わっ、ど、どうしたいきなり!」


P「いや、電話中に呼んだろ。どうしたのかと思ってな」


晶葉「なんでもない……いや、まあいいだろう。助手としての使命を果たしたまえ」


P「味見か?どれどれ……おお、凄いな。美味しいよ」


晶葉「そ、そうか?本当かっ!?」


P「本当だよ。よく出来てるな」


晶葉「へへんっ、この私を誰だと思っている!」


P「ロボに関しては天才少女、とか?」


晶葉「一言余計だぞ」


P「そうだったな、ははは」


――イベント当日


晶葉「チョコは」


P「先に会場に着いてる。連絡は来たぞ」


晶葉「ウサちゃんロボは」


P「後部座席に二匹いる。シートベルトもつけてる」


晶葉「衣装」


P「トランクに積んだ」


晶葉「あとは……」


P「緊急事態用の工具箱も積んだ。ライブ用のメガホンと、その他必要な小道具も入ってる」


晶葉「……アレは?」


P「ドライバーか?ちゃんと持ってきてるぞ」


晶葉「……よし、万全だな。では出発だ!」




P「……アイドルのステージ準備とは思えない内容だよな」


晶葉「何を言う、私のプロデュース方針を決めているのは紛れもなく君じゃないか」


――イベント会場



P「さて……挨拶も済ませたし、あとはチョコの配布とステージだな」


晶葉「P、着替えを済ませたぞ」


晶葉「新しい衣装のようだが……似合っているか?」


P「ああ。かわいいじゃないか」


晶葉「なっ……き、君はいつもこうだ!」


晶葉「恥ずかしげもなくそんなことをよく言えるな!」


P「えっ?」


晶葉「……なんだその目は」


P「そっくり言葉を返すよ」


晶葉「む……まあいい、準備はできているのか?」


P「もちろん。チョコはここにあるし万全だ」


晶葉「そうか、では行くぞ」




P「……衣装の上から白衣なのか?」


晶葉「まだ二月だし、寒いからな」


P「言ってくれれば、俺のコートとか貸したんだが」


晶葉「では後で借りようじゃないか」


P「そうか」


晶葉「今は皆のアイドルだからな。ふふん」


「晶葉ちゃーんっ!」


晶葉「うむ、ハッピーバレンタインだ。来てくれてありがとう」


「おおお……ありがとう晶葉ちゃんっ!!握手お願いしますっ!!」


晶葉「ああ、こちらこそ応援ありがとな」




P「へぇ……ちゃんと出来てるじゃないか」


P「この前の握手会はいつしか晶葉のロボのお披露目会になってたからなぁ……」


P「あれ、あそこに並んでるのは……」


「ほう、まさか本当にアイドルをやっているとはね……」


晶葉「む……君は」


晶葉「……何のつもりだ」


「ただの挨拶と、チョコレートを貰いに来ただけじゃないか」


晶葉「そうか。では早く先に進むがいい。後が支えているぞ」


「……それで、いつまでそんなくだらない遊びに興じているんだね」


「その技術があれば、アイドル活動なぞやらなくても十分に……」


晶葉「……今の私はアイドルだ。技術提供や共同開発の話は事務所を通したまえ」




P「すみません、後ろのファンの皆様にご迷惑ですので」


「……ふん、この後のステージも、せいぜい頑張るんだな」


晶葉「……」


――ステージ裏



P「晶葉、その……大丈夫か?」


晶葉「心配には及ばないよ。私は私さ」


P「さっきのあの男は」


晶葉「なあに、ただの大企業の重役だ」


P「え……本当かよ」


晶葉「ああ、彼の一声で国が傾くこともあるかもしれんな」


晶葉「……私にああいう考えを持つ研究者も少なくないことくらい、知っているよ」


P「……俺も、何度もあんな言葉を聞いた」


晶葉「私に見せないだけで、そんな電話や手紙が届いているんだろう?」


P「……まあな」


晶葉「アイドルとして、歌もダンスも特別上手いわけでもない」


晶葉「それでいてロボット製作や発明においてはトップクラスの技術を持っている」


晶葉「そんな私が、アイドルを続けているんだ。彼らからすれば、遊んでいるようにも見えるのだろうな」




P「そんなことはない、晶葉は!」


晶葉「落ち着いてくれ、P。君が怒るようなことじゃない」


P「……そうだな。すまん」


晶葉「なあ、P」


晶葉「アイドルとしての私は、Pが造った傑作……そうだろう?」


晶葉「それを証明してみせようじゃないか」


P「晶葉……」


晶葉「私の歌やダンスは、アイドルとしての私は……決して遊びなどではないことを理解してもらうには」


晶葉「……君の力が必要だ、P」







P「ああ、そうだったな」


P「アイドルはアイドルらしく、ステージの上で魅せようじゃないか」


晶葉「ふん、ようやく君も乗り気になったじゃないか」




晶葉「……P、力を貸してくれ」


晶葉「君が、必要なんだ」




P「ああ。もちろんだ」


P「俺は……いつだって、晶葉を信じているよ」



――ステージ



晶葉「アーアー……聞こえるか、諸君!」



晶葉「せっかくのバレンタインデーだ、チョコだけでは物足りないだろう?」



晶葉「私からのもうひとつのプレゼントだ、大いに盛り上がってくれたまえ!」





晶葉「さぁ……舞台装置、起動だっ!!」


P(……今までのライブとは、断然違う)


