夜空「悪い、今日は調子が悪いんだ」(124)

小鷹「大丈夫かソラ?」

夜空「ああ……ちょっと身体が重くて」

小鷹「送ってくからゆっくり休めよ」

夜空「悪いな、タカ……」

小鷹「気にすんな。友達だろ」

夜空「…………うん」

大丈夫かソラが
大丈夫カツラにみえる

舐め回す

つわり?

考えたらそれっぽい症状の人につわりって聴くの凄い侮辱的な事だよな


興奮する

夜空「サンキュータカ、ここまででいいから」

小鷹「何いってんだ。そんなんじゃ階段登れないだろ。ほら」グイッ

夜空「あ……」

小鷹「もっとよっかかっていいぞ」

夜空「お、おう」

夜空「ありがとうな、タカ。助かったよ」

小鷹「気にすんなよ。元気になったらまた遊ぼうぜ」

夜空「ああ、勿論」

小鷹「じゃ、また」

夜空「またな」


バタン


夜空「…………グスッ」

タカと遊ぶようになって、どれくらいの時間が流れただろう

いくつもの夏が過ぎ

いくつもの冬が訪れ

タカは年々逞しくなっていき

オレは、三日月夜空の身体は……

サンキュータッカ

sssp://img.2ch.net/ico/onigiri_c16.gif
パンツ消し飛んだ

シュル……パサ

夜空「ふ……ぅ」

ぎゅうぎゅうに締め付けていた包帯を解くと、近頃ふくらみ始めた胸が姿見に映った

自分の意志など関係なく変わっていく身体

それは、タカとソラの関係が変わってしまう事を暗示しているようで……

夜空「……グスッ……タカぁ」


とても、悲しかった

ああ子供時代の話か

夜空を愛人にしたい

ケンカをして怪我をした時でも出なかった涙が止め処なく溢れる

女という生き物は、生理期間に入ると身体が重く感じたり、情緒不安定になるらしい

どんどん女になっていく身体

夜空「タカは、女になっても友達でいてくれるだろうか……」

そう考えると、タカに会うのがつらかった

「見ろよ! オトコオンナのやつ、元気ないぜ!」

「おいオトコオンナ! この間はよくもやってくれたな!」

夜空「……」

「シカトすんなよ!」

夜空「話しかけるな、いやむしろ息をするな雑魚共。空気が汚れる」

「……ッ!」

「野郎ッ!」

夜空「貴様らクズが何人きたところで……ッ!?」ズキッ

バキッ

ソラがヅラに見える

ほほう

いつもなら避けれるのに、身体が思い通りに動かない

いつもならどうってことない攻撃が、今日はとても堪える

拳が、蹴りが、腹に響く

「どうしたオトコオンナ!」

やめろ

「やっぱり所詮女だな!」

やめてくれ……

「見ろよ! こいつ泣いてぶッ!?」


ドサッ

小鷹「ソラ、大丈夫か!?」

夜空「タカ……」

……

夜空「タカ、タカ!」ペシペシ

小鷹「…………ぁ」

夜空「タカ……気がついたか?」

小鷹「ソラ……ッ!?」ズキッ

夜空「痛むのか!?」

小鷹「っ……はは、へいき、へいき」

小鷹「それよりも、ソラこそ大丈夫か?」

夜空「オレ……?」

小鷹「ああ。具合悪そうにしてたし、心配してたんだ」

夜空「……立てるか?」グイッ

小鷹「ああ…………痛っ!?」

タカはこういう奴だ

不器用で、人付き合いが下手くそで

気弱で、そのくせ変なところで頑固で

夜空「我慢しろ。男だろ」


私にそっくりな、たった一人の親友

はよはよ

夜空「ふ……ぅぅ」

小鷹「やっぱり苦しいか?」

夜空「自分だって怪我人だろ。オレの心配してる場合かよ」

小鷹「無茶しないでくれよ」

夜空「タカ……?」

タカの声のトーンが変わった

いつになく真剣なタカの目を見て、心臓が一度高く鳴った


小鷹「ソラにもしもの事があったら、俺……」

夜空「……」

