モバP「少女が掴んだ贈り物」 (57)
※北条加蓮に対しての二次解釈があるので、それらが苦手な方はご注意ください
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某会場・ミーティングルーム
ザワザワ……ザワザワ……
加蓮「うわぁ……まだ開場もしてないのにお客さんすっごい居るね……これ、本当に私達のLIVEに来てくれてるの?」
P「ああ、もちろん。今日のLIVEは、トライアドプリムス初の単独LIVEだからな」
加蓮「そっか……嬉しいな。そっか、そっかぁ……」
P「正直、俺もかなり驚いてるよ。人気はあったから大勢来るとは思っていたが、まさかチケットが完売するとは……」
加蓮「それくらい、アイドルらしくなれたってことかな?」
P「らしくも何も、加蓮はアイドルだよ。それも、トップに行けるアイドルだ」
加蓮「ふふっ、ありがと。まさかマジックミラー越しでこうして私が見てるなんて、ファンの人たちは思ってもいないんだろうね」
P「気付かれたら大変な事になりそうだな。まだLIVEの時間は当分先だってのに、ファンが燃え尽きるんじゃ……」
加蓮「大丈夫、私達のファンはそれだけじゃ燃え尽きたりしないよ。まだ凛も奈緒も来てないんだから」
P「……というか、加蓮が来るの早過ぎなんだからな? こっちから迎えに行くって伝えただろ……」
加蓮「う、それはゴメンってば。気分が高揚しちゃって、早くPさんに逢いたくて、いてもたってもいられなかったんだもん」
P「しかも1人で来るとか……変装してたからいいものの、バレたら本当に騒動ってレベルじゃなかったんだからな?」
加蓮「だからゴメンってばぁ……でも、Pさんは1発で気付いてくれたよね、すごく嬉しかったよ?」
P「ぬ……そりゃ一番最初から加蓮をプロデュースしてるんだ。髪型変えても分かるっての」
加蓮「あれ……照れてる? ねぇ、照れたでしょ今っ」
P「て、照れてないぞ! こら、突っつくなくすぐったい!」
加蓮「Pさん、ホント分かりやすいよね。かーわいー♪」
P「や、やめろっての! これ以上したら、前の時みたいに頬をぐりぐりするぞっ!」
加蓮「……あ、懐かしいねそれ。されたの、出会ってからそんなに経ってない頃だったよね」
P「ん、あー、そうだったなぁ。あの頃の加蓮はなんというか、捻くれて捻くれてねじ切れそうだったな……」
加蓮「ちょ、ちょっと! 昔の私を掘り返すのは無し! 黒歴史みたいなものなんだから!」
P「一人称はアタシだったっけ? 語尾には『めんどくさーい』が大体出てきたような……」
加蓮「も、もぉ、分かった、分かったから、からかわないからぁ!」ペシペシペシペシ
P「分かってくれて何よりだ。ただし、俺の記憶からはずっと消えないからなー」
加蓮「……いじわるぅ」
P「まぁ、そういうのも思い出だからさ、忘れちゃうってのは勿体ないと思うぞ?」
加蓮「あ、うん。昔を忘れたいとかは思って無いよ。黒歴史ってくらいに恥ずかしいけど、昔の私があったから今の私になれたんだと思うし」
P「そう思えるの、加蓮の良い所だよなぁ……普通なら必死に忘れようとするもんだ」
加蓮「そうさせたの、Pさんだからね? 私の良い所、たぶん大体Pさんのおかげだよ?」
P「……まーたこのアイドルはそういうことを」
加蓮「そういうって、本当の事だからね。何一つ間違ってないよ、ふふっ!」
加蓮「……でも、今思うと本当に、あの頃の私ってどうかしてたんだと思うなぁ」
P「って、おいおい、自分から掘り返すのはいいのか?」
加蓮「だって、考えるとホントそうなんだもん。Pさんが居なかったらどうなってたんだろうって、最近良く思うよ」
P「今となっては、見違えるほど変わったもんな、加蓮」
加蓮「うん、もう正反対かな。考えも、色んな気持ちも。あの頃は――」
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養成所
加蓮『……アンタがアタシをアイドルにしてくれるの?』
P『アンタっておいおい……まぁいい。ああ、君を……北条さんを見てティンと来たから、スカウトさせて貰った P だ』
加蓮『ふーん……でもアタシ、特訓とか練習とか下積みとか努力とか気合いとか根性とか、なんかそーゆーキャラじゃないんだよね』
