ガンパレード・パンツァー 2 (157)

前スレ
ガンパレード・パンツァー - SSまとめ速報
(http://ex14.vip2ch.com/test/read.cgi/news4ssnip/1373045871/)

ガンパレード・マーチとガールズ&パンツァーのクロス二次創作となっています
基本的に西住みほ視点での進行となります

時代設定はガンパレ側に合わせ2000年の設定に 学園艦や戦車道などの世界観設定はガルパン側に合わせてあります
ただ、所々都合のいい改変も行っていますのでご了承ください
榊涼介氏の小説版ガンパレにも多分に影響を受けております

怠慢により前スレを中途半端なところで落としてしまい、楽しみにしてた方には大変申し訳ありませんでした


SSWiki : http://ss.vip2ch.com/jmp/1386756264

               ト 、__  _,. -─r‐- 、.._        ,
             ミヽヽ  ミヽ\ |/∠  ≧ニメ//
              ゝ\\二ミr‐ト 」_|/rく二二二彡イ
               _ ノ二/ // ̄´   ヽ「`辷ニ─<
              //〃   |/      ||  \\ヽ|
                |彡イ ≧‐_!、_     リ_,. -‐ トミヽ|
               r‐v| く Ld下`  ¬r'fi 卞、  }ヾソ
               |〔ィ{!       ヽ     ̄ ´  ,ハヽ
             \」      |i         /r//
               l      、 l _      /一'
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r――――――┐

|  若宮 戦士 !
7' ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄
||  再開前に訂正だ
||  前スレ>>751の一行目は正しくは
||  「右手に持った超硬度大太刀で押し寄せる幻獣を切り裂き、離れた敵に対しては左手のジャイアントアサルト」
||  だ。じゃあ遅くなったが続き行くぞ

まほ「話は後だ。まだ大勢敵が迫ってくるぞ、離脱しろ」

士魂号Lにまとわりついていた小型幻獣を人型戦車・栄光号で排除しつつまほは言う
みほもすぐに我に返り、5121小隊の元へ進むよう指示を出した

厚志「ねえ、なんか幻獣の勢いが弱まったような気がしない?」

壬生屋「覇気が失せたように感じます」

舞「む、数こそ相変わらずだが……これは」

舞は拡声器のスイッチを入れ、まほに呼びかける

舞「そこの人型のパイロットよ、こちらの周波数を教える。応答できるか?」

砲撃を加えながら後退しつつ、まほから返答があった

まほ「しばらく」

舞「やはりそなたであったか」

みほ(そうか、一緒に戦ったことがあるって言ってたっけ)

舞「先ほどの二度目の射撃は」

まほ「敵の指令型を撃破した。ペンタだ」

厚志「あ~、道理で」

華「みほさんのお姉様も、ペンタを感知出来るのですね」

みほ「華さん!麻子さん!大丈夫!?」

麻子「ああ、頭痛は治まった」

瀬戸口「動けるのならすぐに後退してくれ、艦載機の爆撃が開始される」

みほ達は豊後街道を進み駅前から撤退、後方部隊と合流
そして飛来した艦載機の爆撃により、阿蘇市一帯は業火に包まれた

柚子「町が……」

杏「皮肉だね。幻獣支配地域じゃなければこんな戦術は取れなかった」

桃「会長……」

杏「ま、九州の幻獣が集結してくれてたおかげで一網打尽に出来たし万々歳かなー?」

華「会長、軽口を叩いてますけど……悲しそう」

麻子「町が滅ぶ姿は見たくないんだろうな」

みほ「大洗の町と学園艦を、あんなに愛してる人だもんね」

瀬戸口「帰還した車両は整備部隊のところに。おそらく爆撃だけでは殲滅は不可能だ。後ほど他部隊と共に攻勢作戦に出る」

ののみ「精神汚染を受けた人は、萌ちゃんが検査してくれるの」

ナカジマ「こっちこっち!オーライ!」

スズキ「うわあ、あちこちボロボロだね」

ホシノ「でも駆動系には問題なさそう」

ツチヤ「とりあえず再出撃できるだけの応急処置だけはしなきゃ」

みほ「すみません、よろしくお願いします」

華「では私たちは石津さんのところへ」

麻子「行って来る」

原「西住さん、ひとまずお疲れ様。よく戻って来てくれたわ」

そう良いながら原はみほを抱きしめる
照れながらみほは答えた

みほ「はい、舞さんたちに沢山助けられました。それから……」

二人は士魂号と共に少し送れてやってきた人型戦車を見上げる

原「栄光号……なんであの機体が……」

みほ「原さん?」

険しい表情で忌々しげにつぶやく原
みほが不安そうに見ていることに気づくと、表情を和らげた

原「……いえ、何でも無いわ。さあ、行ってらっしゃいな。お姉さんなんでしょう?」

みほ「は、はい!」

栄光号から降りて来たまほにみほは駆け寄った
夢じゃない、幻覚でもない
紛うことなき姉を目にして、みほの息は弾んだ

みほ「お姉ちゃん!」

まほ「……みほ」

みほ(えっとえっと、なに言うか考えてなかった!)

まほ「……すごい格好だな」

みほ「え?……あ!!」

原謹製のウォードレス姿であることに気づいたみほは、あわててジャケットを着て戻ってきた

みほ「えへへ……お姉ちゃん、また会えた」

まほ「……うん」

みほ「もう、会えないと思ってた」

まほ「……うん」

みほ「なんで……なんでっ!」

まほ「……すまなかった、みほ」

みほ「お姉ちゃん……!」

姉の胸に飛び込むみほ
まほは優しく頭を撫でてくれた

みほ「私がっ!私のせいでお姉ちゃんが死んじゃったって!ずっと……ずっとそう思ってて……!辛くて……っ」

まほ「そんなことない、私がしくじったんだ。みほは悪くないよ」

みほ「お母さんも……すっかり落ち込んじゃって……」

まほ「そうか、お母様が……辛かったな、もう大丈夫だ」

そうして、しばらくみほは静かに泣き続けた
まほも黙って頭を撫で続けていた

まほ「落ち着いた?」

みほ「うん……」

善行「救援感謝します、西住万翼長」

まほ「お久しぶりです」

善行「お母様のことは?」

まほ「今なら問題ないでしょう」

みほ「あの、なんの話でしょう?」

善行「西住さん、私がこの隊に赴任したとき、前任者が戻ってきたと言いましたよね?」

みほ「はい……まさか」

善行「そうです。あなたのお母様、西住しほさんが今は私がいた隊の指揮を執っています。まほさんの生存を報告すると、立ち直ってくれました」

みほ「お母さんが……」

舞「つまりそなたは初めからまほの生存を知っていたのだな?」

善行「はい」

舞「なぜ黙っていた」

善行「守秘義務がありまして。芝村がらみでのね……本来はここに現れる予定も無かったのですが」

舞「……貴様」

みほ「ま、舞さん!私は……お姉ちゃんが生きていてくれただけで、今はそれで十分だから……」

舞「ふん、みほに免じてこの場は下がってやる。が、後ほど説明してもらうぞ」

善行「……わかりました。作戦後にご説明します」

そうして善行は指揮車へと戻っていった

舞「くくく、善行め、柄にも無く落ち込んでいたな」

みほ「え?そうだったんですか?」

厚志「流石の善行さんも集団精神汚染までは予想できなかったみたいだね。危うく隊を壊滅させるところだったから」

舞「あやつは5121結成よりも以前に自らの隊を壊滅させてしまった過去がある。だから辛抱強く生き残れる隊を作ることに躍起になっていたのだ。それゆえ今回は橋頭堡を築きつつの進軍予定であったが、敵の少なさに釣られて突出しすぎた」

まほ「偵察部隊が精神干渉を受けてしまったのだろう?」

舞「仕方ない、では済まぬ。そなたが来てくれなければ……」

エリカ「隊長ーーーー!」

まほ「わっ!エリカ……」

石津のカウンセリングを終えたらしいエリカが、顔をくしゃくしゃにして飛び込んできた

エリカ「隊長!生きてっ!生きていてくれたんですね!私は、私わぁ……!」

まほ「今の隊長はお前だろう?やれやれ、今日は泣き虫が多いな」

そう言ってまほは苦笑した
みほは、こんな風に笑う姉を見たのはとても久しぶりだなと思った

桂利奈「え?モコス直せるの!?」

狩谷「放棄した場所が市街地から外れた場所だったからな。爆撃に巻き込まれず回収することが出来た」

中村「破損箇所もホバー部分だけだったばってん、すぐ直せそうばい。安心して良かよ」

梓「良かったー!これからどうしようかと思ってたから」

茜「感謝しろよ。この僕が直々に直してやるんだからな」

あゆみ「ありがとうございます!私、もう弱音吐きません……」

茜「お、おう……分かればいいさ」

田代「何を偉そうに、テメーはヒマだっただけだろうが」

茜「なんだと!」

ナカジマ「ゴメンねー?こっち士魂号Lの補修で手が離せなくてさ」

田代「オラッ!さっさと行くぞ!」

茜「ま、待て!こいつと二人でか!?」

森「十分でしょ?私たちは士魂号の点検整備で忙しいし。田代さんの足引っ張らないようにね」

茜「畜生!バカにしやがって!」

梓「……いっぱい助けられてるね」

桂利奈「うん」

あゆみ「みんなのために、私……頑張るよ」

瀬戸口「やはりあれだけの規模の幻獣を完全に殲滅することは出来なかった。これより各方面より終結した部隊による掃討戦が開始される」

ののみ「傷ついたあいてがほとんどだけど、みんなゆだんしちゃめーなのよ!」

善行「プラウダ、サンダース、聖グロリアーナ、そして各隊の自衛軍が参加しますが、作戦領域が広いため連携は考えなくても良いでしょう。また西住万翼長の栄光号も参加してくれます」