タカが言わんとしている事は、なんとなくわかった


タカは昔、事故で母親を失っている

「よく覚えてはいないんだけどさ」と、タカは言い訳のように付け加えていたけど、その目はどこか寂しそうだった



「もし、ソラが体調を崩していた為に事故に遭ったら」

小鷹「俺……一生後悔すると思うから。だから……!」

夜空「……」


夜空「やれやれ、タカにはかなわねーな」

小鷹「ソラ……」

夜空「心配かけて悪かった! 体調が戻るまで二、三日学校休むとするよ」

小鷹「うん、それがいい」

夜空「次会うのは来週になるな」

小鷹「そうだね」

夜空「怪我、ちゃんと治しておけよ」グッ

小鷹「そっちこそ」グッ

コツンッ

夜空「じゃ、また来週」

……バタン

夜空「後悔しないように、か……」

暗い部屋、瞼を閉じるとタカの真剣な顔が浮かんできた

うれしい

タカが私を大切に想ってくれていると思うと、胸が温かくなる


同時に、タカに隠し事をしている後ろめたさもふつふつと浮かんでくる

夜空「タカ……」

その晩、夢を見た

タカがいなくなる夢

大切な約束を破った次の日、タカは姿を消した

それからはずっと独り

笑いあう事も、哀しみを分かち合う事もなく、ただ独り時間を消費する毎日


紛れもない後悔の日々だった

…………

小鷹「遅いな……」

「タカ、お待たせ」

小鷹「! ソラ、遅い…………ぞ」


夜空「…………」

小鷹「…………」

夜空「……ぅ」モジモジ

小鷹「…………」

夜空「な、なんとか言えよ!」

小鷹「ソラ、なのか?」

夜空「そ、そうだよ」

スカートを履いて、精一杯めかし込んで、女の子らしくした私を見た小鷹は絶句した

無理もない

つい先週まで一生に遊んで、喧嘩してた友達が突然女装してきたのだ


夜空「……っ」ギュ

次になんと言われるだろう……

もしかしたら、嫌われたかもしれない

そう思うと、タカの顔を見る事ができなかった

小鷹「……」


逃げ出したい

今日という日をなかった事にしたい

そんな気持ちで胸がいっぱいだった


夜空「……っ」ギュッ

でも

夜空「タカ……!」

ほんの一欠片、心に残った「前に進む決意」を握りしめてタカを見つめ、言った

夜空「オレは……女なんだ!」

しえ

私と目があうと、タカの困惑の色は益々強くなった

もう、後戻りはできない

ありったけの勇気で、言葉を紡いだ


夜空「ずっと、ずっと打ち明けようとは思ってたんだ! でも、タカに嫌われるんじゃないかと思うと、怖くて……言い出せなかった」

夜空「初めてできた友達が……タカがいなくなるのが怖かったんだ! でも、だんだん身体は女になってくし、オレ……オレ!」

次々溢れる気持ちのように涙が滲んでくる

顔があつい。足が、声が震える

涙を見られるのが恥ずかしくて俯きそうになるのを必死にこらえ、タカを真っ直ぐ見つめて言った

夜空「でも、オレはタカと一緒にいたいから……! だから!」

小鷹「ソラ……」

夜空「……っ」グシッ

言いたい事は出し切った

タカと目を合わせ続ける勇気は、もう残っていない

夜空「…………」ブルッ

だから、涙を拭って俯いて、タカの言葉を待った

夜空「…………」



ぎゅっ


夜空「!!」ビクッ

小鷹「言ったろ。何があっても、俺はソラの友達だって」


――世界中が敵になっても、俺だけはソラの友達でいる――


小鷹「例え、ソラが女だったとしても」ギュッ

夜空「タカ……」

…………

手を繋いだまま、二人家路を歩く

心は空のように澄んでいて、心地良い温かさに包まれていた

小鷹「なんか、恥ずかしいな」

夜空「なんだタカ。さっきの言葉は嘘だったのか?」

小鷹「嘘じゃない。嘘じゃないけどさ……」

