八幡「そして冬休みになった……」 雪乃「……」 (656)
『やはり俺の青春ラブコメはまちがっている。』8巻以降の話です。
ネタバレ有りです。
原作といろいろ違うでしょうがそこはスルーで……
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「今日はもう終わりにしましょう」
いつものようにこう言って雪ノ下雪乃は本を閉じた。
本日の奉仕部もこれで店仕舞い、さっさと帰るとするか。
「おう、じゃあな」
「ゆきのん、ヒッキー、また明日」
「さようなら、由比ヶ浜さん、比企谷くん」
12月19日、終業式前日。
本格的に冬が到来した。
特別棟4階の廊下はひんやりとした冷気にすっかりと覆われてしまっていた。
底冷えする寒さに思わずブルッと身震いしてしまう。
冬至を目前に控え、灯りの点っていない廊下は薄暗い。
空には満月から数日たった下弦の月が登り始めていた。
廊下には教室のドアにある円形の覗き窓からわずかに月明かりが差し込む。
そして、うっすらとところどころを白く照らし出していた。
それは、とても頼りげがなく今にも消え入りそうなはかなさを持つ弱々しい灯りだった。
「ねー、ヒッキー……」
後ろを歩く由比ヶ浜が声をかけてきた。
「おう、なんだ」
振り返らずそう答えた。
話の詳細はわからないがなんとなく雰囲気で何の話題かわかってしまったからだ。
「先に言っておくけど、明日部活行けないから……」
含みのある口ぶりだ。
やっぱり、あの話題か。
「おう、わかった」
俺が聞いたところでどうにもならないが、話かけられた以上聞かないわけにはいかない。
ちょうどどこかの教室の前を通ったようだ。
まだ空に姿を現したばかりの月がわずかに照らし出す足元を探るように視線を落としたまま返答した。
「明日、優美子たちと2学期の打ち上げするんだ……」
「おう、そうか」
リア充は節目節目に何かと理由をつけはて打ち上げだとかパーティをしたがる。
たいそうご苦労なこった。
その点ぼっちは、誰にも余計な気遣いすることなく一人静かに好きなように過ごすことができる。
大枚叩いてまで他人に気を遣わねばならないリア充ってなんなんだろうね。
「ゆきのん、結局選挙の時からあんな調子のままだし。冬休みに入る前に何とかしたかったけど、
やっぱり無理だった……。明日は2学期最後の日だからゆきのんと一緒に過ごしたかったけど誘いを
断れなかったんだ。ヒッキーごめんね……」
「別にお前が謝ることじゃねーよ。俺だっていろいろ悪かったと思っているし、そんなこと考えて
いても仕方がない。だから気にすんな」
生徒会役員選挙に関する依頼で、奉仕部は崩壊寸前の状態に陥った。
一月ほど前のできことだ。
俺も雪ノ下も由比ヶ浜も三者三様の考え方を互いに譲ることも互いに歩み寄ることもできないまま、
バラバラに動き出してしまった。
このときは結局、依頼そのものをなかったことにする方法で一応は表面上の対立は解消した。
しかし、全てをうやむやにするそのやり方はとても円満な解決方法だったとはいえず、雪ノ下との間
に大きな禍根を残してしまった。
俺と由比ヶ浜は利害が一致したおかげで、なんとなく以前のような関係に戻ることができた。
だが、俺も由比ヶ浜も雪ノ下との間に生じた大きな溝を埋めることは未だできていない。
表面上は以前と同じように過ごしているものの欺瞞に満ちたうわべだけの関係でしかない。
とりわけ、俺と雪ノ下との溝は由比ヶ浜のものに比べて深くて大きい。
修学旅行の一件のほとぼりが冷めぬ間に起きてしまった生徒会役員選挙での一連の出来事がその
深刻さを決定的なものにしてしまった。
「ヒッキー、本当に心苦しいんだけど、ゆきのんのことお願いね……」
俺がお願いされたところでどうにもならない。
そんなことは、由比ヶ浜もわかっている。
俺と雪ノ下を2人きりにしてしまうことに罪悪感を感じているのだろう。
さっきも由比ヶ浜に言ったが、別にこいつが悪いわけではない。
玄関に着いた俺たちは、それぞれの方向に向かって別れた。
明日は終業式か。
そして、明後日からは冬休み。
楽しいことでも考えて気を紛らわせるとするか。
期待
はよ
冬休みにはゆきのんの誕生日あったよな、1月3日
気体
× × ×
ファー……。
ちょうど小説を読み終えた俺は2学期の疲れから解放されたという安堵感からか大きく伸びをした。
ふと窓に目を向けると空は真っ暗だ。
今日はまだ下弦の月は空に姿を現してはいない。
既に太陽はいずこかに消えてしまったが、窓の向こうは雲の無い穏やかな天気が広がっているようだ。
部室のある4階の窓からは、湾岸エリアのまばゆい光の向こうにポツリポツリと船の灯が点っている。
それらがいつもよりはっきりと見えている。
冬の空気が澄んだ日は寒い。
きっと今日も寒いんだろうな。
「もうそろそろ終わりにしないか」
窓辺で本に向かう雪ノ下に声をかけた。
「ええ、そうね。でも、私はもう少しで切りのいいところになるからそこまでは読んでいくわ。
だから、先に帰ってくれて構わないわ」
視線を動かすことなく雪ノ下はそう答えた。
せっかくの部長様のお言葉だ。
手早く身支度を整え、下校体勢に入った。
「じゃあな」
「さようなら」
これが、冬休み前── 今年最後に雪ノ下雪乃と交わした会話だった。
ここは「良いお年を──」と形式的にでも言うべきだったのかもしれない。
しかし、奉仕部の部室はもうこれ以上うわべだけの言葉なんて必要としていなかった。
この部室にはそれほどにまで欺瞞が満ち溢れてている。
そんな飽和状態の部室にこれ以上、余計なものを添加してしまおうものなら、嘘偽りで真っ黒く染まった結晶でも
生じてしまいそうだ。
雪ノ下は俺を見送ることもなく、俺は俺で振り返ることなく後ろ手でドアを閉めて一年の最後の別れをした。
人気のない特別棟の廊下は今年一番の冷え込みだった。
思わず「さぶっ!」と独り言が出てしまう。
何度も何度も寒さに身震いしながら、暗く長い廊下を歩いていった。
外に出ると一段と冷え込んでいた。
その冷え込みと引き換えに空気は澄んでおり、頭上にはいつもより多く星が瞬いていた。。
しかし、それらをまじまじと見つめるつもりはない。
じきに月が悠然と空を登ってくることだろう。
満月を過ぎたとはいえ、まだまだ月は誇るようにその明るさを保っている。
そんな月が現れるや否や、急に存在感が薄れてしまう星たちの輝きが偽りのものに思えたからだ。
自転車にまたがると迷うことなく校門へと向かった。
明日からはしばらくの間学校がない。
誰にも会うこともなく誰にも咎められることもなく自分一人だけの自由な時間を味わいたい。
そんなことを考えながら校門を抜け出すと俺の名前を呼ぶ声が聞こえた。
「比企谷……」
確かにそう呼んでいた。
これは空耳だと無かったことにしたかったが、無理だった。。
暗闇の中にも拘わらずバッチリと目と目が合ってしまったのだ。
さすがにこれは無視するわけにはいかない。
一度は通り過ぎてしまったものの声の主のもとへと戻った。
そこには中学の同級生の折本かおりがいた。
× × ×
「別に謝られることなんかねーよ。それよか、葉山なら知らねーぞ。俺はあいつのこと嫌いだし」
何だってこんなところに居やがるんだ。
また葉山との間を取り持ってくれだとかは勘弁願いたい。
「……。いや、そうじゃないんだ。こないだのことをちゃんと謝りたくて……」
クシュン!
くしゃみをした折本が話題を変えた。
「ところで比企谷、部活やってんの?」
「ああ」
「だから、こんな遅くまで学校に居たんだ」
比企谷のくせにこんな時間まで待たせやがってと文句を言いたいのだろうか。
それにしても、こいつは一体いつから校門の前で待ってたんだ。
こんなことされたら、こいつをこのまま置いて立ち去れなくなるだろ。
「はー……。何の用だが知らないが、いつまでもこんなところに居たら風邪ひくぞ。だから場所替えるけどいいか?」
やっと2学期が終わったと思ったら、最後の最後にまた厄介ごとが一つできてしまった。
イイネ イイネ 最高だね!
それよりもさっさとここから移動した方が良さそうだ。
こうしているうちに雪ノ下がやってくるかもしれない。
この間の葉山の時とのこともある。
あの時、雪ノ下は一体誰を咎めていたのか、一体何を咎めていたのか知らない。
だが、あんな目で睨まれるのはもう御免だ。
これ以上、事を厄介なものにするのはもう御免だ。
「駅の近くの喫茶店でいいか?」
「そこでいいよ」
俺は自転車を降りると押しながら駅の方向に向かった。
折本は無言で俺の跡をついてきた。
どうやら今日はこの冬一番の寒さだ。
顔にまとわりつく潮風がいつもより一段と冷たく感じられた。
× × ×
「店の中ってやっぱあったかいねー」
「ああ、そうだな」
窓に面したカウンター席に並びながらコーヒーを啜る。
俺としてはこいつと話すことなど何もないが、校門の前で長時間待たせてしまっていたのだから仕方がない。
ここは割り切ることにした。
とにかく俺から話すことはない。
しばしの沈黙が訪れた。
コーヒーの湯気が消えかかった頃、折本が口を開いた。
「比企谷、こないだは気分を害することをしてゴメン」
「別に気にしてねーよ」
「でも、葉山君があんなに怒っていたし」
葉山が怒ったから謝るだと。
こいつは上位カーストの人間である葉山が怒ったという事象にのみ理由を求めているではないか。
葉山という存在を権威づけしていなければそこに謝る理由はないと言っているようなものだ。
結局、俺のような下位カーストの人間をゴミ扱いしているほかならない。
こいつは何もわかっていない。
こんなのは謝罪と言わない。
表立った悪意がなくとも潜在的な悪意を含んでいるといってもいいだろう。
言った本人がわかっていないのだからなおさら性質が悪い。
たちまち心の底から不愉快になった。
今にも心ない言葉をぶつけてしまいそうだ。
ぐっとこらえようとカップの中のコーヒーを一気に流し込む。
その苦味にむせてしまいそうだ。
「あらー、比企谷くん、奇遇ねー」
甘ったるい鼻に着いた声が聞こえてきた。
振り返りたくなかったが、仕方なくその方向に顔だけは向けた。
もうわかりきったことではあったが、目の前に現れたのは雪ノ下陽乃だった。
「比企谷くん、雪乃ちゃんほっぽりだしてその子とデートなの? それに浮気だとはお姉さん感心しないなぁ」
「違います。デートじゃありません。それに雪ノ下とも付き合っていません」
思わず語気を荒げてしまった。
「やだなー、比企谷くん。そんな怖い顔をしなくたって」
ただの冗談じゃないのなんて顔をしてこう切り返してきた。
相変わらず喰えない人だ。
むやみに肉体的接触をしてこようものなら、今日という今日はキレてしまいそうだ。
どういうわけか今日の俺は冷静じゃない。
あからさまに怒りをむき出した表情を見せてしまった。
「フフフ。怒った顔もなかな素敵じゃない。だって怒ったときは目が腐っていないんだもん」
売り言葉に買い言葉か。
あからさまに挑発してくる。
雪ノ下陽乃は不敵かつ好戦的な笑みを見せている。
彼女の目は笑っていない。
自分の妹よりも冷たい冷気を放つ鋭い眼光だ。
ひょっとしたら、俺もとうとうこの人を敵に回してしまったのかもしれない。
もしそうであれば、葉山の言うようにこれから徹底的に潰しにかかってくるのだろう。
ならばその時は俺も徹底抗戦あるのみだ。
20歳にもなりながら高校生に刃を向けてくるようなガキにも劣る大人にいいようにされてたまるものか。
自然とさらに強い怒気をこめた表情になっているのが自分でもわかった。
「あら怖いわね、比企谷くん。残念ながら今日は待ち合わせしているからもうキミのお相手はもうできないの……」
氷のような笑みを浮かべ、それ以上に冷淡な口調で話した彼女は、ここまで言うと急に視線をずらした。
そして、その先をしっかりと捉えてこう続けた。
「── ねっ、雪乃ちゃん?」
「!!」
自分でも驚くくらいの速さで体を反転させると目の前に雪ノ下雪乃が立っていた。
雪ノ下は苛烈な眼差しで俺を見ていた。
「雪乃ちゃん、比企谷くんたちのデートを邪魔しちゃ悪いから、さぁ行きましょ」
雪ノ下はそう言い放つ姉にさらに強い不快感をぶつけるような眼差しを差し向ける。
しかし、それはほんの一瞬のことで、急に身を翻したと思うと足早に立ち去って行った。
「あらぁ、比企谷くん。雪乃ちゃんのこと追いかけなくていいのかなぁ。雪乃ちゃんが冬休みに家に帰って
くるなんて急に言い出すものだから、なんかあったのかなと心配に思ってさっきメールしてみたんだー」
雪ノ下陽乃は悪びれずにこう言った。
意地悪を通り越して悪意の塊にしか見えない下卑た笑みを浮かべながら。
「それに、めぐりに聞いてみたら雪乃ちゃん選挙に出ようとしていたんじゃない?」
雪ノ下陽乃の表情はもはや腹黒さを隠そうともせず、醜悪なものだった。
「どうやら今の反応から見るに比企谷くんが雪乃ちゃんを潰しちゃったようね。あら、雪乃ちゃんを追いかけ
なきゃ。バイバーイ」
最後にかけられた言葉は悪意そのものだった。
しかし、彼女の言葉は何一つ間違っていない。
それは全てれっきとした事実だ。
俺の心の中にとんだ置き土産をしてくれたもんだ。
「ひ、比企谷……」
折本かおりの顔からはすっかりと血の気が引いて蒼白になっていた。
「……あの子のこと追わなくていいの? わ、私のせいで……、私のせいで本当にごめんなさい」
今のこの謝罪には悪意は全く感じられなかった。
むしろ本心とみて間違いないだろう。
しかし、それは恐怖による外発的動機付けがそうせたものだ。
そんなものに意味はないし、俺自身意味を求めてはいなかった。
折本はただただ怯えていた。
一番の被害者は雪ノ下姉妹とは全く無関係な折本だろう。
「俺の方こそ、変なことに巻き込んでしまって悪かった」
さっきは折本の言動に腹を立ててしまった。
しかし、それ以上にこいつに嫌な思いをさせてしまったのだ。
今は自分が立腹してしまったことを恥じている。
こいつとはもう二度と顔を合わすこともないだろう。
だが、こいつは俺のことを思い出すたびにこうしてトラウマとして蘇ってくるに違いない。
「私、帰るね。比企谷、さようなら」
「ああ、じゃあな」
コーヒーをもう一杯飲んでから店を出た。
もちろん、そこには雪ノ下姉妹と折本の姿はない。
別に誰かが待っていることを期待していたわけではない。
ついこんなことを考えてしまったのは、いつの間にか姿を見せていた下弦の月が目に入ってしまったからだ。
右半分が抉られながらも無理に球形に見せようとしているいびつな姿の月にゾッとしたのだ。
それはあたかも俺とその周囲の人間関係のようだった。
そして、それは満月のように輝くリア充でありながら、いびつな人格形成がなされている雪ノ下陽乃の姿ともぴったり重なった。
面白い。期待。
海からの寒風が目を覚まさせるように吹きつけてきた。
ズキン……。
頭が痛い。
この夜、どこでもらったのかさっぱり身に覚えのないインフルエンザを発症した。
40度を超える高熱の中、幾度も幾度もこの夜の出来事から派生した幻覚にうなされることになった。
めちゃくちゃおもしろい
はよはよはよ
舟をこいでしまったので、続きはまた明日
早寝早起きかよ
胃が痛いのに読んじゃう!悔しい!
胃が痛いのに読んじゃう!悔しい!
さっさと続きを書くんだよ!オラァ!あくしろよ!!
乙カレー
非常に興味深い
ほう
× × ×
冬休みも残すところあと3日となった。
終業式の晩に大きなうねりがあったが、それ以降は波穏やかに過ごしている。
強いてあげれば、その晩と次の日に由比ヶ浜からメールが来ていたことだろうか。
インフルエンザに苛まれていた俺は、さらに一日遅れで罹患している旨を返信した。
熱が下がってから3日間は出歩けない。
それきりクリスマスの誘いのメールもぴったり止んだ。
あとは、小町と大晦日の晩に除夜の鐘を突きに行った。
そして、ついでにそのまま初詣に行ってきたことくらいだろうか。
家を出てから由比ヶ浜から初詣の誘いのメールが届いていたが、人ごみの中で気づくことはなかった。
帰宅するとすぐに布団に潜っていたので、夕方まで放置した形になった。
それにしても由比ヶ浜はやたらとイベント好きだ。
さすがはリア充といったところか。
ことごとくイベントを避けているぼっちのことをちっともわかっていない。
こいつは将来、イベント企画会社にでも就職すればいい。
そういえば、まだあったな。
今年は何とこの俺に年賀状が届いたのだ。
一体何年振りだろう。
相手は平塚先生だ。
面倒だったので無視しようと思ったが、自分の命はどうしても惜しい。
だって、人の命は地球よりも重いって言うんだぜ。
仕方ないから小町から一枚ハガキを貰って返信した。
冬休みに入ってからあったことといえばそんなところだ。
そして、今日は材木座に誘われて明日までの2日間の短期のアルバイトをしている。
材木座の紹介だから胡散臭さを感じたが、これはがなかなか良いバイトだ。
春からは週に1、2回放課後に予備校に通おうと思っている。
数学の成績が壊滅的な俺はいくら文系教科の成績が良いとはいえスカラシップを取る望みは薄い。
親に言えば金くらい出して貰えそうだが、小町の高校進学と時期が重なってしまう。
一時的な出費とはいえ、決して少ない額ではないので予備校に安泰に通えるかどうかはわからない。
だからこうして、貯蓄しようと考えたのだ。
「時に八幡よ、その後の奉仕部はうまくいっているのか?」
バイトの休憩中に材木座が尋ねてきた。
「そのことだがバイト上がったら聞いてもらえないか?」
「うむ……。合点承知した」
材木座には奉仕部がうまくいっていないことが伝わったようだ。
「悪いな。時間をとらせてしまって」
「何を言う八幡! 我とうぬの間柄ではないか」
材木座はノータイムで答えた。
話し方がいちいちキモいがこいつはいつも俺の頼みごとを嫌な顔一つせずに聞いてくれる。
選挙の時もこいつにはかなり世話になった。
だからこいつには奉仕部のその後について聞く権利がある。
いや、俺が聞いて欲しいだけなんだが。
藁にも縋る思いで材木座に相談に乗ってもらうことにした。
支援
期待
まだか
やべぇ超気になる
支援
× × ×
「ふむ。話の流れは相分かった」
バイトを終えた俺と材木座はサイゼでテーブルを挟んで向かい合っている。
ちょうど事の顛末を話し終えたところだ。
相変わらず暑苦しいしゃべり方をする奴だか、俺の話を真剣に聞いてくれる。
だからこれくらいは目をつぶらないといけないな。
「ところで八幡……」
材木座の声が急に拍子抜けしたものになった。
「何だ材木座?」
「あの……、これってそんな複雑なことですか……?」
材木座には理解しがたい内容だっのだろうか。
困惑の表情を浮かべた材木座はすっかり素の話し方になっていた。
「へっ?」
俺も釣られて困惑してしまった。
一体どういうこと?
「言いにくいのだが、これってうぬら2人に拗ねただけじゃないの……?」
「へっ?」
俺はますますわからなくなって上ずった声で訊き返してしまった。
「……つまり、雪ノ下は俺と由比ヶ浜に拗ねているってことか?」
「そうだ。考えてみるがよい、八幡よ。うぬはツイッターのプリントアウトを見せた時、何と言われた?」
記憶の糸を手繰り寄せるまでもなく雪ノ下の言葉はすぐに出てきた。
何度も頭の中でプレイバックしていたので、暗唱できるまでだ。
「ああ、確か……『わかっていたものだとばかり、思っていたのね……』だったな」
しかし、スラスラと言えてしまうことに何か引っかかるものを感じてしまった。
一生懸命思い出しているフリをしながら答える。
「では、八幡、うぬに何をわかっていてもらいたかったと心得ている」
「それは、憶測の域を出ないが……」
「それでもだ。八幡、何と心得ている?」
材木座はすっかりいつもの話し方に戻っていたが、静かに問い続けてきた。
「雪ノ下は選挙規約に精通していた。ひょっとしたら会長になってもいい……、いや、なりたいと思っていたかもしれない。
それにこれは俺の思い上がりかもしれないが、俺と由比ヶ浜と一緒に生徒会をやりたかったのかもしれない……」
「うむ。でも、うぬにはそれについては言い分があるのだろう?」
「ああ、雪ノ下はああやって完璧に見えるかもしれないが、文実や体実を一緒にやってみてあいつに危うさを感じた。
ほかの人間が考えているようにそんな器用に人心を掌握してそつなくこなすことができるとは思えない。
このままにしておいたら潰れてしまうのは自明だ。だから、雪ノ下を会長にさせまいと思った。それに、俺はこれまで
のやり方を否定されたから自分を曲げてみた……」
「ふむふむ。それが裏目に出たのでござろう」
材木座は相槌を打ちながら話を整理した。
「ああ、自分のやっていたことに絶対的な自信を持っていた。これで円満に解決だと妄信していた……」
俺は一体何をベラベラと喋っているのだろう。
こんな自分の内面に立ち入ろうとする話は小町にしかしたことがない。
いや、小町にすらそうそうできるものではない。
俺の心のプロテクターが発動し、とうとう口をつぐんでしまった。
「八幡、どうしたのだ?」
材木座が心配するように問いかけてくる。
「いや……、その……」
自分の心の中が何もかも見透かれてしまいそうで、これ以上は何も話したくない。
わざわざ材木座に話を聞いて貰っているのにだ。
「自分の内面をさらけ出すことが嫌なのか?」
「……。ああ……、済まない」
こいつは本当に材木座なんだろうか。
材木座はまっすぐと俺の目を見ると、一つひとつ言葉を選ぶように静かにこう語りかけてきた。
「八幡よ、もう本当は気付いているのではなかろうか?」
「……」
そうだ。
その通りだ。
「自分が何をなさなければならないのかを」
「……。ああ……」
まったくその通りだ。
「我が『拗ねているだけだ』と言ったことも……」
「……いや、それは違う! そんな単純なものではない!」
思わず声を荒げてしまった。
「ふむ。そうではないと。それは、うぬが色眼鏡で見ているから、フィルターで補正しているからであろう──」
何を言う。
俺は自身と向き合っているし、真実と向き合っているはずだ。
「── ならば問おう。うぬは何を一番守りたかったのだ? うぬは──」
>>55修正版
「ふむ。そうではないと。それは、うぬが色眼鏡で見ているから、フィルターで補正しているからであろう──」
何を言う。
俺は自身と向き合っているし、真実と向き合っているはずだ。
「── ならば問おう。うぬは何を一番守りたかったのだ? うぬは── ?」
しえぬ
× × ×
材木座の最後の言葉が頭の中で繰り返し再生されている。
何度も何度も俺に2つの問いを投げかけてくる。
何を一番守りたかったって?
それはどうしても1つでなければならないのか?
どうしても優先順位をつけなければならないのか?
一度にたくさんのものをまとめて守りたくなることだってあるはずだ。
それともう一つの問いは……。
……さっぱりわからない。
そんなことは今まで考えたことすらない。
それなのになぜか俺の中で全く咀嚼できない。
そして、その問いは心につかえたままになっている。
材木座には別れ際にこうも言われた。
── 折本某との過去のトラウマと決別できたのだから、この問いにの答えにたどり着くことができるはずであろう
俺の中でまだ何かのプロテクターが発動しているようだ。
一体何のトラウマが邪魔しているのか?
それとも、俺は一体何を恐れているのか?
