ミカサ「うぅ……」ポロポロ(52)

私は倉庫裏で身を潜めながら静かに泣いていた。
こんなところ、誰にも見られたくないから。

エレン「お前……泣いてんのか?」

……見られてしまった。
よりによって一番見られたくない人だったのに。

エレン「ミカサだってたまには泣くんだな」

いつも通りの変わらない笑顔が私に向けられる。

ミカサ「え……」

その瞬間、風でそよがれたマフラーの色は

__確かに赤だった。

期待

ミカサ「ちょっと待って。
赤いマフラーが……」

私は首に巻かれたマフラーを見つめた。
微かに良い匂いがする。

エレン「マフラーがどうした?
もしかして破れたのか?」

戸惑う私の顔を覗きこんで彼は疑問を浮かべた。

ミカサ「いや、そうじゃなくて……」

思わず自分の髪を触る。
……もちろん黒髪だ。

ミカサ「やっぱり何でもない」

私はそう言いながら浅い溜め息をした。

エレン「そ、そうか……。
泣いてたみたいだし、疲れやイライラが
原因なんだったら早めに寝ろよ?」

あ、帰っちゃった……。

私の手にはさっき貰ったハンカチが
しっかりと握られていた。

その時に触れた手は……
優しくて暖かくてガッチリとしていて……
何故かお父さんを思い出してしまう。

……そろそろ消灯時間だ。

私は立ち上がり、不安定な足取りで
灯りが見える女子寮へ向かった。

ハンカチで涙を拭いながら。

>>2

ありがとうございます。

??

*

サシャ「ミカサ、急に居なくなって
どうしたんですか?」

私は聴こえなかったフリをしてある人を探す。

その人はすぐに見つかった。

ミカサ「ねぇ、ちょっと」

アニ「……何?」

3秒後に反応した彼女の右手を掴んだ。

そのまま廊下へ引きずり出す。

ミカサ「どうしてこんな事になってるの?」

アニ「知らない。 私も分からない」

私はそっぽ向く彼女を見つめた。

このままではどうしようもないだろう。

ミカサとアニが入れ替わってる。どうなる。

*

ミカサ「……で、こうする」

アニ「はぁ、面倒だけどやるしかないね」

彼女はこういう時に限って
渋々賛成してくれるから助かる。

いつも素直だったら良いのに。

私とアニは多分疲れているのか、
妙に重く感じる扉を開けて部屋に入った。

クリスタ「あ、2人も入ろうよ!」

クリスタの方へ目を向けると、
クリスタとユミルとサシャとミーナとハンナが
円になって座っていた。

一体、何を行っているのだろう。

>>8

そういう推理もアリですね。

ユミル「ミカサとアニが恋バナに
参加するのは珍しいが、一応歓迎はしてやる」

……強制参加になってる。

アニ「暇潰しにでもやってあげるよ」

アニも参加したし、ここは私もか。

ミカサ「分かった」

私とアニは皆の円の中に入り、早速恋バナを始める。

ミーナ「私はマルコかなぁ。 だって優しいし」

確かに2人は相性良さそう。

ユミル「いやいや、やっぱり女神のクリスタだろ。
なぁ、クリスタ?」

さっきまで黙々と話を聞いていたユミルが
身を乗り出して発言する。

ユミルのクリスタ好きは日常茶飯事だから慣れている。

クリスタ「ゆ、ユミルも
異性の好きな人が出来たら良いね!」

うん、ユミルは異性を好きになる事から始めよう。

ユミル「ん、あれ?」

ユミルは急に考えこんだ。

一体、どうしたのだろうか。

ユミル「さっき、ユミルも……って言ったよな?
ユミルも……って言う事は
クリスタには好きな異性の相手が居るんだな?」

その直後、クリスタはうつ向いて表情は見えにくいが、
顔はどんどん林檎色に染まっている。

クリスタ「そ、そんなことないよ!」

やっぱりクリスタの嘘は分かりやすい。

それに、クリスタにばかりくっついているユミルなら、
こういう事には相当敏感なのだろう。

>>2で期待と書いたが、なんか恋愛ものっぽくなっちまいそうだな…

アニ「私はもちろんエレ……」

あ、この展開はマズイ。

ミカサ「アンタ……いや、アニは少し黙ってて」

私は隣に置いてあるティッシュ箱をアニに投げつけた。

それをアニはすかさずキャッチ。

サシャ「ミカサがアンタって言うところ、
生まれて初めて見ました!」

空気の読めないところで感動し、
こういう時に限ってカンの良いサシャに
気付かない加減で小さく舌打ちをする。

あぁ、危ない危ない。

ミカサ「私は疲れているからもう寝る」

私はそう言うと立ち上がり、皆に背を向けた。

いや、まだ分からないぞ
期待

*

ミカサ「ん……」

誰かに肩を叩かれ、目が覚めた。

金髪、碧眼、女子……クリスタ?