夜空「じゃあなんなんだ。はっきりしない男は嫌いだぞ」

小鷹「う……」タジ

見てるからな

夜空「全く、男らしいなと見直した矢先にこの優柔不断さだ。さっきの感動を返せ」

小鷹「……」

夜空「……タカ?」

小鷹「…………から」

夜空「?」

小鷹「ソラが……か、かわいいから手を繋ぐのが恥ずかしいんだよ」

夜空「なっ!?」

小鷹「夜空が……かっ、か、かわいいから」

夜空「やめろ! かわいいかわいい言うな!」

小鷹「かわいい!かわいい!」

夜空「やめろ! タカのアホ!」

こんな馬鹿なやり取りに、思わず頬が緩む

タカとずっといられると思うと、うれしい気持ちが止められない


胸の鼓動が早くなる

この先、男女の壁が待っているとしても、私達ならきっと大丈夫


タカとソラは、ずっと親友なんだから



おしまい

高校に入学時の話も書くんだよ
おぅ、あくしろよ


夜空ルート直行のような気がしないでもないが

おう、あくしろよ

ちょっと待って

しえん

性格あんまり歪まなさそう

途中抜けるかも知れないけどいい?
遅くとも20時過ぎには戻れると思う

うむ

『遠夜、遠夜』プシュー

小鷹「小鳩、小鳩、ついたぞ」

小鳩「ふぇ……朝?」

小鷹「寝ぼけてないでさっさと降りる。ぼさっとしてると知らないとこに連れてかれるぞ」

小鳩「ま、待ってよあんちゃん!」ガタッ

>>2
そこまでじゃないけどヅラにみえた

俺、羽瀬川小鷹には親友がいる

名前は「三日月夜空」

小学生の頃、拳と拳で語り合った俺達は、紆余曲折を経て永遠の友情を誓った

それは、例え俺達が男と女でも変わらない

例え、遠く離れても、何年会っていなくても……



「タカ!」

小鷹「ソラ……! 」

夜空「久しぶり、タカ」

小鷹「……」

夜空「タカ?」

小鷹「綺麗になったなソラ、見違えたよ」

夜空「小鷹も随分背が伸びたな。昔は私の方が高かったぐらいなのに」


夜空「おかえり、タカ」

小鷹「ああ、ただいま」

しえんた

星奈が入る隙間が無い

クイッ

「あんちゃん……」

小鷹「おお、悪い小鳩」

夜空「ん?」

小鷹「妹の小鳩だ。小鳩、ソラだ。何回かあった事あるだろ?」

小鳩「……」ジー

小鷹「ごめんな、人見知りが激しくて」

夜空「まぁ、覚えていないのも無理はない。まだ幼稚園ぐらいだったしな」

夜空「じゃあ改めて、三日月夜空。小鷹の友達だ。よろしくな、小鳩」

小鳩「……っ」サッ

小鷹「はは……悪いな。本当に人見知りが激しくて」

夜空「大丈夫だ。人に嫌われるのには慣れている」

小鷹「……」



小鷹「あれから友達、できたか?」

夜空「……いや」


夜空「私には小鷹だけだ」

……

夜空「昔と比べると駅前も変わっただろ」

小鷹「いや、引っ越す前はそんなに来る機会なかったから、なんというか珍しくて」

夜空「ああ、確かに」

小鷹「ソラは結構来るのか?」

夜空「いや、人混みが好きじゃないからな」

小鷹「そっか。10年目の真実だな」

夜空「タカも何か秘密を明かすがいい」

小鷹「俺も?」

夜空「私だけ秘密を明かしては不公平だろ」

小鷹「そう言われてもなぁ。秘密らしい秘密なんか無いぞ」

夜空「ほう、シラを切るのか」

夜空「ならばかわいい妹の身体に聞くとするか」ガシッ

小鳩「ふぇ!?」

夜空「さぁ、どんな声で泣いてくれるのかな?」ニヤリ

小鳩「た、助けてあんちゃん……」ブルブル

小鷹「やめてやってくれソラ。小鳩がマジで怯えてる」

夜空「ふっ、まぁいい。タカの秘密を暴くなど、私の力をもってすれば造作もない」ニッ

小鷹「だから秘密なんて無いって」

小鳩「……」ジー

小鷹「小鳩?」