頭の中で様々な思考がグルグル渦巻いて気分が悪い。
これって、バッドトリップとかいうやつなんだろうか。
もともと興味がないからいいけど、薬物には絶対に手を出してはならないななんてを思ったりした。
ファン……
警笛を鳴らして東京行の京葉線が入線してきた。
その音でハッと我に返った俺はとめどもない思考を停止することができた。
今日はあまりにもいろいろなことを考えすぎてとてつもない疲労感を感じている。
座席に座れるといいな。
ドアが開くのを待った。
開いたドアから幾人かが続いて降りていく。
乗車待ちの列の先頭でそれが途切れるのを待ちかねていた俺は、素早く空いている席を探した。
3が日の最終日といえども、そこそこ混んでいるようだ。
向かいのドアの左横にあるロングシートに空席を見つけた。
右から数えて2人目の位置だ。
座席を確保しようと足早に向かう。
その時、1人目の席に座っていた人物と不意に目が合ってしまった。
足元に大きなキャリーケースを置いている雪ノ下雪乃だった。
その姿を見て思わず足がすくんでしまう。
「何を突っ立っているのかしら? 座ったら」
目も合わせずに雪ノ下は抑揚のない平坦な口調でこう言った。
「ああ……」
俺はこれ以上、何も話しかけることはできなかった。
それは長い時間のように感じた。
雪ノ下の隣に座ったはいいが、どうも落ち着かない。
さっきから心がざわついている。
それに雪ノ下を目にしてからというもの、材木座からの問いが再び頭の中でリフレインし始めた。
軽く眩暈を覚えてしまいそうな気分だ。
左隣に座っている雪ノ下がスクッと立ち上がった。
すっかり思考の路地裏をさまよっていた俺は下車駅に着いたことにようやく気付いた。
降り遅れまいと雪ノ下の跡をついて行く。
>>62修正版
× × ×
それは長い時間のように感じた。
雪ノ下の隣に座ったはいいが、どうも落ち着かない。
さっきから心がざわついている。
それに雪ノ下を目にしてからというもの、材木座からの問いが再び頭の中でリフレインし始めた。
軽く眩暈を覚えてしまいそうな気分だ。
左隣に座っている雪ノ下がスクッと立ち上がった。
すっかり思考の路地裏をさまよっていた俺は下車駅に着いたことにようやく気付いた。
降り遅れまいと雪ノ下の跡をついて行く。
足早に歩く雪ノ下がドアの前で立ち止まった。
スーツケースを持ち上げるのに手間取っている。
「ほらよ」
手を差し伸べようとする。
「いいわよ……」
言うが早く俺は取っ手を掴むとホームの上に下ろした。
「ありがとう……」
目をそらし、か細い声で礼を言う。
ここ1か月半のことを考えると素直に礼を言いたくないのだろう。
それでも、落とし前だけはきっちりとつけなければならないという理性が邪魔をしたというところか。
思わず苦笑してしまった。
「何かしら?」
きっと鋭い眼光を向けられた。
こんな光景はいつ振りだろうか?
「ほら、行くぞ」
「もう結構よ」
「エスカレーターでそんなもの転がされたらたまらんからな」
雪ノ下の巨大なキャリーケースをひったくるとエスカレーターに乗った。
俺の一段後ろに置くと雪ノ下は慌ててさらにもう一段後ろに続く。
雪ノ下は何事か小言を言うが俺はどこ吹く風でキャリーケースの取っ手を後ろ手で掴んでいた。
エスカレーターの終端のステップのところで再び持ち上げた。
丁字にぶつかる連絡通路の中ほどまで侵入するとそこでキャリーケースを解放してやった。
「ほら、返すぞ」
「そもそもあなたに貸したつもりはないのだけれど」
まあまあ、そんなに尖るなって。
どうせまた、ステップのところでつかえてしまっていただろうに。
ムッとしてひったくるようにキャリーケースを押し始めた雪ノ下について行く。
「あなた、いつから私のストーカーになったの? 警察に通報するわよ」
振り返りもせずに不快感をあらわにした。
そのおぼつかない足取りで大丈夫なもんか。
こっちはこのあと起きるであろうことを予見できている。
それなのに見て見ぬ振りなんかできるわけないだろ。
しばらく無言で跡をつけたのち、再び雪ノ下からひったくると一足先に改札をくぐった。
案の定、キャリーケースは改札を擦れ擦れで通過した。
ほら見たことか。
お前だったら絶対に引っかかっていたぞ。
だいたいなんだよ、その巨大なキャリーケースは。
中に死体でも入っているのか?
「ほらよ。あとは自分でそれ押して帰れるだろ」
俺はそう言ってキャリーケースから手を離す。
まぁ、こっからは体力の無い雪ノ下でも自力で何とか帰れるだろう。
それに、ここから右側の北口へ行けば俺の家、左側の南口に行けば雪ノ下の住む高層マンション。
どっちみち、ここでさよならだ。
「私は頼んでいないのだから、礼は言わないわ」
雪ノ下は俺を睨みつけながらキッパリと言い放った。
「別に礼なんていらねーよ。俺が好きでやったことだ」
フーッ…… と一つ雪ノ下はため息をついた。
「またその答え……。あなたってやっぱり何も変わっていないのね」
失望の念を視線とともに送ってきた。
「素直に礼を言われりゃ俺の答えも違ってくるんだけどな……」
なぜだかわからないが照れくさく感じててしまった。
思わず頭に手が行ってしまい、ボリボリとしてしまう。
「あら意外な答えね。まさかあなたの口からそんな言葉が……。いいえ、言い直すわ──」
雪ノ下は呆れた表情から急にハッとしたかと思うと今度は凛とした表情で言い直す。
「今まで気付かなかったけれど、あなたも少しは変わってきたのね」
「ああ、さすがに俺も小さなところから変える必要があったからな」
自嘲気味にこう答える。
選挙の時、俺はこれまでのやり方をこいつに否定された。
だから、自分を曲げてやり方を変えてみた。
それでもダメだったけどな……。
ふと、その時の嫌な記憶が鮮やかに蘇ってくる。
あまりにも強烈なその記憶に息が詰まりそうになった。
しかし、意外なことに雪ノ下雪乃も自嘲気味にこう言った。
「ええ、そうね。変わらなければならないわね。あなたも……私も」
こんなに会話が続いたのは本当にいつ以来だろう。
不意に遠く離れた故郷に戻ってきたかのような懐かしさを感じる。
それはとても心地よい感覚だ。
── 俺は雪ノ下雪乃と話がしたい。
今なら自分と素直に向き合って雪ノ下と話すことができる。
「お前明日ヒマだろ。明日の朝9時にあそこの喫茶店で待ってるから来てくれないか」
「勝手に私の予定を改ざんしないでもらえるかしら」
プイとしながら返してくる。
そりゃだって、今からその巨大な荷物を持って家に帰るんだろ。
海外旅行に行ってたのかどうかは知らんが、まだ実家で過ごすのならこんな時間にこんな所に居たりは
しないはずだ。
それにお前の所には運転手がいる。
車にも乗らずに電車に乗っているところを見りゃ、実家で何かあって飛び出してきたんだろう。
どうせお前の事だ。
休み中に誰かと会うとは思えないし、一日中家にいるんだろ。
「ゆ、雪ノ下!」
一体どうしたことだろうか?
自分でもよくわからない。
なんで俺は呼び止めてしまったのだろう?
無駄に記憶力が良かったためにどうでもいいことを思い出してしまった。
無駄に脳みそのしわにしっかりと刻み込まれてしまったどうでもいい情報を。
ただ、それだけのことだ。
でも、思わず雪ノ下を呼び止めてしまった。
「何?」
怪訝そうに雪ノ下が振り返ってこちらを見る。
「あ、あの……」
呼び止めたはいいが、どうも口が回らない。
伝えるのは造作もないはずのことなのに緊張してうまく言葉が繋げられない。
雪ノ下は俺の気配で察したのだろうか。
フーッ…… と一つついたが、急かすことなく俺の言葉の続きを待っていた。
「ゆ、雪ノ下……、誕生日お、おめでとう」
たったこの一言を告げるのに俺の心臓はどうしたものかバクバクいっている。
「比企谷くん……。ありがとう」
これまたどうしたものか。
しばらくの間、俺に仏頂面を見せ続けていた反動だったのだろうか。
今まで見たこともないくらい満面の笑みを浮かべてこう言った。
それは、冬の寒さをものともせず悠然と美しく咲き誇る寒椿のようだった。
そういえば、こいつからこうして名前で呼ばれるのも久しぶりだったな。
きょとんとした俺を置き去りにして、雪ノ下は次第に遠ざかって行った。
今日はここまで
乙
レス番飛ばしてしまった……orz
>>71の次
「朝早く悪いがとにかく来てくれ。ちゃんと話しておきたいことがある」
「別に早くはないわ。冬休みだからといって朝から怠惰な生活を送っているあなたとは一緒にしないで貰えるかしら」
いつしか雪ノ下にはひさかたぶりの笑顔が戻っていた。
そう、見る者誰もが苛まてしまいそうな不自然な笑顔ではなく、男なら誰もが魅入ってしまいそうな素敵な笑顔だった。
そんな笑顔を見せられたら勘違いしてしまうじゃないか。
熱を帯びた頬を見られないように顔を背けながらこう言った。
「とにかく待っているからな」
「ええ、わかったわ」
「じゃあな」
「ええ、また明日」
雪ノ下は身を翻すとキャリーケースを押し始めた。
その次
「ゆ、雪ノ下!」
一体どうしたことだろうか?
自分でもよくわからない。
なんで俺は呼び止めてしまったのだろう?
無駄に記憶力が良かったためにどうでもいいことを思い出してしまった。
無駄に脳みそのしわにしっかりと刻み込まれてしまったどうでもいい情報を。
ただ、それだけのことだ。
でも、思わず雪ノ下を呼び止めてしまった。
「何?」
怪訝そうに雪ノ下が振り返ってこちらを見る。
「あ、あの……」
呼び止めたはいいが、どうも口が回らない。
伝えるのは造作もないはずのことなのに緊張してうまく言葉が繋げられない。
雪ノ下は俺の気配で察したのだろうか。
フーッ…… と一つついたが、急かすことなく俺の言葉の続きを待っていた。
さらにその次
「ゆ、雪ノ下……、誕生日お、おめでとう」
たったこの一言を告げるのに俺の心臓はどうしたものかバクバクいっている。
「比企谷くん……。ありがとう」
これまたどうしたものか。
しばらくの間、俺に仏頂面を見せ続けていた反動だったのだろうか。
今まで見たこともないくらい満面の笑みを浮かべてこう言った。
それは、冬の寒さをものともせず悠然と美しく咲き誇る寒椿のようだった。
そういえば、こいつからこうして名前で呼ばれるのも久しぶりだったな。
きょとんとした俺を置き去りにして、雪ノ下は次第に遠ざかって行った。
これはアカン奴や
④
これで終わり
材木座△
八巻出るまで心の中でウザイモクザってあだ名で呼んでてごめんなさい…
今は俺の中では、八幡と戸塚といろはすちゃんの四天王だww
>>83
ウザイモクザで合ってるからいいよ
材木座のセリフが何故かガッシュベルで再生された
× × ×
約束の時刻になった。
雪ノ下は時間ぴったり現れた。
「よう」
「おはよう、比企谷くん。どうやら待たせてしまったようね」
雪ノ下は確認するように8分目まで飲んだコーヒーカップを目をやる。
「気にするな。俺が呼びつけたわけだし、頭の中を整理するにはちょうどいい時間だった」
「そう」
雪ノ下は向かいのシートに腰掛けるとメニュー表を手に取った。
そして、しばし眺めると俺に手渡してきた。
「比企谷くん、あなたはおかわりはいいの?」
「雪ノ下は紅茶を頼むのか?」
「ええ」
「じゃあ、同じの頼むわ。さすがにブラックばかり飲んでいたら胃にもたれる」
「甘い物好きなあなたがブラックとはね……。それは臥薪嘗胆とでも言いたいのかしら」
ちょっときつ目の視線を送ってくる。
「違う。お前に対してじゃない。自分自身への戒めだ」
何だ、その、いきなりの修羅場か。
焦った俺は必死に否定する。
「そう。ならばおかわりもブラックになさい」
途端に厳しい表情になった雪ノ下は強い口調で答える。
「……」
雪ノ下の気迫に押されて黙り込んでしまった。
「……今のは冗談よ。── ハーブティーを2つください」
雪ノ下はちょうど近づいてきた店員に注文するといたずらっぽくくすっと微笑みながら俺に向き直った。
「じょ、冗談って……。お前、い、今でそんなこと言わなかっただろう」
百面相のごとくコロコロ変わる雪ノ下の表情と態度にすっかり混乱してしまった。
「そうね。さすがに私も小さなところから変える必要があったものだから」
誰かさんのセリフを真似るとくすぐったくなるような笑みを浮かべる。
序盤から俺は雪ノ下に押されてもうタジタジだった。
しかし、出だしとしては決して悪くはないはずだ。
はるのん化してるガクブル
ちょいと中座してました
× × ×
しばしの間ハーブティーを味と香りを楽しむ。
こうして紅茶を味わうのはいつ振りだろうか。
紅茶の香りがしなくなった部室で過ごしていた日々が改めて異常なものに感じた。
そろそろ、話に入ろう。
静かにソーサーにカップを置くと口を開いた。
「ちょっと話が長くなるがいいか?」
「ええ。そのつもりで来たわ」
理解が早くてありがたい。
しかし、俺は雪ノ下の冴えわたる頭とその理解力に頼り切ってしまって選挙の件では失敗した。
ここは手間暇かけて一つひとつ丁寧に説明していくことが必要だ。
同じ過ちを繰り返してはならない。
「まずは、話をややこしくしているイレギュラー因子についてから話す」
「ええ」
「終業式の日に鉢合わせした奴がいただろ……」
「ええ。ショートボブにパーマを当てた子ね。姉さんから比企谷くんの彼女と聞いているわ」
ムスッとした表情を見せながら返してきた。
「ちょっ……、待て、待て。そんなわけねーだろ」
「あら違うの?」
訝しげな表情を向けると冷え切った口調で続けた。
早速、雪ノ下陽乃にしてやられたようだ。
っていうか、それを信じてしまう雪ノ下もどうかしている。
やっぱり、こいつなら理解してくれるだろうという思い込みを排して慎重に話さなければ。
「あいつはな、折本かおりっていってな中学の時に告白してフラれた相手だ。2人きりの時に
告白したはずなのに、なぜか次の日クラス全員に知れ渡っていた。それが原因でトラウマの一
つになっていた」
正確にいうとこの出来事自体がトラウマではない。
あんな仕打ちをした彼女に失望した自分に嫌気がさしてトラウマになったのだ。
「比企谷くんがフラれるのは当たり前のこととして、それは聞き捨てならないことね。あと『なって
いた』という過去形で話しているのも気になるのだけれど」
おいおい、当たり前って何なの?
いや、合ってるんだけど。
それと、まだ話し始めたばかりなのに食いつき過ぎでないかい。
「まずは、そいつともう一人のことから話す。時間をちょっと戻すが、めぐり先輩と一色から依頼を受けた日に俺は
ふてくされて早々に帰っただろ……」
「そう。ふてくされていたことは認めるのね」
雪ノ下はさっきまでの表情とは打って変わって微笑みながら合いの手を入れてくる。
そこには全く嫌味が感じられない。
「ああ、そうしないと話が先に進まないからな」
「ええ。続けて── 」
「実はあの日、虫の居所が悪かったのと時間を持て余したのとで映画を見ることにしたんだ。
そしたら、映画までの時間つぶしに入ったドーナツ屋でお前の姉ちゃんに絡まれたんだ。
そこにタイミング悪く、折本とあいつの友達がやって来て声をかけられた。あいつらは俺が総
武高の生徒だと知るや葉山を紹介しろだとか言い出し始めたんだ…… 」
話しているうちにだんだん気分が悪くなってきた。
なんで俺がこんな目に遭わなければならなかったんだと。
しかし、雪ノ下と和解するには避けては通れない話題だ。
「葉山なんかに関わりたくなかったのに、お前の姉ちゃんが悪乗りして葉山をその場に呼び出したわけだ」
はぁー…… とため息を一つついた雪ノ下は、額に手をやる。
「葉山が来たら来たらで、お前の姉ちゃんがさらに喰いついてきてたんだ。そんで、俺抜きに強引に後日
改めて会うことに決められてしまったんだ……」
雪ノ下は額から手を外すことなく再びため息をついた。
「どうせ俺は葉山をおびき寄せるための餌だ。そこでもう用済みだ。だから、俺は頑なに抵抗したが葉山
の野郎、お前の姉ちゃんを使って俺をむりやりあの場に引きずり出しだんだ……」
「それは本当のことかしら?」
胡乱な眼差しで雪ノ下は睨んでくる。
言っておくけど、俺だって立派な被害者だからな。
「ああ、嘘ついても仕方ねーだろ。だいたい俺が好き好んで葉山と行動を共にしたいと思うか?
それに、お前の姉ちゃんは事もあろうか小町にまで電話をかけてきて半ば脅しのようなことをし
てきた……」
「えっ……。小町さんにまで……」
雪ノ下は絶句したのち、申し訳なさそうな表情をした。
何も雪ノ下が引け目を感じることではない。
無視するように話を続けた。
「それで、仕方なく葉山と一緒にあいつらに会うことになったんだ。それからは、雪ノ下もご存知の
通りだ。そして、その時あいつとのトラウマも昇華した」
「わ、わかったわ。あなたも姉さんのせいでとんでもない目に遭ったのね。それに、あなたのこと
疑ってしまって……、そ、その、ごめんなさい」
へっ?
疑うって何?
何そんなに焦ってんの。
「で、終業式の日にまた会っただろ?」
「姉さんと折も……、元同級生の何とかさんね」
今、折本のことわざわざ言い直したけど、何かあるの?
「俺は別に気にしてもいなかったが、お前と由比ヶ浜と鉢合わせする直前にちょっとした
ことがあったんだ。あいつら2人、俺のことを小馬鹿にしてたんだが、どういうわけか葉山
がそれにキレてしまった。」
「なんとなく、雰囲気でそれは察したわ」
雪ノ下の目は怒りに満ち溢れたものになっていた。
「そんで、終業式の日に話が戻る。葉山が俺に対する態度で怒っただろ。だから俺に謝りた
いというふざけた理由でノコノコ総武高までやって来たんだ。そんで、部活が終わるまで校門
の前で待っていたらしい。まぁなんだ、さすがに目が合ってしまったらそのまま無視なんて
できないだろ……」
「そう。わざわざ校門の前で比企谷くんをずっと待ってたとはずいぶんと殊勝なようね」
再びこの場にいない折本に敵意をむき出しにして合の手を入れる。
ちょっと怖いんだけど。
「仕方ないから、喫茶店に入ったんだ。そしたら、またお前の姉ちゃんが……」
「いいわ。みなまで言わなくても良いわ、比企谷くん。それにしても姉さんといい、あなた
の元同級生の何とかさんといい忌々しいわね」
雪ノ下は自分で気づいているのだろうか。
今まで見たことがないくらい感情をむき出しにして、怒りの炎を燃やす自分の姿を……。
「あとな、蛇足だがあの時お前に会っただろ。実は、その直前に折本にキレてしまった。
もしお前にあの時会わなかったら折本のことを思いっきり罵倒してしまうところだった。
まあ、だから、お前には不快な思いをさせてすまなかったが助かったわ……。
あ、あの、ありがとな……」
「え、ええ。確かにものすごく不快ではあったけど、礼を言われるとそんなに悪い気は
しないわね……」
雪ノ下はもじもじ身体を動かしながら答える。
もしかしてトイレにでも行きたいのか?
「とにかく、イレギュラー因子についてはそんなところだ」
「ほ、本当にそ、それだけかしら」
だからそんなにもじもじするなって。
早くトイレ行けよ。
「ああ、本当だ」
しかし、この時大変なことを失念していた。
雪ノ下陽乃についてはもう一つ言及しておかなければならないことがあった。
事前に頭の中で論点を整理していたはずなのに、どういうわけかこの時頭の中から
すっぽりと抜け落ちていた。
また明日
待ってます
原作読んでないからまるでわからんが面白いよ
これが9巻のネタバレですね!わかります
おもろい
クソビッチ折本は自分の糞食って絶望して死ね
いろはすは八幡にだけ本当の自分を曝け出す
ヒロイン候補だってはっきりわかんだね
いよいよ本題に入ろうとしたその時、携帯が震えた。
着信は材木座からだった。
雪ノ下に中座を告げると、通話を開始した。
『八幡、大変だぞ』
「何した、材木座」
『お主、今どこにいる?』
「海浜幕張駅前だけど」
『なら知ってるか……』
「えっ、何をだ?」
『京葉線と総武線と千葉線が止まったぞ』
「何っ?!」
京葉線は人身事故、総武線と千葉線はクレーン転倒で架線事故があったそうだ。
時計を見るとバスでバイト先に向かうのであればそろそろ出なければならない時刻だ。
せっかく雪ノ下となんとなくいい雰囲気で話ができていたのに水を差す形になってしまった。
このまま雪解けを迎えられそうだったのに。
「雪ノ下、千葉方面に向かう電車が全部止まってしまった。申し訳ないが、このあとバイトがあるから……」
「わかったわ。私としてもなかなか有益なことを聞けたわけだし、続きはその、あなたのバイトが終わって
からってことでどうかしら」
仕方ないわねと微笑みながら雪ノ下は赦してくれた。
昨日はあんなに会うのを嫌そうにしていたのに今日は本当にどうしたのか。
それに有益な話って、俺何か話したか。
「ところで比企谷くん、バイトは何時まで?」
「8時までだ」
「そう。またこの店でいいかしら」
「ああ」
そう答えて雪ノ下と再会の約束を取り付けて会計に向かおうとすると呼び止められる。
「比企谷くん、ちょっと……」
「どうした、雪ノ下」
雪ノ下はトートバッグからパンさんのメモ帳とペンを取り出すと何かを書きつけてそっと
手渡された。
「わ、私の携帯番号とメールアドレスよ。そ、その、あなたのバイトが終わるまで電車が復
旧していないとは思わないのだけれど、もし待ちぼうけになっても、そ、その困ってしまう
から……。そ、それと、ひ、比企谷くんのもお、教えてくれると助かるの……だけれど」
自分から言い出しておいて、そんなに俺と連絡先を交換するのが嫌なのかよ。
引きつりながら俺の連絡先聞いてくるのやめてくれない。
俺、何か悪いことしているみたいじゃない。
それにお前の連絡先を知ったところで悪用したりしないから。
あとが怖いし……。
ほんと、お前は俺のことをどれだけ不審者扱いしているの?
変に改まって緊張している雪ノ下に俺の連絡先を知らせ、晩の再会を約束するとバス乗り場に急いで向かった。
なんとか雪ノ下とは和解したい。
そして、……。
そして、…………。
二の句が継げない。
俺は一体どうしたいんだ?
材木座から投げかけられた問いが再び頭にこびりついて離れなくなってしまった。
ティーカップの人かな?
ティーカップの人かな?
やはりバレてしまったか
トリじゃなくスレタイ入れてしまった…… orz
× × ×
「よう、材木座」
「八幡よ、間に合ったか」
気分が良かったせいか、今日は俺から声をかけた。
未だに材木座の問いに答えを出せていない。
特に2つ目の問いは、問自体の意味がさっぱりわからない。
今の俺にこんな問い自体が成立しているのかと首をひねってしまうレベルだ。
材木座はそのことに触れもせず、相変わらず鬱陶しい話し方でどうでもいい話題を振ってくる。
選挙の件以来、こいつに頼りがちな自分がなんとも情けないのだが、頼りがいのある奴で
あることは間違いない。
調子に乗られると困るので面と向かって奴には言っていないが、俺は材木座義輝のことを
友達だと思っている。
俺らしくないって?
そうかもな。
だけど、折本の俺に対する態度からわかったことが一つある。
折本かおりの俺に対する態度は、俺が材木座に対してとってきた態度そのものにほかならなかったと。
材木座ともう二つ三つくだらない会話をすると、仕事の時間になった。
ハーブティーのリラックス効果のおかげだろうか。
あれほど嫌っていた労働に汗かくことが清々しく感じる。
あれっ……?
もしかしてハーブはハーブでも脱法ハーブだったなんてことはないよね。
雪ノ下の挙動もかなりおかしかったし。
休憩時間になった。
さすがにハーブティーの効果はすっかりと影を潜め、やっぱり俺は働きたくないと再確認
するに至っていた。
そうはいってもまだこれから数時間働かなければならない。
自販機コーナーでハーブティーを探すが見つからなかった。
代わりにカモミールティーで一服することにした。
「時に八幡……」
材木座が話しかけてきた。
「おう、お疲れ。何か用か?」
「お主、今日はすっきりとした顔をしているな。昨晩我と話して吹っ切れたのか」
昨日はこいつ、俺のことをうぬと呼んでいたが、今日はお主に変わっている。
こいつの中の設定はいったいどうなっているのだ。
軽くキモさを感じたが、そこには触れないことにした。
「昨日、雪ノ下に会ったんだ」
「ほえっ?」
材木座は素っ頓狂な声をあげた。
「は、八幡、お主ずいぶん攻めに出たな」
「帰りの電車でたまたま会っただけだ。そんで、今朝会う約束をして少しだけだが話をしてきた」
「ほう、それで万事解決というわけか」
材木座は、一人でウンウン頷きながら勝手に納得している。
「いや、お前から千葉方面の電車がすべてストップしているって連絡があっただろ……」
「ふむ」
「それで、話は途中で終わってしまった」
「なーるほどー。それでバイトの後、逢引きをするのだな。ふむふむ」
「なんでそうなる。だいたい、逢引きって何だ。お前は昨晩、俺の話をちゃんと聞いていたのか?」
こいつの頭の中はいったいどうなっているんだ。
「で、もう逢わぬのか」
もしかして、お前の脳内で「会う」が「逢う」とかに勝手に妄想変換されていないよな?
