小鳥「雪の降る夜」 (8)

10年に一度という大雪に見舞われた関東。 そんな日でも私は仕事で事務所にいます。

「うそ、電車が動いてない!」

夜も20時を回った辺りで鉄道の運行状況を調べてみると、都内の鉄道網は全 滅。 辛うじてメトロの一部が遅れながらも運行しているという状況だった。

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「これじゃあ帰れないじゃない???。」

誰もいない事務所のデスクで独りごちる。

そう、今この事務所には私しかいない。 プロデューサーさんは皆を送りに行ってるし、律子さんも竜宮小町の収録に付 き添って今日は直帰の予定だ。

「はぁ、仕方ないわね。今日は事務所に泊まりましょう。」

うら若き乙女が会社に寝泊まりするのは如何なものかとも思うが、この雪が降 る、ともすれば吹雪いている状況下で歩いて帰ろうとはとても思えないのであ る。

不幸中の幸いとも言うべきか明日は休みなので朝に帰ればそれでいい。

最近は竜宮小町並びに皆が頑張ってくれたお陰で事務所に仮眠室が設置された ため、流石にソファーで寝るような事態は避けられる。

「お腹もすいたし、コンビニにでも行きましょう。」

実は事務所にはロケ等でお世話になった農家などからいただいた野菜や米が備 蓄として置いてあったり。 しかしここで調理する手間と、目と鼻の先の距離にあるコンビニで買ってくる 手間を考えると後者の方が楽なのだ。

出掛けようとコートを羽織ったところで事務所の扉が開きました。

「た、ただいまかえりました???。」

意外な人物がそこにいました。

「あ、あずささん!どうしたんですか!?」

収録があった竜宮小町は律子さん同様全員直帰だったはず。

「駅で迷ってしまいまして???。携帯電話も電池切れで???。」

何ともあずささんらしい理由ではあるがこの極寒の中迷いながら歩いてここま で来たのだろう。 あずささんは見るからに凍えて震えていた。

「とりあえずこれを羽織ってください。」

私が着ていたコートをひとまずあずささんにかけて給湯室へ。
やかんに水を入れ火にかける。
お湯が沸くまで大分時間があるのでその間にデスクに戻り、引き出しからカイ ロを取り出してあずささんに手渡した。

「気休めでも多少は暖まるはずですから。」

封を切って小さなカイロを手で揉む、お湯が沸く頃には暖かくなってるはずだ。

暖房はついているがあずささんはまだ震えている。
無理もないだろう。
雪のせいで足から冷えるのだ、寒さと痛みに耐えながら歩くのは私が思うよりも辛い行程だっただろう。

給湯室からお湯が沸いた事を知らせる甲高い音が響いた。
すぐさま移動してお茶を入れる。
残ったお湯をバケツにぶちまけ、そこに水を足してぬるま湯を作った。

期待

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