比企谷「八十稲羽に転校…え?マジで?…」2スレ目(1000)

2スレ目です。どうぞよろしくお願いします。


前スレ
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スレ立て乙!

乙乙!

スレたて乙

おっつおっつ
ガハマ~俺だ~結婚してくれ~

めっちゃ楽しみ

マダカナー



―――――――――――


翌日の朝

通学路


     テク テク…

比企谷「…………」

比企谷(……くそっ)

比企谷(どう考えても……この文面)

比企谷(犯人からと考えるのが自然だ)

比企谷(…………)

比企谷(どうしてだ?)

比企谷(どうして俺の住所がわかる?)

比企谷(どうして俺が、俺達が、救出活動していると)

比企谷(知っている……!?)


比企谷(…………)

比企谷(俺の考えじゃ身近に犯人が居るとしか思えないが……)

比企谷(だとしても……誰だ?)

比企谷(…………)

比企谷(……花村達の中の誰かか?)

比企谷(確かにペルソナや【マヨナカテレビ】、そして、俺の住所を知っている)

比企谷(だが……だとしても、やはり動機が全くわからない)

比企谷(山野アナや小西早紀をあいつらが殺しても何の得にもならん……)

比企谷(…………)


八十神高校・校門付近


比企谷「…………」


??「……おはようございます」


比企谷「うわぁ!?」

白鐘「えっ!?」

白鐘「す、すみません……驚かせるつもりじゃなかったんですが」

比企谷「し、白鐘……か」 フウ…

比企谷「すまん……少し考え事をしててな」

白鐘「そうでしたか」


里中「おはよう! 比企谷くん!」

天城「おはよう」

雪ノ下「……おはよう」

花村「よう! おはよう、比企谷」

花村「どうした? こんな所で?」

比企谷「いや、何でもない」

白鐘「おはようございます、先輩方」

里中「ああ、白鐘くん。 おはよう」

天城「あれ? 白鐘くん、男の子の格好のままなの?」

白鐘「……迷ったんですけどね」

白鐘「もう周知の事実になっていますが」

白鐘「いきなりガラリと変わるのは、やっぱり難しいので……」

天城「そうだよね」


比企谷「まあ、スカート姿もいつか見たい気もするがな」

花村「だな。 可愛い顔してるし♪」

白鐘「~~っ」///

雪ノ下「その辺りにしておきなさい、エロザルコンビ」

花村「……何か、今日の雪ノ下さん いつも以上にキツイな」

比企谷「この程度、想定の範囲内だ」

雪ノ下「まったく……」


里中(意外な伏兵だもんね……)

天城(由比ヶ浜さんの反応も見たいなぁ……)



―――――――――――


放課後

屋上


白鐘「お待たせしました、比企谷先輩」

比企谷「いや。 こっちこそ急に呼び出してすまん」

白鐘「それで、僕に話したい事って何でしょう?」///

比企谷「……これを見てくれ」つ(手紙)

白鐘「手紙……ですか?」

     ガサ ガサ…

白鐘「!? こ、これは!?」

比企谷「昨日、俺の住処の郵便受けに入っていた」

比企谷「どう思う?」

白鐘「…………」


白鐘「犯人からの警告文……と見るのが妥当でしょう」

比企谷「だよな」

比企谷「正直、背筋が寒くなったが……お前に頼みたい事があってな」

白鐘「頼み?」

比企谷「鑑識作業だ」

比企谷「警察を頼れない以上、お前のツテを頼りたい」

白鐘「なる程……そういう事ですか」

白鐘「確かに指紋とか調べておきたいですね」

白鐘「わかりました。 お爺さまに相談してみます」

比企谷「頼む」


比企谷「それから、この事はみんなに内緒にしておいてくれ」

白鐘「……え?」

白鐘「まさか……先輩方の中に犯人が居るとでも?」

比企谷「…………」

白鐘「…………」

白鐘「……そうですね。 確かに状況的には一番考えられる可能性です」

白鐘「しかし」

白鐘「僕はむしろ、オープンにすべきだと思います」

比企谷「……何故だ?」

白鐘「まず、この手紙を送ってきた犯人の心理状態」

白鐘「一見、高みから見下ろすかの様に警告していますが」

白鐘「僕は逆に、みなさんの活動が犯人を確実に追い詰めているから」

白鐘「この様な手段に出たのではないか?と思うからです」

比企谷「…………」


白鐘「言ってみれば、犯人は焦りを感じている」

白鐘「オープンにする事で、さらに犯人は苛立ちを募らせ」

白鐘「とんでもないボロを出すかもしれません」

比企谷「…………」

白鐘「それともう一つ」

白鐘「仲間内で、特に事件に関しての隠し事は良くないですよ」

比企谷「……は?」

白鐘「仮にこのまま秘密にして、それが突然露見した時」

白鐘「僕と比企谷先輩の信頼は大きく失墜するでしょう」

白鐘「そういったリスクを孕む事になります」

比企谷「……なる程」

比企谷「俺たちの中で疑心暗鬼になるのは避けたいな」


比企谷「良くわかった、白鐘」

白鐘「いえ……」

白鐘「…………」

白鐘「二人だけの秘密、というのもやってみたかったですけど……」/// ボソッ

比企谷「ん?」

白鐘「な、何でもありません!」///

比企谷「?」

白鐘「……そうだ」

比企谷「ん?」

白鐘「実は、僕の方でも先輩達にお願いしたい事があるんです」

比企谷「お願いしたい事?」



―――――――――――


数日後

八十稲羽・総合病院


花村「健康診断……ねぇ」

白鐘「はい」

白鐘「あの世界が、人体にどんな影響を与えるのか未知数です」

白鐘「こちらで出来る限り調べておいた方がいいと思ったので」

里中「言われるまで考えた事もなかったじゃん……」

天城「そういえば最初の頃、気分が悪くなってたしね」

比企谷「まったくもって目からウロコだったな……」



―――――――――――


白鐘「皆さん、お疲れ様でした」

白鐘「いろいろと結果が出ましたよ」

花村「何か聞くのが怖ぇーな……」

白鐘「花村先輩、安心してください」

白鐘「僕を含めて、こちらの世界の人間に異常は見受けられませんでした」

里中「良かった~」

天城「ホッとしたね、千枝」

りせ「……ちょっと待って」

雪ノ下「『こっちの世界の人間』は?」

比企谷「クマに何か問題があったのか?」

クマ「ク、クマー!?」


白鐘「いえ……異常、というより」

白鐘「『何も分からない』事がわかった……という所でしょうか」

白鐘「これを見てください。 クマくんのレントゲン写真です」

     スッ…

里中「……何これ? 真っ白じゃん」

天城「どういう事?」

白鐘「担当の医師も首を傾(かし)げていました」

白鐘「機械の故障等ではなく、何度撮ってもこうなってしまうんだそうです」

比企谷「……まあ、クマの生まれは謎だしな」

雪ノ下「このくらいで驚かなくなったわ……」


白鐘「クマくんに関しては、触診等で異常は見つかっていませんので」

白鐘「まあ大丈夫でしょう」

クマ「クマ、全然平気クマよ~」

りせ「……ところで、レントゲン写真って勝手に持ってきていいの?」

白鐘「後で返しておきます。 問題ありません」

りせ「ふう~ん」

りせ「じゃあさ! みんなの検査結果も教えてよ!」

天城「え?」

花村「おっ! いいねぇ~」

花村「ぜひスリーサイズ的なの頼むぜ、白鐘!」

里中「ちょ!? 何言ってるの、花村!!」///

雪ノ下「白鐘くん、今すぐ返してきn」///

りせ「いいじゃない、スリーサイズくらい……えいっ」

白鐘「あ」


りせ「……!?」

りせ「ちょっと……白鐘くんの」

りせ「これ、計り間違いって事はないよね?」

白鐘「は?」

りせ「見た目からは全然合っていないと思うんだけど……」

花村「お、おい! それ、どっちの意味だ!?」

白鐘「と、ともかく!」/// バッ!

りせ「あ」

白鐘「みなさんの体に異常はありませんでしたから」///

白鐘「これは返しておきます!」///

    タッ タッ タッ…



―――――――――――


白鐘「それでは、頭を切り替えて」

白鐘「比企谷先輩、お願いします」

比企谷「……おう」

比企谷「あー ……結論から言うと」

比企谷「俺宛に脅迫文が届いた」


一同「!?」


里中「それ、どういう事!?」

天城「犯人から……って事なの?」

花村「……どんな内容だったんだ?」

比企谷「今から説明する」


比企谷「手紙の内容は、一言だけ」

比企谷「カタカナで”コレイジョウ タスケルナ”とタイプ打ちされていた」

花村「これ以上助けるな……か」

雪ノ下「手紙を見せてもらえるかしら?」

比企谷「すまん、白鐘に鑑識作業を依頼して預けている」

白鐘「警察はあてになりませんので……賢明な判断だと思います」

りせ「そっか」

クマ「カンシキサギョウって何クマ?」

里中「指紋とか調べる作業の事」

クマ「シモン??」

比企谷「簡単に言えば、犯人の匂いが残っていないか調べる作業だ」

クマ「クマもお手伝いするクマ!」

比企谷「気持ちだけもらっとく、クマ」


比企谷「……さて」

白鐘「いい機会ですので、これまでの事件を振り返ってみましょう」

白鐘「まず、最初の事件」

白鐘「山野真由美アナの殺人事件ですね」

里中「……すべての始まりだよね」

花村「だな……」

白鐘「警察の調べで当時、山野アナは議員秘書の生田目太郎氏との不倫報道で」

白鐘「相当参っていた」

白鐘「そこで身を隠す様に天城屋旅館に宿泊……」

白鐘「しかし、霧の午前中に宙吊り状態で通りかかった女子高生に遺体となって発見される」

花村「…………」


比企谷「テレビでその不倫相手の生天目が怪しいとか言ってたな」

白鐘「ええ。 しかし……」

白鐘「彼のアリバイは、テレビの世界を知った後でも崩せません」

白鐘「山野アナが亡くなった時、生天目は議員秘書を辞める為の事後処理で」

白鐘「八十稲羽に居ませんでした」

白鐘「そして何より動機がない」

天城「本妻の柊みすずとの仲は冷え切ってて……って話だったよね?」

白鐘「その通りです」

白鐘「後、わざわざこんな事件を引き起こしても彼に何の得もありません」

白鐘「不倫報道で、もうすでに社会的制裁は受けていたにもかかわらず」

白鐘「さらに事件を起こすとは考えにくい」


りせ「そういえば、生天目はその後、どうなったの?」

白鐘「八十稲羽の実家の家業を継いだそうです」

りせ「ふうん……」

白鐘「次に第二の殺人事件ですが」

白鐘「先の山野アナの遺体の第一発見者、小西早紀さん」

花村「…………」

白鐘「警察の調べでは山野アナはもちろん、生天目とも柊みすずとも特に接点はなく」

白鐘「動機は不明のまま、遺体の状況から同一犯として捜査されました」

白鐘「しかし……結果はみなさんが知る通りです」

里中「……やっぱり、犯人の動機がわからないと難しいよね」

白鐘「そして、表立ってはいませんが」

白鐘「失踪事件が相次ぎます」


白鐘「僕はまだ確認していませんが……」

白鐘「【マヨナカテレビ】に映し出された人間が次々に誘拐される」

天城「最初に私と千枝、そして雪ノ下さんと りせちゃんに白鐘くん」

白鐘「そうです」

白鐘「それにしても驚きました。 久慈川さんも誘拐されていたんですね……」

比企谷「それについては謝る」

比企谷「俺が警察の人間に目を付けられていたんでな……穏便に済ませたかったんだ」

白鐘「まあ仕方ないです」

白鐘「みなさんから見たら、僕も怪しい人物でしたでしょうしね」

雪ノ下「そして……久保美津雄の模倣殺人」

白鐘「ええ……」


白鐘「彼はみなさんが身柄を確保して警察が取り調べをし」

白鐘「諸岡さんと先の二つの殺人も自分がやったと自供……」

白鐘「ですが、彼の供述は諸岡さん以外は曖昧で、信用に足らず」

白鐘「僕の推理ともかけ離れている為、一連の事件とは無関係でしょう」

白鐘「何故、諸岡さんを殺し、先の二件の事件の犯人だと名乗り出たのかは」

白鐘「本人が謎の死を遂げているので、もうわかりませんが……」

里中「謎の……死?」

里中「!」

里中「それだ! あたしがずっと引っかかってたの!」

花村「どういう意味だ?」


里中「久保美津雄は、どうしてテレビの世界に入ったの?」

雪ノ下「自暴自棄になっていただけじゃ?」

里中「それは否定できないけど……テレビの中に入れたって事は」

里中「少なくとも『テレビに人を入れると死ぬ』事は知ってたって事じゃん?」

里中「死にたがってた様には見えなかったし……それに」

里中「先の二つの事件、どうして供述が曖昧になるの?」

白鐘「!!」

白鐘「…………」

白鐘「確かに妙ですね……僕は警察の調書にも目を通しましたが」

白鐘「殺害方法や日時等の矛盾ばかりで、テレビに関する供述は一切なかった」

白鐘「彼は、今回の事件とは無関係だと思っていましたが……」

白鐘「別の意味で、そうではない可能性も出てきましたね」


比企谷「新たな謎、か……」

雪ノ下「…………」

雪ノ下「久保美津雄は……テレビの事は一切知らなかった」

雪ノ下「だとしたら」

雪ノ下「真犯人に『入れられた』のかしら?」


一同「!!」


白鐘「……なる程。 そう考えるとしっくりします」

白鐘「しかし、そうなると またしても矛盾が出てきますね」

花村「と言うと?」


白鐘「彼もまた、諸岡さんと同じく」

白鐘「事前にテレビ報道されていません」


一同「……あ!」


里中「そっか……白鐘くんの法則から外れちゃうんだね」

天城「結局……いつもの通りになっちゃうのか」

比企谷「犯人の動機。 それさえわかればな……」

白鐘「いえ。 そんな事はありませんよ」

りせ「え?」

白鐘「確かに僕の言った法則から外れますが……推測にすぎませんし」

白鐘「それに、いいヒントになるかもしれません」

里中「ヒント?」


白鐘「ええ。 あくまで可能性ですが」

白鐘「久保美津雄の足取りを追っていけば、あるいは……」

花村「なるほど!」

花村「どこで居なくなったか調べれば、犯人につながるかもしれねぇな!」


     オオー!


りせ「かなり有力な手がかりになるかも!」

天城「これは、ひょっとしたらひょっとする?」

里中「言い出したあたしが言うのも何だけど……」

里中「意外な人物がキーマンになりそうだね!」

比企谷「…………」


比企谷(……見たところ)

比企谷(怪しい反応を見せる奴は、居ないみたいだな) ホッ…

比企谷(…………)

比企谷(……何ホッとしてるんだ、俺は)


白鐘「それでは、今日はこの辺で終わりにしましょう」

白鐘「脅迫文と久保美津雄について、何か分かり次第 連絡します」

花村「何かすまねぇな、白鐘」

白鐘「いえ……そもそも僕が犯人をしっかり目撃しておけば良かったんですから」

里中「それはしょうがないじゃん? 女の子なんだし」

天城「そうだね。 得体の知れない犯人が相手だもの」

花村「だな」


花村「普段からは想像もできねーが、怖くて注意力散漫になったってのも」

花村「可愛いって思えるってもんだぜ」

白鐘「~~~っ」///

花村「お前もそう思うだろ? 比企谷」

比企谷「ギャップ萌えってやつか」

比企谷「まあわからなくはない」

雪ノ下「あら……意外な性癖ね、エロガヤくん」

比企谷「性癖言うな。 俺が異常者みてーに思われるだろ」

雪ノ下「ごめんなさい。 ついうっかり本音が」

比企谷「あのなぁ……」

白鐘「さ、さあ! もう帰りましょう! みなさん!」///



―――――――――――


夕方

ジュネス 惣菜コーナー


     ただ今、ジュネス八十稲羽店では

     お客様の日頃のご愛好を感謝して、50万人キャンペーンを開催しております。

     当店のレジにてカウントしており、50万人目のお客様には

     素敵なプレゼントをご用意して……


比企谷「……今日は何を食うかな」

比企谷「…………」

比企谷「最近、野菜をあまり食べてない。 野菜中心にするか……」


足立宅


足立「ただいま~」

比企谷「お帰りなさい、足立さん」

足立「あー疲れたぁ。 今日のメニューは何かな?」

比企谷「レタス、キュウリのサラダと、キャベツのみじん切り」

比企谷「けんちん汁に納豆とメインのサンマの塩焼きです」

足立「へえ。 今日はヘルシーだね」

足立「あれ? サラダなのにトマトが無い?」

比企谷「詳しくは知りませんが、トマトとキュウリの食べ合わせは」

比企谷「お互いの栄養の吸収を妨げるんだそうです」

足立「そうなの? 全然知らなかったよ」


比企谷「まあ俺もテレビの受け売りですが」

足立「ははは、そうなんだ」

足立「じゃ、いただきます」

比企谷「いただきます」


―――――――――――


数日後の放課後

教室


里中「もうすぐ中間試験かぁ……」

花村「何でお前は憂鬱になる発言をするんだよ……」


花村「あ~あ。 今度赤点取ったら、親父に小遣下げられるぅ……」

里中「そんな訳で雪子、また教えてくれない?」

天城「じゃあ……今度はみんなで勉強会を開く?」

花村「おおっ!? マジかよ!?」

天城「比企谷くんと雪ノ下さんもどうかな?」

雪ノ下「ええと……」

比企谷「喜んで参加しよう」


一同「え」


比企谷「何その反応。 傷つくんですけど」

雪ノ下「……どんな下心があるのかしら?」

八幡はトマト嫌い、ついでにきゅうりも味が移るので好きじゃないっぽい


比企谷「ある訳ないだろ。 100%善意でボランティアだ」

雪ノ下「今年のインフルエンザ、早くも大流行してるのね」

比企谷「お前は俺をなんだと思って」

里中「ままま! 素直に喜んであげるから、比企谷くん!」

花村「天変地異の前触れかも知んねーが……」

花村「歓迎するぜ!」

比企谷「喜んでもらえて何よりだ」 ニタァ…


天城(……あれ?)

里中(今一瞬、すっごい悪い顔した様な……)

雪ノ下(やっぱり何か企んでいる?)



―――――――――――


数日後の休日

天城屋の一室


花村「比企谷っ! 俺が悪かった!」

花村「もう勘弁してくれ!」

比企谷「馬鹿言うな。 まだ試験範囲の半分位だぞ?」

花村「休憩っ! 頼むから休憩を入れてくれっ!!」

比企谷「最初に言っただろ。 各教科が終わったら10分の休憩だと」

花村「そりゃそうだが……制限時間内に答えられないと」

花村「女子の前で、エロ本の隠し場所全面公開は酷すぎるだろ!?」


比企谷「教科書を見ながらなら乗った!と、言ったじゃねーか」

比企谷「答えた問題数×50円を俺は払わされるんだ……十分だろ?」 ニタァ…

花村「どう考えても割に合わねぇ……つか、なんでタイトルまで知ってるんだよ!?」

比企谷「第8問」

花村「ちくしょおおおおおおっ!!」


雪ノ下「……そんなもの聞かされる私たちの身にもなって欲しいわ」///

里中「……まったくじゃん」///

天城「……勉強にはなるけど。 いろんな意味で」///

白鐘「……比企谷先輩はどうやってそんな情報を」///

りせ「……クマくんに手伝ってもらった……とか?」///

白鐘「ああ……時々花村先輩の家に泊まってるとか言ってましたね」///


比企谷「ブッブー。 外れ」

比企谷「それでは……おおっと、早くもふた桁の大台です」

比企谷「タイトル『お姉さんの谷間でイって♥』の隠し場所は……」

花村「うわああああああああああああああああああああああああああっ!!」


雪ノ下(また姉モノ……)///

里中(巨乳もあったけど……)///

天城(年上が好みなのね……)///

白鐘(隠し場所もベッド周辺ばかりだし……)///

りせ(言い逃れできないくらい使ってるんだろうなぁ……)///


     ガラッ

陽乃「みんな、勉強お疲れ様」

陽乃「飲みのも持ってきたわ」

天城「ありがとうございます、陽乃さん」

陽乃「どう? はかどってる?」


花村「」 チーン…


陽乃「……花村くん、どうしたの?」

里中「そ、そっとしておいてあげてください」///

天城「その内にいつもの調子に戻ると思いますから……」///

陽乃「どうしてみんな顔が赤いの?」

雪ノ下「ちょっと部屋の温度が高いだけよ、姉さん」///

雪ノ下「あと、今後は花村くんに近づかない方がいいと思うわ」///

陽乃「???」

>>45修正↓


     ガラッ

陽乃「みんな、勉強お疲れ様」

陽乃「飲みもの持ってきたわ」

天城「ありがとうございます、陽乃さん」

陽乃「どう? はかどってる?」


花村「」 チーン…


陽乃「……花村くん、どうしたの?」

里中「そ、そっとしておいてあげてください」///

天城「その内にいつもの調子に戻ると思いますから……」///

陽乃「どうしてみんな顔が赤いの?」

雪ノ下「ちょっと部屋の温度が高いだけよ、姉さん」///

雪ノ下「あと、今後は花村くんに近づかない方がいいと思うわ」///

陽乃「???」



―――――――――――




天城屋 玄関ロビー


天城「それじゃみんな」

花村「……おう」

里中「シャキっとするじゃん、花村」

花村「……無理」

白鐘「……ですよね」

りせ「お世話になりました!」

比企谷「じゃあな」

雪ノ下「うん」


陽乃「ああ、比企谷くん。 ちょっと待ってくれる?」

雪ノ下「え?」

比企谷「何か用ですか?」

陽乃「安心して。 少し話したいだけだから」

比企谷「はあ……」

雪ノ下「…………」

―――――――――――

比企谷「それで? 話って?」

陽乃「…………」

陽乃「ペルソナ」

比企谷「……!?」


陽乃「――って、夏休みの時、ケータイを切る間際、言ってたわよね?」

比企谷「……そうでしたっけ?」

陽乃「それで、ね」

陽乃「クラブの時、酔っていたけど……天城さんも同じ事を言ってたの」

比企谷「…………」

陽乃「…………」

陽乃「これは偶然なのかしら?」

比企谷「…………」

比企谷「……いいえ」

陽乃「……そう」

陽乃「正直に答えてくれてありがとう」


陽乃「話はそれだけよ」

比企谷「え?」

陽乃「私なりにこの言葉の意味を調べてみたんだけど……」

陽乃「心理学用語って事くらいしか分からなかったわ」

比企谷「…………」

陽乃「私は」

陽乃「あの『約束』を守ってくれるのなら、もうそれでいい」

陽乃「……でも」

陽乃「いつか、話せる様になったら聞かせてね?」

比企谷「…………」

比企谷「前向きに検討します」

陽乃「ふふっ……日本語って、時々ずるいと思う」

比企谷「…………」




     せっかく花村で解消したストレスがまた戻ってしまった気がする……

     あのクラブでのひと時は、楽しかった感覚しかないが

     どうやら色々やらかしたみたいだ。



     事件については、あまり進展は無かったものの

     手がかりになるかもしれない事柄ができて、収穫はあったと思う。



     そういや中間試験が明けたら、文化祭、という

     これまたぼっちにとって迷惑なイベントが控えていたっけな。

     まあ総武高校の時みたいな厄介事が起こらない事を祈るほかないのだが……




―――――――――――


雪ノ下の部屋


雪ノ下「…………」

雪ノ下「姉さん……やっぱりあなたは油断のならない人だわ」

雪ノ下「…………」

雪ノ下(それにしても)


陽乃「あの『約束』を守ってくれるのなら、もうそれでいい」


雪ノ下(約束……比企谷くんと?)

雪ノ下(いったいどんな約束を……)

雪ノ下(…………)

雪ノ下(まさか……姉さんも比企谷くんの事を?)



―――――――――――


由比ヶ浜の家


     ルルルルル……ルルルルル……

由比ヶ浜「あ、さいちゃん? 私、結衣だよ」

由比ヶ浜「…………」

由比ヶ浜「うん……メール、やっぱり少ないよね」

由比ヶ浜「それで……どう?」

由比ヶ浜「…………」

由比ヶ浜「そっか! 良かった!」

由比ヶ浜「これでお互い目標金額達成だね!」

由比ヶ浜「え? ああ、宿泊先は任せて。 ちゃんと予約しとくから」


由比ヶ浜「それにしてもヒッキー酷いよね。 文化祭の事、黙ってるんだもん」

由比ヶ浜「天城さんが教えてくれなかったら、せっかくのチャンスを台無しにしてた」

由比ヶ浜「…………」

由比ヶ浜「……さいちゃんは優しすぎるよ」

由比ヶ浜「こういう時は、ガツン!と言わないとね!」

由比ヶ浜「あはは……」

由比ヶ浜「…………」

由比ヶ浜「……うん。 私、頑張る」

由比ヶ浜「今度こそ絶対にヒッキーに気持ち……伝える」///

由比ヶ浜「…………」

由比ヶ浜「ありがとう、さいちゃん。 じゃ……」


     ブッ…… ツー ツー

由比ヶ浜「…………」

由比ヶ浜「負けないもん」

由比ヶ浜「私、ゆきのんに……負けないもん」

由比ヶ浜「私……」




     ――ヒッキーの事が……好き――




リアルタイムは初めてだなぁ
支援

今日はここまでです。>>40マジっすか……アニメしか見てないので知らんかった。
誠にすみませんが、どうかご容赦を……。
後、陽介への残酷な仕打ち(笑)ですが、

比企谷「八十稲羽に転校…え?マジで?…」 - SSまとめ速報
(ttp://jbbs.livedoor.jp/bbs/read.cgi/internet/14562/1372573836/696)

(前スレ696)が理由です。

最後に、前スレ1000の完結祈願、ありがとうございます!頑張りますので。
それではまた。

乙ー

おつおつ

明日更新何時くらいから?

乙、次も楽しみにしてる

キター!乙!

かんじこいよ


あと、番長どっかで顔出ないの?

番長でたとしても凡人以下やで

>>65
ペルソナ使えないだけでハイスペックだろ

八十稲羽に転校したからハイスペックに成長しただけよ

あれペルソナがあったから成長速度が跳ね上がってるようにも見える
実際はどうだかしらんが

ペルソナ着けてたら現実世界でも身体能力上がったりするんじゃない

テレビの特集は予定を変更した場合後日放送されます
つまり何が言いたいのかというと完二出してあげてください

完二と戸塚・・・・
直斗と逆パターンか

文化祭なら戸塚vsクマもあるで

>>69
P3で美鶴が影時間以外でブフ系の魔法使ってたから、現実世界でもペルソナは影響するかもなー

と思ったが、キタローが大いなる封印で現実とシャドウの世界を明確に分けたのがP4の世界って聞いたし、実生活でペルソナはあんまり影響しないんじゃない?

クマはテレビから出てこれるから断言は出来ないが

コミュ力に上昇はあるはず
所持ペルソナで好感度上がり

なにそれ初耳

>>72

つか、まだ更新ないんか?



―――――――――――


中間試験最終日の放課後

通学路


比企谷「ふう……ようやく中間試験、終わったな」


一同「…………」


比企谷「……みんなどうした?」

雪ノ下「どうしたもこうしたもないわ、エロガヤくん」

比企谷「は?」

里中「今回、さ……あたしや花村のテストの出来、結構良かったじゃん?」

里中「それ自体はいい事なんだけどね……」

比企谷「何が気に入らないんだよ?」


天城「その……いくつかテストの回答で……」///

天城「花村くんの……アレな本のタイトルも一緒に思い出しちゃって……」///

雪ノ下「そんな生易しいレベルじゃないわ」

雪ノ下「答えと一緒にインプットされてしまってる」

花村「…………」

比企谷「ほほう」

比企谷「マゼラン」

里中「……『破れたパンストと生足』」

比企谷「交感神経と副交感神経」

天城「……『姉ちゃんとやろう!』」

比企谷「太陽王」

雪ノ下「……『揉みしだかれた巨乳』」


比企谷「ははは、こりゃ面白い」

里中「笑い事じゃないっての!」///

花村「な、なあ……俺のライフをゴリゴリ削るの止めてくんない?」

花村「それより文化祭の話とかしようぜ?」

雪ノ下「そうね」

雪ノ下「早くエロ村くんの下世話なエピソードを忘れたいし」

花村「ぜひそうしてくれ……」

花村「でだ。 クラスの出し物、何にするか考えたか?」

里中「ぜーんぜん。 花村は?」

花村「俺も同じ。 この際、ウケ狙いでもしてみるか、とか思ってる」

雪ノ下「……そういう思いつきみたいなのが、案外選ばれたりして」

比企谷「な訳ねーだろ……」


翌日

教室


委員長「――という訳で、投票の結果」

委員長「このクラスは『合コン喫茶』をやる事になりました」

     オオー  マサカエラバレルトハ

     デモー チョット興味アルッテイウカー

花村「……マジかよ」

比企谷「……お前は預言者か?」

雪ノ下「……余計な事は言わない方がいいって、初めて思ったわ」

天城「ま、まあ、私も興味本位で一票入れちゃって……」

里中「決まったもんはしょうがないじゃん?」

里中「後はやるだけっしょ」

花村「だな。 それに里中達は、もう一つ頑張らねぇとな!」 ニヤニヤ

里中「は? なに言ってんの? 花村?」


一階 掲示板前


     ☆ ミス、八高コンテスト ☆

     参加者募集!!

     自薦他薦は問いません!!



     参加希望者欄


     里中千枝

     天城雪子

     雪ノ下雪乃

     久慈川りせ

     白鐘直斗




     ウワー  ミスコン出ルッテ、ドンダケ自分二自信アルンダロー

     ナイヨネー  マジヒクワー



里中「」

天城「」

雪ノ下「」

白鐘「」

りせ「あ。 あたしの名前まである」


昼休み

屋上


里中「キエェェェェェェェェェェェェェェェェェェッ!!」

     ドゴォ!

花村「ぶべれあっ!?」

里中「何であたしらの名前、勝手に書いた!?」

花村「だ、だって、天城や雪ノ下さん、告られまくる程人気だし」

花村「元アイドルに探偵王子まで居て、こんなイベントに不参加なんて」

花村「マジありえねーだろ!?」


里中「あたしは関係ないじゃん!!」

里中「…………」

里中「……ん?」

花村「へ?」

里中「悪かったな、関係なくてェェッ!」

     バゴォッ!!

花村「ぎゃあああああああああああああっ!!」


雪ノ下「……困った事になったわね」

天城「今からでも棄権できないかな……」

白鐘「…………」

白鐘「……あ、あのっ」///

比企谷「ん?」

白鐘「比企谷先輩は……僕に参加して欲しいですか?」///


一同「!?」


比企谷「何で俺に聞くんだよ……」

白鐘「そ、その……参考までに、と思って……」///

比企谷「…………」

やっと来たか>>1


比企谷「まあ……どちらかといえば、参加して欲しいかな」


白鐘「!!」///

一同「!!」


比企谷「せっかくの文化祭だし。 楽しめる奴は楽しんだらいいと思うぞ」

白鐘「そうですね! せっかくなんだし……」///

白鐘「ぼ、僕、頑張ってみます!」///

比企谷「そうか。 頑張れよ」

白鐘「はい!」///

雪ノ下「…………」 ゴゴゴ…

花村(ナイス、比企谷!)

里中(うわぁ……雪ノ下さんから黒いオーラが見えるじゃん)

りせ(ちゃくちゃくとフラグ立ててるなぁ……)



―――――――――――


放課後

屋上


白鐘「ああ、比企谷先輩。 お呼びだてしてすみません」

比企谷「いや……それで?」

白鐘「例の手紙の事なんですが」

比企谷「何か分かったのか?」

白鐘「とりあえず3人分の指紋が検出されました」

白鐘「その内の一つは僕です」

白鐘「後、誰がこの手紙に触れたか、分かりますか?」

比企谷「……俺と足立さんだ」


白鐘「…………」

白鐘「やはり足が付くようなものは、残してないみたいですね……」

比企谷「まあ……俺でも気をつけるわな」

白鐘「一応確認の為に比企谷先輩と足立さんの」

白鐘「指紋サンプルをお願いしてもいいですか?」

比企谷「わかった」

比企谷「……けど、あんまり気分のいいものじゃないな」

白鐘「お手数をおかけします」

白鐘「それからもう一つ聞きたいのですが……」

     バァーン!!

花村「比企谷! 大変だ!」

>>1はもっと頑張って更新だ


比企谷「どうしたんだ? 花村?」

花村「いいからちょっと来い!」 グイッ

比企谷「お、おい!?」

白鐘「あ……」

     ドドドドドドド…

白鐘「…………」

白鐘「……また今度聞けばいい……か」


―――――――――――


一階 掲示板前


     ☆ ウホッ!八高女装コンテスト ☆


     女の服は女だけのモノじゃねえ!

     自分を開放してみようぜ!

     自薦他薦は問わねぇ!

     参加者大募集!!



     参加希望者欄


     巽完二

     花村陽介

     比企谷八幡



     ウワァ…… アリエネェ…… 参加者出ルトハナ……

     マジヒクワー


比企谷「」

花村「…………」

比企谷「花村……」

花村「おう……」

比企谷「こんなコンテスト、いつ出来たんだ?」

比企谷「少なくとも今朝まで見た記憶ないんだが……」

花村「俺だって知らねーよ!」

比企谷「……ともかく、里中達を問い詰めるぞ」

花村「だな!」


教室


花村「里中! ありゃどういう事だ!?」

里中「はあ? 何の事?」

花村「何あっさり流してんだよ! そもそも勝手に俺らの名前書くなよ!」

里中「花村だってあたしらの名前勝手に書いたじゃん……」 ゴゴゴ…

花村「お前、女装だぞ!? 女装!!」

花村「恥ずかしさのレベル、ダンチじゃねーか!!」

比企谷「後、何で俺もとばっちりを受けるんだよ?」

比企谷「同情はするが、勝手に名前を書いたのは花村だ……」

雪ノ下「…………」 ゴゴゴ…

比企谷「……何となく理解した」


天城「まあそんな訳で、お互い頑張ろうね♪」

りせ「お化粧はあたし達に任せて♥」

比企谷「マジっすか……」

花村「はあ……こんなイベントに全員参加って、どんな軍団だよ……?」

花村「つか、あのコンテスト、誰が企画したんだ……恨むぜ」

里中「そういや いつの間にか出来てたじゃん?」

雪ノ下「実行委員会の誰かじゃないの?」


―――――――――――


完二「っえくしっ!!」

完二「さぁて……忙しくなってきたぜ!」



―――――――――――


文化祭当日 午前中

八十神高校・校門付近


由比ヶ浜「やっはろー!」

戸塚「あ、八幡! 会いたかったよ」

比企谷「」

比企谷「由比ヶ浜に戸塚!?」

由比ヶ浜「……そりゃ驚かそうと思って黙って来たけど」

由比ヶ浜「いくらなんでも驚きすぎじゃない? ヒッキー?」

比企谷「……今、冗談じゃなく心臓が止まったと思った」

比企谷「つか、止まって病院に担ぎ込まれてぇ……」

由比ヶ浜「何言ってるの?」


天城「あ! 由比ヶ浜さん、戸塚くん!」

天城「ようこそ、八十神高校・文化祭に!」

里中「楽しんでってね!」

由比ヶ浜「天城さんに里中さん! 久しぶり!」

戸塚「こんにちは」

天城「それじゃ比企谷くん。 そろそろ教室に行かないと」

比企谷「分かってる。 ……俺のクラス合コン喫茶やってるんだが」

比企谷「気が向いたら来てくれ」

由比ヶ浜「もっちろん!」

戸塚「すぐにでも行くよ、八幡!」

比企谷(……出来れば来ない方がいいんだが)



―――――――――――


花村「…………」

雪ノ下「…………」

     シーン…

雪ノ下「……お客さん、来ないわね」

花村「と、ともかく、客引きはしないとな」

花村「……ご、合コン喫茶、やってまーす(棒)」

雪ノ下「たぶん、それなりに楽しいと思いまーす(棒)」

花村「…………」

雪ノ下「…………」

花村(……いろんな意味で間がもたねぇよ)

雪ノ下(……どうしたものかしら)


里中「おーい花村、調子はどう?」

花村「……見ての通りだ」

天城「ガラガラ……」

雪ノ下「宣伝が足りないのかしら?」

比企谷「明らかに『合コン』が付くからだろ……」

由比ヶ浜「合コン?」

花村「お!? 由比ヶ浜さん!?」

花村「それに戸塚……くん」

戸塚「どうも、花村くん」 ニコッ

花村(……今だに同性とは思えない)

花村「っと! それよりも、だ!」


花村「いらっしゃいませ!」

由比ヶ浜「えへへ、どうも~」

戸塚「ところで……ここはどんな事をするお店なの?」

雪ノ下「……合コン?」

比企谷「確かにそうだが、身も蓋もねぇな……」

由比ヶ浜「それで、合コンって何をどうするの?」


一同「…………」


由比ヶ浜「あれ?」

花村「……そういや、合コンってどうするんだ?」

里中「あたしが知る訳ないっしょ」

天城「クラブ?でやってたのがそうじゃないの?」

比企谷「今頃になって致命的な欠陥が見つかるとはな……」


雪ノ下「合コン……合同コンパの略で」

雪ノ下「元々は男女合同で、という趣旨が盛り込まれたコンパの事」

雪ノ下「コンパの語源は『仲間』を指すドイツ語の「kompanie」や」

雪ノ下「英語の「campany」が元になったと言われてるけど」

雪ノ下「懇親(こんしん)パーティーの略でそうなった、という説もあるわ」


一同「…………」


比企谷「……で、どうやるんだ?」

雪ノ下「……さあ?」

花村「そこ、肝心なとこー!」

由比ヶ浜「と、とりあえず、みんなでワイワイ楽しくやったらいいんじゃない?」


里中「そ、そうなんじゃん?」

天城「間違ってはいないと思う」

花村「じゃ、じゃあ、サクラの意味も込めて、俺たちでやってみね?」

花村「とりあえず男女に分かれて座ろうぜ!」

     ゾロ ゾロ ゾロ…

花村「…………」

比企谷「…………」

戸塚「…………」


里中「…………」

天城「…………」

雪ノ下「…………」

由比ヶ浜「…………」


花村(……どうすんだよ、この空気)

比企谷(戸塚……相変わらず可愛いな)///

戸塚(こういう時は、どうしたらいいんだろう……)


里中「ええと……ご趣味は?」///

里中(何か、すごく恥ずかしい……)///


花村「ナイス! 里中!」

花村「俺は最近バイクが欲しく」

里中「はい次」

花村「扱い酷すぎるだろ!?」

比企谷「……ゲーム?」

雪ノ下「どうして疑問形?」

戸塚「ぼ、僕は、テニスシューズに凝ってるかな……」


花村「よし! んじゃ、今度はこっちからな!」

花村「この中で彼氏にしたいと思うのは?」


雪ノ下「……!」///

由比ヶ浜「……!」///

里中「えー?」

天城「居ない場合はどう答えたらいいの?」

花村「……純真な男心をこれでもか、ってくらいズタズタにすんなよ」


??「……比企谷先輩です」


一同「!!?」


比企谷「白鐘……」

白鐘「ちょっと様子を見に……それと、あ、あくまで、その中で、という意味ですから」///

比企谷「へいへい」

由比ヶ浜「ちょ、ちょっとヒッキー!?」

由比ヶ浜「男の子に言われて気持ち悪くないの!?」

戸塚「…………」

白鐘「混乱させてすみません……こんな服装ですが」

白鐘「僕は女なんです」

由比ヶ浜「え」

戸塚「え」


由比ヶ浜(ゆ、ゆきのん! これどういう事!?)

雪ノ下(……私に言われても困るのだけど)

雪ノ下(見ての通り、としか……)

由比ヶ浜(ええ――!?)

由比ヶ浜(クラブで会った時は、全然そんな感じじゃなかったよね!?)

雪ノ下(……いろいろあったのよ)


白鐘「どうも。 改めまして」

白鐘「白鐘直斗です」

由比ヶ浜「…………」

由比ヶ浜「どうも。 前の学校でヒッキーと『仲良く』部活していた」

由比ヶ浜「由比ヶ浜結衣です」 ニコッ

白鐘「……」 ピクンッ

比企谷「……ん?」


白鐘「そうだったんですか」

白鐘「僕も比企谷先輩と、『今』現在進行形で『仲良く』させてもらっています」 ニコッ

雪ノ下「……」 ピクンッ

比企谷「おい? どうしたんだ?」

雪ノ下「私は向こうでもこちらでも『知っている間柄』だけどね」 ニコッ

由比ヶ浜「……」 ピクンッ

白鐘「……」 ピクンッ


花村(ついにこの日が来ちまったか……)

里中(見事なまでの三すくみ状態)

天城(ゾクゾクしてきた♪)




由比ヶ浜「えへへへへへへへ」 ゴゴゴ…

白鐘「ははははははは」 ゴゴゴ…

雪ノ下「ふふふふふふふふ」 ゴゴゴ…



戸塚「は、八幡……何か三人、怖い」

比企谷「大丈夫だ、戸塚」

比企谷「俺がついている」


花村(……こいつ殴りてぇ)

里中(どうなっても知らないよ……)

天城(後ろから刺されないといいけど)



―――――――――――


比企谷「――という訳で」

雪ノ下「端折りすぎよ、比企谷くん」

比企谷「話が進まねーから、いいんだよ……」

比企谷「『合コン』の位置を変えてみた」

白鐘「喫茶合コン……」

花村「おお、これなら店の名前っぽくていいかもな」

里中「少しはお客さんも来るっしょ」

天城「いいアイデアだと思う」

雪ノ下「後は引継ぎを済ませるだけね」


比企谷「まあ、足りなくなる心配は無いだろうが……」

比企谷「飲み物とかの補充はジュネスで、だったな?」

花村「ああ」

里中「そういや今、ジュネスでキャンペーンやってたね」

里中「あれどうなったの?」

天城「50万人キャンペーンだったっけ?」

花村「オヤジの話だと、今日中には出るんじゃねーの?って感じだったな」

花村「50万人目」

雪ノ下「そうなの」

由比ヶ浜「へえ~こっちのジュネスでそんなのやってるんだ」

戸塚「後で行ってみる?」

由比ヶ浜「まあ機会があれば、かな」 クスッ


里中「さて」

里中「男性陣の諸君?」

比企谷「……わかってる」

花村「……もうそんな時間かよ」

由比ヶ浜「? どうしたの? ヒッキー達?」

雪ノ下「これから楽しいショーに出演するのよ」

戸塚「ショー?」

天城「それは後のお楽しみって事で♪」

由比ヶ浜「?」

戸塚「?」



―――――――――――


体育館


司会「さぁて、やってまいりました!」

司会「八十神高校始まって以来のクレイジーな企画!」

司会「それは……女装コンテストだー!」


     ワ――!


司会「正直、地獄絵図しか想像できないが、覚悟はいいかー!?」


     オオ――!


司会「OK! いい返事だ!」


由比ヶ浜「」

戸塚「」

由比ヶ浜「女装コンテスト!?」

雪ノ下「ええ」

由比ヶ浜「……ヒッキー、よく出る気になったね」

雪ノ下「まあ半ば、とばっちりを受けたとも言えるけど」

里中(……半ばじゃなく、100%とばっちりだと思うじゃん)

戸塚「それじゃ八幡は、強引に参加させられてるって事!?」

雪ノ下「そうなるかしら?」

戸塚「そんな……!」

天城「そろそろ始まるよ」


司会「それでは、さっそくエントリーナンバー1番!」

司会「この女装コンテスト企画提案者にして八十稲羽の生んだ野生児!」

司会「今年入学したばかりの一年生、巽完二ちゃんだ~!!」


     ババンッ!!


完二「ウッス!!」


     ウゲェェッ……!! コレハ酷イ……!


由比ヶ浜「……うっ」

里中「気持ち悪い……」

雪ノ下「あんな筋骨隆々の女の子が居る訳ないじゃない……」

天城「……足のムダ毛処理くらいしてよね」

りせ「しかも露出の高いカクテルドレス……のっけから酷いわね……」


司会「そ、それではつ……って!? ちょ、マイク」

完二「いいからちょっと貸せ!」

完二「俺ァよ、このコンテストを企画したモンだ」

完二「なんでかっつーと……自分をいろいろ変えたかったからでよ」

完二「実は……そう俺に決意させた奴が身近に居て」

完二「そいつに一言言いてぇんだ!!」///


里中「え?」

天城「もしかして……告白!?」///

由比ヶ浜「身近な人って、誰の事だろう?」

雪ノ下「久慈川さんじゃない? 同じ一年生だし」


りせ「や、やめてくださいよ!?」

りせ「あんなの全然好みじゃないし!!」

里中「嫌なら断ったらいいじゃん」

天城「深く考える必要もないと思う……」


完二「そいつはよ……ついこの前、すげぇ事暴露されたにもかかわらず」

完二「平然と自分を貫いていやがった」

完二「俺もそうなりてぇ……男とか女とかじゃなく」

完二「そんな一本筋の通った生き方の出来る人間になりてぇと」

完二「俺ぁ思ったんだ!」


一同「…………」


完二「だから、この女装はお前に対する敬意としてやった!!」


一同(えー……?)


完二「白鐘直斗!」


白鐘「え? 僕?」


完二「お、お前の事が、す、す、す、好きだァ――!!」///

完二「俺と、つ、つ、つ、付き合ってくれ!!」///


白鐘「お断りします」 キッパリ


完二「」 ガ―――――――――――ンッ!!

完二「……うおおおおおおおおおおおおっ!!」(号泣)


     シーン…


司会「……さ、さて、お、思わぬハプニングがありましたが」

司会「続いてまいります!」


里中「……まあ仕方ないじゃん?」

天城「……女装した姿で告白されても」

雪ノ下「……見れる姿ならともかく」

由比ヶ浜「……さすがに無理」

りせ「あたしでなくて良かった……」

白鐘「非常識にも程がありますよ……」


司会「エントリーナンバー2番!」

司会「顔はイケメン、口を開けばがっかり王子!」

司会「ジュネス八十稲羽店・店長の息子!」

司会「花村陽介ちゃんだー!」


     ババンッ!


花村「ど、どうも……」


     ウワッ……コレ、ナンカ居ソウデ怖イ……!

     花村先輩……イイセン行クト思ッタノニ……


花村(帰りたい……) シクシク…


里中(元は悪くないんだけどなー)

天城(やっぱりどう見てもオカマっぽくなるね……)

由比ヶ浜(微妙に私の髪型に似てる……何か、イヤだなぁ)

雪ノ下(まあさっきのよりマシ、ってところかしら)

りせ(コーディネイトが良くなかったかなぁ。 ミニスカ、いけると思ったんだけど)

白鐘(磨けば光るかも?)


司会「予想通り地獄絵図となってきたが、続けていくぜー!」

司会「エントリーナンバー3番!」

司会「良く言えばクール! 悪く言えばふてぶてしいその目つき!」

司会「この春、都会から転校してきた比企谷八幡ちゃんだー!」


     ババンッ!


比企谷「……もうどうでもいい」


     ヨリニモヨッテ黒髪ロングノカツラカヨ……

     ドウ見テモ、ガタイノイイ サダ○二シカ見エネェ……


比企谷(久しぶりに軽く死にたくなった……) シクシク…


里中(こっちも悲惨ねー)

天城(カツラも手伝って、ふてぶてしさがえらい事に……)

由比ヶ浜(ヒ、ヒッキー、頑張ってる!)///

雪ノ下(……何かに目覚めてしまいそう)///

りせ(こっちも元は悪くないのになー)

白鐘(イケてます! 比企谷先輩!)///


司会「さぁて、不気……勇気ある参加者はこれで全部だ」

司会「後は投票を残すのみ……」


     ビー! ビー! ビー!


司会「おおっと!? ここでまたしてもハプニングか!?」

司会「……!!」

司会「なんと!」

司会「こんなクレイジーな企画に飛び入り参加したい、という」

司会「勇者が二人も現れたぞ!」


一同「!?」


司会「もう出し惜しみは無しだ!」

司会「二人同時にカモン! ウェルカム!」


     ババンッ!


クマ「ププッピドゥ~♪」 スキップ♪ スキップ♪

クマ「ハートをぶち抜くぞ♥」 ズギューン♪

戸塚「こ、こんにちは……」///


     オオ―――――――――――!!


比企谷「」

花村「」

完二「」


里中「」

天城「」

由比ヶ浜「」

雪ノ下「」

りせ「」

白鐘「」


     スゲェ!! アレ……ホント二男ノ子!?

     イケル……俺、アノ子達ナライケル!!


司会「これは予想外だ!」

司会「どう見ても可憐な少女にしか見えない、恐ろしいまでの男の娘が二人も現れた!」


比企谷「……戸塚」///

戸塚「八幡……」///

戸塚「やっぱり……八幡にだけ恥ずかしい事させたくなかったし」///

比企谷「」///


花村(…………)

花村(……比企谷)

比企谷(……なんだ花村)

花村(俺、ヤバイもんに目覚めそうだ……)///

比企谷(そうか……お前も理解してきたか)

比企谷(とつかわいいを……)///


戸塚「?」///



―――――――――――


司会「さぁーて、投票の集計も終わり、結果発表の時間だ!」

司会「大方の予想通り、飛び入り二人の争いとなった!」

司会「息詰まるデッドヒートを制したのは……」

     ジャカジャカジャカジャカジャカジャカ……

     ジャン!!

司会「クーマーだ、ちゃんだァ!!」

クマ「ウッホホーイ♪」


戸塚「あはは……負けちゃったね、八幡」///

比企谷「気にするな戸塚……俺の中では」

比企谷「お前がナンバー1だ」///

戸塚「ふ、複雑だけど、ありがとう八幡」///


里中(……なんて言うか、あたし、あの子に勝てる要素あるのかしら?)

里中(いろんな意味で……)

天城(あのレベルは女の子でもなかなか居ない……)

由比ヶ浜(改めて、さいちゃんは可愛いって思う)

雪ノ下(一番の強敵は、あの子の様な気がする……)

りせ(クマはともかく……いろんな意味であの戸塚、という男の娘に)

りせ(票は入れたくないって思った女子は多いかも……)

白鐘(ひ、比企谷先輩……僕、頑張ります!)