「いや、今日はバイトのあと話の続きをしてくる。今のところは何とか解決できそうな感触
はある」
材木座の妄想が怖いので「会う」という単語を用いないようにする。
とにかくお前の妄想キモすぎるぞ。
「そうか。八幡よ、お主の健闘を祈るぞ」
「ああ」
こうして休憩を終えた俺たちは再び仕事を始めた。
こんなところで
乙
× × ×
8時になった。
2日間の短期のバイトがようやく終わった。
署名捺印と引き換えにバイト代を貰うと材木座と別れて駅の方へと急ぐ。
コートのポケットからスマホを取り出すと雪ノ下からのメールを受信していた。
メーラーを起動してメールを開くと思わず苦笑してしまった。
-------------------------------------------------------------------------
受信日時:1月4日20:00:00
差出人:雪ノ下
題名 (none)
本文「バイト終わったかしら」
-------------------------------------------------------------------------
なんだよこのメール、突っ込みどころあり過ぎだろ。
まず送信時刻だ。
8時ジャストって何?
しかも秒単位で。
お前ちょっと気が早過ぎだろ。
それから、題名くらい打て。
それに本文短すぎ。
せめて「お疲れ様」くらいあったっていいのではないかい。
何というかこれぞ雪ノ下て感じのメールだ。
本当に仕方なくメールしたわという心情がありありと滲み出ている。
さて、電車に乗ってからレスするか。
今晩はこの冬一番の冷え込みになるそうだ。
これから喫茶店に向かうが、それまで温かいものを我慢だなんてできそうにない。
そんなことを考えていると、おあつらえ向きにちょうど目の前ゲーセンの軒先に自販機がある。
ホットのカフェオレを買って軒下で暖を取ると、少し生き返った気がした。
おっと、こう悠長にしていられない。
雪ノ下を待たせないように急がないとな。
ポツポツ……、ザー……。
軒下から動こうとしたその瞬間、雨に打たれた。
驟雨だ。
くそー、ここで雨宿りしてー。
恨めしそうに店内を覗くと一台のゲーム機が見えた。
「!」
これならちょっとぐらい雨宿りしても雪ノ下は咎めたりしないよな……。
× × ×
さっきからたて続けに雪ノ下の火のついたような催促メールが届いている。
何これ新手のスパムメールかよ。
俺のメールボックスがパンクしてしまうぞ。
最初のメールは「まだかしら」だった。
俺は「駅に着いたらメールする」とレスしたものの雪ノ下は合点がいかないようだ。
次のメールからは「どこかしら」に変わった。
そのつど俺は「もうすぐ稲毛海岸に着く」だとか「検見川浜に停車中」とレスを返す。
京葉線ユーザーの雪ノ下は所要時間がいかほどのものかについては当然熟知している。
それなのに、いちいち俺の所在確認のためのメールを送ってくる。
氷の女王は相当お怒りらしい。
きっと今日の寒波もこの女王様の仕業に違いない。
うわっ……、また来たぞ……。
雪ノ下の苛烈さや執念深さは身をもって熟知していたつもりであったが、ここまでも
凄まじいものだとは思ってもいなかった。
そういえば、こいつの見てくれに騙されて未だに告白して轟沈する者が後を絶えない
そうだ。
これから告白しようと思っている連中に告ぐ。
心を折られたくなければやめとけ……と。
『間もなく海浜幕張、海浜幕張。お出口は――』
ようやく駅に着きそうだ。
こりゃ、雪ノ下に会ったらもうアレだな。
俺の必殺技「土下座」、これしかないな。
それでもダメなら「エクストリーム土下座」をするまでだ。
ドアが開くとワインレッドのラインカラーの車両を真っ先に飛び出して改札めがけて走った。
階段を駆け下り改札を飛び出すと、仁王立ちした雪ノ下の姿が見えた。
ここまでです
ああ絶妙な焦らしプレイ
「比企谷くん、一体いつまで待たせる気かしら」
冷たい冷気を放つような視線と口調で背筋が凍りつく。
やはり、今日の寒気はこいつのせいだろう。
それにしても寒いな。
「雪ノ下、なんでこんなところにいるんだ。おまえん家すぐ近くなんだから、家で待ってるな
り喫茶店に入ってるなりしてればよかっただろ」
合理的な雪ノ下がなんで好き好んでこんな寒いところで待っているのか俺にはさっぱり
理解できない。
「雨が降っているからよ。比企谷くん、あなた今朝会った時に傘を持っていなかったでしょ。
だから、濡れないようにと思って傘を持ってきたのよ」
今朝の様子といい、今の様子といい今日の雪ノ下はなんだか変だ。
悪いものでも食ってしまったのか。
「そう言う割には傘を1本しか持っていないのだが……」
「ひ、比企谷くん、話をはぐらかさないで貰いたいのだけれど。なぜ来るのがこんなにも遅
いのかしら」
話をはぐらかしたのはお前の方だろ。
何顔を真っ赤にして焦っている。
ほんと、今日のお前絶対変だぞ。
「いや、ちょっと、その……、ゲーセンでな……雨宿りしてたんだわ」
ちょっとだけと思って入ったはいいが、15分もいたからな。
こればかりは責められても仕方ない。
「それは雨宿りではなくて油を売っていたの間違いではないのかしら。どうせ、いかがわしい麻雀ゲーム
でもしていたのではなくて」
「さすがに今日はしないわ。……いや、俺は断じてそんなものは……」
いつだかゲーセンに行った時にもこんなことあったな。
あの時は小町のせいで雪ノ下に睨まれたよな。
いや、今も超睨んでいてとても怖いです。
「まあ、いいわ。行きましょう」
駅を出ると雨は既に止んでいた。
そのかわり、一段と冷え込みが厳しくなっている。
口を開くだけで体力を消耗してしまいそうだ。
ふたり無言のまま足早に喫茶店へと急いだ。
大幅に手直しをしているので小出しになってしまいます
ちゃんと終わるかな……
× × ×
カチャ……。
ミルクティーのカップをソーサーに置く音が貸し切り状態の店内に遠慮がちに響いた。
夜が更けるにつれて、寒さがますます厳しくなってきた。
猫舌の俺も今日ばかりはさすがに冷めるまで待つことができずに飲んだ。
おかげで舌がヒリヒリする。
「比企谷くん、大丈夫かしら」
心配そうに雪ノ下が俺の顔を覗く。
こいつが俺に気遣いを見せるとは珍しい。
だからこんな天気なのだろうか。
「ああ、大丈夫だ。朝は中途半端に話が終わって済まなかったな」
「いいえ、仕方ないわ」
俺が激しく遅刻したせいで、さっきまでムスッとしていた雪ノ下が柔和な笑みを見せる。
「ミルクティーを飲んで生き返ったところで、早速本題に入ろうか」
「ええ」
雪ノ下の表情がキュッと引き締まる。
「まずはな、選挙の時は雪ノ下に色々と不快な思いをさせてしまった。本当にすまなかった」
深く頭を下げて雪ノ下に謝罪した。
本当はこんな言葉で始めるつもりはなかった。
具体的に謝罪のポイントについては何も触れられていない。
我ながら失敗したと思った。
案の定雪ノ下は納得していない。
「比企谷くん、あなたらしくない要領を得ない謝罪ね。『色々』とは具体的に何を指すのかしら」
雪ノ下にはあからさまに不快な態度で返されるかと思っていた。
しかし、俺が話の糸口をうまく見つけられなかったことを察してくれたのだろう。
話を切り出した時のキュッと引き締まった表情を崩すことなく、穏やかな口調で返してきた。
「こうして時間を割いてもらっているのにすまない。予め頭の中で整理をしてきたつもりだが、
ただのつもりだった。うまく説明するのに時間がかかるかもしれないが、お前の疑問、質問に
対してはすべて答える。だから、もう少し付き合ってもらえないか」
「ええ、いいわよ。私もそのつもりよ」
雪ノ下の表情がほんの一瞬穏やかなものになった。
こいつも一応、俺との和解を望んでいるようだ。
ただ、そこが問題だ。
当初考えていたよりも難しいものに感じられた。
まずはこんなところで
乙
相変わらず続きがすごい気になる
レスどうもです。
一度は完成させたのでしたが、綻びだらけで書き直しです…… orz
書き溜めがないのでいつものようにハイペースとは敷きませんがご容赦ください。
悶えながら待ってますわ…
では、もう少しだけ投下します
きた
「こないだの選挙のことを振り返ってみたい。」
「続けて」
「修学旅行が終わって最初の登校日に依頼が入ってきた。折しも修学旅行では俺とお前
との間に溝が生じてしまった」
「ええ、そうよ。そのことについては思うところがあるわ」
雪ノ下はテーブルの上に置いた自分の手をキュッと結んだ。
やはりこのことについては納得しかねている。
まだ言い足りないようだが、そこは先を急がず堪えているようだ。
「その件については俺も思うところがあるが、後から触れさせてもらいたい」
まずは選挙のことをスッキリさせたい。
その時の俺の思い込みが事態を悪化させたからだ。
もちろん修学旅行のことが根底にあるが、その上に堆積したものをまずは除去せねばならない。
「それについては、この後のあなたの話す内容次第だわ」
「依頼が来た時正直なところこれは無理だと思った。そこで俺は応援演説で失敗させて
一色を落選させようと考えた。しかし、それは否定された」
「そうね。それは認める訳にはいかないわ。一色さんの評判を落として迷惑をかけるこ
とになるし……。でも、そんなことはこの際、問題ではないわ」
俺の話を聞いた途端、雪ノ下の表情がみるみる曇ってきた。
そして、ゆるく結んでいた雪ノ下の手が固く握りしめられた。
かと思うと次の瞬間、急に語気が強いものに変わった。
「……それよりもあなたはまた自分を犠牲にして悪役を買って出ようとした。なぜあなたは、
あなたは……」
雪ノ下は瞬きもせずに俺の目を睨みつけてくる。
それは単なる怒りだけのものではなかった。
確かに雪ノ下の目からは最初は怒りのようなものを感じた。
しかし、それはだんだんと違うものに変わってきた。
とても哀しげなものに見えた。
ただ、それは葉山のような憐れみとは違う種類のものだ。
見ていてとても胸が締め付けられ、心苦しさを感じる。
「……」
雪ノ下はなおも俺の目を見つめている。
俺は言葉を失っていて、何も答えられない。
たかだか数秒のことに過ぎないが、長いこと時間が止まったような気がした。
それまで、じっと俺の目を見つめていた雪ノ下が瞬きをした。
今までかけられていた魔法が急に解けたような感覚にとらわれた。
「ゆ、雪ノ下……」
ようやく口を開くことができた。
しかし、何と続けたらよいのだろうか?
このあと、ひたすら会話が続きます
もうちょっと整理してから続きを投下します
乙
待ってる!
乙
試験勉強の合間に読んでる
いくらでも待ってる
乙乙
どもです
次回投下分の目途が立ったので、本日の最終分です
一応ここまでで一区切りです
「比企谷くん、ごめんなさい。思わず感情が高ぶってしまったわ。私としたことが……」
急にハッとして我に返った雪ノ下は、努めて平静を装うようにして再び穏やかな口調に戻る。
「次の部分だけは私に言わせてもらうわ──」
俺が再び口を開こうとすると、それを遮るように雪ノ下が話し出す。
まだ単なる事実確認だから良しとするか。
「そして、私と比企谷くんは決裂した。奉仕部は自主参加となり、私は私の方法で比企谷
くんは比企谷くんの方法で依頼にあたることになった。由比ヶ浜さんは……、由比ヶ浜さ
んの真意は未だに計り兼ねている……。ただ、私が彼女に相談せずに平塚先生に立候
補することを伝えていたのは申し訳なく思っているわ」
辛いことを思い出すように雪ノ下は静かに語った。
奉仕部が自主参加になってから共に行動していた由比ヶ浜に一言も相談せずに会長に立
候補しようとしたところについて反省しているようだ。
これは今回の選挙の件で俺が犯した最大の過ちと同じだ。
俺は雪ノ下雪乃のことを理解したつもりになって、こいつなら理解してくれるだろうと
いう思い込みで失敗した。
雪ノ下もまた由比ヶ浜結衣に対して同様の思い込みを抱いて失敗した。
そのことについては理解しているらしい。
しかし、まだ何か引っかかる。
何かが違う。
雪ノ下自身が平塚先生に訊ねた「勝負」の結果のくだりについて全く触れられていない。
それに、「由比ヶ浜の真意を未だに計り兼ねている」という言葉が気になる。
雪ノ下は何かを隠すために俺との「勝負」に触れなかったのではないだろうか?
「由比ヶ浜の真意を未だに計り兼ねている」とは一体何を意味しているのだろうか?
そんな疑念や疑問が湧いたが、その時の俺にはそこに触れるのが憚れたのであった。
ではまた明日
乙
どもです
酒場放浪記が始まるまで投下します
× × ×
カップを持つ手が軽い。
そっと口に運ぶとミルクティーは一口分にちょっと満たない量しかなかった。
「おかわりはいいのかしら」
雪ノ下が訊ねてきた。
機微に感じ取ったようだ。
しかし、これは半分正解で半分不正解だ。
俺は猛烈に空腹を感じている。
最初にセットを頼んでも良かったが、一人だけ喰っているというのはどうも気が進まない。
もっとも雪ノ下は夕食を済ませてから来ているであろうから気にし過ぎかもしれない。
それでも後ろめたさを感じてしまう。
「じゃあ、同じのもう一度頼むわ」
「そう。私ももう一杯ミルクティーを頂くわ」
雪ノ下が店員を呼んで注文している間、いつもより薄暗く感じる駅前に目をやる。
正月三が日を終えたばかりの土曜日の夜、特急電車も停まる新都心のこの街にはまだいつも
の賑わいが戻ってきていない。
再び雨が静かに降り出していた。
こりゃ、帰りはずぶ濡れ必至だな。
「また雨ね」
注文を終えた雪ノ下がこう切り出してくる。
ミルクティーが届くまで選挙の件については閑話休題となる。
俺と雪ノ下の考えが一致したようだ。
「ああ、冬の雨は嫌だな」
水たまりにぼんやりと浮かぶ街路灯の灯りを見つめながら答える。
「ええ、そうね」
横目に雪ノ下がテーブルに肘をついたのがわかった。
そして、俺がしているように両手に顎を載せて窓の外をじっと見つめる。
雪ノ下の目にはどんな景色が映っているのだろうか。
不意にそんなことを思う。
俺はあの時まで雪ノ下雪乃のことを理解していたとばかり思っていた。
あの奉仕部の部室で雪ノ下と同じものを見ていた気になっていた。
しかし、そんなことはなかった。
今もこうして同じ景色を見ているはずなのに、違うものを見ている気がしてならなかった。
でも、不安にとらわれることはなかった。
きっと雪ノ下も同じようなことを考えて、俺と同じ目の高さで窓の外を見ているのだろう。
そういう思い込みの危うさには気付かされたはずなのに、どうしてかそう思えてならなかった。
続きは酒場放浪記が終わってから
待ってます
どもです
酒場放浪記が終わったので再開します
>>171修正版
雪ノ下の目にはどんな景色が映っているのだろうか。
不意にそんなことを思う。
俺はあの時まで雪ノ下雪乃のことを理解していたとばかり思っていた。
あの奉仕部の部室で雪ノ下と同じものを見ていた気になっていた。
しかし、そんなことはなかった。
今もこうして同じ景色を見ているはずなのに、違うものを見ている気がしてならない。
でも、不安にとらわれることはなかった。
きっと雪ノ下も同じようなことを考えて、俺と同じ目の高さで窓の外を見ようとしているのだから。
そういう思い込みの危うさには気付かされたはずなのに、どうしてかそう思えてならなかった。
× × ×
勢いよく湯気が立ち上る2杯目のミルクティーを恐る恐る啜る。
今度は火傷しなくて済んだ。
雨は降り止みそうにない。
それどころか、いつの間にか雨脚が強くなっている。
カーテンが引かれていないので、窓からは外の寒さがひんやりと伝わってくる。
また気温が下がったようだ。
猫舌の俺としては湯気が消えるのを待っていたいところだが、そんな悠長に構えていると
たちまち凍えてしまいそうだ。
悠長にしていられないといえば、雪ノ下との話を早く進めなければならない。
その雪ノ下は俺の様子を見てクスクス笑っている。
こうしていると、俺と雪ノ下との間に本当に問題が存在するのだろうかなんて思ってしまう。
しかし、そこには問題もあるし、深い溝もある。
和解に向けた一時休戦のムードがそう思わせているのだろう。
「なんだよ。こっち見んなよ」
照れ隠しにぶっきらぼうに言った。
「ごめんなさい。火傷しまいと必死になっている比企谷くんがいじらしく見えたわ」
何それ。
そんなこと言われたら、照れてしまうだろ。
上気しそうになるのを隠すように話を再開することにした。
「さっきの続きに戻るがいいか」
「ええ。そうしましょう」
ここからはこれまでのように穏やかなムードでは話を進められそうにない。
互いの考えや主張がぶつかり合うところだ。
しかし、それは避けては通れない。
雪ノ下もそれは重々承知している。
肘をつくことをやめ、再び引き締まった表情になった。
「俺は最初のプランがダメ出しされてから、なんら次のプランを持ち合わせていなかった。
それどころか、お前の姉ちゃんやら折本やら葉山やらが出てきて振り回されることになった」
「そうね。それについては、姉さんのせいでとんだ迷惑をかけてしまったわ。ごめんなさい」
「別にお前が悪いわけではないし、むしろお前も巻き込まれた側の人間だ。別に謝らんくて
いい」
「またその答えね……と言いたいところだけれど、そう言ってもらえると助かるわ。ありが
とう……」
そうやって素直に受け取ってもらうとこちらとしてもありがたい。
そもそもきっかけを作ってしまったのはこの俺だ。
「認めるのは癪なのだけれど、私はあの人には太刀打ちできていない……」
心苦しそうな表情を浮かべた雪ノ下。
最後の一言はぽつりと言った。
「それは俺も同じだ。俺もとうとうあの人を敵に回してしまったようだ」
「えっ……」
雪ノ下は驚きの色を隠せない。
「なぜ……?」
「なぜってか? 折本と2回目に鉢合わせした時のことを覚えているか?」
「ええ……」
「あの時もお前の姉ちゃんに絡まれていたよな」
「ええ」
「お前が来る直前、俺はキレてしまったんだよ……」
「……」
雪ノ下はハラハラした表情で俺を見つめている。
しかし、焦点は定まらず目は泳いでいた。
「いい歳した大人が俺たち高校生の右往左往している姿を見てせせら笑っている態度が
許せなかったんだ。人の気持ちを弄んで喜んでいる姿が許せなかったんだ」
思わず語気が強まる。
「ひ、比企谷くん、あ、あなた大丈夫なの?」
雪ノ下は狼狽していた。
こんな雪ノ下は見たことがない。
「いや、俺はその後会っていないから何ともない。それよりもお前は大丈夫だったのか?」
雪ノ下陽乃のやることだ。
俺がダメなら周りの人間に……となるだろう。
なんでこんな簡単なことに俺は気付かなかったのだろうか。
あの時冷静さを失っていたがためにとんでもない判断ミスをしてしまった。
「そう……、ホッとしたわ」
雪ノ下は落ち着きを取り戻しつつある。
そして続けた。
「私なら大丈夫──」
しかし、その言葉を額面通りに受け取る訳にはいかない。
「お前……、昨日何かあっただろ。じゃなきゃ、自分の誕生日のあんな時間にマンション
に戻ってきたりしないだろ」
「そうね。思い出したくはないのだけれど、昨晩姉さんと一戦交えたことは確かよ。でも、
あなたの心配するようなことではないわ。母とも言い争いになって家を飛び出したのだから。
父がいればそんなことにはならなかったのだけれど……。とにかく、家庭内のいざござよ」
「そうか。でも、これからは俺のせいでお前に迷惑をかけてしまうかもしれない。その時は
俺にも話して欲しい」
「ええ……わかったわ。あなたこそ姉さんに何かされたら教えて頂戴」
本当にわかっているのだろうか。
こいつはきっと何かあっても俺には黙っているだろう。
文実の時だってそうだ。
そうやって一人で抱え込んで潰れてしまったではないか。
だから、俺はこいつのことが心配でならない。
>>184修正版
「そうか。でも、これからは俺のせいでお前に迷惑をかけてしまうかもしれない。その時は
俺にも話して欲しい」
「ええ……わかったわ。あなたこそ姉さんに何かされたら教えて頂戴」
本当にわかっているのだろうか。
こいつはきっと何かあっても俺には黙っているだろう。
文実の時だってそうだ。
そうやって一人で抱え込んで潰れてしまったではないか!
だから、俺はこいつのことが心配でならない……。
んっ……!
俺、今なんて思った……?!
不意に材木座の2つの問いが頭をかすめた。
── 俺は何を一番守りたかったって?
それは……。
── 俺はもしかして……?
……!?
いや、そんなはずはない……。
そんなはずはないだろ……。
一人、自問自答していたところに店員がやって来た。
そして、こう告げた。
「そろそろ、閉店となりますが……」
カップにはほとんど手つかずのままとなっていたミルクティーが冷めきった状態で残っていた。
こんなところで
では
おつ
ひたすら会話ですみません……
おつ
面白いで
おつおつ
二人の会話は読んでて全然飽きないなぁ、次もすごく楽しみ
乙
原作未読でも面白い
原作読みたくなるな
どもです
本日分投下します
× × ×
「……」
「……」
店を出たものの雨宿りするように俺たちは軒下に留まっている。
雨はいつしかみぞれに変わっていた。
恐る恐る掌を天にかざすと、雨よりも冷たい感触が伝わってくる。
さっき雪ノ下陽乃を敵に回してしまったことを告げたが、我ながら悪いタイミングでこの話題に
触れてしまった。
今朝の段階で話しておけば流れで単なるイレギュラー因子の一つとして処理できたかもしれない。
本当にタイミングが悪い。
店を出てしまったが、一体これからどうしたら良いものか。
雪ノ下とはなんとか和解をしたいのだが、こうして何度も呼びつけて話すのはとても良いやり方
だとは言えない。
かといって時刻はもう10時半を回っている。
いつまでも雪ノ下と2人っきりとはならない。
男の俺は良いが、雪ノ下は年頃の女性だ。
まさに由々しき事態だなと考えていると雪ノ下から切り出してきた。
「比企谷くん、今更だけど夕飯は食べたのかしら」
「いや、食べてないが」
「そう。ならばうちへいらっしゃい。カレーを作り過ぎたから……」
何と唐突な。
夜間に男を家に上げるって、どういう防犯意識をしているわけ?
何のために防犯対策がバッチリのあのマンションに住んでんの?
「いやいや、そんなわけにはいかないだろ。お前、無防備過ぎるにも程があるぞ」
「下心丸出しの発言ね。何か良からぬことでも考えているのかしら」
ジトっとした目を俺に向けてくる。
俺は無罪だ。
そんな目で見ないでくれ。
「ちょっと待て。お前の言うようなことを考えてたら、わざわざ注意喚起なんかするかよ」
「犯人はそうやって予防線を張ってから事に及ぶものよ」
いつかもこんなくだらない話をしていたよな。
それは犯人の言葉だとかなんとか。
あの時、こいつは推理小説でも読んでいたっけ。
「じゃあ、俺帰るわ……」
こいつの考えることはてんでわからない。
こいつを理解したつもりになっていた頃の自分が馬鹿のように思えてしまう。
「待ちなさい……。待って、比企谷くん。話は終わってないわ」
「んだな。でも、どうする」
さっさと帰ってしまいたかったが、雪ノ下と和解することが何よりも最優先だ。
でも、こんな遅くにどこで話せばいいんだ。
千葉の良い子は10時までに家に帰らないといけないんだぜ。
「だから……、その……、う、うちで話を続けるというのはどうかしら。カレーもあるし。
そ、それにあなたのことはこ、この私が誰よりもい、一番信用しているわ」
雪ノ下の頬はたちまち紅潮した。
「お前、今さらっと凄いこと言ったな」
おかげで俺も顔が火照ってしまったじゃねーか。
「え、ええ……。で、でも、あなたの家族以外でこの、わ、私以上にあ、あなたのことを信用して
いる人っているのかしら」
「悲しいかな、いないな。でも、その過信で俺もお前も失敗しただろ」
「うっ……」
痛いところをつかれた雪ノ下はぐうの音も出ない。
ちょっといじめ過ぎてしまっただろうか。
雪ノ下は俯たきり、黙りこくってしまった。
「まぁ、家帰っても今日は小町も用意していないだろうし、お前の料理だったら何喰っても
うまいだろうから、カレーごちそうになるわ。悪いなこんな時間に押しかけて」
「ならば決まりね。さぁ、行きましょう」
雪ノ下は嬉しそうに無邪気な笑顔を見せる。
お前、何て顔をするんだよ。
うっかり惚れてしまうだろ。
雪ノ下の笑顔が眩しくて、思わず目をそらしてしまった。
雪ノ下は持っていた傘を開くが、じっと立ったままだ。
「どうした、雪ノ下。やっぱり俺を家に上げるのが嫌になったか。無理しなくてもいいぞ。
今日の続きはいつ……」
雪ノ下は俺の右隣に立つと、俺の上に傘をかざしてきた。
「濡れるわよ。お入りなさい──」
こんなところで
では
乙!見てるやでー
ゆきのんがデレすぎてて砂糖の山ができた
乙
くそっ
いいところで焦らしやがる
乙
カレーは一晩寝かした方が美味しいらしいよ
一晩寝かした方が
どもどもです
再投下します
× × ×
雪ノ下の家に上がるのはこれが2度目だ。
何とも落ち着かない。
雪ノ下のことは何とも思っていないが、絶世の美少女と2人きりというのはアレだな。
何ていうか生きた心地がしないな。
ましてやその美少女が氷の女王と来たものだ。
粗相一つで死に直結しかねない。
冗談はさておき、本当に落ち着かない部屋だ。
軽く20畳はあるリビングは生活感が感じられず殺風景だ。
中央に置かれた応接ソファー付近にだけ離れ小島のようにカーペットが敷かれている。
あとは、壁際に必要最低限にも満たないばかりの調度品と大型テレビがあるのみ。
ここには長門有希でも住んでんのか?
