男「地獄歩きの夜」 (6)

新入り「……まーた通り魔事件ですか。これでよっつめでしたっけ? 同一犯なんですかねぇ」

上司「そりゃあそうだろう。通り魔犯のみんながみんな死体の目を抉っていくわけがねえだろ」

新入り「模倣犯の線とかないですかね? ほら、三面相とか呼ばれてて一部のマニアに人気らしいですし」

上司「ないな」

新入り「なんでですか? あ、非公開にしておいたところまで同じだからとか」

上司「いや、違う。あまりに三面相の名が広まりすぎていて、雑誌記者がぜんぶばらしやがったからな」

上司「ネットでも一時期、被害者の画像が出回ったらしいからな」

新入り「じゃあ、どうして模倣犯はないと?」

上司「正確には、ないと思いたい、だな」

新入り「え?」

上司「死体を弄繰り回して平然とできる奴が、そう何人もいてたまるかよ」

新入り「……私は、三人知っていますがね」ボソッ

上司「えっ?」

新入り「いえ、なんでもありません」

あ?

女「珍しいなーこの町、教会があるなんて」

モブ「ありがとうございます、牧師様」

牧師「いえいえ、私は神様の教えにしたがっているまでですよ」ニコニコ

女「ああいうの、なんかいいなぁ……」

女「うんうん、いいところに引っ越してきたものだ」

男「……ああいうのが好きなのかい?」

女「え、ああ、はい。おはようございます。えっと、私、この辺りに引っ越してきた女という者で……」

男「……あいつら、神様がいなかったら子供だって見殺しにするんだぜ」

女「そ、そんなことはないですよ」

男「死んだら天秤に掛けられるって、本気で思ってるからやってるんだ。私利私欲だよ」

男「俺の方がずっとまともな人間だね。そう思わないかい?」

女「暴論ですよそんなもの」

男「価値観の問題だよ。暴論で片付けることの方がよっぽど暴論だね」

女「……むう、そんな捻くれたことばっかり言わなくてもいいじゃあないですか」

男「悪い悪い、性分なんだ。中学生がそのまま老けた人間だとよく揶揄されるよ」

女「……変わった人ですね、あなた」

男「にしても、嫌な街に越してきたものだね女さん」

女「え? 景観は綺麗だし……まあちょっと田舎臭そうだけど、私、これぐらいのところが好きですよ」

男「違う違う。連続通り魔殺人事件の街へようこそという意味だよ」

女「ふぇ?」

男「まさか、知らずにこの街にきたのかい?」

みてるわ

新入り「すいません、すいませーん」コンコン

上司「緊張感がないなぁ……お前は」ハァ

母「はい、なんでしょうか?」ガラッ

母「あっ……警察の方で」

上司「どうもお久しぶりです」

新入り「ぶりです」

上司(本当に緊張感がない奴だなぁ……)

上司「二年前に行方不明になった娘さんのことについて、また何かお話を聞けないかと思いまして」

新入り「どんなことでもいいんっすよ、お気軽にどうぞ!」

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