司会「優勝おめでとうございます、熊田さん」

司会「賞品の代わりとして、この後行われる」

司会「ミス・八高コンテストの特別審査員をしていただきます!」

司会「何か一言、ありますか?」

クマ「ふっふっふっ……クマはこの時を待っていたクマ」

クマ「特別審査員の称号にかけて! クマは宣言するクマ!」

クマ「次のコンテストは、水着審査を開くクマ――!!」


     オオ―――――――――――!!


花村「ナイスだぜ! クマ吉!」

比企谷「後でどうなるのか、楽しみだな」

戸塚「みんな楽しそうだね♪」


里中「何言ってるの……あいつ……!」 ゴゴゴ…

天城「一度、徹底的に締めないとダメみたいだね……」 ゴゴゴ…

雪ノ下「天城さん。 その時は私も手伝わせて……」 ゴゴゴ…

由比ヶ浜「…………」

りせ「水着かぁ。 久しぶりだなぁ」

白鐘(……が、頑張るんだ、僕っ!)///



―――――――――――


司会「OK、野郎ども!」

司会「次はお待ちかねの……ミス・八高コンテスト!」

司会「しかも、水着で、だ――!」


     オオ――!!


司会「それじゃ、サクッと始めるぜ!」

司会「エントリーナンバー1番!」

司会「そこに漂うは健康美! 実は隠れファンも多いと噂の」

司会「里中千枝ちゃんだ――!」


里中「ど、どうも……」///

里中「す、好きな食べ物は、プディングですっ」///


花村「嘘つけ! 肉だろ! 肉!」


里中(花村ァ……後で顔面靴跡の刑っ)///


花村「……とか言ったけど」

花村「あいつのくびれたウェストは引き締まってていいな」

比企谷(腹筋は硬そうだな……)

戸塚「うん! かっこいいね!」


司会「それじゃどんどん行ってみよう!」

司会「エントリーナンバー2番!」

司会「ここ八十稲羽の老舗旅館・天城屋の跡取り娘! しかしそれを差し引いても告る奴多数!」

司会「魅力あふれる大和撫子!」

司会「天城雪子ちゃんだ――!」


天城「……えと……そ、そのっ……」///

天城「なんか……すみませんっ……」///


花村「いやいや。 抜群、とは言えないが」

花村「なかなかいいものを持ってるぜ♪」

比企谷(恥じらう姿は、結構萌えるものだな)

戸塚(僕もあんなだったのかな……)


司会「続きましてエントリーナンバー3番!」

司会「都会から女将修行に八十稲羽へ来た美少女!」

司会「醸し出す雰囲気は、その名に負けじ劣らじの絶対零度!」

司会「雪ノ下雪乃ちゃんだ――!」


雪ノ下「…………」///

雪ノ下「わ、私を……見なさいっ……」///

雪ノ下(比企谷くんっ)///


花村「おっほー♪ 大胆な事言ってくれるじゃねーか♪」

花村(……まあ、比企谷に向けた一言だろうけど)

比企谷(相変わらず、雪ノ下の肌は白いな……)///チラッ チラッ

戸塚(雪ノ下さんは細いなぁ……)


司会「いいよいいよ~乗ってきたぜ!」

司会「続いてエントリーナンバー4番!」

司会「ついこの前までは高嶺の花! 『テレビ』という画面の中の存在!」

司会「八十稲羽に舞い降りた、元女子高生アイドル!」

司会「久慈川りせちゃんだ――!」


りせ「…………」

りせ(……なんか、懐かしいな。 こんなふうにステージに立つの)

りせ(……) クスッ

りせ「みんなー! りせちーだよー!」


     オオ―――――――――――!!


花村「さっすが元アイドル。 こういうのはお手のもんだな」

花村「つか、やっぱ可愛いなー。 りせちー」///

比企谷「俺はお前のミーハーっぷりに呆れているがな」

戸塚「りせちーじゃしょうがないと思うよ、八幡」

戸塚「最近はかなみん……真下かなみの人気が凄いけど」

戸塚「今だにりせちーの方がいい、という」

戸塚「根強いりせちーファンが復帰を待ち望んでいるし……」

比企谷「へえ……」


司会「んんっ! やっぱり、りせちーの人気はすごい!」

司会「しかし! 次の参加者も知名度は負けていないぞ!」

司会「エントリーナンバー5番!」

司会「八十稲羽で起きた怪事件の解決に貢献した少年探偵!」

司会「実は自身も大きな秘密を抱えていた! 正直、こっちの方が嬉しいけどね!」

司会「体は乙女! 頭脳は優秀! 少年探偵改め、男装美少女探偵の」

司会「白鐘直斗ちゃんだ――!」


白鐘「……う……そ、その……」///


     オオ―――――――――――!!

     オ、オイ、……男ノ格好カラハ解ラナカッタケド……

     スゲェ……巨乳……


白鐘「」///



完二「ウヴォアァッ!!」


     ブシュウ!!

     誰カ鼻血吹イテ倒レタゾ!


花村「おお~確かに絶景だが……そこまでかぁ?」

比企谷「……挟めそうだな」

戸塚「八幡、何を?」


司会「さて、これで参加者は全員揃った!」

司会「野郎ども、目の保養はしっかりしたよな? じゃ、後は投票を……」


     ビー! ビー! ビー!


司会「おおっと!? またまたハプニング!?」

司会「今年はやけに多いぜ!」

司会「なになに……」

司会「…………」

司会「なんと!? こいつは驚きだ!」

司会「男装コンテストに続き、ここでも飛び入り参加者が現れたぞ!」


     オオ―――――――――――!!


司会「こいつは野郎共にとって嬉しいハプニングだ!」


花村「そりゃまた変わった女の子が居たもんだ」

花村「可愛いといいけどな♪」

比企谷「どうだか」

比企谷「おおかた罰ゲームとか、そんなたぐいで」

比企谷「強制出場させられたんだろうよ……」

戸塚「は、八幡……」

花村「うわぁ……でも確かにありそうだな」

花村「可愛い娘は、期待薄か……?」


司会「それじゃ紹介するぜ!」

司会「今日、都会からわざわざ八十稲羽に居る友達に会いに来た女の子!」


花村「……え?」

比企谷「……は?」

戸塚(……そういえば、いつの間にか居ない)


司会「おおっと、これは言ってもいいのかぁ!?」

司会「ある人に自分をアピールする為に飛び入り参加を決めたそうだ!」

司会「くそっ! いったい誰なんだぁ? そいつは!!」


里中「……ん?」

天城「……それって」

雪ノ下「……まさか」

りせ「……ひょっとして」

白鐘「?」


司会「それでは、登場してもらおう!!」

司会「由比ヶ浜結衣ちゃんだ――!」


     ババンッ!


由比ヶ浜「えへへ……」///

由比ヶ浜「こ、こんにちは~」///


     オオ――! ンダヨ……結構可愛イ娘ジャネーカヨ……

     イッタイ誰ナンダヨ……アピールシタイッテ……


花村(おいおい……マジかよ。 マジもんじゃねーかよ……)

比企谷(…………)

戸塚(…………)


司会「いやぁ飛び入り参加、ありがとう!」

司会「おかげで凄く盛り上がってるよ!」

由比ヶ浜「い、いえ」///

司会「ところで、アピールしたい人って誰なのかな?」

由比ヶ浜「ま、まあ、とても鈍い人、とだけ言っておきます」///

司会「くうぅ~! そいつが羨ましぃ~!」

司会「マジで爆発しろっ!!」


     ドッ ハハハハ……


司会「それじゃ、投票、行ってみよう!!」



―――――――――――


司会「集計結果が出たぞ!」

司会「今年は稀に見る票が割れた結果となったが」

司会「3位と4位の差がやや大きいくらいで、本当に僅差だった!」

司会「それじゃ、発表するぞ!」

司会「ミス・八高コンテスト、優勝者は……」


     ジャカジャカジャカジャカジャカジャカ……


里中(……まあ、最初から期待してないじゃん)

天城(周りが強すぎ……)

雪ノ下(人前で水着姿になるなんてね……はあ)

りせ(飛び入りはインパクトあるしなぁ)

白鐘(優勝はどうでもいいけど……)

白鐘(由比ヶ浜さんには負けたく……無理かなぁ)

由比ヶ浜(ヒッキー、見てくれたかな……?)///






     ジャン!!





司会「白鐘直斗ちゃんだ――!!」


     オオ―――――――――――!!


白鐘「」

白鐘「ええ!?」

司会「優勝おめでとう!」

白鐘「あ、ありがとうございますっ」///


里中「あ~あ、やっぱりか」

天城「ふふ、でも納得かも」

雪ノ下「負け惜しみでも何でもないけど」

雪ノ下「胸のインパクトが衝撃だったのね」

りせ「まあ、しょうがないっか」

由比ヶ浜「私は出るだけでいいから、気にしないもん♪」


雪ノ下「ところで由比ヶ浜さん」

由比ヶ浜「ん?」

雪ノ下「その水着……どうしたの?」

雪ノ下「クマくんが用意したものじゃないわよね?」

由比ヶ浜「あはは……」

由比ヶ浜「実は、ジュネスで水着買おうと思って行ったんだけど」

由比ヶ浜「季節のせいか、いいの売ってなくて……」

由比ヶ浜「しょうがないから、水着っぽく見える柄のタオルやら布やらを買って」

由比ヶ浜「それをピン止めして……」

     パキンッ

     ハラリ……

雪ノ下「」

由比ヶ浜「」


花村「」

比企谷「」

戸塚「」


里中「」

天城「」

りせ「」

白鐘「」

クマ「」

司会「」


     ウオオオオオオオオオオオオオオオオオッ!!


由比ヶ浜「キャアアアアアアアアアアッ!!」///




     ……何なんだこの展開は?

     現実にこんな事起きる訳ねーだろ。

     夢だ。 間違いなく夢だ。



     そう思いつつも……形の良い、豊かな生オッ○イを

     俺はしっかりと記憶に焼き付けていた……


ちょっと中途半端ですが……今日はここまでです。
進行亀ですみません……。

完二は上手く絡ませられたかなぁ。番長はヒッキーがそのポジなので
出す事は全く考えてませんです。(汗)
でも、ヒッキーは足立のところに居るし、確かに不可能では無かったなぁ。
だけど登場したら、間違いなくヒッキー悪役になりそうw
次も来週の今日くらいの更新を目指して頑張ります。

お付き合いありがとうございました!

乙ー
せっかくだからいつもの八幡のポエムもどきをみたかったかなw

番長よりなな子との絡みがみたいっスよぉ……

いつも楽しませて貰ってるよ。

生田目ちゃんに落とされれば、番長出せるよ

とりあえず乙乙

これは誰endになるんだろうか

個人的には白鐘とくっついてほしいです

誰か戸塚の女装画像を!
とつかわいいを俺にくれ!

とつかわ参考画像
http://viploader.net/anime/src/vlanime095904.jpg
ちなみに腐向けらしい花嫁な戸塚もあるが…それは各自で検索よろしく

反映されなかったから連投すまん、菜々子と堂島さんの出番もっとくれさい

展開的に仕方ないんだろうけれど、戸塚が優勝しない意味が解らない。

可愛すぎる上に天使なのがいけないんだ

戸塚は天使だから女とかいう人間の皮を被った悪魔からは支持されないのですよ

>>160
女の嫉妬
クマはポンだからまだ許せたんだろうよ



―――――――――――


夕方

教室


由比ヶ浜「……うう……もうお嫁に行けない……」

天城「だ、大丈夫だよ、由比ヶ浜さん」

里中「ちょっ、ちょっとした事故じゃん?」

りせ「そ、そうですよ!」

雪ノ下(……明らかに私より大きかった)

白鐘(あれも比企谷先輩へのアピールかと思ってた……)///


花村「ま、まあ、何はともあれ、文化祭は無事に終わったな!」///

比企谷「……だな」///

クマ「とっても楽しかったクマ!」

戸塚(ハプニングだらけだった気もするけど……)

戸塚「あ、そうだ、八幡」

比企谷「ん?」

戸塚「今日は八幡のところに泊めてくれないかな?」

比企谷「」

由比ヶ浜「」


一同「」


由比ヶ浜「さ、さいちゃん! もう天城屋に予約取ってあるんだけど!?」


戸塚「うん、わかってるんだけど……」

戸塚「やっぱり女の子と一緒の部屋に泊まるのは、ちょっと……」///

由比ヶ浜「だ、大丈夫だし! ヒッキーと一緒の方が良くないよ!」


里中(由比ヶ浜さん、戸塚くんと同じ部屋に泊まるつもりだったの……)

天城(それにしても戸塚くんの方が正論なんだけど)

花村(何でか、由比ヶ浜さんの方が正しいと思えてしまう……)


戸塚「まあ、八幡が嫌だって言うのなら予定通りにするけど……」

比企谷「……え?」

由比ヶ浜「も、もちろん、ダメだよね? 急すぎる話だし!」

比企谷「…………」


比企谷(ちょっと待て?)

比企谷(これどちらを選択しても詰んでなくね?)

比企谷(……いやいや、倫理的にも道義的にも)

比企谷(戸塚を俺のところに泊めるのが正しいよな?)

比企谷(…………)

比企谷(だけどその場合、明日の朝までとつかわいいをしゃぶりつく……) ハアハア…

比企谷(いやいやいやいやいやっ! 何を考えているんだ、俺はっ!)///

比企谷(そんな事はしねぇ! 俺は紳士になれるッ……ハズ)///


雪ノ下(……死んだ魚のような目が泳いでいるわね)

りせ(……何かやらしい事考えてるっぽいなー)

白鐘(……比企谷先輩?)


比企谷「…………」

比企谷「……そ、そうだな、やっぱり男女一緒ってのは良くな――」

クマ「じゃあ、センセイも天城屋にお泊りすればいいクマ!」

比企谷「え」

戸塚「え」

由比ヶ浜「クマくん、それナイスアイデアだよ!」

由比ヶ浜「ヒッキーも一緒に泊まれば問題ないよね!」

雪ノ下「ちょっ、ちょっと待ちなさい、由比ヶ浜さん」

雪ノ下「いくらなんでも比企谷くんと小人数で同じ部屋に泊まるなんて」

雪ノ下「何をされるかわかったものじゃないわ!」

比企谷「雪ノ下、俺をそこらの性犯罪者みたいに言うな……」


里中「まあまあ雪ノ下さん」

里中「これまでも何度か一緒だったけど前科なしだし」

天城「わりと可愛い寝顔してるしね」

由比ヶ浜「……え? どうゆう事? 寝顔?」

雪ノ下(ヤブヘビだったわ)

りせ「ねえ! それならさ!」

りせ「打ち上げも兼ねて、みんなで泊まらない?」

花村「おっ、こいつはひょうたんから駒だが、いい考えだな!」

花村「いつか行きたいな、とは思ってたし!」

クマ「ウッホホーイ♪ オンセン、ゲイシャ、フジヤマ、クマー!」

由比ヶ浜「ねえ、ゆきのん。 寝顔って?」

雪ノ下「そ、そうと決まったら、さっそく準備しないとね、天城さん!」

天城「そうだね、雪ノ下さん」



―――――――――――




天城屋 玄関ロビー


一同「今晩は~」


天城「いらっしゃいませ、みんな」

雪ノ下「ようこそ天城屋へ」

花村「くぅ~! 営業スマイルだとわかってても こういうのはいいな! 比企谷!」

比企谷「否定はしない」

りせ「相変わらず素直じゃないんだから」


比企谷(……結局)

比企谷(由比ヶ浜と戸塚が予約した部屋に女性陣)

比企谷(そして俺たち男には新しい部屋を借りて宿泊する事になった)

比企谷(……何故か戸塚は雪ノ下の部屋を一人で使う事になり)

比企谷(ホッとした様な、ガッカリした様な、妙な気分だ……)


陽乃「おっ、みんな来たわね♪」

陽乃「もうすぐご飯だから、ちょっと待っててね」


一同「は~い」


比企谷「じゃ、荷物置きに行くか。 大してないけど」

花村「ほら、クマはこっちだ」 ガシッ

クマ「およよ、放すクマよ、ヨースケ~」



―――――――――――


花村「はぁ~食った、食ったァ」

花村「やっぱり老舗旅館だけあって旨いメシだったな、比企谷!」

比企谷「…………」

花村「?」

花村「比企谷? どうした?」

比企谷「! ……いや」

比企谷「この部屋、何か結構いい部屋だと思って」

花村「おう! 確かに!」

花村「見るからに上品でゆったりしてて、上等な部屋だって分かるな!」

花村「こんな部屋を格安で貸してくれるなんて、天城も太っ腹だぜ!」

比企谷「…………」


クマ「センセイ~そろそろオンセンに行かないクマか?」

比企谷「……そうだな」

比企谷「とりあえず汗を流しに行くか」

花村「今の時間帯、露天風呂は男湯だったかな?」


―――――――――――


露天風呂


里中「はぁ~……気持ちいい~」///

りせ「こうやって手足を伸ばせるのは、やっぱりいいなぁ」///

由比ヶ浜「広いお風呂っていいよねぇ~」///


雪ノ下「…………」 ジー

白鐘「…………」///

白鐘「……あの、雪ノ下先輩」///

雪ノ下「何かしら?」

白鐘「僕の胸を凝視するの、止めてもらえませんか?」///

雪ノ下「あら、ごめんなさい。 つい」

白鐘「ははは……」///

りせ「えいっ!」

白鐘「わひゃ!?」///

りせ「うわぁ……すごいボリューム」 モミモミ

白鐘「く、久慈川さんっ」///


由比ヶ浜「お肌も綺麗だよね~」 ツンツン

天城「うん。 スベスベ」 サワサワ

白鐘「~~~っ」///

りせ「雪ノ下先輩の肌は白いなぁ」

雪ノ下「え?」

由比ヶ浜「私もそう思うよ、ゆきのん」

由比ヶ浜「日焼け止めとか、いつも塗ってるの?」

雪ノ下「積極的に外に出てないだ……ひゃっ!?」///

りせ「でもこっちはまだ小ぶり~♪」 モミモミ

雪ノ下「っ! く、久慈川さんだって、そんなに大きくないじゃないっ」///

里中「そうよ! 大きければいいってモノじゃないじゃん!」

天城(……コメントしづらいよ、千枝)


露天風呂 脱衣場


     ガララッ

比企谷「!?」

比企谷「と……戸塚!?」///

戸塚「あ、八幡」

比企谷「な、なんで、こんなところに!?」///

花村「どうした? 比企谷……!?」

クマ「クマ!?」

比企谷「と、ともかく! 胸を隠せ!」///

戸塚「え? どうして?」

比企谷「いいから!」///


花村(……もし)

花村(神様ってのが居んのなら、相当のひねくれもんだろうなぁ……)

花村(何でこの外見で男なんだよ……マジありえねぇだろ……)

クマ(こっちの世界は刺激がいっぱいクマ)


比企谷「……ふう」

戸塚「それじゃ、入ろっか? 八幡」

比企谷「……おう」///

花村「……よ、よろしく」///

クマ「みんなで仲良く入るクマ!」

クマ「ウッホホーイ♪」


雪ノ下「…………」

雪ノ下(そういえば姉さん、遅いわね?)

雪ノ下(あんなに一緒に入りたがっていたのに……)


里中「ね、由比ヶ浜さん」

由比ヶ浜「ん?」

里中「ここに……八十稲羽に来るのって」

里中「比企谷くんに会う為……だよね?」

雪ノ下「!」

白鐘「!」

由比ヶ浜「……うん」///


里中「気に障ったらごめんね?」

里中「正直、あたしには比企谷くんの良さが分かんなくてさ」

里中「どこがいいの?」

由比ヶ浜「…………」

由比ヶ浜「ヒッキーはね、いつも憎まれ口を言うけど」

由比ヶ浜「間違った事は全然言わない」

由比ヶ浜「……自分の事を除いて」

雪ノ下「…………」

天城「どういう……意味?」

由比ヶ浜「時々ね」

由比ヶ浜「問題の解決をする際、自分を悪者にしちゃうんだ、ヒッキー」

りせ「悪者?」


由比ヶ浜「見た目で何でもないってフリしてるけど」

由比ヶ浜「そんな訳ない」

由比ヶ浜「私は……きっと誰よりも心の痛みを知っているから」

由比ヶ浜「ああいう態度を取るんだと思う」

雪ノ下「…………」

里中「つまり、母性本能をくすぐられた、って感じ?」

由比ヶ浜「…………」

由比ヶ浜「ううん。 上手く言えないけど、違うと思う」

由比ヶ浜「ただ……ヒッキーのそばに居たいな、というのは確かかな」///

りせ「ふうん。 だってさ? 白鐘くん」

白鐘「っ!?」///

白鐘「き、急に僕に降らないでくださいっ」///


天城「いまさら隠さなくてもいいじゃない♪」

天城「白鐘くんは比企谷くんのどこがいいの?」

白鐘「あ、あのっ……そのっ……」///

白鐘「こ、こういう事、は、初めてなので……う、上手く言えなくて……」///

白鐘「ただ……僕も、その」///

白鐘「比企谷先輩のとなりに居たいかなって……」///

里中「おお~言い切ったね、白鐘くん♪」

天城「見てるこっちまで恥ずかしくなってきた……」///

由比ヶ浜「…………」

由比ヶ浜「ねえ、ゆきのんは?」

雪ノ下「え?」


由比ヶ浜「ゆきのんは、ヒッキーの事……どう思ってるの?」

雪ノ下「!?」


里中(おおっ……由比ヶ浜さん、攻め込んだ!)

天城(私達にはもうバレてるけど、雪ノ下さん、こういうの認めないっぽいし)

天城(どう答えるんだろう……?) ワクワク

りせ(これだけの証人の前で、うかつな事は言えないよね)

白鐘(……この人も僕の知らない比企谷先輩を知っている人)

白鐘(どんな事を語ってくれるのだろう……)


雪ノ下「…………」

雪ノ下「……由比ヶ浜さん」

由比ヶ浜「うん」

雪ノ下「私は――」





??「ウッホホーイ♪」

??「クマかき、披露するクマ~♪」






     バッシャーン!!






女性陣「!!?」


クマ「ぷはぁっ!」

クマ「……クマ?」


由比ヶ浜「」

雪ノ下「」

里中「」

天城「」

りせ「」

白鐘「」


??「おいおい、他のお客さんに迷惑かけんなよ? クマ?」

???「……ん?」

??「あれ?」


里中「あ、あ、あ、あんたらー!?」///

花村「ななななななな、何でお前らが!?」///

里中「それこっちのセリフ!」///

雪ノ下「と、ともかく、早く出て行きなさいっ」///

     ブンッ  パコーン!

クマ「痛っ! クマー!?」

比企谷「い、いくらなんでも木桶投げるとか危ねぇだr」

比企谷「痛ぇ!」

戸塚「ど、どうしよう!? 八幡!」

花村「早いとこ決め……あだっ! ひ、ひいっ!」

比企谷「状況は最悪だ……だがっ!」




     ……えっとね?

     普段ならね? こんな行動、取ったりしないと思うんですよ?

     でもね? 直前にあった、戸塚との出来事なんかで

     いろいろテンションが上がってたのかな?とかいう言い訳もあるんですよ?



     ……まあ、はっきり言えば

     いや、ぶっちゃけると……






     俺もどうしようもない男だったって事なんですよ……







比企谷「勇気を出して、この場に踏みとどまるっ!!」




花村「おうっ!!」

戸塚「わ、わかったよ、八幡!」

クマ「クマ!!」


由比ヶ浜「」

雪ノ下「」

里中「」

天城「」

りせ「」

白鐘「」


由比ヶ浜「バ、バカー! ヒッキーのエッチ、スケベ、変態っ!」///

雪ノ下「こんな所で本性を表すなんて、最低よっ!」///

里中「でてけっ! でてけっー!」///

天城「信じられないっ!」///

りせ「この覗き魔! ド変態っ!」///

白鐘「いくらなんでもやりすぎですっ!」///

     ヒュン ヒュン ブオッ

花村「あだっ! 痛てっ!」

比企谷「おがっ! うぐぐっ……!」

花村「って! お、おい! 比企谷!」

花村「この勇気にどれほどの価値があるんだよ!?」


比企谷「す、すまん! 俺がどうかしてた!」

比企谷「撤退! 撤退するぞ!」

クマ「ひ、ひぃぃぃ!」

戸塚(……どうして僕は狙われないんだろう?)

     ダダダダダダッ……

里中「はあっはあっ、思い知ったか!」///

由比ヶ浜(……ヒッキーと二人きりでなら、見せてあげたのに)///

雪ノ下「まったく……ああも堂々と痴漢行為をするなんて」///

天城「……あ!」

りせ「え!? どうしたんですか!?」

天城「……露天風呂、今の時間って」

天城「男湯だった……」

一同「!?」


比企谷「す、すまん! 俺がどうかしてた!」

比企谷「撤退! 撤退するぞ!」

クマ「ひ、ひぃぃぃ!」

戸塚(……どうして僕は狙われないんだろう?)

     ダダダダダダッ……

里中「はあっはあっ、思い知ったか!」///

由比ヶ浜(……ヒッキーと二人きりでなら、見せてあげたのに)///

雪ノ下「まったく……ああも堂々と痴漢行為をするなんて」///

天城「……あ!」

りせ「え!? どうしたんですか!?」

天城「……露天風呂、今の時間って」

天城「男湯だった……」

一同「!?」


由比ヶ浜「……という事は」

由比ヶ浜「ヒッキー達は悪くなかったって事?」

雪ノ下「……そうなるわね」

白鐘「……悪い事しましたね」

里中「いやいやいや! その後、チャンスとばかりに居座ろうとしたじゃん!?」

天城「ま、まあ、男の子だし……」///

りせ「理解出来なくないけど、やましい心が無かった訳じゃないでしょ?」

白鐘「…………」

白鐘「……それはそうと、見られたのかな」///

由比ヶ浜「……」///

雪ノ下(……今、コンテストの時の由比ヶ浜さんの気持ちが、わかった気がする)///


室内大浴場

現在 女湯


陽乃「…………」

陽乃「……雪乃ちゃん、遅いわね?」


―――――――――――


比企谷達の部屋


花村「……はあ」

クマ「イタタ……酷い目に会ったクマ……」

比企谷「このアザ……しばらく残りそうだな……痛つつ」

花村「…………」


花村「……ところでよ」

比企谷「……なんだ?」

クマ「……何クマ?」

花村「見たか?」

比企谷「いや……」

クマ「湯気が凄くて、お顔がやっと分かるくらいだったクマ……」

花村「はあ……なんだよ、この仕打ち……」

花村「脱衣場出る時、看板見たら、やっぱり男湯だったのに……」

比企谷「謝罪と賠償を要求したいな」

花村「あいつらがそんな要求に従ってくれるかよ……」


     ……ぉ…………ぁ…………


花村「…………」

比企谷「…………」

クマ「…………」

花村「……ええと、そうだ! トランプでもするか?」

クマ「今、何か聞こえなかったクマ?」

花村「はあ? 何の事だ? お、俺には、聞こえなかったぞ?」

比企谷「…………」


     ……はぁ……うぐっ……おっ……


クマ「……は、はっきり、聞こえちゃったクマよ」

比企谷「……そういえば」

花村「な、何だよ? 比企谷。 なーんも気づく様な事、無いと思うけど!?」


比企谷「山野アナが最後に目撃されたのって……天城屋なんだよな?」

花村「そ、それが、ど、どうしたって、言うんだよ?」

比企谷「この部屋……山野アナが泊まった部屋なんじゃ……」

花村「あー! 言っちゃった!」

花村「その事、上手ーく スルーしようと思ってたのに!」


     ぁあっ……はぁ…………うっ……


クマ「ま、また、聞こえたクマ~!!」

花村「ひいいいっ!」

比企谷「…………」

比企谷「……おい」


花村「な、なんだよ?」

比企谷「おかしくないか?」

花村「……何がだ?」

比企谷「さっきから聞こえるこの声……男の声っぽくないか?」

クマ「クマ?」

花村「…………」

花村「も、もしかして……」

比企谷「……おう」

花村「じょ、成仏できない山野アナの霊が」

花村「寝ている男を金縛りか何かで……」

比企谷「……」

クマ「……」


比企谷「ば、バカ言うなよ」

比企谷「第一、それならこの部屋の俺たちを……」


     ………う………あぁ……は……


クマ「ひいいいいいいっ!!」

花村「と、とにかく、こんな部屋じゃ、安心して寝れねーよ!」

クマ「こ、こうなったら、みんなの所に行くクマ!」

花村「えっ!?」

花村「さすがにそれはマズイだろ?」

比企谷「もう手足縛られたくないしな……」


比企谷「と、ともかく、だ」

比企谷「この声の正体を確かめるぞ」

花村「マ、マジかよ……」

クマ「センセイ、それは怖いクマ……」

比企谷「先人は良いことわざを残してくれている」

比企谷「幽霊の、正体見たり枯れ尾花ってな」

クマ「どういう意味クマ?」

花村「幽霊だと思ったが、よく見たらただの枯れた花だったっつー話だよ」

クマ「ほうほう。 勉強になるクマ」

比企谷「……まあ、最悪。 戸塚の部屋に逃げ込む事も考えておこう」

花村「……だな」

クマ「わかったクマ!」



―――――――――――


天城屋 玄関ロビー付近


     サアアアアア……

由比ヶ浜「…………」

??「……外、雨が降ってきたみたいだね」

由比ヶ浜「!」

由比ヶ浜「さいちゃん……」

戸塚「良かったら、お茶でもどう?」

由比ヶ浜「うん。 もらおうかな」


由比ヶ浜「さいちゃん、さっきはごめんね?」

由比ヶ浜「なんか天城さん、時間を間違えてたみたいで……」

戸塚「ああ……そうだったの」

戸塚「僕はいいけど……八幡達、ボコボコだったからね」

戸塚「彼らに謝った方がいいかな」 クスッ

由比ヶ浜「うん。 明日にでも謝っておく」

由比ヶ浜「…………」

由比ヶ浜「雨……やまないかな」

戸塚「天気予報じゃ無理っぽい感じだったね……」

戸塚「どうする? 高台……だったっけ?」

戸塚「告白する場所」

由比ヶ浜「……うん」///


由比ヶ浜「私、八十稲羽で他にいい場所知らないし」

由比ヶ浜「晴れてくれたら、最高だと思うんだけどな……」

戸塚「延期する?」

由比ヶ浜「ううん。 それはイヤ」

由比ヶ浜「……今言わないと、もうずっと言えない気がするし」

戸塚「そっか……」

由比ヶ浜「…………」

由比ヶ浜「ヒッキー、雨降ってても来てくれるかなぁ」

戸塚「この旅館とかじゃダメなの?」

由比ヶ浜「……二人きりになりたいんだ、私」

由比ヶ浜「ゆきのんやここのみんなに邪魔されない場所で」

戸塚「…………」


戸塚「もう遅い時間だね」

戸塚「そろそろ休んだ方がいいかも」

由比ヶ浜「そうだね」 クスッ

戸塚「…………」

戸塚「ありきたりな事しか言えないけど」

戸塚「頑張ってね、由比ヶ浜さん」

由比ヶ浜「さいちゃん……ありがとう」

由比ヶ浜「私、頑張るよ!」


―――――――――――


比企谷(……この部屋か)


     はあっ……はあっ……ううっ……


花村(……マジで苦しそうな声出してるな)

クマ(隣の部屋だとは思わなかったクマ……)

比企谷(…………)

比企谷(よ、よし……)

比企谷(ふすまを……少し開けるぞ)

花村(お、おう……)

クマ(い、いったい、何が起こっているクマ……!?)



     スススッ……


完二「はあっ……はあっ……」

完二「直斗……なお……うっ……」


     ピシャ


比企谷「…………」

花村「…………」

クマ「」

比企谷「花村」

花村「おう」

比企谷「ゲロ袋、持ってないか?」

花村「奇遇だな。 俺も同じ事、お前に聞こうと思ったんだ」

クマ「」


比企谷「クマも気絶してるし、とりあえず」

比企谷「戸塚の部屋に行って、癒してもらおうと思う」

花村「ああ……いいな、それ」

花村「今見た事、忘れさせてくれるのは、それくらいだよな」

比企谷「行こうぜ」

花村「おう」



     そこから言葉はいらなかった

     今は、何よりもとつかわいいを味わいたい

     それしか思い浮かばなかった……





―――――――――――





     サアアアアア……






深夜

八十稲羽 某所


     ……ピウィ~……

???「……映った」

???「…………」

???「!」

???「この娘は……八十稲羽在住じゃないのに」

???「なんて事だ……」

???(…………)

???(良かった……【マヨナカテレビ】の法則性に気がついていて)

???(……必ず、救ってあげるからね)

???(由比ヶ浜結衣さん……ふふふ)






     ふふふふふふふふふふ……




今日はここまでです。お付き合いありがとうございました。

堂島さんはともかく、菜々子ちゃんは難しいなぁ……
考えてみますが、あまり期待はしないでください……あしからずです。
それではまた。

乙ー

やっぱりガハマさんが菜々子の代わりか
千葉に一人置いていかれるわ、ゆきのんには負けそうだわ、他校の生徒の前でヌード晒すわ、拉致られるわ……ここのガハマさんは不憫だな

乙ー
大丈夫原作だって十分不憫だ、自業自得な部分があるとは思うが

諦めない!!絶対に!番長を!!

とりま乙ー

今作、一番の不憫キャラは完二だと思う。最早、ただの変態キャラじゃねぇか・・・

保守

ほs

前スレ読み直したけど作者は九州の人かな?
方言入ってたから。

保守

>>217
方言、入ってました?
ちなみに生まれは四国です。関西圏在住ですけどね。

それから業務連絡です。お待たせして申し訳ありませんが
年末進行が激化して先週は書く事がほとんど出来ませんでした……。
この連休中に……と思ったら、遊びに来た甥っ子(小学生)のモンハンに付き合わされ
これまた書く事が出来ませんでした……。

今週も忙しくなる見込みで、楽しみにされている方々には悪いのですが
もしかしたら次の投下は正月くらいになるかもしれません……ご迷惑をおかけします。すみません。

そうだ、せめて出来る修正はしておこう。
>>190>>191が二重投下になってますね。

後、>>139の修正↓


司会「さて、これで参加者は全員揃った!」

司会「野郎ども、目の保養はしっかりしたよな? じゃ、後は投票を……」


     ビー! ビー! ビー!


司会「おおっと!? またまたハプニング!?」

司会「今年はやけに多いぜ!」

司会「なになに……」

司会「…………」

司会「なんと!? こいつは驚きだ!」

司会「女装コンテストに続き、ここでも飛び入り参加者が現れたぞ!」


     オオ―――――――――――!!


司会「こいつは野郎共にとって嬉しいハプニングだ!」

最後に、レス、乙、保守、ありがとうございます!
一応年内投下は目指しておりますので!
それでは、また。

乙!

続き楽しみにしてる!完走期待してるので頑張ってください!

保守 楽しみにしてます

>>218
前スレで千恵が『濃ゆい』って言ってたので九州かなって思いました。

乙!



―――――――――――


????


マーガレット「ようこそ、ベルベット・ルームへ」

マーガレット「申し訳ありません」

マーガレット「我が主イゴールは、ただいま所用で席を外しております」

マーガレット「…………」

マーガレット「ふふ……そうね」

マーガレット「確かにこちらからお呼びする事は多いけど」

マーガレット「たまにお客様の様に」

マーガレット「自分の意志とは無関係に来房される方は居るのよ」

マーガレット「…………」

マーガレット「力(ちから)……?」

マーガレット「ああ、『ワイルド』の事?」


マーガレット「そうね。 そうかもしれない」

マーガレット「でも、大抵は……大きな迷いや悩みを抱え込んだ時」

マーガレット「意思を持たぬ来房者となる事が多いわ」

マーガレット「ここは……そういう場所なのよ」

マーガレット「…………」

マーガレット「そう。 心当たりは無いのね」

マーガレット「なら」

     パラララ……

マーガレット「占いでもどうかしら?」

マーガレット「…………」

マーガレット「ふふ、お客様ならそう言うと思ったわ」


     サッサッサッ……

マーガレット「…………」

マーガレット「……これは」

マーガレット「…………」

マーガレット「…………」

マーガレット「ええ……良くない結果だったわ」

マーガレット「知らない方がいい」

マーガレット「…………」

マーガレット「気になる?」

マーガレット「…………」

マーガレット「……あなたに不幸が訪れるわ」

マーガレット「でもそれは……あなたを成長させる出来事かもしれない」


マーガレット「…………」

マーガレット「そうね……『たかが』占いよ」

マーガレット「気にするだけ無駄よね」

マーガレット「でも……どこかで引っかかってしまう」

マーガレット「それが人間というもの……」

マーガレット「…………」

マーガレット「あら? そろそろお目覚めの時刻の様ね」

マーガレット「霧で覆われたお客様の進む道に」

マーガレット「少しでも光が差し込むよう、祈ります」

マーガレット「どうかお気を付けて」



―――――――――――


翌日の朝

雪ノ下の部屋


     コン コン

雪ノ下「戸塚くん? 朝食の準備ができたんだけど」

雪ノ下「起きてるかし……?」

     ヤベッ ユキノシタダ! マズイッ カクレナイト!

雪ノ下「…………」

     ガチャ

比企谷「」

花村「」

クマ「」

雪ノ下「……どういう事か、説明してもらえるかしら?」



―――――――――――


戸塚「――という訳で」

戸塚「よく分からないけど、怖い思いしたみたいなんだ」

雪ノ下「……呆れて開いた口が塞がらないわ」

比企谷「反論はしねぇよ……」

花村「思い出したくないから、それへのツッコミは無しの方向で」

クマ「……お願いクマ」

雪ノ下「…………」

雪ノ下「まあ、いいけど」


雪ノ下「それよりも……」

比企谷「ん?」

雪ノ下「私の部屋を荒らしたりしてないでしょうね?」

比企谷「してねーよ……」

戸塚「大丈夫だよ、雪ノ下さん」

戸塚「みんな大人しい感じだったから」

雪ノ下「……ならいいけど」

花村(……そういや、この部屋)

花村(雪ノ下さんの住んでる部屋なんだっけ……)

クマ「わお」

クマ「という事は~この部屋はユキノンの秘密がいっぱいクマね!」

     ガラッ

クマ「おおっこれはぷりち~なパン」

     ゴスッ!



―――――――――――


天城屋 廊下


白鐘「ふぁ……」

完二「……!」

完二「な、直斗……!?」

白鐘「え?」

白鐘「……巽完二くん。 君もここに宿泊してたのか」

完二(……気まずい。 昨夜あんな事したし……)///

白鐘「…………」


白鐘「……少し呆れ……驚きましたけど」

白鐘「君は凄いですね」

完二「……は?」

白鐘「コンテストのステージ、しかも大勢の目の前で」

白鐘「告白したんですから」

完二「…………」///

白鐘「実は……僕も真似をしようかと、少し思いました」

完二「!」

完二「……つーことは、誰か好きな奴が居るって事か?」

白鐘「……ええ」///

白鐘「もっとも、ステージに立って、たくさんの人の目を見た時に」

白鐘「もうそれどころでは無くなりましたけど……」

白鐘「でもそのおかげで、君の凄さに気がつきました」


完二「そうか……」

完二「けど、俺ァそんなに凄い奴じゃねぇよ」

完二「なんつーか……自分のモヤモヤした気持ちに」

完二「踏ん切りをつけたかっただけなんだ」

白鐘「…………」

完二「俺にもいろいろあってよ」

完二「ああいう行動に出たのも自分の逃げ場を無くすっつーか」

完二「とことんまで自分自身を追い詰めて、何が何でもやり通すんだって」

完二「ハンパな俺と決別したかったってのが、根底にある」

完二「結局のところ、俺ァ、自分の事しか考えてねぇんだよ……」

白鐘「……そうですか」


完二「…………」

完二「でもよ」

白鐘「はい?」

完二「スッキリしたぜ」

白鐘「…………」

完二「俺のやり方は間違っていたかもしんねぇ」

完二「けど、やりたい様にやって、精一杯ぶつかって、お前に断られた」

完二「だから……また変に思われるかもしれねーが、良かったと思っている」

完二「ありがとうな」

白鐘「…………」

完二「じゃあな。 直……白鐘」

完二「誰かしらねーが、お前の想い。 届く事を祈ってるぜ」

白鐘「巽くん……ありがとう」



―――――――――――


午前中

天城屋 玄関ロビー付近


     オ届ケ物デース

     ハーイ、少々オ待チ下サイ

由比ヶ浜「あ、ヒッキー」

比企谷「何だ? 由比ヶ浜?」

由比ヶ浜「あのね……ちょっと時間が欲しいの」

比企谷「時間? 何でだ?」


由比ヶ浜「話がしたいの」

由比ヶ浜「……二人きりで」

比企谷「…………」

比企谷「どこでだ?」

由比ヶ浜「高台」

比企谷「……この雨の中でか?」

由比ヶ浜「…………」

由比ヶ浜「お願い、ヒッキー」

比企谷「…………」

比企谷「……わかった、由比ヶ浜」

由比ヶ浜「!」

由比ヶ浜「あ、ありがとう! ヒッキー!」


比企谷「けど、荷物を自宅に置いてきてからでいいか?」

由比ヶ浜「うん! もちろんだよ、ヒッキー!」

由比ヶ浜「後で連絡をくれたらいいから!」

由比ヶ浜「でも……今日中にお願いね?」

比企谷「わかった」


花村「お? 比企谷、もう帰る準備終わったのか」

比企谷「ああ」

里中「もうちょっとゆっくりしてけばいいのに」

戸塚「そうだよ、八幡」

比企谷「そうしたいのは山々だが、昨日突然ここに泊まる事が決まったしな」

比企谷「足立さんに顔くらいは見せておこうと思って」


りせ「へぇ……比企谷先輩、意外に気を遣うのね」

比企谷「そんなんじゃない。 行方不明事件の事もあるし」

比企谷「警察に勘ぐられない様、念のためだ」

りせ「ああ……納得」


由比ヶ浜(……夏休みの時、少し事情を聞いたけど)

由比ヶ浜(何となくヒッキーらしくないな、と、思ったっけ)


花村「……つー事は、俺らも長居は良くねぇな」

里中「……だね」

里中(あたしなんて一度連れ去られてるし)

りせ「しょうがない。 あたしも一度、戻ろっか」

白鐘「ですね」


クマ「クマは、もうしばらくここに居るクマよ~」

クマ「ユイちゃん、サイちゃんと、いっぱい遊ぶクマ!」

比企谷「……すまないな、由比ヶ浜」

由比ヶ浜「ううん。 大丈夫だよ、ヒッキー」

由比ヶ浜「クマくんと遊ぶの楽しいし♪」

クマ「ユイちゃんは天使クマ~」

雪ノ下「暴走しないよう、見張っておくわ」

天城「私もね」

比企谷「任せる。 じゃ……」

由比ヶ浜「うん、ヒッキー」

雪ノ下「……?」



―――――――――――


足立宅


     サアアアアア……

比企谷「ただいま戻りました」

足立「あれ? 比企谷くん?」

足立「もう帰ってきたのかい?」

比企谷「ええ。 と言っても荷物を置きに来ただけですけど」

比企谷「この後、文化祭打ち上げ会パート2があるとか」

足立「ははは、賑やかな友達だったものねぇ……さぞ楽しそうだ」

比企谷(足立さん、遠くを見る様な目で言われても……)

比企谷(ここで食事した時の事、根に持ってるのかもな)


足立「あっ、そうそう」

足立「君宛てにまた手紙が届いてるよ」

比企谷「…………」

比企谷「……そうですか」

足立「はいこれ」

比企谷「……どうも」

比企谷「じゃ、俺、出かけますので」

足立「もう? 手紙も見ないのかい?」

比企谷「道すがら読みますので。 では、行ってきます」

     ガチャ キィ……パタン

足立「…………」



―――――――――――





     コ ン ド コ ソ

     ヤ メ ナ イ ト  ダ イ ジ ナ

     ヒ ト ガ イ レ ラ レ テ

     コ ロ サ レ ル ヨ





比企谷「…………」

比企谷(明らかに犯人からのものだな……)

比企谷「…………」

比企谷(さて……どうするか)


比企谷「…………」

     ピッ ポッ パッ

     ルルルルル……ルルルルル……ガチャ

比企谷「白鐘か?」

比企谷「ぶしつけで悪いが、今どこに居る?」

比企谷「…………」

比企谷「自宅に向かっているところ……そうか」

比企谷「悪いんだが、これから会えないか?」

比企谷「例の警告状。 二通目が届いてた」

比企谷「…………」

比企谷「すまんな」


比企谷「……駅近くの喫茶店○○」

比企谷「わかった。 そこで待ち合わせよう」

比企谷「じゃ……」

     ブッ…… ツー ツー

比企谷「……由比ヶ浜に連絡しておかないと」


―――――――――――


由比ヶ浜「ヒッキー!」

由比ヶ浜「うん……うん……」

由比ヶ浜「……え……急用が入った?」

由比ヶ浜「……そっか」


由比ヶ浜「う、ううん。 大丈夫だよ、ヒッキー」

由比ヶ浜「…………」

由比ヶ浜「打ち上げが終わって、夕方くらい?」

由比ヶ浜「うん! それでいいよ、ヒッキー」

由比ヶ浜「私、明日までここに居るし」

由比ヶ浜「…………」

由比ヶ浜「うん。 じゃ……」

     ブッ…… ツー ツー

由比ヶ浜「…………」


戸塚「今の……八幡から?」

由比ヶ浜「ひゃあっ!?」


由比ヶ浜「さ、さいちゃん……」

戸塚「ごめん。 脅かすつもりじゃなかったんだけど」

戸塚「それで、八幡からなの?」

由比ヶ浜「……うん」

戸塚「そっか……いよいよだね」

由比ヶ浜「ううっ、何か、緊張してきた」

戸塚「大丈夫だよ、由比ヶ浜さん」

戸塚「ことわざにもあるじゃない」

戸塚「案ずるよりも産むが易しって」

由比ヶ浜「……うん。 そうだね、さいちゃん」

由比ヶ浜「よぉーし! 頑張るぞ!」

戸塚「うんうん」 ニコッ


駅近くの喫茶店○○


白鐘「……これが例の手紙ですか」

白鐘「…………」

白鐘「ふざけた内容だ……」

比企谷「全く同意見だ」

比企谷「だが、油断のならない相手でもある」

白鐘「……ええ」

白鐘「ともかく、これも鑑識作業を依頼しておきましょう」

白鐘「そうだ……聞いておきたい事があるのですが」

比企谷「何だ?」


白鐘「足立さんは、この手紙にも触れたんですか?」

比企谷「ああ。 手渡されたからな」

比企谷「それがどうかしたのか?」

白鐘「いえ……きっと考えすぎですね」

白鐘「この手紙、前のも含めて封がなされていませんし」

比企谷「……?」

白鐘「それではこれで」

白鐘「お爺様にこの手紙を渡したら、僕もすぐに打ち上げに参加しますので」

比企谷「あ、ああ……」

比企谷「ここの会計は任せろ。 俺が払っておく」

白鐘「すみません、ご馳走になります」

白鐘「じゃ……」



―――――――――――


花村「はい、もしもし……比企谷?」

花村「…………」

花村「!」

花村「警告状……二通目の」

花村「…………」

花村「ああ、わかった。 里中達にそれとなく伝えておく」

花村「この後の打ち上げで由比ヶ浜さん達にバレねー様に……あん?」

花村「…………」

花村「……ああ、確かに言わねー方がいいかもなぁ」

花村「う~ん……でも言っておかねーと、後々揉めそうな気もすんなぁ」


花村「…………」

花村「敵を騙すにはまず味方から、ね……」

花村「なんか使い方間違ってる気もするが、言わんとする事はわかる」

花村「OK、比企谷」

花村「由比ヶ浜さん達が帰ったらその話をしよう」

花村「…………」

花村「ああ、白鐘は遅れるのな」

花村「了解だ」

花村「じゃ、昼飯食ったらジュネスでな!」

     ブッ…… ツー ツー

花村「さて、早いとこ俺も出かける準備しとかないと……」




     打ち上げ会パート2は、カラオケだった。

     ……ぼっちの俺にとって、いい思い出はないが

     まあ、雪ノ下もそわそわしていて、どうにも慣れていないっぽい。



     後ろ向きに前向きだが、ちょっと安心していたりする……




―――――――――――


数時間後

カラオケルームの一室


花村「はぁ~歌った歌ったぁ」

戸塚「みんな上手だね」

里中「やっぱりアニソンは80年代が最強っしょ!」

由比ヶ浜「白鐘くんも上手いよね」

白鐘「ど、どうも……」///

クマ「クマの歌も褒めるクマよ~!」

天城「楽しかったね♪」

りせ「また今度集まった時も来ようよ!」


比企谷(……やっと終わった)

雪ノ下(……疲れた)


比企谷(みんな意外とアニソンとか抵抗なくて驚いたが……)

比企谷(どうにもこの雰囲気は慣れないな)

比企谷(久しぶりに自分がぼっちだと再認識した……)

雪ノ下(…………)

雪ノ下(でも……)

雪ノ下(何となく、この環境に馴染んできている気もする)


比企谷「それじゃそろそろお開きって事でいいか?」

比企谷「もう夕方だ」

花村「おう! そうだな、比企谷」

花村「お前の歌も良かったぜ!」

比企谷「そ、それは何より……」///


里中「じゃあね、みんな!」

りせ「また明日!」

クマ「バイバイ、クマー!」

比企谷「…………」


由比ヶ浜(じゃあヒッキー。 えと……18:00くらいに高台で)

比企谷(18:00? 今から二時間後かよ……)

由比ヶ浜(文句言うなし!)