P(相当練習したんだろうな……)


P(……おや)



P「これはこれは、先程はどうも」


P「……確かにアイドルを続けるよりも、技術屋として暮らすほうがずっと、池袋晶葉は裕福な生活が出来るでしょう」


P「歌もダンスも、事務所の同世代の子と比べて晶葉は劣っています」




P「ですが、ステージの上に彼女のロボを連れて行くのは……決して、それらをごまかすためではありません」


P「彼女の歌やダンスが、最大限に引き立つように……ロボの一挙手一投足全てが、計算の上に動いていて」


P「それらをふいにしないよう、彼女自身も思い描いたステージを何度も何度もシュミレートして、遅くまで練習を重ねて」


P「そうして、彼女は舞台の上に立っているんです」




「……」


P「それでも、あれが遊びに見えると仰るのなら……これ以上申し上げることはありません」


「……ふん、若造が」


P「もうひとつ、宜しいでしょうか」


「……好きにしろ」


P「ええ、では……彼女のあんな顔、見たことがありますか?」


「……」




晶葉「ははっ、いいぞ!もっと盛り上がってくれ!」


晶葉「それでは次の曲だが……ウサちゃんロボ!フォーメーションBだ!」




P「自分の好きなことにまっすぐ向き合って、他の何もが見えなくなるほどに熱中して」


P「あんなに、楽しそうな笑顔を皆に向けているんです」


P「……少なくとも私には、彼女の邪魔をすることは出来ません」



「……いつまで、それで続くか見ものだな」


P「ええ、どこまで行けるのか……こちらとしても楽しみです」





晶葉「はぁ……はぁ……ははっ、皆ありがとうっ!」



晶葉「この後も引き続き、イベントを楽しんでいってくれ!」




――楽屋


P「お疲れ様、晶葉」


晶葉「ああ、お疲れ様。どうだった、P?」


P「いつになく、いい動きだったな。今までのライブの中でもかなり良かったと思う」


晶葉「そうか……ありがとな」




晶葉「……失敗するわけにはいかないと、思ってたんだがな」


晶葉「やはり舞台の上に立つと、そんなことは吹き飛んでしまったよ」


P「失敗してたのか?」


晶葉「ああ……って、見ていなかったのか?」


P「いや、見てたと言えば見ていたんだが……」


晶葉「……妙に歯切れが悪いな」


P「まあ、まあ。大成功で良かったよ」


晶葉「む……適当に流すんじゃない」


晶葉「だが、君が言っただろう。天才少女でも失敗くらいあると」


晶葉「失敗に気付いたその時、頑張れって声が聞こえたんだ」


P「……だから、か」


晶葉「その後は不思議と……楽しかった。私の思い描いていたステージからは、少しずれてしまったがな」


P「今日はいつになく、楽しそうに見えたんだ。いい笑顔だったよ」


P「……アイドル、楽しいだろう?」


晶葉「ああ。もちろん……楽しいよ」


晶葉「これも全部、君のおかげさ」



晶葉「……ありがとな、P」


晶葉「それと……私の為に怒ってくれた時、なんだ、その……嬉しかったぞ」


晶葉「えっと、それでな……P、今日は何の日だか」


P「分かってるよ」


晶葉「そ、そうか……君も、少しくらい期待はするのか?」


P「そりゃあ、期待くらいなら」


晶葉「そうだよな……なあ、P」





晶葉「……ちゃんと、今年は自分の手で作ったんだ」


晶葉「君には、迷惑もかけたし何度も助けられたし……そう、世話になったからな!」


晶葉「……ああ、食べてもカウントダウンは鳴らないぞ?」


晶葉「だから、だから……」









晶葉「チョコ、受け取って……くれる?」










そのチョコレートは、少しだけ不格好で。


どんなチョコレートよりも、美味しかったのだとか。

以上で終わりです

ありがとうございました


良かったよ

おつです
一気に読ませていただきました。ありがとうございました。

……P、いいなあ

池袋晶葉(14)
http://i.imgur.com/F3PPRUg.jpg
http://i.imgur.com/qeuJEY2.jpg

おつー
天才シリーズすき

sage忘れた
ごめんなさい

>>33
お前がPなんやで

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