P『キャラねぇ……なるほど。その理由はあったりするのか?』
加蓮『体力ないの、昔入院してたから。それでもいい? ダメぇ?』
P『いや、ダメではないよ、だから選んだんだ。ただ、キャラじゃなくともしっかりとそういうことはやって貰うからな』
加蓮『……めんどくさーい』
P『……ふむ』
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加蓮『……はぁ、はぁっ』
P『北条さん、レッスンお疲れ様。ほい、飲み物』
加蓮『……どーも。ふぅー……アンタ、マメにレッスン場に来るね』
P『この後北条さんの挨拶回りがあるからな。それに、迎えに行かないと北条さん何処行くか分からないし』
加蓮『やっぱり行くんだよねー……断るって出来ないの?』
P『チャンスを掴めるのに、それを諦めるなんてしたくないからな。直ぐには行かないから、ゆっくり休んでいてくれ』
加蓮『ゆっくり休んだ分、いつも行くところは多いじゃん……はぁ』
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加蓮「最初の時はこんな感じだったよね。私、Pさんにアンタとか何言ってるんだろ……ホントにもー」
P「あのインパクトは未だに忘れられないな。初対面だったのにいきなりあの物言いとか、胆据わりすぎだと思ったぞ?」
加蓮「あの時Pさん、何か考えてたみたいだったけど……?」
P「ああ、加蓮の言っていた理由について軽く考えてたんだ。わざわざ養成所にいるのにそう言うってことは、何かコンプレックスとかあるのかなーって」
加蓮「わ、既に見透かされてたんだ。私、ただの反抗期少女みたいだったでしょ?」
P「反抗期の子ってのは良く分からないが……結局分からず、プロデュースしていく中で知っていくことになったよ。加蓮がジャンクフード好きとかさ」
加蓮「あ、○スバーガーの事? 覚えてるんだ?」
P「意外なことだったから鮮明に覚えてるよ。というと、加蓮も覚えてるのか?」
加蓮「もちろん。私、結構記憶力いいんだよ? 確か――」
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P『今日はここのスタジオの人に会いに行くぞー。強面だけど、話すと気さくな人だから安心してくれ』
加蓮『……はぁ』
P『ん、北条さん、どうかしたか?』
加蓮『……ねぇ、挨拶回りって何の意味があるの? ただ頭下げて回るだけじゃん……疲れたぁ』
P『意味か……正直、これで確実に仕事が出来るって訳じゃ無いんだよなぁ』
加蓮『じゃあ、なんでこういう事すんのよ?』
P『単に北条さんの宣伝だけをしているわけではなくてな。相手方の景気とか色々聞いて……それにどう応えられるかを学んでる』
P『もちろん、その応え方は北条さんのアイドル活動に掛かってる訳だから、ついてきて貰わないと困るぞ?』
加蓮『うっわぁ、聞くんじゃなかった……プレッシャー掛かっただけなんだけど』
P『プレッシャー掛かっても掛からなくても、来て貰うからな。今はちょっと会話交わすだけでもいいからさ、な?』
加蓮『うぇー……』
数時間後
加蓮『……はぁ、疲れ、た』
P『な、悪い人じゃなかっただろう?』
加蓮『それは認めるけどさ、すっごい話長くて、なんか、もう……ふぅ』
P『……北条さん?』
加蓮『ちょっと、プロデューサー、あたし疲れて……』
P『今日は午前にレッスンもあったからな…………ああ分かった、そろそろ一休みいれよう。あそこのモ○バーガーで大丈夫か?』
加蓮『……モ○バーガー!? う、うん、行く、モ○行きたい!』
P『うおっ、どうした急に!?』
加蓮『アタシ、そういうお店あんまり行ったことないの! ほら、行くんでしょ? 行こう、直ぐ行こ!』バッ
P『あ、おい、疲れてるくせに急ごうとするなって! ○スバーガーは逃げないっての――!』
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P「未だに、ああいうファストフードは好きなのか?」
加蓮「うん。凛と奈緒とかと一緒に、お忍びで行ってるよ?」
P「……騒ぎになったら怖いから、今度から俺が買いに行くからな」