由比ヶ浜「じゃあね! ヒッキー!」

雪ノ下「……何を耳打ちしたの? 由比ヶ浜さん」

由比ヶ浜「ふふふ、内緒!」

雪ノ下「…………」


白鐘「それじゃ、僕もこれで失礼します」

比企谷「ああ」

白鐘「何か分かり次第、連絡しますので……では」

比企谷「…………」


     サアアアアア……


比企谷「…………」

比企谷「雨……止みそうもないな」

比企谷「…………」

比企谷(由比ヶ浜……二人きりで話って、何だろう?)




     落ち着け。

     思わせぶりな事だと感じても、それは俺の思い込みだ。

     可能性を考えろ。



     1、愛犬サブレの事

     2、実は戸塚に彼氏が出来そう

     3、花村との仲を取り持って欲しい



     ……だいたいこんなところか。

     そうだ、3の理由ならコンテストの由比ヶ浜の言動も説明がつく。

     そういう事だったか……。





     …………もう、何度目だろうか。

     どうして、俺はこうも勘違いしてしまうのだろう。

     期待なんてするな。






     これからもずっと――






―――――――――――


天城屋 廊下


由比ヶ浜「ふう……」

雪ノ下「由比ヶ浜さん?」

雪ノ下「もうお風呂に入ったの?」

由比ヶ浜「あ、ゆきのん」

由比ヶ浜「うん。 ちょっと気持ち悪かったから」

雪ノ下「湯冷めには気をつけてね」

雪ノ下「夕食は19:00くらいになるから」

由比ヶ浜「うん、わかったよ、ゆきのん」

由比ヶ浜「それまでには帰るから……」

雪ノ下「? どこかに出かけるの? この雨の中?」

由比ヶ浜「!」


由比ヶ浜「あ、うん。 ジュネスに、ちょっと……」

雪ノ下「そうなの?」

由比ヶ浜「景品取りに行かなくちゃならなくて」

雪ノ下「景品?」

由比ヶ浜「それがさ、ほら昨日のコンテスト」

由比ヶ浜「ジュネスで買い物したら50万人目になっちゃってさー」

雪ノ下「初耳ね」

由比ヶ浜「急いでいた事もあって景品の受け取りは明日にします」

由比ヶ浜「って、いう事にしてもらったんだ……」

雪ノ下「そういう事だったの」


雪ノ下「私も付き添いましょうか?」

由比ヶ浜「だ、大丈夫だよ!」

由比ヶ浜「結構大きな荷物なんで、宅配にしてもらうつもりだから」

由比ヶ浜「一人でも問題ないって!」

雪ノ下「そう……」

雪ノ下(だったらなおの事、後でお風呂に入ったらいいのに)

雪ノ下「本当に湯冷めには気をつけてね、由比ヶ浜さん」

由比ヶ浜「あ、うん。 ありがとう、ゆきのん」

由比ヶ浜「じゃ、行ってくるね!」

雪ノ下「ええ」

     タッ タッ タッ…

雪ノ下「…………」


由比ヶ浜「ふぅ~……」

由比ヶ浜「危ない危ない……あやうく感づかれるところだった」

由比ヶ浜「…………」

由比ヶ浜(えへへ……)

由比ヶ浜(これからヒッキーに告白するんだもん)

由比ヶ浜(だから、一番綺麗な私を見て欲しいんだよね)

由比ヶ浜(さて、部屋に戻って髪の毛乾かして、お化粧して)

由比ヶ浜(出かけるぞ!)///


足立宅


比企谷「…………」

比企谷(……そろそろか)

     ガラッ

比企谷「足立さん」

足立「ん? どうしたんだい?」

比企谷「俺、ちょっと出かけてきます」

足立「出かける? こんな雨の中でかい?」

比企谷「いろいろありましてね……」

比企谷「すみませんが今日の夕食、ジュネスで買ってきた弁当です」

比企谷「遅くなるつもりはありませんが、お腹がすいたら温めて先に食べて下さい」

足立「そうかい、わかったよ。 君も気をつけてね」

比企谷「はい。 行ってきます」


白鐘宅


白鐘「さて、昨日の報道番組の録画を確認しなくちゃ」

―――――――――――

白鐘「……ふう」

白鐘「今のところ、この街の住人に関する報道はされてないな」

     ピッ

白鐘(……そういえば、昨日の【マヨナカテレビ】を確認していなかった)

白鐘(先輩達の言う条件に合致していた状況だったけど)

白鐘(文化祭の疲れもあって、睡魔に勝てなかった……)

     ……ジュネス八十稲羽店で行われていた50万人キャンペーンですが

白鐘「!!」

白鐘「…………」

白鐘「こ、これは!?」


白鐘「ともかく、比企谷先輩に連絡を!」

     ルルルルル……ルルルルル……ガチャ

     お客様のお掛けになった電話番号は、現在、電源を切った状態か、電波の……

白鐘「くそっ!」 ブッ

     ルルルルル……ルルルルル……

白鐘「ダメだ、繋がらない!」

白鐘「……なら!」

     ルルルルル……ルルルルル……ガチャ

白鐘「もしもし! 天城先輩ですか!?」


天城「どうしたの? 白鐘くん」

天城「…………」

天城「由比ヶ浜さん?」

天城「ごめんなさい。 私、夕食の準備に忙しくて……」

天城「…………」

天城「……えっ!?」

天城「…………」

天城「う、うん! 雪ノ下さんにも聞いてみる!」

天城「一度切るね?」

    ブッ…

天城「大変……雪ノ下さん!」


花村「マジかよ!?」

花村「…………」

花村「わかった、白鐘」

花村「オヤジに確認したら、クマ連れて天城屋に行く」

花村「……ああ、出来るだけ急ぐ。 じゃあな」

     ブッ

クマ「ヨースケ、どうしたクマ?」

花村「…………」

花村「由比ヶ浜さん、誘拐されるかもしれねぇ……」

クマ「ユイちゃんが!?」

クマ「どどどどど、どういう事クマよ!?」


りせ「昨日、小さい報道だったけど、テレビに映ってた!?」

りせ「で、でも、由比ヶ浜さんは、八十稲羽の住人じゃないのに!」

りせ「…………」

りせ「そ、そうだね、今は由比ヶ浜さんの安否確認が先よね!」

りせ「わかったよ、白鐘くん!」


―――――――――――


白鐘「くそっ……間が悪かったとしか」

白鐘「…………」

白鐘(いや……これは『油断』だ)

白鐘(今回の事件はまだ続いていると、犯人は野放し状態だと)

白鐘(あれ程言い続けていたのにっ!!)



―――――――――――


高台

屋根付きベンチ


     サアアアアア……

比企谷「…………」

比企谷「…………」

比企谷「…………」

比企谷「…………」

比企谷「…………」 チラッ

     18:32(ケータイのデジタル時計)

比企谷(……遅いな、由比ヶ浜)


比企谷(…………)

比企谷(バスの時間、間違えたのだろうか?)

比企谷(…………)

比企谷(……ケータイ、圏外だし)

比企谷(どうしたもんかな……)

比企谷(…………)

比企谷(まあ、バスの最終便まで待ってやるか)

比企谷(…………)

比企谷(寒っ……)

比企谷(どんな話か知らねぇが、あったかいモノ奢ってもらうからな)

比企谷(由比ヶ浜)


天城屋


白鐘「さっきから何度も掛けているんですが……」

白鐘「比企谷先輩とも連絡が取れません」

里中「どうして!?」

里中「比企谷くんは、報道されていないんでしょ!?」

白鐘「落ち着いてください、里中先輩」

白鐘「足立さんにも連絡を入れたんですが……」

白鐘「何か用があって出かけたみたいなんです」

花村「こんな雨の中でか?」

白鐘「ええ。 足立さんも不思議に思ったそうですが……」

白鐘「それ程時間は掛けないつもりだった様です」

雪ノ下「…………」


花村「それからオヤジに確認してみたが」

花村「由比ヶ浜さん、17:30くらいに店に来たそうだ」

花村「キャンペーンの景品受取証にサインして、宅配業者に荷物を運んでもらったらしい」

花村「そこからの足取りがわからねぇ……」

白鐘「そうですか……」

花村「……後な」

白鐘「はい?」

花村「関係ないと思うが由比ヶ浜さん、やけにオシャレしていたとか」

花村「対応した店員がそんな事言ってたらしい」

白鐘「…………」

白鐘「……まさか」


りせ「誰かと会うつもりだった?」

花村「誰かって……誰だよ?」

花村「由比ヶ浜さんがオシャレして会いたい奴なんて」

花村「比企谷以外、この街に誰が居んだよ?」


一同「!?」


花村「どうした? お前ら?」

天城「……花村くん、その通りだよ」

天城「由比ヶ浜さん、比企谷くんに会いに行ったんだよ!」

花村「!!」

花村「そ、それじゃ……比企谷の奴」///

花村「今頃、大人の階段登ってる最中」///

     ゴスッ! バキッ!


白鐘「……ともあれ、由比ヶ浜さんの目的は分かりました」

白鐘「問題は……」

里中「どこで会う約束をしたか……だね?」

雪ノ下「私……心当たりがある」


一同「!?」


天城「どこなの? 雪ノ下さん」

雪ノ下「そうじゃなくて……正確には」

雪ノ下「場所を知ってそうな人物を知っている、という意味よ」


―――――――――――


戸塚「……ごめん。 知らない」

雪ノ下「……そう」

戸塚「…………」


戸塚(……どうか許して、雪ノ下さん)

戸塚(由比ヶ浜さんにもう少し時間をあげて)

戸塚(彼女が納得するまで、八幡と居させてあげて……)

戸塚(…………)

戸塚(たぶん……八幡は……)

戸塚(…………)


雪ノ下「戸塚くん。 どんな些細な事でもいいの」

雪ノ下「何か思い出したら、声をかけて欲しい」

戸塚「…………」


戸塚「……うん。 わかった」

雪ノ下「お願いね。 じゃ……」

戸塚「…………」

戸塚(雪ノ下さんも必死だな……)

―――――――――――

雪ノ下「……ごめんなさい」

白鐘「……そうですか。 いえ、気にしないでください」

りせ「こうなったら手分けして探すしかないかも……」

白鐘「そうですね。 ですが冷静に行きましょう」

白鐘「少なくとも比企谷先輩はそうするハズです」


花村「だな」

花村「それに誘拐されたと決まった訳でもない」

花村「案外『やっはろー』って、ひょっこり帰ってくるかもしんねーし」

白鐘(……正直、希望的観測は良くないと思いますが)

白鐘「では、ここ天城屋を拠点として二人ずつ組んで捜索を行いましょう」

白鐘「連絡係としてここに残る人を一人、残りは捜索という事で」

雪ノ下「……私が残るわ」

雪ノ下「戸塚くんが何かを思い出すかもしれないし」

雪ノ下「私のケータイ番号は、比企谷くん、由比ヶ浜さん、どちらも登録してる」

白鐘「そうですね、適任だと思います」

白鐘「搜索の皆さんは30分に一度は雪ノ下先輩に連絡を入れてください」

白鐘「それから、外は雨です」

白鐘「ケータイが通じない事から比企谷先輩達は屋内の、それも地下に居る可能性が高い」

白鐘「この条件に該当する喫茶店、飲食店などを重点的に当たってみてください」


里中「よし! そうと決まったら行くよ! 雪子!」

天城「うん! 千枝!」

花村「行くぜ、クマ吉!」

クマ「クマの鼻センサーの力、見せてやるクマ!」

りせ「行くよ、白鐘くん!」

白鐘「ええ、行きましょう!」

     タッ タッ タッ…

雪ノ下「みんな、気をつけて……」

雪ノ下「…………」

雪ノ下(……どこに行ったのよ、由比ヶ浜さん)

雪ノ下(比企谷くん……!)




―――――――――――





     サアアアアア……






高台


比企谷「…………」

比企谷「…………」

比企谷「…………」

比企谷「…………」 チラッ

     20:14(ケータイのデジタル時計)

比企谷「…………」

比企谷「…………」

比企谷「…………」




     ……俺、何してるんだろう?

     最終バスは、とっくの昔に行った後だ。



比企谷「…………」



     けど、由比ヶ浜は、約束を破る奴じゃない

     そう思って、ここに居る。



比企谷「…………」




     由比ヶ浜に何かあったとしても

     戸塚とか、誰かしらにそれを伝える様に言う。



比企谷「…………」



     ……そういう奴だと

     俺は思っていた。



比企谷「…………」






     どうやら……





     そうじゃなかった……って事、なんだろうな……






比企谷「……っ」 ギリッ…


     サアアアアア……

比企谷「…………」

     20:34(ケータイのデジタル時計)

比企谷「……帰るか」

比企谷「…………」

比企谷「……もう、十分だよな」

比企谷「…………」

     サアアアアア……

比企谷(バスで約15分……)

比企谷(平均時速40キロとして……だいたい10キロ)

比企谷(歩きだと二時間くらいか……)


比企谷(…………)

比企谷(それもいいか)

比企谷(ぼっちには……慣れている)


     トボ トボ トボ…


―――――――――――


天城屋

由比ヶ浜と戸塚の部屋


戸塚「…………」

戸塚(もうすぐ22:00……)

戸塚(いくらなんでも遅すぎる……)


雪ノ下「もしもし……」

雪ノ下「…………」

雪ノ下「ええ、まだ帰って来てないわ」

雪ノ下「比企谷くんは?」

雪ノ下「…………」

雪ノ下「……そう」

雪ノ下「…………」

雪ノ下「……うん。 他の人達も同じよ」

雪ノ下「…………」

雪ノ下「わかったわ、それじゃ」

     ブッ…… ツー ツー

雪ノ下「…………」


戸塚「……雪ノ下さん」

雪ノ下「!?」

雪ノ下「戸塚……くん」

雪ノ下「! 何か、思い出したの!?」

戸塚「…………」

戸塚「ごめんなさい、雪ノ下さん」

戸塚「実は――」


白鐘「高台!?」

白鐘「そうか……うかつだった!」

白鐘「確かにあそこなら圏外ですし、時間帯的にも天候的にも」

白鐘「誰にも邪魔されないで済む……!」

白鐘「…………」

白鐘「わかりました雪ノ下さん」

白鐘「僕と久慈川さんは、これからタクシーで高台に向かいます」

白鐘「比企谷先輩と入れ違いになるかもしれませんが」

白鐘「それを考慮して、今から一時間後には必ず戻ります」

白鐘「捜索に当たっている皆さんにも連絡して、一度天城屋に集まりましょう!」

白鐘「では……」

     ブッ…… ツー ツー

白鐘「久慈川さん!」

りせ「わかってる! タクシー!」



―――――――――――


比企谷「……ふう」

比企谷「やっと麓(ふもと)まで降りてきた……」

比企谷「…………」

     ピピロピンッ♪

比企谷「ん?」

比企谷「…………」

比企谷「!?」

比企谷(何だ、これ……)

比企谷(白鐘達からの着信が……こんなに)

比企谷(…………)


比企谷(ともかく、留守録を……) ピッ

比企谷(…………)


白鐘『もしもし、比企谷先輩! 大変です!』

白鐘『由比ヶ浜さんが誘拐されるかもしれません!』


比企谷「!?」


白鐘『ともかく、連絡をください! 詳しい話はその時にします!』


比企谷「…………」

比企谷「…………」 ピッ

     ルルルルル……ルルルルル……


比企谷「クソッ!」

比企谷「今度はそっちに繋がらねぇのかよ!」

比企谷「…………」

比企谷「!」

比企谷「そうだ、他の連中なら……!」

比企谷「…………」 ピッ

     ルルルルル……ルルルルル……ガチャ

比企谷「雪ノ下!」

雪ノ下『比企谷くん!?』

雪ノ下『高台に……』

比企谷「今、白鐘の留守録を聞いたところだ」

比企谷「由比ヶ浜が誘拐されそうだってな……何が起きている!?」


雪ノ下『…………』

雪ノ下『由比ヶ浜さん、昨日テレビに映っていて……まだ帰ってこないの』

比企谷「っ!!」

雪ノ下『白鐘くんから連絡を受けて、私達が由比ヶ浜さんを探し始めたのが19:00くらいよ』

雪ノ下『状況から、あなたに会いに行ったとは推測できたけど……』

比企谷「…………」

雪ノ下『そして、ついさっき、戸塚くんから』

雪ノ下『あなた達が高台で話し合う約束をしていたと聞いたの』

比企谷「…………」

雪ノ下『入れ違いになってしまったけど、白鐘くんはあなたを迎えに高台へ行って』

雪ノ下『捜索に当たってるみんなを一度、天城屋で集めてくれと頼まれたわ』

比企谷「…………」


雪ノ下『……もうすぐ、【マヨナカテレビ】の時間よ』

雪ノ下『由比ヶ浜さんが誘拐されたかどうか、わかるわ』

雪ノ下『比企谷くんも天城屋に来て』

比企谷「…………」

比企谷「……いや」

比企谷「待つ必要はない」

雪ノ下『え? 比企谷くん、それはどう言う意味……』

     ブッ…… ツー ツー

比企谷「…………」

比企谷「……待ってろ、由比ヶ浜」



―――――――――――


天城屋


白鐘「連絡はあったのにまだ来てないんですか!?」

雪ノ下「……ごめんなさい」

白鐘「! ……いえ、こちらこそ取り乱してすみません」

白鐘「どこから掛けてきたか、言ってましたか?」

雪ノ下「いいえ……全くわからない」

花村「ったく、普段は冷静なくせに」

花村「こんな大事な時にスタンドプレーかよ……」

白鐘「…………」

白鐘「待つ必要はない……」

白鐘「……!!」

白鐘「まさか!?」




―――――――――――







     サアアアアア……







八十稲羽警察署 取調室


堂島「…………」

比企谷「…………」

堂島「……こんな形で君と出会う筝になるとはな」

堂島「ジュネス八十稲羽店への不法侵入、及び器物損壊に」

堂島「警備員への暴行……」

堂島「……正直、こんな事をしでかす奴だと思わなかったが」

比企谷「…………」

堂島「…………」

堂島「まあいい」

堂島「被害自体は大した事はない。 これらの件は穏便に済ませる事が出来る」

堂島「足立の親戚でもあるし、補導歴は正直つけたくない」


比企谷「…………」

堂島「……ただし」

堂島「知っている事は、全部、話してもらうぞ」

堂島「比企谷八幡くん」

比企谷「…………」

堂島「…………」

堂島「だんまりか」

堂島「ま……先は長いんだ」

堂島「ゆっくり考えるのもいいだろう」

堂島「しばらく、頭を冷やすくらい待ってやる」

     ガチャ……キィ……パタン カチリ☆(鍵閉め)

比企谷「…………」


比企谷「…………」

比企谷(……くそっ)

比企谷(こんな筝になるなんてな……)

比企谷(…………)


     ……ピウィ~……


比企谷(!!)

比企谷(【マヨナカテレビ】か……!)


     取調室に備え付けられていた小さなテレビに

     予測はしていたが、映って欲しくないものが映し出されてゆく……


比企谷「……由比……ヶ浜」


比企谷「…………」

比企谷「……っ」

比企谷「くそっ……くそっ!」

比企谷「くそったれがああぁぁっ!!」





     【マヨナカテレビ】は、鮮明な映像で由比ヶ浜を映し出し、そして

     俺にとって、長い夜が始まった――




今日はここまでです。良かった……年内投下、間に合った……。
『濃ゆい』って方言だったんですか……知らなかった。

次回投下は正月にできたらな、とは思っています。
それでは皆さん、良いお年を!

乙ー

>>300
西日本でちらほら言われているみたいですね。
私も他県に移って数年経ってから方言だと知りました(笑)

乙!

来年も楽しみにしています!

続き楽しみにしてまーす

続き楽しみにしてまーす

みなさん、明けましておめでとうございます。
正月、投下するつもりでしたが……再び悪魔(甥っ子)が来房して
私からお年玉という名の徴収をした挙句、またしてもモンハンにつき合わされました。
HRくらい友達と上げてくれよ……友達いねーのかよ、甥っ子……

まあ、そんな事聞く訳にもいかず、結局HR開放まで付き合わされました。
ネットでたくさんのハンターさん、ご協力ありがとう。甥っ子の三乙に何度泣かされた事か……
いちいち説明するこっちの身になって……くれないよな、甥っ子……。

そんな訳で8割くらいは出来ているんですが、投下は日曜日くらいにしようかと思っています。
お待たせしてすみません……それでは。

お待ちしてま~す。

ゆっくりまってま~す



―――――――――――


天城屋


白鐘「どうでした? 花村先輩」

花村「…………」

花村「白鐘の予測通りだ」

白鐘「……そうですか」

花村「ただ、比企谷は保護者の事を最後まで言わなかったらしい」

花村「オヤジ達は、仕方なく警察に引き渡したそうだ」

りせ「比企谷先輩……足立さんに迷惑かけたくなかったのかな」

花村「さあな……けど、オヤジに無理言って、被害届は取り消す様に頼んだ」

花村「明日になるが、これで警察からは解放されるだろう」


白鐘「明日……ですか」

花村「……気持ちはわかる」

花村「けど、今回の件は比企谷の方が100%悪い」

花村「俺に出来る事は、これが精一杯だ」

雪ノ下「…………」

天城「白鐘くん」

白鐘「はい?」

天城「由比ヶ浜さん……映ったわ」

天城「【マヨナカテレビ】に……」

里中「しかも鮮明な映像でね」

白鐘「……という事は」

白鐘「彼女はもうテレビの中、という事ですか……」

りせ「うん……そうなる」


クマ「およよ……ユイちゃん」

クマ「…………」

クマ「クマ……センセイの気持ち、ちょっとだけわかるクマ」

雪ノ下「え?」

クマ「ユイちゃん、きっと一人ぼっちで怖い思い、してるクマ」

里中「まあ……あたしらもそれはわかるじゃん?」

クマ「ユイちゃんは……チエちゃん達とは全く違うクマ」

クマ「だって、さらわれるかもしれない事を」

クマ「事前に言われていないクマよ……きっと恐ろしく思ってるクマ」


一同「!」


白鐘「……そうか」

白鐘「同じなんだ……」

天城「同じって……何が?」

白鐘「…………」

白鐘「先の事件で亡くなった二人と状況が……」


一同「!?」


里中「ど、どう言う意味!?」

白鐘「あの世界は、放り込まれた人間の心の一部が【シャドウ】となり」

白鐘「自分を殺してしまうと推測しています」

花村「確証は無いけどな」


白鐘「しかし……もし」

白鐘「本人の『恐怖感』が深く関わっているとしたら……」

里中「そ、そんな事、あるの!?」

天城「……わからないよ、千枝」

天城「でも、言いたい事はわかるよ、白鐘くん」

天城「私も放り込まれた時、寸前まで千枝がそばに居てくれたけど……」

天城「誘拐されるかもしれない事は聞いてなかったから、あの世界で目が覚めた時」

天城「もの凄く不安に思った」

雪ノ下「…………」

花村「……なる程、ね」

花村(比企谷は理屈こね回す奴だからありえそうだけど……)

花村(そう思いたいんだろうな……白鐘)


白鐘「ともかく一度、警察署に行ってみましょう」

白鐘「無駄になるかもしれませんが、花村先輩も居ます」

白鐘「事情を話せば、比企谷先輩を返してもらえるかもしれません」

花村「確かにそうだな」

花村「ひょっとしたら足立さんが居るかも知んねーし」

花村「案外、すぐ返してくれるかもな!」

りせ「うん、大丈夫だよ! きっと!」

里中「そうと決まったら行こう!」

天城「そうだね! 千枝!」

クマ「待っててクマよ、センセイー!」

雪ノ下「…………」


雪ノ下(……比企谷くん)

雪ノ下(本当にあなたらしくない……こんなの)

雪ノ下(…………)

雪ノ下(それだけ大事……ううん)

雪ノ下(そういう事をさせてしまう程の人、という事なのね)

雪ノ下(あなたにとって……由比ヶ浜結衣、という人は……)

雪ノ下(…………)

雪ノ下(…………)

雪ノ下(私の価値は……?)

雪ノ下(…………)

雪ノ下(……最低ね、私)

雪ノ下(少なくとも、今考えるべき事じゃないわ)

雪ノ下(今は……)



―――――――――――


八十稲羽 警察署


足立「……堂島さん」

堂島「来たか……足立」

足立「本当なんですか? 比企谷くんが盗みに入ったって……」

堂島「詳しくはわからん」

堂島「ジュネスの警備員は窃盗目的で侵入した、と言ってるがな」

堂島「身体検査の結果、何も盗んでいないし」

堂島「本人がだんまりを決め込んでいるので、良くわからない、というのが」

堂島「今の状況だ」

足立「…………」


堂島「ジュネスにたいした被害はない」

堂島「だから穏便に済ませる事は可能だろう」

堂島「……だがな、こっちにも知りたい事がある」

足立「…………」

堂島「もう分かっていると思うが……」

堂島「それを聞き出すのが、お前を呼んだ理由だ」

足立「…………」

堂島「一応、お前は保護者だ。 それに接してきた時間も長い」

堂島「腹を割って話せるのはお前だけだろう」

堂島「頼んだぞ」

足立「……分かりました」


取調室


比企谷「…………」

足立「…………」

足立「……比企谷くん」

足立「黙ってちゃ分からないよ」

比企谷「…………」

足立「……もう一度聞くからね?」

足立「どうしてこんな事をやったんだい?」

比企谷「…………」




     ……本当にその通りだ。

     どうして俺は、こんな事をしでかしてしまったんだ?

     たとえあの世界に行けたとしても、クマや久慈川が居ないんじゃ

     由比ヶ浜の存在の有無や、こっちの世界に帰る事もできない。

     そもそも由比ヶ浜の居場所すらわからない。



     俺は……何をしていたんだ?

     いつの間にか、自分一人で何でもやっている気になっていたのか?






     ……違う



     ただ…… 俺は……



     由比ヶ浜を……




警察署 玄関ロビー付近


堂島「……ん?」

堂島「何か騒がしいな……?」


白鐘「! 堂島さん!」

堂島「白鐘?」

堂島「……こんな時間に何をしている」

堂島「それもこんな大勢で」

白鐘「堂島さん。 比企谷先輩を解放してもらえませんか?」

堂島「…………」

白鐘「無茶を言っているのは承知の上です」

白鐘「ジュネスの被害届は、明日には……いえ、もう今日ですね」

白鐘「取り消してもらえるよう、お願いしてあります」

花村「それはジュネス八十稲羽店・店長の息子の俺が保証します」


堂島「……ほう」

堂島「だったら、取り消されるまでは大人しくしていろ」

堂島「それがルールというものだ」

白鐘「それはわかっています。 だからこそ、そこを曲げて……」

堂島「警察というものは、そんな理屈では動かん」

堂島「さあもう帰れ。 子供が出歩いていい時間じゃない」

白鐘「…………」

白鐘「堂島さん……」

堂島「ん?」


白鐘「あなたの考えは解っています」

白鐘「比企谷先輩から、今回の事件の情報を知りたい」

白鐘「そういう事なのでしょう?」

堂島「…………」

白鐘「それならば、僕たちがある程度できますし、それに……」

白鐘「新たな事件が起きてしまっている」

堂島「……何?」

白鐘「天城先輩」

天城「刑事さん。 私、天城屋の女子高生女将の……」

堂島「失踪騒ぎの被害者、天城雪子……だったな」

天城「…………」

天城「実は……うちの店に宿泊しているお客様の一人が」

天城「まだ帰って来てません」

堂島「!?」


白鐘「僕の推理で、犯人の動機こそわからないものの」

白鐘「被害者の共通点として、行方不明になる直前」

白鐘「必ず八十稲羽に居て、テレビ報道されている人物である、という事を掴んでいます」

堂島「…………」

白鐘「当該の被害者は昨日……いえ、一昨日」

白鐘「小さくではありましたが、ジュネスのキャンペーン当選者として」

白鐘「宿泊先と共に報道されていたんです」

堂島「…………」

堂島「いいだろう、話を聞こう」



―――――――――――


堂島「今日……いや、昨日の夕方から足取りが……」

白鐘「そうです」

白鐘「事情は割愛しますが、行方不明になってる由比ヶ浜結衣さんは」

白鐘「比企谷先輩と会う約束をして、そのさなかに誘拐された可能性が高い」

里中「あたし達も街中を探し回りました」

りせ「でも、それ以降で彼女らしき人を見かけた、という人は居なくて……」

堂島「…………」

堂島「話を聞く限りでは、ジュネスを出てから……という事になるな?」

白鐘「そうです」

堂島「なら……ジュネスの防犯ビデオが役に立つかもしれない」

白鐘「え?」

堂島「比企谷の身柄引渡しの際、店側が証拠として」

堂島「一週間分の録画を提出している」


堂島「被害者に最後に会った奴には事情を聞くべきだろう」

堂島「そいつが分かるかもしれない」

花村「俺が聞いた話じゃ、17:30くらいに」

花村「由比ヶ浜さんはジュネスに来ています」

堂島「よし、こっちに来い……本来は一般人には見せられんが」

堂島「俺はその由比ヶ浜という被害者の顔を知らんからな」

雪ノ下(一度だけ……夏休みにチラッと見ただけだから覚えてないのね)

堂島「ただし、気がついた事があれば何でも話せ。 いいな?」


一同「はい!」


堂島「……ったく」


りせ「居た! ほら、この髪型、絶対由比ヶ浜さんだよ!」

花村「どれどれ……おう、確かに由比ヶ浜さんだな」

白鐘「カウンターで景品受け取りのサインをしているところですね」

堂島「この娘が被害者か?」

白鐘「ええ……」

堂島「ふむ……」

里中「うわ、結構大きな箱だね」

天城「景品って中身は何なの?」

花村「確か、大きめのテレビだったと思う。 それと商品券10万円」

天城「ふうん」

クマ「あ、宅配の人クマ」

里中「割と背の高い男の人じゃん」

白鐘「ただ……顔までは良くわかりませんね」


堂島「……ん?」

白鐘「堂島さん?」

堂島「…………」

堂島「こいつは……?」

白鐘「……何かに気がついたんですか?」

堂島「ちょっと待て、別角度のカメラ映像で確かめる」

     ウィーン……

堂島「…………」

堂島「!!」

里中「……あれ?」

りせ「この宅配の人……どこかで見た事がある様な……?」

堂島「……間違いない」




堂島「こいつは、生天目だ」



一同「!?」



花村「生天目って……確か山野アナの不倫相手の!?」

里中「どういう事……!?」

天城「でも、この人は動機も無いし、アリバイも硬いって話じゃなかった?」

白鐘「その通りです」

白鐘「しかし……」

堂島「ああ。 事件関係者である事は間違いない」

堂島「そいつが……新たな行方不明被害者と最後に会っていた」

堂島「十分怪しいな……」


堂島「…………」

堂島「よし」

堂島「比企谷については、俺の責任で特別に解放を認めよう」


一同「!」


堂島「一階奥の取調室に足立と居る」

堂島「足立に連絡しておくから迎えに行ってやれ」

白鐘「! 堂島さん、ありがとうござ……」

堂島「だが、ここからは警察の仕事だ」

堂島「お前たちは比企谷と一緒にまっすぐ家へ帰れ」

堂島「わかったな?」

白鐘「……わかりました」



―――――――――――


足立「はい……はい……」

足立「分かりました」

     ブッ…… ツー ツー

足立「……ふう」

比企谷「…………」

足立「比企谷くん。 釈放だってさ」

比企谷「…………」

比企谷「……え?」

足立「もうすぐここに君の友達が迎えに来る」

足立「感謝するんだね……彼らのおかげで堂島さん、折れたみたいだ」


比企谷「…………」

比企谷「そうですか」

足立「ともかく、今日のところは大人しく帰るんだ。 タクシーを捕まえてくる」

足立「事情はまた今度聞く事にするから」

比企谷「…………」

比企谷「……すみません」

―――――――――――

特捜隊一同「…………」


比企谷「…………」

比企谷「……みんな、すまん」


花村「……いいさ、このくらい」

花村「ジュネスに行こう。 由比ヶ浜さん、助けるぞ」

比企谷「ああ……言われるまでもない」

りせ「それにしても……犯人、生天目っぽいね」

白鐘「実家の家業を継いだとは聞いていましたが……」

白鐘「運送業だったとは……うかつでした」

白鐘「僕の犯行時、時間的感覚から」

白鐘「僕の家のテレビに放り込んだものと思ってましたが」

白鐘「考えてみれば、人が放り込める程の大きさのテレビが都合よく」

白鐘「被害者の家にあるわけがない」

天城「運送用のトラックにテレビを載せて、そこに放り込んでいたのね……」

里中「おまけに運送のトラックじゃ怪しまれる心配もないし」

雪ノ下「だからこそ、白昼堂々と犯行を重ねられたのね」


     ツカ ツカ ツカ…

足立「おまたせ。 タクシー来たよ」

足立「じゃ、気をつけて帰るんだ。 いいね?」

比企谷「……わかっています」

足立「うん。 さて、僕も堂島さんに続くかな」


―――――――――――


     サアアアアア……


比企谷「運転手さん、ジュネスの前までお願いします」

運転手「はい」

比企谷「…………」




     静かだ……。

     タクシーのエンジン音すら感じられないくらいに……。

     俺の乗るタクシーには雪ノ下と白鐘、そして久慈川が乗っている。



     花村もそうだが、俺を攻めるでもなく、問い詰めるでもなく……

     何とも言えない雰囲気になっていた。



     しかし



運転手「……ん?」

運転手「事故……かな?」


     そんな空気を読めない運転手が、それを破った。


白鐘「……!?」

白鐘「運転手さん、止めてください!」

運転手「!? は、はい……」

     キキィッ……

白鐘「これは……!」

白鐘「堂島さん! 大丈夫ですか!?」

比企谷「!?」


りせ「こ、これ、どういう事!?」

雪ノ下「!」

雪ノ下「このトラック……もしかしたら生天目の!?」

比企谷「……よくわからんが」

比企谷「生天目の奴、堂島さんから逃げ様として両方共事故ったってところか……」

堂島「し、白鐘……か……?」

白鐘「堂島さん、あまり喋らないで……今、救急車を呼びます!」

     ブロロロロロ……キキィッ

足立「!?」

足立「ど、堂島さん!?」

足立「大丈夫ですか!?」

白鐘「落ち着いてください、足立さん。 今、救急車を呼んだところです」

白鐘「しばらく見ててもらえますか?」


足立「あ、ああ……」

白鐘「比企谷先輩、生天目は居ましたか?」

比企谷「いや……見当たらないな」

りせ「もう逃げちゃった?」

雪ノ下「! 比企谷くん!」

比企谷「どうした、雪ノ下?」

雪ノ下「これを……トラックの荷台を見て!」

比企谷「……!!」

りせ「テレビ……それも、人が入れそうなくらい大きな画面の!」

比企谷「……それに、この荷台の足跡」

比企谷「奴は、生天目は、テレビの中へ逃げ込んだのか……!」


雪ノ下「落ち着きなさい比企谷くん」

雪ノ下「ここからは、ダメだから」

比企谷「…………」

比企谷「わかっている。 雪ノ下……」


白鐘「……こ、これは!?」


比企谷「どうした? 白鐘」

白鐘「……生天目の日記です。 運転席に落ちていました」

白鐘「これには殺害された、山野真由美、小西早紀は元より」

白鐘「天城先輩、雪ノ下先輩、久慈川さんに僕、そして由比ヶ浜さんの」

白鐘「名前と居場所が記されています」

白鐘「そして……久保の犯行である、諸岡さんの名前は見当たらない」

>>338修正↓


雪ノ下「落ち着きなさい比企谷くん」

雪ノ下「ここからは、ダメだから」

比企谷「…………」

比企谷「わかっている。 雪ノ下……」


白鐘「……こ、これは!?」


比企谷「どうした? 白鐘」

白鐘「……生天目の日記です。 運転席に落ちていました」

白鐘「これには殺害された、山野真由美、小西早紀は元より」

白鐘「天城先輩、雪ノ下先輩、久慈川さんに僕、そして由比ヶ浜さんの」

白鐘「名前と居場所が記されています」

白鐘「だけど……久保の犯行である、諸岡さんの名前は見当たらない」


足立「そりゃすごい。 生天目で決まりだね……」

白鐘「ええ……動機までは、わかりませんが」

白鐘「!」

白鐘「今日……いえ、昨日の日付に何か文章が書いてあります」


     まさかと思ったが、法則の通り映ってしまった。

     この街の住人じゃない、それもこんなに若い女の子が……

     必ず救う。 それが僕の使命なんだから。


比企谷「……っ」 ギリッ…

比企谷「……救う、だと?」

比企谷「ふざけやがってっ……」

雪ノ下「…………」


     ピーポー ピーポー

白鐘「足立さん」

白鐘「救急車も来たみたいですし……ここはお任せしてもいいでしょうか?」

足立「あ、ああ……いろいろごめんね」

足立「後は任せてくれ」

白鐘「すみません、足立さん。 では……」


―――――――――――


テレビの世界


花村「さぁーて、由比ヶ浜さん、助けに行こうぜ!」

比企谷「……その前に花村。 ちょっと聞きたい事がある」


花村「何だよ比企谷? 実に信ぴょう性の高い理由だっただろ?」

比企谷「ざけんな」

比企谷「何で俺が、無くしたエロ本探しにジュネスへ忍び込んだ事になってるんだよ!?」

花村「訳も話さず、かたくなに黙ってる男子高校生が忍び込んだ理由として」

花村「至極納得できる恥ずかしい理由だろうが♪」

比企谷「あの残念、というか、哀れみを込めた警備員の目」

比企谷「当分忘れられそうにない……」

花村「まあ深夜のジュネスにあっさり入れたんだし、抑えとけ」

雪ノ下「……そのエロ本を探す、という目的でジュネスに入れたけど」

雪ノ下「私たち女子がどう見られたのか、気になるところね」

天城「……警備員の人、何であんな目をしていたのか、わかった気がする」


白鐘「みなさん、冗談はそのくらいで」

白鐘「ここには重要参考人である生天目も入り込んでいます」

白鐘「十分な警戒が必要でしょう」

里中「そうだね!」

里中「生天目~、顔面靴跡の刑にしてやるっ!」

クマ「クマも手伝うクマ! ボコボコにしたるクマ~!!」

りせ「…………」

りせ「……!!」

りせ「見つけた! 由比ヶ浜さん!」

比企谷「よし……行くぞ!」



―――――――――――


総武高校? 校庭付近


比企谷「ここは……」

雪ノ下「間違いないわ。 総武高校ね」

里中「この前の修学旅行で行った、比企谷くん達の母校……」

天城「という事は……」

花村「ああ……間違いなく、由比ヶ浜さんの影響が出ている」

クマ「待ってて、ユイちゃん。 今、迎えに行くクマよ!」

りせ「!?」

りせ「あそこ! 校庭のど真ん中に誰かいるよ!」


     タッ タッ タッ…

白鐘「生田目太郎……」

生天目「!!」

生天目「と、とうとう……こんなところまで、追って来たのか!?」

生天目「連続殺人事件の犯人め!!」


一同「!?」


花村「はあ!? 何言ってやがる!!」

花村「それはお前だろうが!!」


生天目「僕は救っていただけだ!!」

生天目「お前たち、凶悪犯から被害者を守るために!!」


里中「こいつ……何言ってるの!?」

里中「あたしも雪子も、他のみんなも、死ぬところだったんだよ!?」

天城「あなたの救うって、もしかしたら殺す、という意味なの!?」


生天目「違う!」

生天目「僕は……守りたかったんだ……」

生天目「救えなかった、大切な人の為にも!!」

生天目「だから、僕が救済を始めたんだ!!」


花村「支離滅裂だな……」

比企谷「……全くだ」


比企谷「だが、生天目」

比企谷「お前は間違っている」


生天目「!?」


比企谷「お前の言う『救済』とやらに被害者の同意は入っていない」

比企谷「被害者は有無を言う事も出来ず、ここに入れられた」

比企谷「そういうのを世間一般では『拉致監禁』という犯罪でしかないんだよ」


生天目「う、うるさい!!」

生天目「誰も……僕の言う事を信じない……」

生天目「目の前に居る被害者を救済するには……これしか無かったんだ!!」


白鐘「……平行線、ですね」

白鐘「ともかく、生田目太郎。 大人しく捕まって、由比ヶ浜さんを返してください」

白鐘「これ以上罪を重ねるのは無意味です」



生天目「い、いやだ……」

生天目「僕は、これからも誰かを救い続ける、救済者なんだ……!」


クマ「……クマ?」

りせ「みんな気をつけて! 様子がおかしいよ!」


生天目「あの娘は、渡さない……!」

生天目「僕は……僕は……ボク、ハ……!」


     ズウウウウウウウンッ……

     ズドンッ!!


生天目「ぐえあっ!?」


一同「」


比企谷「【シャドウ】が、生天目に襲いかかってる!?」

りせ「……!」

りせ「…………」

りせ「ち、違う……」

花村「違うって、何が違うんだよ?」


     ズドンッ! ズドドンッ!


りせ「生天目自身が、【シャドウ】と『同化』してる!」

里中「えええええっ!?」

天城「どういう事なの!?」

りせ「あたしにもわかんないよ!!」



影・太郎『救う……みんな救うんだ……!』

影・太郎『邪魔を……するなああぁぁぁっ!!』


白鐘「くっ……!」

白鐘「ともかく、応戦するしかありません!」

白鐘「スクナヒコナ!」

里中「だね! トモエ!」

比企谷「イザナギ!」

雪ノ下「イザナミ!」

花村「ジライヤ!」

クマ「キントキドウジ!」

りせ「全力で援護するよ!」



―――――――――――


由比ヶ浜「…………」

由比ヶ浜「………う……」

由比ヶ浜「…………」

由比ヶ浜「……?」

由比ヶ浜「ここは?」

由比ヶ浜「…………」

由比ヶ浜「部室……あれ?」

由比ヶ浜(私、確かジュネスで景品を受け取って……)

由比ヶ浜(…………)

由比ヶ浜(そこからの記憶が……ない)



     ようやく、目が覚めたみたいね


由比ヶ浜「!?」

由比ヶ浜「誰!?」


影・結衣『やっはろー。 グッモーニン!』

影・結衣『ふふふ……』


由比ヶ浜「……な、何なの?」

由比ヶ浜「あなたは、いったい何なの!?」


影・結衣『まあいいじゃない。 それよりもさ』

影・結衣『ヒッキーの話しない?』


由比ヶ浜「え……」


影・結衣『あなたが好きで好きで、大好きすぎて』

影・結衣『殺してしまいたいくらい恋焦がれてるヒッキーの事だよ!』


由比ヶ浜「なっ……そ、そんな事、私、思ってない!」


影・結衣『ふうん。 ま、あくまで『好きだから』の延長だもんね』

影・結衣『ゆきのんと違って』


由比ヶ浜「……!!」


     ガララッ!

比企谷「大丈夫か!? 由比ヶ浜!」

雪ノ下「由比ヶ浜さん!」


由比ヶ浜「!!!」

由比ヶ浜「ヒッキー……ゆきのん……」


花村「とりあえず、元気そうだな」

里中「けど……」

天城「【シャドウ】が……!」

白鐘「……ここからは、比企谷先輩に任せましょう」

りせ「きっと、大丈夫……だよね?」

クマ「クマ! センセイはやってくれるクマ!」



影・結衣『へえ……ちょうどいい所にゆきのん来てくれたね』

影・結衣『いっその事、ここでゆきのん殺しちゃいなよ!』



雪ノ下「!?」

比企谷「!?」


由比ヶ浜「な、何、言ってるのよ!?」


影・結衣『前々から気に入らなかったんでしょ?』

影・結衣『だってゆきのん、ヒッキーを見送りにも来なかったくせに』

影・結衣『ちゃっかり八十稲羽に転校しててさ……』


由比ヶ浜「や、止めて……止めてよ!」



影・結衣『なにそれ、意味わかんない』

影・結衣『興味ないフリして、こっそりヒッキーを盗ろうとするヤな女なんだよ?』

影・結衣『さっさと殺してしまえば、楽勝だって思ってたでしょ?』


由比ヶ浜「違う! そんな事、考えてないもん!」


影・結衣『ふふふ……そんな事言って』

影・結衣『八十稲羽に来るたび、ゆきのんとヒッキー、どんどん仲良くなっていくの』

影・結衣『歯ぎしりして悔しがっていたじゃない』


由比ヶ浜「違う違う違う! 違う!」


影・結衣『まだそんな事、言うんだ? それにヒッキーも酷いよね……』

影・結衣『修学旅行でこっちに来た時ですら邪魔者扱いするし』

影・結衣『言わなくても察して欲しいよね』


由比ヶ浜「止めて……もう、止めてよ!」

由比ヶ浜「あなた、いったい誰なの!? 何で、そんな事言うの!?」



影・結衣『私? ふふふ……私はあなただよ、由比ヶ浜結衣』


由比ヶ浜「!?」

由比ヶ浜「な、何を言って――」

雪ノ下「由比ヶ浜さん、ごめんなさい」

由比ヶ浜「むぐっ!?」

雪ノ下「今、説明するから」

比企谷「……由比ヶ浜、落ち着いて聞いてくれ」

比企谷「あれは……お前なんだ」

由比ヶ浜「!?」

     ――なんで――

比企谷「混乱するだろうが、ここはそういう世界なんだ」


比企谷「自分の中の最も嫌な部分、暗い気持ち……」

比企谷「そういった、人の負の一面が具現化してしまう」

由比ヶ浜「…………」

     ――なんで、そんな事言うの?――

雪ノ下「……私にもああいうのがあった」

雪ノ下「そこに居るみんなも色々と抱えていて、それぞれでそれを受け入れてきた」

雪ノ下「誰でも同じなの。 みんなそういう自分が居るの」

雪ノ下「だから……恥ずかしいけど、後ろめたい事じゃない」

由比ヶ浜「…………」

     ――それは――

     ――ゆきのんだから、じゃないの?――

雪ノ下「由比ヶ浜さん。 詳しくは後で話すわ」


比企谷「自分の心と向き合ってくれ、由比ヶ浜」

雪ノ下「……いい? 由比ヶ浜さん」

雪ノ下「口から手を離すわよ?」

     スッ…

由比ヶ浜「……はっ」

由比ヶ浜「…………」

比企谷「…………」

雪ノ下「…………」


影・結衣『茶番はおしまい?』


由比ヶ浜「うん……最初からわかってるよ」





由比ヶ浜「あなたは……私じゃないって!!」




比企谷「!」

雪ノ下「!」

一同「!」


     ズウウウウウウウウウンッ……!


影・結衣『ふふふふふふ……』

影・結衣『あはははははははははははははははははははははははははははっ!!』


     ドンッ!!



由比ヶ浜「」 ドサッ…


影・結衣?『我は影……真なる我……』

影・結衣?『……ふふふ……殺してやる』

影・結衣?『ゆきのんんんんんんっ!!』


     グワッ!!


雪ノ下「!!」


     ガシッ!!


比企谷「大丈夫か? 雪ノ下」

雪ノ下「……ええ」



影・結衣?『……なんで邪魔するの……ヒッキー』

影・結衣?『私はこんなにもヒッキーの事、大事に想ってきたのに……』

影・結衣?『どうして……私を見てくれないのぉぉぉぉっ!!』


     グワッ!! ガギィッ!!


比企谷「…………」

雪ノ下「…………」


     ……正直。 キツイと思った。


花村「比企谷! 今は【シャドウ】の暴走を止める事を考えろ!」

白鐘「そうです! あれは由比ヶ浜さん全ての意見じゃありません!」




     ……んな事は頭でわかってる。



天城「由比ヶ浜さん、今、助けてあげるから!」

里中「だから……ちょっとだけ我慢して!」

クマ「ユイちゃん、頑張るクマ!」

りせ「サポートは任せて!」



     でもよ……由比ヶ浜の【シャドウ】は……

     泣きながら雪ノ下だけを狙ってくるんだぜ?



比企谷(由比ヶ浜……)




     強いか、弱いか、で言えば

     由比ヶ浜の【シャドウ】は弱い方だろう。

     先に戦ったハイブリット【シャドウ】生天目の方が圧倒的に強い。



     しかし……精神的なダメージは、こちらの方が大きかった。

     由比ヶ浜の一面にすぎない、としても……

     雪ノ下を殺したい程憎んでいるのは間違いない。









     そんな事が……分かってしまったのだから








―――――――――――


影・結衣『…………』


花村「……終わったな」

花村(けど……)

白鐘(……比企谷先輩)

天城(由比ヶ浜さん……ここまで雪ノ下さんの事を……)

里中(これだけが由比ヶ浜さんの気持ちじゃないって、わかってても……)

りせ(辛い……)

クマ(ユイちゃん……)


由比ヶ浜「……う、ううん」


比企谷「気がついたか……由比ヶ浜」

雪ノ下「由比ヶ浜さん……」


由比ヶ浜「ヒッキー……?」

由比ヶ浜「!!」


影・結衣『…………』


由比ヶ浜「ち、違うの! あれは……!」

比企谷「落ち着け、由比ヶ浜」

比企谷「さっきも言ったが、あれはお前の一面にすぎない」

比企谷「由比ヶ浜の全てがああじゃないとわかっている」

比企谷「だから……」

由比ヶ浜「全然わかんないよ! ヒッキー!」

比企谷「!?」

雪ノ下「!?」


由比ヶ浜「わ、私が……ゆきのんを殺したい、なんて……」

由比ヶ浜「思うわけないし!」

比企谷「ゆ、由比ヶ浜……」

由比ヶ浜「あ、あんなのが私なわけ、ないって……!」

由比ヶ浜「ね、ヒッキー? そうでしょ!?」

由比ヶ浜「私は――」

由比ヶ浜「あんな事、考える人間じゃないっ!」


影・結衣『…………』


     シュウウウウウ……


一同「!!!!!!」


花村「ひ、比企谷!! やべぇ!!」

里中「由比ヶ浜さんの【シャドウ】が……!」

天城「【シャドウ】が、崩れて消え始めてる!?」

白鐘「ど、どうしたんですか? みなさん?」

白鐘「何かまずいんですか?」

りせ「前の……久保の時もこうだったの!」

りせ「自分と向き合わなかった久保の【シャドウ】は、少しずつ崩れながら消えていって……」

りせ「その時こそ何でもない感じだったけど、数日後……」

白鐘「!!」

白鐘「拘置所内での謎の変死! まさかあれは!?」


クマ「ユユユユユ、ユイちゃん! ダメクマよ!」

クマ「自分と向き合うクマ!」

花村「そ、そうだぜ! 由比ヶ浜さん!」

花村「みんな同じなんだ! 俺の【シャドウ】もそりゃ酷いもんで……」

由比ヶ浜「っ! み、みんなまで、私があんな事を考える人だと思ってるの!?」

由比ヶ浜「酷いよ! あんなの、私じゃないのに!!」


     シュウウウウウ……


影・結衣『………


雪ノ下(……どうしたら)

雪ノ下(どうしたら、いいの!?)