まほ「先ほどの戦闘で指揮を取っていたと思われるペンタは撃破した。精神汚染は無いものと思われる」

亜美「それなら安心ね!私たちはバンバン撃って行くわよ!」

厚志「あはは、いいね楽しそうだ」

舞「たわけ。発進するぞ」

原「士魂号、栄光号、全機リフト・オフ!」

みほ「この戦いで熊本、いや九州を取り戻す……あんこうより全車へ!私たちに続いてください!パンツァ・フォー!」

カチューシャ「よーやくまともな戦闘かと思ったら、どいつもこいつもボロボロね!蹴散らしてやるわ!」

ノンナ「手負いの獣ほど危険といいます。油断は禁物ですよカチューシャ」

ダージリン「四本足の馬でさえつまづく、という諺もあるわ。これだけの規模、何があっても不思議ではなくてよ」

ケイ「ミホと、アンジーたちが必死で戦った戦場……油断はしないわ!いいわね!」

アリサ・ナオミ「イエス、マム!」

瀬戸口「各隊、戦闘に入りました!」

みほ「国道57号線を境に展開します。突出しすぎず、慎重な砲撃を心がけてください」

壬生屋「突破してきた敵はわたくしにお任せを」

亜美「歩兵は塹壕から支援!忍び寄ってくるゴブリンがいる可能性もあるから注意して!」

舞「今回は我らも主に支援射撃に専念だ。まほ……そなたもそれで良いな?」

まほ「了解」

厚志「うーん、さっきまでとは幻獣の勢いが全然違うね」

舞「油断するなと言われたばかりであろうが」

滝川「でもよ、実際そんな感じだぜ?何か企んでる風でもねぇ」

優花里「意見具申であります!前進して戦域を縮小しても良いのでは?」

舞「……みほよ、どうだ?実を言うと私も構わないと思っているのだが」

みほ「はい。大丈夫だと思います。ペンタの気配もありません」

まほ「同意見だ」

舞「よし、県道11号と、阿蘇一の宮線に隊を分け前進する。横合いからの敵襲に注意せよ」

みほ「途中から極端に遮蔽物が少なくなります。前に出過ぎないように」

ケイ「オーケー!こっちからも敵を追い込むわ」

カチューシャ「ふん、こちらのいい様に動いてくれるわね、間抜けだわ」

ノンナ「幻獣を指揮していたペンタは撃破されたと聞いていますが」

ダージリン「やはり統率が取れなくなっているようね」

ペコ「なんだか怪我をしたせいで焦っているようにも思えます」

瀬戸口「あちらさんは順調みたいだな」

ののみ「みほちゃんたちは大丈夫?」

みほ「損害はありません。でも……」

優花里「爆撃の影響で、そこらじゅう瓦礫の山ですね……」

柚子「慎重に進まないと……」

舞「焦るでないぞ。瓦礫が邪魔になったときは我らを呼ぶが良い」

桃「開けたところに出た。見えたぞ!幻獣の大群だ!」

杏「あれだけの爆撃でもまだこんなに残るもんだね~」

エルヴィン「伊達に幻獣側の九州総軍というわけではないと言うことか」

厚志「ここらは田園地帯だったところだね」

滝川「スキュラやゾンビヘリが少ないな」

瀬戸口「飛行型の幻獣は爆撃で特に打撃を受けたようだな。逆に地表にいた連中はいくらか被害を軽減してるみたいだ」

典子「でも無傷とはいかなかったと」

カエサル「この機を逃す手は無いな」

エリカ「位置に付いた。砲撃準備よし」

亜美「こっちも準備完了よ」

ののみ「てきの増援の気配はありません」

舞「ふむ、一気にカタをつけよう」

みほ「……撃て!」

その後は一方的な攻撃が続いた
四方を囲まれた幻獣は右往左往した挙句、碌な反撃もままならぬうちに壊滅
九州を支配していた幻獣軍はほぼ消滅した

沙織「勝った……勝ったの?やったー!」

エルヴィン「我々の勝利だ!」

梓「みんなー!やったよー!」

桂利奈「勝った勝ったー!あはははは!」

口々に勝利の喜びを叫ぶ仲間たち
後方まで戻ったみほは舞の元に向かった

みほ「まだ、なんだか実感が沸きません……」

舞「そうだな、私もこんな短期決戦になるとは思っていなかったが。だがそういうものだろう」

まほ「まだ各地に小規模な幻獣の群れは存在するだろう。それらの警戒と排除は今後も続けていかねばならない」

みほ「お姉ちゃん」

瀬戸口「そうだな、九州の完全な安全確保はより時間がかかるだろう。各地の復興・戦後処理。ここからが本当の戦いとも言える」

善行「本当に沢山の学兵たちが犠牲になりました。あなたたちと同じ、学園艦という場所で青春を送るべき若い命が。子供たちを戦場に送り出してしまった責任を、大人は取らなくてはならない」

みほ「善行さん……」

亜美「まあ、とにかくあなたたちは良く頑張ったわ!全力で褒めてあげる!」

カチューシャ「ふーむイマイチ歯ごたえが無かったわね」

ノンナ「損害が無いことが何よりですよ、カチューシャ」

カチューシャ「それもそうね。また会いましょう、ミホーシャ」

ケイ「コングラッチュレーション!今回のMVPはミホね!私たちもあなたたちに負けないくらい、また強くなって見せるわ!……またね!」

ダージリン「本当に……お強くなったわね。戦車道で対決できる日を楽しみにしているわ」

体良く幻獣の主力を撃破できたため、各戦闘団は拠点確保と、戦後処理のために送られてくる部隊のためのルート確保に動き出していった
第5戦闘団も明朝、熊本へ出発する

その間、まほの身に何があったのかを聞くことになった
2人で並んで戦車の上に腰掛ける

まほ「仲間を庇い撃破された、と言うところまでは聞いているだろう?だが私はそこでは死ななかった。負傷した仲間の戦車兵を引っ張り出し、何とか脱出したものの周りは幻獣に囲まれていた。死を覚悟したときに芝村の手の者に救われた」

みほ「芝村の人に……でもそれならどうして戦死したって……」

まほ「私が乗っている人型戦車、栄光号というのだが、あれはサンダース大付属の学園艦で開発されていたものだ」

みほ「サンダースで?」

まほ「うん。あそこは全国でも屈指の大きさの学園艦で各種施設も揃ってるし、なにより
長崎所属だから実戦データも多く取れた。でも知っての通り人型戦車は動かすのもやっとの兵器でその上適性パイロット自体希少だ。だから私に白羽の矢が立った」

みほ「……原さんが栄光号を見たときに、凄く嫌なものを見る顔をしたの。お姉ちゃんを戦死扱いしないといけないくらい、その栄光号……何かあるの?」

まほ「私も、詳しい内容については聞かされなかった。だが……乗っていて分かったよ。この機体はとても悲しんでるって。たくさんのおぞましい出来事の末に出来上がったものだって。栄光号が私に語りかけてきた、そんな気がしたんだ」

みほ「人型戦車自体が……」

まほ「でも私に拒否権は無かったよ。仲間の傷は深く、彼らの口利きで芝村の専任医療スタッフに診てもらえることになった。サンダース大付属学園艦は、実は機関部のトラブルで今もあの場所に停泊したままだ。私はそこの住民たちも守りたかった」

みほ「ケイさんたちはサンダースを見捨てたって言ってたけど……無事だったんだ」

まほ「学園艦は守りに関しては鉄壁と言えるからね。最も、甲板上の町や防衛設備はもう壊滅してしまったが……」

みほ「舞さんが、学園艦が撤退戦後も移動していたって言ってたのは……」

まほ「そうだな、しばらくは活動していたんだ。これも私が栄光号のパイロットを引き受けた理由の一つだが……撤退戦で取り残された学兵たちの救出も行っていたんだ」

みほ「!」

まほ「あの撤退戦で最後まで戦った学兵のほとんどは、熊本の同胞たちだ。取り残された仲間を、私はどうしても見捨てられなかった……助けることが出来たのはほんのわずかで、私が見つけたときには事切れていた場合がずっと多かったけど」

みほ「お姉ちゃん、そんな戦いをずっと……」

まほ「みほを助けることが出来て良かった。今まで頑張ったね」

みほ「うん!」

まほ「お母様が落ち込んでいたと言っていたな?」

みほ「あんなに塞ぎ込んだお母さんは初めて見たよ……私のことも全然目に入らないみたいで」

まほ「みほ、お母様から私に連絡があったんだよ。みほのことを守ってくれと。それから……すまなかったと。あれは立ち直った後だったんだな」

みほ「お母さんが……?」

まほ「大丈夫、みほのこともとても大事に思ってるよ」

みほ「うん……あ、復帰したってことは、お母さんが総司令官なの?」

まほ「いや、以前善行竜師が就いていた関東方面軍司令だ。九州方面軍司令はお母様の友人の林凛子という方だ」

みほ「もう行っちゃうの?」

まほ「一度サンダースに戻らないといけないんだ。データのフィードバックもあるし、何より簡単な整備はともかく、深部まではここの人たちに見せるわけにはいかない」

みほ「またすぐ会えるよね」

まほ「ああ、いずれここで遊ぶこともできるよ。昔みたいにね」

再び栄光号に乗り込んだまほは、サンダースの学園艦へ戻っていった

舞「行ったか」

みほ「はい」

舞「もう夜もふけてしまったな。明日に備えてそなたも休め」

みほ「はい、そうさせてもらいます」

後日、熊本およびその周辺の安全も確保され、第5戦闘団は後続の輜重部隊と入れ替わる形で佐伯港へと帰還していた

深夜、大洗学園艦の艦橋には各隊の隊長たちが揃っている

善行「こんな時間に申し訳ありません」

厚志「黒森峰はまだ僕たちと一緒なの?」

エリカ「まだ予断を許さない状況だから。しばらくは第5戦闘団の傘下よ」

みほ「何か問題があったのですか?」

善行「太平洋から学園艦が接近中なのです」

舞「太平洋から?どこの艦だ」

善行「不明です」

亜美「えっと、どういうことでしょう?」

善行「通信機器の故障か、何らかのトラブルかは分かりませんが、通信が出来ないのです。識別信号は出ているんですがね」

舞「観測は?」

善行「幻獣の妨害もあり十分な観測が出来ないでいましたが、そろそろ観測可能範囲に入る頃でしたので、皆さんを呼びました。万が一のこともあるので戦闘団にも待機していてもらいます」