寒々としたという言葉はこの部屋のためにあるような気がしてならない。
俺はソファーに腰掛け雪ノ下の淹れてくれた紅茶を啜っている。
フルーティーな味わいの中に上品な香りがするこの紅茶。
いかにも若い女性が好みそうな風合いだ。
雪ノ下も一応、女の子なんだなと思ってしまう。
離れたところにあるキッチンからはカレーを温める雪ノ下の鼻歌がかすかに聞こえる。
雪ノ下雪乃の素顔の一端を垣間見た気がした。
「比企谷くん、お待たせ」
カレー皿をトレイに乗せて甲斐甲斐しくやって来る。
こいつ普段もこうしていれば、好感度は格段に違うのにな。
目の前の小さなガラステーブルの上にシーフードカレーが饗される。
あれっ……、皿が2つ……。
「ゆ、雪ノ下、お前晩飯喰ってなかったのか……?」
てっきり雪ノ下は晩飯を喰ったもんだと思っていた。
黙っていないで言ってくれてたら、俺も遠慮なく喫茶店で何か喰ってたのに。
「え、ええ……」
雪ノ下は何とも歯切れが悪い。
「何でまた?」
「そ、その、ひ、比企谷くんも食べてないから悪いと思って……」
何照れるんだお前。
お前、そんなキャラじゃないだろ。
もしかして、精神崩壊するほど実家でいじめられてきたのか?
雪ノ下雪乃よりも手強い雪ノ下陽乃、さらに雪ノ下陽乃をして手強いと言わしめる
その母親……。
こいつはそんな魑魅魍魎が跋扈する虎の穴で冬休みの大半を過ごしていたのか。
それ何ていうアウェーなの…… ゴクリ……。
こんな家に婿養子に入る奴は絶対に半月もたたないうちに壊れるな。
あなおそろしや。
庶民に生まれてよかったとつくづく思った所存だ。
あまりにも怖いのでもうこれ以上考えるのはやめよう。
「せっかくうまそうなカレーを出してもらったし、これ以上ほったらかしにしとくと
罰が当たるな」
「ええ、そうよ。だって、この私が作ったカレーだもの」
うぜー。
文字に起こしたら「フフン~♪」なんてついてしまいそうなほど上機嫌の雪ノ下。
でも、こいつが作ったからハズレは無い。
ここまで空腹に耐えてきたご褒美として喰おう。
「いただきます」
「いただきます」
空腹すぎてあまり腹に入らないかと思っていたが、なかなか食が進む。
「そんなにがっつかなくても、おかわりならまだまだあるわ」
雪ノ下は呆れたように言う。
「悪いな、おかわり貰えるか」
さすが雪ノ下。
こいつの作るものは本当にうまい。
がっつくなと言われてもやめられない、止まらないこのうまさ。
「ええ、もちろんよ。ところで、味の方はどうかしら」
「普通にうまい……と言いたいところだが、おふくろの味といってもいいかもな」
「そう。あなたに褒められると素直に嬉し……、いえ、悪い気はしないわ」
「何言い直してるんだよ。この俺が絶賛するのはそうそうないことだぞ」
いつだがの嫁度対決の時に肉じゃがを作った小町にあの愛する小町にすら「チョイスが
あぞとい」と跳ねつけたんだぞ。
だから、素直に喜んだっていいだろ。
まぁ、もっともカレーを再加熱した時に2日目のカレーに味が近づいただけだと思うが、
そこを含めてうまいことは確かだ。
「そうね。パエリアを作ったときにあまりにも比企谷くんの反応が薄いから、今度は唸らせて
みせようと思ったことは確かね」
本当に負けず嫌いな奴だ。
そんな雪ノ下を家から飛び出させるような雪ノ下姉と雪ノ下母はどんだけ猛者なんだよ。
怖いって、マジで怖すぎる。
ではでは
また明日です
乙
面白い
乙
ゆきのんのデレでおなかいっぱいです
乙
やっぱりゆきのんのデレは最高だなあと思いましたまる
ゆきのんがシーフードカレー出すので八幡とゆきのんがカレーにジャガイモ入れるか入れないかでバトルするSS思い出した
家庭のカレー食いたいなあ……
店で食えるのはどうもな……
>>219
あれは良かった
原作ののほほんパートを再現した感じだったな
レスどうもです
本日分投下です
× × ×
「本当にあなたって呆れるくらい食べたわね」
額に手を当てながら雪ノ下雪乃は溜息交じりに呟いた。
「それって、ただ呆れているだけだろ。傷つくからやめてくんねーか」
「まぁ、いいわ。それよりも食後の紅茶はどうかしら」
「ああ、頼む」
気づけばもうすぐ12時だ。
カレーをごちそうになった後、一緒に洗い物をして、それからくつろいでしまった。
俺は何しにここに来ているんだ?
雪ノ下が先ほどのうまい紅茶をまた饗してくれた。
熱いうちに飲むとこれがさらにまたうまい。
すっかり病みつきになってしまい、息をフーフーしながらつい飲んでしまう。
「雪ノ下、そういえば話の続きを全然していないが、どうする?」
さっきから全然話をする雰囲気になっていない。
このままなんとなく時間を過ごして終わってしまいそうな気がしてならない。
いや、むしろそれだけでも十分だ。
だって、こいつは見てくれだけはいいからな。
それに今日はやたらと笑顔が多い。
いくら訓練されたぼっちの俺だって、こんなにも長時間ふたりきりでいると血迷って
しまうかもしれない。
いや、そんなことはないか……。
だって、こいつのことだぜ。
俺が血迷った瞬間に血みどろの返り討ちに遭うことは必至だ。
そんなくだらないことをぼんやりと考えていた。
雪ノ下は思い出したようにエプロンと髪につけたシュシュを外す。
エプロンは由比ヶ浜の誕生日プレゼントを買いに行ったついでに購入した猫のワンポイントが付いたものだ。
その動作が艶めかしくてぐっと息をのんでしまった。
一瞬血迷いそうになったが、血みどろのイメージがすっかり出来上がっていたので事なきを得た。
やはり俺のぼっちスキルはしっかりと訓練されている。
「そうね、あっという間にこんな時間になってしまったわね。あなたは家に帰らなくて大丈夫なの?」
エプロンを畳みながら雪ノ下が訊ねてきた。
「大丈夫といえば大丈夫だが、お前だってこれ以上俺に居座られても迷惑だろう」
「ええ、そうね。誠に遺憾だわ」
真顔で答えやがる。
「じゃあ、今日はこれでお開きってことで決まりだな」
とりあえず今日はもう帰ろう。
俺はすくっと立ち上がる。
雪ノ下とは携帯の番号とメアドの交換をした。
明日にでもメールしとくか。
「ま、待ちなさい、比企谷くん」
何焦ってんだこいつ。
俺が気を悪くしたとでも思ってんのか。
「どうした。別にムッとしたわけじゃねーよ。このままいたら、本当に夜を明かしてしまうかもしれないぞ」
肝心な話をおろそかにしてすっかり無為な時間を過ごしてしまった。
これ以上、ここにいても互いに人生の無駄遣いにしかならんだろう。
「でも、早くこの件は片付けてしまいたいわ。それはあなたも同じでしょ」
困ったことにその通りである。
そのために、朝と晩にこうして雪ノ下と会っているのだ。
じゃあ、今回の件の最後にして最大の山場へといよいよ踏み入れるとするか。
「ああ、そうだな。悪いが、もう少しだけ付き合ってくれ」
「ええ」
ふたりともソファーには腰かけず、カーペットの上で小さなガラステーブルを挟んで対峙した。
こんなところで
では
おつ
八幡の貞操が危ない
なし崩し的にですね分かります
次の投稿までパンツ脱いだまま正座して待ってる
レスどもどもです
再投下します
「さて、いよいよ核心部分だな」
雪ノ下は言葉で返さず首肯する。
「雪ノ下が立候補すると聞き、俺は次の手立てを考えた。一色いろはを心変わりさせて会長にさせようと思った」
雪ノ下は余計なことは言うまいと思ったのか、再び首肯で答えて来る。
早速しくった…… orz
>>237修正版
「さて、いよいよ核心部分だな」
雪ノ下は言葉で返さず首肯する。
「雪ノ下が立候補すると聞き、俺は次の手立てを考えた。一色いろはを心変わりさせて会長にさせようと思った」
雪ノ下は余計なことは言うまいと思ったのか、再び首肯にて答える。
「決して褒められる方法ではないが、俺は秘策を思いついた。ツイッターで偽の応援アカウントを立ち上げて
あいつの推薦人を400人ほど集めた。そうなれば、さすがに一色も断りにくくなる。そして、俺の狙い通りに
あいつはやる気になった」
雪ノ下は急に忌むべき物を見ているような不快な表情になった。
そして、何かを口にしようとした。
しかし、ここでまだ雪ノ下にしゃべらせる訳にはいかない。
せっかく落ち着いて話をしてきたのに喧嘩別れで終わってしまう。
それだけは避けたい。
勢いで雪ノ下の口を封殺する。
「しかし、ここで大失態を犯してしまった」
俺があっさりと認めたことで溜飲が下がったのだろうか。
テーブルに手をつき、身を乗り出しかけていた雪ノ下は一先ず堪えた。
「俺はお前の事、いや、雪ノ下雪乃の事を全く理解していなかった……」
「……」
雪ノ下は肯定も否定もしない。
ただ黙っている。
黙って俺の目だけを的確にとらえて見つめている。
それは、まるで俺を量っているかのようだった。
俺がその後、一体どれだけ雪ノ下雪乃のことを理解しようとしていたのかを量っているかのようだった。
「なぁ、雪ノ下……」
俺の口がだんだんと重くなってきた。
ここまで来たらもう引き返すことはできない……。
雪ノ下は変わらず何も語らない。
ただ俺の目だけをじっと見つめていた。
「……お前、本当は生徒会長になりたかったんじゃないのか」
雪ノ下はなおも押し黙っている。
雪ノ下の表情は何一つ変わらない。
俺は残像でも見ているのだろうか……。
そんな錯覚にとらわれてしまう。
「お前と会って2日目にこんなことを言っていたよな……。『人ごと、この世界を変える』って……。
お前はその理想に向かって動き出そうとしたんだろ。違うか?」
「……」
やはり雪ノ下は表情一つ変えずに黙ったままだ。
加えて、瞬き一つしないどころか、微動だにしない。
改めて雪ノ下雪乃という人間の意志の強さを感じた。
「平塚先生に俺との勝負について訊ねていたよな。本当は俺と一緒に……、いや、俺と由比ヶ浜と一緒に
生徒会をやりたかったんじゃないのか?」
俺との勝負に勝利していたのならば、自身の生徒会活動の補佐を命じようとしていたのだろう。
もっとも俺が立候補をしたところで落選するのは火を見るよりも明らかである。
そこで、めぐり先輩が言うように庶務だとか雑務だとかのポストを宛がおうと考えていたのかも知れない。
雪ノ下の表情が急に変わった。
「ええ、そうだったわ……」
それは儚い夢に破れた者が見せるような表情だった。
弱々しく吐き出される言葉には力がない。
「……そうか、やはりそうだったのか……」
雪ノ下はため息交じりに頷いた。
そして、何かを語り始めようとするが、再び機先を制して口を封じることにした。
雪ノ下、すまない……。
雪ノ下……、お前をもう一度地の底へと落とさなければならない……。
それは雪ノ下雪乃に対してあまりにも冷淡かつ苛烈な言葉だっただろう。
それは雪ノ下雪乃にとっては自身を全否定されたと感じる言葉だっただろう。
しかし、俺はためらうことなく言った。
「でもな、あの時、例えお前の想いに気付いていたとしても、やはり俺はお前のやり方を認めなかった」と。
本日分は以上です
また明日
おつおつ!
どもです
>>244修正版
「……そうか、やはりそうだったのか……」
雪ノ下はため息交じりに頷いた。
そして、何かを語り始めようとするが、再び機先を制して口を封じることにした。
雪ノ下、すまない……。
雪ノ下……、お前をもう一度地の底へと落とさなければならない……。
それは雪ノ下雪乃に対してあまりにも冷淡かつ苛烈な言葉だっただろう。
それは雪ノ下雪乃にとっては自身を全否定されたと感じる言葉だっただろう。
しかし、俺はためらうことなく言った。
「でもな、あの時、たとえお前の生徒会長への想いに気付いていたとしても、やはり俺はお前のやり方を認めなかった」と。
更新はまた晩にします
乙
楽しみに待ってます!
乙
おつー
おつ
来てねーし!ageんなし!
待ってるぞ
あがってるから来てみたら…
レスどうもです
すっかりし忘れていた伏線回収したら文章がくどくなっちゃった
やっぱりいつものように書き上げてから投稿しないとダメですね
完全に失敗です…… orz
22時台に更新します
すごい面白い
たまにはあねのんを徹底的に叩き潰す展開も見たい
いつもニタニタと人をおちょくりながら、最後には「私の狙い通りw」って展開ばかりでムカつくのよね
自分で書こう
言いだしっぺの法則
投下開始します
すっかり遅くなりました
冗長さがいつもの5割増しです
どうかご容赦を
「えっ……! なぜっ!!」
雪ノ下は絶句した。
そして、一瞬失望の表情を見せたかと思うと、たちまち険しいものへと変わっていく。
眉根を寄せた顔はぴくぴくと引きつっている。
それだけではない。
肩を震わせ、全身で怒りを表現しているかのように見える。
「そ、それは、一体どういうことかしら! い、一体何の不満があるのかしら!」
雪ノ下は声を荒げた。
これまで溜め込んできたものを全て俺にぶつけてくるぐらいの強さで。
さっき、喫茶店で雪ノ下に不自然さを感じたことが二つあった。
── 一つは、平塚先生に「勝負」の勝敗を訪ねたくだりをスルーしたこと。
今の反応からもわかるとおり、察して欲しいという願いがあったのだろう。
しかし、その願いさえも俺は粉々に砕いてやった。
── そして、もう一つは「由比ヶ浜の真意を未だに計り兼ねている」という言葉だ。
きっと、これも俺に共感してもらいたくてこう言ったのだろう。
確かに由比ヶ浜の立候補については俺も思うところがある。
だけど、俺は雪ノ下に寄り添って共感的に理解するつもりはない。
「私のやり方に一体何の不満があるのかしら! 答えなさい、比企谷くん!」
目を血走らせながら雪ノ下はなおも食い下がってくる。
その感情の爆発させる様はまさに疾風怒濤と言っていいだろう。
しかし、感情に対して感情で返しても何も解決しない。
新たな怒りや憎しみ以外は何も生み出されない。
ただ、不毛な化学反応の連鎖で堂々巡りになるだけだ。
俺もいつまで理性を保てるかわからないが、理路整然と語りかけることにした。
「雪ノ下、それはお前の思い上がりだ。だいいち、奉仕部はどうするつもりだったんだよ?」
雪ノ下は開きかけた口を閉じる。
そして、深呼吸を一つして答える。
「生徒会も奉仕部も両立するつもりだったわ」
さっきまでの勢いが嘘のような静かな語り口でこう言った。
雪ノ下の目には凛然とした輝きが戻った。
その目からは一点の曇りも感じ取れない。
だが、お前の言っていることは幻想に過ぎない。
そんなに現実は甘くはない。
「でも、『つもり』はあくまで『つもり』だ。実際はどうだ。俺はお前と袂を分かち、由比ヶ浜
は由比ヶ浜で会長に立候補しようとした。お前の考えてやって来たことは全て水泡に帰したぞ」
「それは、あなたたちが勝手にしたことじゃない!」
雪ノ下の語気が再び強くなった。
かと思うと、それも長くは続かなかった。
雪ノ下のトーンがここで急に下がり始める。
「あなたたちが……、あなたたちが……」
雪ノ下は寂しげな表情を浮かべている。
あたかも、それまで信じていた者に裏切られ、一人置き去りにされた者のように。
「雪ノ下、さっき喫茶店でこう言っていたよな。『由比ヶ浜の真意を未だに計り兼ねている』と。
俺が去った後も、お前の傍でずっと支えてくれると思っていた由比ヶ浜まで立候補すると言い出した。
そのことを言っているんだよな?」
「ええ……」
もはや雪ノ下の言葉には力がない。
一度傷つけられた心をまたこうやって踏みにじられているのだ。
さしもの雪ノ下も心が折れかかっている。
「俺も正直、由比ヶ浜の考えていることはさっぱりわからん。仮にあいつが生徒会長になったところで
お前と首を据えかえただけで何も状況は変わらない。むしろ、あいつの実務能力を考えるとかえって不安だ」
あいつはあいつなりに自分の考えを述べ、生徒会のことは適当にやると言った。
だが、その言葉の実効性に乏しく思える事については雪ノ下と何ら変わらない。
雪ノ下は力なく頷く。
「それに、俺が一色をその気にさせなければ、結局のところお前が当選していただろう。
そうなれば、由比ヶ浜はただ徒にお前との間にひびを入れただけの徒労に終わっていただろう。
だから、はっきり言って由比ヶ浜が何を考えているのか俺にはさっぱりわからない」
雪ノ下はなおも弱々しく頷くが、縋るような目で俺を見つめてくる。
そんな目で見るなよ……。
お前の気持ちはわかるが、その気持ちに寄り添ってやることはできない。
心を鬼にして言う。
「でも、あいつは言ったんだ。『奉仕部が好きだ』と。『奉仕部を守りたい』と。それは、俺も同じ思いだ。
俺も奉仕部を守りたかった……」
「つ、都合のいいことを言わないでよ!」
雪ノ下は残された最後の力を振り絞るように抗議した。
「あなたも由比ヶ浜さんも私のやり方を批判した。でも、その由比ヶ浜さんも結局、私と同じことをした。
あなたは私を批判したけど、由比ヶ浜さんを批判していないじゃない。そんなのフェアではないわ!」
雪ノ下の言うことはもっともだ。
別に俺は由比ヶ浜を擁護するつもりは全くない。
ただあの時、由比ヶ浜の行為を咎める気も押し留める気も起きなかっただけだ。
だから雪ノ下雪乃の今の発言は間違っていない。
その通りだ。
でも、違う。
何かが違う!
そう思う理由は別にある。
でも俺はそれが何かは知らない。
「!……」
くそっ!
またこれが理由かよ……。
そんなのが理由だとは知りたくもない。
そんな理由知ってたまるものか……。
俺はそんな理由は認めたくない。
しかし、そこからは逃げ切ることはできないようだ。
「比企谷くん……。あなたは『奉仕部を守りたい』と言った。でも、違う。あなたは、一体何を一番守り
たかったのかしら。いいえ、違うわね、一体誰のことを一番守りたかったのかしら……」
またその問いかよ。
昨日、材木座にも同じことを言われた。
それ以来、頭にこびりついて離れないその問い。
どこまでもどこまでも俺を追いかけてくる。
なぜ、どいつもこいつもこんなことを聞きたがるのか。
いい加減うんざりしてくる。
それだけではない。
この問いに向き合えば向き合うほど、何度も繰り返し同じ解が導き出される。
そんなはずはないと否定してもだ。
そんな解を出すことしかできない自分にうんざりさえしてしまう。
「さっきあなたは、由比ヶ浜さんが立候補したところで、私が勝つと言ったわね……」
雪ノ下はいったん言葉を区切った。
俺の答えを待っているのだろう。
「ああ……」
俺の答えを聞き遂げてから、言葉を続ける。
「結局のところ、私が選挙で勝ったらあなたのところに皺寄せが行く。だから……、だからあなたは
そうならないように自分自身のことを一番に守りたかったのよ!」
「違う!! そんなんじゃねー!!」
つい、ムキになって興奮してしまった。
自分でも驚くくらい大きな声で叫んでしまった。
雪ノ下陽乃をして「理性の化け物」と言わしめたこの俺が。
そんな俺が感情を爆発させてしまった。
雪ノ下は目を白黒して驚いている。
親にもこんなデカい声で叱られたことはないのだろう。
ショックのあまり泡を喰っている。
雪ノ下には悪いがそのまましばらく黙っていて貰いたい。
俺の頭も既にパンク寸前の状態になっている。
こんなところで
ではまた明日
乙←サキサキポニーテール
ええぇ、乙
続きがすげえ気になる
乙
いけないものに目覚めてしまいそうな程の焦らしプレイ
乙
乙
おつ
おつ
はるのんはここまで計算してそうだから怖い
乙
レスどうもです
これから飲みに行ってきます
ついでに書き溜めも底をついています
更新は0時頃になると思います
では
待ってる
いってらさい
〆のラーメン喰ってから帰ります
ごめんなさい
ラーメンならしょうがないね
平塚先生とラーメンいきたい
明日の朝は胃もたれになーれ
レスどうもです
帰宅しました
飲みすぎた
酔ってスレ上げてしまった…… orz
1時半過ぎに5レス程度投下予定です
すみません
ええんやでー
ごめんなさい、俺が上げてしまった
>>294
気にしなくてもいいですよ
酔い覚ましにシャンパーニュロゼ飲んでるのでもうちょっと待ってください
投下開始します
俺もティーカップのSS読んでからシャンパーニュロゼ飲んでみたくなったけどどこにも置いてない
ティーカップの話はやめてさしあげろ。黒歴史だ
シャンパーニュロゼ飲んでリラックスし過ぎで寝ちゃったのか?
どんまいける
寝ちゃったみたいだな。
朝にでも投下始まるのゆっくり待ってるぞ―
すみません……
突っ伏して寝てしまいました
本当にごめんなさい
× × ×
ようやく頭の整理がついた。
ここはスッキリするところだったはずなのに、むしろ気分がすこぶる悪くなってしまった。
雪ノ下はすっかり怯えた目で俺のことを見ている。
でも、決して俺から視線をそらそうとはしない。
俺が取り乱して吐き出した言葉の続きを聞こうと待っている。
本当にこいつの精神力は大したものだ。
ハハハ…… と乾いた嗤いが自然と出てしまう。
何が理性の化け物だよ。
思いっきり感情むき出しになってんじゃないかよ。
雪ノ下陽乃が発した言葉に過剰なまでに反応しただけじゃないかよ。
あとは自分で勝手に自滅して自己暗示にかかっていただけだったじゃないかよ。
それに何だ、感情を出さないのがクールでかっこいいと自分に酔っていたんじゃないかよ。
俺は自分の愚かさに、自分の滑稽さに反吐が出てしまいそうだ。
材木座よ、それにしても随分と面倒な問いをしてくれたものだな。
── ならば問おう。うぬは何を一番守りたかったのだ?
ああ、そうだ……。
ここまでムキになって否定したんだから、もういい加減認めてやるよ。
じゃないと引っ込みつかねーしな。
だから、この解でいいんだろ。
いや、もういい加減こんな投げやりな態度じゃダメだろ……。
何度熟考に熟考を重ねても導き出されたのはたった一つだけの解。
今までも、これからも決して変わることのないだろうこの解。
ここまでくれば、もはや結論だろう。
だからもうこの結論からは逃げない。
自分の気持ちからも逃げない。
自分の気持ちに素直になって雪ノ下に伝えなければならない。
スーッと息を深々と吸い込む。
ようやく決心がついた。
静かに見守る雪ノ下の目をまっすぐに見つめて口を開いた。
「雪ノ下、俺が一番守りたかったのは……、一番守りたかったのは……。
雪ノ下雪乃、お前の事だ!」
「ひ、比企谷くん……」
雪ノ下の声は震えている。
だが、どういう類の震えなのかはまだわからない。
俺は雪ノ下の一挙手一投足を見逃さすまいと息を飲んで見守った。
雪ノ下が再び口を開いた。
「な、なら……、なぜ……、なぜ私のやり方を認めてくれなかったのかしら……」
雪ノ下の目にはもう生気がない。
俺の言葉は雪ノ下には届かなかった。
続きはまた晩になります
本当にすみませんでした
乙
ぬわああああきになるううう
>>311
何とか続き書きますので晩までお待ちを
シャンパーニュロゼは、ららぽーとTOKYO BAYの北館で買いました
ほかにどこで売っているのかはよくわかりません……
乙
来てたか、続きが気になるな
大量投下かと思ったら外野だったか
てか余計なレス多くない?