雪ノ下(たぶん……私が何か言っても逆効果)

雪ノ下(由比ヶ浜さんっ……!!)


比企谷「…………」



     ……これしかないな。 たぶん



比企谷「…………」



     なんで……俺は、こんな事思いつけるんだろうな?



比企谷「…………」



     考えてもしかたねぇか……



比企谷「…………」



     ぼっちには慣れているし……な



比企谷「…………」 クスッ…


里中「ゆ、由比ヶ浜さん、落ち着いて!」

由比ヶ浜「うるさいよっ! みんな、みんな……酷いっ!」


比企谷「そうか……残念だな、由比ヶ浜」


由比ヶ浜「……え?」

由比ヶ浜「ざ、残念って……どう言う意味? ヒッキー?」

比企谷「そのままの意味だ」


雪ノ下「……!」

雪ノ下(比企谷くん、まさかあなた!?)


由比ヶ浜「そのままって……訳わかんないよ!」

比企谷「だろうな」

比企谷「由比ヶ浜は俺を……俺たちを信用していないから、当然だな」


由比ヶ浜「!?」

一同「」


花村「ひ、比企谷、何を――」

白鐘(花村先輩……気持ちはわかりますが、もう時間がありません)

白鐘(比企谷先輩を信頼しましょう)

花村(…………)

花村(……わかった)



影・結衣『…


     シュウウウウウ……


由比ヶ浜「し、信用してないって……」

比企谷「何度も言うが、あれはお前なんだ」

比企谷「俺たちは経験でそれを知っている。 由比ヶ浜がどれだけ否定しようともな」

由比ヶ浜「……っ」

比企谷「だが、それでもお前は違うと言い張る。 何故か?」

比企谷「【シャドウ】を認めてしまったら、俺たちがお前を嫌悪すると思っているからだ」

由比ヶ浜「ち、ちがっ――」

比企谷「残念だな」


比企谷「花村たちはともかく、俺と雪ノ下は」

比企谷「総武高校で過ごした時間がある。 多少は信頼関係を築いていると思ってた」

比企谷「だが……そうじゃなかったんだな? 由比ヶ浜?」

由比ヶ浜「…………」

比企谷「はあ……やっぱり、か……」

比企谷「由比ヶ浜は所詮、俺をその程度にしか見てな……」


由比ヶ浜「……違う」


比企谷「……何が違うんだよ?」

由比ヶ浜「私は……ヒッキーの事、信頼してないんじゃない」

由比ヶ浜「ただ――」

比企谷「ただ?」


由比ヶ浜「ヒッキーに……」

比企谷「…………」

由比ヶ浜「ヒッキーにこんな自分を……見せたくなかった……!」

由比ヶ浜「私……ぐすっ……ヒッキーには……」

由比ヶ浜「綺麗な……うぐっ……自分を……見ていて欲しかった……」

由比ヶ浜「それだけ……ひっく……それだけ……だったの……」


一同「…………」


比企谷「…………」 チラッ



影・結


     シュウウウウウ……


比企谷(くそっ……! まだ止まらねぇ!)


比企谷「――由比ヶ浜」

由比ヶ浜「ぐすっ……えぐっ……ひっく……?」

比企谷「汚い自分と向き合った奴ってどう思う?」

比企谷「端的に言うと、花村たちって、汚い奴に見えるか?」

由比ヶ浜「ひぎっ……ぐっ……見え……ない」

比企谷「なら……由比ヶ浜も大丈夫だ」

比企谷「認めてやれ……綺麗じゃない自分を」

比企谷「そして、俺を信頼していると証明してみてくれ」

由比ヶ浜「…………」

由比ヶ浜「…………」



影・糸


     シュウウウウウ……


比企谷(……早く、早くしろ! 由比ヶ浜!)

雪ノ下(由比ヶ浜さん……!)

花村(ああもう……! くそっ!)

里中(認めちゃえば、なんて事ないんだからっ!)

天城(お願い、由比ヶ浜さん!)

白鐘(間に合って……どうか!)

りせ(急いで……!)

クマ(およよよよよよよよよっ!!)


由比ヶ浜「……そうだよ」

比企谷「!!」

由比ヶ浜「私……ゆきのんに……居なくなって欲しかった!!」


影・'  ピタッ


一同「!!」

一同(消えるのが、止まった!!)


由比ヶ浜「全部……全部! あいつが言ってた通りっ!」

由比ヶ浜「なんで!? どうして、いつもゆきのんばっかり、ヒッキーのそばにいられるの!?」

由比ヶ浜「おかしいよ、こんなのっ……」

雪ノ下「……っ」


由比ヶ浜「私……私の方、が……」

由比ヶ浜「絶対……頑張って、る……の……に……」

由比ヶ浜「」 ガクッ…


比企谷「……!?」

比企谷「由比ヶ浜!?」



     ――ああ、そっか――

     ――私、何になりたいのか――

     ――やっとわかった――



雪ノ下「由比ヶ浜さん! 返事して!」




     ――そうだね――

     ――確かにあなたは私で――

     ――私はあなただったんだ――



里中「!」

里中「見て! 由比ヶ浜さんの【シャドウ】!!」



     ヒィイイ……イイイ……インッ……



花村「ペ、ペルソナ……?」

天城「なんだか……弱々しい感じ」

白鐘「間に合った……のか?」


りせ「ヒミコ!」

りせ「…………」

りせ「!?」

りせ「な、なんで!? どうして!?」

比企谷「どうした、久慈川!?」

りせ「由比ヶ浜さん、信じられないくらい衰弱してる!!」

りせ「血圧、脈拍……心臓の鼓動まで弱くなってるよ!!」


一同「!?」


比企谷「ど、どういう事だ!? おい!?」


白鐘「詮索は後回しです!」

白鐘「急いでこの世界を出て、病院に向かいましょう!」

花村「そ、そうだな! それがいい! つか、それしかねぇ!」

里中「ついでに生天目も連れて行かないと……!」

天城「そういえば、あの人も弱ってたっけ……」

クマ「とにかく急ぐクマー!!」


―――――――――――




     テレビの世界を出た後

     俺たちはすぐ救急車を呼び、由比ヶ浜と生天目を病院へかつぎ込んだ。



     ここからは……俺たちにどうする事も出来無い。

     ICU(集中治療室)へ運ばれる由比ヶ浜を見送りながら

     俺は……由比ヶ浜の回復を願った。




―――――――――――


足立宅


     ルルルルル……ルルルルル……ガチャ

比企谷「もしもし……戸塚か?」

比企谷「ああ、見つかった……」

比企谷「…………」

比企谷「…………」

比企谷「……それがな、手放しじゃ喜べないんだ」

比企谷「由比ヶ浜……相当衰弱してて……」

比企谷「今、八十稲羽総合病院に居る」

比企谷「…………」


比企谷「……お前のせいじゃない」

比企谷「…………」

比企谷「……そうか」

比企谷「…………」

比企谷「なら……ひとつ、頼まれてくれないか?」

比企谷「由比ヶ浜の家族に……この事を伝えて欲しい」

比企谷「この電話を切った後、病院の連絡先をメールしておく」

比企谷「……嫌な事させて……すまん」

比企谷「…………」

比企谷「ああ……言われなくても休むさ」

比企谷「もう……限界だからな……」


比企谷「じゃ……」

     ブッ…… ツー ツー

比企谷「…………」 ピッピッピッ…

     ピピロピンッ♪

比企谷「……これでよし」

比企谷「…………」

     ドサッ…

比企谷「…………」









     疲れた……






今日はここまでです。

乙ー

乙!

ゆいルートでおわってほしい!

そろそろ完結近いですね!
がんばってください
おつ

>>395
ルート希望の書き込みはマナー違反やで

乙!

今更だし番長の変わりに八幡だからそうなるのはわかるけど
性格から考えると正位置的にも逆位置的にも八幡はワイルドじゃなく隠者だよな

     

―――――――――――


テレビ『次のニュースです』

テレビ『八十稲羽市で起こった連続殺人事件ですが』

テレビ『警察はようやく重要参考人の身柄を確保した、と発表しました』

テレビ『先ごろ捕らえられ、拘置所内で謎の変死体となった未成年の容疑者は』

テレビ『地元高校教師、諸岡金四郎さんの殺害のみである可能性が高いとし』

テレビ『誤認逮捕ではないが、真相を取り違えるところであった、と』

テレビ『やや、危うさをうかがわせる内容のコメントを行っております』

テレビ『また』

テレビ『身柄を確保した重要参考人ですが』

テレビ『衰弱が激しく意識も回復していない為、現在、病院に入院している、との事です』

テレビ『続きまして……』



―――――――――――


放課後

学校の屋上


里中「はあ……」

天城「…………」

天城「あれから……もう二週間くらいになるね」

里中「……うん」

天城「…………」

里中「…………」


里中「由比ヶ浜さん……まだ意識が無いんだってね」

天城「……早く、元気になって欲しい」

里中「それはあたしもそう思うじゃん」

里中「けど……」

天城「うん?」

里中「…………」

里中「今回ばかりは、比企谷くんに愛想が尽きた」

天城「千枝……」

里中「そりゃあね? 時間もなかったし、あたしには説得する自信も考えも浮かばなかった」

里中「でも、あんな……由比ヶ浜さんの心を追い詰めるみたいなやり方」

里中「納得できない」

天城「…………」


里中「後出しジャンケンだけど……」

里中「もっと……由比ヶ浜さんの気持ちを考えて」

里中「そんなお前でもいい!とか、二人で一緒に受け入れよう!とか」

里中「やり様はあったと思うじゃん?」

天城「…………」

天城「……かもしれない」

天城「でも、比企谷くんも辛くない訳ないよ、きっと」

里中「…………」

里中「だとしても」

里中「あたしはもう、比企谷くんとは当分顔を合わせたくない」

天城「千枝……」


里中「ともかく」

里中「真犯人の生天目は捕まったんだし……」

里中「もう事件の事、早く忘れてしまいたいじゃん」

天城「…………」

天城「……うん」

天城「それは……私もわかる気がする」

里中「はぁ~あ……」

里中「何でうちらの学校、席替えないんだろう?」

里中「雪ノ下さんと代わってもらおうかな……」

天城「…………」


ジュネス バックヤード


花村「おーい、クマ」

花村「一息入れようぜ」

クマ「わかったクマ!」

―――――――――――

クマ「今日もお客さんいっぱいクマね~」

花村「売り上げ的には横ばいらしいけどな」

クマ「…………」

花村「…………」

クマ「ユイちゃん……元気になるクマよね?」

花村「たりめーだ」


クマ「…………」

クマ「ヨースケ、センセイはどうしてるクマ?」

花村「ふつーに学校に来て、ふつーに授業受けて」

花村「ふつーに帰ってるぜ」

クマ「…………」

クマ「本当クマ?」

花村「嘘ついてどーすんだよ」

クマ「…………」

クマ「ヨースケ、クマは頭悪いから……よくわからんクマけど」

クマ「クマ……どうしてか、センセイと顔を合わせづらいクマ」

花村「…………」

クマ「どうしたらいいクマ?」


花村「…………」

花村「……俺にもわかんねぇ」

花村「けど今は……しょうがねぇと思う」

花村「由比ヶ浜さん、元気になったら……きっといい方向に変わるさ」

花村「たぶんだけどな」

クマ「…………」

クマ「そうクマね」

クマ「ユイちゃん元気になったら、センセイもクマ達もきっと変われるクマ!」

花村「ああ」

花村「…………」


鮫川 河川敷公園

ベンチ


白鐘「ふう……」

??「お疲れ様、白鐘くん」

白鐘「え?」

白鐘「……久慈川さん」

りせ「隣、いい?」

白鐘「どうぞ」

     ストンッ

りせ「まだ事件の事、調べてるの?」

白鐘「ええ」


白鐘「詳しくは、生天目が目を覚ましてからですが」

白鐘「どうにも腑に落ない事がいくつかあって……」

りせ「そう……相変わらず熱心ね」

白鐘「……ただのわがままです」

白鐘「どう言えばいいのか……ほら、ジグソーパズルがあるとしますね?」

りせ「うん」

白鐘「徐々に出来上がっていくけど、あと数ピース足りない」

白鐘「……いえ、そうじゃなくて」

白鐘「似通ったピースがいくつかあって、それがどれもピッタリとハマらない」

白鐘「何だか……そんな気がするんです」


りせ「ふうん……」

白鐘「…………」

白鐘「久慈川さんは……比企谷先輩と何か話しましたか?」

りせ「……ううん」

白鐘「そうですか……」

りせ「由比ヶ浜さんの気持ちを考えると……なんか、後味悪くて」

白鐘「…………」

りせ「由比ヶ浜さん、一番好きな人に一番見られたくない自分を見られて」

りせ「一番言われたくない事……聞かされたんじゃないのかな?」

白鐘「…………」

りせ「白鐘くんは、あの時の比企谷先輩 どう思ってるの」

白鐘「…………」

白鐘「……難しい質問ですね」


白鐘「僕も他に方法はあったんじゃないか?と、自問自答しますし」

白鐘「自分が彼女の立場になってあれを言われたら……と考えると、恐ろしくなります」

りせ「…………」

白鐘「でも……」

りせ「でも?」

白鐘「あんなに時間が差し迫った状況で……」

白鐘「即座に、躊躇なく、あの行動を取れたのは彼だけです」

白鐘「そこは尊敬してますよ」

りせ「…………」

りせ「あたしは逆かな」

りせ「躊躇なく、あんな言葉を言えるなんて……」

白鐘「…………」


八十稲羽総合病院

待合室


比企谷「…………」

比企谷(今日も変化なし……か)

比企谷(…………)



     あれから……連絡を受けた由比ヶ浜の両親は

     仕事の関係もあって、母親が単身八十稲羽に来て暮らしつつ

     由比ヶ浜の世話をしている。





     由比ヶ浜の病状はずっと思わしくなく……

     動かせる状態では無いからだ。



     警察から事情を聞いて、誘拐された結果こうなったと知ると

     父親は犯人に会わせろ、と、すごい剣幕だったとか。

     ……当然だよな。





     俺や花村達は、母親と面識ができ

     いつでも、毎日でも、見舞いに来てやってくれと頼まれている。

     ……父親の方は、俺たち男連中を快くは思わなかったみたいだが。



     それでも一応許可はしてくれた。

     頻繁に訪れるのは、さすがに迷惑なので3~4日に一度くらいにしている。

     後は……



比企谷「…………」

比企谷(早く……目を覚ましてくれ由比ヶ浜)

比企谷(あれが最後なんて、無しだからな……)

比企谷(…………)

比企谷(じゃ、またな、由比ヶ浜)


―――――――――――


翌日の放課後

教室


比企谷「…………」

     ガタッ… スタ スタ スタ…

天城「…………」

里中「……ふう」

花村「…………」

雪ノ下「…………」

里中「じゃ、雪子。 帰ろっか?」

天城「うん、千枝」

     ガタタッ…

雪ノ下「――ちょっと待ってもらえないかしら?」


里中「え?」

天城「雪ノ下さん? どうしたの?」

雪ノ下「良かったら、花村くんも……できればクマくんも呼んで欲しい」

花村「……はあ?」

花村「まあ……俺は構わないけど」

花村「比企谷はいいのか?」

雪ノ下「ええ」

雪ノ下「後、久慈川さんと白鐘くんは、もう誘ってあるわ」

里中「へえ……なんか意外」

天城「千枝、失礼だよ、それ」

花村「それで、雪ノ下さん。 いったい何をするつもりだ?」


雪ノ下「…………」

雪ノ下「大した事じゃないわ」

雪ノ下「ただ……それを話し合いたいの」


一同「…………」


―――――――――――


ジュネス フードコート


里中「話し合いねぇ……」

天城「千枝……さっきから態度悪いよ?」

里中「わざとよ」

里中「どうせ比企谷くんの事なんでしょ? 雪ノ下さん?」


雪ノ下「ええ。 その通りよ」

里中「なら、あたしはもう話す事無いじゃん」

里中「はっきり言って、もう比企谷くんと関わり合いたくない」

花村「……おいおい。 えらく嫌われたもんだな、比企谷も」

里中「だって許せないし! あんなやり方!」

里中「由比ヶ浜さん……可哀想すぎる!」

りせ「あたしも同じ意見……いくら助ける為と言われても」

りせ「由比ヶ浜さんを試して、追い詰めるみたいな あのやり方……ないよ」

白鐘「しかし……時間的余裕はありませんでした」

白鐘「確かに褒められた説得の仕方ではありませんが」

白鐘「彼女の命を救う行動に出れたのは、比企谷先輩だけです」


里中「なによ、白鐘くん。 えらく持ち上げるね? 比企谷くんの事」

里中「やっぱり惚れてるから嫌なトコは見えないんだ?」

白鐘「……客観的な事実を言ってるだけです」

里中「客観的ぃ? どう見てもベタ惚れ補正入ってるじゃん」

白鐘「……あなたの言いたい事はわかりますよ?」

白鐘「由比ヶ浜さんの様に心の内を見透かされたくないのでしょう?」

里中「な、何ですって!?」

クマ「お、およよ、止めるクマよ~」

クマ「二人とも落ち着くクマ……」

里中「…………」

白鐘「…………」


花村「はあ……どうすりゃいいんだよ、こんなの」

天城「…………」

天城「雪ノ下さんは……どう思ってるのかな? 今回の比企谷くんの事」


一同「!」


雪ノ下「…………」

雪ノ下「私は……少しおかしな言い方になるけど」

雪ノ下「比企谷くんらしくも比企谷くんらしくなかった」

雪ノ下「と、思ってる」

花村「……はあ?」

里中「なにそれ? 全然意味わからないじゃん?」


雪ノ下「……例えば」

雪ノ下「ジュネスに一人、忍び込もうとした事」

雪ノ下「あれは……比企谷くんらしくない」

花村「ああ、それは俺も思ったな」

クマ「センセイはユイちゃんを凄く心配しただけクマよ」

クマ「おかしくも何ともないクマ」

りせ「凄く……心配」

白鐘「…………」

天城「もしかして……比企谷くん、由比ヶ浜さんの事」

里中「まあ、あれだけアタックされれば分かんなくないじゃん?」


雪ノ下「でも」

雪ノ下「一転して、由比ヶ浜さんの命を救う為とはいえ」

雪ノ下「冷静かつ的確に説得していた」

里中「そんなの好きな人の為なら当然でしょ?」

里中「どんな形でも生き残ってて欲しいと思うのが普通……」

里中「……あれ?」

雪ノ下「そう」

雪ノ下「比企谷くんが由比ヶ浜さんの事を想っている」

雪ノ下「そういう前提があれば、確かにその通り」

雪ノ下「でも……それでいてあんな事、冷静に言えるのかしら?」

花村「……比企谷らしいっちゃらしいが」

花村「由比ヶ浜さんを『好き』だったなら……もう少しリアクションありそうだよな」

りせ「それ以前に『由比ヶ浜の事が好きだ』とか言えば済む話だもんね」


里中「…………」

雪ノ下「……みんなは」

雪ノ下「ああ、花村くんとクマくんは知らないだろうけど」

雪ノ下「露天風呂で由比ヶ浜さんが言ってた事、覚えてる?」

りせ「え……?」

天城「確か……」


由比ヶ浜「時々ね」

由比ヶ浜「問題の解決をする際、自分を悪者にしちゃうんだ、ヒッキー」


一同「!!」

白鐘「…………」

白鐘「……ま、まさか!?」


里中「まさかって、何が?」

白鐘「…………」

白鐘「……言葉にするのは良くありませんが」

白鐘「仮に……このまま由比ヶ浜さんが……その……したとします」

白鐘「そうなったら……僕たちの中で非難は誰に集中すると思いますか?」

里中「……!!」

天城「そんな……!?」

りせ「比企谷先輩は、そこまで考えていたの!?」

花村「…………」

花村(……気に入らねぇな、比企谷)

花村(そんなのはよ……)


白鐘「実際、医療現場ではままあります」

白鐘「医師は全力を尽くしても、亡くなった患者の遺族にはそれがわかりません」

白鐘「それゆえに……」

里中「だ、だけど……それは勝手な思い込みじゃん?」

里中「そうだっていう証拠は……」

天城「千枝」

里中「な、何よ、雪子……」

天城「あの時……露天風呂で由比ヶ浜さん、もう一つ言ってたよ?」

里中「もう一つ?」



由比ヶ浜「見た目で何でもないってフリしてるけど」

由比ヶ浜「そんな訳ない」

由比ヶ浜「私は……きっと誰よりも心の痛みを知っているから」

由比ヶ浜「ああいう態度を取るんだと思う」


里中「!!」

天城「……すごいよね、由比ヶ浜さん」

天城「比企谷くんの事、本当に好きなのが良くわかる」

天城「ずうっと、彼の事見てて、理解しようと頑張ってたんだって」

里中「……っ」

白鐘「…………」

雪ノ下「…………」

クマ「センセイ……」

里中「…………」


里中「……あたし、どうしたらいいの?」

里中「結構シカトとかしちゃってるんですけど……」

天城「千枝。 その事については謝ろう? 無視してゴメンって」

天城「私も一緒に行くから」

りせ「あたしは普通に会えばいいかな?」

りせ「……それとも謝ったほうがいい?」

白鐘「久慈川さん、比企谷先輩は受け入れてくれる人です」

白鐘「大丈夫ですよ」

白鐘「良かったら、僕が付き添いますが?」

りせ「うん! お願い!」

     アハハ……


雪ノ下「…………」

雪ノ下(これで、みんなのわだかまりは溶けたかしら……?)

雪ノ下(比企谷くん……本当に馬鹿な人ね)

雪ノ下(…………)

雪ノ下(そして由比ヶ浜さん……)

雪ノ下(あなたは……すごい人だわ)


花村「じゃ……今度の休みにでも比企谷込みで」

花村「みんなして由比ヶ浜さんのお見舞いなんてどうだ?」

里中「おお! 花村にしちゃいいアイデアじゃん!」

天城「私は大賛成だよ!」

りせ「いいね! あたしも乗った!」

白鐘「僕も賛成です。 ぜひそうしましょう!」


ジュネス


比企谷「…………」

比企谷「……よし」

比企谷「今晩は水炊きで行こう」

比企谷「鍋焼きうどんも捨てがたいが……」

比企谷「寒くなってきたし、ちょうどいいだろ」

比企谷「…………」

比企谷(……独り言)

比企谷(多くなった気がする……)



―――――――――――


翌日の昼休み

教室


里中「比企谷くん、ゴメン!」

比企谷「……は?」

天城「この通り謝ります……ごめんなさい」

比企谷「……ちょっと待ってくれ。 何の事だ?」

里中「いやぁ~……ホラ? シカトしちゃってゴメン……みたいな?」

比企谷「…………」

比企谷「別に気にしてないが?」

里中「うん。 比企谷くんならそう言うと思ったじゃん」

天城「そうだね、千枝」


比企谷「いや、だから……なんn」

里中「もういいんなら、問題ないっしょ?」

天城「うんうん」

比企谷「…………」

里中「じゃ、そういう事で」

里中「明日の休日、みんなで由比ヶ浜さんをお見舞いに行こう!」

比企谷「……へ?」

里中「うん! 決まり!」

天城「時間は後で連絡するから」

比企谷「お? おう……」

里中「んじゃ、雪子。 購買にお昼買いに行こっか!」

天城「わかったよ、千枝」

     アハハ……


比企谷「…………」 唖然…

比企谷「…………」

比企谷「……おい、雪ノ下」

雪ノ下「何かしら?」

比企谷「……何かしただろ?」

雪ノ下「証拠でもあるのかしら?」

比企谷「今の二人、明らかに妙なテンションだったよな?」

雪ノ下「だからどうしてそれが私に関係していると?」

比企谷「ぐっ……証拠は……」


花村(……なんか久しぶりだな。 こういうの) クスッ



―――――――――――


数日後の休日

八十稲羽総合病院


     バタ バタ…

比企谷「……?」

比企谷「なんか……由比ヶ浜の病室、忙しそうだな?」

看護師「あら? あなたたちは……」

花村「あ、どうも」

里中「あたしら、由比ヶ浜さんのお見舞いに来たんですけど……」

看護師「そう! ちょうど良かったわ」


白鐘「と言うと?」

看護師「ついさっきね、患者さん……目を覚ましたの!」


一同「!!」


看護師「親御さんに連絡を入れたんだけど……すぐには来られないみたい」

看護師「でも、あなた達の事は聞いてあるわ」

看護師「お見舞いに来たら、病室に入れてあげてくださいって!」

天城「由比ヶ浜さん……良かった……本当に良かった!」

クマ「ウッホホーイ! 良かったクマー!」

看護師「こらこら。 騒いじゃダメだからね?」

クマ「ク、クマ……」


看護師「彼女、目を覚ましたばかりだし」

看護師「弱っている状態だから短い時間でなら許可します」

看護師「嬉しい気持ちはわかるけど、騒がない様にね?」


一同「わかりました」


看護師「よろしい」

看護師「じゃ、彼女に会ってあげて?」


雪ノ下「…………」


比企谷「由比ヶ浜……」

由比ヶ浜「……ヒッキー」

比企谷「心配したぞ……」

比企谷「今は無理せずゆっくり休んで体を治すんだ」

比企谷「わかったな?」

由比ヶ浜「……うん……わかってるよ」

比企谷「ほら、みんなもそこに居るぞ」

クマ「ユイちゃん、クマクマよ~」

里中「由比ヶ浜さん、早く元気になろうね」

天城「元気になったら、また温泉に入りましょ」

花村「おう! その時はぜひ俺も一緒に……」

白鐘「何を言ってるんですか……花村先輩」

りせ「こんな時まで下品な冗談言わないでくださいよ……」

花村「ハハハ……」

由比ヶ浜「…………」 クスッ


由比ヶ浜「…………」

由比ヶ浜「……ゆきのんは……?」

比企谷「!」

花村「え?」

里中「そ、そういや……居ないね?」

天城「探して来ようか?」

由比ヶ浜「…………」

由比ヶ浜「……ううん……また……今度でいい」

りせ「そ、そっか……」

白鐘(雪ノ下先輩……そうですよね)


由比ヶ浜「…………」

由比ヶ浜「ねえ……みんな……」

クマ「はいはい。 なにクマ?」

由比ヶ浜「……ヒッキーと……二人だけで……話したい」


一同「!」

比企谷「!」


看護師「ゆ、由比ヶ浜さん。 さすがにそれは……」

由比ヶ浜「……お願い……します」

看護師「…………」

看護師「……しょうがないわね」 フウッ…

看護師「ええと……ヒッキー?とか呼ばれてた男の子」

看護師「何か異常があったら、そこのブザーを押してね?」

比企谷「……わかりました」



―――――――――――


比企谷「…………」

由比ヶ浜「…………」

由比ヶ浜「……ヒッキー」

比企谷「なんだ?」

由比ヶ浜「私……ヒッキーの事……好きだよ……」

比企谷「…………」


     ああ……


由比ヶ浜「……驚いた?」

比企谷「……まあな」


由比ヶ浜「そっか……」

由比ヶ浜「えへへ……やっと……言えた……」

由比ヶ浜「気持ち……伝えられた……嬉しい……」


     とうとう……言われた……


比企谷「…………」

由比ヶ浜「……返事は……言わなくて……いいから……」

比企谷「……え?」

由比ヶ浜「答え……イエスでもノーでも……」

由比ヶ浜「今の私じゃ……耐えられそうにないから……」

比企谷「…………」

比企谷「……そうか」


由比ヶ浜「ふふふ……」

由比ヶ浜「元気に……なった時の……楽しみにしておく……」

比企谷「…………」

由比ヶ浜「…………」

由比ヶ浜「……ねえ……ヒッキー」

由比ヶ浜「私……ひとつ……あの世界で……わかった事があるの……」

比企谷「なんだ?」

由比ヶ浜「ふふふ……内緒……」

比企谷「…………」

由比ヶ浜「……私が……元気になったら……」

由比ヶ浜「……教えてあげる」

比企谷「そうかよ……約束だからな?」

比企谷「絶対、守れよ?」

由比ヶ浜「……うん」


由比ヶ浜「ふう……何だか……疲れちゃった……」

比企谷「なら、ゆっくり休めばいい」

由比ヶ浜「……うん……そうする……」

比企谷「…………」

由比ヶ浜「そだ……ゆきのんに……伝えて……」

比企谷「何てだ?」

由比ヶ浜「……話……したいって……」

比企谷「わかった。 伝えとく」

由比ヶ浜「じゃ……またね……」

比企谷「ああ。 またな、由比ヶ浜」



―――――――――――


比企谷「待たせたな……って」

比企谷「ほかの連中は?」

花村「雪ノ下さんを探しに行って」

花村「この病院の食堂にいるって、さっき電話があった」

比企谷「そうか……」

花村「…………」

花村「聞くだけ野暮かもしんねーが」

花村「どんな話をしたんだ?」


比企谷「悪いがそれは言えない」

比企谷「けど……」

花村「けど?」

比企谷「約束をした」

比企谷「元気になったら、ある事を聞かせてやるってさ……」

花村「そっか……」

花村「そいつは楽しみだな」

比企谷「……ああ」

比企谷「何が何でも守ってもらうつもりだ」




??「……あれぇ? 君たちは……」



比企谷「?」

比企谷「足立さん?」

足立「やっぱり比企谷くん達か」

足立「どうしたんだい? こんな所で?」

花村「そりゃこっちのセリフですよ……足立さんこそどうしてこんなところに?」

花村「ちなみに俺達は友達の見舞いです」

足立「あ~……あの由比ヶ浜って娘さんの……納得」

比企谷「それで? 足立さんは?」


足立「ああ、僕はこの上の階に居る生天目の様子を……」

足立「あ!!」

比企谷「…………」

花村「…………」

足立「い、今の無し。 無しだからね!?」

比企谷「……ええ」

花村「……わかってますよ」

足立「あはは……」

足立「その……様子を見た帰りに堂島さんの見舞いをしておこうと思ったら」

足立「迷っちゃってね……」

足立「この階だと思ったんだけどなぁ……じゃ!」

     スタ スタ スタ…


花村「そういや……あいつもこの病院にかつぎ込んだんだっけ」

比企谷「……由比ヶ浜とは状況が違うが」

比企谷「衰弱の度合いは少しマシって程度だった」

比企谷「由比ヶ浜同様、動かせられないんだろう……」

花村「ちっ……胸糞悪ぃぜ」

花村「殺人犯が入院してる病院に由比ヶ浜さんが居るなんてな」

比企谷「…………」

比企谷「落ち着け、花村」

比企谷「今は……仕方ない」

花村「…………」


花村「なあ、比企谷」

比企谷「ん?」

花村「ちょっと付き合え」

比企谷「どこにだ?」

花村「そうだな……鮫川河川敷辺りがいい」

比企谷「……何の用だ?」

花村「俺も少しお前と話がしたい」

花村「それだけだ」

比企谷「…………」

比企谷「わかった」


河川敷公園


比企谷「で? 話って何だ?」

花村「…………」

花村「お前……いつまでそうやってるつもりだ?」

比企谷「は?」

花村「いつまで……『何でもない』ってフリをしているつもりだ?」

比企谷「…………」

比企谷「何を言ってるのか、わからないな」

花村「…………」

花村「そうかよ」

花村「なら――」


     バキッ!

比企谷「ぐっ……!」

花村「こっち(拳)で話し合うしかないな」

比企谷「……花村ァ」

花村「けっ……」

花村「反吐が出んだよ……お前のその態度にはな」

花村「クール気取ってんのか、かっこいいとでも思ってんのか知らねぇが」

花村「いっつもムカついてんだよ」

比企谷「……そんなのは俺の勝手だろうが」

比企谷「お前こそなんだ、これは?」

比企谷「いきなりくだらねぇ青春ヤローになりやがって……」

比企谷「反吐が出るのは俺の方だっての」


花村「俺は夏に忠告したよな?」

花村「由比ヶ浜さん、ないがしろにするなって」

比企谷「……っ!」

花村「で? 結果がこれかよ……」

花村「由比ヶ浜さん、何でボロボロになって病院に入院してんだ……?」

花村「なあっ? 比企谷ぁっ!!」

     ボグッ!

比企谷「ぐはっ!」

花村「答えろよ、比企谷……」

花村「お前のせいなんだぞ? 由比ヶ浜さんがああなったのは!!」

比企谷「…るせぇぇぇぇぇぇっ!!」

     バキッ!

花村「がっ!!」


比企谷「お前に俺の何がわかるっ!?」

比企谷「こうなるってわかってりゃ!! 由比ヶ浜にさっさと嫌われてやった!!」

     ゴスッ!

花村「ぐおっ!」

比企谷「はあっはあっ……」

花村「…………」

花村「……けっ」

比企谷「…………」

花村「どうした、比企谷? それで終わりか?」

比企谷「…………」

比企谷「……花村ァ」 ギリッ…!




―――――――――――



花村「はあ……はあ……」

比企谷「ぜえ……ぜえ……」

花村「けっ……ゲームばっかやってる割に 結構重いパンチ打ってくんのな……お前」

花村「一瞬お花畑が見えたっつーの……」

比企谷「……お前こそ肘打ちは反則だろ」

比企谷「アゴの骨……折れたかと思ったっての……」

花村「…………」

比企谷「…………」


花村「……比企谷」

比企谷「……何だ?」

花村「悪かった」

比企谷「……だったら最初から言うな」

花村「けどよ……」

比企谷「…………」

花村「由比ヶ浜さんの為に……もう少し怒ってやれないのか?」

比企谷「……!」

花村「俺が言いたい事は……そういう事なんだよ……」

比企谷「…………」

花村「気づいてんだろ。 由比ヶ浜さん、お前の事好きだって……」

比企谷「……さっき本人から聞いた」


花村「いきなり惚気んな」

比企谷「事実を言ってるだけだ」

花村「……で? どう答えたんだよ?」

比企谷「由比ヶ浜が、元気になったら聞かせてくれってさ……」

花村「…………」

花村「……そうか」

比企谷「…………」

花村「なあ……最後にひとつだけ聞かせてくれねぇか?」

比企谷「何だ」

花村「あの時……由比ヶ浜さん助けようとジュネスに忍び込んだ時」

花村「何を考えていた?」


比企谷「…………」

比企谷「…………」

比企谷「……わかんねぇ」



     ……いや、本当は罪滅ぼしの意識があったのかもしれない。



     事情を知らなかったとはいえ、俺は由比ヶ浜の心配より

     裏切られた、というショックの方が大きかった……

     そんな気持ちをごまかす為にそういう行動に出たのかもしれない。



花村「…………」

比企谷「……けど」


花村「けど?」

比企谷「由比ヶ浜を……テレビの中で、ひとりのままにしておきたくなかった」

比企谷「それだけはよく覚えてる」



     それは間違いなく本心だ。



花村「…………」

花村「……そうかよ」

花村「やっぱりお前って、素直じゃねーな」

比企谷「ほっとけ」


花村「…………」

比企谷「…………」

花村「……フ」

比企谷「……ふ」


     ハハハハハ……


花村「何笑ってんだよ……」

比企谷「知るか……んな事」

花村「……ま。 俺はいろいろスッキリできたわ」

比企谷「そうかよ……良かったな」

花村「病院……戻るか」

比企谷「……そうだな」




     ……まさか自分がこんな青春臭い事する羽目になるとは思わなかった。

     妹の小町が聞いたら、「小町的にはポイント高い」とか言うかもな。



     俺と花村の顔は病院に戻った時、いい具合に腫れ上がったみたいで

     里中達に驚かれた。

     そのまま病院で治療を受けたのは言うまでもないが

     なぜか……クマ以外は理由を聞く事はなかった。

     ……不思議に思った。



待合室


比企谷「……痛つつ」

比企谷(今頃痛くなってきた……)


???「あれ……? お兄さんって、もしかして?」


比企谷「……?」

比企谷(この女の子……どこかで見たな?)


??「どうした? 菜々子」

菜々子「お兄ちゃん」


比企谷「……菜々子?」

比企谷「!」

比企谷「もしかして……堂島さんの?」

菜々子「あ! やっぱり、夏祭りの時のお兄さんだ!」

??「知っている人なのか? 菜々子」

菜々子「うん!」


比企谷(そうだ……堂島さんもここに入院してるんだっけ)

比企谷(足立さん、そう言ってたな)

比企谷(という事は、堂島さんのお見舞いに兄弟揃って来たってトコか)


比企谷「……どうも。 比企谷八幡、と言います」

??「あ……初めまして。 俺は鳴上悠って言います」


比企谷「鳴上……?」

鳴上「……菜々子の従兄弟になります」

鳴上「いろいろ事情があって……」

比企谷「そうですか……」

菜々子「お兄さんのお怪我、大丈夫?」

比企谷「うん。 ちょっと痛いけど大丈夫」

菜々子「良かったぁ……」

鳴上「菜々子、お父さんの所へ行っておいで」

菜々子「え? お兄ちゃんは?」

鳴上「俺もすぐに行くから」

菜々子「うん。 わかった」



     タッ タッ タッ…

鳴上「菜々子とはどうして?」

比企谷「あの子も言ってましたが、夏祭りの時……」


―――――――――――


鳴上「そうでしたか……」

比企谷「…………」

比企谷「菜々子ちゃん……お母さんが居ないんですか」

鳴上「ええ……」

鳴上「1~2年くらい前、ひき逃げにあって……」

比企谷「…………」

鳴上「伯父さんから連絡を受けて、俺の母親がしばらく預かろうと言ったんですが」

鳴上「菜々子は、納得しませんでした」


鳴上「それで俺の母親、じゃあ八十稲羽で菜々子の面倒を見よう、という事になって」

鳴上「それに落ち着いたんです」

比企谷「……大変ですね」

鳴上「事情を聞いて今日から三連休だし」

鳴上「俺の母親の手伝いがてら菜々子の遊び相手にでも……と思ってここに来ました」

比企谷「偉いですね」

鳴上「……正直言うと、軽い気持ちもあったんですよ」

鳴上「俺自身の気分転換も兼ねて、という……」

比企谷「…………」

鳴上「でも……菜々子を見て、上手く言えませんが」

鳴上「無理しているんじゃないのか?と思いました」

比企谷「…………」


鳴上「本当は泣きたいだろうに……俺や俺の母親に気を使って泣けないんじゃないのか?」

鳴上「そんな風に感じました」

比企谷「…………」

鳴上「俺に……何ができるのかわからない」

鳴上「けど……」

鳴上「俺の目の前で泣いてくれる様になってくれたらな、と思っています」

比企谷「…………」

比企谷「……そうですか」

鳴上「それじゃ……俺、行きます」

鳴上「お大事に」

比企谷「いえ……そちらもお大事に」

鳴上「どうも」


比企谷「…………」



鳴上「俺の目の前で泣いてくれる様になってくれたらな、と思っています」



比企谷「…………」

比企谷「…………」



花村「お前……いつまでそうやってるつもりだ?」

花村「いつまで……『何でもない』ってフリをしているつもりだ?」



比企谷「…………」

比企谷(……花村)




     見た目、俺とそう変わらない歳くらいなのに

     不思議な雰囲気を持った人物だった。




     ……俺は、少しだけ花村に感謝した。





夕方

大衆食堂 愛屋


     オマチー

花村「ま! 何はともあれ、由比ヶ浜さん意識が回復して良かったぜ!」

白鐘「ええ。 本当に良かった」

天城「早く元気になるといいね!」

     アハハ…

クマ「…………」

比企谷「……どうした? クマ?」

クマ「…………」

クマ「クマは……まだここに居てもいいクマ?」


里中「急に何?」

クマ「クマ……最初の頃、センセイとヨースケに頼んだクマ」

クマ「クマの世界に人間を落としてる犯人を捕まえてって……」


一同「…………」


クマ「もうその約束は果たされたクマ」

クマ「だから、クマ、向こうの世界に帰らないといけないけど……」

クマ「それはユイちゃんが元気になるのを確かめてからにしたいクマ」

クマ「それでもいいクマか?」

りせ「何言ってるのよ、クマ」

花村「いいも何もねえよ。 好きなだけ居ればいいさ」

比企谷「ああ。 たぶん由比ヶ浜もそう言うと思うぞ」


クマ「およよ……みんな……!」

クマ「ありがとうクマ!」

里中「お礼なんていいって」

里中「由比ヶ浜さんが元気になっても、ずっと居たらいいじゃん」

里中「ね! 雪子!」

天城「うん! 千枝!」

クマ「いつかストリップも拝むクマ!」

雪ノ下「それはもう忘れなさい!」

雪ノ下「まったく……」

     ハハハ…

比企谷「…………」 クスッ




     ようやく。

     俺はようやく、この事件は終わったのだと

     思える様になっていた。


今日はここまでです。
次回……私にとっても正念場。書くのが辛い……

番長はゲスト出演かな?

次回も期待して待ってる!


疑う事をやめるとはらしくありませんな

乙!

最後まで突っ走ってくれ!

乙!

乙!!

作者さん、そしてその読者さんたちこんにちは!
本日はDMMの期間限定特別キャンペーンについてのご案内に伺いました。

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たのしみ!!



―――――――――――


数日後

八十稲羽総合病院 由比ヶ浜の病室


由比ヶ浜「……ゆきのん……久しぶり」

雪ノ下「……由比ヶ浜さん」

由比ヶ浜「…………」

雪ノ下「…………」

由比ヶ浜「私ね……」

由比ヶ浜「あの世界で……ひとつ……気がついた事が……あるの」

雪ノ下「…………」


由比ヶ浜「……私」


由比ヶ浜「誰かの……『特別』になりたかったんだって……」


雪ノ下「特別?」

由比ヶ浜「うん」

由比ヶ浜「……私……こんなにいろいろ話せる人……今まで……居なかった」

雪ノ下「…………」

由比ヶ浜「……でも……ヒッキーとゆきのんは……」

由比ヶ浜「こんな私の、どんな話も……真面目に聞いてくれた……」

由比ヶ浜「嬉しかった……」

雪ノ下「…………」


由比ヶ浜「……だから私」

由比ヶ浜「二人の『特別』になりたいって……思った……」

由比ヶ浜「それを……思い出したの……」

雪ノ下「…………」

雪ノ下「それなら大丈夫」

雪ノ下「あなたは、十分『特別』よ」

雪ノ下「私にとっても……比企谷くんにとっても」

由比ヶ浜「……本当?」

雪ノ下「ええ」

雪ノ下「比企谷くんは、あなたを救おうとして」

雪ノ下「深夜のジュネスに一人で忍び込むという、考えられない無茶をしたくらいよ」


由比ヶ浜「……ヒッキーが……!?」

由比ヶ浜「そっかぁ……嬉しいな……えへへ……」

雪ノ下「…………」

由比ヶ浜「……ねえ、ゆきのん」

雪ノ下「何かしら?」

由比ヶ浜「あの日……どうしてヒッキーを見送りに来なかったのか……」

由比ヶ浜「聞かせて欲しい……」

雪ノ下「!」

由比ヶ浜「…………」

雪ノ下「…………」

雪ノ下「……バカバカしい理由よ」

雪ノ下「自分でも信じられないくらいの……」

由比ヶ浜「…………」


雪ノ下「……私」


雪ノ下「比企谷くんに……お別れの言葉を言いたく無かった」


由比ヶ浜「……え?」

雪ノ下「それを言ってしまったら……」

雪ノ下「もう会えなくなるんじゃないかって、最後になってしまうんじゃないかって」

雪ノ下「恐ろしかったの……」

由比ヶ浜「…………」

雪ノ下「どうしようも無いくらい幼稚で、くだらない理由……」

由比ヶ浜「…………」

由比ヶ浜「……ううん。 そんな事ないよ」


由比ヶ浜「私も……同じ事考えちゃったから」

雪ノ下「え?」

由比ヶ浜「……頭じゃわかってるの」

由比ヶ浜「そんなハズないって。 ……でも」

雪ノ下「…………」

由比ヶ浜「あの日……向こうでも元気でって……ヒッキーを見送って」

由比ヶ浜「遠く……離れていく電車を見続けてたら……怖くなった」

由比ヶ浜「もう……ヒッキーと……会えないんじゃないかって……」

雪ノ下「由比ヶ浜さん……」

由比ヶ浜「ふふふ……同じだね……ゆきのん」

由比ヶ浜「ゆきのんも……ヒッキーの事……好きなんでしょ?」

雪ノ下「っ!」///


由比ヶ浜「もう……隠し事……しない」

由比ヶ浜「私……ヒッキーの事……好き」

雪ノ下「由比ヶ浜さん……」

由比ヶ浜「告白も……しちゃったんだよ?……えへへ」///

雪ノ下「……え!?」

由比ヶ浜「……返事は……私が元気になってから……って事になってる」

雪ノ下「そ、そう……」

雪ノ下(……油断できないわね)

由比ヶ浜「…………」

由比ヶ浜「ゆきのん」

雪ノ下「何かしら?」




由比ヶ浜「これからも……友達でいてくれる?」



雪ノ下「…………」

雪ノ下「もちろんよ、由比ヶ浜さん」

雪ノ下「これからもよろしくね」 ニコッ

由比ヶ浜「ゆきのん……ありがとう」

由比ヶ浜「よろしくね」 ニコッ

     アハハハ…

雪ノ下(…………)




     私は……何となく理解した気がした。

     由比ヶ浜さんのあの【シャドウ】は、あくまで一面にすぎない。

     でも……それは私と比企谷くんが、彼女にとって

     『特別』な存在だったから。





     だからこそ……ああなってしまったのだと……






―――――――――――


翌日の朝

通学路


里中「おはよー」

花村「おう、里中。 おはよう」

天城「おはよう、千枝」

雪ノ下「おはよう」

比企谷「おはよう」

白鐘「おはようございます、里中先輩」

りせ「おはよう、里中先輩」

里中「しっかし迷惑よねー。 この霧」

里中「原因、一体何なんだろ?」

比企谷「…………」




     そう……今、八十稲羽では霧が晴れない、という

     原因不明の異常気象に見舞われていた。



     専門家も首をかしげるばかりで

     通常では有り得ない現象だと言う。



     以前から長い雨の後、霧が出て慣れっこになっていたが……

     さすがにここの住民も不気味に思っている様だ。



マダム1「毎日毎日、気が滅入りますわね……」

マダム2「それが奥さん……この霧、実は有害なんじゃないかって」

マダム1「まあ……そういえばお隣のタケシちゃんも」

マダム1「外に居て気分が悪くなったとか言ってまして……」

マダム2「本当ですか? 初耳なんですけど……」



ガスマスク男「みんな気をつけろー!!」

ガスマスク男「これは毒ガスだー!!」

ガスマスク男「ウィルスだー!!」

ガスマスク男「ここに居たら、みんな死んでしまうぞー!!」



一同「…………」


花村「はあ……アホくさ」

花村「せっかく事件解決したっていうのに……テンション下がるぜ」

里中「まあ今は仕方ないじゃん?」

里中「どこもかしこも霧の噂話で持ちきりになってるし」

天城「……でも」

天城「本当に何なんだろうね? この霧……」

りせ「まるで向こうの世界に居るみたい」

雪ノ下「…………」

雪ノ下(……向こうの世界?)