エリカ「万が一?それは一体……」

そのとき、大洗学園艦から艦載機が飛び立っていくのが見えた

亜美「艦の運営は生徒たちが行っているけど、流石に航空機の管制は自衛軍の管制官が行ってるのね」

みほ「あの隊のコールサインはライダーっていうんだって。大洗のご当地プロレスラーにあやかって付けたらしいよ」

エリカ「ふーん、そう」

みほ「あれ、興味ない?」

エリカ「別に……ふふっ」

厚志「仲直り出来たみたいだね」

舞「そうだな」

パイロット「ライダー1より大洗へ、あの学園艦はこちらの通信にも誘導にも応じない」

舞「……」

みほ「ずいぶん大きな艦ですね」

エリカ「サンダースや黒森峰の艦より大きいわ……」

オペレーター「強行着艦を指示しますか?」

善行「いえ、それは危険です。辛抱強く通信を……」

みほ「……!」

舞「みほ?」

みほ「駄目……逃げて!」

善行「!……各機に退避命令を」

パイロット「な、艦砲が……!?クソ!撃ってきやがった!ライダー3がやられた!」

オペレーター「学園艦から幻獣の反応多数!な、何だこれは……!」

舞「まさか……」

みほ「あの学園からペンタの気配を感じます!」

エリカ「そんな!」

厚志「狙いは大洗学園艦か……?」

パイロット「させるか!ライダー1、エンゲージ!」

オペレーター「おい、待て!」

数機の艦載機は砲塔部に向けてミサイル攻撃を行った
しかし、ミサイルを撃ちつくしても巨大な学園艦の砲塔を全て潰すことは出来なかった

みほ「いけない、やられちゃう!」

まほ「航空機は全機退避せよ」

エリカ「隊長!?」

みほたちの目に、空を駆ける巨人が映った
それは費用対効果が見込めず、採用が見送られていた「リテルゴルロケット」を装備した栄光号である
退避して行く航空機と入れ違いに凄まじい速度で学園艦にたどり着き、側面の砲塔を神業の如き射撃で潰していく

しかし、ロケットの燃焼時間が限界に差し掛かろうというところで、ついに砲撃が栄光号を捕らえた

まほ「みほ……!」

水柱を立て海中に沈む栄光号

みほ「え……嘘……」

舞「っ!艦砲射撃だ!攻撃される前に敵の砲塔を全て潰せ!」

善行「各隊は直ちに戦闘準備!」

亜美「西住さん!?しっかりして!西住さん!」

周りの声が聞こえなくなってくる

エリカ「――――!」

舞「――――――!」

みほ「お姉ちゃん!!」

沙織「みぽりん……」

第5戦闘団の面々は格納庫で待機していた
酷く落ち込んだ様子のみほに、仲間たちは声をかけあぐねている

砲塔を潰された敵の学園艦は現在沈黙状態となっており、善行たちは対策を考案中である
撃墜された栄光号は大洗学園の船舶科の生徒たちにより引き上げられ、砲の当たり所が良かったのか、気密状態が良かったのか、まほは奇跡的に生存していた
しかし、現在は昏睡状態にある

隊長たる自分がこんな状態ではいけないと頭では分かっていても、みほは目の前で姉が撃墜されたショックから立ち直れずにいた

舞「これでは戦えんな」

桃「士気を高めないと……だがこれまで散々西住には助けられた。姉があんな事態になって、誰が西住を責められる!私には……掛ける言葉が見つからない……」

杏「河嶋……」

舞「ふむ」

そして舞は、ツカツカと歩を進め隊員たちの前に立つと、奇妙な動きを始めた

舞「♪あああん あん あああんあん あああんあああん あんあんあん」

滝川「ブフォッ」

沙織「舞さん!?」

優花里「どうしたんですか!?」

壬生屋「まさか、幻獣に脳を……」

舞「♪あの子会いたやあの海越えて 頭の灯りは愛の証 燃やして焦がしてゆーらゆら」

気の毒な程に顔を真っ赤にした舞が叫ぶ

舞「さあ皆、私が踊るゆえ歌うが良い!」

厚志「舞、舞 声が裏返ってるよ」

桃「逆効果だぞおい!」

華「あの芝村舞さんが……」

優花里「みんなを盛り上げようと……」

麻子「微妙に間違ってるけどな」

優花里「私も踊ります!」

華「やりましょう!」

沙織「みんな行くよ!」

麻子「仕方あるまい」

続々と舞の周りに人が集まり、踊る人が増えてゆく

原「さあさあ私たちも行きましょう」

森「えぇ!?わ、私もですか?」

新井木「前に踊り方は教わったじゃん!行こ行こ!」

石津「私も……踊るわ……」

ののみ「ののみも踊るー!」

加藤「せやな!踊らにゃソンソンってやつや!」

田代「ば、馬鹿はなせ!畜生覚えてろ!」

みほを除いた大洗と5121の女子全員が踊りだした

若宮「おぉ……原さんが……!」

厚志「あっはっはっは!こりゃ良いや!」

滝川「芝村のこんな姿は二度とお目にかかれねぇな」

茜「こんなときに何をやってるんだ……」

狩谷「こんなとき、だからじゃあないのか?」

みほ「みんな……」

舞はまっすぐみほの目を見据えた

みほ「わたしも!」

ついにみほを含めて踊り出す

♪あした会いましょあの浜近く あなたの灯は恋の光
誘って焦らしてぴっかぴか 誘って焦らしてぴっかぴか
愛してあんあん 泣かさないであんあん
いやよいいわよ あんあんあん

格納庫に少女たちの楽しげな声が響き渡る
そこに割り込むくたびれた男の声

善行「あー、お楽しみのところ申し訳ありませんが」

忍「ぜ、善行さん……」

なぜか後ろのほうでタライが落ちる音が聞こえた

善行「西住さん、もう大丈夫ですか?」

みほ「はい、大丈夫です。お姉ちゃんも、きっとすぐ元気になります!だから私はみんなを守るために戦います」

善行「大変結構。安心しましたよ。それでは作戦を説明します」

背後でくねくねしていた岩田に突っ込むものは最後まで現れなかった

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     へi!i!、i!i!i!i!i!ト     || |: : : : : : : :: ミ: /: : : : : : : : : //
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          / レ|     レ弋 | 入/_、)

    _、ー ¨  /      /  丿| ゝ__)
  ー"||    /⌒⌒\ /    ( | ゝ-、)_
       ¨ ~""''' ‐- /__    | レー/ / \ー

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|  園 百翼長 !
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||  はいここでいったん休憩!
||  もうすぐクライマックスよ!
||  楽しみにしててね!

更新お疲れ様です! ずっと続きを待っていて楽しみにしていました!

                          _,....,.ィ:─┐ ___,___
                 __,....__,............,,_1、  、Y|!,ノ「´  {.! ヽ
  ,;t--:::-t‐‐ヽ ,... -ェ,. =、',´,;',三ミ、彡三ミ、`ヾ、 .{::レイ、},  '!l  |
  }" ヽ、_ヾ_|、y'::|  .| !  |彡',: '彡ミ、彡三`ミミヽ|;;f>A‐‐'廿''''|
  ,|;;;;∠ニ;;;;;;;Yヽ、!::::::::|:l::::::{巛彡 三ミ'、彡三、ミ`ミヽ、/l、'!  !|  !
  1...ナ7ニコ;;/ァ'!ノノ、-‐++‐‐!;〆''´: ; : : : : : : : : : : ; :ミヾ《<}.....j !.....}_
 .ノ;;;;;《;;;::::V!」'∠ノ'!:::::::|:|::ノr: :f:/:i':; k : :ハヾ、: :i,:ォ:、'i!ヾミV'.. .// ノ .:7

 .ヽ、::::'、、/'〉巛、\!::...j,l/;;リ: ハ/:j f :|!:; :リ:ハ: !、:|j:|'、;:ハj、}ヽ;;//;;/`‐《_
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'‐‐-、j/、_/   〉t-、」/、_、{.'レ´,;;;jii-、ヽ'~'i 'イ||{´}ヽ.j/ノリソ:i: ;>、ィ'´
    }フ   .//   |~'、  ,イ||||}x|}      {;;;;;;ソ .{ノ::リ::r:/'リY:'!
     {'====//_、_ ,|!;;;ゝ、 ゝ;;;;;ノ'       ̄´::: j!バノ;l;/リ';::;;}
    .ゝノハ三ニ`>、ト.、;ヽ,ヽ  .:::::::    ,.`    ,ノ};;:::)、リ;;;;;l/ノ
      ヽハ:::::::;;;;;;;;ノ  `};;:ノ_        .(.ノ   _/ノィン'´ `''‐''´
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                /__`_-_、___  |>ヽ:'´;;;;:::::|、
            _,...-''´!;;;;;;;:;:;:::::>ニ!LY;:;:;:;:;:;:;:;::{:::'''::::7'、

        _,..-‐';;;´;;;;;;;;:::l;;;;;;;:;:;:;:::;:;;;;;;>}_|/;;;<:;:;:::::}_;;:::/ 'l.
       ,r´ `''‐、;;;;;;;;;;;;;;;〉;;;;;;;;;;;;;;:;:;;;;;;ノ!‐ヽ;;、_;;;;;;;;/;;;;`;>  '}
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|  東原百翼長 !
7' ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄
||  再開します!
||  いよいよ決戦なのよ!
||  みんな頑張ってね!