加蓮「ええー!? 前みたいに、一緒に行ってくれないの?」
P「立場を考えてくれっての! トライアドプリムスはもう国民的アイドルユニットなんだから、そんな3人がモ○とかにいたら目立って大変だぞ?」
加蓮「あ、そうじゃなくて、私とPさんだけでって話」
P「む……それは……」
加蓮「……だめ?」
P「……今日みたいな髪型変えた重装備で、絶対にばれない自信があるなら、な」
加蓮「ホント? じゃあ約束ね、破ったら酷いことするからね?」
P「ちょっ、言うならもうちょっと具体的な内容言ってくれ……怖いぞ?」
加蓮「破らなきゃ問題ないから大丈夫だよ……ふふっ!」
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加蓮「……ねぇ、ひとつ聞いて良い?」
P「ん、何だ? 今更改まって聞くなんて……」
加蓮「……未だに不思議なんだけど、どうしてPさんって私を選んでくれたの? 口悪かったし、態度も酷かったのに」
P「ん、どうしてかって聞かれたら……あー、分かんないんだよなぁ」
加蓮「わ、分かんないって何!?」
P「ああ、ただ養成所で加蓮を見てティンと来て、この子しかないって思ったからで……」
加蓮「……そう思ったから、私をしっかり見ててくれて、あの時もアドバイスとかくれたの?」
P「……あの時?」
加蓮「うん、あの時。覚えてるかな、Pさんがようやく手に入れてくれた仕事で、私がミスしちゃった時の――」
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某スタジオ・控え室
加蓮『……』
P『……北条さん、そう落ち込まなくていいぞ?』
加蓮『……これで落ち込まないとか、よほど馬鹿じゃないと出来ないっての』
P『と言ってもな……落ち込んだら次が上手く行く、なんてわけないだろう? 過ぎた事を気にしすぎるのも毒だぞ?』
加蓮『プロデューサーは、どうとも思ってないの? 初めての仕事で大失態するアイドルのプロデューサーなんだよ?』
P『失敗しない人が居たら是非とも見てみたいよ。初めての仕事を完璧にこなすなんて、人生2,3周くらいしてないと出来ないって』
加蓮『……そうだとしても、アタシだからっていうのもあるよ、絶対』
P『……』
加蓮『アンタもそう思うでしょ? アタシが病弱で、レッスンも本気じゃなかったから、こうして仕事で大失敗。どうせアタシには、才能なんて無かったんだって……』
P『……ほーじょーさん』プニッ
加蓮『っ!? ちょ、ちょっと、なに急に頬を……って、いたたた!? グ、グリグリ言ってる、グリグリ言ってるぅ!?』グリグリ
P『今の、「才能がない」とか自分を卑下する言葉は、アイドルなんだからもう言っちゃ駄目だ。今度から、言う度にこうするから気を付けるようにな』パッ
加蓮『っ、たたたた……何よ、なんで才能が無いことくらい言っちゃ駄目なのよ?』
P『……』スッ
加蓮『い、今のは質問! 言ってる訳じゃ無いから構えないでよっ』
P『質問ね……。なぁ北条さん、才能って何だと思う?』
加蓮『え? うーんと……生まれながらの素質みたいな……神様からの贈り物、みたいな感じかな』
P『贈り物か。それじゃあ、他の人の才能がクリスマスプレゼントくらいの豪華さであるとしたら、自分のはどれくらいだと思う?』
加蓮『それと比べたら……アタシのは、装飾のリボンも無くて、色だって地味で……みすぼらしいと思う』
P『……なるほど』
加蓮『……ねぇ、こんなこと聞いてどうすんのよ? アタシとしては凹むだけなんだけど』
P『まだ話は終わってないぞ。最後にひとつ、聞くけどさ』
P『どうして、自分の才能がそれくらいだって言えるんだ?』
加蓮『それは……昔から病弱だし、直ぐに入院して体力は落ちていく一方だから。こんな自分なんかに、アイドルの才能があるなんて……』
P『それは、誰かから言われたりしたのか?』
加蓮『言われたことは、無いけど……』
P『まぁそうだよなぁ……』
加蓮『何よ? 含みのある言い方して……』
P『んー……俺にはさ。北条さんが自分を傷つけているようにしか見えないんだ』
加蓮『……』
P『アイドルという夢を背負った北条さん自身が、言い訳とか理由とか作って自分を否定して、それを夢になすりつけている』