     ゴソゴソ…… スチャッ

雪ノ下「!?」


雪ノ下「み、みんな!」

比企谷「どうした? 雪ノ下?」

雪ノ下「メガネ! クマくんのメガネを掛けてみて!」


一同「……?」

     ゴソゴソ…… スチャッ

一同「!?」


白鐘「こ……これは!?」

りせ「どうして!? 視界が開ける!」

天城「うそ……このメガネはあっちの世界でしか効果がないはず……」




里中「……向こうの霧が漏れてんのかな?」



一同「!?」


里中「え!? な、なんか当たりっぽかった!?」

里中「結構テキトーに言ったんだけど……」

白鐘「テレビの世界の霧が……こちら側に?」

比企谷「…………」

比企谷「推測じゃラチが開かない」

比企谷「放課後、クマに聞いてみよう」



―――――――――――


放課後

ジュネス フードコート


クマ「う~ん……確かに向こうの霧に似てるクマけど……」

クマ「それ以上の事は解らないクマ」

比企谷「そうか……」

白鐘「解らない事だらけですね……」

りせ「向こうの世界に何か変わった事はない?」

クマ「それもないクマ」

クマ「詳しく調べたわけじゃないクマけど……いつも通りクマ」

りせ「そっか……」

比企谷「…………」


比企谷(……そういや)

比企谷(事件の事をメインに考えていたが……)

比企谷(ペルソナやあの世界について調べていなかった)

比企谷(【マヨナカテレビ】もそうだが)

比企谷(何故こんな事が起こったのか、まったく分かっていない)

比企谷(状況に巻き込まれ、いつの間にか当たり前になっていたが)

比企谷(こんな怪現象……異常だよな)


クマ「役に立てなくてゴメンクマ……」

花村「気にすんな、クマ。 わかんねーのは俺たちも一緒だし」

花村「いつか解る様になるかも知んねーからな」

比企谷「そうとも。 何か気がついたら言ってくれ」

クマ「ヨースケ、センセイ……わかったクマ!」

里中「じゃ、由比ヶ浜さんのお見舞い行く?」

天城「あ……ごめん、千枝」

天城「今日は旅館の仕事があって……」

比企谷「という事は雪ノ下も?」

雪ノ下「ええ……由比ヶ浜さんにごめんなさい、と伝えておいてくれるかしら?」

比企谷「わかった」


八十稲羽総合病院

由比ヶ浜の病室


クマ「ユイちゃん、来たクマよ~」

由比ヶ浜「クマくん……いらっしゃい」

由比ヶ浜「みんなも……」

比企谷「今日な。 雪ノ下と天城、旅館で仕事があるんだそうだ」

比企谷「謝っといてくれと頼まれた」

由比ヶ浜「そっか……忙しいんだね……」

花村「よし、こんなもんかな。 花瓶の花、変えといたぜ」

クマ「おお、キレイなお花クマ」


りせ「へえ……花村先輩、気が利くじゃない」

白鐘「花なんていつ買ったんですか?」

花村「ジュネスにちょっと寄ってな」

比企谷「…………」

比企谷「……これ、桔梗(ききょう)か?」

花村「お? 知ってんのか、比企谷」

比企谷「…………」

花村「それでどうかな? 由比ヶ浜さん?」

由比ヶ浜「ありがとう……花村くん……」

由比ヶ浜「とってもキレイ……」

花村「へへっ。 気に入ってくれたなら、こっちも嬉しいぜ!」

クマ「ユイちゃん、聞いて欲しいクマ~」

クマ「今日もアルバイト、大変だったクマ!」



―――――――――――


待合室


比企谷「……ふう」

菜々子「あ、お兄さん」

比企谷「ん? ああ、菜々子ちゃん」

比企谷「お父さんのお見舞いかな?」

菜々子「うん! お父さん、菜々子にはちゃんと手を洗えって、言うけど」

菜々子「病院じゃ時々サボってるみたいなの」

菜々子「ずるいよね!」

比企谷「ははは…」


菜々子「……でもね。 ちょっとずつ元気になてて」

菜々子「菜々子、嬉しいんだ!」

比企谷「そう……良かったね」

菜々子「うん!」

菜々子「お兄さんは? お怪我、まだ治らないの?」

比企谷「……俺の方はもう大丈夫」

比企谷「けど……ほら、覚えてるかな?」

比企谷「夏祭りの時のお姉さん」

菜々子「茶色い髪の人?」

比企谷「そう」

比企谷「で、その人、ちょっと怪我しちゃって……お見舞いに来たんだ」

菜々子「! ……そうだったの」

>>500修正↓


菜々子「……でもね。 ちょっとずつ元気になってて」

菜々子「菜々子、嬉しいんだ!」

比企谷「そう……良かったね」

菜々子「うん!」

菜々子「お兄さんは? お怪我、まだ治らないの?」

比企谷「……俺の方はもう大丈夫」

比企谷「けど……ほら、覚えてるかな?」

比企谷「夏祭りの時、菜々子ちゃんと話したお姉さん」

菜々子「茶色い髪の人?」

比企谷「そう」

比企谷「で、その人、ちょっと怪我しちゃって……お見舞いに来たんだ」

菜々子「! ……そうだったの」




     ……実を言えば不安を感じている事がある。

     由比ヶ浜は意識を取り戻したというのに一向に良くなる気配がない。

     気がついてから10日くらい経つが、今だに起き上がる事すらままならず

     酸素吸入器を外したり、付けたり、を繰り返している……



     みんな……クマですら薄々感じているが

     言葉にはしていない。



比企谷(真犯人の生天目とかいう奴も同じ状況だとか……)

比企谷(そのせいでまだ取り調べも行われていない)

比企谷(この前、足立さんがまたうっかり口を滑らせてそう言っていた)

比企谷(……日本の警察大丈夫か?と少し思ってしまったな)


菜々子「…………」

菜々子「あのっ、お兄さん!」

比企谷「ん?」

菜々子「菜々子もお見舞いしたい!……です」

比企谷「ああ……そうだね。 きっと由比ヶ浜も喜ぶと思う」

比企谷「ありがとう、菜々子ちゃん」

菜々子「えへへ」///


由比ヶ浜の病室


クマ「およ? センセイ、その子は誰クマ?」

比企谷「かいつまんで説明するが」

比企谷「夏祭りの時知り合った堂島さんの娘さんだ」

比企谷「堂島さんもこの病院に入院してて、偶然再会した」

比企谷「由比ヶ浜の事を話したら、お見舞いしたいと言うので来てもらった」

菜々子「ど、堂島菜々子ですっ」///

花村「おう! 菜々子ちゃんか、いい名前だな。 よろしく!」

里中「よろしくね、菜々子ちゃん」

白鐘「よろしく」

りせ「よろしくねっ!」


クマ「菜々子ちゃん、大歓迎するクマ!」

クマ「よろしくクマね~」

菜々子「うん!」

菜々子「こんにちは、お姉さん」

由比ヶ浜「……?」

比企谷「由比ヶ浜、覚えてるか?」

比企谷「夏休みの夏祭り……」

由比ヶ浜「…………」


由比ヶ浜「……あ、思い出した」

由比ヶ浜「足を怪我してた女の子……だったね……」

菜々子「はい。 あの時はありがとう、お姉さん」

菜々子「菜々子、元気になれました!」

由比ヶ浜「そっか……良かった……」

菜々子「お姉さんも早く元気になってください」

由比ヶ浜「うん……そしたら……」

由比ヶ浜「一緒に……遊ぼうね……」

菜々子「うん!」


一同「…………」



―――――――――――


帰り道


     テク テク テク…

花村「…………」

比企谷「…………」

クマ「…………」

りせ「…………」

白鐘「…………」

里中「…………」


里中「あ……えと、あたし、こっちだから」

比企谷「お、おう」

花村「またな、里中」

里中「うん。 じゃ、また明日」

     タッ タッ タッ…

りせ「じゃあ……あたしもここで」

花村「ああ。 俺たちも行くか……クマ」

クマ「わかったクマ……」

花村「じゃあな、比企谷、白鐘」

比企谷「おう……」

白鐘「はい。 また明日……」


比企谷「…………」

白鐘「…………」

     テク テク テク

白鐘「あ、あのっ」

比企谷「ん?」

白鐘「良かったら……夕食を一緒に取りませんか?」

比企谷「……いきなりだな」

比企谷「何か話したい事でもあるのか?」

白鐘「……そういう訳じゃありません」

白鐘「それとも、そういう『何か』が無いと 僕との食事は嫌ですか?」

比企谷「そうは言ってないだろ……」

白鐘「なら、問題は無いですよね?」

比企谷「……白鐘。 お前、雪ノ下に毒されてないか?」


大衆食堂 愛屋


     オマチー

白鐘「いただきます」

比企谷「いただきます」

     ズルルッ… ズルッ ズルッ…

白鐘「うん。 美味しいですね」

比企谷「ああ」

白鐘「先輩のそれ……トッピングは何ですか?」

比企谷「チャーシューを多めにコーンともやし」

白鐘「美味しそうですね」

比企谷「やらないぞ」

白鐘「ははは」 クスッ


白鐘「…………」

白鐘「いいですね、こういうの。 やってみて良かった」

比企谷「ん?」

白鐘「他愛のない会話ってやつです」

比企谷「…………」

比企谷「別に俺じゃなくても良かっただろ……」

白鐘「いえ」

白鐘「比企谷先輩『と』が……いいんです」///

比企谷「そうなのか?」

白鐘「ええ……」


白鐘「他の皆さんもそうですけど」

白鐘「事件絡みでしか話をしていない様な気がして……」

白鐘「そういうのじゃない、何か……明日の天気とか、普通の話題で」

白鐘「前々から話をしてみたかったんです」

比企谷(……尚の事、ぼっち歴の長い俺じゃない方がいいと思うが)

比企谷「そうか。 お役に立てて光栄だ」

白鐘「ははは」

白鐘「ところで……比企谷先輩は料理とかするんですか?」

比企谷「まあ……たしなむ程度だな」

白鐘「得意料理とか、あるんですか?」

比企谷「俺の味噌汁は、妹の小町もポイン……評判がいい」


白鐘「妹さんが居るんですか」

比企谷「言っとくが、俺に似てなくて とびきり可愛いぞ」

白鐘「比企谷先輩に似ててもきっと可愛いですよ」

比企谷「……お世辞だと分かるが、喜んでおく」

白鐘「お世辞なんかじゃないです」

比企谷「…………」

比企谷「俺ばっか聞かれるのもなんだし」

比企谷「白鐘の事、聞いていいか?」

白鐘「ええ。 体のサイズ以外で答えられる範囲なら」

比企谷「……ちいっ」

白鐘「そのくらいはさすがに予想してますよ、比企谷先輩」 クスッ

比企谷「……やっぱり雪ノ下に毒されてるだろ、白鐘」

     ハハハ……


白鐘「…………」

白鐘(僕は……ずるい人間だ)

白鐘(由比ヶ浜さんがあんな状態だというのに……)

白鐘(…………)

白鐘(でも)

白鐘(比企谷先輩が元気になれる存在でありたい)

白鐘(彼の……大切な存在になりたい)

白鐘(…………)

白鐘(勝ち目は……薄いのかもしれないけど)

白鐘(それでも僕は、僕の心は、そうしたいと思っている……)

白鐘(……比企谷先輩)///



―――――――――――


数日後の放課後

ジュネス前


菜々子「あ! お兄さん!」

比企谷「菜々子ちゃん? それに……」

鳴上「またお会いしましたね。 鳴上です」

比企谷「どうも、比企谷です」

比企谷(……今日は平日なのに。 何で居るんだ?)

鳴上「病院に行く途中なんですが」

鳴上「伯父さんの日用品もついでにと思ってジュネスに……」

菜々子「あのね、お兄さん!」


菜々子「菜々子、お姉さんが早く元気になる様にと思って、お兄ちゃんに相談したら」

菜々子「”せんばづる”っていうのを作ってくれたの!」

菜々子「ほら!」

     バッ!

比企谷(……どう見ても50羽くらいしか居ないが)

比企谷「そうか……ありがとう、菜々子ちゃん、鳴上……さん」

比企谷「これで由比ヶ浜、すぐに良くなると思う」

菜々子「えへへ!」

菜々子「菜々子もね、ちょっとだけど折ったんだよ?」

比企谷「どれかな?」

菜々子「えっとね……これとこれと……これ!」

比企谷「うん。 とっても綺麗に出来てる。 菜々子ちゃん上手だね……」



―――――――――――


ジュネス店内


比企谷「そうですか……菜々子ちゃんが電話を」

鳴上「ええ」

鳴上「菜々子……『お姉さん』の為に何かしたいって相談されたんです」

鳴上「最初、『お姉さん』って誰?と思いました」 クスッ

比企谷「でしょうね」 クスッ

鳴上「事情を聞いて、それなら……と思いついたんですが」

鳴上「時間がなくて あの有様です……」

比企谷「いえ、菜々子ちゃんのその気持ちが嬉しいですよ」

比企谷「わざわざ八十稲羽に来てくれた鳴上さんもね」


鳴上「俺は、菜々子の力になりたかっただけです」

比企谷「たとえそうだとしても」

比企谷「お礼をいいます。 ありがとう」

鳴上「どういたしまして」 クスッ

鳴上「……早く良くなるといいですね」

比企谷「……ええ」


??「おっ……比企谷」


比企谷「花村」

花村「よう! 偶然だな。 これからお見舞いか?」

雪ノ下「私達もこれからな……?」


菜々子「こ、こんにちは……」

鳴上「……こんにちは」

里中「あ……ど、どうも」

花村「比企谷、こちらは?」

比企谷「ああ、花村達は知らないんだよな……」

―――――――――――

天城「そういう事だったの」

鳴上「初めまして。 鳴上です」

菜々子「堂島菜々子ですっ」///

雪ノ下「こんにちは、菜々子ちゃん」

クマ「ナナちゃん、ありがとうクマ……」

クマ「きっとユイちゃん、これで良くなるクマよ!」

菜々子「~~~っ」///


りせ「……ねえ」

りせ「あたし達も折らない? 折り鶴」

里中「おおっ! いいアイデアじゃん!」

白鐘「僕たちも作りましょう! 千羽鶴」

鳴上「あ……それなら」

鳴上「この千羽鶴に継ぎ足しますか?」

比企谷「いいんですか?」

鳴上「ええ。 構わないよな? 菜々子」

菜々子「うん!」

花村「よし! じゃ、俺、折り紙買ってくるわ!」



―――――――――――


ジュネス フードコート


クマ「出来たクマ!」

花村「……お前、何を折ったんだ?」

クマ「え? これじゃないクマ?」

花村「かたち! 明らかに折り鶴じゃねーだろ!」

クマ「クマ……」

比企谷「……やっこさんか?」

雪ノ下「折り紙の説明部分、途中から隣のを見たのね」

比企谷「それでいてこの形にするって、ある意味すげーな……」


りせ「よし! 完成!」

天城「こっちも折れたよ」

里中「出来た……けど」

里中「あたしの……ぶかっこうだなぁ」

天城「千枝、こういうのは気持ちがこもってればいいんだよ」

里中「うううっ……やっぱり作り直すっ!」

菜々子「できたよ、お兄ちゃん!」

鳴上「うん。 上手に出来たな、菜々子」

菜々子「えへへっ」///

雪ノ下「鳴上……くんの折り鶴、とっても綺麗に折れているわね」

鳴上「それほどでも」


花村「謙遜は良くないって」

里中「普段から折ってるとか?」

鳴上「…………」

鳴上「実は、日本折り鶴選手権大会、準優勝してます」

天城「へえ……だからこんなに綺麗に折れるんだ」

りせ「納得の出来だよね」

クマ「およよ……クマも頑張って優勝を狙うクマ!」

花村「無理に決まってんだろうが、クマ」

鳴上「…………」


鳴上(どうしよう……冗談だったのに)



―――――――――――


比企谷「……こんなものかな」

菜々子「うわぁ……立派になったね! お兄ちゃん!」

鳴上「そうだな、菜々子」


里中「ううっ……やっぱりあたしが折ったの、悪い意味で目立ってるじゃん」///

比企谷「なかなかどうして。 いい味になってると思うぞ」

天城「そうだよ、千枝」

白鐘「手作り感が溢れてて、いいと思いますよ?」

里中「そ、そう?」


りせ「まあ、これで力不足に思うのなら」

りせ「別のところで頑張ればいいと思うな!」

里中「別のところ?」

りせ「例えば……由比ヶ浜さんの退院祝いにケーキ作るとか!」

天城「りせちゃん、それいいアイデアだね!」

里中「それなら自信あるじゃん!」

花村「止・め・な・さ・いっ!」

花村「退院した由比ヶ浜さん、病院に送り返す気かっ!?」

里中「それどういう意味よ!?」

比企谷「キーワードは林間学校、物体X、オムライス……」

天城「あ、あれから、時間、随分経ってるし!」

りせ「れ、練習だってしてるもんっ!」


雪ノ下「みんな、その辺にしておきなさい」

雪ノ下「折り鶴折ってたから、もうこんな時間よ」

里中「わっ!……本当だ、急いだ方がいいね」

クマ「どおりでお腹すいたクマ……」

花村「お前は年がら年中腹減らしてるだろ」

比企谷「よし。 そろそろ行くか」

天城「そうだね」

白鐘「行きましょう」

鳴上「菜々子、手を離さないようにな」

菜々子「うん! お兄ちゃん!」



―――――――――――


八十稲羽 総合病院

由比ヶ浜の病室前


     バタ バタ…

クマ「クマ?」

比企谷「…………」

花村「お、おい……なんか」

里中「随分慌ただしいね……由比ヶ浜さんの病室」

りせ「…………」

天城「……まさか」

雪ノ下「…………」

白鐘「…………」


菜々子「お兄ちゃん?」

鳴上「菜々子……今は静かにしていよう。 な?」

菜々子「う、うん……」


看護師「!!」

看護師「あなた達は……」


一同「…………」


看護師「…………」

看護師「……由比ヶ浜さん、容態が急変したの」


一同「…っ!!」


看護師「今、全力を尽くして治療にあたっています」

看護師「心配に思うだろうけど、邪魔をしないでね」

看護師「じゃ……」

     タッ タッ タッ…

比企谷「…………」

雪ノ下「…………」

里中「うそ……」

天城「こんなの……こんなのって……」

白鐘「…………」

クマ「およよ……ユイちゃん……」

花村「……大丈夫……きっと、大丈夫だ……きっと……」

りせ「頑張って……由比ヶ浜さん……!」



―――――――――――


     チッ チッ チッ…

比企谷「…………」

比企谷「…………」 チラッ

     22:24(ケータイのデジタル時計)

比企谷(……あれから、もう3時間か)


鳴上「…………」

鳴上「菜々子。 お父さんの病室に行こう?」

菜々子「やだっ……」

菜々子「菜々子、お姉さんに”せんばづる”渡すまで、ここに居るっ」

鳴上「菜々子……」


     ガチャ…

一同「!!」

看護師「…………」

看護師「君……確か、ヒッキー?とか言われてたね」

比企谷「……はい」

看護師「…………」

看護師「由比ヶ浜さんのご両親……間の悪い事に」

看護師「今日、どうしても外せない用事で遠出してたの」

比企谷「…………」


看護師「……連絡は入れておいたけど」

看護師「たぶん……厳しいと思う」


一同「……!!」


看護師「…………」

看護師「本来はダメなんだけど……担当の先生も」

看護師「誰か一人くらいなら見て見ぬふりしてくれるって……」

比企谷「…………」

里中「……っ」

天城「……う…そ……」

りせ「……そん……な」

白鐘「由比ヶ浜……さん……」

クマ「…………」


比企谷「…………」

花村「……比企谷」

比企谷「っ!」 ビクンッ

花村「早く…行けよ……由比ヶ浜さん……ぐっ……待ってるぞ」

比企谷「花村……」

菜々子「待って、お兄さんっ」

菜々子「これ……!」

比企谷「…………」

比企谷「……ありがとう、菜々子ちゃん」

比企谷「必ず渡す」

菜々子「うんっ」 グスッ…

鳴上「…………」



―――――――――――


看護師「由比ヶ浜さん、聞こえる?」

看護師「ヒッキー?君、来てくれたよ?」

由比ヶ浜「…………」

由比ヶ浜「……ヒッ……キー……?」

比企谷「由比ヶ浜……ここだ。 ここに居るぞ」

由比ヶ浜「…………」

由比ヶ浜「……ヒッ……キー……」

比企谷「……っ」

比企谷「由比ヶ浜……これ見ろよ」


比企谷「菜々子ちゃん……いや、みんなで……」

比企谷「お前が元気になる様にって……作ったんだ」

由比ヶ浜「…………」




     ああ……ヒッキーの手だ

     ヒッキー……私の手、握ってる

     あったかいなぁ……




比企谷「わかるだろ? みんなお前を……待ってるんだよ」

比企谷「それに……ほら、約束」

比企谷「元気になったら、俺に何か言うんだろ?」

由比ヶ浜「…………」




     お父さんとお母さんにも会いたかったけど……

     最後があなたで……私……嬉しい……




比企谷「約束しただろっ……約束っ……うっ……」

比企谷「頼むから……守ってくれよ……」

比企谷「由比ヶ浜っ……なあっ……!」

由比ヶ浜「…………」




     ……ごめんね、ヒッキー

     約束……守れなくて……










     ………………








     ……やだ















     こんなの……嫌だよ……













     せっかく……ヒッキーの『特別』になれたのに……

     告白の返事も聞いてないのに……









     死にたくないよっ……
















     これで終わりなんて……あんまりだよっ……








     ヒッキー……















     私…………もっと…………あなたと……










     たくさん…………お話して…………















     そん…な………………まい………にち…………を……









     すご………………し………………た………………















     ………………………………………………















     ピ―――――――――――――――――――――…………








比企谷「……っ!!!」

比企谷「…………」

比企谷「…………」

比企谷「……由比……ヶ浜?」

比企谷「…………」

比企谷「由比ヶ浜……」

比企谷「由比ヶ浜っ……」

比企谷「……っ」

比企谷「由比…ヶ浜ぁっ……!」








     乾いた電子音が響く中

     由比ヶ浜が俺の呼びかけに答える事は……















     もう……無かった……








今日はここまでです。
山は越えたっ!

乙!
ここまで来たか・・・

辛いな。


山超えたというより崖から落ちとるがな!

ほら原作にあったよ・・・
あれだよあれ
鳴上が心理攻撃にやられてた時のあれみたいな・・・・

ゆいが死んだわけがないよ・・・・

ゆい・・・泣

あげ

///なんて使う奴まだいたんだ

学生さんかな?
黒歴史にならない前になんとかした方がいいぞ



―――――――――――


     コッ コッ コッ…

堂島「……ん?」


天城「……ううっ……ぐっ……」

里中「…………こんなの……ぐくっ……」

白鐘「……っ…………っ……」

りせ「あんまり、だよ……ひっく………ううっ…」

雪ノ下「…………」

クマ「ユイちゃん………ユイちゃん………」

花村「……ぐっ……うくっ………うあっ……」


堂島「…………」


堂島「……悠」

鳴上「! ……伯父さん」

菜々子「!」

菜々子「お父……さん」

菜々子「お父さん、お父さんっ」

     ギュッ…

菜々子「うあああああんっ…! お姉さんっ……お姉さんがっ……」

堂島「菜々子……」

鳴上「…………」

鳴上「……今は、そっとしておきましょう」

堂島「……そうだな。 俺の病室に行こう」


由比ヶ浜の病室


比企谷「…………」


     看護師のテキパキとした動きで酸素吸入器が外される。

     もうピクリとも動かなくなった由比ヶ浜から……



     さっきまで悲しかったはずなのに……

     不思議と……もう涙は溢れてこない。


比企谷「…………」


比企谷「……看護師さん」

看護師「……はい?」

比企谷「これ……千羽づ……百羽とちょっと鶴」

比企谷「由比ヶ浜に持たせてもいいですか?」

看護師「ええ……どうぞ」

比企谷「……ありがとうございます」


     俺は、由比ヶ浜の胸の辺りに百羽とちょっと鶴を置き

     それに由比ヶ浜の両手を添えた。


比企谷「…………」





     何かを言おうと思ったが思いつかず……

     そのまま静かに……俺は由比ヶ浜の病室を後にした。




雪ノ下「……比企谷くん」

比企谷「…………」

白鐘「比企谷先輩……」

比企谷「…………」

比企谷「……みんな、今日はもう帰……」



     ハナセー   ハナシヤガレッ



比企谷「!?」

里中「今の声……花村?」



     コロシテヤルッ   ブッコロシテヤルッ



天城「ええ!?」


りせ「ど、どうしちゃったの!? 花村先輩!?」

比企谷「!」

比企谷「あいつ……まさか生天目の病室に!?」


一同「!?」


里中「生天目!? あいつ、この病院に居たの!?」

天城「じゃ、じゃあ殺してやるって……」

りせ「そ、それって、ヤバイんじゃ!?」

白鐘「ともかく、現場に向かいましょう!」


     ダダダッ……


クマ「…………」


由比ヶ浜の病室


クマ「…………」

クマ「ユイちゃん……」

クマ「…………」

クマ「ごめんね……何の力にもなれなくて……」

クマ「クマ……できる事なら、何でもやってあげたかった」

クマ「でも……クマに出来る事は……大抵みんな出来てて……」

クマ「……っ」

クマ「ごめん……ねっ……」

クマ「クマ……役立たずで……本当にごめんねっ……」

クマ「……ううっ……ごめ、ん……ね……ユイちゃんっ……」









     本当に……ごめんなさい……








―――――――――――


生天目の病室前


花村「何でだよっ!?」

花村「何であいつが生きてて……」

花村「由比ヶ浜さんが死ななきゃならないんだよっ!?」

花村「山野アナだって小西先輩だって殺してるのはあいつなのに……」

花村「どうしてなんだよっ!!」

警官1「おとなしくしろっ!」

警官2「公務執行妨害、現行犯で確保する!!」

花村「放せ! 放しやがれっ!」


里中「! は、花村……」

天城「お巡りさん! 待ってください!」

天城「事情が……事情があるんです!!」


警官1「残念だが見逃す訳にはいかん」

警官1「理由はどうあれ『ブッ殺す』などと物騒な事も言ってるしな」

警官2「ほら立て!」

花村「ぐっ……」

花村「……ううっ……由比…ヶ浜さん…………」

警官1「……ちっ」

警官1「そっち持ってくれ。 引きずってでも連れて行く」

警官2「わかった」

     ズルズルズル…

一同「……っ」


りせ「…………」

りせ「……どうしてよ」

りせ「どうして生天目は生きてるの!?」

雪ノ下「久慈川さん……」

里中「……あたしだって」

里中「気持ちは花村と同じだよっ……!」

里中「こんなの……こんなのって……無いじゃん!」

天城「千枝……」

比企谷「…………」

白鐘「…………」


     カタンッ……!


一同「!?」


里中「何? 今の音?」

白鐘「……生天目の部屋の方から聞こえましたね」

比企谷「確かにな」

白鐘「行ってみませんか?」


一同「!?」


白鐘「……今なら見張りの警官は居ませんし」

白鐘「せっかく出来たチャンスです。 入るべきだと思うのですが」


一同「…………」


比企谷「虎穴に入らずんば虎子を得ず……か」

比企谷「行ってみよう」


生天目の病室


     ヒュウウウウウ……

生天目「はあ……はあ……」

生天目「……ぐっ……く……」


比企谷「生天目……」

生天目「!?」

白鐘「……やれやれ。 どうやら窓から逃げるつもりだった様ですね」

生天目「う……ううっ……」

里中「どこまで卑怯なの……」

天城「もういい加減、観念しなさいよ……!」

比企谷「…………」


雪ノ下「あなたのせいで、由比ヶ浜さんはっ……!」

りせ「絶対に……許さない……!」

比企谷「……ここから逃げ出して どうするつもりだったんだ?」

比企谷「生天目……」

生天目「…………」

比企谷「また――」

生天目「ひっ」

比企谷「被害者を増やすつもりだったのかっ……! 生天目っ…!」

生天目「ち、違――」



     ……ピウィ~……



一同「!?」


里中「み、見て! 【マヨナカテレビ】が……!」

雪ノ下「夜中の0時……でも」

天城「どうして!? 今日、雨降ってないのに……」


テレビ『……救済は失敗だ』


白鐘「生天目!?」

比企谷「それも鮮明な映像……本人はここに居るのに……?」

りせ「何が起こってるの!?」


テレビ『お前達に邪魔されたせいだ……』


一同「!?」


里中「……なにそれ。 あたし達の事!?」


テレビ『だが……俺はこれからも救済を続ける』

テレビ『今回は失敗に終わったが、法律は俺を裁けない……』

テレビ『どうせすぐに釈放されるからな!!』


一同「!!」

生天目「!?」


テレビ『ふふふ……誰も俺を止められない』

テレビ『止めようとしても無駄だ。 俺は何度でも繰り返して救済するのだから』

テレビ『それでも止めたいのなら好きにすればいい』

テレビ『ふふふ……は―――っはっはっはっ……!』


     ブツンッ!


一同「…………」


比企谷「……好きにしろ」

比企谷「か……」


生天目「ひ、ひいっ!」


白鐘「……それにしても意外でした」

白鐘「生天目の病室に こんな大きなサイズのテレビがあったなんて……」

白鐘「大人でも……充分入れそうですよね」


生天目「!!」


里中「ちょっ……ちょっと待って」

里中「それって……!?」


白鐘「生天目は逃げようとしてましたし……」

白鐘「行方不明になっても不思議はありませんよ」

天城「し、白鐘くん! 何を言ってるのかわかってるの!?」

雪ノ下「あなたこそわかっているのかしら? 天城さん」

天城「え……?」

雪ノ下「今、【マヨナカテレビ】の生天目が言ってたわ」

雪ノ下「『法律は俺を裁けない』と……」

天城「そ、それは……」

雪ノ下「実際その通りよ」

雪ノ下「テレビに入れて殺しました……何て供述」

雪ノ下「どうやって裁くのかしら?」

天城「…………」


りせ「で、でも……! だからって……」

白鐘「考え方を変えればいいんですよ」

白鐘「僕たちは生天目を殺すわけじゃない」

白鐘「テレビに入れるだけ……それだけです」

白鐘「後は彼次第にすぎません。 自分の【シャドウ】に殺されるかどうかは、ね……」

りせ「だけど……あそこからは、自力で出られないんだし」

りせ「結果は同じじゃない!!」


生天目「う、うわあああっ」 ダダッ!


     ガシッ!


比企谷「…………」


生天目「や、やめてくれぇ……」


里中「ひ、比企谷くんっ……」

天城「いくら何でもやりすぎだよっ! こんなのっ!」

雪ノ下「……そう思うのなら」

雪ノ下「ここから出て行きなさい」

りせ「!?」

雪ノ下「かかわり合いになりたくないのなら、今の内よ」

雪ノ下「早く病室から去るといいわ」

白鐘「それに時間もありませんしね」

白鐘「これは花村先輩が連行される事で出来た、貴重な時間です」

白鐘「チャンスは今しかない」


生天目「ち、違うんだぁぁ……!」

生天目「さっきの……テレビが言ってた事は……」

生天目「でたらめなんだぁぁ……!」


里中「チャ、チャンスとか、そんな事を言いたいんじゃなくて!」

天城「こんなの……やり方としておかしいって言いたいの!」

りせ「お願い、比企谷先輩!」

りせ「考え直して!」


比企谷「…………」

     ズル ズル ズル…

生天目「僕はただ……救いたかっただけなんだぁぁ……」

生天目「出来る事をやっていただけなんだぁぁ……」


比企谷「…………」



     ……ざけんな

     何が救うだ。 お前のせいで由比ヶ浜は……!



     俺を好きだと言ってくれた由比ヶ浜はっ……!

     由比ケ浜はっ!!



比企谷「……っ」 ギリッ!






??「……本当にそれでいいのか?」





比企谷「!?」

白鐘「……あなたは」

雪ノ下「鳴上……くん」


鳴上「もう一度言う」

鳴上「本当にそれでいいのか?」


比企谷「…………」


白鐘「部外者は黙っててください」

鳴上「それは否定しない。 だが……」

鳴上「だからこそ、今の君たちは」



鳴上「弱った病人を寄ってたかって嬲(なぶ)っている様にしか見えない」



比企谷「…………」

白鐘「……比企谷先輩、気にする事はありません」

白鐘「たとえ見られたとしても、誰も彼の話を信じないでしょう」

白鐘「与太話で済まされる問題です」

雪ノ下「その通りよ、比企谷くん」

雪ノ下「そして迷っている時間はもう無いわ」


比企谷「…………」

比企谷「…………」



     ――本当にこれでいいのかい?――



比企谷「……生天目」


生天目「……はあ……はあ……?」


比企谷「お前は……由比ヶ浜を」

比企谷「いや、他の被害者も含め、本当の意味で救おうとしたのか?」


生天目「あ、ああ! その通りだっ……」


比企谷「…………」









     ――何かが――

     ――引っかかっているんだろう?――






>>583修正↓









     ――何かが――

     ――引っかかっているんだろう?――









比企谷「……っ!」

     パッ……ドサッ……

生天目「ぐっ……はああああ……」


白鐘「!?」

雪ノ下「比企谷くん、何をしているの!?」

白鐘「今しか無いんですよ!?」

比企谷「……落ち着け、二人共」

白鐘「!」

雪ノ下「!」

比企谷「今の俺たちは……冷静じゃない」

比企谷「いや、冷静になれない」


一同「…………」


比企谷「少し時間を置いた方がいい……」

比企谷「その上で、生天目に話を聞くのが、一番いいと思う」


里中「うん……あたし、その意見に賛成」

天城「そうだよ、それでこそ比企谷くんだよ」

雪ノ下「……!」

りせ「よくよく考えたら……生天目に動機とか聞いてないもんね」

白鐘「……!」

比企谷「…………」

比企谷「……これでいいか? 鳴上…さん」

鳴上「…………」

鳴上「そういえば……俺は何をしにここへ来たんだ?」

比企谷「は?」


―――――――――――


深夜

ひと気の無い待合室


比企谷「……花村の事でしたか」

鳴上「ええ」

鳴上「俺は騒ぎを聞いて、それを伯父さんに伝えて」

鳴上「伯父さん、警官を説得して彼を自宅に返すよう指示したそうです」

鳴上「俺はそれを伝えにあそこへ……」

比企谷「そうだったんですか」

比企谷「堂島さんに後でお礼を言っておかないと……」

比企谷「わざわざすみませんでした」

鳴上「いえ」


鳴上「それじゃ……俺はこれで」

比企谷「はい。 お疲れ様でした」

     テク テク テク…

比企谷「…………」

比企谷「じゃ……俺たちも帰ろう」

比企谷「いろいろあって疲れた……ゆっくり休んでくれ」


一同「…………」


里中「そうだね……確かに疲れたじゃん」

天城「うん……」

りせ「そういやクマ。 ずいぶん静かだけど、どうしたの?」



     シーン……


雪ノ下「……え?」

里中「あれ?」

天城「クマくんが……居ない!?」

りせ「いつから居なくなってたの!?」

白鐘「ともかく、探してみましょう」

比企谷「だな」


―――――――――――


雪ノ下「居た?」

里中「ダメ……由比ヶ浜さんの病室にも居なかった」

りせ「どこに行ったのよ……クマ」


白鐘「先に帰ったんでしょうか?」

比企谷「その可能性はあるな……」 ピッピッピッ…

比企谷「……だめか。 花村のケータイ、通じねぇ」

天城「そう……」

比企谷「…………」

比企谷「みんな、もう遅い。 今日はここまでにしよう」

比企谷「クマの事は心配だが……花村も もう休んだのかもしれん」

比企谷「明日にしよう……」


一同「…………」


りせ「ううー! 寒い寒いっ!」

天城「外……こんなに冷え込んでたんだ」

里中「もうすっかり冬だね……」



ガスマスク男「霧がー! これは毒だー! 逃げろー!!」

一同「…………」



雪ノ下「…………」

雪ノ下「……あ」

白鐘「降ってきましたね……雪」

白鐘「通りで冷える訳です……」

里中「…………」

里中「それじゃ……行こ、雪子」

天城「うん、千枝。 じゃまた明日……」


りせ「…………」

りせ「……それじゃあたしも帰ります」

りせ「また明日……」

     タッ タッ タッ…

白鐘「…………」

白鐘「あの、比企谷先輩……」

比企谷「……ん?」

白鐘「…………」

白鐘「また今度、どこかで暖かいものでも食べませんか?」

比企谷「……そうだな。 考えとく」

白鐘「…………」

白鐘「では、楽しみにしておきます」

白鐘「お休みなさい……」


     スタ スタ スタ…

比企谷「…………」

雪ノ下「…………」

雪ノ下「……それじゃ、比企谷くん」

比企谷「ああ……また明日な」

雪ノ下「……ええ」

     テク テク テク…

比企谷「…………」

比企谷「…………」

     テク テク テク…



―――――――――――


????


     キュム キュム キュム…

クマ「ここは……どこクマ?」

     キュム キュム キュム…

クマ「…………」

クマ「クマは……どうしてこんな所に?」

クマ「…………」

クマ「まるで……あの時みたいクマ……」

     キュム キュム キュム…

クマ「……あの時?」

クマ「!!」


クマ「…………」

クマ「……思い出したクマ」

クマ「クマは……クマは……」

クマ「…………」

クマ「は……ははは……」

クマ「滑稽クマ……どうしてこんな事、今思い出したクマ……」

クマ「…………」

クマ「ごめんね……ユイちゃん、みんな……センセイ……」

クマ「もう……クマは……みんなと一緒に居られないクマ……」

クマ「…………」







     さようなら……みんな……

     さようなら……












                                    ……トクン



―――――――――――


鮫川河川敷公園


比企谷「…………」

比企谷(……もし)

比企谷(鳴上があの時来なければ……)

比企谷(俺は……どうしていた?)

比企谷(…………)

比企谷(いや……たとえ鳴上が何か言おうとも)

比企谷(生天目をテレビに放り込むべきじゃなかったのか……)

比企谷(…………)

比企谷(俺は……)


比企谷(…………)



由比ヶ浜「一昨日から、天城屋自慢の『美人の湯』に入り続けてるの!」

由比ヶ浜「だから、結構綺麗になったでしょ?」



比企谷(…………)



由比ヶ浜「来年の今頃は……きっとまた元通りだよね?」

由比ヶ浜「来年の春、二人とも総武高校に帰ってきて、あの部室で」

由比ヶ浜「ゆきのんがいて、ヒッキーがいて」

由比ヶ浜「そして、私がいて……」


比企谷(…………)



由比ヶ浜「うわあ……! ヒッキーに美人さんだって褒められた!」

由比ヶ浜「ね、ね! もう一回、言ってよ! ヒッキー!」



比企谷(…………)



由比ヶ浜「でさ! もうびっくりだよ!」

由比ヶ浜「まさかヒッキーの学校が修学旅行でここに来るなんて!」

由比ヶ浜「えへへー。 それにしてもここ、変わってないでしょ?」

由比ヶ浜「今すぐにでも部活動できる気がしない?」


比企谷(…………)



由比ヶ浜「心配してくれてありがとう」

由比ヶ浜「じゃ、この話はもうおしまい!」

由比ヶ浜「天気もいいし、どっか遊びに行こうよ! 三人で!」



比企谷(…………)



司会「ところで、アピールしたい人って誰なのかな?」

由比ヶ浜「ま、まあ、とても鈍い人、とだけ言っておきます」///


比企谷(…………)



由比ヶ浜「ヒッキーにこんな自分を……見せたくなかった……!」

由比ヶ浜「私……ぐすっ……ヒッキーには……」

由比ヶ浜「綺麗な……うぐっ……自分を……見ていて欲しかった……」

由比ヶ浜「それだけ……ひっく……それだけ……だったの……」



比企谷(……っ)



由比ヶ浜「私……ヒッキーの事……好きだよ……」

由比ヶ浜「えへへ……やっと……言えた……」

由比ヶ浜「気持ち……伝えられた……嬉しい……」








     サクッ サクッ サクッ…







比企谷「……!」

比企谷「雪ノ下……」



     いつの間にか……少し積もっていた雪で

     彼女の足音に俺は気がついた。



雪ノ下「…………」

比企谷「…………」



     どうしてここに? 何をしに?

     いくつか疑問が浮かんだが……俺は、それを口にしなかった。



雪ノ下「…………」

比企谷「…………」

比企谷「……なあ、雪ノ下」

雪ノ下「……うん」

比企谷「あの時……テレビの世界での由比ヶ浜」

雪ノ下「うん」

比企谷「俺……初めて由比ヶ浜の泣き顔を見た」

雪ノ下「…………」

比企谷「それまで……俺は由比ヶ浜って、笑ってる所しか思い出せなくて」

比企谷「いつもニコニコしてて、笑顔しか出来ないのか?とか思ったりもした」

雪ノ下「…………」

比企谷「…………」


比企谷「……そんな訳ないよな」

比企谷「あいつがどうして いつも笑っていたのか……結局わからなくて」

比企谷「わからないままに……なって……」

雪ノ下「…………」

比企谷「初めて見た泣き顔は……俺が……原因、で……」

比企谷「なのに……あいつ……ぐくっ……俺を……こんな俺を……っ」

雪ノ下「……っ」

比企谷「……もう……ぐっ……謝る……こ、と……も……ひぐっ……」

比企谷「できなく……なって……ぐっ……」

雪ノ下「…………」

比企谷「俺……ぐっ……俺は……ひぎっ……俺はっ……!」

比企谷「……うぐっ……ぐっ……はっ……っ……あぐっ……」



     ギュッ……


比企谷「……ひぐっ……うっ……うぐっ……ぎっ……ぐっ……」

雪ノ下「…………」


     ……こんなのは

     こんなやり方は、ずるいと思う


雪ノ下「…………」


     由比ヶ浜さんが居なくなって……そんな際に出来た

     比企谷くんの心の穴を、隙を、埋めるみたいな行動……


雪ノ下「…………」










     でも















     こんな状況の比企谷くんを……放っておけなかった

     支えてあげたかった

     抱きしめてあげたかった

     温めてあげたかった














     ひとりに……しておきたくなかった……










―――――――――――


翌日の午前中

足立宅



比企谷「…………」

比企谷(……もう昼前かよ)

比企谷(…………)

比企谷(足立さん……俺を起こさなかったのか)

比企谷(…………)

     ガラッ…

比企谷「……ん? 書置きがある」





     比企谷くんへ

おはよう、比企谷くん。

事情は堂島さんから聞いたよ。 大変だったね……。

深夜に帰って来たし、疲れていると思ったから起こさないでおいた。

何なら今日は、学校休んでもいいと思う。

今は、ゆっくりした方がいいよ。 うん。

今夜は僕が食事を作るからね。 それじゃ、行ってきます。

     足立




比企谷「…………」

比企谷(……学校……か)

比企谷(…………)

比企谷(花村やクマの事もある)

比企谷(行かないとな)


―――――――――――


昼休み

教室


比企谷「……おそよう」

里中「! 比企谷くん……」


花村「比企谷……」

天城「比企谷くん……」

雪ノ下「何かしら、その挨拶」


一同「……え?」


雪ノ下「もしかして、『おはよう』のお昼バージョンとかいう」

雪ノ下「程度の低いボキャブラリーじゃないでしょうね?」

比企谷「…………」

比企谷「……何でいきなり俺は批判されてるんだよ?」

雪ノ下「あなたが、くだらない事を言うからに決まってるでしょう?」

比企谷「否定はしないがな……暗い気分を何とかしようと軽くボケただけで」

雪ノ下「だったら、スワヒリ語とかで挨拶した方が面白いと思うわ」


里中(…………)

天城(…………)

花村(…………)


比企谷「……っとすまん、みんな」

里中「え? い、いや、そんな事ないじゃん?」

天城「ちょっと驚いたけどね」

天城(いつも通りすぎて……)

花村(……立ち直り早すぎだろ)

比企谷「今、話せるか? 花村?」


花村「あ、ああ。 クマの事だな?」

花村「けど……その前に謝っとくわ」

花村「心配かけて悪かった……」

比企谷「…………」

比企谷「もういいさ。 それにあれは俺よりも鳴上…さんや堂島さんに」

比企谷「礼を言った方がいいと思う」

花村「その辺は里中達から聞いた。 放課後、病院に行って堂島さんに会うつもりだ」

比企谷「そうか……」

花村「じゃ、クマの事だが……結論から言う」

花村「完全に行方不明状態だ」

比企谷「!?」

花村「俺の家に戻った形跡はない」

花村「ここのところ少し様子がおかしかったし……由比ヶ浜さんの事、ショックで」

花村「あの世界に帰っちまったのかもしれねぇ」


比企谷「……ありえるな」

比企谷「だが……もしあの世界に帰っていなかったら、少し困った状況だな」

里中「と言うと?」

比企谷「あの世界……自由に行き来 できないかもしれん」


一同「!!」


里中「そうだった……あの世界から帰る出入り口出せるの」

里中「クマくんだけだもんね……」

天城「いつでも使えるようにって、出しっぱなしには してくれてるでしょ?」

花村「まあな。 けど、どんなイレギュラーがあるか、分かったもんじゃねぇ……」

花村「おいそれとは、行きにくいな」


比企谷「ともかく、クマは大事な仲間だ」

比企谷「必ず探し出す」


一同「……!?」

一同(比企谷(くん)が……『仲間』って言った!?)


比企谷「……どうした?」

里中「ん!? い、いや、何でもございません事ですよ!?」

比企谷「……馬鹿にしてるのか?」

天城「そ、それより、お昼どうする?」

花村「そういや、もうこんな時間か。 俺は購買のパン、買ってく」

     ドンッ!!

雪ノ下「……比企谷くん」

比企谷「……何でしょう。 雪ノ下さん」


雪ノ下「お、お弁当……作りすぎてね(棒)」///

雪ノ下「捨てるのも、もったいないし(棒)」///

雪ノ下「よ、よよよ、良かったら……いるかしら?(棒)」///


里中(何この大きな重箱……)

花村(……どう見ても作りすぎってレベルじゃねーだろ)

天城(今朝、厨房(ちゅうぼう:台所の事)で何かしてると思ったら……)

天城(昨夜、私より遅く帰ってきて、ほとんど寝てないハズなのに)


比企谷「…………」

比企谷「……そうだな」

比企谷「ありがたく貰おう」


雪ノ下「!!」///

雪ノ下「そ、そう……」///

雪ノ下「良かった……」///


里中(えええええええっ!? 比企谷くん、いつものツッコミは無しなの!?)

花村(おいおいおいっ!? こんなデレッデレな雪ノ下さん、初めて見るんですけど!?)

天城(雪ノ下さん……可愛い……)


雪ノ下「じゃ、広げるわね」

比企谷「ああ。 そうだ、せめてお茶くらいは用意しよう」

雪ノ下「それもここにあるわ」

比企谷「至れり尽くせり、だな……」



     ピピピッ……ピピピッ……


比企谷「っと、すまん。 電源を切り忘れてたか……」 ピッ

比企谷「はい、比企谷です」

比企谷「…………」

比企谷「ああ、足立さん。 今朝はどうも」

比企谷「それで? どうしたんですか?」

比企谷「……はい……はい」

比企谷「…………」

比企谷「!!!!!!!!」

比企谷「ほ、本当なんですか!? それ!?」


雪ノ下「比企谷くん?」

花村「どうしたんだ?」

里中「足立って……比企谷くんの保護者の刑事さんだよね?」

天城「すごく驚いたみたいだけど……何かあったのかな?」


―――――――――――






     ――ああ、僕も驚いたよ――

     ――こんな事ってあるんだねぇ――





比企谷「タクシー!!」

比企谷「ちっ……! 乗ってやがったか!」






     ――たまたま仕事の報告をしに病院に行って――

     ――堂島さんから聞いたんだよ――





雪ノ下「比企谷くん、こっち! 捕まえたわ!」

比企谷「!! よし!」






     ――堂島さん、早く君に知らせてやれって言ってね――

     ――もちろん言われなくてもするつもりだったけどさ――





比企谷「八十稲羽総合病院までお願いします!」

花村「それも超特急で!」






     ――良かったね、比企谷くん――

     ――できるだけ早く会いに行ってあげなよ?――





比企谷(早く……早く……!!)

里中「ちょっとは落ち着くじゃん? 比企谷くん……」

天城「こればっかりはしょうがないよ、千枝」






     ――きっと――

     ――首を長くして待っていると思うから――





比企谷「着いたっ!」

     ダダッ!!

雪ノ下「運転手さんありがとう。 これで……」つ金カード

雪ノ下「……え? 使えない!?」







     ――由比ヶ浜さん――






比企谷(由比ヶ浜っ!)

看護師「! 廊下を走っちゃダメ!!」

白鐘「す、すみません!」

りせ「お小言は後で聞きますから!」


由比ヶ浜の病室


比企谷「はあっはあっ……!」

     ガララッ

比企谷「ゆ、由比ヶ浜っ……!」


     ピッ     ピッ     ピッ…


比企谷「!!」

比企谷「由比…ヶ浜……っ!」






     心地よいリズムで心臓の鼓動を示す電子音……

     酸素吸入器越しに聞こえるぐぐもった呼吸の音……

     由比ケ浜が……生きている事をしっかりと伝えていた……!





比企谷「…………」

比企谷「……っ」

比企谷「……うっ……ううううっ……ああっ……っ!」

比企谷「由比…ヶ浜ぁ……ぐっ……良かった……ぐくっ……」

比企谷「心配……がげさせっ…やがっでぇ……!」


花村「生きてる……生きてるぞ……! 由比ヶ浜さんっ!」

花村「ぐっ……よ……良かった……あぐっ……良かった……!!」

りせ「こんな事って……あるんだね……っ」

りせ「良かった……本当に……良がっだぁ……ひっく……」

天城「夢じゃないよね……っ! 現実だよねっ……千枝……」

里中「うんっ……! 現実じゃん……! 生きてるじゃん……由比ヶ浜さんっ!」

白鐘「まったく……こんな一大事な時に………ぐっ………」

白鐘「どこに……行ったんですかっ……うっ……クマくん……っ!」

雪ノ下「……由比ヶ浜さん……良かった……っ……」

雪ノ下「もし……また勝手に……ぐっ……居なくなったら……」

雪ノ下「絶交……するんだからっ……ひっく……」


看護師「良かったね……みんな」

看護師「きっと、みんなの思いが通じたんだと思う」

看護師「彼女が生きている事を見つけたのは、ご両親だけど……」

看護師「キッカケはね、由比ヶ浜さんの胸に置かれた千羽鶴だったのよ」

比企谷「……え?」

看護師「ご両親……千羽鶴がね、微妙に動いているのに気がついて」

看護師「それで確かめてみたら、心臓が動いてる事がわかったって言ってたわ」

比企谷「!!」

看護師「あれが無かったらどうなっていた事か……」

看護師「由比ヶ浜さんのご両親、今は疲れて仮眠室で眠ってるけど」

看護師「君たちに会って、ぜひ、お礼を言いたいって言ってたわよ」

比企谷「そうですか……」





     ともあれ由比ヶ浜は無事だった。

     さらに驚くべき事に、短い時間だが意識も戻ったらしく

     言葉も少し交わし、しかも容態は以前より安定しているとの事。



     医者も首をかしげている状態で、詳しい検査をしないといけないが

     後遺症も無く治るかもしれないそうだ……本当に良かった。







     この後、花村と一緒に会う堂島さんに……

     いや、堂島さんだけじゃなく

     菜々子ちゃんや鳴上さんにもお礼を言わないといけないな。



     由比ヶ浜が生き返ったのは、『奇跡』なのかもしれない。

     けど……『生きている』のは……上手く言えないが

     由比ヶ浜を想う、いろんな人の気持ちがあったからだ……と












     俺は柄にもなく、そう思った。








今日はここまでです。
番長はいかがだったでしょうか?思いつきで絡ませた割には上手くいったかなぁ……
と、本人自画自賛しております。気に入っていただければ幸いです。

それと書きながら、ヒッキーこんなに泣くかな……?とか思いつつも
アニメですごい好きなシーン(アニメでは花村と番長)だったので、こうしました。
あしからずです。

それでは、また。

よかった…よかった!

良かった!良かったよ!

乙!

自画自賛しないとSSなんて書けないからね、凄いと思うよ

泣いた

保守

最高だ!