善行「まず最初に例の学園艦の詳細データを皆さんにお渡ししておきましょう」

杏「ヘカトンケイル?」

柚子「これがあの学園艦の名前ですか?」

善行「はい。かつて欧州で運営されていた学園艦のようです。欧州諸国の学園艦のうち、南大西洋を通り南アフリカへ向かった人々は現在でもそこで抵抗を続けています。逆に北極海側からロシア難民を吸収しつつベーリング海を越えるという険しい逃避行を行ったのがヘカトンケイル学園です」

エルヴィン「想像を絶する困難だったのだろうな……」

善行「そして苦難を乗り越えようやく日本にたどり着きましたが、もはや日本にも超巨大学園艦を維持する財力も無く受け入れを拒否され、太平洋を渡りアメリカを目指すという絶望的な選択をしました。記録ではここで消息が途絶えています」

梓「大西洋を西に進んでアメリカを目指したほうが近かったんじゃないですか?」

カエサル「幻獣の侵攻はユーラシア大陸の西から始まったからな。徐々に追い詰められ核を使ってまで撤退する羽目になるとは思わなかったんだろう」

左衛門佐「しかしこんなに接近するまで察知出来なかったとは……」

優花里「芝村殿、以前軍のデータベースに侵入し衛星写真を見たと言っていましたが、あれは使えなかったのですか?」

善行「そんな危険なことをしていたのですか……」

舞「黒き月の出現以降、宇宙開拓は停滞している。衛星といっても常時浮いているわけではなく、あれは適宜衛星軌道に打ち上げているロケットからの画像だ。それと秋山、今後不用意にこやつに私の悪行をばらしてくれるな」

優花里「は、はい!了解しました!」

華「ということは、常に日本周辺の情報を知ることは出来ないと言うことですね」

麻子「宇宙は幻獣の支配下という話も聞いたことがあるな」

善行「まあそのくらいで。さてヘカトンケイルの対処ですが、分析の結果幻獣に寄生されていることが判明しました」

桃「馬鹿な……!」

おりょう「学園艦が寄生されるとは聞いたことが無いぜよ」

華「ゾンビヘリやワイトのようなものでしょうか?」

善行「そうですね、ただしあれほどのサイズですから隅々までとはいかないようです。主要機関や各種武装などに隔たっていると見ていいでしょう」

瀬戸口「そしてその隙間を縫うように小型・中型幻獣が艦の内外にいるようだ」

壬生屋「もしかして、潰した艦砲が再生するようなことも……」

善行「ええ、その通りです。ゆっくりですが、艦載機と栄光号が攻撃した部分が再生されていることが確認されました」

滝川「マジかよ……」

みほ「ヘカトンケイルを外から破壊することはほぼ不可能ということですね?つまり……」

善行「大洗学園艦を、破壊した砲塔の側につけ直接乗り込み、主要機関に巣くっている幻獣を撃破します」

みどり子「とんでもない作戦ね」

典子「でも他に有効な手は無いんでしょ?」

沙織「みぽりんのお姉ちゃんが作ってくれた時間と突破口だもん、やるしかないよ!」

桂利奈「よーしやったるぞー!」

暗い海に浮かぶ巨大な学園艦・ヘカトンケイル
その艦に苛烈な砲撃を加えながら大洗学園艦は接近していく

沙織「ち、近くで見るととんでもない大きさだね……」

麻子「だが艦の制御はうちの乗組員たちのほうがずっと上だ。私の友人もいるしな」

優花里「その通りです!」

みほ「でも、近づくとどんどん憎悪が増しているような気がする……やっぱり」

舞「ペンタがいるのはほぼ確実と見てよいな?」

厚志「……ねえ、撤退戦以降幻獣の戦い方が微妙に変わったけどさ、もしかして」

華「あの艦から指示を出していた可能性があると?」

舞「ふむ、まあ頭の片隅には置いておこう。さて時間だ!」

みほ「パンツァー・フォー!」

艦同士が最接近したところでタラップが架けられ、各車輌は一斉に渡っていく
そこで一部の車輌は別行動に移る

あや「うわぁ気持ち悪い!」

優季「なにこれ~」

あゆみ「寄生された部分ってこんな気味悪いんだ……」

舞「あまり直視するでない。精神に以上をきたすこともあるぞ」

善行「あらかじめ決めておいた自衛軍と黒森峰の車両は、砲塔の再生を阻止するため攻撃してください」

亜美「そっちを攻撃し続ければ、他の箇所が損傷したときの再生も遅らせることが出来るって訳ね!」

瀬戸口「その通り。ん……早速幻獣どもがお出迎えだ。ゾンビヘリが突出してくるぞ」

滝川「こちらトラねこ、攻撃するぜ!」

二番機の92mmライフルが火を噴く
見事命中し、ヘリは回転しながら墜落する

華「流石ですね!」

みほ「引き返していく……?」

舞「様子見ということか?みほよ、やはり一筋縄ではいかん相手かも知れぬ」

みほ「はい。気を引き締めていきましょう」

あや「あのぉ、この辺にも内部への入り口はありますけど、ここで歩兵さんたちを下ろしちゃ駄目なんですかぁ?」

瀬戸口「それはだな、艦内部は各ブロックにユニット化されていて移動手段が徒歩しか無くなってしまう。幻獣の襲撃を何度もかわしながら何キロも歩いたら疲れちゃうだろう?」

あゆみ「ああ~そっかぁー!」

優季「瀬戸口先輩、あったま良い~!」

壬生屋「瀬戸口さん……!」

瀬戸口「下級生に優しく説明しただけだって、そんな恨めしい声出さんでも」

舞「たわけめ」

みほ「あはは……」

広大な甲板の平野部を進む戦闘団
やがてオペレーターからの報告が上がる

ののみ「敵反応多数!森や山からいっぱい来るの!」

瀬戸口「スキュラも10体以上いるぞ、気をつけろ!」

みほ「もくもく作戦は?」

舞「地形図は渡されているが、慣れない地理にこの暗闇だ。レーザーは減衰されるが下手をすればこちらが不利になるぞ」

エリカ「こちら黒森峰、ここは私たちに任せてもらえないかしら」

みほ「エリカさん?」

エリカ「こういう地形での戦闘はあなた達より私たちのほうが手馴れているわ。ここで時間を浪費するより、さっさと歩兵を運ぶべきよ」

みほ「でも……」

舞「逸見よ、そなたも西住流の薫陶を受け継いでいるのだな?ならば全員生かして見せよ」

エリカ「ふん、西住流にそんな文言は無いけど……やってやろうじゃない。阿蘇での汚名は返上させてもらうわよ!」

滝川「俺もここに残るぜ!スキュラ狩りには役に立てるだろ」

みほ「……わかりました。よろしくお願いします!」

平野部の幻獣はエリカたちと滝川に任せ、先を急ぐ
もうすぐ市街地というところで、みほたちは予想外の敵に阻まれた

みほ「あれは……」

優花里「ティーガー戦車!?いや、それだけじゃない、もっとたくさん……」

舞「戦車道で使われていた戦車のようだな」

ねこにゃー「もしかして、あれも幻獣に寄生されて……」

桃「っ!攻撃してくるぞ!」

杏「西住ちゃん!」

みほ「みなさん落ち着いて!寄生された兵器は、中堅程度の技量しかないはずです。性能ではこちらが上、技量はたくさん訓練した皆の方がずっと上です!冷静に履帯や機関部を狙ってください!」