小鳩「! な、なんでもなかっ」

小鳩「それよりも我が眷属よ。我は永きに渡る彷徨で些か疲れたぞ」クックックッ

小鷹「そうか。ソラ、バス停はどっちだ?」

夜空「こっちだ。ついでに学校への路線もチェックしておくといい」

ごめんなさい一旦離脱します

おう

はい

戻りました

カチャ

小鳩「ついたー!」ガチャ

小鷹「……」

夜空「どうだタカ。久しぶりの我が家は」

小鷹「なんつーか……さ。今の今まで朧気だったけど、やっぱ帰ってきたって気がするな」

夜空「……そうか」


「あんちゃーん! ウチの部屋はー?」


小鷹「今行くから待ってろー」

夜空「長旅で疲れているだろうし、今日のところは退散する事にしよう。タカの妹も知らない人間がついて回っては嫌だろうしな」

小鷹「そうか? 遠慮する事ないのに」

夜空「いいから」


夜空「また明日、学校でな」

小鷹「おう、出迎えありがとうな」

支援

……

小鷹「ここが小鳩の部屋だぞ」

小鳩「ウチの!? うわーい!」

小鷹「荷物は昼飯作ったら運び込んでやるから、自分で整頓しろよ」

小鳩「クックックッ、よきにはからえ」

小鷹「……新しい学校ではそのなりきりもほどほどにしろよ?」

小鳩「なりきりやないもんっ」

小鷹「はいはい。さ、昼飯の準備すっかな」

小鳩「と、時に我が眷属よ」

小鷹「なんだ、小鳩」

小鳩「さっきの娘は……その、あの」

小鷹「ソラがどうした?」

小鳩「あの娘は……そちの、け、契約者なのか?」

小鷹「……契約?」

小鳩「……うむ」

小鷹(……さっぱり意味がわからん)

小鳩「ぅ……」モジモジ

小鷹「小鳩、もうちょっと分かり易く言ってくれないか?」

小鳩「せ、せやから……ぅぅ」モジモジ


小鳩「あ、あん娘があんちゃんの恋人かって聞いておるんじゃ!」

小鷹「小鳩」ポン

小鳩「っ!」ピクッ

小鷹「ソラは恋人なんかじゃない。俺の、大切な親友だ」

小鳩「大切な……」



小鳩「わ、我とどっちが大切なのだ!?」

小鷹「んー」


小鷹「小鳩も大事だよ」ナデナデ

小鳩「むー」

ふむ

……

小鳩「余は満足じゃ」クテー

小鷹「小鳩、行儀悪いぞー」ジャバジャバ

小鳩「んー」ゴロン

小鷹「やれやれ」

ピピピッ

小鷹「ん?」パカ


差出人:ソラ
件名:古巣の心地はどうだ?
本文:
日が高い内に設備は一通り点検しておいた方がいいぞ
夜になって湯が出ないとか気付いても遅いからな


小鷹(なんだかんだ言って、やっぱりまだ話足りなかったんだな)

小鷹(忠告サンキュー、さっそく確認する。離れてたけど、不思議と自分だと思うと安心するわ……と)ピピ


小鷹「さて、給湯器は」

ピピピッ

小鷹「……」パカ


差出人:ソラ
件名:ところで
本文:ちょっと気になったんだが、小鳩は私について何か言ってなかったか?
人見知りが激しいとはいえ、ちょっと怯えすぎなような気がしてな
やはり、いきなり人質にするような真似はよくなかっただろうか
私も余計に怖がらせるつもりはないし、出来れば仲良くしたいとは思っているのだが、兄としてはどう思う?


小鷹「あはは……」

小鷹(忠告サンキュー、さっそく確認する。離れてたけど、不思議と自分ちだと思うと安心するわ……と)ピピ


小鷹「さて、給湯器は」

ピピピッ

小鷹「……」パカ


差出人:ソラ
件名:ところで
本文:ちょっと気になったんだが、小鳩は私について何か言ってなかったか?
人見知りが激しいとはいえ、ちょっと怯えすぎなような気がしてな
やはり、いきなり人質にするような真似はよくなかっただろうか
私も余計に怖がらせるつもりはないし、出来れば仲良くしたいとは思っているのだが、兄としてはどう思う?