―――――――――――


宵の口

病院の待合室


比企谷「ふう……疲れた」

里中「そろそろお腹すいてきたね……」

天城「そうだね、千枝」

花村「由比ヶ浜さんのご両親……すげぇ喜び様だったな」

白鐘「あそこまで感謝されると、少々恥ずかしくもなりますけどね……」///

りせ「でも、本当に良かった……由比ヶ浜さん生き返って」

雪ノ下「ええ……」

比企谷「…………」


比企谷「……よし」

比企谷「いい具合に頭も冷えただろう」

比企谷「ここいらで事件の事について話さないか?」

天城「そうだね。 それがいいかも」

里中「事件か……でも犯人は生天目で決まりなんでしょ?」

白鐘「ええ、警察はそういう方向で進めているみたいです。 が……」

白鐘「僕も色々と調べてみたんですが、最初の二件」

白鐘「山野真由美と小西早紀の殺害。 やはり彼のアリバイは崩せそうにありません」

白鐘「供述に何ら不自然さはなく、何よりも動機がない」

雪ノ下「……不倫がバレそうになって、殺した、とかじゃないの?」

白鐘「事件当時、生天目は本妻の柊みすずとの仲は冷え切ってて」

白鐘「何よりも山野アナとの事は、もう彼女にバレていました」


白鐘「言葉は悪いですが……この場合、本妻を殺す方が自然です」

花村「人殺しを『救済』なんて言ってる奴だぜ?」

花村「これなら、動機として十分だろ」

白鐘「その可能性は僕も考えました」

白鐘「しかしそれだと、二件目の小西早紀以降の動機としては不自然です」

りせ「山野アナを好きで殺した……『救済』したなら」

りせ「【マヨナカテレビ】に映っただけの人物を『救済』するのは、無理があるよね」

花村「だったら最初は殺すつもりじゃなく、テレビに入れただけかもな」

白鐘「それだと尚の事おかしくなります」

白鐘「好きな人を実験台に……という事ですし、確実性がありません」

比企谷「……生天目には、山野アナを殺す動機が極めて薄いって事か」


白鐘「しかし……生天目の日記には、二件の被害者の名前と住所が書かれていました」

白鐘「一体どういう事なのか……」

花村「だぁ~もう! こんがらがってきた!」

雪ノ下「何か……何か見落としてないかしら?」

白鐘「そうですね……後は」

白鐘「比企谷先輩に送りつけられた警告状くらいですか」

里中「ああ、あったね。 そういうの」

天城「結構前の話だよね?」

りせ「どんな内容だったけ?」

白鐘「一通目は、カタカナで”これ以上助けるな”……」

白鐘「二通目は……」


里中「ん?」

雪ノ下「二通目?」

天城「二通目なんてあったの?」

白鐘・花村・比企谷「……あ」

―――――――――――

雪ノ下「……まったく」

白鐘「……すみません」

比企谷「悪かった……由比ヶ浜がさらわれた当日で、慌ただしかったんでな……」

花村「由比ヶ浜さんが帰ってから……という話だったんだよ」

里中「まあそれは、肉丼でも奢ってもらって忘れてあげるじゃん」

花村「確定かよ! 何もなしで忘れてくれよ!」

天城「それで? どんな内容だったの?」


白鐘「は、はい。 二通目は」

白鐘「これも一通目同様カタカナで」

白鐘「”今度こそ止めないと、大事な人が入れられて殺されるよ”です」

比企谷「!!」

比企谷「……おかしいぞ、白鐘」

白鐘「え?」

比企谷「殺害を『救済』と言ってる人物が」

比企谷「『殺される』なんて警告状に書くか?」

白鐘「!」

雪ノ下「もう一つおかしいわ」


雪ノ下「どうして『殺されるよ』なの?」

雪ノ下「犯人の立場なら、入れて『殺すよ』じゃないの?」



一同「!!」


里中「……まさか」

天城「これって……」

白鐘「……久保美津雄の事件以外は、すべて同一犯だと思い込んでいました」

白鐘「しかし……最初の二件」

白鐘「別の誰かがやっているとしたら……!」

比企谷「…………」


比企谷(…………)

比企谷(俺は、これにずっと引っ掛かっていたのだろうか?)

比企谷(それにしても……犯人はいったい誰なんだ?)


白鐘(…………)

白鐘(……まさか)


比企谷「……?」

比企谷「どうした? 白鐘?」

白鐘「!」

白鐘「い、いえ。 何でもありません」

比企谷「?」

白鐘「それよりも、これはいよいよ生天目から事情を聞く必要が出てきました」

花村「だな」

花村「堂島さんに頼んでみるか?」

白鐘「……正直、あまり期待できないと思いますが」

白鐘「一応相談だけはしてみましょう」



―――――――――――


????


イゴール「……ようこそ、ベルベット・ルームへ」

イゴール「いかがお過ごしですかな?」

イゴール「…………」

イゴール「……左様にございますか」

イゴール「お客様との旅路も随分と長くなってまいりましたが」

イゴール「この見通しの効かない霧の中で」

イゴール「同じ方向に向かおうとする お仲間もお持ちの様でございますな」

イゴール「さて……」

イゴール「正直なところ、謎は解けそうでございますか?」

イゴール「…………」


イゴール「ほお……」

イゴール「…………」

イゴール「なる程……」

イゴール「一応の進展はあったが、新たな謎が……ふむ」

マーガレット「霧はその濃さを増し、見えていた道すらも覆い隠す……」

マーガレット「困難の度合いが、さらに加速したみたいです」

イゴール「……いかがでしょう? お客様」

イゴール「これまでは前を向き、前ばかりを見てまいりましたが」

イゴール「ここは一度、立ち止まって」

イゴール「過去を振り返ってみるのも一案ではございませぬかな?」

イゴール「……む?」



     ロロロロロッ……… キキィッ


マーガレット「ただいま、進行方向を確認中です」

マーガレット「しばらく、この場にて停車いたします」

イゴール「ほう……」

イゴール「まさかこの様な事になるとは……」

イゴール「これはやはり、一度振り返るべき……なのやもしれませぬな」

イゴール「…………」

イゴール「いずれにしてもお客様に残された時間は」

イゴール「だいぶ少なくなってまいりました」

イゴール「その事だけは、お忘れなき様、お願いいたします……」


イゴール「…………」

イゴール「ふふふ……そろそろお目覚めの時刻にございますな」

イゴール「それでは、いずれまた」

イゴール「夢の中にて、お会い致しましょう……」

マーガレット「またね。 お客様」

マーガレット「ふふふ……」



―――――――――――


翌日 休日の午前中

生天目の病室前


白鐘「……意外でしたね」

比企谷「……俺もそう思う」

花村「誰かさんと同じで、素直じゃなかったけどな」

比企谷「言われてるぞ、雪ノ下」

雪ノ下「……前にもこういうやり取り、あった気がする」

りせ「デジャヴってやつ?」

里中「それはいいから早く入ろうじゃん?」

天城「そうだよ。 堂島さん、せっかく警備の隙を教えてくれたんだし」

比企谷「そうだな。 時間は限られてる」

比企谷「入るぞ」


生天目の病室


生天目「!!」

生天目「き、君たちは……!」

白鐘「落ち着いてください、生天目さん」

白鐘「先日は失礼しました……僕たちは頭を冷や」


生天目「僕が救ってきた子達だ……」

一同「!?」


雪ノ下「何を言――」

比企谷「落ち着くんだ、雪ノ下」

雪ノ下「…………」


比企谷「生天目…さん」

比企谷「あなたとは、今回で合計三回会っていますが?」

生天目「え!?」

―――――――――――

生天目「……そうか」

生天目「あの世界で僕を追ってきたのも君達だったのか……」

生天目「霧が酷くて顔すらわからなかったんだよ」

天城「時々忘れそうになるけど、クマくんのメガネ無しじゃ仕方ないよね」

里中「二回目はこの病室だけど、暗かったからか……」

比企谷「…………」

比企谷「生天目さん。 改めて言います」

比企谷「話を聞かせてください」


生天目「僕の話を?」

比企谷「ええ」

生天目「……信じてくれるのか?」

比企谷「おそらく、あなたの話を理解できるのは」

比企谷「ここに居る俺達だけだと思います」

生天目「…………」

生天目「…………」

生天目「……わかった。 聞いてくれ」

生天目「僕が最初……この事件に関わったのは」

生天目「真由美の【マヨナカテレビ】を見てからだ……」




     生天目は話し始めた。

     山野アナとの不倫報道で一時的に八十稲羽の実家へと

     身を寄せていた生天目は、前々から噂で知っていた【マヨナカテレビ】を

     酒に酔いながら興味本位で試してみた。



     そこに映し出されたのが山野真由美。



     テレビに入れる事に気がついたのもこの時で、状況としては

     俺に似ている感じだった。

     




     あれは悪い夢だ……そう思いながら実家を後にし

     数日後、議員秘書の退職やらの事務手続きをしている最中に

     彼女の死を知る事になる。



     生天目は物凄いショックを受けたが……

     【マヨナカテレビ】の謎についてふと考える様になり

     それ以降の【マヨナカテレビ】を注視する様になった。



     そして映し出されたのが……

     二人目の被害者となる小西早紀だった。





     生天目は、身の回りに気を付ける様に彼女を説得するが

     小西早紀は聞く耳を持たず……結局、山野アナと同じ運命をたどった。



     なりふり構わず、警察にも相談したが

     やはり相手にしてもらえず……彼は、ある決断を下す。



     そうだ……テレビの中なら、誰にも手出しできない。

     あそこなら安全だ。 ほとぼりが冷めたら出してあげればいい。

     実家の運送業と組み合わせれば、問題なくこなせるはず。

     この力は、その為に備わったのだ……と。




一同「…………」


りせ「じゃあ……本当に救おうとして……」

花村「実際、テレビに入れたら人が死ななくなったんだし」

花村「自分は被害者を救えている、と、思ったってわけか……」

天城「でも、それなら何故、【マヨナカテレビ】に映っていない千枝を?」

生天目「……申し訳ないと思った」

生天目「しかし、彼女は君から離れようとしなかったし」

生天目「場所的にも時間的にも、そして初めてだったから僕の心に余裕が無かった……」


一同「…………」


生天目「だけど……」


生天目「刑事さんに追われて、逃げる為にテレビに入った時」

生天目「自分のやってきた事に……疑問を感じた」

生天目「まさか、自力では出る事すら出来ない場所だったなんて……!」


一同「……」


生天目「……実に滑稽だな」

生天目「無意識でヒーロー気取りだったんだよ、僕は……」

比企谷「…………」

生天目「…………」

生天目「……今更、謝られても困ると思うが、謝らせてくれ」

生天目「すまなかった……」



―――――――――――


待合室


比企谷「……警告状の事も知らない様だったな」

花村「あいつの言葉を信じるならな」

白鐘「状況的にも心情的にも理解できる内容です」

白鐘「正直、歯車がカチリと噛み合った気がしますよ」

花村「…………」

里中「なんか……モヤモヤする」

里中「結局、最初の二人を殺した犯人は誰なの?」

雪ノ下「そうよね……しかも向こうは、こちらの動きを知っている感じだし」

りせ「薄気味悪い……」

白鐘「…………」


比企谷「よし。 今日はここまでにしよう」

比企谷「こうなったら無茶かもしれないが、新しい何かを見つけるしかない」

天城「新しい何か……って、半年以上も前の事件の?」

比企谷「そういう事だな」

花村「目撃者が居たとしても忘れてるんじゃねーのか?」

比企谷「まあ正直、俺もそう思う……が」

比企谷「時には原点に返ってみるのも一つの方法じゃないかと思うんだ」

里中「つまり……どうすればいいの?」

比企谷「聞き込み……くらいしか思いつかないが」

比企谷「他にいい方法があるか?」


雪ノ下「…………」

雪ノ下「……まあ、ベスト、という方法ではないけど」

雪ノ下「やるしかなさそうね……」

花村「まあいいんじゃね? 出来る事が無いよりずっといいと思うぜ!」

里中「ようし。 こうなったら、やれるだけやってみようじゃん!」

天城「うん、千枝」

りせ「ついで、と言ったら可哀想だけど……クマも探してみたいし」

りせ「ちょうどいいかも♪」

比企谷「よし……じゃ、明日から始めよう」

比企谷「それでいいか? 白鐘?」

白鐘「……そうですね」

白鐘「それでいいと思います。 そうしましょう」

雪ノ下「……?」



―――――――――――




足立宅


足立「ただいまー」

比企谷「お帰りなさい、足立さん」

比企谷「夕飯の準備、出来てますよ」

足立「いつもありがとう、比企谷くん。 助かるよ」

足立「おっ、今日は鍋焼きうどんか。 いいねぇ~」

比企谷「こういうのが、美味しい季節になりましたね」


足立「いただきます」

比企谷「いただきます」

     ズルッ… ズルルッ…

足立「アツッ! ハフハフッ……くぅ~! 美味い!」

比企谷「温まりますね」

足立「だね。 それにとってもダシが効いてるよ」

比企谷「ありがとうございます」

足立「そういえば、由比ヶ浜さんどうだった?」

比企谷「看護師さんの話だと、明日にも酸素吸入器がいらなくなるだろうと……」

足立「そうかい……本当に良かったね」

比企谷「ええ……」


足立「こっちもね、ようやく事件解決しそうだし」

足立「この街もやっと元の静かな町になりそうだ」

比企谷「……やっぱり犯人は生天目なんですか?」

足立「ん? ああ、詳しくは言えないけど」

足立「その通りだよ」

比企谷「そうですか……」

足立「後は、この霧……早く無くなるといいんだけどね」

足立「テレビじゃ研究中、調査中、と繰り返すばかりだし」

比企谷「全くですね」


足立「ごちそうさま」

比企谷「ごちそうさまでした」

足立「さて、お腹が膨れたところで、お風呂を沸かそうかな」

比企谷「沸かしてありますよ」

比企谷「どうぞ、先に入ってください」

足立「相変わらず、気が利くねぇ~」

足立「君が女の子だったら、いいお嫁さんになるよ!って褒めるところだ」

比企谷「ははは……」

足立「それじゃ、先に入らせてもらうよ?」

比企谷「どうぞ」

     スタ スタ スタ…

比企谷「…………」

比企谷(やっぱり警察は、そういう方向で進めるつもりか……)

比企谷「ふう……」



―――――――――――


????


     ん?

     ここは……?



     ああ……あれか

     ベルベットルームか





     …………

     イゴールとマーガレットが居ない……



     どういう事だろう?



クマ「…………」

クマ「……?」

クマ「ここは……? どこクマ?」


     クマ?


クマ「!?」

クマ「センセイ!?」


     クマ……どこに行ってたんだ

     みんな心配している


クマ「…………」


クマ「センセイ……」

クマ「クマ、やっと……自分が何者か思い出したクマ」

クマ「クマは……クマは……」



クマ「ただの【シャドウ】だったクマ……」



クマ「…………」

クマ「……ある日」

クマ「一匹の【シャドウ】に意識が芽生えたクマ」

クマ「そいつは一人で居る事に疑問を感じ……寂しくて、悲しくて、考えて」

クマ「可愛い存在になれば、誰か来た時、気に入ってもらえると思って」

クマ「今のクマの外見になったクマ……」


クマ「そして……」

クマ「いつしかクマは【シャドウ】である事を忘れて」

クマ「センセイ達に出会ったクマ……」

クマ「…………」

クマ「……もう、みんなのそばには居られないと思ったクマ」

クマ「クマは……みんなを傷つけてきた【シャドウ】と同じ存在……」

クマ「だから……クマは」

クマ「…………」

クマ「センセイ、みんなによろしく言っといて欲しいクマ」

クマ「ごめんなさいって……」

クマ「今まで騙しててごめんなさいって……」

クマ「ユイちゃんも救えなくて、ごめんなさいって……!」




     …………

     クマ


クマ「…………」


     由比ヶ浜は、生きているぞ


クマ「!?」

クマ「ほ、本当クマ!?」


     ああ……みんなで作った千羽鶴

     お前も手伝って作った、千羽鶴が役に立ってな


クマ「……!!」


クマ「……っ」

クマ「よ……良かった……!」

クマ「良……がっだ、クマ……ぐっ……」

クマ「えっ……えっ……ユイちゃん……ユイちゃん……」

クマ「生きてて……ぐすっ……良がっだぁ……ぐすっ……」

クマ「あああっ……良が……っだ……あああっ……」


―――――――――――


イゴール「……ようこそ、ベルベット・ルームへ」

イゴール「…………」

イゴール「まあ……細かい事はよろしいでしょう」

イゴール「それにしても奇妙な事象でございます……お客様」


イゴール「本来」

イゴール「このベルベット・ルームに【シャドウ】と呼ばれる存在は」

イゴール「入る事が出来ないのでございますが……」

イゴール「あれほどの強き自我……あの【シャドウ】は」

イゴール「【シャドウ】ではない別の『何か』やもしれませぬな」

イゴール「…………」

イゴール「ふふふ……これは失礼」

イゴール「謝罪いたしましょう」

イゴール「…………」

イゴール「ふふふ……ありがとうございます」


イゴール「しかしながら……」

イゴール「これはやはり、お客様の持つ”ワイルド”の力が」

イゴール「大きく関係している可能性がございます」

イゴール「まことに……希少な体験をさせていただいておりまする」

イゴール「…………」

イゴール「ふふふ……そうおっしゃられても答え様がございませぬ」

イゴール「そうでございますな。 お客様風に言うのならば」

イゴール「『企業秘密』という事にございます」

イゴール「…………」

イゴール「ふふふ……結構」


イゴール「おお……そろそろお目覚めの時刻にございますな」

イゴール「今回は慌ただしく、大したおもてなしも出来ず」

イゴール「まことに恐縮でございました」

イゴール「お客様の進む道に光あらん事を……」

イゴール「それでは、いずれまた」

イゴール「夢の中にてお会い致しましょう……」


―――――――――――


翌日 休日の午後

大衆食堂 愛屋


花村「あ~……疲れた」

里中「収穫……無かったじゃん」

天城「あれから随分たってるもの……仕方ないよ」


比企谷「やっぱり時間が経ちすぎてるから無理か……」

雪ノ下「こんなに時間が過ぎてからの新たな目撃情報なんて」

雪ノ下「出る事の方が奇跡と言えるわ」

りせ「後……クマも居ないね」

りせ「どこに行ったのかな……」

白鐘「心配なところですね……」


一同「…………」


白鐘「……ちょっと、外の空気を吸ってきます」

     ガララッ……

花村「白鐘も行き詰まってるみたいだな……」

雪ノ下「…………」


雪ノ下「私もちょっと外の空気を吸ってくるわ」

比企谷「おう」

     ガララッ……

比企谷「…………」

比企谷(そうだ、肉丼、持ち帰りで頼もう)

比企谷「すみません、持ち帰りで肉丼二つお願いします」

     アイヨー

―――――――――――

白鐘「…………」

雪ノ下「……白鐘くん」

白鐘「……雪ノ下先輩」

雪ノ下「…………」


雪ノ下「……単なる私の”カン”なのだけれど」

雪ノ下「もしかしたら」



雪ノ下「犯人に心当たりがあるんじゃないの?」



白鐘「!!」

白鐘「…………」

雪ノ下「…………」

白鐘「……ええ」

雪ノ下「!」

雪ノ下「…………」

白鐘「…………」


雪ノ下「どうして言わないのかしら?」

白鐘「…………」

雪ノ下「……それとも」

雪ノ下「『言えない』のかしら?」

白鐘「…………」

白鐘「……鋭いですね、雪ノ下先輩」

雪ノ下「誰に対して『言えない』の?」

白鐘「…………」

白鐘「……そうですね」

白鐘「このまま抱え込んでいても仕方ありません。 みなさんの前で話す事にします」

白鐘「比企谷先輩を除いた状態で、ですが……」

雪ノ下「!?」


夕方

足立宅


比企谷「ただいまー」

     シーン…

比企谷(足立さん、さすがにまだか)

比企谷(レンジでチンだな、肉丼)

比企谷(…………)

比企谷(……それにしても最後)

比企谷(白鐘と雪ノ下、妙な雰囲気だったが……)

比企谷(…………)

比企谷(考えすぎだな……たぶん)

比企谷(…………)


同時刻

天城屋 雪ノ下の部屋


白鐘「――というのが、僕の考えです」


一同「…………」


里中「う~ん……別に白鐘くんを疑う訳じゃないけど」

天城「意外すぎる人物だよ、それ」

花村「あの人にそれが出来る度胸、ある様には思えねぇけど……」

りせ「それに動機。 殺す理由が無いじゃない」

雪ノ下「…………」


白鐘「……僕も最初、どうかと思いました」

白鐘「しかし、生天目が真犯人でないと確信が持てた事と」

白鐘「今回の振り返ってみての聞き込み捜査で」

白鐘「全ての条件をクリアできるのは彼しか居ない、との結論に至りました」

里中「全ての条件?」

白鐘「今から説明します」

白鐘「まず、僕が一番最初に疑問に思ったのは……」


雪ノ下(…………)

雪ノ下(比企谷くん……)

雪ノ下(どうか、無事でいて……!)



―――――――――――


翌日の朝

教室


里中「おはよう!」

花村「おう、おはよう里中」

天城「おはよう千枝。 今朝は寒かったね」

里中「うん……比企谷くんは?」

花村「まだ来てない」

里中「そう……」

     ガララッ

比企谷「おはよう」

雪ノ下「!」


雪ノ下「比企谷くん……」

比企谷「……?」

里中「ああ、来たね。 比企谷くん」

天城「おはよう、比企谷くん」

花村「おはよう、比企谷」

雪ノ下「……おはよう」

比企谷「お、おう……」

雪ノ下「比企谷くん」

雪ノ下「どうしても話したい事と、やってもらいたい事が出来たの」

雪ノ下「詳しくは昼休み、屋上で話すわ」

比企谷「…………」


昼休み

屋上


比企谷「」

比企谷「なっ――」

雪ノ下「落ち着いて、比企谷くん」

雪ノ下「あらかじめ言っておいたけど……あくまで状況的に怪しい、というだけよ」

雪ノ下「確証はないわ」

比企谷「…………」

白鐘「……すみません、比企谷先輩」

白鐘「少し迷ったのですが……彼の疑いを晴らす、という意味も含め」

白鐘「ぜひ、協力してください。 お願いします」

比企谷「…………」


放課後

八十稲羽 総合病院


白鐘「……よりによってここですか」

比企谷「……堂島さんに何か報告があるってさ」

里中「じゃあ、まずは堂島さんの病室?」

天城「妥当なところだね」

雪ノ下「ともかく、行きましょう」

りせ「真犯人と決まったわけじゃないし」

花村「同感。 正直、半信半疑なんだよな……」

比企谷「…………」



―――――――――――


3階フロア付近


里中「堂島さん、居なかったね」

花村「だいぶ動ける様になったんだな」

天城「それにしても……どこに行ったんだろう」

比企谷「…………」

比企谷「もう一度、ケータイ掛けてm」



??「あれぇ? 君たちは?」



一同「!!」


足立「やっぱり比企谷くんと みんなか。 由比ヶ浜さんのお見舞いかい?」

足立「そういえばさっきの電話、何だったの?」

比企谷「…………」

比企谷「足立さん」

比企谷「いくつか聞きたい事があります」

足立「聞きたい事? 何だい?」

比企谷「最初の……山野アナの事件当夜」

比企谷「どこに居ましたか?」

足立「え……?」

比企谷「答えてください、足立さん」


足立「ど、どこって言われても……ええっと」

足立「確か、あの日は……山野アナの警護をって事で」

足立「何人かの警官と一緒に天城屋に居たと思うけど……」

比企谷「…………」

白鐘「では……」

白鐘「第二の被害者、小西早紀さんとの面識はありますか?」

足立「そ、そりゃあるよ。 山野アナの遺体の第一発見者だし……」

足立「事情聴取をした事もあるからね」


一同「…………」


足立「ちょ……ちょっと何なの? この雰囲気……」

足立「僕はこう見えても忙しいんだからね?」

足立「君たちも由比ヶ浜さんのお見舞いなら、さっさと済ませて帰っ」



??「おい、足立」


比企谷「!」

足立「あ、堂島さん……どこに行ってたんですか」

足立「さっきから探していたんですよ?」

堂島「ん? またお前らか……まあいい」

堂島「それよりも足立、生天目はどこに行った?」

堂島「ヤツにはまだ聞きたい事がある」

足立「その事で報告しようと探してたんですよ」

足立「生天目は搬送しましたんで……」

堂島「なんだと!? どういう事だ!? 誰の命令でそんな事をした!?」

足立「うわっぷ! そ、そんなの上からに決まっているじゃないですか」


足立「生天目、ようやく話せる状態に回復したんですし」

足立「これから立件に向けての判断だと思いますよ?」

堂島「くっ……!」

足立「まだ怪我は治りきってないんですから」

足立「事件の事はしばらく忘れて、安静にしていてください」

堂島「…………」

堂島「……ところで」

堂島「君らは何をしにここへ?」

比企谷「足立さんに話があってここに来ました」

足立「って、さっき答えてあげたでしょ?」

白鐘「まだまだこれからですよ」


白鐘「そうだ、堂島さん」

堂島「ん?」

白鐘「小耳に挟んだのですが、最初、比企谷先輩を疑っていたそうですね?」

堂島「……まあな」

白鐘「これは想像ですが、足立さんに『監視』を頼んだ事はありますか?」

堂島「……痛いとこ突いてくるな」

堂島「だが、その通りだ」

白鐘「いつごろの話ですか?」

堂島「あれは……確か暑くなり始めた頃で……そうだ」

堂島「久慈川りせが この街に来た辺りだと思う」

白鐘「なる程」


白鐘「では、足立さん」

白鐘「この手紙の事は ご存知ですか?」

足立「手紙? いちいち覚えていないよ」

白鐘「そうですか」

白鐘「堂島さんに監視しておく様 言われた」

白鐘「比企谷先輩宛の、しかも封のされていない手紙を手渡しておいて、ですか?」

白鐘「僕だったら、気になって仕方ないですけど?」

足立「…………」

白鐘「それから……」

白鐘「この手紙、比企谷先輩の依頼を受けて」

白鐘「お祖父様のツテで鑑識作業をした結果」

白鐘「僕と比企谷先輩、それにあなたの指紋が検出されました」


足立「お、おいおい……」

足立「それはやりすぎだと思うんだけど……」

花村「……横からすまん」

花村「それのどこがおかしいんだ?」

花村「足立さんが手渡したなら、別に不自然じゃ無いだろ?」

白鐘「『中身』に付着していても……ですか?」

花村「!?」

堂島「……どうなんだ? 足立?」

足立「…………」

足立「……わかりました、白状します」

足立「ああ、確かに僕はその手紙の『中身』に『触れた』よ」



一同「!」


足立「でも誓って内容は読んでいない」

足立「そりゃ気にはなったけど……ギリギリのところで踏みとどまったんだ」

足立「堂島さんには申し訳ないけど、やっぱり比企谷くんに悪いと思ってね」

一同「…………」

白鐘「……なる程」

白鐘「確かに筋は通ってますね」

足立「ははは……疑いは晴れたかい?」

足立「じゃ、僕はもう行くよ?」

白鐘「待ってください。 手紙に関しては、まだあります」

足立「もう勘弁してよ……」


白鐘「足立さん……あなたはこの手紙を」

白鐘「どこで手に入れましたか?」

足立「どこって……」

足立「そんなの郵便受けからに決まってるじゃないか」

白鐘「……それは本当ですか?」

足立「嘘なんかつかないよ」

白鐘「そうですか……」

白鐘「でもそうなると、おかしいですね」

足立「何がさ?」

白鐘「この手紙……『キレイ』なんですよ」

足立「……は?」


白鐘「その事に気がついたのは、つい最近なんですがね」

白鐘「足立さんのアパートの郵便受け、蓋の部分、少し錆びてるんですよ」

足立「……!」

白鐘「実験もしてみました」

白鐘「これと同じ封筒が投函されたらどうなるか」

白鐘「……その結果がこれです」


一同「……?」


里中「別に汚れてないじゃん?」

白鐘「見た目は確かに」

白鐘「しかし、鑑識の結果はそうじゃありません」

白鐘「この実験に使われた全ての封筒に微量のステンレス材と酸化鉄粉……」

白鐘「つまり『錆』が検出されたんです」


足立「………っ」

白鐘「しかし……この手紙には、それが全く無い」

白鐘「説明してもらえますか? 足立さん」

足立「し、知らない……」

白鐘「そうですか」

白鐘「手紙意外にもあるんですよ? 疑問点は」

足立「……!」

白鐘「僕は久保美津雄の足取りを 結構な時間をかけて調べてきました」

白鐘「すると……」

白鐘「失踪する直前、最後の目撃情報は」

白鐘「八十稲羽警察署なんですよ……足立さん」


足立「…………」

堂島「……どういう事だ? 白鐘」

堂島「久保美津雄に何かあるのか?」

白鐘「……実は、久保美津雄は」


白鐘「一度警察に自首していたんです」


比企谷「!?」

花村「それってマジか!?」

白鐘「ええ」

白鐘「その時、対応した警官は まともに取り合わなかったそうですが……」

白鐘「たまたま近くに居た、若い刑事が『僕が話を聞きます』と言って」

白鐘「彼を連れて行ったそうです」


堂島「……おい、足立」

足立「! ど、堂島さん……」

堂島「黙っていないで答えたらどうだ?」

堂島「俺も興味がある」

足立「し、知りませんよ、僕は……」

雪ノ下「はっきり言いましょうか? 足立さん」

雪ノ下「この事件の真犯人。 あなたなんじゃないですか?」

足立「っ!」


足立「違うっ!」

足立「その警告状の事も、久保美津雄の事も全部生天目の仕業で!」

足立「あいつが、みんな入れて殺したに決まってるっ!!」


一同「!!?」


足立「はあ……はあ……」

堂島「……おい、足立」

堂島「『警告状』って何だ?」

足立「」

堂島「それに『入れた』……? お前、手口について何か知っているのか?」

足立「そ、それは……」

比企谷「……足立さん」

足立「! ひ、比企谷くん……」

比企谷「俺……ずっと何かが引っかかっていましたけど」

比企谷「今、それが何か……やっとわかりました」


比企谷「白鐘が生天目の日記に記されている 被害者の名前を読み上げていった時……」




足立「そりゃすごい。 生天目で決まりだね……」




比企谷「と……言ってましたけど」

比企谷「何が『決まり』なんですか?」

足立「え……」

比企谷「なぜ、疑問が沸かなかったんですか?」

比企谷「久慈川の事で」

足立「っ!」


一同「!」


りせ「……そうよ、あたしが失踪した事。 警察に通報されてないはず!」

足立「…………」

比企谷「あの時……あの時点で」

比企谷「久慈川が一連の事件に関係していると知っているのは、俺たちと……」

比企谷「俺たちを見ていたであろう『何者か』だけです」

比企谷「足立さん……!」

足立「し、知らないっ……僕はそんな事……」

足立「知らないって言ってるだろ!!」

     ダダダッ!

雪ノ下「きゃあっ!」

りせ「ひゃ!」


比企谷「雪ノ下! 久慈川! 大丈夫か!?」

雪ノ下「ええ……」

りせ「大丈夫……」

花村「なんてこった……大当たりかよ!」

堂島「くっ……! 足立の奴……!」

白鐘「堂島さん、彼は僕たちが追います!」

里中「行くよ! 雪子!」

天城「うん! 千枝!」



―――――――――――


空き病室


     ガララッ

花村「はあっはあっ……」

花村「……あれ?」

里中「逃げるなー! ……って?」

天城「居ない?」

りせ「確か……こっちに逃げてきたよね?」

白鐘「……!!」

白鐘「テレビ……」

雪ノ下「……そういう事なのね」

比企谷「…………」




     そこは袋小路の空き病室。

     作りそのものは生天目の病室と同じだが、窓が無い。

     そしてポツンと置かれたテレビ……




     導き出される結論は、一つしかなかった。




今日はここまでです。やばい、このペースだと3スレ目に行くかも……
我ながらもっと上手に端折れないのかなぁ……と思う今日このごろです。
それでは、また。

乙ー

別に3スレになってもいいのよ?


3スレいってもいいんじゃないかな

足立の後にはアレがあるんだから3スレ行けば良いよ(ニッコリ



3スレ目でも一向に構わん!

書きたいだけ書けばいいんじゃ。

もうヒッキーも裏十文字するとこまで書いてくれて良いのよ?

たのしみ~(*´ω`*)

長らくお待たせして申し訳ありません……もう少しお待ちください。
今度の土日くらいには……と思っていますが、必ずできるかは微妙です。
生存報告でした。

ゆっくりでもいいのよ



―――――――――――


由比ヶ浜の病室


     ヒュウウウウウ……

由比ヶ浜「…………」

由比ヶ浜「……?」

由比ヶ浜「……クマくん?」

クマ「ユイちゃん……生きてるクマ……」

クマ「本当に良かった……!」

由比ヶ浜「……クマくん、久しぶり」

由比ヶ浜「元気だった?」

クマ「……うん。 元気クマ……」


由比ヶ浜「良かった……」

由比ヶ浜「全然会いに来てくれないから……嫌われちゃったのかと思った」

クマ「そんな事、ある訳ないクマ!」

由比ヶ浜「うん……そうだよね……クマくんは」

由比ヶ浜「そうでなくっちゃね」 クスッ

クマ「……!」

由比ヶ浜「ヒッキーに聞いたよ……千羽鶴、クマくんも手伝ってくれたんだよね?」

由比ヶ浜「私、すごく嬉しかった……」

由比ヶ浜「ありがとう」

クマ「…………」

由比ヶ浜「……クマくん?」


クマ「! ごめんクマ……ちょっと考え事しちゃってて」

由比ヶ浜「そっか……ふふふ」

クマ「…………」

クマ「クマ……もう行かないと」

由比ヶ浜「うん……わかった」

由比ヶ浜「また、会いに来てね?」

クマ「もちろんクマ!」

     アハハ…

クマ(…………)

クマ(そうクマ……クマは確かに【シャドウ】クマ)

クマ(でも、それがどうしたクマ!)

クマ(クマは……『クマ』クマ!!)

クマ(クマにしか出来ない事は、きっとあるクマ!)


待合室


比企谷「…………」

雪ノ下「……?」

雪ノ下「どうしたの? 比企谷くん?」

比企谷「……何でもない」

白鐘「みなさん、お待たせしました」

花村「堂島さん、何か言ってたか?」

白鐘「こちらが言うまでもなく、すでに行動されてました」

白鐘「この街を検問封鎖するつもりの様です……が」

里中「が?」

白鐘「容疑者が刑事、という事でなかなか上手くいってないみたいです」



一同「…………」


花村「やれやれ……警察は身内に甘いって聞くけど」

花村「こんな形で、知る事になるなんてな……」

白鐘「そのおかげでこちらも助かっている側面があるので」

白鐘「痛し痒しですね……」

天城「ともかく、私達がやる事は一つだよね?」

白鐘「ええ」

白鐘「あの世界に行って、足立さんの身柄を確保する。 それだけです」

白鐘「ただ……その前に」

比企谷「クマを見つけないとな」

白鐘「ええ、その通りです。 比企谷先輩」


花村「だな」

花村「問題は、どこを探せばいいか……」

花村「確か、この病院で居なくなったんだよな?」

比企谷「ああ。 居なくなった当日はもちろん」

比企谷「由比ヶ浜の見舞いの度、聞き込みをしたりもしたが……」

雪ノ下「結局……見つからなかった」

りせ「……クマ、どこに行ったのよ」


??「……あのー」


一同「……え!?」


比企谷「クマ!」


花村「ちょ……今、お前の事話してたっつーの!」

花村「どこほっつき歩いてたんだ!」

クマ「ご、ごめん……クマ」

りせ「バカ! 凄く心配したんだから!」

りせ「あたし達に黙って居なくならないでよ!」

里中「まったく、尺の都合みたく、ひょっこり帰ってきてくれちゃって」

天城「千枝……メタな発言は……ね?」

比企谷「お帰り、クマ」

比企谷「待ってたぞ」

クマ「! センセイ……」

クマ「…………」

クマ「みんな心配かけてごめんクマ」


クマ「でも……ひとつ、言わないといけない事があるクマ」

雪ノ下「言わないといけない事?」


―――――――――――


クマ「――って事で」

クマ「クマは……【シャドウ】だったクマ」

里中「へえ……そうだったんだ」

花村「……で?」

花村「【シャドウ】だと何か問題あるのか?」

クマ「へ?」

天城「まあ正直言うと……クマくんのがらんどうとか見てるし」

雪ノ下「いきなり人間生やしたりしてるのを目の当たりにしてるから」

雪ノ下「そのくらいの事で、驚かないわ」


白鐘「それに君にはちゃんと『自我』があります」

白鐘「【シャドウ】だとしても他の【シャドウ】とは、『違う存在』ですよ」

クマ「…………」

りせ「それよりもクマ、もう勝手にどこかへ行かないでよ……」

りせ「あんたが居なくなって本当に心配したんだからね?」

クマ「りせちゃん……」

クマ「……う……ううっ……」

クマ「クマは……クマは……!」

クマ「本当に果報者クマァ~!!」

花村「へへっ……ま、これで全員揃ったな!」

比企谷「そうだな」


比企谷「クマ……帰ってきたばかりで済まないが」

比企谷「やらなければいけない事がある。 手伝ってくれ」

クマ「もちろんクマ!」


―――――――――――


クマ「アダっちーが!?」

白鐘「ええ……」

白鐘「そして今、彼はおそらくテレビの中に居ます」

クマ「わかったクマ!」

クマ「クマ、頑張るクマ!」

白鐘「頼みます」

比企谷「…………」



―――――――――――


テレビの中の世界


 ※ りせとクマ、足立を捜索中

比企谷「……白鐘」

白鐘「はい?」

比企谷「いつぐらいから足立さんが怪しいと思ったんだ?」

白鐘「…………」

白鐘「……小さなものも含めるのなら」

白鐘「最初の警告状の鑑識結果が出た時からです」

比企谷「…………」


白鐘「それがはっきりとした『疑い』に変わったのは」

白鐘「生天目と話をして、最初の二件の犯人でないと分かった時で……」

白鐘「『確信』に変わったのは、改めて聞き込みをした後です」

比企谷「……無駄足だったのにか?」

白鐘「はっきりとした『条件』を立てるキッカケになったので」

比企谷「条件?」

白鐘「ええ」

白鐘「あの捜査で、真犯人は『見えていない人物』だとはっきりしました」

白鐘「いえ、生天目と同様、『見えても気にならない人物』という事が……」

比企谷「…………」

白鐘「後は消去法です」


白鐘「最初の二件の被害者と面識があって」

白鐘「僕たちの行動をある程度、監視する事ができて」

白鐘「それを僕らや、一般の人が見ても怪しく思われない人物……」

比企谷「…………」

比企谷「……なる程、名推理だな」

白鐘「いえ……」

雪ノ下「比企谷くん、白鐘くん」

雪ノ下「足立さんの居場所、わかったそうよ?」

白鐘「そうですか……いよいよですね」

白鐘「行きましょう、比企谷先輩」

比企谷「ああ」

雪ノ下「…………」



―――――――――――


花村「……おい、ここって」

里中「ここ、一番最初にあたしと花村、比企谷くんが迷い込んだ部屋じゃん……」

比企谷「……例の自殺現場みたいな場所か」

雪ノ下「!」

雪ノ下「比企谷くん、あれ!」


足立「…………」


比企谷「……足立さん」

足立「はあ……」

足立「とうとうこんな所まで追ってきたのか……」

足立「鬱陶しい連中だな、まったく」



一同「…………」


白鐘「足立さん……いえ」

白鐘「足立透」

足立「…………」

白鐘「あなたを山野真由美および小西早紀、両名を殺害した容疑で」

白鐘「身柄を確保します」

足立「…………」

花村「……何とか言ったらどうだ?」

足立「…………」

足立「……ク……ククク……」


足立「アハハハハハハハハハハハハハハハハハッ!!」


一同「!?」


花村「何がおかしい!? なに笑ってるんだよ!?」

足立「ククク……だってさ……」

足立「もうすぐ向こうの世界が終わるっていうのに」

足立「のんきに『確保』とか言ってるからさ!」


一同「……は?」


天城「言ってる事が、全然わからない……」

里中「はんっ! 能書きはいいわよ!」

里中「詳しくは捕まえてから――」


りせ「……待って」

里中「何で止めるのよ?」

りせ「こいつ……『本物』じゃない」

りせ「私のペルソナでも、かろうじて解るくらいの『幻影』だわ!」


一同「!?」


足立「へえ! すごいすごい!」

足立「よく分かったね~……感心するよ」

花村「へっ……そんな人を小馬鹿にした態度は、比企谷で免疫付いてるぜ!」

りせ「その通り!」

里中「さっさと観念するじゃん!」

比企谷「……ちょっと待てお前ら」


足立「しつこいね~……君たち」

足立「ま……そんなに捕まえたいなら、こっちに来ればいい」

足立「いろいろと、教えてあげない事もないさ……」

足立「どうせ無駄になるんだけどね」

     ハハハハハハハハハハハ……



     ズオンッ……


     バキャンッ!!



一同「!!!」




     足立さんは……いや、足立の『幻影』は、突然

     この奇妙な部屋のベランダの方へと歩き出すと、異変が起こった。



     『幻影』の足立の前に『道』が唐突に現れ

     ……『道』というのは正しくないかもしれないが

     ともかく、その現れた『奇妙な通路』へと高笑いしながら、消えていった……



里中「……待てコラー!」

     ダダダッ!

白鐘「くっ……! 追いかけましょう!」

花村「おう!」


―――――――――――


禍津(マガツ)稲羽市


比企谷「……!?」

雪ノ下「何……ここ?」





     ……そこは最初、どこだか分からなかった。

     それも当然で、まるで大規模な爆撃後の街みたいで

     知っている風景とは余りにも懸け離れていたからだ。




天城「ここ……商店街じゃない?」

里中「ホントだ……変わり果ててるけど」

花村「どういう事だ?」

花村「足立の影響でここが出来たんだろうけど……」

花村「あいつ、こんな世界を望んでいるのか?」

比企谷「…………」

りせ「……この世界、今までと違う」

りせ「何て言うか……あいつに、足立に、完全にコントロールされてる感じがする」

クマ「およよ……クマにも少し分かるクマ!」

白鐘「……どうやら、一筋縄では行かない様ですね」


比企谷「…………」


影・透『クックックッ……どうだい、この世界は?』

影・透『気に入ってもらえたかな?』


白鐘「! 足立……」

花村「気に入るわけねーだろ!」

花村「ペル……」

りせ「待って! 花村先輩!」

花村「! あいつも幻影か……」


影・透『ふん……少しは学習能力があるみたいだね』


里中「いい加減にしなさい!」

里中「そもそも何で山野アナとか殺しちゃったのよ!?」


影・透『……殺した?』

影・透『おいおい……僕はテレビに『入れた』だけだよ?』

影・透『勝手に人を殺人者にしないでくれ』


白鐘「……では、言い方を変えましょう」

白鐘「なぜ、被害者をテレビに入れたんですか?」


影・透『……はあ。 都会でエリートになるはずが』

影・透『何の冗談か、こんな片田舎に飛ばされて……』

影・透『退屈で退屈で、他に楽しみもないから』

影・透『テレビばっか見てたんだよ……』


影・透『なのにあの女……こっそり応援してやってたのに』

影・透『不倫なんかしてやがった……!』


比企谷「……は?」


影・透『まあ……テレビに『入れた』のは』

影・透『たまたま天城屋にあった大きなテレビに触れ、揉み合った末の偶然だけどね』

影・透『汚れた女には、ちょうどいい末路さ……ククク』


天城「うそ……まさかウチの旅館のテレビで落としていたなんて!」

花村「……おい」

花村「じゃあ小西先輩はどうなんだ……?」

花村「山野アナが死んだ事で、テレビに入れると死ぬってわかったはずだろ!?」


影・透『まあ、危ないな、とは思ったよ?』

影・透『けどさぁ……あのガキも生意気だったんだよねー』


影・透『せっかくこっちが『大人の付き合い方』を教えてやろうとしたら』

影・透『いきなり僕をひっぱたいてさ……』


花村「っ!?」


影・透『ついムカついて、落としちゃったんだよねー』

影・透『あ、でもこれって『正当防衛』だよね?』

影・透『あはははははははははは!』


花村「……てんめぇ!!」

     ブンッ! スカッ…

影・透『何やってんのさ……ここに居る僕は幻影だって』

影・透『さっきその娘が言ってただろ? バカなの?』


花村「くそがぁ!」

比企谷「落ち着け、花村」


影・透『やれやれ、これだからガキは嫌いなんだ……』

影・透『まあ、しばらくこいつらと遊んでるといい』


     ドオオオオンッ!!


一同「!?」



白鐘「【シャドウ】が!?」

クマ「こっちに襲いかかってくるクマ!?」

雪ノ下「くっ……!」



影・透『どうやらさ、僕はこの世界に気に入られたみたいでね……』

影・透『化け物どもも僕を襲わないし、それどころか』

影・透『僕の意のままに動いてくれる!』

影・透『アハハハハハハハハ……』


花村「くそっ! 待ちやがれっ!」

白鐘「花村先輩! 今は周りの【シャドウ】を倒す事を考えましょう!」

白鐘「ペルソナ!」


―――――――――――


里中「これで……最後っ!」

     シュウウウウウ……

比企谷「よし……追いかけるぞ!」


比企谷「……足立さん」


影・透『お? もう来たのかい……意外と早かったね』


比企谷「…………」

比企谷「さっきの話の続きですけど」

比企谷「久保美津雄をテレビに入れたのもあなたですね?」


影・透『ああ……その通りさ』

影・透『あのクソガキ、諸岡殺しの犯行はもちろん』

影・透『他の殺人まで自分だって、結構早い段階で自首してきたんだよ……』

影・透『まさか進んで他の罪を被ろうとする奴がいるなんて、想像もしてなかった』


比企谷「……なぜ、久保を犯人に仕立て上げなかった?」


影・透『ま……簡単に言えば、『つまらなくなる』からさ』


一同「……!?」


影・透『実はね』

影・透『生天目の奴、小西って小娘が死んだ後、警察に電話してきてさ』

影・透『よりにもよって、この僕が相手しちゃったんだよ! 笑えるだろ?』


一同「…………」


影・透『その電話で、生天目の奴が僕と同じ能力者って事が分かってね』

影・透『で、警察は頼りにならない事と、自分で何とか出来るんじゃない?と……』

影・透『少ーし、背中を押してやったのさ』


影・透『そしたらあいつ、さっそく行動に移した!』

影・透『もうね! 楽しかったよ!』

影・透『君らが助ければ、助けるほど、生天目は犯行を繰り返す!』

影・透『お互い善意でやっているのに、結果は壮大なイタチごっこ!』

影・透『見てて飽きなかったよ!』


一同「…………」


影・透『……けどお前ら、ウザく久保の奴を助けてくれちゃって』

影・透『これでおしまいか……なんて思って悲しかったな、あの時は』

影・透『ま、久保の奴は勝手にくたばってくれたし』

影・透『生天目は『救済』を続けてくれたから、結果オーライだったけどね』


里中「……最っ低!」

天城「人の命を何だと思ってるの!?」

花村「てめぇだけは、絶対許さねぇ……!」


影・透『何怒ってるのさ?』

影・透『世の中、楽しい事がなきゃ意味が無いだろう?』

影・透『こっちの身にもなってくれよ……』


クマ「ムキー! アダッちーの言ってる事、むちゃくちゃクマ!」

雪ノ下「あなたの楽しみの為だけに……どれだけの人が傷ついたと思ってるの!?」

白鐘「自分が『される』立場だとしても、同じ事が言えるんですか!?」


影・透『さてね……ただ』

影・透『僕にはそれが出来たし、面白かったからやった』


影・透『それだけさ』


     ドオオオオンッ!!