優花里「Ⅳ号もいますね……」

みほ「……」

各車は敵の射線から上手く車体をずらし、遮蔽物を利用し、見事に砲撃を命中させていく
これまでの訓練や実戦を活かした動きが出来ていた

あけび「命中!」

妙子「これで4輌撃破です!」

典子「よし良いぞ!次だ!」

忍「了解!」

カエサル「恐るるに足らず!」

おりょう「他チームとの連携も忘れたらいかんぜよ」

左衛門佐「ぬえさんチームの援護に行こう」

エルヴィン「あれはⅢ突か……」

優花里「落ち着いて、慌てなくてもいいからね」

あや「は、はい、秋山先輩!」

麻子「皆、腕を上げたな」

華「みほさんの適切な指導のおかげですよ」

みほは撃破したⅣ号戦車を見つめた
きっとこの学園艦でも自分たちと同じ年頃の少女たちがこの戦車に乗り込み戦車道に打ち込んだのだろうと

そう思うとたまらなく悲しかった

みほ「ごめんね……」

そうつぶやき、前を向いた
しかし……

みどり子「た、隊長!撃破した戦車が動き出したわ!」

みほ「え……!」

桃「馬鹿な!確かに履帯や機関部を破壊したはずだ!」

みどり子「でも実際動いてるのよ!」

舞「みほよ、戦車道で使われる戦車の兵員室は、特殊なカーボンで保護されているのであったな?」

みほ「は、はい。まさかそこに寄生している幻獣の本体が?」

舞「おそらくな。それを潰さない限り何度でも再生するのだろう。まさしくゾンビ戦車だな」

優花里「し、しかしあのカーボン装甲は120mmを超える口径の砲撃にも耐えます!我々の攻撃力では抜けません!」

かつて自分たちが乗り、戦力不足として乗り換えた車輌たちは
思わぬ強敵としてみほたちの前に立ちはだかることになった

麻子「いくら旧式車輌とは言え、あれだけの数に攻撃されれば避け切れんぞ」

優花里「この数……サンダースや黒森峰の保有台数よりもずっと多いですよ」

エルヴィン「チッ、プラウダや聖グロリアーナ、サンダースが近くにいてくれたら……」

おりょう「今回は航空支援も受けられないからきついぜよ」

舞「あの戦車に有効な攻撃力を持つのは、超硬度大太刀か、我らのミサイルだな……」

壬生屋「芝村さん」

舞「うむ、そうだな……厚志、行けるな?」

厚志「任せてよ」

みほ「舞さん?」

舞「ここは我らみけねこチームとくろねこに任せてもらおう」

優花里「軽く100輌以上はいますよ!?たった二機で……」

舞「不安か?」

みほ「……いえ、信じます。ご無事で!」

舞「そちらもな」

壬生屋「皆さん、お行になってください!」

戦車隊は全速力で市街地へ向かっていった

厚志「僕はこの大量の戦車よりも西住さんと戦う方がずっとやり辛いかな」

舞「ふ、そうだな。ゾンビ戦車共よ、精々厚志を楽しませるが良いぞ」

壬生屋「参ります!」

みほ「市街地へ入ります。道幅が狭くなるため、レーザーやゾンビヘリの斉射に注意してください」

沙織「私たちは優先的にそっちを攻撃するよ!」

杏「内部への進入口はこの先だったよね?」

みほ「はい。ペンタの気配も強くなってきました」

ののみ「ののみも感じるの!」

善行「西住さんと東原さんがアンテナ役になってくれていますね。石津さんの姿が見えないようですが」

加藤「萌りんなら、救護が必要になったときの為に準備しとく言うてたで?」

善行「ふむ、そうですか」

みほ「ワイトが多数出現!みんな気をつけて……くっ!」

市街地に出現したワイトは、以前見かけた学兵に寄生したものだけでなく、この街で暮らしていたであろう老若男女の住人たちであった

この街で起きた悲劇が脳裏に浮かび、みほは思わず涙ぐむ
しかし、すぐにそれを拭い前を向いた

みほ(今は泣いてる時じゃない!)

みほ「前方の幻獣一団に火力を集中、撃て!」

カエサル「よし!突破口が開いた!」

みほ「あそこで歩兵を降ろします!各員援護をしつつ随時降車してください!」

若宮「俺たちの出番だな!気合を入れて……ん!石津!?お前なぜここにいる!」

みほ「石津さん!?」

滝川「なんだって!?」

石津「私がいれば……精神汚染は防げるわ……」

若宮「いやしかしだな……」

来須「時間が無い」

善行「石津さん、近頃随伴歩兵の訓練をしていましたが、この為に?」

石津「……あらゆる……状況のためよ……」

ねこにゃー「ボクたちが運んだ兵の中に紛れてたんだね……」

滝川「ちょっと待てよ!確かに俺も訓練に付き合ったけど、こんな土壇場でよ!」

石津「信じて」

滝川「うぐっ……」

善行「やれやれ、とんだ突撃衛生兵だ。仕方ありません、許可します」

滝川「善行さん!?ちっくしょう、絶対無事に帰って来いよな!」

若宮「むぅ、何があるか分からん、自分の身は自分で守れよ!」

石津「ええ」

みほ「石津さん!……気をつけてくださいね」

石津「……ありがとう」

             , . : : : : :´ ̄ ̄`: : : .、
          , : ':´: : : : : : : : : : : : : : : : : :`: .、
        /: : : : : : : : : : : : : : : : : : : : : : : : : :\     __
    /: : : : : : : : : : : : : : : : : : : : : : : : : : : \ :\__/: ヽ

    /: : : : : : : : : : : : : : :;i|: : : : : : : : : : : : : : : : ヽ: ヾ、::. : : i
  /::/: : : : : : : : : :|: : : :/ |: : : : : :|: : :|: : : :::. : : : :i :| |i::::::. : :i
.  i: i: : : : : : : ::| : ::|::. : :i |: /: .::: :|:: .:i|:: : :::|::. : : : :i| |::ii:::::: : ::i
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|  大野百翼長 !
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||  今回はここまで~
||  次回をすぐに書き込むためには……
||  「まず服を脱ぎます」……?

>>53
お待たせして大変申し訳ないです
あまつさえ落としてしまったので見捨てられてもおかしくありませんでしたが、楽しみにしていただいている以上最後までやりたいと思います

>>54でした

乙です。

復活してくれてありがとう
待ってた

                  / /: : : : :/: : : :._/ . : :|li: |i :|: : : : : :| : : : \
                    |i:.| l:斗r{: : : : 7ニ弍|リ 八:|: : : : : :| : : : : |
                 八乂: jル:厂 ̄`扞=ミ/ /. : 八: : : : : : : : : :│
                       ノf扞     :r┘{∨}/. : : : : :./ . : : : : |
                      /.:i化     :ヒシノ ノ. : : : .:.:/|: : : : : :│
             _____/. : :iリ '          . : : : : :/. :│: : : :\|     __
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        / . : /. : : : : /_,/ヽ  _,ノ   /. : : :./|: : :|: : : : / ̄ ̄ ̄\____: ̄\⌒ヽ
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|  武部百翼長 !
7' ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄
||  再開するよ~!
||  いよいよヘカトンケイル最終決戦!
||  ……こわいよぉ!やだもー!

   /:::∠ニニゝヽ

    |:::::::ノ\|::|::|:::::〉
    |:::|::| ┰ ┰|::| もぐもぐ
    |:::l:::> )~ ノ:::|  ┌ュ─
    |:::|:::/つ-E[]:::| _ノoo]_
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|  冷泉百翼長 !
7' ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄
||  しっかりしろ

||  
||  

亜美「歩兵部隊が帰ってこれるよう私たちはここを死守するわ!」

みほ「狼さんチームが帰還するまで、こいぬさんチームの負担を軽減します!各車分散して敵の目を引き付けてください!相手の目を回してやりましょう!ぐるぐる作戦です!」

典子「みんなー、敵を挑発するよー!」

妙子・忍・あけび「はい!!」

梓「西住先輩の動きと映画をヒントに編み出した戦術を実行するときが来たよ!名づけて!」

梓・あゆみ・桂利奈「大絢爛舞踏!」

カエサル「ハッハッハ、また大仰な名前だ!」

おりょう「だが、悪くないきに」

左衛門佐「我々も参戦するぞ!」

沙織「リスさんよりウサギさんチーム、次の角を右折してください。こちらが上手く援護できる形になります」

梓「了解!このモコスじゃ……ううん、モコスじゃなくても冷泉先輩のような動きは無理。でも仲間に協力してもらえれば!あゆみちゃん、前方のナーガを挑発!」

あゆみ「発射!怒ってる怒ってる!」

優季「桂利奈ちゃん、次右折ね」

桂利奈「あい!」

優季「その次も次も次も右折!」

桂利奈「あいあいあ~い!」

河嶋「あの一年たちが、良い動きをしてくれる!」

柚子「負けてらんないよ桃ちゃん!」

杏「こっちも撃ちまくるよー!」

モコスが引き付けた敵に次々と砲撃を加え撃破していく
さらに狭い路地で身動きが取り辛いミノタウロスの背後に回りこんだ
中型の主力といえど、背面は装甲が薄い

梓「よし、チャンス!」

あゆみ「120mmの威力、思い知れー!」

ののみ「ミノタウロス撃破!」

桂利奈「やったあ!」

瀬戸口「敵が密集し始めてきたぞ!」

みほ「侵入口の自衛軍から引き離します。各車散開してください!」

みほの号令でそれぞれ散らばり、自衛軍への攻撃が弱まる
しかしそれは同時に自分たちの危険が増すことにもなる

瀬戸口「この反応は……G・タランテラが来るぞ!気をつけろ!」

みほ「!……私たちが引き受けましょう!」

麻子「了解」

華「分かりました!」

市街地での戦闘が苛烈さを増していた頃、平野部でも同時に激しい戦闘が行われていた

エリカ「くっ!キリが無いわね!」

滝川「落としても落としても沸いて出てきやがる!」

原「こちらシャムネコチーム、タラップ付近にも抜けてきた幻獣がちょくちょく来るようになってきたわ。残った戦車隊が応戦してくれてるけど……そっちは大丈夫?」

滝川「すんません、なるべく撃ち洩らさないようにしてるけど、あまり余裕は無いっす!」

エリカ「いざとなったらタラップを降ろすことも考えるべきかしらね。学園艦内部に侵入されるわけにはいかないもの」

原「ダメよ、あなたたちをちゃんと迎えるまでは」

エリカ「もしもの話よ」

滝川「待て、なんだありゃ!?」

エリカ「あれは……オウルベアー!?そんな、マリオネット型だなんて!」

原「何ですって!?」

マリオネット型……大型幻獣のことである
数千対の中型幻獣に対し1対の割合で出現すると言われている
そのサイズと戦闘力により、通常戦力では歯が立たないとまで言われる危険な幻獣である