P『そんなことしたら、夢に向かって上手く進めるわけもない。厄介な物を背負ってる気になっているんだから、当然だよな』
加蓮『……』
P『あっ、すまんすまん、説教とかしたい訳じゃ無いんだ。俺にはそう見えているって話でさ』
加蓮『……だったら、結局何が言いたいのよ?』
P『ん? 俺が伝えたいのは……北条さんには、自分自身に期待をして欲しい、ってことかな』
加蓮『自分に、期待?』
P『そう。俺からすると、北条さんにはそれだけが足りないと思ってる。今回の仕事においてもな?』
加蓮『期待……? んなこと言われても、アタシには分かんないよ、訳分かんない。何、どうすんのよそれ?』
P『ああ、期待することは簡単だぞ。「自分ならこの仕事は絶対に出来るー」とか、そう思ったりするだけでいいんだ。というか、それでいい』
加蓮『は? ……そんなのでいいの?』
P『おう、そんなのでいい。だから、とりあえずは才能なんて無いとか考えないで、自分にちょっとばかし期待してみてくれないか?』
加蓮『……自分に期待とか、したこと1度も無いんだけど……』
P『思ってみるだけでもいいさ。……もしも北条さんが出来なかったら、養成所から選抜した俺の立つ瀬もないし……な?』
加蓮『……へ? なにそれ、結局自分も焦ってるとかそういうことなの?』
P『はは、2割くらいは焦ってたりもするよ。これでもプロデューサーという立場だからな』
P『まぁ冗談はおいといて、俺が言いたいことは本当だから、そうしてくれると北条さんのプロデューサーとして嬉しいよ』
加蓮『……』
P『……北条さん?』
加蓮『……あっきれた。なんだか、考えてるアタシが馬鹿みたいじゃん。アンタって、本当に変な人ね』
P『なっ、変とはなんだ変とは!?』
加蓮『説教かと思ったら変なアドバイスするし……変以外に何て言えばいいのよ? ……まぁいいや。そこまで言うなら期待っていうヤツ、考えといてあげる』
P『そうか? ……是非とも、お願いするよ』
加蓮『……ねぇ、こんな私でも……本当に輝けるの?』
P『おう、俺は元からそう思ってる。後は、北条さんが騙されてくれるだけだからな?』
加蓮『……ったく、なによ。真剣なのかふざけてんのか分からないじゃない……もうっ』
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P「ああ、初めての仕事の時か……」
加蓮「あの時のPさん、半分本気で、半分ふざけてたよね?」
P「そ、そんなことないぞ? アイドルに説教かますとか馬鹿な事しちゃったなぁって、後で1人猛反省会したんだからな?」
加蓮「あ、そうなの? ……でも、あの時にああ言ってくれなかったらずっと自分を理解出来なかったし、Pさんには説教して貰えて良かったって思うんだ。……ありがとね」
P「……それはなによりだ」
加蓮「Pさんがああいう事言ったのも、初めから私をしっかり見ていてくれたからだよね。そうじゃないと、あんなにハッキリ言えないと思うし……今思い出しても、凄く嬉しいよ?」
P「お、おう。そう思ってくれるなら、プロデューサー冥利に尽きるな……ははは」
加蓮「……ふふっ。耳、真っ赤」
P「そ、そんなとこまで見るんじゃない! くっそ、照れてんのバレバレかちくしょう!」
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加蓮『プロデューサー……今の仕事、どうだった?』
P『完璧……とまでは言えないけれど、凄く良かったと思う。本当だぞ?』
加蓮『そっか……プロデューサー、頑張ってお仕事するのって楽しいね』
P『おいおい、今までは頑張ってなかったのか?』
加蓮『そういうわけじゃなかったけど……自分に期待してみたら、本当に想像よりもやれて驚いてるの。自分でも、こんなに出来るんだって』
P『北条さんは、前から普通以上に出来てたんだよ。でも、自分を否定しがちで、実力を発揮できてなかったわけでさ』
加蓮『だから私に期待をしろだとか、そういうこと言ったの? ……さすがプロデューサーって感じだね』
P『さすがなのは、実のところ北条さんなんだけどなぁ。自分に期待して実力を出すってのは、かなり難しい事で……そうそう出来やしない』
加蓮『……そうなんだ』
