男「月眺館の殺人」 (3)
満月は人を惑わせる、という話を聞いたことはあるだろうが?
多くの人はこう聞いて、また何かの冗談だろうとお思いになることだろうが、
これは一部の人たちにとっては、常識として認知されていることなのだ。
例えば警察官。
嘘みたいな話に聞こえるだろうが、満月の夜に計画性が薄く、かつ非常に残忍な事件が起きやすいことは、
長年勤めている人間ならば知らないわけがないほどの常識である。
人間だけでなく、馬や兎も、満月の夜には体調を崩すものが多い。
興味がある人は図書館にでも足を運び、ルナティックについて調べてみるといい。
きっと、その日は有意義な一日になることであろう。
断言はしないが。
さて、僕たち映画研究会が、孤島の豪邸、月眺館に訪れた初日の夜も、空に綺麗な満月の浮かんでいた。
ことの顛末だけ述べてもそれはそれで面白いのだろうが、せっかくなので、その初日の昼間のことから書いていくことにしよう。
自作映画を撮るという名目で、絶海の孤島に集まった、大学生の男女五人。
ひとりひとり説明されても覚えきれないだろうと思うので、個人で適当に台詞を追いながら人物像を掴んでいってくれるとありがたい。
男「しっかし、本当に何もないところですね。正直遊びに来たつもりだったのですが、いざ着いてみると何もすることがありませんね」
先輩「あったり前でしょっ! 無人島に酒や煙草や麻雀牌を求めてたのかな男ちゃんは」
男「いえ、そこまで俗物的なことはさすがに」
先輩「安心しろっ! 酒もタバコも麻雀牌も、すべてちゃんとこの私が持ってきている!」
男「…………」
先輩「なんだ? 麻雀したいのか、ん? 可愛くねだりしたらメンバーに入れてやらんこともないぞ」
男「いえ、ルール知らないし興味もないので結構です」
先輩「本当はしたいのだろう? 変な見栄貼っちゃうともてないぞ」
先輩は女か
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