一同「!?」


花村「くそっ! またかよ!」

白鐘「いえ……今回の方が数も多いし、強い!」

里中「……でも、やる事は同じよ!」

里中「ペルソナ!」


―――――――――――


クマ「これで終わりクマ!」

     シュウウウウウ……

花村「よし……追いかけるぞ!」



影・透『……へえ、あれも突破したのかい』

影・透『ちょっと見くびってたかな?』


比企谷「…………」

比企谷「……足立さん」

比企谷「向こうの世界が終わる……とか言ってましたけど」

比企谷「どういう意味ですか?」


影・透『どういう意味も何も、そのままの意味さ』

影・透『向こうの世界は……『現実』は……』

影・透『もうすぐこっちの世界と一緒になって、人間は【シャドウ】になるんだよ』


一同「!?」


花村「何言ってるんだ? こいつ……」

比企谷「……霧か」

白鐘「!」

白鐘「……まさか、本当にこっちの霧が漏れているとでも?」

比企谷「そこまではわからんが、クマの眼鏡が通じている」

比企谷「何かの前兆現象かも……とは思っていた」

白鐘「前兆現象……」


影・透『クックックッ……察しがいいね? 比企谷くん』

影・透『でも、さすがにどうしてこんな事が起こるか?までは』

影・透『解らないみたいだね』


花村「はあ? お前が何かしてるからじゃねーのか?」


影・透『バカ言うなよ……僕個人でこんな事出来る訳ないだろ?』

影・透『これはさ……』



影・透『みんなが望んでいる事だからさ!』

一同「!?」



里中「……何言ってるの?」

天城「みんな……って、向こうの世界の人達って事?」

りせ「みんなが【シャドウ】になりたがっている……とでも言いたいの!?」

りせ「そんな訳ないじゃない!!」


影・透『やれやれ……』

影・透『あのね……君らは自分の【シャドウ】を見てきたんだろう?』

影・透『それを見て、生き生きしている様には思わなかったかい?』

影・透『クソな世の中で抑圧してきた感情……抑えてきた欲望』

影・透『それらが解放されたら、気持ちいいに決まってるだろ?』

影・透『そういうのを押さえ付け様とするから、お前ら【シャドウ】に襲われるんだよ』


花村「だからって、みんながみんな、『現実』を無くしたい訳じゃねーだろ!」

里中「【シャドウ】になりたい訳でもない!」


影・透『いいや? そんな事はないさ』

影・透『みんな『言わない』だけで、本当は解放されたがっている』

影・透『だから、こんな世界が……人間の意志が反映される世界が出来たんだよ』


白鐘「……それは僕たち同様、あなたの勝手な解釈にすぎません」

白鐘「仮にそうだとしても……」

白鐘「あなたは、それを『逃げ』の手段に使っているだけだ」


影・透『……何?』


花村「はっきり言うぜ?」

花村「お前は この世界に選ばれたんでも 迎えられたんでもねえ」

花村「切羽詰っている ただの犯罪者だ」


影・透『……ケツの青いガキが、生意気言うんじゃねぇ!!』


りせ「はん! そのケツの青いガキにここまで追い詰められて」

りせ「恥ずかしくないの?」



影・透『うるせえよ……』

影・透『世間てやつを何にも知らねぇひよっ子どもが……!』


白鐘「否定はしませんよ」

白鐘「ですが世間を知っているあなたは、刑事でありながら」

白鐘「犯罪者になってしまっている。 無様ですね」


影・透『刑事ね……別になりたくてなった訳じゃない』

影・透『拳銃が撃てるから、とりあえずなってみただけさ』


一同「…………」


影・透『ところがねぇ……これが大失敗だった訳よ。 分かる?』

影・透『周りはバカばっかりだし、面白くも何ともない』


影・透『君らもね、こんなところに来てまで何がしたい訳?』

影・透『何の得にもならないし、犯人が生天目だろうが、僕だろうが』

影・透『世間てやつは、特に気に止める訳でもない』


一同「…………」


影・透『まさに無駄。 人生の無駄な訳よ……分かってるんだろ?』

影・透『それよりもさ、勉強を頑張った方がいいと思うよ?』

影・透『そしていい大学を出て、就職して、可愛い奥さんや』

影・透『かっこいい旦那さんを見つけて結婚して、ハッピーになる事を目指しなよ』

影・透『それが君らの為さ!』


一同「…………」


影・透『これ、経験談から言ってる訳。 分かるー?』

影・透『それとも他にやる事ないのかなー?』



一同「…………」


影・透『あ、だからこんなにくだらない事を続けられる訳か……』

影・透『頑張って犯人捕まえようぜー!!』

影・透『ハハハハハハハハハハッ! 超ウケる! 面白すぎだよ、君たち!!』


一同「……はあ」


影・透『…………』

影・透『……何、溜息ついてんだ?』


白鐘「決まっているでしょ?」

白鐘「みんな呆れているんですよ」


影・透『呆れている……だと?』


影・透『これだからケツの青いガキは嫌なんだ……』

影・透『社会の、それもほんの一部を知っただけで』

影・透『全部知った気になっていやがる』

影・透『世の中、ホントにクソだよな……』


雪ノ下「……それがわかっていながら」

雪ノ下「なぜ向き合おうとしないのかしら?」


影・透『…………』


雪ノ下「あなたの言う、ケツの青いガキにだって出来た事すら、出来ていないのに」

雪ノ下「よくもまあ人生が語れたものね……」



影・透『……うるせぇ』


比企谷「足立さん。 すみませんでした」


影・透『……はあ?』


比企谷「俺がここに来た時……彼女が居るんでしょ?みたいな事、言いましたけど」

比企谷「あれのせいで今回の事件起こしたんですよね?」

雪ノ下「……いくら何でもそんなわけ無いでしょ」

比企谷「そうなんですか? 悔しかったんじゃないんですか?」

比企谷「ケツの青いガキである ひよっ子の俺に」

比企谷「自慢できる『何か』が何も無くて、焦ってしまったんじゃないんですか?」


影・透『……っ!』


影・透『そんな訳あるかっ!』

影・透『お前ホントウザイッ! 初めて会った時から全然気に入らなかった!』

影・透『そうやって知ったかぶりする所も、何だかんだで僕を見下している所も』

影・透『暗に俺はお前よりマシだって見せつけてくる所もっ!』

影・透『全部全部ウザイんだよっ!!』


一同(…………)

一同(……なんか、当たりっぽい?)


影・透『……殺してやる』

影・透『殺してやるぞ、お前ら……!』

影・透『……っ! ……おおおおおおおおおおおおっ!!』





影・透『マガツ……イザナギッ!!』



一同「!?」



花村「ペルソナ!?」

里中「それも……イザナギ!?」

白鐘「どういう事か分かりませんが、応戦しましょう!」


     ドドドドドドドドドドッ!!


天城「今度は何!?」



刈り取る者『…………』

刈り取る者『…………』

刈り取る者『…………』


比企谷「【シャドウ】だと!? それも超ド級にでかいのが3体!」

りせ「……この3体、並の強さじゃない!」

りせ「みんな、気をつけて!!」

雪ノ下「くっ……!」

クマ「このくらい何でもないクマ!」


影・透『クククッ……!』

影・透『もう泣いて謝っても許さないからな……』

影・透『ガキは黙って死ねばいいんだよ!!』




     そこからは、まさに死闘だった。

     足立のペルソナ?はもちろん、呼び出した【シャドウ】の強さも相まって

     お互い総力戦となった。



     ……どのくらい経った頃か。

     足立の呼び出した【シャドウ】の1体が打ち倒され

     そこから流れはこちらに傾いた。



     残りの【シャドウ】を各個撃破し、残るは足立のペルソナ?のみとなり

     残った火力を総動員する。

     そして……



比企谷「イザナギッ!!」



     ズバッ!!



影・透『わああああああああああああああああああああああああああっ!!』



     シュウウウウウ……



比企谷「ハアッ…ハアッ……」

花村「……お、終わった……か?」

里中「つ、強かったじゃん……」

白鐘「骨が折れましたね……」


足立「……へ…………」

足立「………へ……へへ…へへへ……」

足立「……んだよ……これ……」

足立「……つまんねぇの……」

比企谷「…………」

比企谷「あだh」


     ズドンッ!


足立「ぐおえっ!?」

比企谷「」

一同「」




     ズドンッ! ズドドンッ!!



里中「こ……これって!?」

天城「生天目の時と同じ!?」



     そう。 俺たちは足立に起こった出来事に見覚えがあった。

     人間に【シャドウ】が入り込み、同化していく現象……

     由比ヶ浜をさらった、生天目に起きた事柄と非常に酷似していた。

     だが……



足立?『……人は、すべからく【シャドウ】となる』


一同「!?」



足立?『現実と虚構、双方の世界は一つとなり』

足立?『二度と晴れぬ霧に覆い尽くされるだろう……』

足立?『永遠に……』


花村「あ……あいつ……何言ってんだ!?」

里中「意味わかんない上に……何か、声、違くなかった!?」


     ボフンッ!!


天城「きゃあっ!」

比企谷「くっ!」

雪ノ下「霧が……突然、濃くなった!?」

クマ「何が起こったクマ!?」




     ……そいつは、少しずつ姿を現していった。



??????『私は……霧をすべし、人の意によって生み出されしモノ』



     初めは、巨大なウニ?と思ったが……

     それは大きな間違いだった。



??????『現実と虚構の重なりし世界に』

??????『秩序をもたらし君臨するモノ……』



     そこにあるのは、禍々しくも巨大な目玉―――







??????『我が名は、アメノサギリ』




     ……霧の中から姿を現したそいつは

     アメノサギリ、と名乗った――




比企谷「アメノサギリ……」

花村「ゲームで言うところのラスボスってとこか……」

里中「じゃあ……あいつが諸悪の根源って事?」



アメノサギリ『我が望みは人の望み』

アメノサギリ『虚ろの森より生まれし虚構は人々を魅了し』

アメノサギリ『人は更に虚構を求め、欲し、この世界は少しずつ広がっていった』


比企谷「……!?」

白鐘「広がって……? バカな、人が望んだから、この世界は広がったと言うのか!?」


アメノサギリ『人々はやがて虚構にのみ、熱狂し、望み』

アメノサギリ『現実に目を向けなくなっていった……』

アメノサギリ『故に』

アメノサギリ『私は虚構の世界を 現実と結びつける決断をした』


一同「!?」


りせ「何言ってるの……!?」

りせ「人間が現実に目を向けないわけ無いでしょ!?」

天城「その通りよ! コノハナサクヤ!」


     ドオオオオオオオンッ!!


アメノサギリ『その力とて、我が与えたもの……』

アメノサギリ『そなたらは、大衆を熱狂させる窓……見たいものを見せる』

アメノサギリ『良い役者であった』


花村「なっ!? 役者!?」

比企谷「『窓』……見たいものを見せる……?」

比企谷「!!」

比企谷「【マヨナカテレビ】の事か!?」


雪ノ下「どういう意味なの?」

比企谷「……つまり」

比企谷「【マヨナカテレビ】は、『見たいと思った事』が見える現象だった」

比企谷「という事だと思う……」


一同「!?」


里中「ちょ、ちょっと待ってよ、比企谷くん」

里中「それじゃみんなが望んだから雪子達が映ったって事!?」

天城「……被害者は全員報道されている人物なのは」

天城「映った人達に『何か起これ』という気持ちがより強かったから!?」

白鐘「……確かにそれだと説明がつきますね」


白鐘「不思議に思っていました。 生天目の【マヨナカテレビ】」

白鐘「あの時、テレビに映った生天目は……」

白鐘「僕たちが『生天目が犯人だ』と思い込んだ結果」

白鐘「映し出されたもの、という事だったのか……!」

花村「ふざけんなっ! ジライヤ!」


     ゴオオオオオオオオッ!!


花村「人々が望んだ!? この世界を!?」

花村「だったら俺たちは何なんだよ!?」

花村「こんな世界なんて望んでいねーっての!!」


アメノサギリ『そう……』


アメノサギリ『それだけが誤算であった』

アメノサギリ『本来は自身を殺す存在の【シャドウ】を次々と克服し、制御し』

アメノサギリ『自らの力へと変えるその『素養』……』

アメノサギリ『大多数の意見とは違う、強き意志を持つ存在……』


雪ノ下「なら……もう一度考え直してくれないかしら?」


アメノサギリ『故に』

アメノサギリ『私はお前達を試さねばならない』


一同「!?」


雪ノ下「人の話を聞きなさい!!」

比企谷「……気持ちは分かるが、無理っぽいな」



アメノサギリ『『虚ろの森』に消えるのはどちらの意志か?』

アメノサギリ『そなたらの力……』

アメノサギリ『我に見せるがよい』


     グオオオッ!!


花村「くそったれが!」

花村「そんなに言うなら見せてやるぜ! 一つ目バ○キ○マン!!」

天城「あ、そういえば声、似てるね」

比企谷「メタ発言は置いといて、もう少し緊張しろ」

りせ「来るよ!」





     かくして、アメノサギリとの戦いが始まった。

     だが、すでに足立との戦いで疲弊していた俺たちにとって

     かなり劣勢だと言える。



     しかもこいつ、全体攻撃がかなりきつい。

     回復が追いつかない。

     ……正直、逃げ出したい気分だった。





     ゴウッ!!


花村「ぐああああっ!!」

里中「花村!! ……んのおおおっ!」

里中「トモエ!!」 ゴッドハンド!


     ドガアッ!!


比企谷「ハアッ…ハアッ……」

比企谷「大丈夫か、雪ノ下?」

雪ノ下「ええ……何とか……くっ」


クマ「ペルクマ―――!!」 ブフダイン!!

天城「はあっはあっ……コノハナサクヤッ!」 アギダイン!!

白鐘「比企谷先輩、少し休んでいてください!」

白鐘「スクナヒコナ!」

比企谷「……すまん、白鐘……」


比企谷(…………)

比企谷(……とは言うものの)

比企谷(このままじゃジリ貧だ……!)

比企谷(どうする……!? どうすればいいんだ!!)


雪ノ下「ふ……」

雪ノ下「ふ……ふふっ……」

比企谷「……おい」

比企谷「何、笑ってるんだよ……さすがに引くぞ、それ」


雪ノ下「ごめんなさい……」

雪ノ下「ちょっと懐かしくなって」

比企谷「……?」

雪ノ下「あの時……ほら、久慈川さんの【シャドウ】と戦った時」

雪ノ下「何だか今の状況、似ているな、とか思ってしまって……」

比企谷「ああ……あの時、久慈川の【シャドウ】に追い詰められて」

比企谷「俺と雪ノ下で盾になろうとしたっけな……」

雪ノ下「クマくんが謎の力を発揮してくれたおかげで」

雪ノ下「私たち……今、ここに居るのよね」

比企谷「そうだな……」

比企谷「…………」

比企谷「!!」


比企谷「……そうだ」

比企谷「もしかしたら!」

雪ノ下「比企谷くん?」


花村「はあっはあっはあっ……」

花村「くそっ……いい加減、くたばってくれっての!」

白鐘「何です? 花村先輩……」

白鐘「もうグロッキーですか?」

花村「そう言うお前の膝も笑ってるじゃねーか……」

白鐘「なあに……まだまだ戦えますよ」

里中「はあっはあっ……」

天城「くっ……はあっ……はあっ……」



アメノサギリ『……なかなかに面白き戦いであった』

アメノサギリ『そろそろ終焉とさせてもらおう』


比企谷「イザナギ!」 


     ドガッ!


アメノサギリ『…………』

アメノサギリ『何とも力無き一撃……弱き者よ』


比企谷「ああ。 その通りだよ」

比企谷「卑怯者のアメノサギリさん」



アメノサギリ『…………』


比企谷(……久慈川)

比企谷(あいつをモニタリングしてるか?)

りせ(う、うん……)

比企谷(そうか。 これから一つ、仕掛けてみる)

りせ(え……!?)

比企谷(もちろん上手く行くかは、わからんがな……)

比企谷(何か弱点が見えたら指示してくれ)

りせ(わかったよ、比企谷先輩)


アメノサギリ『……聞き捨てならぬな、弱き者よ』

アメノサギリ『我は常に公平に『人の意志』を見てきた』


比企谷「なら聞くが」

比企谷「お前、なぜクマの【シャドウ】に干渉した?」

比企谷「あの時感じた違和感……お前の力が働いたから、おかしいと思えたんだ」


一同「……!?」


アメノサギリ『…………』

アメノサギリ『くだらぬ質問だ』

アメノサギリ『我が望みは人の望み』

アメノサギリ『大衆がそれを望んだ故に行動したまで』


比企谷「大衆が? 【マヨナカテレビ】にも映っていないクマの【シャドウ】を?」

比企谷「どう考えても少数派だろ、そんなの」


クマ「……クマ、何か馬鹿にされてるクマ?」

花村「気のせいだ」

里中「うん。 気のせい 気のせい」


アメノサギリ『…………』


比企谷「俺の考えはこうだ」

比企谷「お前……クマが羨ましかったんだろ?」


一同「……え?」


アメノサギリ『…………』


比企谷「もっとはっきり言うと……」


比企谷「自分と同じ異形の存在でありながら」

比企谷「人と仲良くしている……できているクマに」



比企谷「嫉妬していたんだろ?」



アメノサギリ『…………』



花村「……正直、トンデモ説に聞こえる」

里中「……うん」

天城(まあ……ちょっと休めるからいいけど)

白鐘「…………」


比企谷「だからお前はクマに干渉した」

比企谷「同じ異形の存在であるクマ……」

比企谷「憎くて憎くて、何とか消してやろう、元の【シャドウ】に戻してやろう」

比企谷「そう考えてな」


アメノサギリ『…………』


比企谷「とんだペテンだな」

比企谷「我が望みは人の望み? 笑わせる」

比企谷「そんな事を言いながら、お前は自分の欲望に負けた」

比企谷「ただのエセジャッジメンだ」



アメノサギリ『…………』

アメノサギリ『……お……おお』

アメノサギリ『おおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおお』


りせ「…………」

りせ「……!!」

りせ「あいつの……目ん玉の下の辺り……!」

りせ「防御が薄くなってる!!」


一同「!!」


花村「よし! 残った力……全部くれてやらぁ!!」

里中「はあああああああああ……!!」



アメノサギリ『我は……アメノサギリ……』

アメノサギリ『我が望みは……人の望み……』

アメノサギリ『……人の望み……? 何故?……』

アメノサギリ『我は……人の意によって……? 何故?』


白鐘「……スクナヒコナ!!」

クマ「キントキドウジ!!」

天城「コノハナサクヤ!!」

雪ノ下「イザナミ!!」

比企谷「……今度は、もっと可愛い姿で生まれてくるんだな」

比企谷「イザナギ!!」



アメノサギリ『我は……我は……?』

アメノサギリ『我が……望みは……?』

アメノサギリ『お……ああ……あ…………あお……』




     ドゴォ―――――――――――ンッ!!




花村「はあっはあっ……どうだ!?」

里中「やった……の?」

天城「…………」

白鐘「!」

白鐘「あれを見てください!」



アメノサギリ『…………』

アメノサギリ『……私は……アメノサギリに……あらず……』

アメノサギリ?『人の子よ……』

アメノサギリ?『我も……また…………』

アメノサギリ?『……矮小……なる…………存……在……』


     シュウウウウウ……


一同「!!」


花村「よっしゃああああっ!!」

りせ「勝った……勝ったのよね!? あたし達!!」

クマ「さっすがセンセイクマ!」


比企谷「……ふう。 正直、こんなに上手く行くとは思わなかったがな……」

比企谷「…………」

比企谷(……これで)

比企谷(終わったのだろうか……)


     ……ドサッ


比企谷「……ん?」

比企谷「!! ……足立……さん」

足立「…………」


一同「…………」


比企谷「…………」


比企谷「大丈夫ですか? 足立さん」

足立「…………」

足立「……行けよ。 もう僕はダメそうだ……」

足立「どうせ……帰るところも……無いだろうし……」

足立「ここで【シャドウ】にでも食われてやるさ……」

比企谷「…………」

比企谷「……そうですか」

比企谷「それじゃ俺は行きます」


一同「!?」


花村「おい、比企谷。 そりゃねーだろ……」


白鐘「僕たちは、ようやく犯人にたどり着いたんですよ?」

白鐘「彼を連れて帰り、ちゃんと罪を償わせないと……」

比企谷「ああ。 それも正しい意見だ」

比企谷「だが……俺は足立さんの『意志』を尊重する」

白鐘「……意志ですか?」

比企谷「足立さんは正しいよ」

比企谷「あっちの……現実の世の中は、確かにクソだ。 変え様がない」


一同「…………」


比企谷「本人が、それに耐える事が出来ないと言っている以上」

比企谷「無理やり連れて帰っても苦痛なだけだ」

足立「…………」


比企谷「足立透という存在は、その程度の『価値』しかない」

比企谷「居ても居なくても世の中は回っていく……だから気にするな」


一同「」


足立「…………」

足立「……おい」

比企谷「何ですか?」

足立「お前……本当にムカつくガキだな……」

比企谷「だったら何です?」

比企谷「あなたはここで死ぬ事を選んだ、ただの負け犬でしょう?」

足立「……っ」


     グ……ググッ……グググッ……

足立「はあ……はあ……」

比企谷「どうしたんですか? 立ち上がって?」

足立「……ぐっ……くっ……」 ヨロ…

足立「この……野郎ッ!」

     ブンッ  ガスッ!

比企谷「…………」

足立「はあ……はあ……」

比企谷「……それで?」

足立「!」

比企谷「…………」

比企谷「確認のため、一応聞きますけど」

比企谷「これからどうしますか? 足立さん?」


足立「…………」

足立「……生きてやる」

足立「生きて、生き抜いて……」

足立「必ず……お前を……後悔させてやる!」

比企谷「……いいんですか?」

比企谷「向こうの世の中はクソで、あなたにとっては、更に生きにくくなっていますよ?」

足立「……乗り越えてやる」

足立「どんなに……クソであっても……な!」


一同「…………」


比企谷「そうですか……」


比企谷「足がおぼつかない様ですが、手を貸しましょうか?」

足立「…………」

足立「……要らないよ」

足立「…………」

足立「ああ……そうとも、要らないんだよ……」

足立「僕は……」



足立「ひとりで……歩いていけるさ」





     足立さんは、出口に向かって歩き始めた。

     途中、何度も転び、擦り傷が増えていったが

     俺たちの手を借りる事は最後までしなかった。



     ……どのくらいの時間が経過したのか分からないが

     ジュネスの家電売り場に出た時、店内は真っ暗で閉店しているのがわかった。

     そして、すぐさま駆けつけてくる警備員……お世話になります。





     俺たちは事情を話し、堂島さんにも連絡。

     足立さんは、一連の事件の容疑者として扱われるが

     その前に監視付きで病院へ治療に行く事になった。



     俺たちは……救急車で運ばれる足立さんを見送った後

     霧が無くなり、星空が見えている事に 初めて気がつき

     ようやく、何もかもが終わったのだと……実感したのだった。




―――――――――――


比企谷「…………」

雪ノ下「比企谷くん」

比企谷「ん? 雪ノ下か……」

雪ノ下「あなたの説得方法、いつ見てもヒヤヒヤさせられる」

比企谷「……性分てやつだ、たぶん」

雪ノ下「月並みな言い方だけど……」

雪ノ下「命がいくつあっても足りないと思うやり方だわ」

雪ノ下「こっちの身にもなって欲しい……」

比企谷「…………」

比企谷「……心配かけて悪いな」


雪ノ下「…………」

雪ノ下「……ねえ」

雪ノ下「本当に帰るのかしら? 足立さんのアパートに……」

比企谷「他に行くところがない」

雪ノ下「あるじゃない」

比企谷「天城屋か?」

雪ノ下「分かっているのなら、来ればいいと思うのだけど?」

比企谷「…………」

比企谷「いいんだ。 ちょっと考えたい事もあるしな」

比企谷「じゃ……」

雪ノ下「あ……」

雪ノ下「…………」




     この時――

     私は、比企谷くんに 少し違和感を感じていた。



     後々、分かる事になるのだけど……

     彼がこの事件の解決によって受けた、心の傷は

     とても深いという事に








     私は……まったく気がついていなかった。





というところで、今日はここまでです。ちょっと長くなりました。
3スレ目……行ってもいいと言ってくれる読者が居てくれる。
私、もう、何も怖くないっ! ありがとうございますw
でも、裏十文字(P4U)は無理っw

後、ここからP4・はまち共に改変が酷くなってまいります。
受け入れてもらえるか、ちょっと不安……それでは、また。

乙!
次も楽しみにしてる

大量に乙

雪ノ下がイザナミを自分のペルソナとして使っちゃってる時点で
嫌な人は離れてるだろうし好きに突っ走って完結させちゃえばいいと思うよ

マリーが居ないのも何かの伏線なのか……

スゲー今更で何だけど、生田目

おもれええ

追いついた乙!

ヒッキーはP3の世界も合ってる気がする、エンディングとか。ということでP3もお願い致します!

ヒッキーの口癖がどうでもいいになってしまうのか…



―――――――――――


数日後の放課後

教室


     キーン コーン カーン コーン

花村「ふう……今日も終わったか」

里中「もうすぐ期末試験かぁ……」

花村「そういや、今年ももうすぐ終わりなんだな……」

花村「いろいろあったなぁ。 今年は」

天城「ホントだね」

雪ノ下「…………」

比企谷「…………」


雪ノ下「比企谷くん」

比企谷「ん?」

雪ノ下「今日の由比ヶ浜さんのお見舞いなんだけど……」

比企谷「ああ……悪いんだが」

比企谷「今日はちょっと用事があってな」

雪ノ下「そうなの?」

比企谷「由比ヶ浜にもすまない、と、言っておいてくれ」

雪ノ下「わかったわ」

比企谷「じゃあな……」 ガタタ…

     テク テク テク…

雪ノ下「…………」


里中「あれ? 比企谷くん、帰っちゃったの?」

雪ノ下「ええ……用事があるとか」

里中「そうなんだ?」

天城「まあ……いろいろあるよね」

天城「今は仕方ないと思う」

雪ノ下「…………」

花村「んじゃ、そろそろ由比ヶ浜さんのお見舞いに行きますか!」

里中「うん!」

天城「もう起き上がれる様になったんだよね……」

里中「霧が晴れてから、どんどん良くなってるじゃん!」

     アハハ……

雪ノ下「…………」


八十稲羽 総合病院


由比ヶ浜「みんな、いらっしゃい!」

花村「おじゃましまーす!」

クマ「ユイちゃん、今日も来たクマよ~」

里中「今日はおやつにと思って、果物 買ってきたじゃん」

クマ「クマも選んだクマ!」

由比ヶ浜「ありがとう。 そんなに気を使わなくていいのに」

里中「もっちろん、あたしらも食べたいな~なんて……」///

天城「そういう訳なの」 クス

由比ヶ浜「ああ。 そうなんだ」 クスッ

由比ヶ浜「じゃ、みんなで食べよう!」


     アハハ…… フフフ……

雪ノ下「…………」

由比ヶ浜「……ゆきのん?」

雪ノ下「! ……ごめんなさい、由比ヶ浜さん」

雪ノ下「ちょっとボーっとしてたわ」

由比ヶ浜「ううん……それよりも」

由比ヶ浜「今日、ヒッキーは?」

雪ノ下「何か、用事があるって……」

由比ヶ浜「そっか……」

由比ヶ浜「ま、そういう日もあるよね!」

雪ノ下「…………」


八十稲羽警察署


比企谷「すみません」

比企谷「こちらでお世話になってる、足立透の面会をお願いした親戚の者ですが……」


―――――――――――


面会室


比企谷「……どうも、足立さん」

足立「…………」

比企谷「…………」

比企谷「これ、足立さんのご両親に頼まれた当座の着替えです」

足立「……!」

比企谷「…………」


比企谷「明日、お二人で会いに来るそうです」

足立「…………」

比企谷「伝言があります」

比企谷「『時間が掛かってすまない』」

比企谷「『私達も向き合う覚悟を決めた』」

比企谷「……だ、そうです」

足立「…………」

比企谷「…………」

比企谷「それじゃ……俺はこれで」

足立「…………」


足立「……笑ってるんだろ」

比企谷「……は?」

足立「惨めな僕を見て、心の中で笑っているんだろ?」

比企谷「…………」

比企谷「いいえ」

足立「嘘なんてつかなくていい」

足立「そうやって僕を見下して、さぞかし満足なんだろ?」

足立「そうなんだろ?」

比企谷「…………」

比企谷「そう見えるのなら……そうなんでしょう」

足立「…………」

比企谷「……でも」

比企谷「俺は知っていますよ」


比企谷「足立さんが料理作るの、結構上手なのを」

足立「……!?」

比企谷「炒め物は特に美味しかったです」

比企谷「それじゃ……また」

足立「…………」

     ガチャ…… キィ パタン……

足立「…………」

足立「……本当に」

足立「ムカつくガキだよ、君は……」


―――――――――――


比企谷「…………」




     あれから数日が過ぎた。

     俺は、足立さんの家族と、自分の家族に事情を話したりして

     それなりに忙しかった。



     雪ノ下にも言われたが

     俺の家族は、さっさと足立さんの部屋を出て、新しい部屋に住め、と

     結構強めに言われた。





     まあ、手続きが面倒なのと、来年の三月にあそこから出て行くし

     俺が少し辛抱すれば済む問題だ、と、説得した。

     もちろん足立さんの両親やアパートの大家も了承済みである。



     ……足立さんと従兄弟の関係であるウチの母親のショックは

     それなりに大きかったみたいで、電話越しでもそれが分かる程だった。

     正直、普段のあの人からは想像もしていなかった……





     そんな訳で、俺は今も足立さんの部屋にいる。

     後は学校に学費や保護者関連の事で相談しなければならないが

     この事案だけは、少々気が重かった。



     ただの取り越し苦労で済めばいいが、一応、不吉な予測は立ててある。

     それが現実化しなければ御の字だが……

     常に最悪の事を考えて行動しなくてはならない。



     なにしろ俺は……




―――――――――――


????


イゴール「ようこそ……ベルベット・ルームへ」

イゴール「ふふふ……まさに節目の年を迎えられたお客様にとって」

イゴール「素晴らしい一年となりましたな……」

イゴール「…………」

イゴール「……ふむ?」

イゴール「…………」

イゴール「……なる程」

イゴール「その様な捉え方も、確かに真理と言えますな……」


イゴール「しかし……」

イゴール「わたくしめ共から見れば、お客様は」

イゴール「かかり来る幾多の霧を独自の解釈で払い、真実へとたどり着いた」

イゴール「真(まこと)に稀有な存在……到達者にございます」

マーガレット「お客様」

マーガレット「あなたは、傷つきながらも人との絆を紡ぎ」

マーガレット「それを”力”としているのです」

マーガレット「失礼ながら……それを見ないでいるのは」

イゴール「……マーガレット」

イゴール「口を慎みなさい」

マーガレット「…………」

マーガレット「申し訳ありません、我が主。 お客様」


イゴール「失礼しました、お客様……謝罪いたします」

イゴール「…………」

イゴール「……ふふふ、ありがとうございます」

イゴール「さて……」

イゴール「本日のご要件でございますが……」

     ヒィイイイイイイン……

イゴール「これは……お客様が歩まれた、旅路で得られたモノ……」

イゴール「お客様の独自解釈と、何者にも惑わされず真実を見抜き」

イゴール「わたくし共も含めた、人との絆と”力”の結晶……『宝珠』にございます」

イゴール「今後、お客様の歩む道をささやかながらも照らし」

イゴール「良き道しるべともなりましょう……」

イゴール「どうぞ、お納めください」


イゴール「…………」

イゴール「……ふふふ、結構」

イゴール「それではお客様……最後になりますが」

イゴール「わたくし共と過ごした旅路は、ほんの一瞬にございます」

イゴール「節目の年を超えられた お客様の旅路は、まだまだこれからも続きましょう」

イゴール「歩まれる道に光溢れん事を祈りまする……」

マーガレット「どうかお気をつけて」

イゴール「ふふふ……行ってらっしゃいませ」



―――――――――――


期末試験後の放課後

ジュネス バックヤード


花村「おう、比企谷」

花村「どうしたんだ? 何か話しだって?」

比企谷「ああ」

比企谷「ちょっと言いたい事があってな」

花村「言いたい事?」

比企谷「…………」

比企谷「由比ヶ浜、明日、退院するそうだ」


花村「おお! そうなのか!」

花村「本当に良かったぜ!」

比企谷「で、だ……」

花村「はは、そういう事か!」

比企谷「?」

花村「アレだろ? 由比ヶ浜さんの退院パーティ!」

花村「開くんだろ?」

比企谷「……ああ」

花村「里中、こういうの好きだもんなぁ」

花村「わかったぜ、場所と日時、言いに来たんだな?」

比企谷「……それは合っているが、目的は違う」

花村「どういう意味だ?」


比企谷「…………」

比企谷「お前、由比ヶ浜の事、好きなんだろ?」

花村「…………」

花村「何言ってるんだよ……いきなり」

花村「そりゃ好きだけど、別に告白したいとかじゃ……」

比企谷「桔梗(ききょう)の花だ」

花村「!」

比企谷「以前、由比ヶ浜の見舞いの時」

比企谷「桔梗(ききょう)の花を選んでいた」

花村「…………」

比企谷「桔梗(ききょう)の花言葉は、「気品」「誠実」「従順」……そして」

比企谷「「変わらぬ愛」……」


花村「…………」

比企谷「……まあ」

比企谷「花村がそれでいいのなら、俺がとやかく言う事じゃないがな」

花村「…………」

花村「……何でだ?」

比企谷「?」

花村「何で今頃、そんな事言うんだ?」

花村「由比ヶ浜さん、もうお前に告ってるんだぞ?」

花村「いまさら俺が告白しても撃沈確定じゃねーか……」

比企谷「…………」

比企谷「まあ、一言で言うなら……仕返しだ」

花村「!?」


比企谷「お前は夏にこう言ってたな?」


花村「お前……いつまでもこのままでいられると思ってるのか?」

花村「『ある日』ってのは唐突に来るもんだぜ……」


花村「……っ」

比企谷「おまけに捨て台詞でこんな事も」


花村「どうするのかは、お前次第……」

花村「俺みたいに後悔する事が無い事を祈ってるぜ」


花村「…………」

比企谷「…………」


比企谷「由比ヶ浜……もう帰っちまう」

比企谷「時間はあまり無い」

比企谷「それを言いたかった」

花村「…………」

花村「……お前は、比企谷はいいのか?」

花村「俺が由比ヶ浜さんに告っても……」

比企谷「…………」

比企谷「正直、よく解らん」

花村「はあ?」

比企谷「どうでもいいって訳じゃない」

比企谷「俺も迷いながら、今の決断を下した」

比企谷「それが正しいんじゃないか?と思ってな……」

花村「…………」


花村「……そうかよ」

花村「ま……言いたい事はわかった」

比企谷「……そうか」

花村「…………」

花村「比企谷」

比企谷「ん?」

花村「俺も妙で、変な気持ちだが……言いたくなったから言っておく」

花村「ありがとうな」

比企谷「…………」

比企谷「どういたしまして」



―――――――――――


翌日の午後

堂島宅


一同「退院、おめでとう!」


     パンッ パンッ パパンッ


由比ヶ浜「えへへ……みんな、ありがとう!」

菜々子「菜々子、とっても嬉しい!」

堂島「おめでとう」

鳴上「おめでとうございます」

クマ「クマ! 本当に良かったクマ!」

花村「いや~まったくだぜ!」

比企谷「……これでアレが無ければな」




     由比ヶ浜の退院祝いは、足立さんの事もあって

     堂島さんが自宅の居間を提供してくれた。

     菜々子ちゃんと鳴上さんも由比ヶ浜の退院を祝いたがっていたそうなので

     渡りに船だったとか。



     まあ、そこはいいだろう。

     問題は里中達が祝いのケーキを作る!と言い出して

     新たな犠牲者を増やそうとしている事だ。



里中「お待たせ~」


     ドドンッ!!


比企谷「…………」

花村「…………」

菜々子「うわぁ、おっきい!」

堂島「これはすごいな」

鳴上「大きいのはいい事だ」

比企谷「……どうしてか、白色彗○帝国の要塞に見える」

花村「……俺はドラ○ュラの城に思える」

里中「外野、うるさいじゃん」


鳴上「?」

天城「それはともかく、食べてみて?」

菜々子「うん!」

花村「わー!! 待って!」

花村「せめて最初の犠牲者は、菜々子ちゃん以外で!」

雪ノ下「じゃあ花村くん、どうぞ」

花村「なんでだよ!?」

比企谷「安心しろ。 骨は拾ってやる」

花村「ううう……」

鳴上「……何がそんなに嫌なのか分かりませんが」

鳴上「俺から行きましょうか?」


花村「!」

比企谷「!」

比企谷「い、いや……鳴上さんにトップ犠牲者をやらせる訳には」

鳴上「さん付けは、もういいですよ」 クスッ

花村「そ、そう? じゃあ鳴上……俺らもさん付けは無しってことで」

比企谷「改めてよろしく」

鳴上「ああ。 花村、比企谷」

     ハハハ……

里中「さて、美しい友情が深まったところで」

里中「切り分けたケーキどうぞ、鳴上くん!」

鳴上「ありがとう」

花村「ちょ、おま!? いつの間に!?」


鳴上「いただきます」

比企谷「ああ……」

     パクッ モグモグ……

鳴上「うん、美味しい」

花村「え」

比企谷「え」

鳴上「みんなもどうぞ。 美味いですよ?」

花村「……お世辞、言わなくてもいいんだぞ?」

比企谷「まさかの味覚障害……とか?」

里中「さっきから失礼すぎでしょ」

白鐘「とにかく、お二人も食べてみてください」


花村・比企谷「…………」

     パクッ モグモグ……

花村・比企谷「!!」

花村・比企谷「美味い!?」

里中「ふふ~ん♪ どんなもんでしょ?」

天城「少しは見直してくれたかな?」

花村「信じらんねぇ! 真面目に美味いじゃねーか!」

比企谷「奇跡って……本当にあるんだな」

りせ「相変わらず素直じゃないなぁ、比企谷先輩」

雪ノ下(……まあそう言いたくなる気持ちも分かるけど)

白鐘(ケーキの材料を買う段階でスパイスとか魚介類を選ぼうとしますし)

白鐘(スポンジも4回目にして、やっとまともに焼けましたから……)


由比ヶ浜「うわぁ! 本当に美味しいよ、みんな!」

里中「うん、どんどん食べてね!」

菜々子「美味しい!」

堂島「良かったな、菜々子」

菜々子「うん!」

クマ「ムホホ! 美味しいクマ!」


     アハハハハハ……


―――――――――――


比企谷「……お? もうこんな時間か……」

比企谷「みんな、そろそろ遅い時間だぞ?」


里中「わ! ホントだ……もうこんな時間じゃん」

天城「楽しかったからあっという間だったね、千枝」

花村「だな。 もうそろそろ帰らないと……」

クマ「えー……」

由比ヶ浜「えー……」

菜々子「えー……」

比企谷「おい由比ヶ浜……小学生とクマに同調するなよ」

由比ヶ浜「だって楽しいんだもん」

クマ「そう! その通りクマ!」

菜々子「うん!」

雪ノ下「…………」

雪ノ下「また、みんなで集まってパーティを開きましょう? 由比ヶ浜さん」


由比ヶ浜「! ……ゆきのん」

雪ノ下「この先、みんなもいろいろあって時間も取れなくなって」

雪ノ下「簡単に会えなくなるかもしれない」

雪ノ下「でも……私もまた、みんなで集まりたいって思ってるから」


一同「…………」


里中「……うん」

里中「また、みんなで集まろうじゃん!」

里中「これで終わりなんて、絶対いやだもん!」

天城「うん! 私もだよ、千枝」

りせ「そうだよ! その通りだよ!」


菜々子「菜々子もおんなじだよ!」

クマ「クマも! クマも!」

白鐘「当たり前ですよ」 クスッ

鳴上「……俺も居ていいのか?」

花村「もちろんだぜ、鳴上!」

堂島「その時は、また場を貸そう」

堂島「出来る限り、としか言えないがな」

比企谷「十分ですよ、堂島さん」


     ハハハハ……


―――――――――――


里中「それじゃ、みんな。 またね!」

花村「おう! 里中。 じゃあな! クマも行くぞ!」

クマ「クマ!」

天城「またね、千枝、花村くん、クマくん」

雪ノ下「じゃ、由比ヶ浜さん。 天城屋へ戻りましょう?」

由比ヶ浜「うん! 菜々子ちゃん、鳴上くん、堂島さん」

由比ヶ浜「今日はありがとうございました!」

菜々子「またね! 結衣お姉さん!」

鳴上「また、いつか」

堂島「また来た時は遠慮なく訪ねてくれ。 菜々子も喜ぶしな。 歓迎する」

由比ヶ浜「はい! それじゃ、また!」


由比ヶ浜「ヒッキーもまたね!」

比企谷「ああ」

     ゾロ ゾロ ゾロ…

比企谷「…………」

比企谷「堂島さん」

堂島「……ああ、わかっている」

堂島「すまないが悠、菜々子と一緒に席を外してくれ」

鳴上「わかりました」

鳴上「菜々子?」

菜々子「うん、お兄ちゃん」

     スタ スタ スタ…

堂島「…………」

比企谷「…………」


堂島「……いい友人達だな」

比企谷「ええ」

堂島「それで、だが……足立の奴な」

比企谷「…………」

堂島「取り調べにも素直に応じているし、正直、殺害の方法以外で」

堂島「不審な点は見つかっていない」

堂島「立件は可能だろうが……裁判でどうなるかは分からん」

比企谷「…………」

堂島「警察は身内のしでかした事件なだけに」

堂島「余り派手な発表はしないだろう」

比企谷「……そうですか」


堂島「ただ……」

比企谷「ただ?」

堂島「…………」

堂島「……俺の思い過ごしなのかもしれんが」

堂島「足立の奴……両親と面会してから様子がおかしい気がする」

比企谷「…………」

堂島「どこがどう……という訳じゃないんだがな」

比企谷「……そうですか」

堂島「…………」

堂島「君は足立の部屋に住む事を決めたそうだが」

堂島「本当にいいのか?」

堂島「保護者代理を引き受けたんだ。 俺の家に来てもいいんだぞ?」


比企谷「いえ。 そのご好意だけで十分です」

比企谷「来年の三月までですから……気にしないでください」

堂島「…………」

比企谷「足立さんの様子……心配ですね」

比企谷「近いうちにまた面会に行きますので」

比企谷「その時は、またよろしくお願いします」

堂島「あ、ああ……」

比企谷「……それじゃ、俺、帰ります」

比企谷「今日はありがとうございました」

堂島「…………」



―――――――――――


翌日の朝

天城屋 玄関ロビー


花村「よう! 天城」

天城「あれ? 花村くん?」

天城「どうしたの? こんな朝に……」

花村「ハハハ……ちょいとヤボ用ってやつさ」

花村「で、だ。 天城に折り入って頼みたい事があってよ……」

天城「頼みたい事?」

花村「……由比ヶ浜さんを呼び出して欲しいんだ。 それも出来れば内密に」

天城「!」

花村「頼む、天城……」

天城「…………」



―――――――――――


天城屋 個室


由比ヶ浜「やっはろー! 花村くん!」

花村「ああ、由比ヶ浜さん」

花村「わざわざごめんな……」

由比ヶ浜「ううん。 それで? 話って何かな?」

花村「あ~……それなんだけど」

由比ヶ浜「うん」

花村「…………」

花村「俺さ」




花村「由比ヶ浜さんの事……好きなんだ」



由比ヶ浜「…………」

由比ヶ浜「……うん?」

由比ヶ浜「ええええええええっ!?」///

花村「ハハハ……予想通りの反応だな」

由比ヶ浜「って! 花村くん!」

由比ヶ浜「そういう冗談は女の子、一番嫌がるんだからね!?」

花村「……冗談なんかじゃないよ」

由比ヶ浜「え……」


花村「最初はさ、ああこの娘、比企谷の事 好きなんだなってのが丸わかりで」

花村「応援したいな、くらいに思ってた」

由比ヶ浜「~~~っ」///

花村「でもさ……」

花村「いつくらいからかな?……もうよく分かんねぇけど」

花村「比企谷を見る由比ヶ浜さんの目を」

花村「俺にも向けて欲しいって、思う様になった」

由比ヶ浜「…………」

花村「けど……俺は由比ヶ浜さんの気持ちを知ってたから」

花村「表面上は応援するスタンスを取る事にして、自分の心を騙した」

花村「それが一番いいと思ってさ……」

由比ヶ浜「…………」


花村「俺……いつもおちゃらけて、軽口叩いていたけど」

花村「君と話す時は ちょっと辛かったんだぜ?」

花村「だから……キッカケもあったけど、自分の気持ちにウソつくのやめる事にした」

由比ヶ浜「…………」

花村「もう一度言うな?」

花村「俺は、由比ヶ浜さんの事、好きだ」

由比ヶ浜「…………」

花村「…………」

由比ヶ浜「……ごめん……なさい」

花村「……うん」

由比ヶ浜「…………」


花村「じゃあさ、少し意地悪するけど」

花村「理由を聞かせて欲しい」

由比ヶ浜「っ!?」

花村「頼むよ。 今後の参考にしたいしさ」

由比ヶ浜「…………」

由比ヶ浜「……花村くんは、悪くないと思う」

由比ヶ浜「でも、私は……私には、ヒッキーが」

花村「おっと、そうじゃない。 比企谷を使うのは反則」

由比ヶ浜「え……」

花村「俺が聞きたいのは」



花村「由比ヶ浜さんが俺をどう思っているのか、なんだよ」


由比ヶ浜「!!」

花村「それも出来るだけストレートに……そう!」

花村「あの世界の【シャドウ】みたいに思った事、言って欲しい」

由比ヶ浜「…………」

由比ヶ浜「……私」

由比ヶ浜「花村くんの事は……そんなに気にして無かった」

花村「…………」

由比ヶ浜「正直、告白されて一番最初に思った事は」

由比ヶ浜「困ったな……だった」

花村「……そっか」

由比ヶ浜「で、でも、それは『嫌い』って意味じゃなくて!」

由比ヶ浜「何て言うか、その、上手く言えないけど、嫌って訳じゃな」


花村「由比ヶ浜さん」

由比ヶ浜「! ……う、うん」

花村「…………」

花村「ありがとう。 もういいよ」

由比ヶ浜「…………」

花村「困らせてごめん……でも、俺にとって必要な事だったんでね」

由比ヶ浜「花村くん……」

花村「時間取らせて悪かった。 帰る準備してたんだろ?」

由比ヶ浜「う、うん……」

花村「じゃ……また駅で。 必ず見送りに行くから」

由比ヶ浜「え……あ、うん」



―――――――――――


花村「…………」

天城「……花村くん」

花村「! ……天城か」

天城「これ……使う?」つ(ハンカチ)

花村「…………」

花村「いや……気持ちだけ貰っておく。 ありがとうな」 ゴシゴシ…

天城「ううん」

花村「…………」

花村「もしかして、聞いてた……とか?」

天城「えっと……やっぱり、その、気になって」///

花村「うわ……」///


花村「……つーか、盗み聞きとか、感心しねーな」


里中「アハハ……ごめん、花村」

陽乃「ごめんねー花村くん」

雪ノ下「……私は、一応反対したんだけど」

りせ「てへへ……」

白鐘「……すみません、花村先輩」


花村「」


花村「ちょ!マジかよ!? 俺の玉砕、全面公開なわけ!?」///

花村「なんで白鐘とかまで居んの!?」///


里中「ままま、男は細かい事、気にしないじゃん?」

花村「するっての!」///

花村「ああもう……カッコ悪すぎんだろ、こういうの……」///

天城「そんな事ないよ、花村くん」

天城「上手く言えないけど……ちょっとカッコよかった」

花村「マジで!?」

りせ「そういうのはカッコ悪いと思います」

陽乃「女の子はね……形はどうあれ」

陽乃「真剣に『好き』って言われると、案外コロッと落ちちゃったりするものなの」

陽乃「さっきの花村くんは、なかなかいい線いってたわよ?」

花村「そ、そうですか……」


白鐘「その……大丈夫ですか?」

花村「…………」

花村「……今のところはな」

花村「なんか水を差されて、それどころじゃねーって気もするけど」

花村「俺的にはスッキリした……と思う」

里中「そっか……」


花村(…………)

花村(何て言うか……ずっと貰いたかった『返事』を聞かせてもらった気がする)

花村(言いたくても言えなかった気持ちに対する答えを、やっと……)

花村(…………)

花村(小西先輩……俺)

花村(もう、大丈夫だと思います)



―――――――――――


足立宅


     ピンポーン

比企谷「ん?」

比企谷「はーい」

     ガチャ

比企谷「! 由比ヶ浜……」

由比ヶ浜「…………」

比企谷「どうした? まだ出発の時間には早くないか?」

由比ヶ浜「……約束」

比企谷「…………」


由比ヶ浜「約束、したでしょ? ヒッキー」

比企谷「…………」

比企谷「忘れてた訳じゃない」

由比ヶ浜「…………」

比企谷「……とりあえず、上がるか?」

由比ヶ浜「……うん」

―――――――――――

比企谷「ほら、こんなものしかないが……お茶」

由比ヶ浜「ありがとう」 ズズッ…

由比ヶ浜「うん、おいしい」

比企谷「…………」


由比ヶ浜「ふう……」

由比ヶ浜「まず、私から言っておくね?」

比企谷「おう」

―――――――――――

比企谷「『特別』……ね」

由比ヶ浜「うん」

比企谷「…………」

比企谷「嬉しくもあるし、ありがとう……と、言うのも変な感じだな」

由比ヶ浜「…………」

由比ヶ浜「……で、どうなのかな?」

由比ヶ浜「私の……告白への返事」///


比企谷「…………」

由比ヶ浜「…………」

比企谷「……もう少し」

比企谷「もう少し待ってくれないか? 由比ヶ浜……」

由比ヶ浜「え……」

比企谷「今の俺……いろいろありすぎて、心の整理がつかなくてな」

由比ヶ浜「…………」

比企谷「言い訳に聞こえるだろうけど……」

比企谷「今は、そういう事を考える余裕が」

由比ヶ浜「そんなの納得できないっ!」

比企谷「…………」


由比ヶ浜「私……私っ! いつまでもこんな宙ぶらりんの状態、嫌だよ!」

由比ヶ浜「はっきりして! 私か、ゆきのんか! それともあの白鐘って娘か!」

比企谷「…………」

由比ヶ浜「私……もう帰っちゃうんだよ?」

由比ヶ浜「またしばらく……会えなくなるんだよっ……?」

比企谷「…………」

由比ヶ浜「私……うっ……メールとかで……っ……」

由比ヶ浜「断りの返事なんて……受けたくないよっ……!」

比企谷「…………」

由比ヶ浜「うっ……ぐすっ……ひっく……」

比企谷「…………」


比企谷「……約束する」

由比ヶ浜「……ぐすっ……?」

比企谷「どんな答えになろうとも、必ず、由比ヶ浜に直接言う、と」

比企谷「約束するから」

由比ヶ浜「…………」

由比ヶ浜「…………」

比企谷「…………」

由比ヶ浜「……わかった」

比企谷「すまない、由比ヶ浜……」

比企谷「本当にすまない……」

由比ヶ浜「…………」

由比ヶ浜「……?」



―――――――――――


八十稲羽駅 ホーム


里中「向こうでも元気でね、由比ヶ浜さん」

天城「またね、由比ヶ浜さん」

由比ヶ浜「ありがとう、里中さん、天城さん」

クマ「さみしくなるクマ……」

りせ「その気になれば、いつでも会いに行けるよ、クマ!」

白鐘「どうか、お元気で」

由比ヶ浜「うん!」

陽乃「もうすぐ冬休みなんだから、もっと居たらいいのに……」

雪ノ下「姉さん。 無理は言わないで」

由比ヶ浜「あはは……」


花村「えっと……元気でね、由比ヶ浜さん」

由比ヶ浜「う、うん……」

比企谷「由比ヶ浜……」

由比ヶ浜「! ヒッキー……」

比企谷「これ……」 ゴソゴソ…

比企谷「慌てて作ったんだが……良かったら食ってくれ」

比企谷「ただのおにぎりだけど、ご両親の分もある」

由比ヶ浜「ありがとう、ヒッキー。 美味しく食べさせてもらうね」

比企谷「またな」

由比ヶ浜「うん」



     まもなく、1番線に停車中の列車が発車いたします

     黄色い線の内側へと……


由比ヶ浜「……ゆきのん!」

雪ノ下「え?」


由比ヶ浜「ヒッキーの様子……しっかり見てて」

雪ノ下「!」

雪ノ下「……どういう意味かしら?」

由比ヶ浜「……わからない。 でも」

由比ヶ浜「今のヒッキー、何か、変……」

雪ノ下「…………」


由比ヶ浜「お願い、ゆきのん」

雪ノ下「…………」

雪ノ下「わかったわ」

由比ヶ浜「何か分かったら、連絡して欲しい」

雪ノ下「それもわかったわ」

由比ヶ浜「絶対だよ、ゆきのん……!」


由比ヶ浜「それじゃ、みんな!」

由比ヶ浜「またね!」

里中・天城「うん! またね!」

クマ「ユイちゃん、またね、クマー!」

りせ「由比ヶ浜さん、また会おうね!」

白鐘「いつかまた!」



     プシュー バタン☆

     ガタンゴトン ガタンゴトン…


比企谷「……行っちまったな」

雪ノ下「ええ……」

比企谷「ところで最後、何かヒソヒソ話していたけど……」

雪ノ下「他愛のない話よ」

比企谷「……そうかよ」

雪ノ下「…………」


雪ノ下(任せておいて、由比ヶ浜さん)



―――――――――――


翌日

八十稲羽警察署 面会室


比企谷「どうも、足立さん」

足立「……また君か」

比企谷「俺ですみませんね」

比企谷「これ、差し入れです。 後で食べてください」

比企谷「中身はたい焼きです」

足立「……そうかい」

比企谷「足りないものや欲しいものはありますか?」

比企谷「また持って来ます」

足立「来なくていいよ……鬱陶しい」


比企谷「…………」

足立「…………」

比企谷「……足立さん、ご両親とはどんな話をされました?」

足立「君には関係ない」

比企谷「…………」

足立「…………」

比企谷「……俺の母親」

比企谷「相当ショックを受けていました」

足立「……!」

比企谷「あの透ちゃんが!?と、信じられない様子でした」

足立「…………」


比企谷「…………」

比企谷「……そういうの」

比企谷「疲れますよね……」

足立「……っ」

比企谷「……足立さんは」

比企谷「拳銃が打てるから、という理由で刑事になったと言ってましたけど」

比企谷「どうして『警官』を選ばなかったんですか?」

足立「…………」

比企谷「詳しく知りませんけど……」

比企谷「刑事になるのって、結構難しいって聞きます」

足立「…………」

比企谷「…………」


比企谷「……それじゃ足立さん」

比企谷「今日はこれで」

比企谷「また来ます」

足立「…………」

     ガチャ……キィ…… パタン

足立「…………」

足立「……クソッ」


比企谷「……それじゃ足立さん」

比企谷「今日はこれで」

比企谷「また来ます」

足立「…………」

     ガチャ……キィ…… パタン

足立「…………」

足立「……クソッ」



―――――――――――


数日後 クリスマスイヴ

ジュネス


花村「いらっしゃいませー!」

クマ「いらっしゃいクマー!」

―――――――――――

花村「ふー……やっと休憩だぜ」

クマ「ヨースケ、ここのところ やたらと忙しいけど」

クマ「どうしてクマ?」


花村「あー年末商戦って言って……どう説明すっかな?」

花村「ともかく年に何回か、お客さんが物凄く買い物したくなるっ!みたいな」

花村「そういう気分の時が来るんだよ」

クマ「およよ~ビックウェーブってやつクマね?」

花村「……何でそんな言葉知ってんのかは置いといて、まあそういう事だ」

クマ「ユキちゃん達が忙しいのも同じクマか?」

花村「おう。 天城屋も書き入れ時ってやつで」

花村「まあだいたい同じだな」

クマ「ふむふむ~勉強になるクマ!」


花村「…………」


花村(……とは言え)

花村(比企谷は何が忙しいんだ……?)