P『でも、北条さんはいとも簡単にそれをやってのけてくれた。それって、本当に凄い才能だからな? もっともっと、自分に自信を持ってもいいくらいだ』
加蓮『ふふっ……アタシ、嬉しいよプロデューサー。こんなにアタシを見てくれる人、両親以外に居なかったから』
P『ふふん、なんせプロデューサーだからな。北条さんがアイドルを辞めるまで、ずっと見ていくことになるぞー』
加蓮『ずっと、ねぇ…………なら、その他人行儀な呼び方、いい加減やめにしない? アタシも……ううん、私も、ちゃんと頑張るからさ』
P『お? それじゃあ……加蓮、でいいのか?』
加蓮『うん、それでいいよ。だから私も、アンタとかプロデューサーとかじゃなくて、きちんとPさんって呼ぶね』
P『……それは、他人行儀とかの話じゃない気がするんだが』
加蓮『Pさんは私を名前で呼ぶのに、私がPさんをプロデューサーという肩書きで呼ぶなんて、おかしいと思わない?』
P『あー……そう、なのか? まぁ確かに、俺は他の役職の人は名前付けて呼ぶけど……』
加蓮『ほら、Pさんもそうしてるんだから、ね、おかしくないでしょ?』
P『んー? ……まあいいか。ああ、それで構わないよ』
加蓮『やったっ、それじゃよろしくね、Pさん!』
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加蓮「それで、今に至るーって感じかな?」
P「うん、本当にあの頃は迷ってたよなぁ、加蓮」
加蓮「病弱ってだけで色々と諦めてたからね。養成所も、あと2,3日Pさんが来るの遅かったら辞めてたと思う」
P「……そこまで悩んでたのか」
加蓮「だから、Pさんにはすっごく感謝してるよ? あんな私を、こんなところまで引っ張ってきてくれて……本当にありがと」
P「……ったく、いつからこの子は、馬鹿正直に物申す子になったのやら」
加蓮「だって、Pさんだから。威風堂々と、私はアイドルなんだーって言えるのも、みんなPさんのおかげだし……」
P「んな事言って……俺の顔とかその他諸々赤くなってるのを見るの楽しんでるだけだろ?」
加蓮「ふふっ、それもあるかな。Pさんって人の事凄く褒める癖に、こっちが褒めると直ぐ真っ赤になるんだもん」
P「こ、こら、マジマジと見るんじゃない! 余計に恥ずかしいっての!」
加蓮「そう言われると見たくなるよね。ほら、もっと赤くなって良いよ?」
P「ああもう! 大人をからかうなっての!」
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加蓮「……あっ、そうだ。過去話ってことで思い出したんだけどさ」
P「何だ? まさか、LIVEに必要な何かか……?」
加蓮「ふふ、そんなに深刻なものじゃないから平気。前に私が『制服コレクション』でPさんに言ったこと、覚えてる?」
P「制服って……あー、もう1年以上前のヤツか。すまん、ちょっと覚えてないな…………何か約束でもしたっけか?」
加蓮「まぁ、覚えてないのも無理ないかなー。私が勝手に言って、勝手に決めたことだから、ね」
P「ちょい待ってくれ、今思い出すから。加蓮の制服姿はハッキリと覚えてるんだ……ぐぬぬ……」
加蓮「ううん、いいよ思い出さなくて。今からそれ実行しちゃうから。……ね、こっち見てくれる?」
P「は? 実行って……」クイ
加蓮「えいっ」
チュッ
P「っ!?」
加蓮「……へへ、しちゃった。……うわ、結構恥ずかしいものだね、これ」
P「加蓮、ばっ、お前、なにして……!」
加蓮「だから、実行したんだって。私、前に言ったの。『アイドルになる夢、叶えてもらったから……お返ししなきゃね?』って」
加蓮「で、今のがその……お返し。感謝とか、その他色々、たくさんの気持ちを込めてみたんだけど……どうだった?」
P「ど、どうだったって……」
加蓮「私、ホントに色々気持ち込めたつもりだったんだけど、伝わったかなって」
P「いや、すまん。衝撃的すぎて、それどころじゃなかった……ああ、嫌だったとかそういうのはむしろ逆っていうか……」
加蓮「ふぅん……じゃ、もう1回、する?」
P「え」
加蓮「だって、あれじゃまだ全然Pさんに返せてないんだもん。というか、LIVEだけじゃ返しきれないくらいPさんからは貰っちゃってるから……まだ大量にお釣りが来るくらいだよ?」