イオンでたまたま手に入ったけど、シャンパーニュロゼは専門店にもなかなか置いてないね。
通販で買うのが確実だと思う。
ティーカップが黒歴史って何?
雪ノ下のバストサイズがTカップになるSS?
いつものお時間になったので投下します
「なぜ……。なぜ……」
雪ノ下は今にも泣きだしそうだ。
「なぜ……………………」
ついにその声が途切れた。
雪ノ下は嗚咽を漏らしながら泣いている。
俺は一番守りたかったはずの雪ノ下雪乃を泣かせてしまった。
胸がズキズキと痛む。
俺はこんな雪ノ下雪乃の姿を見たくなかった。
だから、そうならないように守りたいと思ったはずだ。
それがこの様である。
何という皮肉だろう。
俺はさっきから何度も口を開きかけては、口を閉じている。
意を決して伝えた言葉が雪ノ下には届かなかった。
だから、ちゃんと伝わるように話さなければと思っているのだが、その自信がない。
俺は伝え合うという言葉が嫌いだ。
伝えることなんて相手に話しかける勇気さえあれば誰だってできる。
例えば相手に「バカ」と暴言を吐く。
これだって伝える行為だ。
これに対して相手から「ふざけんな」と返される。
これだって伝える行為だ。
所詮、伝え合うなんて相手のことを考えないで互いに一方通行のやり取りをしているに過ぎない。
しかし、相手に伝わるようにすることは容易ではない。
現に俺の言葉雪ノ下雪乃には伝わらなかった。
その結果、こうやって悲しませ泣かせてしまうことになった。
ぼっちの俺には伝わり合うような人間関係を築く相手なんかいない。
だから、俺の考えていることが正しいのかわからない。
だけど、雪ノ下雪乃とはこういう人間関係でありたかった。
雪ノ下雪乃とは互いの考えが伝わり合っているものだと思っていた。
だが、それはすべて身の程知らずな俺が勝手につくり上げていた幻想に過ぎなかった。
そんなことを考えると、どうしても開きかけた口をつぐんでしまう。
これ以上伝わらなかったらどうしようという不安が俺の心を蝕んでくる。
再び口を開いて失敗したら新たなトラウマになってしまうだろう。
そんな恐怖に立ち向かえず、守りに入ってしまう自分がいる。
俺はいつものようにそんな自分が嫌いになりかけていた。
寒々とした空気が支配する時間がただ闇雲に過ぎていた。
静寂そのもののリビングにどこか遠くの救急車のサイレンが聞こえてくる。
雪ノ下雪乃はその手音にピクリと反応し、垂れていた頭をゆっくりともたげようとする。
── 時間切れだ!
そう思った瞬間、俺は無意識に口を開いていた。
自然と言葉が流れるように出てくる。
「雪ノ下、もう一度言わせてくれ。俺があの時に、いや、いつも一番に守りたかった人、それは雪ノ下雪乃
お前の事だ── 」
とりあえずこんなところで
>>315
確かにあまり売っているのは見かけないですね
マイナーな紅茶なのかな?
店ごとにブレンドが違うのか通販で試してみるかな
おもろい
>>323修正版
寒々とした空気が支配する時間がただ闇雲に過ぎていた。
静寂そのもののリビングにどこか遠くの救急車のサイレンが聞こえてくる。
雪ノ下雪乃はその手音にピクリと反応し、垂れていた頭をゆっくりともたげようとする。
── 時間切れだ!
そう思った瞬間、俺は無意識に口を開いていた。
自然と言葉が流れるように出てくる。
「雪ノ下、もう一度言わせてくれ。俺があの時に、いや、いつも一番に守りたかった人、それは雪ノ下雪乃
お前の事だ── 」
どもです
再投下します
雪ノ下は抜け殻になったような無表情な顔で俺に正対する。
「俺は雪ノ下雪乃が傷ついたり、傷つけられたりする姿を見たくない。俺は雪ノ下雪乃が潰れ
たり、潰されたりする姿を見たくない」
雪ノ下の表情は変わらない。
でも、諦めるわけにはいかない。
これが最後のチャンスだからだ。
「俺は文実の時も体実の時もいつもお前の事を見ていた。お前は間違いなく優秀だし有能だ。
でも、そんなお前でもどうにもできないことがあった。そんなときもお前は誰かのせいにはせず
自分を律し、自分の力で立ち続けようとした。そんなお前に、そんなお前の生き方に俺は憧れを
抱いていた」
この程度の言葉で雪ノ下の心に伝わったとは思っていない。
それは当然のことで、屍のような表情で俺を見ている。
「だけどだ……、そんなお前がもがき苦しんでいる姿を見るのが嫌だった。
そんなお前の姿を見たくはなかった。俺が見たい雪ノ下雪乃はいつも凛然
としていて力強く、自信に満ち溢れ、気高く気品を纏った姿で咲き誇っている。
そんな高嶺の花のような雪ノ下雪乃だ」
ようやく雪ノ下の心に達することができようだ。
キッと俺のことを睨むと強い口調でやっと俺に言葉を返してくる。
「それは、あなたが勝手に作り上げた幻想よ!」
「ああ、そうだ。俺は自分の中で雪ノ下雪乃という人間の理想像を勝手に創りあげていた。
いそして、俺はそんな雪ノ下雪乃とわかり合えているという幻想を抱いていた。
しかし、それがたとえ幻想であったとしても、作られたものであったとしても、俺は雪ノ下雪乃が
傷だらけになる姿は見たくはない」
「それは自分勝手な理由よ。あなたに私の一体何がわかるっていうのかしら!」
雪ノ下は不快感を露わにしている。
しかし、しっかりと喰いついてきている。
まだ俺には挽回のチャンスがある。
「ああ、お前の事は知っているつもりだったが何も知らない。だけど、お前の事を知りたい。
もっと知りたい。お前とは理解し合いたい。それにお前の傷つく姿はもう二度と見たくない。
お前の事を傷つけるすべてのものからお前を守りたいんだ」
「嘘よ、嘘よ。どうして、私の気持ちを分かってくれない、いいえ、わかろうとしないあなたが
そんなことを……」
材木座の問いが再び頭をもたげた。
俺はその問い自体が成立しないと否定した2つ目の問いだ。
── うぬはもしかして恋をしているのではないか?
ああ、そうだ。
俺は雪ノ下雪乃に恋をしている。
多分……、いや、間違いない。
今なら自信をもって答えることができる。
「雪ノ下、俺は……、俺は雪ノ下雪乃のことが好きだ。俺は雪ノ下雪乃に恋をしている。だから、お前の
事を守りたいんだ──」
こんなところで
では
やっと追い付いた
ガハマさんのあのSSを書いてた人かな?
面白い
>>335
?
>>335
違います
ガハマさんのを書いたことはありません
ちょ、こんなとこで切れんの
どんだけ焦らしプレイが好きなのSなの?
ぐわあああああ
よしてるイケメンすぎわろた
イジメいくない
明日は出かけるので代わりに今から投下します
>>338
ゆきのんに罵られたいです
× × ×
俺はとうとう雪ノ下雪乃に告白した。
「とうとう」というのは語弊がある。
告白したことはしたが、雪ノ下のことが好きだと意識したのは今日が初めてである。
自分でもまさかの展開だ。
あの時の雪ノ下雪乃の表情が忘れられない。
大きく目を見開き、驚きと困惑で満ちた表情をしていた。
広々とした殺風景なリビングにまたどこかで鳴っている救急車のサイレンが聞こえてきた。
今日は随分と事故が多いようだ。
パトカーのサイレンもさっきからよく聞く。
さっきから、雪ノ下雪乃の言葉を聞こうと俺は待っているところだ。
雪ノ下雪乃はただ黙って俯いている。
まるで静かに眠っているかのように見える。
その間に何度も何度も雪ノ下雪乃が見せたあの表情が浮かんでくる。
やがてサイレンの音が遠ざかっていくと雪ノ下雪乃は俯いていた顔を起こし、言葉を紡ぎ始めた。
「比企谷くん……、さっきの言葉……、正直なところ半信半疑だわ……」
言葉通り半信半疑と言った表情をしていた。
やはり、雪ノ下雪乃には伝わりきっていなかった。
こればかりは普段の俺の言動がそうさせてしまったのだから致し方がない。
それでも今の俺は満足だ。
こうやって、半分は理解してくれたのだから。
しかし、現実は甘くはない。
それはすぐに否定された。
なおも雪ノ下の糾弾は続く。
「あなたは今、自分の勝手な想いを長々と述べていたのだけれども、私の気持ちを私の想いを少しでも考え
てくれたことはあったかしら?」
それは辛辣な言葉だった。
ナイフのように胸を抉る。
「そ、それは……」
言葉に詰まってしまう。
「あなたはそうやって、自分のことと他人のこととはっきりと区別して考える。結局あなたの一方的な想いで
あって、それは私の想いではない」
俺はてっきり雪ノ下には雪ノ下のことを守りたいという思いぐらいは伝わっていたものだと思っていた。
そう錯覚していた。
じゃあ、一体何が伝わっていたのか?
何も伝わっていなかったのではないか。
雪ノ下の目をまっすぐと見つめた。
「比企谷くん、あなたはどうして私があなたのやり方を否定しているかわかるのかしら?」
「そ、それは……。お、俺が俺自身のことを……傷つけるような手段を……取るからだ……」
「ええ、そうよ。でも、まだあなたの言葉を信じることはできない。今のあなたの回答は、私が
今まであなたに対して再三再四不快感を示して指摘してきたことだもの。それをなぞれば
いくらで答えられるわ」
冷たい視線を浴びせかけたまま雪ノ下は続ける。
「ならば、なぜあなたのやり方を否定しているのかわかるのかしら?」
「それは……、それは……」
言い淀んだ瞬間、雪ノ下の表情はさらに冷ややかなものとなった。
「比企谷くん、あなた私の疑問や質問にすべて答えると言ったわね。たったそれだけの約束も
履行できないなんて、あなたには失望したわ」
雪ノ下は長い溜息を一つついた。
眠いです
終了します
乙
こんなところ止めるなんて、作者Sすぎる
レスどもです
昨晩終わらせる予定だったところまでちょこっとだけ更新します
俺は雪ノ下の問いに対する解がなかったわけではない。
できるだけ自分の主観を排して客観的に考えようとすればするほど、主観が邪魔をしてくる。
えっ!……。
嘘だろ……。
そんなはずは……。
「ま、まさか……、ゆ、雪ノ下……。お、お前、俺のこと……」
ハァー……と雪ノ下が溜息をついた。
「ええ、そうよ。やっと私の気持ちに、私の想いに気付いてくれたのね、比企谷くん……」
嘘だろ……。
「私は比企谷八幡、あなたのことが好きよ。いいえ、そうでないわ。むしろ、好きというよりは愛してさえいるわ──」
「ゆ、雪ノ下……」
あまりにも突然の告白でどう返したら良いかわからない。
喜ぶべきところなのに実感が伴わず、口をパクパクさせてしまった。
たったこれだけです
すみません……
自分のペースで構わないですよ~乙
寧ろこっちのが気になるのですが……
おつ
ガハマさんが息をしてないの……
ここで終わりとか1は悪魔かなんかかよ…
>>337
あれ、勘違いしてましたすいません
二度と来るな氏ね
乙乙
乙ゥゥゥウー
(´つヮ⊂)ウオォォwwwwwwww
前にも宣伝がとうのとか意味不明な言いがかりをつけられたからスレタイ検索したら
2ちゃんにここ晒しに行った奴がいるみたい
中身は開いてないから見てないけど
いい迷惑だわ
マジで鬱陶しい
とんだとばっちりだ
雪ノ下は呆れるような目を一瞬向けたが、
「まあ、いいわ……」
と溜息交じりに一言述べると話を続けた。
「私もあなたのことをずっとそばで見て来たのよ。文化祭や体育祭の時はなんだかんだ文句を
言いながら仕事を完璧にこなしてくれたし、私のことを救ってくれた。私のことを一番に想って
いてくれたことを知って内心嬉しかったわ……」
「ま、まぁー、何だ。潰れかかったお前や見事なまでの崩壊をした実行委員会を見たら、そんな
風に思うわな」
「三浦さんとのテニス勝負の時も見事に決めてくれた……」
「あれはたまたま狙い通りにうまくいっただけだ」
「鶴見留美さんの時も彼女が自分の意志で前へへ進むことを後押しした……」
「一番嫌な役回りを葉山たちに押し付けたけどな」
「でも、彼女はあれで少しは楽になったはず。私も小学生の時にあなたに出逢えたら……と心から
思ったわ……」
「そうだったら、お前の学校にぼっちが一人増えただけだ」
「いつだってそう。そうやって自分の手柄を誇らずあなたは謙遜する。
私に近寄ってきた男子はくだらないことを勝ち誇ったように語った。でもあなたは違った。
私に対していつも自然体で接してくれた。
私の暴言や失言も受け入れてひるむことなく真っ向から返してくれた。
あなたには申し訳ないと思いつつも初めて対等に話をすることができる相手が見つかって
嬉しかった。あなたと話している時自分でも驚くくらい笑顔になっていたわ……」
「対等とか言っちゃってかなり上から目線だろ。そんなの素直に喜べねーぞ」
フフフ…… と穏やかな笑みを見せる雪ノ下。
何これ直視できない。
ますます惚れてしまうだろ。
「そんな目で見ても何も出ねーぞ」
さっと視線を反らす。
「そうやってすぐに捻くれて照れ隠しをする。でも、捻くれ具合をこじらせすぎて卑屈になって
しまう部分は嫌い……」
「……」
図星だ。
何も言い返せない。
「でも、そんなあなたのことにいつしか信頼を寄せ始め、気付いたら好きになっていた。
そして、愛するようになった。監視だと口実を作ってあなたと一緒に回った文化祭は本当に楽しかった。
修学旅行の初日、ラーメン屋さんから戻る時あなたの後姿を見ながら歩いていて心がときめいた。
その時の気遣いからあなたの優しさを感じて幸せだった。自由行動の日も一日中そばに居られた。
ずっとこのままあなたの隣に居たいと思った。今もそうよ……」
「俺の目を見ながらそんなことを言わないでくれ……。反応に困る……」
「だから、あなたが汚れ役を買って出て傷つくのを見るのが嫌だった……」
「……、そんな目をして言わないでくれ。もうそういうのは止めにした……」
「でも、これだけは言わせて……。さっき、あなたのことをずっと見ていたといったわね」
「ああ」
「私は修学旅行の最終日もあなたのことを見ていた。海老名さんと話しているところを……」
「そっか……、見てたのか……」
「その時、察したわ。あなたの嘘の告白は海老名さんからの依頼に応えたのだということに……。
でも、比企谷くんもう止めて! 愛しい人がたとえ嘘だとしてもほかの女の人に告白しているのを
見るのは身を裂かれるくらい辛いの、苦しいの……。
いつもあなたのことを想っている私のことを見ていて欲しいの、想っていて欲しいの。私の想いを
受け止めて、考えてから物事に結論を出してほしいの」
「ああ、わかった。お前の想いは受け止めたわ」
ふと思い出した。
一色が会長に立候補する決意を固め依頼自体が消滅した時、失望の表情を見せた雪ノ下を見て思ったことを。
あの時俺は雪ノ下との間に本物が欲しかったのだ、それ以外はいらなかったのだ──
身の丈以上のものを欲することなくぼっちらしく慎ましく生きてきたつもりだった。
そんな俺にも人並みの欲が出た。
俺は雪ノ下雪乃との間に別の本物が欲しくなった。
「なぁ、雪ノ下……。俺と付き合ってください──」
雪ノ下は透き通った目で俺の目を見つめて言った。
「ごめんなさい──」と。
とりあえずここまでです
今回は平和にスレ進行してしまたが、アンチのお方にしてやられましたわ
おつです
いつも楽しみにしてます、がんばってください!
てか、ゆきのん!おい!
ここまできてごめんなさいってよしもと新喜劇のようだ
続きが気になるビクンビクン
とばっちりについてはよくわからないけど気にすんなおつ
ここでごめんなさいとかメンドクサイ女だな
1X年後には平塚先生みたいになるぞ
「ごめんなさい」の後に続く言葉が気になる。
なんかキレるほど荒らされてるってわけでもないのに、落ち着こうよ作者さん
レスどうもです
大人げなかった…… orz
酒場放浪記の後、投下します
一気に読んだ
結衣の名作SSの人だね
相変わらず良い雰囲気でうっとりしちゃうね
>>381
いや、ガハマSSは書いたことないって上の方で言ってるぞ?
あと作者さま?
次作があるなら是非書き終わってから投下してください
原作でもやもやさせられて、その上SSでも焦らされて辛い
>>381
これ絶対わざとだろ
ごめん、なんか勘違いしてただけっす
どちらも上手い方なので混同してしまいました
断っただと…
乙
レスどうもです
本日分投下します
な、何だと……。
この状況でこんな返事をもらうことを予想できる奴はいるだろうか?
頭を鈍器で殴られたかのような衝撃を受けた。
ハハハ……。
自分でもどういう類のものかわからない笑いが口からこぼれる。
笑いなのか嗤いなのかとにかくわからない。
「比企谷くん、比企谷くん……」
雪ノ下雪乃の声で我に返る。
そう、俺は雪ノ下雪乃にフラれてしまった。
「……比企谷くん、私の話をちゃんと聞いているのかしら?」
ムスッとした顔で言われる。
用が済んだらさっさと帰れとでも言っているのだろうか?
傍らに置いたカバンに手を伸ばそうとすると一言。
「私の話を最後まで聞いていたのかしら?」
とても疑問文だとは思えないドスの利いた声とともにギロリと睨まれる。
「あ、あ……、前半しか聞いてない……。あとは……、頭に入らなかったわ……」
実際のところは耳に入ってきた記憶もない。
放心状態だったからだ。
ハァー……と深いため息をついた雪ノ下は、額に手をやり呆れかえっている。
「どこまで聞いていたのかしら?」
ジトっとした目を向けながら呆れ果てた口調で訊ねてきた。
「前半しか聞いてない……」
トラウマになりそうなので、「ごめんなさい」という言葉だけは意地でも口にはしたくない。
「そう、『ごめんなさい』までは聞いていたのね」
雪ノ下は容赦がない。
一番聞きたくない言葉をさらりと言いやがった。
俺の砕け散ったガラスのハートのかけらを思いっきり踏みつけるなよ。
「あ、ああー……」
やべー、俺泣きそうだ……。
早く家に帰って小町に慰めてもらいたい……。
「仕方ないわね……。もう一度だけ言うわよ。しっかりと最後まで聞きなさい」
本当にこいつは容赦がない。
睨みつけながらこう言いやがった。
はぁー……。
これ以上聞きたくないんだが……。
「じゃあ、言うわよ……。 ごめんなさい……」
「うわー……!!」
思わず大声が出てしまう。
なんでそっから言うんだよ!
「比企谷くん! あなた、私の話を聞く気があるのかしら!」
いや、その口調、人に物を訊く言い方じゃねーぞ。
「頼むから、その後からにしてくれ……」
あまりにも雪ノ下が怖いので目をそらしながら答える。
こんな怖い思いをするのなら、いっそそのままフッてくれた方が気が楽だ。
「ごめんなさい。今は無理」
俺が反応できないようにノーモーションでいきなり言った。
「さすがにあなたでもここまで言えばわかるでしょ……」
なぜお前ががもじもじするんだ?
雪ノ下はそっぽに向けて赤面していた。
「何のことかさっぱりわからんのだが……」
頭が混乱してきた。
「あなた、本当に馬鹿なのかしら。国語学年3位のくせにこんなこともわからないのかしら。
あなたの目が腐っていることは知っていたのだけれど、ついに頭まで……」
一気に畳みかけるように口撃を開始してきた。
「おい、ちょっと待て! お前も国語学年1位のくせに俺の心情を読み取れんかっただろ」
雪ノ下は「うっ……」と言葉を詰まらせた。
ヤバイ……、俺こいつのこと泣かしてしまうかもしれない。
そうなる前に早々に立ち去った方がよさそうだ。
ぼっちの持つ第六感がそう言っている。
「これ以上、話してもまた喧嘩しそうだから今日のところは帰るぞ」
そう言いながら立ち上がると、
「待ちなさい!」
と腕を思いっきり引っ張られる。
その反動で体がよろめいてしまう。
「あ、危ねーな。何だよ」
「お願い……、ちゃんと話を聞いてもらえるかしら……」
さっきまでの態度が一変し、急にか細い声で言われた。
何だよ、そんな目で見ないでくれないか。
泣きたいのは俺の方なんだけど。
とりあえずここまでです
グダグダになってしまった
乙←サキサキポニーテール
乙←サキサキカワイイヨネ
乙
気にしないでさっさと書けよ。
どもです
では続き投下
× × ×
「ほら、雪ノ下。紅茶淹れ直したぞ。これでも飲んで落ち着け」
なぜかすすり泣いている雪ノ下の前にティーカップを差し出す。
どう考えてもこの場面で泣いているのは俺の方じゃねーのか。
雪ノ下は紅茶に一口、もう一口と手を付けているうちに少しずつ落ち着きを取り戻してきた。
そして、カップをソーサーに置くと再び口を開き始める。
「比企谷くん、あなたはさっき私に何と言って告白したのかしら?」
「おい、お前。俺にもう一度恥をかかせる気かよ……」
何この罰ゲームは?
雪ノ下は不快そうに返してくる。
「私に告白することが恥だと言いたいのかしら?」
怖ぇーよ、その顔。
泣き顔かわいかったからもっかい泣いてくれねーか。
「んなわけねーだろ……」
「ならもう一度言いなさい!」
だから怖いって。
とにかく怖い。
あまりにも怖いので観念して言うことにします。
だから、もう睨むのやめて貰えませんか。
「ゆ、雪ノ下……、俺と……」
こんなこと2度も言わせるなよ……。
みるみる紅潮してくるのがわかる。
「違うわ! その前よ!」
やめろ、その顔。
睨むなよ。
今晩夢でうなされてしまいそうだぞ。
それにお前の日本語、よくわからんぞ。
今のだって相当恥ずかしかったんだぞ。
「俺は……雪ノ下……雪乃のことが……好きだ……」
消え入りそうな声でぼそぼそ言う。
「聞こえないわ。もう一度」
何この羞恥プレー。
どんだけSなんだよ、こいつは。
「俺は雪ノ下雪乃のことが好きだ。雪ノ下雪乃に恋をしている……」
開き直って言ってやった。
「そ、そ、そ……、そう言ったわね……」
顔を真っ赤にして答える。
羞恥に悶える雪ノ下。
もうこれ以上正視に耐えない。
俺を悶絶させる気か。
俺にはデレはないんだよ。
「つまり、その、お前は『愛している』と言ったのに俺はそこまでは言っていないと
言いたいのだな」
ついに耐えられなくなった俺が代わりに言葉を繋いだ。
「え、ええ……。だから、その……、あ、あなたにそう言ってもらうまでは付き合うわけには
いかないわ」
め、めんどくせー。
なら言ってやるよ。
「雪ノ下、愛してるよ」
恥ずかしいのでさらっと言ってやった。
「あ、あなた、私のことを小馬鹿にしているのかしら……」
雪ノ下がプルプルしながら怒る。
いや、ほんとめんどくせー。
こりゃ千年の恋も冷めてしまうって。
恨みつらみが籠った目をしながら雪ノ下は続ける。
「私はあなたに行動で示して貰いたいのだけれど……」
何を言いたのかよくわからない。
無暗に反応してもうこれ以上地雷を踏まないように続きを待つことにする。
「あなたは『少しずつ変わる必要があった』と言ったわね?」
「ああ」
「だから、行動で示して貰えないかしら。それに、私自信も少しずつ変わる必要があると言ったの
だからそうするつもりよ……」
「ああ、わかった」
もうこれ以上話すこともあるまい。
互いの想いを確かめ合い、進むべき道が定まったのだから。
「あと、平塚先生が提示した勝負もまだ雌雄が決していないわ」
しかし、雪ノ下は取ってつけたように話を続ける。
俺は雪ノ下らしくない行動に一瞬戸惑いを感じながらも、話を合わせる。
「ああ、そうだな……」
ここまで来たら、もうこんな勝負には意味はない。
茶番もいいところだ。
これからは雪ノ下と議論を尽くし最善の方法を模索して奉仕部の活動進めていくことになる。
雪ノ下もそんなことはわかっているはずだ。
「ええ、そうよ……」
目をそらすように答えた雪ノ下の顔には翳りの表情が見て取れた。
やはり、雪ノ下雪乃もわかっていた。
そう、由比ヶ浜結衣の気持ちに。
俺も雪ノ下もあれほど嫌っていた馴れ合いを選んでしまった。
これからは依頼に対する方針で正面切って対立し、決裂することはない。
だから、あの勝負は雌雄を決することのない出来レースに過ぎない。
だから、卒業まで3人の関係に波風を立てないようにするための方便にしか過ぎない。
しかし、そんな嘘偽りを受け入れてしまう自分に嫌悪することはなかった。
由比ヶ浜が会長に立候補することを決意した時、俺はそれを否定しなかった。
きっと、あの時からこうなってまでも雪ノ下との本物を得ることを心の奥底のどこかで望ん
でいたのであろうから。
ではまた明日です
乙
どっちもめんどくせー
でもそこがいい
宣伝されてたから見に来たが、
昔の由比ヶ浜シリーズより劣化してるな
乙
そして同一人物だなこれ
由比ヶ浜シリーズってなんだ…
乙
なんか大変なことになってるみたいだけど気にせず頑張ってね
毎日待ってる
めんどくさいんじゃなくて、単純に話が進んでないだけだな。
細かく投下して休憩入れてればわからんかもしれんが、
日単位でまとめて読むとA→A→A→Abって感じ
上げるなカス
ティーカップの時もこんな感じで進めば進むほどダグダグになっていったよね…
追い付いたと思ったら小出ししすぎて長く感じる、アカギみたい
由比ヶ浜シリーズってなんだ?