エリカ「いえ、それにしてはサイズが小さい……?この学園艦特有のタイプなの……?」

滝川「どちらにしろマズい!レーザーが来るぞ!」

それまで巧みな戦術で被害を抑えていた黒森峰の戦車隊であったが、ついに一条のレーザーが一輌の戦車の履帯を捉えた
擱座した車輌を見たエリカは青ざめて叫ぶ

エリカ「脱出しなさい!急いで!」

滝川「俺が盾になる!さっさと逃げろ!」

脱出した黒森峰戦車兵はウォードレスの筋力補正を受け一目散に逃げ去っていく
だが、その直後に二番機が膝をついた

滝川「やっべ、足をやられた、お前らも撤退しろ!」

エリカ「はぁ!?馬鹿言わないで!」

滝川「前も西住流に逃げるという道は~とか言ってたよな?でも今は逃げとけって」

エリカ「あんたはどうするのよ!?」

滝川「へっへっへ、さてどうすっかな……」

エリカ「……私たちがアレを二番機の射界まで引っ張り出すわ。あんたはそれを狙撃して」

滝川「おい、それは」

エリカ「私たちを誰だと思ってるの?名門・黒森峰女学院よ?あんたたちに出来て私たちに出来ないはずがないじゃない!……あんたの腕を信用して言ってるんだからね。止まって撃つほうがあんたもやりやすいでしょ?」

滝川「……へっ、わーったよ!やってやるぜ!」

そういうと滝川は片膝立ちの姿勢に二番機を固定し、照準を定める

エリカ「各員、フォーメーションD!敵を引き付けるわよ!……私たちを死なせないでよね!」

滝川「プレッシャー掛けてくれるぜ。誰も死なせねぇ、死なせねぇぞ!」

ヘカトンケイル内部に侵入した歩兵部隊は、大量の小型幻獣に苦しめられていた

若宮「これほどとはな……ゴブ共のほかにもコボルト、スケルトン、レッサーデーモン、バジリスクまで居やがる」

来須「ワイトはほとんど居ないようだな」

若宮「内部の人間は五体満足ではいられなかったんだろう。変わりにヒトウバンはウヨウヨ居る。吐き気がするな」

衛生兵用ウォードレス・テンダーフォックスに身を包んだ石津は負傷兵の手当てをしていた

石津「これで……大丈夫……」

若宮「少し驚いたぞ。戦闘もこなしてる上に、怪我をした兵を戦闘可能なレベルまで復帰させるとはな」

石津「西住さんが……みんなを守ろうとしていた……暖かい思いに触れたの……私は、それに答えたかった……」

若宮「ふうむ、そうだな!」

来須「敵だ」

若宮のウォードレス・可憐が持つ12.7mmヘビーマシンガンを軸に弾幕を張り、幻獣を蹴散らしながら少しずつ下層へ進んで行く
そして何層が下ったとき、周囲の風景が一変した

若宮「これは……通路の上下左右全て幻獣の寄生体か。こんなところにずっといたら気が狂いそうになるな」

来須「!」

石津「強い……プレッシャー……この先から感じる」

そのとき、若宮や来須を含む全歩兵に頭痛が走った
幻獣の思念波である

若宮「ぐっ!精神汚染か!?」

石津「させない!」

石津が前に出る
歩兵たちに向かっていた思念波は消え去った
しかし

石津「う……」

若宮「石津!?しっかりしろ!狼からひげねこ!石津が倒れた!」

来須「来るぞ」

耳障りな音と共に、士魂号一番機の片方の超硬度大太刀の刀身が宙を舞った

壬生屋「くっ!まだやれます!」

壬生屋の剣士としての技量は人並み外れたものがある
が、5121小隊の切り込み隊長たらしめている要因は、仲間と共に考案し極限にまで効率化した動きにある

最小限の動きで敵を制し、無駄の無い流れで場をも制する
それが乱れると、高知での戦いのときのように大きなダメージを負いかねない

壬生屋「やはり、硬い!」

幻獣相手なら、いやカーボンコーティングの施されていない車輌であれば、いとも容易く撃破できたであろうが、今は硬い岩を刀で何度も斬りつけているような状況であった
それでも既に30輌以上のゾンビ戦車を斬り伏せているのは僥倖と言えた

舞「ミサイル、残弾なし」

厚志「これからどうしようか?パンチやキックじゃ駄目?」

舞「こちらの装甲のほうが持たぬであろうな」

厚志「うーん、20mmのジャイアントアサルトじゃ元々有効打にならないし、海に落っことすにしても数が多すぎるね」

舞「補給に戻るわけにも行かぬな、こいつらを連れては行けぬ」

厚志「ちょっと困ったかな」

壬生屋「芝村さん、速水さん、ここはわたくしが引き受けます。お二人はミサイルの補給に戻ってください」

舞「ならぬ。流石に無謀すぎる」

厚志「瀬戸口さんに怒られちゃうよ」

壬生屋「しかしこのままでは……」

厚志「あ……舞、あれあれ。肩のところ」

舞「む、来てくれたか。そなたが居てくれれば百人力だな」

厚志「うん、うん、ありがとう。いやぁ僕たちの方こそお礼を言わなくちゃ」

壬生屋「あの、お二人ともどなたとお話して……」

舞「なに、そなたも良く知るものだ」

壬生屋「え?」

厚志「とばすよ、舞」

舞「存分に駆けるがよい。攻撃は私に任せておけ」

猛然と駆け出した三番機
腕部から青い光が輝き、瞬く間に周囲の戦車を駆逐していく

壬生屋「す、凄い……どうやって……」

舞「ふむ、こんなものか」

厚志「そうだね、もうこっちは大丈夫。西住さんのところに行ってあげてくれるかな?」

舞「壬生屋、我らは引き返して黒森峰と二番機の援護に向かうぞ」

壬生屋「は、はい!」

市街地ではG・タランテラが建物を破壊しながらあんこうチームを攻撃していた
しかしその強力なレーザーは士魂号Lを捉えられていない

杏「あいつ!街を滅茶苦茶にしやがってー!」

桃「会長……」

柚子「でも、建物に足を取られて上手く動けないみたい」

みほは冷静に指示を送る

みほ「地上で見ると巨大ですが、スキュラとサイズは変わりません。射程が短くなり、動きも緩慢になったものと考え、落ち着いて死角に回りましょう」

麻子「分かった」

みほ「麻子さん、ナイスです!射程に……入った!今です!」

華「発射!」

みほ「よし、効いてる!もう二、三発撃ち込んで……」

瀬戸口「まずいな、市街地の幻獣の反応がどんどん増えてきている。黒森峰からの報告では小型のオウルベアーまで現れたそうだ」

みほ「!……わかりました。何とかしてみます」

桃「何とかって、どうする気だ?」

みほ「基本的な方針は変わりません。自衛軍はあの場所を動けないので私たちが引っ掻き回すしか……出来るだけあんこうが敵を引き付けますが、皆さんにも無理してもらうことに……」

桃「今更それが何だ!私たちをここまで引っ張ってきてくれたのはお前だろう!」

杏「河嶋の言うとおりだ。もっと私たちを頼ってくれて良いんだよ」

優花里「今こそ、西住殿に恩を返すときです!」

エルヴィン「うむ。我々の意地を見せようではないか」

カエサル「前の戦いでは隊長に頼りきりだったからな」

みほ「みんな……ありがとう、よろしくお願いします!」

あんこうチームの士魂号LがG・タランテラを撃破したことを皮切りに、各チームは各々の判断で動きだした
一番多くの敵を引き付けているあんこうチームの負担を軽くするため、そして何より自分たちの力でみほの為になりたかったからである

ののみ「ウサギさんチーム!そっちにスキュラが向かってるの!」

桂里奈「嘘!どうしよう!?」

梓「スキュラ、西住隊長のところに絶対向かわせちゃいけない、ここでやっつけよう!」

あゆみ「わかった!120mmなら十分撃破できるし!」

桂「でもどうやって!?」

梓「主レーザーは長射程だけど射角が狭くて、副砲はその逆で短くて広い……やっぱり空中要塞って言われるだけあって難しいな」

桂里奈「お腹の部分が弱点なんでしょ?」

あゆみ「でもモコスだとほとんど仰角が取れないから遠くから撃たないとあたらないよ?」

梓「長距離での撃ち合いは分が悪すぎる……!」

スキュラに捕捉されないよう動きながら打開策を探るウサギさんチーム
放たれたレーザーが周囲の建物を粉砕する

梓「あれだ!桂里奈ちゃん!あの地点にスキュラを誘い込んで!」

桂里奈「あい!」

梓「よし、反転!崩れた瓦礫を盾にしながらスキュラの下に!」

あゆみ「一年ナメんな!」

桂里奈「ナメんなー!」

あえて真正面からスキュラに向かって進むモコス
蛇行し、瓦礫を利用しながら進むモコスを、動きの遅いスキュラは捉えきれない

桂里奈「後ろに回りこんだよ!」

梓「相手は旋回に時間がかかる!あの瓦礫に乗り上げて!時間との勝負!」

スキュラがこちらを向こうとしている間に、モコスは狭い仰角を稼ぐため瓦礫に乗り上げる
身を乗り出しているためもはやレーザーを防ぐものはなく、先にこちらを向かれたら一巻の終わりである