P「い、いや、いいから! 大丈夫だから!」
加蓮「……私とするの、イヤだった?」
P「だぁ違う違うそうじゃない! あー、あれだ、俺からすれば、加蓮からはもう沢山返して貰ってるって事!」
加蓮「へ? 私、なにかしたっけ?」
P「アイドルをプロデュースすることが俺の夢だったから、なんというか、加蓮がアイドルとして居てくれるだけで俺は嬉しくてさ」
P「だから、その……なんだ。加蓮の思っている以上に、俺は加蓮に夢を叶えて貰ってるんだ。ああ、そうだな、お返しはこっちがしたいくらいだよ」
加蓮「……そうなんだ。へぇ……」
P「…………ん?」
加蓮「……」
P「…………加蓮さん? なんですかねそのジト目、怖いんですけど?」
加蓮「……はいっ」
P「……なんで両腕広げたんだ?」
加蓮「Pさん、私にお返ししたいくらいなんでしょ? だから、はい、どーぞっ」
P「どうぞって……いや、どうしろと?」
加蓮「分かんないかなぁ……Pさんからのお返しとして、ぎゅーってして欲しいかなって。だから、こうして待ってるの。ね?」
P「Why!? ね、じゃないよ!? お返ししたいとは言ったけども行動早ぇよ!?」
加蓮「もー、このポーズ、結構疲れるんだよ? 早くして欲しいんだけどっ」
P「…………え、なにこれ、俺から抱きつきに行くの?」
加蓮「Pさんからしてくれないと、Pさんからのお返しじゃなくなるもん。そりゃそうだよ」
P「そりゃそうか……っておかしいだろ!? 普通に考えて、アイドルに抱きつくとかそれ自体問題じゃ……!」
加蓮「ほーら、早く早く! き、キスしたんだから、これくらいで怖じ気つかないの!」
P「おわ、わ、分かったから大きい声で言うなって! ……い、1回だけして、残りは違う形で返すことにするからな?」
加蓮「うん、それでいいよ。だから、ほら……早くぅ……」
P「うぐ……了解」
P「えっと、じゃあ失礼して…………っと」ギュ
加蓮「ん……」ギュー
P「……どうだ?」
加蓮「……もうちょっと」
P「もうちょっと?」
加蓮「うん、もうちょっと強めだといいかも」
P「……こう、か?」ギュー
加蓮「あっ……うん、いい。これ、凄くいい。Pさんからっていうのが、うん、良いかも……えへへ」
P「そ、そうか。ならこれで……」
加蓮「あ、ストップだよPさん」グイッ
P「のぁっ! は? 加蓮?」
加蓮「もー、離れたらそれで1回になっちゃうじゃん。直ぐに離すなんて勿体ないよ」ギュー
P「離れなければずっと1回カウントかこれ!? いや、これくらいで、いいんじゃないか?」
加蓮「ダーメ。これはPさんのお返しでしょ? それなら、私が良いと思えるまでしてくれないとお返しにならないからね?」
P「……まじですか」
加蓮「まじだよ、大まじ。だから、またさっきみたいに強く……ね?」ギュッ
P「……まじです、か」
加蓮「……♪」ギュギュー
P「……」ギュー
加蓮「……ふふ」ギュゥ
P「……なぁ加蓮、そろそr」
加蓮「ん、もう少し」ギュギュウ
P「……うぃっす」ギュー
加蓮「……良い。ほんとに、凄く良いよこれ……とろけそう」ギュギュー
P「……さいですか」
加蓮「なんだか、こうしてると守られてる感じがするね。ふふ、私、お姫様みたい」
P「ん? あ、すまん、強くしすぎてたか?」
加蓮「Pさん、私に対してすごーく過保護だよねぇ。優しすぎだよ、もう」
P「し、しょうがないだろ! 加蓮が体弱いってのは実際そうだったんだから……体調管理も俺の役目だ」
加蓮「あ、また照れてる。本当、Pさん分かりやすくて……かわいいなぁ」ギュー
P「女の子に可愛いと言われても嬉しくないからな!?」
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加蓮「ねぇPさん。もーっと体、くっつけていいんだよ?」ギュー
P「……そういうわけにはいかないだろ」
加蓮「理由は?」ギュー
P「い、色んな意味で心臓バックバクなんだよ。……聞かれたら恥ずか死ぬ」
加蓮「へぇ……心臓、ここ?」ピトッ
P「んにゃっ!? い、言った傍からするんじゃない加蓮!」
加蓮「あっ、凄い! ホントにバクバク言ってる…………私みたい」
P「だぁ聞くな! 聞くなっての!」モゾモゾ