あとなんで渋に行かないんだ?
向こうならコメで荒れないだろうに
向こうで一ヶ月に一回投稿みたいな感じでいいんじゃなね
やたら細かく投稿しているけど
投下かと思ったら外野がざわついているのかよ
本日分投下開始します
× × ×
雪ノ下と向かい合って静かに紅茶を啜る。
最後の一口を飲み干した俺は名残惜しさを感じながらゆっくりとカップを置く。
「じゃあ、そろそろお暇させてもらうわ」
「ええ。もうこんな時間になってしまったわね」
雪ノ下の視線を追って壁時計を見ると2時半近くになっていた。
午前様もいいところだ。
そうとわかると急に疲れを感じた。
しかし、それは心地よい疲労感であった。
そういえば雪ノ下に渡すものがある。
カバンをまさぐって取り出すと剥き出しのまま雪ノ下に差し出した。
「こ、これはパンさんのニューイヤーバージョンのぬいぐるみだわ!」
雪ノ下は目を輝かせながら受け取った。
「誕生日プレゼントだ。まあ、2日遅れになったけどよ」
「比企谷くん、ありがとう」
雪ノ下は歓喜の声で答えた。
学校ではクールな知的美少女で通っている雪ノ下も素顔は17歳になったばかりの女子高生だ。
大人びて見えるがこんな一面があってもいいはずだ。
雪ノ下は慈しむようにパンさんのぬいぐるみをつんつんつついたり、プニプニさせたりしながら
相好を崩している。
「ところでこれはどこで手に入れたのかしら? 確かあと3種類あるはずだわ」
体を前のめりにして訊ねてきた。
こいつは本当にパンさんには目がないんだな。
そんな雪ノ下を見て微笑ましく思った。
ただ俺も馬鹿ではない。
それを顔に出した瞬間に雪ノ下に射すくめられ氷漬けにされてしまうことぐらいわかっている。
表情に表れないように静かに見守った。
「これか? ゲーセンのクレーンゲームで取ってきた」
「そう。それでバイトの後あんなにも遅かったのね」
「ああ。さすがにプレゼントだからな。店員に取ってもらうのもアレだから15分もかかって
しまった……」
自嘲気味に笑いながら話すと雪ノ下は好機とばかりに軽く罵倒してくる。
「あなた馬鹿なの。3種類とも取って来てくれることがわかっていたのならば、いくらでも
待っていたのだけれど」
そう言いながらも照れている雪ノ下。
こいつにとってパンさんは本当に宝物なんだな。
俺もついに堪え切れず笑みが漏れ出す。
「あのな、そんなことしたら俺の一日分のバイト代が吹っ飛んでしまうわ」
何のために小銭稼いだんだよ。
この世間知らずのお嬢様め。
「ところで、比企谷くんはバイト代を何に使うつもりだったのかしら?」
そういえば俺は4月から予備校に通おうと思ってバイトをした。
それも奉仕部での居心地が悪くなったからだ。
でもこうして雪ノ下とも和解はできたわけだし、敢えて放課後に通う理由もなくなった。
「あー、バイト代か? 大学出てもすぐに結婚して専業主夫とはいかんだろ。だから、アレだな。
結婚するまでの生活費を貯めてるんだ」
雪ノ下は頭に手をやるお決まりポーズをとりながら、溜息をつく。
そして、ジトっとした目を向けてこう言った。
「この私がそんなこと許すわけないじゃない……」
「へっ!?」
な、何言ってんのこの人……。
「な、な、な、何でもないわよ……」
この時、雪ノ下がどんな顔をしていたかは知らない。
きっとこの時の俺の顔もまた、雪ノ下には見られたくないものになっていたことだろう。
「……」
「……」
しばしの沈黙ののち、外からパトカーと救急車のサイレンが賑やかに聞こえてきた。
もうこれで何度目のことだろうか。
不吉な予感がしてシックな柄のカーテンに覆われた窓に近づこうと立ち上がった。
「待って!」
俺の行動を先読みしたのだろう。
雪ノ下に勢いよく遮られる。
ああ……、そういうことか。
やっぱりこいつも夢見る乙女なんだな……。
慌てて立ち上がる雪ノ下の一歩後ろに続く。
雪ノ下は窓の前で立ち止まると、カーテンの隙間を少しだけ広げると何かを確かめるように覗き込む。
すると次の瞬間、勢いよくカーテンを開け放ったかと思うと満面の笑みで振り返ってこう言った。
「比企谷くん、雪よ!」
手招きされるまま雪ノ下の左側に立つ。
窓の向こうには雪空が広がっていた。
空全体を覆う厚い雪雲は街灯のナトリウムランプが夜空に放つ光を反射し、オレンジ色に染まっている。
そのオレンジの雲から白い牡丹雪がその重みに耐えかねるかのように無数の大群を成して降下してゆく。
そして雪の弾幕の向こうには工業地帯の眩い光と海を行き交う船の灯が見える。
「綺麗ね……」
「ああ、綺麗だな……」
いつの間にか俺の肩に寄りかかってきた雪ノ下にそっと声をかけた。
こんなところで
では
>>426
4種類だった……
思いっきり間違えた
おつ~
今日の>>1は早見沙織だったな…(2ch Mateの話)
完全に失敗です…… orz
投下開始
× × ×
1月6日。
今日から3学期が始まった。
放課後を迎えた廊下は活況を呈しあちらこちらから歓声が聞こえる。
もちろん俺はその輪の中にはいない。
それらに目もくれず、声から遠ざかっていく。
静けさに包まれている特別棟の4階の一室に辿り着く。
このドアに触れるのは実に半月ぶりだ。
この冬休みはカレンダーの都合上4日ほど長かった。
そのせいだろうか懐かしい場所に帰ってきた気がする……。
「うっす」
「こんにちは、比企谷くん……」
── いや、違う。
いつもの弾んだ声が戻ってきた。
「……新学期を迎えたらその腐った目も幾らかまともになるかと思ったのにさらに腐敗が進んでいるわ」
いつもの雰囲気がこの部屋に戻ってきた。
「うっせー、新学期早々、俺のテンションを下げること言うのやめてくれる。今日ぐらい爽やかに過ご
させてくんない」
「この男は腐敗臭を漂わせながらいったい何を言っているのかしら──」
ああ、この感じだ。
俺が懐かしく感じていたのは不毛なやり取りが交わされるこの場所だ。
やっと取り戻したいつもの雰囲気に、いつもの場所に心が安らいだ俺は、椅子に腰かけると
いつものように本を開く。
雪ノ下も一通り俺への罵倒を終えると静かに読書に戻る。
互いにページを繰る音だけが時の流れを伝えている。
ただいつもと違うのは、時折顔を見合わせては目をそらすことぐらいだ。
たったそれだけのことだが、なんだか心地が良い。
「やっはろー」
静の時間から動の時間へと時が変わる。
「おう、由比ヶ浜」
「こんにちは、由比ヶ浜さん」
「! ゆ、ゆきのん」
微に入り際に入ることに長けている由比ヶ浜は雪ノ下の変化に気が付く。
「ゆ、ゆきのーん!」
こんなゆりゆりしい光景を見るのはすごく久しぶりだ。
「ゆ、由比ヶ浜さん、暑苦しいから離れて頂戴……」
「じゃ、俺コーヒー買ってくるわ」
ひんやりとする廊下をマッ缶目当てに歩く。
あとは2人の問題だ。
俺の問題は解決した以上余計な口ははさむべきではない。
きっと戻ってくる頃には何事もなかったかのようにいつもの奉仕部に戻っていることだろう。
しかし、冬休み最終盤の3日間に俺と雪ノ下との間で交わされていたことを由比ヶ浜は知らない。
いずれ、そのことは3人の関係に影響を与えるかもしれない。
だけど今はそれでもいいと思っている。
比企谷八幡と雪ノ下雪乃は何よりも嫌っているはずの馴れ合いを受け入れることにした。
それは、互いに相手への想いを育んでいくために必要だからと結論づけたからだ。
── だから、今はこのままでいい
そう信じて購買へと向かった。
─完─
とりあえずこんな感じで終了です
室内で二人で雪見~始業式当日の部分はおまけとして切り離すことにしました
レスくれた皆さん、最後まで読んでくれた皆さん、どうもありがとでした
終わり…なの…?
続いてもええんやで
レスどうもです
打ち切りマンガのような終わり方になってしまいました
省略した部分はかなり長々となってしまったので、いったん切り離しました
でれのんの迷走と八幡VS陽乃をちょこっとという感じです
じゃあ別編として書いてくれるのね!?
早くしろよ
はい
途中までできました
>>440修正版
「やっはろー」
静の時間から動の時間へと時が変わる。
「おう、由比ヶ浜」
「こんにちは、由比ヶ浜さん」
「! ゆ、ゆきのん」
微に入り細に入ることに長けている由比ヶ浜は雪ノ下の変化に気が付く。
「ゆ、ゆきのーん!」
こんなゆりゆりしい光景を見るのはすごく久しぶりだ。
「ゆ、由比ヶ浜さん、暑苦しいから離れて頂戴……」
そう言いつつも雪ノ下は心なしか嬉しそうにしているように見える。
「じゃ、俺コーヒー買ってくるわ」
ひんやりとする廊下をマッ缶目当てに歩く。
あとは2人の問題だ。
俺の問題は解決した以上余計な口ははさむべきではない。
きっと戻ってくる頃には何事もなかったかのようにいつもの奉仕部に戻っていることだろう。
では明日からおまけを投下します
土日のどちらかは投下できないかもしれません
とりあえず乙
すごい面白い
オマケも気になるわ
原作も元の奉仕部に戻ったら良いな…
乙
おまけすげー楽しみ
ああ、またいつものダグダグ一直線コースの延長戦突入ね
>>453
うぜえ
お呼びでないから帰れ
ディグダ、ディグダ、ダグダグダグ
>>455
同じこと思った
もうすでにダクダクなんですがそれは…
ゆりしーのでぃぐだぐだぐだ可愛いれす
萌え豚に媚売るだけの豚の餌みたいなSSばっかりで嫌気が差してると、
こういうキレッキレのSSが心地よく感じるようになるんだよな
そう感じた読者が固定住人になる
ラノベは読者の萌えを叶える豚の餌供給機でいろって言いたい奴らが多いようだが
作品性を持ったSSも世の中には必要なんだよ
せやな
おまけ投下開始です
1月5日。
俺は始業式前日であるこの日を迎える瞬間を雪ノ下雪乃の家で過ごした。
なんとか雪ノ下とは生徒会役員選挙以来の胸のつかえを解消し、和解に至った。
「んじゃ、そろそろ俺帰るわ」
「ええ……」
窓際でぴったり身を寄せていた雪ノ下が名残惜しそうに答える。
時計を見るともう3時近い。
この調子じゃ冬休み最終日はひたすら寝て過ごしそうだ。
「比企谷くん、これ使って」
玄関に降りて靴の爪先をトントンとする背後から雪ノ下は傘を差し出してきた。
外は雪が降っている。
ちょうどその様子をついさっきまで雪ノ下の住む15階の部屋から見ていた。
「いや、いいわ。駅から自転車押して帰らないといけないからな。それに雨と違って
たいして濡れはしない」
俺は雪ノ下の好意に振り返って答える。
「だめよ。風邪を引いても困るし、何より自転車を押していたら万が一の時危ないわ」
突然の雪のせいで事故が多発しているのだろう。
今晩はやたらと救急車とパトカーのサイレンがけたたましくなっている。
雪ノ下は不安そうに俺の顔を覗き込む。
「ああ、わかった。自転車は明日取りに行くから」
こんな表情を見せれたら仕方がない。
雪ノ下から傘を受け取ると、重厚な作りのドアを開けた。
「比企谷くん、ちょっと待って──」
× × ×
「で、なんでお前がここにいるの?」
高層マンションのエントランスを出るとなぜか雪ノ下は横にくっつくように立っていた。
白いコートにマフラー、冬用のブーツという完全武装の出で立ちだ。
こいつはこんな夜中にコンビニでも行くの気なのだろうか。
それこそ、万が一襲われでもしたらどうするつもりだ。
雪ノ下の行動がさっぱり読めない。
不安を感じて声をかける。
「なぁ、雪ノ下……」
「見て、比企谷くん! まだ誰にも踏みしめられていない雪よ!」
煉瓦敷きの石段の先に広がるアスファルトの上にはうっすらと施された雪化粧が一面に
広がっている。
俺の声を遮るように歓声を上げた雪ノ下は強引に俺の手を取るとバージンスノーの上
へと駆け降りる。
「お、おい! 危ねーだろ……」
思わず滑って転びそうになってしまった。
俺が転べば雪ノ下もまき子れて転んでしまう。
それなのに雪ノ下は涼しい顔をしている。
滑り止めの施されているブーツを履いている雪ノ下は嬉々として雪の上を歩き回り、
俺を引き回す。
引っ張られている俺はスニーカー履きだ。
早速雪に触れた部分が濡れて生地に染み込んでくる。
足元から熱を奪われ、ブルッと身震いしてしまう。
しかし、雪ノ下はそんな俺の心中を察することなく無邪気にはしゃいでいる。
普段のクールな雪ノ下とのギャップに思わず驚いてしまった。
そうだ、雪ノ下雪乃といえどもまだ17歳になったばかりの女の子だ。
これが本当の雪ノ下雪乃、心を許した相手だけに見せる本当の雪ノ下雪乃 ── そう、
俺だけにしか見せてくれない雪ノ下雪乃だ。
「比企谷くん、見て、見て! この雪の上にあるのは私たちの足跡だけよ!」
雪ノ下の無邪気な笑顔を見ているうちに、寒さに凍える俺の顔も自然とほころんでくる。
「ああ、そうだな。俺たちの足跡だけだな──」
今日はここまでです
とりあえず寝ます
おつ
ほら、収集つかなくなってきちゃってんじゃん…
なら見なければいいだけの話
ゆきのんはしゃぎすぎw
まあ途中からどんどんキャラ崩壊止まらなくなるのは前からだし、今さら文句付けられてもね
ほんと嫌なら見るなって話
こっちはこっちで、もう原作離れてある意味別キャラとして楽しんでるんだからさあ
テーカップの悪夢再びってかww
凄く書くの上手いのに、調子に乗りすぎて自滅をまた繰り返す>>1残念可愛い
荒らし多すぎんよ
気にせずどうぞ
今帰ってきました
では投下
× × ×
「もう、そろそろ帰らないか。風邪引くぞ……」
雪ノ下の小さな手に引かれるままに幕張の浜にやって来た。
高層マンションからほど近いところにある幕張海浜公園内にある人工砂浜だ。
埋立地に造られた海岸ゆえに侵食は激しく、毎年夏を前に砂を満載したダンプが列をなすの
はもはや風物詩となっている。
その人工砂浜には凹凸となった地面に沿ってまだらに雪が積もっている。
波打ち際で雪ノ下と一つ同じ傘に入って潮騒を聞きながら遠く海を見つめていた。
雪雲が乱反射したナトリウム灯が水平線をうっすら照らし出している。
そのオレンジ色に染まる水平線を行く船の灯が手を振っているかのように揺らめいていた>。
「そうね。こうしてふたりで静かに海も見られたことだし満足したわ。戻りましょう」
雪ノ下は素直に応じるとくるりと反転した。
この気まぐれなお姫様の聞き分けの良さにホッと安堵する。
実は俺は既に寒さの限界を感じていた。
砂浜を歩いているうちに俺の短靴には砂に混じって雪が入り込んでいた。
その雪は靴の中で溶けて靴下が気持ち悪いくらいまとわりついてる。
しかも、濡れた靴下がまた冷たい。
そういうわけで、足元から底冷えする寒さが全身に伝わってきている。
しかし、雪ノ下の掌からしっかりと温もり受け取っていた俺の右手だけは体温を奪われるこ
とはなかった。
海浜公園を出ると再び街灯に映し出された人気のない道を進む。
相変わらず舞い落ちてくる牡丹雪が黒々としたアスファルトを覆い隠すのに躍起になっている。
「さっき私たちがつけた足跡も隠されてきているわね」
「ああ、降り止みそうにもねーな」
少しずつ降り積もる雪の上を俺たちは傘の中で寄り添うように歩いた。
マンションの近くの交差点まで戻ってくると不意に雪ノ下は足を止める。
「足が冷たいのだけれど……」
「お前のブーツは底が厚いだろ」
何甘えた声で言ってるんだよ。
…………。
困ったことに雪ノ下が何を要求しているのかわかってしまった。
「雪が染みてきて歩くと冷たいのだけれど……」
「どう見ても防水加工されているだろ」
いくら人目がなくてもそれは断る。
そういうのに免疫がない俺を悶え殺す気か。
「とにかく歩くたびに寒さが伝わってくるのだけれど」
「傘はどうすんだよ」
傘を持った左手を突き出し、手が塞がっていることをアピールする。
とにかく俺はしないったらしないぞ、そんな恥ずかしいこと。
それにさっき俺のことフッただろ。
彼氏でもできたらそいつにやって貰え……っていずれは俺がやんの?
それは断る。
「傘は私が持つわ」
「ほらよ、傘返すぜ。さっさとついて来い」
繋いだ手を解き雪ノ下に傘を押し付けるとさっさと歩きだす。
今日のこいつはなんだかおかしい。
「馬鹿ー」
ドスッ……。
雪ノ下が雪玉をぶつけてきた。
何なのお前、小学生なの?
振り返ると2発目が飛んで来る。
何拗ねてんだよ。
思わず苦笑してしまう。
「……。ああ、わかったから。やればいいんだろ、やれば」
何だこのお姫様は。
最愛の小町にすらやったことないんだぞ。
「な、ならば早くなさい。こ、こっちは恥ずかしいのだけれど」
お前何もじもじしているんだ。
恥ずかしいのは俺の方だ。
仕方なく雪ノ下をお姫様抱っこするとマンションの前まで送り届けてやった。
明日は早朝から出かけるのでここまでです
ところで綿ゴミってどうやってできるんですかね
雪乃の喋り方がおかしい、ヘタクソ過ぎる
雪乃がかわいすぎて吐血
佐藤吐いた
佐藤介抱してくる
原作知らないから、面白ければいい
面白いよ!