花村(久慈川は店やってるからともかく)

花村(里中は天城の手伝いするって言ってたし)

花村(白鐘にもバイト断られるとは思わなかったな……はあ)

花村(……ま、くよくよ考えても仕方ねーか)


花村「うし、そろそろ店に戻るぞ、クマ」

クマ「わかったクマ!」



―――――――――――




足立宅の玄関前


白鐘(……ついに来た)

白鐘(花村先輩と話をして……今日)

白鐘(他のみなさんは忙しく、時間がない事は調べてある)

白鐘(…………)

白鐘(卑怯なのは分かってる……でも)

白鐘(こんなチャンスは、もう来ないかもしれない!)

白鐘(覚悟を決めるんだ、白鐘直斗!)///


白鐘「…………」

白鐘「……よしっ」///

     ピンポーン

白鐘「…………」

     はーい

白鐘「!」

     ガチャ…

比企谷「お? 白鐘?」

白鐘「こ、今晩は、です。 比企谷先輩……」///


比企谷「どうした? こんな夜に」

白鐘「え!? そのっ……きょ、今日は、クリスマスイヴだし……」///

白鐘「比企谷先輩と……祝いたいかなって……思って、その……」///

比企谷「…………」

比企谷「お前だけか?」

白鐘「え?」

比企谷「……いや、何でもない」

比企谷「入ってくれ」

白鐘「は、はい」

比企谷「とりあえず上着脱いで、そこのコタツにでも座っててくれ」

比企谷「ハンガーはそこな」

白鐘「わ、わかりました」


白鐘(…………)

白鐘(ここが……比企谷先輩の住処)

白鐘(…………)

白鐘(あ……これ、冬休みの宿題……かな?)

白鐘(…………) パラパラ…

白鐘(……もうほとんど終わってるっぽい)

白鐘(勉強家なんだな……)


比企谷「待たせたな」

比企谷「ほら、コーヒー」

白鐘「あ、わざわざすみません。 いただきます」


比企谷「…………」

比企谷(クリスマス……か)

白鐘「ふう……あ、えと……これ」

     トン……

白鐘「買ってきたものですみませんが……」

白鐘「チキンとケーキです」

比企谷「お……美味そうだな」

白鐘「ハハハ……そうですね」

白鐘「ハハ……」


比企谷「……白鐘?」

白鐘「……すみません」

白鐘「僕は、こういうの……慣れてなくて」

比企谷「…………」

白鐘「幼い頃から探偵方面ばかりに興味が向いて」

白鐘「こういう……クリスマスパーティとかには無関心で、ほとんど参加した事がなくて」

白鐘「どうやったらいいのか……よくわかりません」

比企谷「…………」

比企谷「気にするな」

比企谷「俺も家族以外とは似た様なもんだし」

比企谷「詳しい作法なんて知りもしない」

白鐘「比企谷先輩……」


比企谷「とりあえず、メリークリスマスって言って、後は飲み食いすればいいと思う」

比企谷「……たぶん」

白鐘「ふふふっ」///

白鐘「やっぱり……勇気を出して、ここに来て良かった」///

比企谷「……勇気?」

白鐘「もし……他の人が居たら止めようかな、とも思ったんですけど……」///

白鐘「思い切ろうと思います」///

比企谷「…………」

白鐘「スーハー……スーハー……」

白鐘「ふう……」

比企谷「…………」

白鐘「……比企谷先輩」

白鐘「僕は、あなたの事が……」



白鐘「好きです」///


比企谷「…………」

白鐘「い、いきなりすぎ……ですよね」///

白鐘「でもっ……ウソとか、遊びとかじゃなくて」///

白鐘「本気で、恋人なりたい、という意味で」///

白鐘「僕は……あなたの事が好きなんですっ」///

比企谷「…………」

白鐘「…………」///

比企谷「…………」

白鐘「…………」///

比企谷「……白鐘」

白鐘「は、はいっ」///


比企谷「その……な」

比企谷「今は……俺、いろいろあって」

比企谷「…………」

比企谷「うん、戸惑ってる……という状態だ」

白鐘「え……」

比企谷「最低だよな……せっかく白鐘が勇気を出して言ってくれたのに」

比企谷「今の俺……どうしたらいいか、わからないんだ……」

白鐘「…………」

比企谷「すまん、白鐘」

比企谷「しばらく考えさせて欲しい」

白鐘「そ……そう…ですか」

白鐘「…………」


白鐘「じゃ、じゃあチキンでも食べますか?」

比企谷「そうだな」

比企谷「メリークリスマス」

白鐘「メリークリスマス」


―――――――――――


比企谷「送っていく、白鐘」

白鐘「……いえ」

白鐘「それ程遠くありませんし、大丈夫です」

比企谷「……そうか。 気をつけてな」

白鐘「どうも。 それでは、失礼します」


白鐘「…………」


白鐘(……おかしいな)

白鐘(何故……こんなに気持ちが沈んでいるんだろう)

白鐘(…………)

白鐘(はぐらかされた……とは思うけど)

白鐘(それ以上に、何か……)

白鐘(何かが……)

白鐘(…………)

白鐘(…………) ピッピッピッ…

     ルルルルル……ルルルルル……ガチャ

白鐘「あ、もしもし。 夜分すみません、白鐘です」


白鐘「突然ですみませんが、会って話せませんか?」

白鐘「ああ、もちろん今日でなくても構いません。 時間のある時で……」

白鐘「はい……はい……」

白鐘「…………」

白鐘「来年……そうですか……」

白鐘「あ、いえ、それでも構いません」

白鐘「雪ノ下先輩もお忙しいでしょうし……はい」

白鐘「…………」

白鐘「わかりました。 1月3日の午後、天城屋で……」

白鐘「それでは……」 ピッ…

白鐘「……ふう」

白鐘「…………」




     僕は……焦りすぎたんだろうか……

     それとも、気持ちを押し付けすぎたんだろうか……



     どうしてか……あの世界、テレビの中の世界の

     見通しが効かない霧が自分にかかってしまった様な……

     そんな錯覚を僕は感じていた。


>>812
Σ(゚д゚lll)
(゚д゚)
m(_ _)m

というところで今日はここまでです。

乙ー
母親が心配してる感じなのが何故だか知らないけどビビる

何やら不穏な空気が…
次回も楽しみにしてます

乙!

一体何が始まるんです?

今日このSS知って一気に読んでしまった

首を長くしてまってます

乙!

ここも転載禁止になるの?

ここはならないでしょ

お待たせして申し訳ありません……
ちょっとリアルでアクシデントが重なってしまい、続きが書けていない状況です。
今週は難しいかも知れないです……
楽しみにされている皆さん、本当にすみません。
生存報告でした。

あと、>>881>>882が二重投下になっていますね。

それから少し気になったので修正を……
>>13修正↓



―――――――――――


放課後

屋上


白鐘「お待たせしました、比企谷先輩」

比企谷「いや。 こっちこそ急に呼び出してすまん」

白鐘「それで、僕に話したい事って何でしょう?」///

比企谷「……これを見てくれ」つ(手紙)

白鐘「手紙……ですか?」

     ガサ ガサ…

白鐘「!? こ、これは!?」

比企谷「昨日、俺の住処の郵便受けに入っていたらしい」

比企谷「どう思う?」

白鐘「…………」

保守

まってます!



―――――――――――


大晦日の夜

足立宅


     コン コン

比企谷「……はーい」

     ガチャ…

花村「よう! 比企谷!」

花村「初詣に行こうぜ!」

クマ「センセイも行くクマよ~」

比企谷(……正直、明日にしようと思ってたんだけどな)

比企谷「わかった」

比企谷「つか、来るなら連絡してくれよ……」

花村「いーじゃねーかよ、これくらい」


辰姫神社


     ゴ~ン……  ゴ~ン……

比企谷「除夜の鐘か……」

花村「結構人が来てるな」

クマ「夜店も開いてるクマ!」

     ……ワ~!! ハッピーニューイヤー!!

比企谷「そういやカウントダウン見逃した」

花村「ま、いいんでね? それくらい」

花村「明けましておめでとう、比企谷、クマ!」

クマ「明けましておめでとうクマ!」

比企谷「明けましておめでとう、花村、クマ」


     ガランガランガランッ…… パンッパンッ

比企谷「…………」

花村「…………」

クマ「…………」

―――――――――――

クマ「ヨースケは何を願ったクマ?」

花村「ん? もっちろん、恋愛成就だ!」

クマ「れんあいじょうじゅ??」

比企谷「彼女作りたいって意味だ」

クマ「ヨースケはそればっかりクマね」

花村「うっせーよ!? そう言うクマは毎日腹一杯 飯食いたい、とかなんだろ!!」

クマ「むっふっふっ……違うクマ!」


花村「はあ? んじゃ何だよ?」

クマ「いつまでも、みんなが仲良く暮らせますように……クマ!」

花村「…………」

比企谷「…………」

クマ「どうしたクマ?」

花村「……いや。 なんつーか」

花村「ちょっと自己嫌悪だわ……」

比企谷「……純粋な分、結構来るな」

クマ「?」

花村「そういう比企谷はどんな願いをしたんだよ?」

比企谷「…………」


比企谷「……まあ」

比企谷「クマと似た様なもんかな」

花村「お前……それはズルくね?」

比企谷「喋る喋らないは自由意思だろ」

クマ「ヨースケ、負けを認めるクマ」

花村「クマ吉に言われると、もの凄くへこむぜ……」

比企谷「ははは……」

比企谷「…………」




     ――俺以外のみんなが、幸せになりますように――




―――――――――――


1月3日の午後

天城屋 雪ノ下の部屋


雪ノ下「はい、白鐘くん。 お茶」

白鐘「すみません。 いただきます」 ズズッ…

白鐘「ふう……」

雪ノ下「…………」

雪ノ下「それで、話って何かしら?」

白鐘「…………」

白鐘「雪ノ下先輩は、最近の比企谷先輩をどう思いますか?」

雪ノ下「……!」


白鐘「…………」

雪ノ下「…………」

雪ノ下「……実は」

雪ノ下「少し違和感を感じていたの」

白鐘「!」

白鐘「……どんな風に、ですか?」

雪ノ下「上手く言えないわ……それに」

雪ノ下「旅館の仕事が忙しくて、ここのところ比企谷くんに会えていないし」


白鐘「そうですか……」

雪ノ下「でも」

雪ノ下「由比ヶ浜さんから、比企谷くんの様子を見てて欲しいと頼まれているの」

白鐘「!」

白鐘「由比ヶ浜さんが?」

雪ノ下「ええ」

雪ノ下「見送りの別れ際にね」

白鐘「…………」


雪ノ下「……白鐘くんも何かおかしいと思える節(ふし)があるのかしら?」

白鐘「…………」

白鐘「……白状します」

雪ノ下「? 白状?」

白鐘「実は……去年のクリスマスイヴ」

白鐘「僕は比企谷先輩の家に行って……こ、告白しました」///

雪ノ下「!?」

白鐘「――でも」

雪ノ下「……?」

白鐘「比企谷先輩は……何て言うか……」

白鐘「『無関心』だった様に思えたんです」

雪ノ下「無関心……」


白鐘「あえて言葉にしましたが、そんな印象だった、というだけです」

白鐘「普段から感情を表に出さない人でしたけど……」

白鐘「どうにも言い知れない雰囲気でした」

雪ノ下「……そう」

白鐘「ただの勘違いならそれでいいんですが……」

白鐘「どうしたらいいのか、わからなくなったので話そうと思った次第です」

雪ノ下「…………」

雪ノ下「……ところで」

白鐘「はい」

雪ノ下「告白の返事はどうなったのかしら?」

白鐘「!!」///


白鐘「……そのっ」///

白鐘「比企谷先輩は、い、今言った状態でしたので……正しいかどうかは」///

雪ノ下「いいから。 聞かせてくれる?」

白鐘「…………」///

白鐘「か、考えさせて欲しい、と……」///

雪ノ下「……そう」

雪ノ下「…………」

白鐘「……?」

白鐘「雪ノ下先輩?」

雪ノ下「何かしら?」

白鐘「その……」

白鐘「僕が比企谷先輩に告白した事……ショックじゃないんですか?」


雪ノ下「…………」

雪ノ下「そうね……ショックと言えば、確かにそうだけど」

雪ノ下「白鐘くんが考えている方向じゃないわ」

白鐘「……え?」

雪ノ下「それに……由比ヶ浜さんからも告白したって聞かされてるし」

白鐘「はあ!?」

白鐘「い、いつの話ですか!? それ!?」

雪ノ下「生田目から助けて、意識を取り戻して数日後くらいよ」

白鐘「」

白鐘「そ、そんなに前から……」

雪ノ下「早い者勝ち、という訳でもないし」

雪ノ下「彼女の性格を考えると、比企谷くんからOKの返事を受けたら」

雪ノ下「絶対、私に報告すると思う」


雪ノ下「けど、それは無いから……たぶん、彼女も返事をもらっていないと推測できるわ」

白鐘「…………」

白鐘「……ずいぶん冷静ですね」

雪ノ下「…………」

白鐘「こんな事……僕が言うのもおかしいですけど」

白鐘「あなたは、告白しないんですか?」

雪ノ下「…………」

白鐘「…………」

雪ノ下「……いずれにしても」

雪ノ下「比企谷くんの様子、何かおかしいのは共通した認識、という事でいいかしら?」

白鐘「……ええ」


雪ノ下「となると……後はどう対処するのか、ね」

白鐘「…………」

雪ノ下「……状況は違うけど」

雪ノ下「夏休みにした方法はどうかしら?」

白鐘「どんな方法ですか?」

―――――――――――

白鐘「なる程……遊び倒す、ですか」

雪ノ下「花村くんが企画したから、少々不安だったけど」

雪ノ下「結果的に上手くいったわ」

白鐘「なら、反対する理由はありませんね」


白鐘「問題は比企谷先輩が来てくれるかどうか……」

白鐘「あと、僕はレジャー関連に詳しくないので、お役に立てそうもありません」

雪ノ下「その辺りは天城さんに相談してみるわ」

雪ノ下「花村くん達にも声をかけてみましょう」

白鐘「そうですね」

白鐘「ふふ……何だか上手く行きそうな気がしてきました」

雪ノ下「本当に手間がかかる人よね。 比企谷くんて……」

白鐘「……でも、とても温かい人です」

白鐘「素直ではありませんが」 クスッ

雪ノ下「そうよね」 クスッ

雪ノ下「それじゃ、そういう方向で話を進めておくわ」

白鐘「お願いします」



―――――――――――


面会室


比企谷「どうも、足立さん」

足立「……また君か」

比企谷「今日は差し入れ無しです」

比企谷「すみませんね」

足立「まあいいよ」

足立「取り調べばかりで退屈ではあるしね」

足立「君がこんなにしつこい奴だとは思わなかったけど」

比企谷「…………」


足立「で? 今日は何を話すんだい?」

比企谷「特に決めていませんよ」

足立「……は?」

比企谷「俺がここに来る理由は」

比企谷「あなたという人間を知るためです」

足立「…………」

足立「どういう意味だ?」

比企谷「そのままの意味です」

比企谷「深くも何ともない」

足立「……ふうん」

比企谷「…………」


足立「僕という人間、ね……」

足立「参考までに聞くけど、今の時点でどう判断してるんだい?」

比企谷「…………」

比企谷「夜中に泣いているんじゃないですか?」

足立「…………」

足立「……そんな訳無いだろ」

足立「僕はそこまでガキじゃない」

比企谷「……そうですか」

足立「何? 心理カウンセラーにでも成るつもりなのかい?」

比企谷「…………」


比企谷「ただの経験談です」

足立「……は?」

比企谷「俺は子供の頃……まあ今も子供ですが」

比企谷「学校をサボってブラブラした事があります」

足立「…………」

比企谷「当然、後で親に怒られました」

比企谷「俺は俺で……ちゃんと理由があったんですけどね」

比企谷「聞いてくれませんでした」

足立「…………」

比企谷「そこで俺は悔しさもあって悪ぶってみたんです」

比企谷「テレビで見た、不良みたく……」

比企谷「もちろんもっと怒られました」

足立「…………」


比企谷「今なら……それは当たり前だと思う事ができますけど」

比企谷「当時の俺は、少しふざけただけなのに……」

比企谷「どうしてこんなに怒られるのか、全くわかりませんでした」

足立「……あのねぇ」

足立「そんな幼少期の君と、今の僕を同一視しないで欲しいね」

比企谷「……そうですか」

比企谷「それならいいんです」

足立「…………」

比企谷「……俺は、あの時」

比企谷「親ですら自分を理解しようとしてくれないと思って」

比企谷「夜、泣きました」

足立「っ!!」


比企谷「…………」

足立「…………」

比企谷「それじゃ、今日はこの辺で」

     ガタタ……

足立「…………」

足立「……待ちなよ」

比企谷「……何ですか?」

足立「…………」

足立「どんな理由だった?」

足立「どんな理由で学校をサボったんだ?」

比企谷「…………」


比企谷「いつもじゃない時間を過ごしたかったんです」

足立「…………」

比企谷「自分は……みんなと違う事をしている」

比企谷「自分は誰とも違って、自由でいられる」

比企谷「それを実感したかった」

足立「…………」

足立「……で?」

足立「実感出来たのかい?」

比企谷「多少は……という感じでした」


足立「ぷっ……そうかい」

足立「それは高くついたね……」

比企谷「ええ」

比企谷「それじゃ……」

     パタン……

足立「…………」

足立「……誰とも違って……か」

足立「…………」


比企谷「…………」

     ピピピ…… ピピピ……

比企谷「……ケータイか」 ガチャ

比企谷「はい、もしもし」

比企谷「……花村か」

比企谷「…………」

比企谷「は? スキー?」

比企谷「いきなりだな、おい……」

比企谷「けど……俺は今、忙しくてな……は?」

比企谷「…………」

比企谷「……日帰り……マジっすか」


比企谷「…………」

比企谷「……わかったよ」

比企谷「明後日の朝、天城屋の前ね」

比企谷「…………」

比企谷「道具は全部レンタルか……それはありがたい」

比企谷「しかし、今シーズン中なのに よくレンタル受けれたな?」

比企谷「…………」

比企谷「…………」

比企谷「……ああ、陽乃さんね。 納得」

比企谷「たぶん引率でついてくるんだろ?」

比企谷「…………」

比企谷「カンじゃない。 経験則だ」


比企谷「ともかく要件はわかった」

比企谷「じゃ、当日会おう……」

     ブッ…… ツー ツー

比企谷「ふう……」

比企谷「…………」

比企谷(……まだまだって事か)

比企谷(…………)

比企谷(どうしたもんかな)

比企谷「はあ……」



―――――――――――


スキー当日の朝


材木座「久しぶりであるな! 同志、比企谷!」

比企谷「」

比企谷「材木座!? 何で八十稲羽に居るんだよ!?」

材木座「吾輩だけでは無いぞ!」

比企谷「え」

葉山「やあ、ヒキタニ君! 久しぶりだね」

川崎「久しぶり」

小町「やっほー! お兄ちゃん、久しぶり!」

比企谷「」

小町「どうしたの? お兄ちゃん。」

小町「大事な妹の事、忘れちゃった訳じゃないよね?」


比企谷「……ちょっと待ってくれ」

比企谷「今、俺の中で、ものすごい大混乱が起きている……」

比企谷「とりあえず……材木座達はまだしも」

比企谷「小町は何でここに居るんだ? お兄ちゃんは聞いていませんよ?」

小町「言ってないから当たり前だね♪」

比企谷「……その笑顔、なんとなく怖いんですけど」

花村「よっしゃ! サプライズ成功だぜ!」

比企谷「お前か、元凶は……」

陽乃「もちろん脚色は私♪」

比企谷「…………」


比企谷「まあ、いいです」

比企谷「それじゃ行きましょうか?」

小町「え?」

比企谷「何だよ?」

小町「う、ううん……」

比企谷「多分だが……おふくろの性格からして」

比企谷「俺の様子見をするついでってところだろ?」

小町「……うん」

小町(それはそうだけど……それでも私を心配するのがお兄ちゃんなのに)

小町(小町的にはポイントダダ下がりだよ……)

比企谷「……まさかと思うが」

比企谷「由比ヶ浜や戸塚まで居ないだろうな?」

川崎「……いちおう二人も誘ったんだけどね」

川崎「二人共、今回は遠慮するってさ」


比企谷「そうか」

川崎「……?」

川崎「何だい? その態度」

比企谷「は?」

川崎「まるで二人が来なくて良かった、みたいに取れるんだけど?」

雪ノ下「川崎さん」

川崎「……雪ノ下さん」

雪ノ下「突然だったから説明不足だけど」

雪ノ下「いろいろあったの。 私達……」

川崎「…………」

川崎「そうかい」


川崎「ま、こっちはスキーができれば文句はないよ」

雪ノ下「ごめんなさい」

川崎「もういいって」

川崎「初顔合わせも多いし、挨拶してくる」

雪ノ下「…………」

比企谷「…………」

比企谷「……で?」

比企谷「後は誰が来るんだ?」

雪ノ下「鳴上くんと菜々子ちゃんよ」

比企谷「ああ……冬休みだし、鳴上、こっちで過ごすつもりか」

比企谷「納得……」

雪ノ下「…………」



―――――――――――


比企谷「ところで葉山」

葉山「ん?」

比企谷「取り巻きの連中はどうした?」

葉山「>>1がよく知らないから出したくなかったみたいだ」

比企谷「メタ発言は止めろ!」

葉山「はは、冗談だよ」

葉山「僕らだって、いつもつるんでいる訳じゃない」

葉山「冬休みはそれぞれで過ごしてる。 それだけさ」

葉山「僕がここに来たのは、川崎さんや材木座くんに誘われたのと」

葉山「君と雪ノ下さんがどうしてるのか、気になったからだ」


比企谷「雪ノ下はともかく、俺の心配なぞお前はしてないだろ」

葉山「……それはちょっと心外だね」

葉山「君がここに転校する時、送別会に参加した一人としては」

比企谷「…………」

葉山「まあ……強いて言うなら」

葉山「『今』心配になったかな?」

比企谷「俺の言ってる事、間違ってないじゃねーか」

葉山「ははは……まあいいじゃないか」

葉山「みんなで仲良くスキーを楽しもう?」

比企谷「…………」


ゲレンデ


菜々子「うわあ! 真っ白だね、お兄ちゃん!」

鳴上「そうだな、菜々子」

菜々子「菜々子、雪だるま作りたい!」

鳴上「ああ、いいぞ」

小町「小町も手伝おうか?」

菜々子「え!? いいの?」

小町「うん! 小町的に菜々子ちゃんポイント高いからいいよ!」

菜々子「え? ええと……?」

比企谷「あー気にしないでくれ。 菜々子ちゃんの事、気に入ったという意味だから」


鳴上「そういう事ならお願いしよう」 ニコッ

小町「は、はいっ」///

比企谷「……小町? お兄ちゃん的に不安な反応なんですけど?」

小町「もうっ! ゴミぃちゃん、手伝わないならあっちに行っててよ!」///

比企谷「久しぶりの兄妹再会&会話なのに……お兄ちゃんショックです」

材木座「同志比企谷! 吾輩も手伝おうぞ!」

クマ「クマも手伝うクマ!」

材木座「吾輩は幼女の味方であるからな!」

比企谷「お前はどっか行ってろ、材木座」

材木座「何たる扱いっ! 同志比企谷は今、ツン期であるのか!?」

比企谷「お前に対してデレる事なぞ一生ない!!」


雪ノ下「…………」

白鐘「…………」

里中「どう? 比企谷くん、元気になってる?」

雪ノ下「! 里中さん……」

白鐘「……まだわかりません」

天城「そうなの?」

里中「こう言っちゃなんだけど……あたしはいつも通りに見えるけどなー」

白鐘「……それならそれで、いいんですけどね」

天城「具体的に、どう元気がないのかな?」

川崎「……そいつはちょっと違うな」


里中「! ええと……川崎…さん、だっけ?」

天城「違うって、どういう事かな?」

川崎「横からごめん」

川崎「あくまであーしの意見だけど……あいつ」

川崎「どことなく諦めてる印象がある」

雪ノ下「!」

白鐘「!」

里中「諦めてる?」

天城「どういう事かな?」

川崎「……そこまではね。 ただ」

川崎「雪ノ下さんが何を心配しているのかは、わかった気がする」

雪ノ下「川崎さん……」

白鐘(諦めている……)


花村「くう~!!」

花村「やっぱいいよな、スキー場!!」

里中「うわ、突然出てこないでよ花村」

花村「へへっ! なんつーの?」

花村「水着とか浴衣もいいけど、スキーウェアって」

花村「女の子の可愛さが すげーアップする感じだしな!」

川崎「……ウザッ」

花村「え?」

川崎「まあ、挨拶の時から思ってたけど」

川崎「そういうの止めた方がいいよ、あんた」

花村「……えーと」

あーしさん一人称とられちゃってまあ

すみません、川崎の一人称違います?アニメしか見てないので……

それ川崎じゃなくて三浦じゃねとマジレス

三浦!? あーしって三浦の事だったのか!!
大失敗勘違い……
ググって調べたら川崎の一人称は「あたし」か……うう、書き直さねば……

というわけで、めちゃくちゃ中途半端ですが今日はここまでです。
明日にでも……ってもう日付変わってるし。
ともかく、投下しますので……ご了承ください。

乙ー

先に3スレ目をスレ立てしました。

3スレ目
比企谷「八十稲羽に転校…え?マジで?…」 3スレ目 - SSまとめ速報
(http://jbbs.shitaraba.net/bbs/read.cgi/internet/14562/1394614382/)

>>949>>950は無かった事にして始めます。


里中「! ええと……川崎…さん、だっけ?」

天城「違うって、どういう事かな?」

川崎「横からごめん」

川崎「あくまであたしの意見だけど……あいつ」

川崎「どことなく諦めてる印象がある」

雪ノ下「!」

白鐘「!」

里中「諦めてる?」

天城「どういう事かな?」

川崎「……そこまではね。 ただ」

川崎「雪ノ下さんが何を心配しているのかは、わかった気がする」

雪ノ下「川崎さん……」

白鐘(諦めている……)


花村「くう~!!」

花村「やっぱいいよな、スキー場!!」

里中「うわ、突然出てこないでよ花村」

花村「へへっ! なんつーの?」

花村「水着とか浴衣もいいけど、スキーウェアって」

花村「女の子の可愛さが すげーアップする感じだしな!」

川崎「……ウザッ」

花村「え?」

川崎「まあ、挨拶の時から思ってたけど」

川崎「そういうの止めた方がいいよ、あんた」

花村「……えーと」


里中「まあまあ、川崎さん」

里中「花村は元からこういう性格で、慣れは要るけど」

里中「基本、いい奴じゃん?」

天城「言いたい事はわかるけど……多めに見てあげて欲しいな」

川崎「…………」

川崎「そうかい。 そいつは悪かったね」

川崎「じゃ……あたしは一足先に頂上に行ってるから」

     スタ スタ スタ…

花村「…………」

花村「なんつーか、女比企谷って気がする……」

里中「それはさすがに言いすぎじゃん?」

天城「気持ちはわかるけどね」


雪ノ下「みんな、気を悪くしないで」

雪ノ下「正直、人当たりがいい人ではないけど」

雪ノ下「悪い人じゃない」

花村「わかってるって、雪ノ下さん」

花村「何だかんだ言いながら、比企谷を元気づける・イン・スキーに」

花村「はるばる来てくれたんだしな!」

雪ノ下「…………」


雪ノ下(実を言えば……彼女が来てくれるなんて意外だった)

雪ノ下(それに由比ヶ浜さんと戸塚くん……)

雪ノ下(確かにいろいろあったけど、断られるとは思わなかった)

雪ノ下(ここに来づらい、という理由はわかるのだけど……)



―――――――――――


川崎「比企谷」

比企谷「ん?」

川崎「ちょっと話がある」

比企谷「何だ? 昼飯食い足りなかったか?」

川崎「……お前、由比ヶ浜と何があった?」

比企谷「…………」

川崎「…………」

比企谷「別になn」

川崎「あたしが今回ここに来たのは、由比ヶ浜の様子がおかしかったからだ」

比企谷「…………」

比企谷「どんな風にだよ?」


川崎「知らん」

比企谷「あのなぁ……」

川崎「あたしが気になったのは、誘った時」


川崎「今回の事を予想してたみたいだったって事」


比企谷「…………」

川崎「……まあ」

川崎「あまり深く突っ込むのは止めとくけど」

川崎「みんなお前を心配してるって自覚しろ」

比企谷「……わかった」

川崎「……?」

川崎「やけに素直だね」


比企谷「俺はいつも素直だろ」

川崎「面白くない冗談は止めな」

比企谷「話はそれだけか?」

川崎「…………」

川崎「ああ……」

比企谷「じゃ……そろそろ行こうぜ」

川崎「…………」


川崎(……けっ。 胸クソ悪いね)

川崎(まるで……)

川崎(…………)








     昔のあたしみたいだよ……








―――――――――――


夕方

天城屋 玄関ロビー


天城「みなさん、お疲れ様でした」

雪ノ下「今宵は、天城屋にてどうぞおくつろぎ下さい」

     オオー!

材木座「何たる僥倖(ぎょうこう)!! 何という破壊力!!」

材木座「これ程の和服美少女女将が二人も同時に存在するとはっ!!」

材木座「吾輩のインスピレーションが極限にまで高まっておるぞ! 同志比企谷!」

比企谷「さよけ」


小町「うわぁ……! 二人共大和撫子みたいで、とっても綺麗です!」

小町「あ、今の小町的にポイント高い」

菜々子「お姉さん達、本当に綺麗だね! お兄ちゃん!」

鳴上「そうだな、菜々子」

クマ「ムホホッ! 今日もお泊りクマ!」


葉山「これはこれは……眼福だね」

花村「まったくだな。 里中ももう少しおしとy」

里中「……顔面靴跡の刑を喰らいたい?」

花村「さ、里中も充分可愛いって!」


葉山(……この人は、材木座くんと違うタイプの残念な人だな)

川崎(……がっかりイケメンってとこか)


陽乃「いらっしゃい、みんな」

陽乃「お部屋に案内するわ」

白鐘「お世話になります」



―――――――――――


夕食後


比企谷「小町。 それで、母さん達の様子はどうなんだ?」

小町「ん? 普通だよ?」

比企谷「そうか……」

小町「……『普通』を上手く演じてるかな」

比企谷「!」

小町「…………」

小町「正直言うとね……」

小町「二人共、落ち着きが無くなってる感じしてる」

小町「私にバレてないって思ってるみたいだけど……そういうのって」

小町「分かっちゃうものだよね」

比企谷「…………」


小町「お兄ちゃん」

比企谷「ん?」

小町「お兄ちゃんは、どうして……小町達のところに帰らないの?」

比企谷「…………」

比企谷「説明しただろ」

比企谷「前々から決まってた予定を変える必要はないって」

小町「…………」

比企谷「俺が少し我慢すればいいだけ……あと2ヶ月とちょっとだ」

小町「……おかしいよ」

比企谷「小町?」

小町「お兄ちゃん、絶対おかしい!」

小町「気持ち悪いでしょ!? 普通!」

小町「酷い事した人が住んでたんだよ!? 何で平気なの!?」


比企谷「落ち着け、小町……」

比企谷「住処なんてものは、そこらの道具と同じだ。 値段が高いけどな」

比企谷「悪い奴に使われたからといって機能が損なわれる訳じゃない」

比企谷「だから、これでいいんだよ」

小町「…………」

小町「……違う」

比企谷「小町……」

小町「小町、お兄ちゃんの言ってる事、わかんないよ!!」

     ダッ!

比企谷「…………」

比企谷「ふう……」


雪ノ下「……比企谷くん」

比企谷「!」

比企谷「……雪ノ下か」

雪ノ下「妹さんと何を話したの?」

比企谷「…………」

比企谷「俺、帰るわ」

雪ノ下「……え!?」

比企谷「今日は楽しかったって」

比企谷「花村達によろしく言っといてくれ」

比企谷「じゃあな」

雪ノ下「ま、待ちなさい、比企谷……」


宿泊客「あのー、女将さん」

宿泊客「このお土産っておいくらですか?」

雪ノ下「!」

雪ノ下「あ、はい。 こちらは――」


雪ノ下(…………)

雪ノ下(どうしたのよ……比企谷くん)

雪ノ下(あなたは、いったい何がどうなってしまったの!?)

雪ノ下(何かを抱え込んだの?)

雪ノ下(どうして言ってくれないの……)

雪ノ下(どうして……)

雪ノ下(…………)




     そんな事を考えながら……私は

     今までの比企谷くんもそうだった事を思い出していた。

     そう……比企谷くんは、いつも通り。



     彼は、いつも自分の考えを話さない。

     もっと正確に言うと、真意を話さない。

     誰に相談する事なく、行動に移している。








     どんな結果になるのか、わかっていながら……







―――――――――――


翌日の朝

天城屋 玄関ロビー付近


川崎「巽屋?」

天城「ええ」

天城「昨年末くらいからお試しにどう?と置いてある商品だよ?」

里中「おはよー雪子……って」

里中「川崎さん? どうしたの?」

天城「これだよ、千枝」

里中「ぬいぐるみがどうかしたの?」


川崎「違う、編みぐるみ!」

里中「へ?」

川崎「それも……これ手作りだよ」

川崎「恐ろしいくらいキメ細やかに編まれて……すごい、としか言い様がない!」

天城「それでね、これどこから仕入れたの?って尋ねられて……」

里中「そういう事」

川崎「一体どんな奴が作ってるのか気になってね」

川崎「ぜひ、会って話がしたいんだ」

里中「ふうん……でも、確かに可愛いね、これ」

川崎「で、続きなんだけど……」

雪ノ下「あら、川崎さん?」

白鐘「どうかしたんですか?」



―――――――――――


白鐘「そうですか……巽屋に」

里中「菜々子ちゃんや小町ちゃんも喜びそうだよね」

天城「みんなも誘ってみる?」

川崎「あたしは早く行きたいんだけど……」

雪ノ下「それじゃあ……私が案内するわ」

川崎「ホント!? 助かるよ!」

白鐘「僕も付き合います。 ちょうどチェックアウトを済ませたところなので」

白鐘(比企谷先輩の住処は巽屋の先だし……)

川崎「それじゃ行こう!」



―――――――――――


巽屋


完二「ウッス、いらっしゃ……って!?」

白鐘「どうも、巽くん」

完二「ひ、久しぶり、だな……」///

川崎「?」

雪ノ下「…………」

完二「ところで……どうした? うちに何か用か?」

白鐘「ああ、それなんですが」

白鐘「こちらの……川崎さん、という方が、ここの編みぐるみを気に入ったみたいで」

川崎「単刀直入に言うよ?」

川崎「あたし、これを作った奴と話がしたいんだ! ぜひ、紹介して欲しい!」


完二「お? ああ、いいぜ」

川崎「ほ、本当か!? やった!」

雪ノ下「良かったわね、川崎さん」

川崎「ああ!」

完二「…………」

白鐘「…………」

雪ノ下「…………」

川崎「…………」

川崎「……おい?」

完二「ああ?」

川崎「どうして呼びに行かないんだ?」


完二「何でそんな事しなくちゃならないんだよ?」

川崎「はあ!?」

川崎「今、作った奴と話をさせてくれるって言っただろ!?」

完二「おう」

川崎「だったらさっさと呼んで来いっての!」

完二「何でだよ?」

川崎「……あんた、あたしをおちょくてんのか?」

完二「だぁら、それならここに居んだろ」

完二「てめーの目の前に居る、この俺だ。 それ作ったの」

白鐘「え」

雪ノ下「え」

川崎「え!?」


完二「……ま、そういう反応」

完二「慣れちゃあいるが……これでも結構傷つくんだぜ?」

白鐘「! す、すみません」

雪ノ下「ごめんなさい……」

川崎「悪かった……」

完二「…………」

完二「もういい」

完二「で? 俺と何を話したいんだ?」

―――――――――――

川崎「そうか……そんなやり方があったんだね」

完二「コツをつかむまでが難しいが、あんたくらいやってれば」

完二「難しくはねぇと思うぜ?」

川崎「ありがとう。 とても参考になる」


雪ノ下「どうやら話が弾んでるみたいね」

白鐘「そのようですね」 クスッ

白鐘「…………」

白鐘「!!」


白鐘(あれは……玄関の外で歩いているのは)

白鐘(比企谷先輩!?)


白鐘「……すみません、雪ノ下先輩」

白鐘「僕はこれで席を外してもいいでしょうか?」

雪ノ下「ええ。 構わないわ」

白鐘「それでは、失礼します」


     ガララッ…

白鐘「ふう……」

白鐘(比企谷先輩……紙袋を下げていたな)

白鐘(いったいどこに向かっているんだろう?)

白鐘(…………)

白鐘(マナー違反だけど……最近の様子もおかしいし)

白鐘(尾行してみるか……)

―――――――――――

白鐘「」

白鐘(警察署!?)

白鐘(どうして……こんなところに……)

白鐘(…………)



―――――――――――


面会室


比企谷「どうも。 足立さん」

足立「やあ、比企谷くん」

比企谷「…………」

比企谷「これ……足立さんのご両親に頼まれて持ってきました」

比企谷「紙袋の中身は着替えと好物の煮物だそうです」

足立「煮物……サバの味噌煮かい?」

比企谷「さあ……俺は中身を見ていませんので」

足立「そう」

足立「…………」


比企谷「好物じゃないんですか?」

足立「ああ」

足立「魚の煮物って独特の匂いがあるからね……好きじゃない」

比企谷「…………」

足立「うちの親、僕の魚嫌いを何とか直したくて、いろいろ作ったんだ」

足立「僕はいちいち試しに食べさせられるのが嫌になって」

足立「比較的食えるサバの味噌煮を食ってやったのさ」

比企谷「…………」

足立「それ以来 魚といえば、サバの味噌煮、サバの味噌煮……」

足立「いつの間にか、僕の好物になったってわけ」

比企谷「…………」


比企谷「では……何が好きなんですか?」

足立「…………」

足立「ロールキャベツかな……」

足立「ちょっと変な食べ方だけど、ケチャップを付けて食べると最高に旨い」

比企谷「有りますよね、そういうの」

足立「ははは……」

足立「…………」

比企谷「…………」

比企谷「それじゃ、そろそろ行きます」

足立「ああ……」

足立「…………」

足立「比企谷くん」

比企谷「はい?」


足立「なんだか疲れた顔をしているね?」

比企谷「大丈夫です」

比企谷「昨日、日帰りスキーに行って来ただけですから」

足立「ああ……あの賑やかな連中とか。 納得」

足立「青春してるね」

比企谷「…………」

比企谷「じゃ……また来ます」

     キィ…… パタン

足立「…………」

足立「本当に物好きだね……君は」



―――――――――――


新学期 初日の朝

通学路


雪ノ下「…………」

雪ノ下(……結局)

雪ノ下(あれから比企谷くんと まともに話せずじまい)

雪ノ下(川崎さん達の見送りには来たけど……)

雪ノ下(妹さんと仲直りした事以外、取り立てて目立った事柄はなかった)

雪ノ下(…………)

雪ノ下(どうすればいいのだろう……)

雪ノ下(…………)


教室


花村「うーすっ! おはよう、里中、天城、雪ノ下さん」

里中「おはよう、花村」

天城「花村くん、おはよう」

雪ノ下「おはよう」

花村「比企谷は……まだか」

里中「うん。 まだじゃん」

天城「結局……比企谷くん、元気になったのかな?」

花村「元気も何も、俺が見た限りじゃ、いつも通りの比企谷だと思うけどな」

雪ノ下「…………」

里中「お? 噂をすれば……」


比企谷「おはよう、花m……」


     シ―――ン……


天城「え?」

花村「ん?」

里中「どうしたの? みんな?」

雪ノ下「……?」


     オイ……アイツダロ? レイノ殺人犯ノ……


一同「!?」

比企谷「…………」



     ザワ…… ザワ……


花村「お、おい……何だよ、この雰囲気」

花村「いい加減に……!?」

比企谷「…………」


     俺は、怒鳴ろうとする花村を手で合図して静止させた。


里中「…………」

天城「…………」

雪ノ下「…………」


     ザワ…… ザワ……


比企谷「…………」




     来るべきものが来た。 それだけだ。

     狭い街だし、人の口に戸は立てられない以上

     起こって欲しくはなかったが、こうなる予測はしていた。









     俺は、殺人犯と親戚であり、同居人だったのだから……






これで、今回の分は終わりです。
欝展開であり、慣れないキャラ使いまくってしょーもないミスしたりと
散々でした……次回はこういう事がないといいのですが。

改めて次スレのURL貼っておきます。
比企谷「八十稲羽に転校…え?マジで?…」 3スレ目 - SSまとめ速報
(http://jbbs.shitaraba.net/bbs/read.cgi/internet/14562/1394614382/)

残りは埋めちゃってくれて構いませんので。
それではまた。

乙サマー

乙ー

乙!

埋め

もらったw

乙~

うめ

うめ

このSSまとめへのコメント

1 :  SS好きの774さん   2013年11月22日 (金) 00:36:49   ID: KwUmYQce

楽しみに待ってます

2 :  SS好きの774さん   2013年11月28日 (木) 02:12:55   ID: iq3X_r_O

はよ

3 :  SS好きの774さん   2013年11月28日 (木) 18:10:04   ID: o_SBTvF2

まだかなー。はやくー。

4 :  SS好きの774さん   2013年12月06日 (金) 00:41:17   ID: VYlxWkIr

ヒッキーのキャラが原作と違いすぎでしょ。
こんなに高く構えてないし、尖ってない。これじゃあ、俺ガイルでやる意味がない。
ひょっとしてこの人、原作よんだことないのか?

5 :  SS好きの774さん   2013年12月07日 (土) 09:36:56   ID: S_wMgmlY

※4
お前は何を言っているんだ?そもそも原作は2年時より始まるがこのSSだと1年時に奉仕部に入ってる事になってるんだ。その段階で原作とは違うのは当たり前なんだよ

6 :  SS好きの774さん   2013年12月23日 (月) 06:44:56   ID: FC8mut6W

※5
そこに気づくとは、やはり天才か!?

7 :  SS好きの774さん   2014年01月10日 (金) 16:56:11   ID: qMa-w1rB

続きまだー?

8 :  SS好きの774さん   2014年01月20日 (月) 22:31:14   ID: _niC1RiH

ガハマさんが不憫過ぎる・・・
ゲームでもかなり不憫な扱いだったし意外にも不幸が似合う薄幸ヒロインだったのか

9 :  SS好きの774さん   2014年01月25日 (土) 01:12:30   ID: _aF0Drl_

p4も俺ガイルも好きだからスゲー楽しみだわ

10 :  SS好きの774さん   2014年01月25日 (土) 22:27:48   ID: axzk9Jtz

菜々子の代わりならガハマさん生き返るんじゃなかったけ?

11 :  SS好きの774さん   2014年02月02日 (日) 05:48:22   ID: 43vKccuG

安易な展開だなー。
死んでからすぐ復活したし、そもそもヒッキーが完全に別人だわ

12 :  SS好きの774さん   2014年02月02日 (日) 14:17:16   ID: -gK7tZC8

ところが、死んでから復活はペルソナ4本編でも同じ。
でもそれはペルソナが分岐エンドだから許されること。
それをそのままssに持ってきてるんだから、11の人のようにあっさりしてると思われても仕方がない。

13 :  SS好きの774さん   2014年02月10日 (月) 02:06:09   ID: IA71eLmn

原作とは違うのは当たり前って言ってる人がいるけど、性格なんて高校生にもなれば凝り固まってそうそう簡単に変わりようがないし、ヒッキー自体が『変わる』ことに対して劇中で疑問を投げかけていると思うんだけど。
そもそもヒッキーを更生ために、平塚先生は彼をを奉仕部に連れてきたのだから、少なくともいい方向に変化しないと矛盾が起きると思うんだけど。

14 :  SS好きの774さん   2014年02月12日 (水) 09:55:46   ID: v0dWATjb

ええな~
こういうの好きやわ

15 :  SS好きの774さん   2014年02月16日 (日) 16:03:23   ID: 1Jttt9Vd

頑張ってください

16 :  SS好きの774さん   2014年02月25日 (火) 22:36:11   ID: CYHjclVz

毎日更新されるのを楽しみにしています
頑張ってください

17 :  SS好きの774さん   2014年03月08日 (土) 15:59:53   ID: ef6Pb_Fb

待ってます!
がんばってください!

18 :  SS好きの774さん   2014年03月08日 (土) 21:54:35   ID: QslOPiTE

楽しみに待ってます!

19 :  SS好きの774さん   2014年03月12日 (水) 11:50:02   ID: XF2PibFn

勘違いが凄過ぎてワロタ

20 :  SS好きの774さん   2014年03月16日 (日) 00:42:49   ID: VbVD4RYW

とりあえず、材木座の口調がおかしかった。一人称は『我』じゃなかった?あと、比企谷じゃなくて八幡って読んでた気がする。

21 :  SS好きの774さん   2015年06月28日 (日) 01:54:18   ID: SNKiWxGp

P4でも死んでから復活するんですが…
俺ガイルしか知らないくせに文句つけるなよ

面白かった!

くっさいオリキャラ出てきたり
雪ノ下や由比ヶ浜など特定のキャラを悪く言ったりしてるピクシブのクソガキが書くつまらない小説よかは100倍マシ

22 :  SS好きの774さん   2015年07月14日 (火) 07:46:17   ID: VwanxJXD

キャラ崩壊しすぎ。由比ヶ浜もいらね。

23 :  SS好きの774さん   2016年05月16日 (月) 02:00:19   ID: nz6A6Nap

八幡のトンデモ説はどう頑張ってもイザナミノオオカミには通じないだろうな。てか完二でないのか、残念だわ

24 :  SS好きの774さん   2018年10月21日 (日) 13:02:18   ID: setdAYIE

原作信者はSS読まない方が良いよ? 数多いP4クロスの中でも
最高のSSですな。 これで文句言う人はもしかして、シャドウ?
そーゆー奴らにはー、「八艘飛び!明けの明星!」
そして、アリスの「〇んでくれる?」 かますぞゴォラー!


25 :  SS好きの774さん   2020年01月09日 (木) 01:53:20   ID: ICTxVspi

何度読み返しても面白い。2020年となった今からしたら凄い時間が流れてしまっていますが、ペルソナクロスの中では一番だと思う。

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