加蓮「あ、ちょっと、やん、離れちゃうから動かないでっ。もう少し味わいたいのに……!」ギュギュー
P「も、もうかれこれ10分以上こうしてるだろ! そろそろ他の人が来るかも知れないし、終わりでいいだろ、な!?」
加蓮「あ、それは大丈夫。スタッフさん達はこの部屋滅多に来ないし、凛と奈緒にも手紙を置いておいたから」ギュー
P「は? ……手紙?」
加蓮「そ、手紙。Pさん、きっといち早く会場来てると思ったから……凛と奈緒宛てに手紙書いて事務所に置いて、こっちまで来たの」ギュー
P「変なところで用意周到だなぁ……」
加蓮「ふふ、褒め言葉として受け取っておくね。で、その手紙の内容はね……」
凛「――『早く会場に行きたい気分だから、先に行ってるね。2人はゆっくり来て大丈夫だから』……でしょ?」
P「んなっ!? り、凛!?」
加蓮「あれっ……は、早いね、凛?」
奈緒「……で、あたし達はいつまでここで待たされるんだ?」スッ
P「奈緒ぉ!?」
加蓮「あ、あれ? 2人とも、手紙見たのならなんでこんなに早く……?」
凛「こんなに怪しい置き手紙見たら、当然加蓮が何か考えてるって思うでしょ。……というか、バレバレだよ?」
奈緒「で、やる気な凛と一緒に来てみたんだが……いや、本当に何やってんだよ2人とも……」
P「えっ、あー、いや、これはだな? その……俺が! 加蓮にお願いして……」
加蓮「あっもう、わざわざ守ってくれなくていいよ。2人とも、これは私がPさんにしてほしいって言っただけだからね?」
凛「はぁ……うん、私達は聞いてたから、嘘言わなくてもいいからね?」
P「き、聞いてたって……2人ともいつから居たんだ?」
奈緒「えーと……加蓮が『いじわるぅ』とか言ってた辺りからだな」
P「大体聞かれてるよ!? というか、来てたんなら入ってくれば良かっただろ……」
凛「だって……ねぇ?」
奈緒「あのイチャつき空間に入れるほど、あたしら胆据わってないぞ……」
P「……すみませんでした」
渋谷凛(15)
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神谷奈緒(17)
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http://i.imgur.com/I1W1jvW.jpg
加蓮「うわ、2人に過去話も聞かれてたんだ……恥ずかし」ギュー
奈緒「現在進行中のそれは恥ずかしくないのかよ!?」
加蓮「だって、Pさんからのお返しだもん。むしろ、2人には見られてもいいかなーってくらいだし」
凛「ふぅん……お返し、ね」ジトー
奈緒「随分と甘酸っぱいお返しだなぁ、Pさん?」ジトー
P「おぅふ……ソウデスネ」スッ
加蓮「あ。まだ離しちゃやだよ? もう少し、ね?」ギュ
P「2人に見られてるのにまだするのこれ!?」
凛「……加蓮、そういうのは良くないと思う。3人で1つ……それがトライアドプリムスだよ?」
奈緒「……待て凛。言っていることはなんかカッコイイ気がするけど、あたしにはなんか不穏に聞こえるぞそれ」
凛「奈緒は、プロデューサーからお返し貰うの……嫌?」
奈緒「い、嫌と言ったら嘘になるけど、それなら2人きりで貰いた…………って何言わせんだよ!?」
凛「ほら、奈緒もこう言ってるし……とにかくそういうわけだから、ね、加蓮?」
加蓮「だ、駄目だよ2人とも! Pさんにお返し貰ってるの、今は私なんだから!」ギュッ
P「うお、ちょ、加蓮そんな強く抱きつくなって……締まってる、締まってっから……!」
凛「駄目だよ加蓮、そろそろ交代するべきだと思う。……ずっとするのは、狡いよ」
奈緒「ず、狡いかどうかは知らないけど……Pさん独り占めってのは、平等じゃないとは思うぞ加蓮!」
加蓮「む、むむぅ……あっ! そうだ、3人揃ったんだから、ちょっと早いけどホールの様子を見に行ってみない? わ、私たち、先にホールに行ってるから!」グイッ
P「え? ちょっと加蓮なんで俺の腕引いてうおおお!?」トテテテ
奈緒「あっ、体よく逃げやがった!?」
凛「……もう言い逃れできないね。追うよ、奈緒!」
奈緒「うっわ、狩る目してるよ……まぁ、あたしも納得いかないから追うけどな!」