乙です
はまちの二次創作と思って楽しんでる奴なんかいねえよ
オリジナルのつもりで楽しんでるんだから外野がガタガタ言うな
帰宅
本日分投下
× × ×
「……うっせーな。眠てーぞ……」
外で遊ぶ子どもの歓声で目を覚ましてしまう。
二度寝しようにもその声はやみそうもない。
諦めてカーテンを開ける太陽が燦々と輝いて眩しい。
昨日の荒天が嘘のようだ。
雪ノ下と2人で見たあの銀世界は幻だったのか。
視線を下ろすと近所の小学生が雪合戦をしている。
雪はかなり融けてシャーベット状になっていた。
まだまだ寝足りないが、当分雪合戦は続きそうだ。
起きたついでだ雪ノ下に傘を返しにでも行くとするか。
眠気覚ましにシャワーを終えて外に出ると子どもたちの姿は消えていた。
雪解けでぐしゃぐしゃになった路面には所々、黒いアスファルトが露出している。
この様子では明日には雪は姿を消していることだろう。
雪ノ下から借りた真っ赤な傘を片手に歩いていると、行き交う人にチラチラと見られ
て気恥ずかしい。
昨晩は雪ノ下と別れた後、ほどなくして携帯が鳴った。
くれぐれも自転車を駅に置いて帰るようにという雪ノ下からの念押しの電話だった。
たったそれだけの用件だったが俺が家に着くまで通話は続いた。
俺と雪ノ下は部室でさほど会話を交わすことはない。
その肝心な内容も大概は雪ノ下の罵倒か俺のトラウマ話くらいだ。
それゆえに電話でも大して会話が続くわけもなく何度も途切れ途切れになったが、
俺も雪ノ下も決して電話を切ろうとはしなかった。
言葉数が少なくても互いに安心感のようなものを感じたのだろう。
少なくとも俺はそんな気持ちだった。
駅前の駐輪場に着くと雪解け水で濡れた自転車を雑巾で丁寧にを拭う。
今までこんなことをしてこなかったので気づかなかったが、2年半乗り倒したシティ
サイクルは痛ましいほど満身創痍になっていた。
その様子を見て、つい自分と雪ノ下の姿を重ねてしまう。
昨晩、互いの想いをぶつけ合ってそれを斟酌してわかり合っていなければこの先どう
なっていたことだろうか。
接合部が錆びて脆くなっていたスポークをさすりながらそんなことを考えていた。
水を綺麗に拭き取り終えると自転車は命を吹き返す。
早速鍵を差し込んでみたもののすぐに引き抜く。
どうしてかわからないが、雪ノ下の家まで歩いてみたくなった。
雪ノ下の住む高層マンションの前に来た。
昨晩2人でつけた足跡を探してみるが、ぐちゃぐちゃになったシャーベットに跡形もなく
消されている。
その代わりに幾筋かのタイヤ痕が一直線に走っている。
自分の大切なものを踏みにじられたように感じられて何だか気分が悪い。
気を取り直してオートロックのインターホンを鳴らすと雪ノ下はすぐに応答した。
『5分待ってもらえるかしら──』
雪ノ下の言葉通り5分ほどでオートロックが解錠されると、エレベーターに乗り込む。
高速で登るエレベーターの窓からボーッと外を眺めるとみるみる間に視界が開け目の前に
海と空が広がってくる。
清々しいほどにスカイブルーの空にはワンポイントのようにしつらえられた三日月が白く
うっすらと浮かび上がっている。
ここ最近月を見ないと思っていたら、日中に出ていたらしい。
赤々と燃えている太陽に対して慎ましく輝いている三日月。
しかし、太陽に決して怯むことなく凛として流麗な弧を見事に描き出す三日月の姿は美しい。
それは、雪ノ下雪乃の姿にちょうど重なって見える。
ふと、終業式の晩に見た異形の月のことを思い出す。
満月を過ぎたばかりのあの日、右半分が徐々に闇に蝕まれ始めていたあの下弦の月の姿だ。
欠けた部分を隠し、あたかも満月としての威容を誇ろうとして煌々と輝いていたあの月。
それはとても醜悪でおぞましいものに見えた。
奇しくもあの日出会った雪ノ下陽乃の歪な人格そのもののようだった。
俺はあの日、悪意に満ちた雪ノ下陽乃に対して敵意を剥き出しにした。
このまま引き下がる雪ノ下陽乃ではない。
生徒会役員選挙では雪ノ下雪乃のことを守りたい一心で動いた俺だが、この先雪ノ下陽乃の
悪意から彼女のことを守ることができるのであろうか。
そんな不安が心の中に芽生えてきたのであった。
× × ×
最上階に到着しエレベーターを降りると、雪ノ下は部屋の前で昨晩と同じ白いコートにマフ
「おう、雪ノ下」
「おはよう、比企谷くん」
互いに照れることもなく自然な挨拶だった。
これなら明日からもこれまで通り普通に接することができそうだ。
「昨日は傘サンキューな。ところで、お前今から出かけるとこだったのか。悪かったな。
じゃ、また明日な」
傘を渡すと踵を返してエレベーターホールへと向かう。
「ま、待って……比企谷くん」
雪ノ下に呼び止められる。
「あー、何した?」
「この後時間空いているかしら」
顔を反らしながら訊ねてくる雪ノ下がちょっとかわいい。
いや、かわいすぎる。
「パ、パンさんを……い、一緒に……取って欲しいのだけれど……」
そういえば昨晩こいつに2日遅れの誕生日プレゼントだってパンさん人形を渡した時、
全部で4種類あるって言っていたな。
どうやら正月バージョンのパンさんを4体ともコンプしたいようだ。
「ああ、いいぞ。俺もあんましうまく取れないがな……」
「あら、今回は自力で取る気なのね」
雪ノ下が意外そうな顔をして言った。
そんなに驚くなよ。
昨晩だって1000円以上つぎ込んで自分で取ったんだぜ。
まあ、そんな風に驚かれても仕方がない。
由比ヶ浜の誕生日プレゼントをふたりで買いに行った時もパンさんをゲットした。
しかし、俺が取ったわけではなく店員に頼んで取って貰った。
その時の雪ノ下はいつも以上に不機嫌な表情で俺を見ていた。
こいつの不機嫌な表情は何というか怖い、とにかく怖い。
さすがに同じ愚を繰り返す訳にはいかない。
「そうね。あなたはバイトで資金潤沢だものね」
「おい、お前さっき一緒に取ってて言ってなかったか」
それにお前ん家、金持ちだろ。
社長令嬢が何甘えてんだ。
「あら、こんな美少女があなたのことを不憫に思ってデートしてあげると言っているの
だから当然ではないのかしら」
雪ノ下さん、さらっと今凄いこと言いませんでしたか。
デートですか……。
惚れた男の弱みに付け込みやがってと思いつつもまんざらではない。
しかし、俺は決してデレたりはしない。
「へいへい。じゃあ、行くぞ」
努めて不愛想に答えると俺たちはエレベーターに乗り込んだ。
乙
だから上げんなよ
だから上げんなよ
上げんなよ
連投すんなよ
キャラ崩壊させんなよ
脱線すんなよ
余計な展開やめろよ
ガハマ乱入で修羅場か陽乃突入で地獄か
二人以上人間の絡みマトモに書けない作者だからおもしろいことになると思うww
良くない意味で
いいなこういう話
原作に興味出てきた
ただいま帰宅
今週はずっとこんな時間に帰ってきそうです
では投下します
× × ×
オートロックのドアを出ると、バシャバシャとシャーベット状の雪を巻き上げながら
一台の車がマンションに寄せてき来た。
見覚えのある黒いハイヤーだ。
嫌な予感がする。
俺も雪ノ下も立ち止まり思わず身構えてしまった。
残念ながら予感は的中だ。
後部座席から姿を現したのは雪ノ下陽乃だった。
「あらー、雪乃ちゃん。それに比企谷くんも── 」
見る者を皆騙す作り物の笑みを満面に湛えて近寄ってくる。
その笑みを見ると本当に虫唾が走る。
隣にいた雪ノ下は俺のコートの裾をぎゅっと掴むと後ずさった。
やはり実家に帰っている間にこいつは姉に牙を剥かれて散々な目に遭わせられたのだろう。
俺は自分の表情がたちまち険しいものへと変わっていることに気付いた。
さて、どうするものか。
こうしている間にも雪ノ下陽乃はにじり寄ってくる。
「雪ノ下、行くぞ!」
雪ノ下の手首を掴むと強引に引っ張って歩道へと続く階段を駆け下りる。
下りの段に足を取られながらも雪ノ下は必死に着いてくる。
雪ノ下には手荒な真似をして申し訳ないが、ここは一戦を交えない方が良いと本能が言っている。
一刻も立ち去らなければならない。
なおも雪ノ下の手首を強引に引っ張り、雪ノ下陽乃の脇をすり抜けるように強引に突破しようとした。
しかし、両手を広げて立ちはだがる雪ノ下陽乃に進路を塞がれてしまう。
万事休すだ。
やっと取り戻したいつもの雰囲気に、いつもの場所に心が安らいだ俺は、椅子に腰かけると
雪ノ下も一通り俺への罵倒を終えると静かに読書に戻る。
互いにページを繰る音だけが時の流れを伝えている。
ただいつもと違うのは、時折顔を見合わせては目をそらすことぐらいだ。
「二人とも感心しないなー。長幼の序という言葉を知らないのかなー? こういう時はそちら側から挨拶す
べきだと思うんだけどなー。どうなの、雪乃ちゃん?」
ネチネチとした物言いで雪ノ下陽乃は絡んでくる。
雪ノ下があからさまに狼狽をしているせいか、いつも以上に余裕たっぷりのいやらしい笑みを
浮かべる。
「……」
どうしたものか。
あの勝気な雪ノ下雪乃が押し黙っている。
斜め後ろにいるせいで雪ノ下の表情はわからない。
心配になって振り返りたい衝動が突き上げるが、ぐっとこらえる。
きっと雪ノ下自身もそんな姿を俺には見られたくはないだろう。
「あら、どうしたの雪乃ちゃん。何か答えたら……」
声の端々からも滲み出てくる悪意。
雪ノ下陽乃はもはやそれを隠そうとはしていない。
黙ってやり過ごそうと思っていたが、どうにも我慢ができない。
俺の知っている雪ノ下雪乃はいつだって己の足で立って凛然としている。
その雪ノ下雪乃が反論一つできずにただ立ち尽くしているだけだ。
俺は雪ノ下雪乃が弱っている姿を見たくはない──。
「雪ノ下さん、今あなたのことを無視してやり過ごそうとしたのは俺なんですが……」
そっちがネチネチした物言いなら、こっちはチクチクと行かせて貰うまでだ。
「比企谷くん、ちょっと黙ってて貰えないかなー。これは雪ノ下家の問題なの。部外者は口を
挟まないで欲しいんだけど」
余裕綽々という態度を見せて軽くあしらおうとする。
しかし、ぼっちの慧眼を舐めて貰ったら困る。
今確かに雪ノ下陽乃の表情の中には苛立ちが混じっていたのが見えた。
一筋縄ではいかないどころか俺ごときが太刀打ちできない相手であることはわかっている。
でもどうしても雪ノ下陽乃には一矢報いてやりたい。
「ねー、雪乃ちゃ……」
掴んでいる雪ノ下の手首からピクッとした振動が伝わってくる。
「あのー、俺はいつも部外者でありたかったんですけど、その部外者を引きずり込んで散々振り
回してくれたのはどこのどちらさんでしたっけ──」
ありったけの皮肉を込めて自分でもいやらしいくらいの声と表情で雪ノ下陽乃を挑発する。
雪ノ下陽乃は忌々しいものを見るかのような目つきで睨んでくる。
「文実の時、その誰かさんが馬鹿な委員長を迷走させてくれたおかげで色々と皺寄せを受けたのはこの俺
なんですけどねー」
「へー。でも比企谷くんも文実のメンバーなんだから副実行委員長を支えるのも当然の仕事だよねー」
そんな問いはとっくに織り込み済みとも言わんばかりにさっきにもまして余裕満点で答えてくる。
こっちこそそんなのは想定内だ。
まずは俺の話に乗せるのが狙いだ。
そうすることで雪ノ下に直接刃が向けられることはない。
あとはどれだけ俺に注意を引きつけられるかが勝負だ。
残念ながら俺がこの歪な人格形成がなされている化け物相手に立ち振る舞うのはこれくらいが限度だ。
持久戦の中で相手の綻びを瞬時に見つけそこに付け入ることしかできない。
そのためには苛立ちを募らせるしかない。
もう自分自身を傷つけるやり方 ── 雪ノ下雪乃が嫌うこのやり方は二度と使うまいと固く決心したはずなのに、
こんな手段しか持ち得ていない自分が嫌にな
しかし、一体ほかにどんな方法があるというんだ。
キリが悪いけどここまでです
眠いので寝ます
>>523修正版
「文実の時、その誰かさんが馬鹿な委員長を迷走させてくれたおかげで色々と皺寄せを受けたのはこの俺
なんですけどねー」
「へー。でも比企谷くんも文実のメンバーなんだから副実行委員長を支えるのも当然の仕事だよねー」
そんな問いはとっくに織り込み済みとも言わんばかりにさっきにもまして余裕満点で答えてくる。
こっちこそそんなのは想定内だ。
まずは俺の話に乗せるのが狙いだ。
そうすることで雪ノ下に直接刃が向けられることはない。
攻撃の矛先は俺に向き続けることになる。
だから、どれだけ俺に注意を引きつけられるかが勝負だ。
残念ながら俺がこの歪な人格形成がなされている化け物相手に立ち振る舞うのはこれくらいが限度だ。
持久戦の中で相手の綻びを瞬時に見つけそこに付け入ることしかできない。
そのためには雪ノ下陽乃の苛立ちを募らせるしかない。
もう自分自身を傷つけるやり方 ── 雪ノ下雪乃が嫌うこのやり方は二度と使うまいと固く決心したはずなのに、
こんな手段しか持ち得ていない自分が嫌になる。
しかし、一体ほかにどんな方法があるというんだ。
乙
>>519
眠気でテキストのコピペミスってしまった……
今度こそ寝ます
って俺じゃなかった。
粘着死ね
しねとか言うのはやめとけよ…
耐性低すぎますぞ。スルーしましょうよそれくらい
面白いからいいじゃん
なんか2ちゃんで>>1さんの言動オチされて笑われてるから余計なこと言わない方がいいよ
粘着嫌なら他所行けよ。
他所だったらスレであれこれ言われるかもしれないが
投稿している場所のコメ欄では強く言われないだろ。
/-─ニヽ} _____
/¨ア´. . . . . }´. . . . . . . . . . . . .
. . . . . . . . . . . . ..ノ. /. . . . . . . . . . . . 、. . . 、
{.乂.、 __,.ノ. . ..イ. . . . . . /. . . . . ノ. . . . . . . . . . . .
{´. . . . . . . . イ. ′. . . . .,′. . . / |. . . . . . .|.. . . . .
〉ー─. . "/. ..Ⅳ. . . . . ./. . . . / .. .. ... .. ..|^ . . . ..
/. . /. . . . ,′ Ⅳ. . . . . ., |./. . .'.,__| /.. . .. ..′ 、. . ..}
. /. . /}. . . ..,. . . . ′. . . . .ハ{ '.. .{ }/. . . . ./、 }. . ハ
/. . .,' |. . . .∧x¬. }. . . . .| ∨ ノ |.. . ../ 丶 |. . ト..}
{∧. |,ノ. . . ,'. { |∧. . .Ⅳ斗=ミx ノ/ ' /|. . | リ
\{. . . .,. ..ヘ |′\ | 、、、 ´ xr=ミ /. . . .′
/. . . .|. .\\ ` 、、 `/. . i . ′
/ノ|. . ..|. . . .\ー 、 , ′ノ}./
/´ 、. .|. . . . |. \..ト し {⌒ __ ,. /´ノ′ はい、わかったわかった!
\.{ 、 . |.!. . . ..| 丶 У ノ. { この話はもうやめよう
\\|j\.ト } ` .、 イト、..|
─弌 ̄ ̄`riト、| .ト、 >-<ハ. / \〉
/ \\ { ' ∨ | , |/ V r─‐ 、 、
/ {ヽ.' Vi! | { ̄ヽ¨'く´^ `ヽ / | ./' / 7
,′ ∧ ', ゙, V ト、_ 〉 ゙, | ゙, , ' / /
| ∧ } , | 丶 ` __ '"´} ∨ ( ヽ / / / / /)
| | ゙ { У ノ__,ノ / | 、∨/ ′// '′
| | ` ' /\__,.イ \ | '′ /
| | ,′ \ 丶 | ,′
それが由比ヶ浜の最期の言葉だった
帰宅しました
寝る前に投下です
だからといってほかの方法は何も浮かばない。
仕方がない。
このまま続けるか……。
「それに俺だけじゃなく随分といろんな人間を巻き込んでくれましたよね。折本にその友達、ついでに
葉山も。そんでもって小町にまで電話を掛けて来てくれて迷惑もいいところなんですが、これも『雪ノ
下家の問題』ってやつなんですかねー」
そっちが舐めてかかってくるなら、こっちは小馬鹿にしてかかるまでだ。
こういうプライドの高い人間は格下と思っている相手から愚弄されることを良しとしない。
プライドが許さないだろう。
それなら卑屈に陰湿に迫って失点を燻りだしてやる。
しかし、この程度のジャブをもろともする雪ノ下陽乃ではない。
まだまだ余裕の表情で返してくる。
でも、少なからず俺の言葉に内心イラッと来たはずだ。
「あら、比企谷くん。今の様子を見るにこれから雪乃ちゃんとデートするところなんでしょ。
いずれは末永く雪ノ下の人間とうまくやっていかないといけないことになるのだから、これも
立派な『雪ノ下家の問題』だと思うなー」
かなり強引な返しだが、揺るぎない自信満々の態度を見せる雪ノ下陽乃。
俺も人のことは言えないが、よくもまぁこんな減らず口を次から次へと出てくるものだ。
さすが雪ノ下雪乃の姉ってところだ。
とりあえず俺の目論見通り、雪ノ下陽乃は俺の話に乗ってきている。
このまま雪ノ下に流れ弾が行かないように次の一手を打つまでだ。
「そういう割には、終業式の日のアレは何ですかね。折本と居るところに雪ノ下を呼び出すわ、
折本のことを彼女だと吹き込むわ。一体どういう風の吹き回しなんですかねー」
要領を得ない話でダラダラと時間を空費させて、引き延ばす。
雪ノ下陽乃はこの展開にそろそろ飽きて来ているはずだ。
じらしたところで次の新たな一手を打てばいい。
「平坦な恋愛なんてつまらないじゃない。障壁があってこそ燃え上がるものでしょ。
比企谷くん、あなたみたいなつまらない底辺の人間にとっては雪乃ちゃんは本来手の届かない
高嶺の花なのよ。
どういう訳か雪乃ちゃんは変な熱病にあてられて血迷ったみたいだけど、勘違いしてもらっちゃ
困るのよねー。だからお姉さんとしては、あるべき姿になるようにしているだけなんだけどなー……」
この手の安い挑発には俺は乗らない。
この程度の罵詈雑言くらいじゃ俺の気持ちは掻き乱されない。
こんなものはとうに慣れている。
俺の斜め後ろに入る奴に普段もっとひどい扱いを受けているからな。
ただ、雪ノ下陽乃の放っている言葉は俺だけに向けられたものではなく、妹である雪ノ下に対
しても向けられているものである。
雪ノ下がこの安い挑発に乗ってしまわないか心配だ。
「……ねっ、雪乃ちゃん」
いきなりのカウンターパンチを喰らった。
コートの裾を掴んでいた雪ノ下の手が離れた。
それはあたかも係留していた船が鋲から離れてしまったかのようだった。
急に俺の身が軽くなり、不安定に宙に浮いてしまった気がした。
雪ノ下に応戦させてはならない。
咄嗟に言葉を繰り出す。
「じゃあ、そろそろ本題に入らせてもらいましょう── 」
雪ノ下陽乃は再びこちらに視線を向ける。
「何、何……。面白い話でも聞かせてくれるの? 比企谷くんの話に飽きてきちゃったからねー」
嫌味たっぷりに返してくる。
なら俺もたっぷり返してやる。
「話が合いますね。俺もあなたの醜悪な笑顔を眺めているのに飽き飽きとしていたところです……」
雪ノ下陽乃は憮然とした表情になる。
そろそろ仕上げだ。
「雪ノ下さん、あなたもう二十歳ですよね? いい歳した大人が高校生に見苦しいちょっかいをかけて、
右往左往している姿を高みの見物しながら嘲笑している。それが大の大人のやることなんですかね。
あなたは本当に誰からも愛されていないからそんな歪な人格が出来上がった。この底辺の俺が本当に
憐れんでしまうくらい寂しい人間なんですね……」
「比企谷くん、やめなさい!」
雪ノ下雪乃のそんな怒声とともに頬に衝撃が走った。
「これ以上私の家族を愚弄することはこの私が許さないわ」
雪ノ下は凄い剣幕で俺を睨んでくる。
俺を打った右手はそのままの高さの位置で留まっていたが、ぴんと伸びていた指先は畳み込まれ握り
拳へと変わっていた。
そして、その手はわなわなと震えていた。
「それから、姉さんも姉さんだわ。もうこれ以上他人を巻き込むのは止めてもらえないかしら。私を潰
したければ回りくどいことなんかしないで、直接この私に刃を向けたらどうなのかしら」
雪ノ下は一気にまくしたてると、ハーハーと息を切らしている。
雪ノ下陽乃は一瞬、目を真ん丸にしたが、すぐに元の不快な笑みに戻った。
「あー、つまらない。とんだ茶番を見せられたわ。……都築、出してちょうだい」
あっけない幕引きだった。
結局、俺のしたことは無駄な足掻きだった。
やはり俺は雪ノ下陽乃にはかなわない。
完敗だ。
それと雪ノ下陽乃の言う「茶番」の意味が分からなかった。
しかし、その意味を考える間もなく答えは出た。
「馬鹿―― 」
グスッ…… と音を立てながら雪ノ下雪乃はそう言った。
そして、俺のコートの二の腕を両手で掴むとそこに顔を埋めた。
「どうしてあなたはそうやって自分自身を傷つけるような方法をとるのかしら── 」
言い訳なら出そうと思えばいくらでも出すことはできる。
だが、そんなことを考える気にはなれなかった。
冷たい海風がヒリヒリする頬に染み込む。
「……だから、あなたとは付き合うことはできないのよ── 」
雪ノ下の言葉が全身に重くのしかかった。
こんなところで
では
八幡や雪乃の思考及び言動に違和感ありまくるのは俺だけ?
八幡なんだけど雪乃なんだけど、違うみたいな
そうか?特に気にならないが
まあ、なんとなく似てればいんじゃない。
同人誌みてーなもんだ。
まず家の話や葉山との過去なんかで完全にゆきのんを理解できるレベルまで情報出てないから踏み込んだ部分になるとどうしても創作になるだろ
そこから先は自分の妄想と合致してるか否かしかない
>>547
だから名前が同じなだけのオリジナルだっつってんだろ!帰れボケ
言動から考え方まで原型留めてないしなww
一日一回煽りの書込みお疲れ様です
>>550
前のもそうだったけど、このSSのキャラ崩壊は
原作の情報とか全然関係次元で突っ走ってるから…
そういうのどうでもいい
日本語でおk
【R-18】モバマスのあのね【閲覧注意】
雪乃SSならこれよりも小町と組んでるやつの方が「らしい」感じ出てるよね
やっぱり見てる人の反応も住人被ってるはずなのにここと全然違うし
偉そうに
お前がらしいの書けばいいだけだろ
一日一回煽る書き込みしてるだけで同一人物だから構うな
はまち関係のスレはアンチ雪乃もアンチ結衣も対立厨も俺芋荒らしも全て同一人物ってことにしないと荒れるからな
そして冬になった……
もう続き書かないの?
出張、忘年会、外出と数日フラフラしてました
では、投下開始します
× × ×
雪ノ下陽乃と一戦を交えたおかげで、とてつもない疲労感を感じている。
やっぱりあの人の相手は疲れる。
茶番だと一言言い残して去って行ったが、後味の悪さは半端ではない。
事もあろうか守ろうとしたはずの雪ノ下雪乃から思わぬダメージを喰らってしまった。
こりゃもうパンさんを取りに行くって雰囲気ではない。
せっかく和解できたっていうのに雪ノ下との距離がまた一歩遠ざかった気分だ。
「なぁ、雪ノ下。今日は止めにしないか?」
「ええ、そうね……」
当然の流れだ。
でも、明日からまたどうやって接したらいいんだ?
考えるだけで気が重い。
雪ノ下に掛けた言葉とは裏腹にこのまま帰るわけにはいかないという心境になっている。
しかし、この流れで誘っても断られかねない。
そこでさり気なく雪ノ下の気持ちを探ることにした。
「腹減ったから飯買って帰るわ」
「カレーならまだ残っているわ……」
雪ノ下も同じことを思っていたのか、見事なまでの模範解答で喰いついてくれた。
とりあえずホッと胸を撫で下ろす。
さて、ここからが肝心だ。
「比企谷くん、お待たせ」
雪ノ下から紅茶を受け取ると食後の一服となった。
フルーティーだが、どことなく上品さを感じる味を楽しむ。
部屋の中には紅茶の芳香がほんのりと漂っている。
そのせいか、特に会話は交わしてはいないがリラックスした気分になる。
カップの中に残っていた最後の一口分を飲み干すと雪ノ下に声を掛けた。
「なぁ、雪ノ下……」
窓の外に広がる海を見つめながらカップに口をつけていた雪ノ下は静かにこちらを向いた。
「良かったらこれから改めて一緒にパンさんを取りに行かないか?」
それは想定外の質問だったのだろうか。
しばしの沈黙ののち答えた。
「……え、ええ。行きましょう……」
高層マンションのエントランスを出ると暖かな日差しが迎えてくれて、心地が良い。
しかし、アスファルトの上のシャーベットはさらにだらしなく溶けて全体が薄茶色に染まっていた。
まるで雪ノ下陽乃の置き土産のように感じられて、ちょっとした鬱を感じる。
煉瓦敷きの階段から歩道に降りると水をはじく音がした。
「雪ノ下、足元が悪いが付き合ってくれ」
一応、サービスで気遣いの言葉を掛けておく。
「私は底の高いブーツだから大丈夫よ。それよりも比企谷くんの方こそ、短靴だから濡れそうね」
とクスッと微笑んだ。
どうやら機嫌が直ったらしい。
このまま機嫌の良いうちにさっさとパンさんを取ってしまって後顧の憂いは断っておきたい。
左に曲がると駅に向かう道が続くがそちらには向かわず、右の方向へと体の向きを変えた。
「比企谷くん、駅とは反対方向なのだけれど……」
困惑した声色で雪ノ下は言った。
「ああ、お前ん家でのんびりし過ぎたから近場にするわ。それに昨日遅くまで付き合ってくれたからお前も疲れているだろ」
正直なところ俺も疲労を感じている。
昨晩のこともさることながら、さっきの雪ノ下雪乃との件でもかなりのエネルギーを使った。
「近場ってどこ……?」
雪ノ下はまさかという表情をしている。
ああ、そのまさかだ。
「近場ってイオンモールくらいしかないだ……」
「駄目よ!」
言い終わる前に雪ノ下が血相を変えて返してきた。
「だって……、一緒にいるところ……、誰に見られるかわからないわ……」
俯き加減に消え入りそうな声で続けた。
フラれたとはいえ「愛している」とまで言われた相手に拒絶されるのはちょっと辛い。
しかし、嫌がる雪ノ下を無理やり連れて行って元の木阿弥と化してしまうことだけは避けなけれ
ばならない。
「さいですか。昨日のゲーセンも街中にあるからダメだな。なら、ららぽーとでいいか?」
「ええ、そこならいいわ」
× × ×
「……」
「……」
俺と雪ノ下は息を殺してクレーンの挙動に目をやっている。
ここまでの釣果は無し。
しかし、あともう少しでパンさんがゲットできそうだ。
「あーーーー」
「あーーーー」
ふたり同時に落胆の声をあげる。
虚しくもあと一歩というところでパンさんは落下した。
だが、そのパンさんは次で確実に取れそうな姿勢で落下してくれた。
今度こそきっちりと仕留めてやる。
そう思って手元を見るとさっき積み上げたばかりの百円玉が瞬く間に無くなっていた。
両替機で千円札を崩して戻ってくると雪ノ下は勝ち誇った顔をして取ったばかりのパンさんを
見せつける。
「おい、雪ノ下…… 」
「何かしら、へたっぴさん。あなたがもたもたしている間に私はたった一回で手に入れたわよ」
雪ノ下はちゃっかりと漁夫の利を得ていやがった。
これまでの俺の千円はいったい何だったのか。
抗議をしたところで、「勝負とは非情なものなのよ」とか言われそうなので黙ることにした。
「比企谷くん、腐った目でボーっとしていないで早く次のを取りなさい── 」
× × ×
ワインレッドの帯のついた電車で俺たちは帰路についている。
行きに乗ったのとは違うタイプの新型車両だ。
新型といっても他の路線では既にメジャーになっているので京葉線に限っての話だ。
京葉線には同じラインカラーがついていても様々なタイプの車両が走っている。
こういうと聞こえはいいが、要は他路線のお下がりが宛がわれているだけだ。
そういえば京葉線を走っているのはワインレッドだけではないな。
中学の頃まではスカイブルー一色に全面塗装が施された旧型車両も走っていた。
ギシギシと軋みながら豪快なジェット音を立てていた。
ほかにも東京に近い辺りまで行くと武蔵野線のオレンジの帯の車両も同じ線路を走っている。
鉄ちゃんには夢のような路線なんだろうが、俺にはそういう趣味はない。
そんなことをおぼろげに考えながら睡魔と闘っている。
雪ノ下は正月限定のパンさんをフルコンプした充足感からか俺の肩にもたれながら
すやすやと眠っている。
眠りにおちながらも大事そうに抱えているトートバッグの中には7体のパンさんが
入っている。
昨晩は4種類あるうちの1体を雪ノ下にプレゼントした。
だから計算上はあと3体のはずだが、そうは問屋が卸さぬだ。
狙いを定めたはずなのにどういうわけか重複したものが取れてしまう。
そのたびに雪ノ下から「また同じものを取ってどうするつもりかしら」と痛罵される
のだが、「それはいらないわ」と決して言われない。
悪態をついておきながらちゃっかりバッグの中に収めていたのだ。
結局、一日分の労働の対価以上の金額を支払って俺は6体のパンさんを取った。
しかし、雪ノ下に労いの言葉は掛けられていない。
それは俺が直接取ったのは昨日の分を含めて3種類だったからだ。
残りの1種類は雪ノ下が手柄を横取りするように取ってしまった。
俺の多額の投資は決して報われることはなかったが、それでもいい。
雪ノ下が安心しきったように眠っているのだから。
× × ×
1月6日、放課後 ──
購買の自販機でMAXコーヒーを買った俺はいつもより時間をかけてその甘みを心ゆくまで
味わった。
その後、宛てもなく校舎内をブラブラした。
生徒会室の前を通ると一色いろはの声が漏れ聞こえてきた。
足を休ませてみると、一色の声がところどころ明瞭なものとして廊下まで届いてくる。
どうやら他の生徒会役員に指示を出しているようだ。
「会長、わかりました」
この返事が聞こえると、一色はさらにまた何か指示をしている。
一色の声が止むと再び、役員から甲斐甲斐しい返事が返ってくる。
めぐり先輩の付きっ切りの後輩指導のたまものか、それともうまいこと葉山とお近づきになって
助言をもらったのか、もともとの一色自身の資質かは知らないが今のところうまく機能しているよ
うだ。
なら一色いろはを祭り上げて会長にしてしまったことを気に病む必要はない。
どうせ何か困ったことがあれば奉仕部に依頼しに来るだろうしな。
急に身が軽くなった感じがしたので、再び歩みを始める。
そろそろ部室に戻るとするか。
「おーい、戻ったぞー」
いつものようにぶっきらぼうに言って部室に入ると、そこは懐かしさを感じる在りし日の奉仕部
へと戻っていた。
「比企谷くん、あなた一体どこで油を売っていたのかしら。いえ、売っているのがあなただと
わかったら誰も近寄っては来ないわね。傷つくことを思い出させてしまってごめんなさい」
「むしろお前の言葉が一番俺を傷ついているんだが……」
いつもの雪ノ下に戻っていた。
由比ヶ浜とも和解したのだろう。
「そんなことよりもヒッキー、ゆきのんと仲直りしたんだよ」
そんなことって何ですか、そんなことって。
由比ヶ浜にも軽く傷つけられたが、本人は全く意に介していないようだ。
まあ、こいつはアホの子だから仕方がないか。
「ゆきのーん、大好きー」
そんな由比ヶ浜は雪ノ下に抱き付く。
いつも見ていたゆりゆりしい光景だ
「ちょっと、由比ヶ浜さん離れなさい。暑苦しいわ」
頬を真っ赤に染めながら、由比ヶ浜を振りほどこうとする。
ええではないか、ええではないかと悪代官風に応えてしまいたくなりそうなシチュエーションだ。
あなた方は本当に仲が良くていいことですねと自分の席について読書を始める。
紅茶の香りが再び漂うようになった奉仕部は今日も平常運転だ。
× × ×
「今日はもう終わりにしましょう」
いつものようにこう言って雪ノ下雪乃は本を閉じた。
本日の奉仕部もこれで店仕舞い、さっさと帰るとするか。
でも、今日はその前に……。
「ねーねー、ゆきのん、サブレの餌を買って帰るから一緒にペットショップに行かない?」
由比ヶ浜はいつものハイテンションでこう言った。
3学期初日から元気で結構なこと。
こいつは将来5時から女になりそうだな。
「今日は疲れているから遠慮するわ」
「そっかー。ゆきのんってあんまり体力ないもんね。で、ヒッキーは?」
「断る」
「即答だし。じゃあ、サブレがお腹を空かしているから帰るねー。ゆきのん、ヒッキー、また明日」
そう言うなり部室を飛び出しって行った。
「あいつはサブレが腹空かしているのわかっててペットショップでゆっくりするつもりだったのか」
「サブレが不憫でならないわ」
雪ノ下は額に手をやりながらそう答えた。
「それはそうと、私たちもそろそろ出ましょう、最終下校時刻よ」
「雪ノ下、ちょっと待ってくれ」
急いでカバンの中をまさぐる。
「どうしたの、比企谷く……」
「ほら、これでフルコンプだ。これで文句ないだろ」
昨日俺が取り損ねた最後の1種類のパンさんを差し出す。
「こ、これはどうしたの……?」
狼狽している雪ノ下の手に鋭い爪をとがらせているパンダを押し付ける。
「これか? あの後な小町に頼まれたお遣いついでにイオンモールで取って来たわ」
昨日は雪ノ下をマンションの前まで送った後、駅で自転車を回収してから 再びクレーンゲームに
挑戦したのだ。
小町のお遣いとはもちろんでまかせである。
追い金を払うこと1500円、何とか手に入れのだ。
「ひ、比企谷くん……。ありがとう……」
雪ノ下はパンさんを抱きしめると頬ずりしている。
何これ、自分がされているみたいでこそばゆいんだけど。
そんな雪ノ下を見ているうちに何かにあてられてしまった、そうとしか言いようがない。
俺は今はまだ我慢しなければならない雪ノ下雪乃との本物がどうしても欲しくなった。
「なぁ、雪ノ下……。俺と付き合ってください── 」
「── ごめんなさい。今は無理」
「ちゃんと最後まで聞いてくれるようにはなったんだな」
「ええ、そうよ。質問の内容次第では返答も異なるのだから」
「おいおい、今のは質問扱いかよ」
俺クラスの超S級のぼっちだと告白すら告白と受け取られないのね。
雪ノ下さん、それはちょっと酷過ぎませんか?