小鷹「あはは……」

しえん

小鷹(言ってたよ)ピッピッ

ピピピッ

小鷹「早いな」

本文:なんて言ってたんだ

小鷹(それは明日、学校で)ピピッ




小鷹「来ないな」

ピピピッ

小鷹「ん」

本文:そうだな

小鷹(きっと今頃ムッとしてるんだろうな)パタン

夜空「タカのやつ……!」


夜空「……」


夜空「……フッ」パタン


ボフッ

夜空「明日からまたタカと一緒か」

夜空「それも、同じ学校……」



夜空「……へへ」ギュッ

支援

   「おはよう」
       「うーす」
 「おはよー」
     「おはよう」


小鷹「よ、ソラ。おはよう」

夜空「おはようタカ。……なんだそのだらしない格好は」

小鷹「これか? 前の学校ではこういうのが流行」

夜空「やめておけ。ただでさえ近寄りがたいのに格好まで不良みたいにしたら手に負えないぞ」

小鷹「手に負えない!?」ガーン

夜空「小鳩、おはよう」

小鳩「……ん」

夜空「さ、バスが来るぞ。放心してないで服装を直せ」

小鷹「……」

夜空「いつまで落ち込んでいるのだ」

小鷹「いや、やっぱり俺って近寄りがたいのかな、って」

夜空「まぁ、近寄りがたいな」

小鷹「」グサッ

夜空「いいではないか。私という親友がいるだろ」

小鷹「……まぁ、そうだけど」

夜空「不服か?」

俺には、ソラ、「三日月夜空」という親友がいる

見た目が怖く、間が悪く、話し合いもままならず、敬遠され続けている俺の、たった一人の親友


俺とソラは昔、永遠の友情を誓った

それは今でも変わらない


けど……


俺達は、それでいいのだろうか

支援

『聖クロニカ学園前、聖クロニカ学園前』
プシュー、ブロロロ…



夜空「嫌なら染めてしまえばいいものを。タカの母親とて、息子が怖がられる姿を見るのは忍びないと思うぞ」

小鷹「むー……」


小鷹「髪といえば、夜空もかなり髪伸びたな」

夜空「ああ、似合うか?」

小鷹「うん、恐ろしく似合う」

夜空「! そ、そうか?」

小鷹「ああ、完璧すぎて近寄りがたい」



夜空「え」

『聖クロニカ学園前、聖クロニカ学園前』
プシュー、ブロロロ…



夜空「嫌なら染めてしまえばいいものを。タカの母親とて、息子が怖がられる姿を見るのは忍びないと思うぞ」

小鷹「むー……」


小鷹「髪といえば、ソラもかなり髪伸びたな」

夜空「ああ、似合うか?」

小鷹「うん、恐ろしく似合う」

夜空「! そ、そうか?」

小鷹「ああ、完璧すぎて近寄りがたい」



夜空「え」

掛け合いで小鷹、夜空って書いちゃう……

小休憩

はよ

保守

保守

夜空「近寄りがたい……? 私が?」

小鷹「ああ。俺はソラの事を知ってるからいいけど、普通のクラスメートとして話し掛けるには、ちょっとハードル高いって言うか、切り口が見つからないと言うか」

夜空「……」


夜空「なるほど、どうりでタカも私も友達がいないわけだ」

小鷹「は? なんでそこで俺が出てくるんだよ」

夜空「いきなり不良に話し掛けるのはハードルが高過ぎるというか、自殺行為だろ」

小鷹「」グサッ



夜空「はぁ……」小鷹「はぁ……」

夜空はやっぱりショートの方がかわいい

ロングが良い

支援

夜空「まぁ、私は周囲に近寄りがたいと思われていても平気だ。いつもの事だし」

小鷹「俺はせめて逃げられないようになりたい」

夜空「タカ、私は逃げないぞ」

小鷹「ソラ……」


キーンコーンカーンコーン


夜空「っと、もうこんな時間か。私は先に行くぞ。職員室は真っ直ぐ進めばみつかる筈だ」

小鷹「ああ、また後で」

キーンコーンカーンコーン