ミカサ「どうしたのクリスタ?」

アニ「私はクリスタじゃないよ」

あぁ、アニか。

てっきり金髪、碧眼、女子で
髪も肩位だからクリスタかと思った。

ミカサ「何か用?」

アニ「髪が上手く結べないんだけどさ、
アンタやってくれる?」

時計を見ると5:30。

……その為にわざわざ起こしたの?

>>13

それはまだ公開できませんが、
不快に感じるのであればすみません。

>>15

ありがとうございます。

ミカサ「分かったから椅子に座って」

私は心の中で8割面倒だと思いながら、
アニに早く座る事を促した。

アニは元々身長が低いので、椅子に座ると
立っている私からすれば更に結びやすい。

……何故かそれが虚しくなるのは気のせいだろう。

ミカサ「……出来た」

我ながら今日のアニの髪型は
いつもと変わらないのに、普段より良い出来だ。

ミカサ「あと、言いたい事がある」

私がそう言うと、アニは首をかしげた。

私にだって質問したい事はある。

……今の場合は、だけど。

つまんねえな

>>20

すみません。

続きはよ

終わってもないのにつまらんとは此れ如何に

続き待ってるよ

>>22->>23

では、再開します。

ミカサ「マフラーは毎日着け……」

アニ「はぁ、当たり前でしょ」

……即答。

寝る時やお風呂以外は
毎日つけなきゃいけないのはちょっとキツい。

アニ「アンタ、言う事はそれだけかい?
私は二度寝するから」

アニはそう言うと、素早く自分のベッドへ戻って
再び眠りにつき始めた。

朝早く起こされた私の気持ちも
少しは考えてほしいものだ。

そんな事を言ってもアニに届くハズがない。

それにしてもマフラーは
いつ洗濯しているのだろう。

皆が寝ている間に洗濯しているとは思うけど、
夜に洗濯物を干す訳にはいかない……。

もう良いや、私も寝よう。

アニとミカサが入れ替わったと思ってたけどアニがアニの口調だったり視点はミカサで…
せっかく髪を結ってもらったアニが寝てマフラーはいつ洗うか不思議がって…
混乱してきた俺はまだその域に達してないんだろうな