梓「あゆみちゃん!」

あゆみ「射程に……入った!」

梓「撃て!」

モコスから放たれた砲弾がスキュラの装甲の薄い底面部に突き刺さる
内部に軽い気体が詰まっているスキュラはぐずぐずと火を吹き上げ、やがて爆発した

桂里奈「やった!」

あゆみ「凄い!私たちだけで倒したよ!」

梓「油断しちゃダメ!まだ敵が来るよ!」

ののみ「ウサギさんチーム、スキュラ撃破!」

優季「おお、やるぅ」

沙織「負けてられないね!」

左衛門佐「小型幻獣が大量発生!」

カエサル「全部相手していたらキリがない!中型を狙え!」

おりょう「しかしこう多いと動きづらいぜよ」

優花里「沙織殿、99式ならあの一帯の小型幻獣を殲滅できるのでは?」

エルヴィン「以前整備班がなにやら持ってきてたようだが」

沙織「うん、とっておきだって言われて……ちょっと待って、榴弾の交換するから!」

あや「先輩!なんか怪獣がいます!」

優花里「か、怪獣!?」

エルヴィン「あれがオウルベアーか?」

カエサル「口が開いた!?ぬえさんチームが狙われているぞ!逃げろ!」

優花里「掴まっていてください!」

オウルベアーの口内にある目からレーザーが発射され、ぬえさんチームのすぐ横を掠めていく
さらに頭部の目からも大口径レーザー砲が発射される

あや「ちょっと!あのレーザー超恐いんだけど!?」

エルヴィン「これは強烈だな……!」

沙織「榴弾を発射します!注意してください!」

99式から榴弾が放たれる
それは少数だけ生産・配備され、5121整備班がくすねてきた榴弾用多目的弾である
子弾は形成炸薬であり範囲も広く、小・中型幻獣には極めて有効な攻撃力を持つ

ののみ「命中!小型幻獣多数撃破!」

エルヴィン「オウルベアーは!?」

ののみ「……まだいるの!」

おりょう「しぶといぜよ」

カエサル「むっ!」

左衛門佐「なんだあの光は?」

瀬戸口「腹部にある目から光学・物理障壁が張られている!背後を狙え!」

ののみ「左右からミノタウロス、ゴルゴーン接近!」

エルヴィン「こいつらを倒さなければ……」

カエサル「背後に回りこめん!」

沙織「嘘!?ど、どうしよう……ぼやぼやしてたらカバさんチームとぬえさんチームがレーザーにやられちゃう!」

そのとき、砲手席の紗希が振り向き口を開いた

紗希「レーザー……撃つところ……」

沙織「しゃべった!?」

優季「あの口が開いたところに榴弾を撃ち込めばいいのね?」

沙織「流した!?」

優季の質問にこくりと頷く紗希
長距離からの精密射撃、それも口が開いた瞬間のシビアなタイミングのため、砲手の紗希にはかなりの集中力が要される

優季「車体調整よし」

沙織「照準……よし、紗希ちゃん、お願い!」

紗希「……」

そして放たれた榴弾はオウルベアーの防御されてない口に吸い込まれ、爆発
頭部を失ったオウルベアーは倒れ伏した

あや「凄ぉい!紗希ちゃん天才!」

沙織「これで他のチームの援護も楽に……!」

ねこにゃー「危ない!」

どこからか飛んできた生体砲弾からリスさんチームをかばい、アリクイさんチームの装甲車が被弾した

沙織「あ、アリクイさんチームが!」

みほ「どうしました!?」

沙織「私たちを庇って……」

みほ「! アリクイさんチーム、無事ですか?怪我は!?」

ねこにゃー「……大丈夫!」

ぴよたん「大丈夫だっちゃ!」

ももがー「大丈夫なり!」

沙織「良かった……大丈夫みたいね」

杏「小山!アリクイさんチームを助けに行くぞ」

柚子「はい!」

優季「先輩!こっちにも幻獣が来てます~」

沙織「カメさんチームが来るまで何とか防ごう!」

みどり子「ゴモヨ!パゾ美!こっちに敵の注意を引き付けるわ!」

モヨ子「わ、わかったよそど子!」

望美「こっちに来るよ」

みどり子「87式は威力偵察のための車輌よ!ちょっとやそっとじゃやられないわ!」

モヨ子「きゃああ!レーザーや強酸には耐えられないよ!」

みどり子「くっ!デカいからっていい気にならないでよ!こうしてやる!」

25mm機関砲が火を噴く
口径は人型戦車のジャイアントアサルトよりも大きく、中型幻獣にも十分有効だ
しかし、正面装甲に当たり倒しきることは出来ない

望美「と、とまらない!」

杏「こちらカメさんチーム、アリクイさんチームを拾ったよ!」

みどり子「了解!ゴモヨ!あっちの角まで全速力!」

最高速度100km/hを誇る装輪装甲車である87式は一目散に退避
リスさんチームとカメさんチームも射撃を加えながら後退していく

ねこにゃー「私たちも援護を!」

収容されたアリクイさんチームの隊員も、後部兵員室の銃眼から射撃し、小型幻獣を排除する

優花里「後ろに回りこみました!」

エルヴィン「よし、撃てー!」

アリクイさんチームに気を取られすぎた幻獣は挟み撃ちにされる形となり、かなりの数が撃破された

瀬戸口「装甲が厚いやつが多い代わりに、グレーター・デーモンやアンフィスバエナのような足の速い幻獣が少ないな」

善行「G・タランテラもそうですが、もしかしたら幻獣が日本に上陸する前後のタイプが多いのかもしれません」

みほ「あんこうよりひげねこさんチームへ、こちらは大多数の幻獣を撃破できました。自衛軍や歩兵部隊の方はどうなっていますか?」

沙織「うわ、みぽりんたちあれだけの数の幻獣を……」

優花里「五十鈴殿と冷泉殿も覚醒状態ですね」

亜美「こっちは大した損害はないわ。でもそろそろ限界。歩兵部隊は……」

若宮「狼からひげねこ!石津が倒れた!」

善行「な……!」

みほ「石津さんが!?」

その直後、無線からレーザー発射音と爆発音が響いた

善行「若宮君、応答してください。若宮君!」

来須「……俺たちは無事だ。だがすまん、ペンタを取り逃がした」

瀬戸口「高エネルギー反応!何だこれは!?」

亜美「なにあれ?」

自衛軍が守備をしている地点から離れた場所に光の柱が出現
程なく甲板に開いた大穴から何かが飛び出してくる

みほ「レーザー?……これは……!」

みほの頭に痛みが走る
深い怨嗟のような叫びが響いた

みほ「あれが……この学園艦を支配していたペンタ!」

亜美「攻撃を……くっ、射程外!」

みほ「麻子さん、追ってください!」

麻子「了解」

善行「あれを逃してはいけません!あんこうチームが一番目標に近い。西住さん、どうか」

みほ「はい!必ず!」

エルヴィン「我々も追うぞ!」

優花里「はい!」

沙織「私たちも!」

優季「この車輌じゃ間に合いませんよ~」

あや「それでも!」

カエサル「我々は自衛軍の援護に!」

桃「了解だ!」

追いながら華は何度も射撃を加えるものの、ペンタは右往左往しながら回避する上に、崩れた建物を迂回しながらの攻撃は当たらない
ペンタは学園艦外縁部を越え海上まで離脱していく

あんこうチームの士魂号Lは市街地を抜け甲板の端まで到達、遮蔽物の無くなった今が最大の、そして最後のチャンスであった
しかし

みほ「朝日が……!」

華「逆光で見えない!」

照準が定まらず焦るみほと華
そのとき、どこからともなく声が聞こえてくる

みほ「歌……?」

     絶望と悲しみの海から、それは生まれ出る
     地に希望を、天に夢を取り戻すために生まれ出る

それは、今なお戦い続ける仲間たちの声
エリカたち黒森峰や5121の隊員たち、大洗の仲間たちの声

「そなたは、歌は歌えるか?」

みほ「え?だ、誰?」

     闇を払う銀の剣を持つ少年
     それは子供のころに聞いた話、誰もが笑うおとぎ話

「題は…がんぱれーど、なにがしだ。ほれ、銀の剣という」

ふと横を見ると、砲塔の端にブータがちょこんと座っていた
長いひげが、塩風に揺れた

     でも私は笑わない 私は信じられる
     あなたの横顔を見ているから

ブータ「わしはな、その歌が好きだよ。その歌を頭から信じて歌うひとが好きだ。その歌を好ましく思うわしが好きだ」

みほ「ブータ……君なの?」

     はるかなる未来へ階段を駆け上がる
     あなたの瞳を知っている

ブータ「いかにも。我はブータニアス・ヌマ・ブフリコラ。長靴の国より来る客人神。猫神族の英雄にして、最後の戦神。そして、そなたらの友だ」

みほ「猫神族の……英雄……」

     今なら私は信じられる あなたの作る未来が見える
     あなたの差し出す手を取って

ブータ「…不思議そうな顔をするな、軍神の名を告ぐ者よ。あしきゆめと戦う者。人類の守護者。我と我らは戦友を歓迎する。絢爛舞踏よ」

みほ「絢爛、舞踏?」

     私も一緒にかけあがろう
     幾千万の私とあなたで、あの運命に打ち勝とう

ブータ「友よ。いや、今や戦友となった者よ。我はそなたに力を貸そう。あしきゆめの、その暗い想念を探すのだ」

みほ「これは……この青い光は……?」

     はるかなる未来への階段を駆け上がろう
     私は今 一人じゃない

ブータ「聞こえるか、戦友たちの声が。人々と、神々と、そして散って行った者たちが、今そなたと共にある」

みほ「うん。聞こえるよ、みんなの声。それに……」

     全軍抜刀 全軍突撃
     未来のために マーチを歌おう
     ガンパレード・マーチ ガンバレード・マーチ

みほは聞いた
ペンタから流れてくる怨嗟の叫びの、更に深いところからの声を

みほ「助けて……って、言ってた」

麻子「なら救わないとな」

みほ「うん!」

後方から大洗の仲間たちが追いついてくる

優花里「いた!西住殿が……青い光に包まれて……あれは一体?」

沙織「みぽりん、綺麗……」

みほは指示を出す
青い燐光が、ペンタの姿をはっきりと心に映し出す

みほ「華さん、前方、ペンタを照準!」

華「この一撃は、みんなの想いを込めた一撃……」

みほ「……撃て!」

士魂号Lから放たれた砲弾、いや光弾は青い軌跡を描き、ペンタに吸い込まれてい行く
狙い違わず命中、ペンタは消滅した

みほは消滅しつつあるペンタから流れ込む大量の憎しみの声の中に、ありがとう、という小さな声を確かに聞いた

ののみ「あんこうチーム、ペンタ撃破!」

桃「やった……のか?」

柚子「そうだよ桃ちゃん!」

杏「大勝利だ!」

沙織「やったよみぽりん!」

華「やりました!」

優花里「私たち、勝ちました!」

麻子「待て、まだ幻獣は残ってる」

舞「その通りだ、さっさと援護に来るが良い」

厚志「あはは、舞ったらそろそろGに耐え切れなくなってきたね」

舞「余計なことは言うな!」

みほ「は、はい!皆さん行きましょう!」

指揮官を失った幻獣に最早みほたちを食い止める力は無く、甲板上の幻獣はすべて消滅
艦内部に侵入した歩兵たちも無事に戻ってきた
そのころには石津も意識を取り戻していた