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会場・舞台裏通路
タタタタ…
加蓮「はっ、はっ……」タタタタ
P「か、加蓮! 急に走ったりしたら体に負担掛かるだろっ、大丈夫か!?」タッタッ
加蓮「レッスンしてるから、これくらいはもうへっちゃら! もう、Pさんは過保護すぎるの!」タタタタ
P「お、おう!? だ、大丈夫なら、無茶だけしないようにしてくれればいいんだが……」タッタッ
加蓮「ホント、優しいんだから……今こうなってるのも頷けるね、Pさんの女誑しっ!」タタタタ
P「突然のバッシングに胸が痛い! え、なに、なんでそうなった!?」
加蓮「……ふふっ、Pさん! 私、今すっごく幸せ!」タタタタ
P「えっ? ……急に、どうした?」タッタッ
加蓮「Pさんにスカウトして貰って、お仕事沢山して、凛と奈緒と一緒にユニット組んで……今が本当に楽しいの!」タタタタ
P「……その言い方だと、なんか死亡フラグとかいうのが立ちそうで怖いぞ?」タッタツ
加蓮「だから、Pさんっ」タタンッ
P「っとぉ!? 急に立ち止まっ」
加蓮「えいっ」ギュッ
P「再びぃ!?」
加蓮「もう私、『どうせ自分なんて』とか絶対に思わないよ。才能が……神様からの贈り物がどんなものでも、何があっても私は私、北条加蓮だからね!」
P「加蓮……」
加蓮「アイドルになる夢も、ウエディングドレスを着る夢も叶ったけど……でも、終わりじゃないよね? 私、もっと頑張るから、トップまで……ううん、それからも頑張るから!」
P「……ああ、そうだな、みんなで頑張っていこう。でも、この状況で言わなくても良かったと思うんだが……」
加蓮「言おうと思った瞬間が言い時だよ? 今言わないと、また入院して機会逃しちゃうかもしれないしね」
P「まーたそんなこと言いおって……絶対に、そうはさせないから覚悟しておけよ?」
加蓮「ふふっ、うん……その言葉、信じてる。というか、前からずっと、そのつもりだよPさんっ♪」ギュー
凛「あっ、居たよ奈緒! かーれーんー!」シュタタタタタタタタタッ
奈緒「凛、目が怖い! それアイドルがしていい目つきじゃない!」タタタタ
加蓮「あ、見つかっちゃった。それじゃPさん、早くホール行こっ!」タタッ
P「ま、まだ走るのか? 本番近いんだから、なるべく体力温存を……」
奈緒「2人ともっ、この際抱きついててもいいから、凛の名誉のためにもそこで止まっててくれぇっ!」
凛「プロデューサー! ホールに行ったら加蓮以上のことっ、して貰うからっ!」タタタタタタタタタタタタッ
P「ってうおぁ!? なんか凛が凄い勢いでこっち来てるんだけど!?」
加蓮「ほら、早くしないと凛に何されるか分かんないよ! 早く速くっ!」グイッ
P「これ、ホール行ったら結局捕まるんじゃ……ああもう分かった、とりあえず走る!」ダッ
奈緒「ああ、やっぱり逃げるよな! そりゃそうだよな! 隣のあたしが逃げたいくらいだよ!」タタタタタ
凛「もうっ、もっと凄いことして貰わないと、気が済まなくなるよ……!」シュタタタタタタタタ
加蓮「ごめんね奈緒、凛! 今行かなくちゃ、駆け抜けなくちゃ、この一時は楽しめないからっ!」タタタッ
P「加蓮、いけるか? ……どうせ走るんなら、このままゴールまでは捕まらずに行きたいからな!」
加蓮「うんっ! 前と違って体力もついたし……大丈夫、ずーっと一緒に行けるよ! だって……」
加蓮「――素敵で最高なプロデューサーが、私の傍に居てくれるんだもの!」
お わ り
加蓮が愛おしかったので、つい。りんなおかれんの画像を載せて下さった>>10,45さん、感謝感激です
今回の加蓮の台詞は、今までのレアリティで出て来た台詞を参考にしつつ、とある曲をベースにして書かせて頂きました
Pさんの台詞もその曲を参考にしています。とにかく加蓮にはこの曲がとても合うと思います
ここまで読んで下さり、本当にありがとうございました。
次がありましたら、その時はよろしくお願いします(そろそろ、のあさんの新SRください)
前作:モバP「諜報女子にはご用心」 次:Coの子
おつー
今回もよかった
とてもよかった
乙乙!
加蓮かわいい!
乙!
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