なんだこれ…なんだこれ…

続きはよ

ミーナ「アニ、起きて!」

この声と共に私は布団を跳ね退けて起きた。

ミーナ「あ、ミカサ……おはよう」

そうか、私はミカサだ。

アニを起こしているのに私が起きれば
何も知らないミーナがビックリするのも当然だろう。

アニ「……ん、おはよう」

アニは大して眠そうでもないのに
ゆっくりと起き上がる。

……そろそろ朝食の時間か。

私は急いで歯磨きをし、服装を整えた。

アニ「あれ、マフラーどこだっけ」

アニはキョロキョロと周りを見渡して
マフラーを探し始めた。

アニ「あ、あった」

アニはそう言うと、私にどんどん近付いてくる。

え、ちょっと待って。
これって一応、今は私のマフラー……。

ユミル「朝から寝ぼけてるのか?
それはミカサのマフラーだろ?」

ナイス、ユミル。

アニ「……あ、あぁ、そうだった。
多分、昨日の疲れが原因かもしれないね」

今更気付いたのかアニは手鏡を見始めた。

せっかくアニの髪を綺麗に結べたのに
二度寝したから髪が少し乱れていつも通り。

まぁ、そっちの方が違和感が無いとは思うけど。

*

アニ「私はミーナと食べるから。
ミカサはエレ……いや、死に急ぎ野郎と
アルミンと一緒に食べて」

アニはミーナのところへ行ってしまった。

今日からアルミンはともかく
死に急ぎ……いや、エレンと
食べないといけないなんて面倒。

エレン「ミカサ、ここ空いてるぞ!
アルミンも一緒に座ろうぜ」

何も知らないエレン達は私の手を引っ張り、
無理矢理椅子に座らせた。

アルミン「美味しいね」

ミカサ「そう」

私の率直な答えに、
アルミンは何を返して良いのか戸惑っている。

エレン「今日も固いパンと味の薄いスープだけどな」

ミカサ「そう」

私の返し方に、さすがにエレンも
疑問を抱いたような表情になった。

あぁ、いつもの癖が出てしまったようだ。

もっとミカサっぽくしなければ。

ミカサ「エレン、口にパンくずが着いてる」

私はそう言うと、ハンカチを取り出そうとした。

……あ、これ、昨日貰ったハンカチだ。

ちゃんと洗濯してアイロンもかけた
エレンのハンカチが手に残る。

ミカサ「私が綺麗に拭いてあげる。
あと、このハンカチ……」

私は自分のハンカチでエレンの口の周りを拭いた後、
昨日貰ったハンカチを差し出した。

期待

>>33

ありがとうございます。

エレン「おう、ありがとうな。
どうせなら貰ってくれても構わないのに」

そう言うとエレンは笑顔を見せる。

その笑顔を見る度に昨日の出来事を
脳内の片隅で思い出してしまって余計に悲しくなる。

私が泣くなんて「性に合わない事するんだな」って
お腹を抱えながら笑われそうで見せたくなかった。

それなのに心配してくれるとはさすがに私も驚いて、
心の中の何かが消えた……気がした。

ミカサ「エレン、ありがとう。
……だけど、それはエレンのだから
気持ちだけ受け取っておく」

本当は貰って一生大切にしたかった。

でも、今はアニがこちらを睨んでるから
受け取る事はできない。

また、機会があればエレンの手でハンカチを持って
……直接私の涙を拭ってほしい。

エレン「そ、そうか」

エレンはまたパンを食べ始めた。

アルミン「ミカサにしては珍しいね。
エレンの物なら貰うと思ったのに」

もし、貰ったとしても。

ミカサ「いくらエレンでも
私だって人の物を貰う程失礼な事はしない」

後でアニに何て言われるか分からないから。

アルミン「さ、サシャ!?」

アルミンが急に声を上げる。

いつも大人しいイメージがあるのに
騒ぐとは何事だろう。

サシャ「アルミン、パンは私が貰いますよ!」

アルミンのパンを取ったサシャは
勝ち誇ったような表情を見せる。

その一方、アルミンはオドオドしながら
パンを持って逃げるサシャの後を追いかける。

ミカサ「……サシャ」

その瞬間、サシャは動きを止まらせこちらを向いた。

それとも、ビクビクと私に怯えているのか。

声のトーンを低くして言ったせいもあってか、
その声を聴いた皆の視線が360度私に刺さってゆく。

アルミンは息切れ寸前なのか
床に跪いて呼吸を整えている。

サシャ「は、はい? な、何でしょう?」

立ち止まったサシャは早くパンを食べたそうに
目で訴えながら言葉を発した。

顔がやや強ばっているのがバレバレだ。

アルミンは私が怒るのかと
勘違いしたのか一筋の冷や汗を流す。

その冷や汗はアルミンの頬へと伝っていった。

ミカサ「サシャ、私のパン少しあげる。
だから……」

サシャ「い、良いんですか!?
ありがとうございますミカサ!
借りは必ず返しますからね!」

サシャの声により、私の言いかけた言葉が途切れた。

少しは落ち着くという事を考えたらどうだろう。

ミカサ「その代わり、条件として
アルミンのパンを返して」

私がそう言うと、サシャは表情を崩さず
ウサギのように跳ねた。

サシャ「もちろんです!」

サシャの持つアルミンのパンは返され、
私の前へと近付いていった。

案外、食べ物で釣れば
サシャは何でも言う事を聞きそうだ。

サシャ「早くパンを下さい!」

サシャは私の持っているパンを見て涎を垂らした。

自称ドSの私からして、こうやって懐く犬には
少し位イタズラをしたくなる。

ミカサ「お座り」

サシャ「ワン!」

サシャは飼い慣らされた犬のようにお座りをした。

さっきワンって言った……!?