「ええ、そうよ」
ちょっと拗ねて身支度を始めようとすると、
「ちょっと待ちなさい」
と雪ノ下に呼び止められた。
雪ノ下の方に顔を向けると俺の目をしっかりと見つめながらこう言った。
「あなたとは友達になるつもりはないわ。いえ、むしろ友達程度で終わるつもりはないわ── 」
その澄んだ瞳に吸い込まれそうになる。
「だから、今はこれで我慢なさい。これは、あなたにだけしか見せない私の姿よ── 」
その時の雪ノ下の姿は一生忘れることはないだろう。
とびっきりの笑みを浮かべたかと思うと、ゆっくりと片目をつむり、軽やかに小首を傾げた。
みるみる間に俺の体温が上がっていく。
これ以上直視できない眩しさだ。
思わず目を背けてしまう。
「……比企谷くん、この私がこんな恥ずかしいことをしたのに目を反らすとはいったいどういう了見かしら?」
ムスッとした口調で突っかかってきた。
「いや……、その……、なんていうかぼっちはこういうのには弱いんだわ……」
今の心境をと訊ねられたところで的確な表現が見当たらない。
言葉にならないってこういうことなのか。
「雪ノ下……、悪いがもう一回……」
「嫌よ。断るわ」
間髪を入れず即答しやがった。
「ああ、そうですか」
「ええ、そうよ」
そう言いながら雪ノ下は満面の笑みを見せる。
これでも十分に目を反らしてしまいたくなりそうな笑顔だからもうこれ以上の贅沢は望まない
でおくか。
そう考えながらやっぱり目が泳いでしまっている俺。
こりゃ通報されても仕方ないくらいきょどっているなと自分でもわかってしまう。
そんな俺を見ながら雪ノ下はクスクスと笑う。
「比企谷くん、さっきの姿が見たいのならこれから精進なさい── 」
× × ×
部室を出ると特別棟の廊下には暗がりが広がっていた。
朝に出た三日月はまだ空に輝いているはずだか、その月明かりはまだ弱々しいせいか廊下には差し込んで来ていない。
慣れた手つきで施錠しながら雪ノ下はいつものように言った。
「私は鍵を返してくるからここでいいわ」
「じゃあな、雪ノ下」
「さようなら、比企谷くん。また明日」
雪ノ下に背を向けて暗がりの中を突き進んで行く。
雪ノ下とは完全にこれまでの関係に戻ったことを再認識した次第だ。
しかし──
「待って、比企谷くん!」
「何した?」
振り返ってこう答えると、雪ノ下は言った。
「やっぱり職員室までついてきてもらえるかしら。平塚先生に『元の』奉仕部に戻ったことを報告したいから」
「ああ、平塚先生にも心配かけたからな。『元の』奉仕部に戻ったことを伝えた方がいいな。『元の』な」
「ええ、そうよ。『元の』よ」
雪ノ下と俺は繰り返して「元の」という言葉を強調して言った。
俺も雪ノ下も互いに嫌っているはずの嘘をついている。
確かに表面的には奉仕部は元の姿に戻った。
いや、表面的なことを指すのであれば既に生徒会役員選挙の後には元の姿に戻っていた。
だが、同じ表面的なものでも今とその時とは意味合いが全く異なる。
由比ヶ浜結衣は比企谷八幡と雪ノ下雪乃のやり取りを知らない。
由比ヶ浜結衣が最も恐れているふたりのやり取りを知らない。
嘘、偽りに塗られた馴れ合いはいつかは綻びを生み出して全ては灰燼に帰してしまう。
そんなことはわかっている。
馴れ合いは比企谷八幡も雪ノ下雪乃も最も嫌っているはずの関係性だった。
しかし、今は違う── 。
俺が守りたかったのは……いや、一番守りたいのは雪ノ下雪乃だ。
そのことに気付いてしまった。
そして、そう……、比企谷八幡も雪ノ下雪乃も互いに相手に求めていた本物が全く同じものだということに
気付き、それをわかり合っている。
── だから、今はこのままでいい
改めて自分の気持ちを確認すると雪ノ下の隣に並んで職員室に向かった。
─完─
これで空白の時間を書いたおまけは終了です
レスをくれた皆さん、最後まで読んでくれた皆さん、どうもありがです
>>569修正版
左に曲がると駅に向かう道が続くがそちらには向かわず、右の方向へと体の向きを変えた。
「比企谷くん、駅とは反対方向なのだけれど……」
困惑した声色で雪ノ下は言った。
「ああ、お前ん家でのんびりし過ぎたから近場にするわ。それに昨日遅くまで付き合ってくれたからお前も疲れているだろ」
正直なところ俺も疲労を感じている。
昨晩のこともさることながら、さっきの雪ノ下陽乃との件でもかなりのエネルギーを使った。
「近場ってどこ……?」
雪ノ下はまさかという表情をしている。
ああ、そのまさかだ。
「近場ってイオンモールくらいしかないだ……」
「駄目よ!」
言い終わる前に雪ノ下が血相を変えて返してきた。
>>577修正版
「おーい、戻ったぞー」
いつものようにぶっきらぼうに言って部室に入ると、そこは懐かしさを感じる在りし日の奉仕部
へと戻っていた。
「比企谷くん、あなた一体どこで油を売っていたのかしら。いえ、売っているのがあなただと
わかったら誰も近寄っては来ないわね。傷つくことを思い出させてしまってごめんなさい」
「むしろお前の言葉が一番俺を傷つけているんだが……」
いつもの雪ノ下に戻っていた。
由比ヶ浜とも和解したのだろう。
おつかれさま
なんか尻切れ感が…
乙
>>598
いつものことだ、いちいち文句言わないの
>>598
ならお前が書けばーか
>>598
2次小説全般に言えることだけど、毎回少しずつ投稿するタイプだと、綺麗な結末にはならないよ。
テーマ決め、ラストを考え、全体の骨組みを構築してから何度も書き直して初めてまとまった文章になるんだから。
無能な奴ほどよく吠える
ケチだけ一人前でSSなんて無理だろうな
せっかく完結したのに一人に過剰反応してどうするんだよ
乙 面白かった
綺麗な終わり方だった
…………綺麗……か?
行間広くて真っ白で綺麗だなー、とは思うけど
乙
>>602
まるで綺麗じゃない終わり方みたいな言い方するんだな
いい加減[ピーーー]よマジうざいんだよ
予想はしていたが荒れてるな
はまちssには何かこう、良くないモノを引寄せる力があるな。
書きためて一気に投下する方がいいのかねえ。
めぐりんで書こうと思っているんだがどうしたものか
>>611
粘着されるまでは気にしなくていいかも
今回は途中で書き換えたけどいつも書き終えてからスレ立てしてます
そのほうが楽です
ちなみに900レスまで行ったスレに一気に100レス近く投下したことがあったけど結構しんどかったです
>>612
参考になりました
ありがとうございます
>>612
参考になりました
ありがとうございます
>>612
参考になりました
ありがとうございます
エラーでともでもないことになった。ごめんなさい
乙乙←ゆきのんツインテール
>>612
参考になりました
ありがとうございます
只今帰宅しました
そういや、今日はクリスマスイブ
スレがまだ残っていたので今朝思い付きで書いたおまけのおまけを投下します
これでほんとの最後です
取りあえず24日中に帰宅できてよかった
おまけのおまけ
12月24日、終業式 ──
今日は奉仕部のクリスマスパーティーを千葉みなとの駅の近くで行った。
メンバーは俺と小町と雪ノ下、由比ヶ浜の奉仕部4人と顧問の平塚先生、戸塚、材木座の
7人だ。
つまりいつもの代わり映えの無いメンバーでどんちゃん騒ぎをしたわけだ。
変わったことがあるとすれば、学年が一つ進んで高3になったことと小町が奇跡的に総武
高に合格したことくらいだ。
その中でただ一人変わらないのが平塚先生、相変わらずの独身だ。
俺たちは今、店の前で会計で精算している幹事の由比ヶ浜を待っているところだ。
その由比ヶ浜もちょうど生産を終えてみんなの輪に加わってきた。
「比企谷兄妹と雪ノ下は同方向だな。それから、由比ヶ浜と戸塚も同方向だな。そして、
材木座は私と同方向だな」
宴席では一人酒を煽って愚痴をこぼし放題だった酔っ払いも一応、教師としての領分は
持ち得ているらしい。
各自が向かう方向をしっかりと確認した。
「よし、これで大丈夫だな。各自、気を付けて帰宅するように。では、解散!」
平塚先生の掛け声で三々五々帰路に着くことになった。
× × ×
「お兄ちゃん、雪乃さん、もっと楽しそうに会話をする!」
俺と雪ノ下の関係を知っている小町がじれったそうに声を掛けてくる。
俺は相変わらず雪ノ下からお預けの状態を喰らったままだ。
早くもそんな状態から1年近くを経過している。
由比ヶ浜にはまだに勘付かれていないようだが、小町に全てバレている。
というのも朝帰りした日に洗いざらいすべて話したからだ。
そこから進展は全くない。
「……」
「……」
「ごみいちゃんも雪乃さんもダメダメさんですなぁ」
小町は呆れたように溜息を一つ。
そうこうしているうちに千葉みなと駅に着いた。
クリスマスイブの8時過ぎという微妙な時間帯なので、いつもより人は少ない。
リア充どもめ今頃デートでもしやがっているのか。
そんな俺の思念が顔に出てしまったのだろうか。
小町が余計な一言を述べる。
「お兄ちゃん、いつもの5割増しで目が腐っているよ……」
ここぞとばかりに雪ノ下が喰いついてくる。
「全くね。クリスマスイブとは無縁な死に谷くんらしいわね」
「俺のことゾンビ扱いするのやめてくんない」
はぁー……。
小町が頭を抱えながら深いため息をつく。
「二人とも今夜くらいもうちょっとまともな会話ができないの……」
ホームまで上がると東京行の各駅停車が入線してきた。
さて、さっさとリア充の祭典で浮かれた街から離れるとするか。
電車に乗り込むとドア近くの席に3人で陣取る。
降車駅に着くまで寝ているとするか。
東京駅の京葉線ホームの発車メロディの劣化版のような曲が流れ終えた。
『3番線、列車が発車します。ドアが閉まりますからご注意ください── 』
男声アナウンスが終わるや否や小町が立ち上がる。
「あとは、若い者同士で!」
そう言い残すと車外に飛び出して行ってしまった。
プシュー……。
「お、おい……」
「えっ……、小町さん……」
そして、電車は走り出してしまった。
× × ×
2駅過ぎたところで、雪ノ下はもぞもぞと動き出すと携帯を取り出した。
メールを着信したようだ。
そして、メールを読み終わると額に手をやって深いため息をついた。
俺は気付かぬふりをしてやり過ごすことにしているが、雪ノ下が苛立った声で
話し掛けてくる。
「小町さんからメールよ……」
半ば携帯を押し付けられるように手渡される。
小町の奴め、さっきからメールしてんのになんで俺でなく雪ノ下にレスすんだよ。
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受信日時:12月24日20:22:38
差出人:比企谷小町
題名 : メリークリスマス!
本文「お邪魔虫の小町は次の駅で降りてタクシーで帰宅しまーす
今の小町的にポイント高い!
雪乃さん、ごみいちゃんのことよろしくです(○´w`○)ノ
それから、ごみいちゃん、雪乃さんのことちゃんとエスコートするん
だよ!」
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はぁー……。
お前空気読んだつもりなんだろうけどけど、これから一体どうしたらいいんだよ……。
あからさまに作られたシチュエーションで何をしろと言うんだ……。
ついに俺も溜息をついてしまった。
× × ×
降車駅の幕張海浜駅に着いた。
ここまで雪ノ下とは何一つ会話を交わしていない。
こうしてふたりきりでいられているわけだから、不満なわけがない。
ただ、俺も雪ノ下も小町の手の上で踊らされてしまったこの状況に戸惑っているのだ。
……ったく小町め、この状況を楽しめるんだったら俺も雪ノ下もぼっちなんかしてねーよ。
今度は俺の携帯が着信した。
小町からの電話だ。
『もしもーし。メリークリスマス!』
「何がメリークリスマスだよ」
メリーというよりメランコリーだぞ。
『小町はもうすぐタクシーで家に着くのです』
「そうかい。そりゃよかったな」
『……ったく、これだからごみいちゃんは……。雪乃、俺について来いってリードしなきゃ……』
何言っちゃってんの小町ちゃん。
俺がそんなことできると思ってんの?
それに呼び捨てした瞬間に俺の命の灯が消えちゃうんだけど。
『それで、雪乃さんとどこにいるの?』
「今、改札に向かってるところだ」
『で、お兄ちゃんは雪乃さんをちゃんと家まで送っていくんだよね?』
「いーや、改札出たらさよならだ」
『全くこれだから……。とにかく、雪乃さんをちゃんと送っていくこと。じゃなきゃ、家にチェーンを
掛けて中に入れないからね!』
ガチャッ……。
「おい、小町……!」
俺が恨みつらみを言いかけているのも束の間、再び雪ノ下の携帯が着信した。
× × ×
雪ノ下のマンションの前に着いた。
困ったことに小町の奴は0時まで家のチェーンをかけておくと雪ノ下に宣言しやがった。
これからどうすりゃいいんだよ。
今晩は今年一番の冷え込みだ。
余りにも寒いのでコートのポケットに手を突っ込んだまま両手を擦り合わせている。
「じゃあな、雪ノ下」
取りあえず、駅前の喫茶店で過ごすことにした。
クリスマスイブの日に深夜まで一人で喫茶店ってどういう罰ゲームなんだよ。
「待ちなさい、比企谷くん── 」
雪ノ下に呼び止められる。
「誠に遺憾ではあるけれど、時間までうちに上がってなさい……」
こめかみに手をやりながらそう告げる雪ノ下の表情はまさに遺憾の意を表明していた。
雪ノ下の部屋に上がると生気を取り戻したように体温が回復してくる。
「紅茶を淹れるからくつろいでなさい」
って、こんな状況でくつろげるかよ。
ふかふかのソファーに身を預けるが宙に浮いているような感覚がしてどうも落ち着かない。
そんなアウェーの俺とは違って自分の家に帰ってきた安心感からか雪ノ下はティーポット
にお湯を注ぎ込みながら鼻歌を歌っている。
こいつも普段からもう少しこういうところを見せていれば、可愛げがあるのにな。
「比企谷くん、どうぞ」
すっかり上機嫌になった雪ノ下から紅茶を饗される。
「お、おう、サンキュー」
急な変わり様に戸惑ってしまう。
雪ノ下はクスッと笑うがどういう意味が込められているのか全く分からない。
下手に何か喋って罵倒されるのも嫌なので、黙っていることにする。
「……」
「……」
相変わらず沈黙が続く。
小町に調子を狂わされてしまったせいなのか、クリスマスイブという非日常のせいなのか
わからないが、今日の沈黙はちょっと耐え難い。
雪ノ下とふたりきりのはずなのに、今日は苦痛に感じてならない。
早く家に帰りたい……。
そんなことを思っていると、雪ノ下はスッと立ち上がってキッチンに向かって行く。
そして、カチャカチャ音を立てて再び戻って来ると、無言で作業を始める。
「はい、比企谷くん」
それは、雪ノ下がたった今切り分けたばかりの手作りのホールケーキだった。
「おいおい、一人で半分も食えないぞ」
「本当は小町さんの分も計算に入っていたのだけれど、こうなったら仕方がないでしょう」
どうやら雪ノ下は俺と小町と3人で改めてクリスマスパーティーをしようと考えていたようだった。
「そっか……。悪かったな」
「いえ、いいわよ。比企谷くんとふたりきりだし……」
急に雪ノ下の声が小さくなった。
いきなりの急展開に驚いて、言葉が出ない。
雪ノ下はそんな俺を見て満足げに笑うとティーカップを別の物に換えた。
「クリスマスだしシャンパンといきたいところだけれど未成年だからこれにするわ」
トレイに乗せてきた別のティーポットから香りの良い紅茶が注がれる。
前に雪ノ下と和解したときに出された紅茶の香りだ。
「これはシャンパーニュロゼという紅茶よ。シャンパンの香りをイメージして作られた物よ」
「いや、シャンパン飲んだことないからシャンパンの香りと言われてもさっぱりわからんわ」
「そうね、シャンパングラスを持っている比企谷くんなんて滑稽すぎて見られたものではないわ」
今日の雪ノ下はとにかくよく笑う。
いつの間にか変な緊張感から解放されて心地よく感じる俺がいた。
× × ×
「さて、そろそろ0時だな。俺帰るわ」
「ええ、そうね。あまり遅くなると小町さんも心配するわね」
「いや、それよりも小町がチェーンを掛けっぱなしにして寝ていることの方が心配なんだが」
雪ノ下とふたりで顔を見合わせて笑ってしまった。
なんだかずっとこうしていたいのだが、そうはいかない。
カバンから包みを取り出すと雪ノ下に手渡した。
雪ノ下はまさか俺がプレゼントを用意しているとは思ってもいなかったのか、目を真ん丸に
して驚いている。
「中見なくていいのか?」
「え、ええ……」
我に返った雪ノ下は袋をそっと開けて中をのぞき込むと目を輝かせて言った。
「ありがとう、比企谷くん!」
普段見せることのない素敵な笑顔だった。
こりゃもう明日死んでもいいな俺。
雪ノ下は金メッキの施されたパンさんのついたオルゴールの音色に夢中になっていた。
「さて、帰るわ……」
今日はいいものを見せてもらった。
こんな雪ノ下の笑顔はそうそう見ることはできない。
曲が鳴りやむと満ち足りた気分なった俺は立ち上がる。
「比企谷くん、ちょっと待って!」
雪ノ下は隣の部屋に行くと包みを持って帰ってきた。
「これは、私から……」
包みの中から手編みのマフラーと手袋が出てきた。
「あなたの趣味合うのか自信はないのだけれど……」
ちょっと困った表情を浮かべながら上目づかいで見てくる雪ノ下。
可愛すぎて俺の方が困ってしまう。
「サ、サンキュー……」
早速着けてみると心地よい肌触りがした。
「まだ、包みの中に入っているのだけれど……」
中を改めてみると合格祈願のお守りが入っていた。
あと半月ちょっとでセンター試験が待っている。
雪ノ下の心遣いが嬉しい。
このあと、ふたりで静かに見つめ合ったあと玄関に向かった。
「なあ、雪ノ下……」
「何かしら?」
「今度お前の合格祈願のお守りを買いにいかないか……?」
「デートの誘いかしら?」
くすぐったくなるような笑みを浮かべながら訊ねてくる。
「……ああ、そうだ。今度は小町抜きでな」
あまりにも恥ずかしいので目を反らしながら言う。
「ええ、楽しみに待っているわ」
「じゃあな……」
そう言って振り返ろうとした瞬間 ──
雪ノ下の顔が急接近してきた。
そして、唇と唇が重なり合った。
「メリークリスマス!」
片目をつむり小首を傾げながら言う雪ノ下を見ているともうどうにかなりそうだ。
「メ、メ……、メリークリスマス」
こう返すのがやっとだった俺は雪ノ下にクスクスと笑われながら、帰路へ着いたのであった。
─完─
こんなところで今度こそ本当に終わりです
ではみなさん、メリークリスマスです
乙
おつ
SSよんだ俺の嫉妬でクリスマスがヤバイ
ケーキすら食べてないな俺は!!
ほんといつも書き足すたびに蛇足にしかならない…
俺も食ってないよ
>>646
毎度毎度粘着して気持ち悪い奴だな
お前友達いないから構ってもらいたいんだろ
おつ
今度は俺も入れて3人でデートしよう(錯乱)
>>650
お前は俺とするんだろ
最高だね。Tカップも良かったね
うんそうだね
Tカップ最高だったね(白目
最高だったらあんなに色んなところで笑われたりせんがな…
このスレでは必死に粘着してるお前の方が笑いものだけどな
それより早くSS書いてみろよ
俺も前にここで一回だけ投下の仕方に注文付けたら粘着扱いされたから分かる
>>655は住人煽ってわざと空気悪くするたちの悪い荒らし
このSSまとめへのコメント
読みにくいです
それな
シャンパーニュロゼ……。
色々と、シーンが飛びすぎて読みにくい
飛びまくりなのに大事な部分は無駄な文を入れまくってくどいっていうのが尚酷い。