夜空「で、二時間目終了時点でクラスメートとの会話ゼロ、と」

小鷹「……」

夜空「『これは地毛です』って言うつもりが、緊張のあまり『ゴルァ!』って言ってしまうのだから、不器用を通り越して器用なのかもな」

小鷹「……」

夜空「大丈夫、私はずっとタカの味方だぞ?」

小鷹「だったら傷に塩を塗る真似はやめてくれ……」

キーンコーンカーンコーン

夜空「っと、じゃあまた後で」

小鷹「おう」


確かに、最初の挨拶は失敗して落ち込んだ

でも、この学校にソラがいる。しかも同じクラスだ

そう思うと、今まで送ってきた一人きりの学校生活に比べたらずっと気分が楽だった


でも、

俺はソラの存在に頼りきりでいいのだろうか?

親友がいる事に甘んじていていいのだろうか……

しえん

支援

かつて、俺はソラに言った

「ソラの事を百人分大切にする」

友達が百人できなくても、百人分大切にできる存在

それがソラだった


夜空「タカ? どうした? 食べないのか?」

その気持ちは今でも変わらない

変わらない、けど……


小鷹「ソラ、やっぱり俺このままじゃ駄目だと思うんだ」


昔のまま、進歩していない俺は、この先もソラを大切にできるのだろうか

支援

夜空「なんだ、藪から棒に」

小鷹「ソラも見たろ。俺は人前に出るとあがってしまって必ず失敗する。挽回しようにも見た目が怖いからって逃げられる。今のままじゃどこに出ても結果は一緒、うまくいかない」

夜空「タカ、朝も言ったが私は逃げないし、タカの事をよく知っている。うまくいかなくてもいいじゃないか。私がついている」

小鷹「今はいいかもしれない。でも、これから先、何があるかわからないだろ」

夜空「タカ……」

小鷹「学校を卒業して社会に出て、大人になっていったら、二人だけでは乗り越えられない大きな障害が待っているかも知れないだろ」


夜空「そんなは事ないッ!」ガタッ

支援

手紙やメールのやり取りで友達ができなくて落ち込んでる事を話すと、ソラは必ず「私がついている」と言ってくれた

保証された友情

それは一種の魔法だった


でも、それは同時に、友達が少ない事を正当化する事でもあった

夜空「タカと……タカと私は親友なんだ! 二人ならどんな事でも乗り越えられるんだ!」

小鷹「ソラ、聞いてくれ」

夜空「嫌だ! 聞きたくない!」


小鷹「聞け! 夜空ッ!」


夜空「!」ビクッ

小鷹「『友達百人なんてできなくてもいいから、百人分大切にできる本当の友達をつくりなさい』。ソラの母さんの言葉だったな」

夜空「ああ……タカもいい言葉と言ってくれたじゃないか」

小鷹「いい言葉だと思ったし、今も思っているよ」


小鷹「だから、この言葉を逃げ道にするのはやめよう」

夜空「逃げ道……?」

小鷹「俺はソラの事を掛け替えの無い親友だと思っている。本当だ」

小鷹「でも、だからといって人と親しくなる為に一歩踏み出すという行動を止めようとは思わない」

夜空「何故だ!? 私は百人分大切にできる存在じゃないというのか!?」

小鷹「そうじゃない!」

夜空「じゃあどういう事だ!」

小鷹「……覚えているか? ソラが始めてスカート姿で公園に来た時の事」

夜空「…………覚えている」

夜空「忘れるわけないだろう。あんなに緊張したのは、生まれて始めてだった」

小鷹「あの時、ソラは自分の意志で俺に一歩踏み出してくれた。あのまま、男友達として付き合い続ける事も、自然に気付くのを待つ事も、できた筈だ」

小鷹「でも、そうしなかったのは、『本当の友達』になりたかったからだろ?」

これで今年を締めくくろう

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