まさか本当にするとは思っていなくて
笑いがだんだん込み上げてくる。

うっ……笑いそう。

ユミル「だ、だははははっ!
芋女がマジで犬に見えてきた!」

その光景を見ていたユミルはお腹を抱えて
女子とは思えない笑い方をする。

続き期待

>>40

ありがとうございます。

再開します。

ジャン「そうだよなぁ!
ヤバい、笑い過ぎて腹が痛い……!」

ジャンに限っては頭を机に突っ伏し、
あまりに面白かったのか机をドンドンと叩いた。

他の皆も大半が笑っている。

サシャ「み、皆さん笑うなんて酷いですよ……!
私の故郷に犬が沢山居たのを思い出して
真似してみただけじゃないですか……!」

そんなざわめきの中、サシャが顔を真っ赤にした。

そして、私の少しちぎったパンを奪って
自分の席にせっせと戻っていった。

サシャが食事を再開しても
食堂に響く笑い声は絶えない。

その時、私は実感した。

ミカサ「皆と一緒って……楽しい」

聞こえない程度の声で呟き、
私は微笑ましく皆の笑顔を見ていた。

*

エレン「アニ、今日も組もうぜ!」

アニ「あ、え、えっと……
しょうがないから暇潰しにでもやってあげるよ」

私は対人格闘訓練の時間、2人をボーっと見ていた。

私はライナー辺りと組めば良いんだっけ。

でも、今日はベルトルトと約束しているのを見たし
他の人もペアを組んで練習を始めている。

__その時、何者かが後ろから私の肩に手を置いた。

私は咄嗟に振り向く。

ジャン「ミカサ、俺と組まねぇか……?」

……なんだ、ジャンか。

まだペアを組めていない私のところに
教官が怒りに来たのかと思った。

朝食の時以来、姿を見ていないから
心の中で少し驚いてしまう。

ミカサ「うん」

私はゆっくりと頷き、ジャンを見つめた。

……隙がある。

ジャン「ミカサ、そんなにジッと見つめないでくれよ。
なんと言うか……恥ずかしいじゃねぇか……」

私はジャンに照れてもらう為に
見つめている訳じゃないのにジャンは顔を赤くした。

ミカサ「私から攻撃させてもらう」

ジャン「おう、分かっ……うおっ!?」

私はジャンの返事も聞かずに回し蹴りをした。

それ位で倒れるエレンとは違い、
ジャンは何とかギリギリで避ける。

息切れしたのかさっきより
元気が無くなっているようにも見えた。

ジャンはサボってるし弱そうだけどな
大晦日に投下乙!

>>45

そこはお察しを←

いくら大晦日でもちょっと暇ですから
少しだけ投下しました。

*

ジャン「さ、さすがミカサだな。
ずっと気が抜けてなっ……!?」

ジャンは私のタックルも息切れ寸前でかわす。

どうして……?

蹴りも寝技も何をやっても
ギリギリで避けられる……!?

ジャン「……なぁ、俺も疲れてきたし
ミカサも体力があまり残ってないだろう?
そろそろ休まねぇか?」

私は負けず嫌いだ。

勝ち負けを決めないで休憩するのは
白黒はっきりつけられる戦いから
目を背けているようでどうも気にくわない。

私はそんな根性の無い人は苦手だ。

ミカサ「ジャン、貴方は私が攻撃しても
避けてばかりでつまらない。
たまには……」

大きく深呼吸をする。

ミカサ「……2人でもっと刺激的な事、しよ?」

そして私はジャンの耳元で囁いた。

ジャンの顔は何故かまた赤くなる。

ジャン「み、ミカサぁっ……。
そういうのは心の準備がまだ……」

……心の準備?

急にやる方が良いに決まってるのに。

ミカサ「それと、更に言いたい事があるんだけど……」

私は微笑んだ。

ミカサ「……下半身がお留守番だよ?
これは合意とみなして良いのかな?」

楽しい時間の始まりだ。

私はジャンの右足と左足が開いたままなのを確認し、
自分の右足を間に入れ、その足を思いきり左に動かして
ジャンの体勢を少し崩れさせた。

更にジャンの両手を掴み、
地面に優しく叩きつけるような感覚で
背負い投げをお見舞いする。

ジャンはエレンのように
強めで投げると骨折しそうだから。

ジャン「いってぇ……」

ジャンは綺麗に地面と背中をくっつけた。

砂埃の舞う訓練所で痛そうに頭を抱える。

ミカサ「避けてばかりで
刺激が足りなかったようだったから。
下半身がお留守番って言ったのに
もじもじしててどう防御出来るの」

技をかけるのはやっぱり急にやるほうが良い。

事前に「技かけるよ」なんて
言っていたら意味がないから。

アニはっちゃけてるなw

>>50

ですねw

ジャン「刺激的な事ってそういう事かよ……」

「刺激的な事」と言えば
格闘技をかける事に決まっているだろう。

それ以外にジャンは何を思い付いたのだろうか。

……まぁ、良い。
これで一応勝ち負けがついたのだから。

キース「これにて今日の対人格闘訓練は終わりだ。
午後からは立体起動訓練があるので
遅れずに集合する事!」

うるさい教官の声で午前の訓練は終わりを告げる。

私は早く女子寮に帰ろうと
ジャンにくるりと背を向けた。

ジャン「今日の夜、対人格闘訓練の成績を上げる為に
自主練したいんだが付き合ってくれないか?」

私は背を向けたまま心の中で少し喜んだ。

ミカサ「……分かった」

このSSまとめへのコメント

このSSまとめにはまだコメントがありません

名前:
コメント:


未完結のSSにコメントをする時は、まだSSの更新がある可能性を考慮してコメントしてください

ScrollBottom