P「乾杯!」 (7)

P「あ、どうも! いつもお世話になってます」

P「いえいえ、ありがとうございます」

P「えっ? あぁ、お聞きになりたいですか?」

P「そうですね……あ、いえいえ全然話すのはいいんです!」

P「ただその、結局ノロケになっちゃうんですけど」

P「俺があいつを好きになった理由、っていうのは例えば……」

P「どうしても一人くらいはそういう子がいるのかも、ってことをプロデューサーになる前から気には留めてたんですけど」

P「実際当たってみると、確かに極端……とまではいかないんですが、どうしても仕事には差し支えてしまったり」

P「それで、仕事始めは苦労しましたね。まあまあ、少しずつ距離を縮めて行きましたよ。」

P「えっ? まあその今は克服したってことで……いやぁ、あはは……」

P「それを言われると弱いですね……でも結果として今こうなってるわけですから、後悔はしてませんよ」

P「最初は名前を呼ぶだけでも嫌がっていたのに、信頼ってのは積み重なって行くんですね」

P「その頃はもう、自分がついてないと不安……というのは少し大げさで自惚れ臭い部分もありますけど」

P「冬の撮影だったんですね。それも積雪してる地域で、野外撮影。そうなんです、やっぱり雪が似合うんですよ」

P「それで、なんとか撮影が終わって。それにしても結構綺麗なところで、ちょうど雪がちらついてきたんです」

P「一人で佇んでいる彼女が見えて、震えてるようだったから後ろから声をかけると、ビクッと身体が跳ねて短い悲鳴まで上げられちゃって」

P「撮影の前の自信が吹っ飛ぶ思いでしたけど、まあ仕方ないかななんて。ごめんな、って言いながらすぐ手を離したんです」

P「でもすぐにこちらに気がついたみたいで、と思った瞬間に急に、倒れるように寄りかかってきたんです」

P「あの、男嫌いの彼女からですよ? いくら二人きりとは言え、まだスタッフさんも撤収しきれていないのに」

P「どうしたんだ、寒いのか? そう聞いたら、何も言わずに頭を自分の胸のあたりに埋めたまま、手を後ろに回して、これでもかって力で抱きしめられて」

P「本当、今までこんな大胆な彼女はみたことがなかったので、狼狽えちゃって。そうしたら彼女が言うんです」

P「『寒くないですか?』 って」

P「顔は埋めたままで声はぐぐもって聞こえるんです。でも、彼女の細い腕が必死に自分の体に食い込んでいくのがわかる」

P「お恥ずかしい話なんですけど、その一言で世界を真っ白に、彼女色に染められちゃったんですよね」

P「『ありがとう、暖かいよ』 って言うしかなくて」

P「男嫌い男嫌いって、保護者みたいに言ってたのに……いえ、もちろん慕ってはいましたよ。そういう感情もどこかにあって」

P「それで、不意に言われた言葉が、思いもよらないというか。彼女って、意外と熱血漢……って言ったら怒られるかもしれないんですけど」

P「それだけ彼女に信頼されてる、思ったより自分のことを見てくれてるってことを感じることができて。抱きしめ返しちゃったわけなんですが」

P「でもなんというか、思わず意地悪したくなっちゃうと言いますか。男として攻められっぱなしじゃいけないなと」

P「そう思っていろいろ囁いてみても、一向に顔を上げてくれなかったり。恥ずかしがり屋な彼女には、ちょっと刺激的過ぎたかもしれませんけれど」

P「そんなところも本当、惹かれちゃってるんでしょうね。その辺は純粋に愛おしくて仕方がないというか」

P「帰りはちゃんと、二人で手を繋いで。今までだったらまた声を上げられてたでしょうけど、目を合わせてくれなかっただけで。結構な進歩ですよ」

P「……っと、少し話すぎちゃいましたかね」

P「いえいえ、こちらもこんな話しかお話しできなくて」

P「またお世話になるときはどうぞよろしくお願いします!」

P「あ、そろそろ時間ですか?」

P「えぇと、では……この度は自分と……雪歩のために集まっていただきまして、ありがとうございます」

P「どうぞ皆様、楽しんでもらえればと思います! では僭越ながら……」

P「乾杯!!」

――

ほし

いみ

なんか悲しくなる

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