すっかり日は上がり、大洗学園艦に帰還する隊員たち
最後に戻ってきたあんこうチームを皆で出迎える

梓「先輩!」

あや「やりましたね!」

優季「凄いです!」

あゆみ「おかえりなさい!」

桂里奈「カッコよかったです!」

原「みんな、おかえり!」

森「これで一安心ですね」

小杉「無事で何よりデス」

カエサル「エクセレント!」

エルヴィン「ヴィットマン級だったな!」

左衛門佐「お見事!」

おりょう「やったぜよ!」

狩谷「冷や冷やさせる」

遠坂「流石大洗ですね」

田辺「み、みんな凄いです!」

みどり子「やるじゃないの!」

中村「よくやったばい!」

岩田「素晴らしい、素晴らしいィィィィーー!」

新井木「凄いなぁ!」

忍「ワールドカップクラスです!」

妙子「凄いアタックでした!」

梓「ナイスクイック!」

田代「良くやったなぁテメェら!」

茜「ふん、まあ当然だな」

ナカジマ「良い走りだねえ!」

あけび「シビれました!」

ツチヤ「ヒャッホオオォォォォウ!!」

皆があんこうチームの元に集まる

みほ「みんな……ありがとう」

沙織「みぽりん降りておいでよ」

みほ「うん……あ、あれ」

優花里「西住殿?」

沙織「どうしたの?」

みほ「力が入らなくて……」

麻子「しっかりしろ隊長」

みほ「あはは……」

舞「そなたは毎回それだな」

厚志「いいじゃない、頑張ってくれたんだもの」

壬生屋「そうですよ」

滝川「俺!俺も今回は頑張ったぜ!」

舞「ふむ、珍しく滝川機が一番損傷しておるな」

滝川「うぐ」

エリカ「彼には助けられたわ。私からも礼を言っておくわ。ありがとう」

滝川「お、おう」

亜美「うん!みんな頑張ったわ!グッジョブ!」

善行「ええ、みなさん良くやってくれました」

瀬戸口「お兄さん褒めてやるぞ!」

ののみ「ののみからも良い子良い子なの!」

加藤「せやなぁ!みんな凄い活躍やったで!」

若宮「原さん!男・若宮、やりました!」

来須は黙って帽子を直した

みほはあんこうのマークがペイントされた士魂号Lを振り返る
砲塔にはブータが乗っている

優花里「あれ、ブータ殿が乗ってます」

沙織「なんで?」

みほ「……ありがとう、ブータ君」

ブータ「ニャーオ」

先ほどの威厳のある声は、もう聞こえなかった

桃「西住!」

生徒会の面々が並んでいる
柚子は目に涙を浮かべている

桃「西住、この度の活躍、感謝の念に耐えない。本当に、本当に……ありが……ふえぇぇぇぇええぇぇん!」

柚子「桃ちゃん泣きすぎ……」

会長「西住ちゃん」

みほ「はい」

杏「これであのヘカトンケイルも、ようやく休めるね」

みほ「はい……」

杏「……私たちの学校、守れたよ!」

みほ「……はい!」

杏はいつかのように、みほに抱きついた

杏「ありがとね……」

みほ「いえ……私の方こそありがとうございました!」

仲間たちは喜びの声を上げ続ける
一年生たちは中型幻獣キラーになるなどとはしゃいでいた

そこに石津がやってきた

みほ「石津さん、もう大丈夫なんですか?」

石津「ええ、一時的なショックだったから……あとでもう一度診てもらうけれど……」

みほ「そうですか、よかった……」

石津「それより、目を覚ましたそうよ」

みほ「え?」

石津「お姉さん」

みほ「!」

舞「行ってくるが良い」

みほ「は、はい!すみません!」

桃はまだ泣き続けていた

みほ「お姉ちゃん」

学園艦の救護室で、まほはベッドから身を起こしていた
頭に包帯を巻いている

みほ「怪我は大丈夫?」

まほ「ああ、頭を打っただけみたいだ。きっとあの機体が守ってくれたんだ」

みほ「栄光号が?」

まほ「うん。強い恨みを持った子だったけど……人を守りたいって気持ちも流れてきたんだ。きっとかつては熊本を……これはあまり言うべきじゃなかったな」

みほ「……」

まほ「……聞いたよ、大洗学園艦を守りきったんだな。よくやったな」

ベッド脇に座ったみほを、まほは強く抱きしめる

まほ「立派な隊長になった」

みほ「そうかな?」

まほ「そうだよ」

エリカ「失礼します、隊ちょ……な、何を」

みほ「あわわ、じゃあまた後で!」

まほ「ああ」

みほ「お姉ちゃん」

まほ「ん?」

みほ「見つけたよ、私の戦車道!」

まほ「……うん」

エリカ「大会のときは、負けないわよ!」

みほ「はい!」

大洗学園艦の左舷公園の端で舞は待っていた
みほは横に並ぶ

学園艦や各車輌の修理、ヘカトンケイル学園艦の後処理などで周囲は慌しく動いており、既に夕方となっていた

みほ「ブータ君が助けてくれたの。凄く渋い声で、古風なしゃべり方だった」

舞「ふむ。奴は我らの友だ。まあ本来戦神は毛がふかふかで、ニャーと鳴くもの」

みほ「そうなの?舞さん、ふかふかの動物好きだもんね」

舞「ゴホンゴホン!……九州奪還は成った。日本から幻獣はほぼ駆逐されたと言っていい」

みほ「はい」

舞「だが、大陸にはいまだ幻獣どもが跋扈し、この国を狙い続けている。ヘカトンケイルのような学園艦も、まだ存在するかも知れぬ」

みほ「……はい」

舞「我らは戦い続ける。我らは弱者と我が国民を守る義務がある。それが我らの約束。」

みほ「舞さんは……強いですね」

舞「……我ら芝村にとり、戦場は故郷のようなものだ。我らは戦いの中で生を受け、戦いの中に死んで帰る。好んではいないが、故郷であるに違いない」

みほ「……」

舞「そなたは、私の隣が似合うと思うぞ。ただの人間より、芝村の友として生きよ」

みほ「それは、速水さんの方がお似合いなんじゃ……」

舞「た、たわけ!ぐぬぬ、言うようになったではないか」

みほ「あはは……でも、わたしはみんなを守るために戦うのもいいけど、戦車道の大会もやりたいな。みんな最初はそのために頑張ってたから……」

舞「そうか……ふむ、そうだな。どうせしばらくは幻獣の侵攻もなりを潜めるであろう。ならば」

みほ「え?」

舞「さっさと大会を開けるよう手を打つとするか。そうだな、我らも尚敬高校代表として参加するか」

みほ「えっ、えっ?」

舞「ついでに厚志のやつも参加させるか。あやつは顔立ちが女々しいゆえ気付かれまい。ん……去年ならともかく今は厳しいか?いや行ける!私がそう決めた!」

みほ「え~!?」

その日、幻獣は日本から姿を消した

日本政府は各地での学兵の死傷率の酷さを訴えた善行を始めとした将兵たちの声をようやく聞き入れ、自衛軍再編の強化に乗り出していく

いまだ人類の脅威が去ったわけではなく、次なる幻獣の侵攻に備える日本であるが、束の間の平和は人々に活気を取り戻させた

その年、例年より少し送れて戦車道の全国大会が開かれた
その中には、初出場の学校が2校登場し、国民を大いに沸かせたという

これにて完結です

途中スレを落とすなど至らぬところもありましたが、楽しんでいただければ幸いです
しばらく経ったらHTML化依頼しようと思います

SS製作にあたり、「戦争ではない」ことが強調されたガルパンを戦争物に巻き込むという、ある意味冒涜的なことをしているため
極力元作品の雰囲気を残したいと思いましたが、出来たかどうかは分かりません
また初期構想では生体脳にされたまほを搭載した栄光号にみほを乗せるという考えもチラッと浮かびましたが、あまりにアレなので即効却下しました

やっぱり彼女たちは戦車に乗ってこそ、だと思います
読んでくれた方々、ありがとうございました

乙でしたー。
面白かった
上手いことクロスしてたと思った。

複線張ってたのに入れ忘れ~

>>132の最後の行に

みほの右手に、見たことの無い模様が浮かび上がる
小杉ヨーコにおまじないをかけてもらった場所だ

あー、本編内で明かすつもりでしたが書き忘れたのでここで

厚志の予想通り、九州撤退戦後から幻獣が各地に出没し戦法が変わったのもペンタたち、特にヘカトンケイルに寄生していた奴の仕業です
太平洋側から大洗に侵攻したのも彼の指示でした

乙でした
楽しく読ませてもらいました



毎回楽しみにしてたよ!

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