杏「アンズタマゴキラリ」 (29)

【モバマスSS】です

百合が匂うだけでも嫌だという方は閲覧注意

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 杏が目を覚ますと、お腹の上に卵が載っていたんだ。

「……卵?」

「杏ちゃん、朝ご飯出来たゆ……にょわ?」

 起こしに来てくれたきらりが目を丸くしている。

「タマゴ?」

「タマゴだね」

「杏ちゃん……食べ物で遊ぶのはワルイコワルイコだにぃ」

「違うって、杏は粗末なものは食べても食べ物を粗末にはしないよ」

「だねぇ?」


 きらりは納得してるみたいで、杏はさらに考える。
 
 いったい何が起こったんだろ。
 きらりの悪戯かな?
 うーん、きらりは食べ物で悪戯なんてしない。食べ物で遊ぶときらりは怒るから。

 きらりじゃないとすれば誰だろう?

「ねえ、きらり。夜の内に誰か来た?」

「ううん」

 首を振るきらり。

「鍵ちゃんも閉め閉めしてたにぃ」


 合い鍵持ちとすれば、もしかしたらプロデューサーかな。
 違うよね。いくらプロデューサーでも、勝手には入ってこない。

 他には……
 杏がきらりの家にいても遊びに来る子……
 輝子か小梅かな。だけど、あの二人だとしても食べ物で遊んだらきらりは容赦しないはず。
 怒ったきらりは怖い。怒った理由が正しいとめちゃくちゃ怖い。
 だから違うはず。

「うーん」

 ん? あれ? なんだか、おかしい。それとも杏がおかしいのかな。

「杏ちゃん?」

 なんだか、見慣れているような気がしてきたよ。
 初めて見る卵のはずなのに。
 まるで毎日見ているものみたいに。

 
 自分の産んだ卵を温めているニワトリってこんな気分なのかな。

「ねえ、きらり。このタマゴ知ってるような気がする」

「にょわ?」

「えーと、なんだかイマイチ思い出せないんだけど、うん、絶対知ってるよ」

「そう言われると、きらりもそんな気がしてきたにぃ……」

「きらりも見覚えがあるの?」

「ん~。タマゴちゃんがキャワワな感じぃ?」

 なんだろうねぇ、と考えていると、空気を読んでくれないプロデューサーの声が聞こえる。

「杏! そろそろ出ないと間に合わんぞ!」


 きらりが文字通り飛び上がって、テーブル上のモノを包み始めた。
 朝ご飯はサンドイッチだったのか。なるほど、移動の車の中でも食べられるね。さすがきらり。

「お前らお泊まりすると、二人とも遅刻しそうになるのは勘弁してくれ」

「Pちゃんおっはー、お迎えハピハピ!」

「準備して車乗れよ、一旦事務所に行くぞ」

「プロデューサー、今日はお仕事お休みするよ」

「……ほほぉ、で、双葉杏さんや、今日の理由は頭痛か腹痛か? 因みに生理痛は三日前に終わったぞ」

「これ」

 お腹の上にタマゴがあるよ。
 まさかこれ、杏ときらりにしか見えない幻覚ってことないよね。


「タマゴがどうした?」

 良かった。見えてるよ。

「起きたらここにあった」

「産んだのか?」

 どうしてなのかよくわからないけれど、その瞬間杏は納得しちゃったんだ。
 プロデューサーの言葉が、とってもしっくり来たんだよ。

「あ、そういうことか。うん、杏のタマゴだよ、これ」

「なに、本当に産んだの?」

「うん、そうみたい」


「……産んじゃったか」

「産んじゃった」

「そうか……じゃあ大切にしないとな」

「うん」

「よし、仕事行くか」

「待ってプロデューサー、話が繋がってない」

 キョトンとした顔のプロデューサー。
 今、大切にするって言ったよね?


「言っておくが、大切にするのはタマゴだ」

「え」

「お前は産み終わったんだから動けるだろ」

「あ、いや、産後の肥立ちが……」

「産んだこと忘れかけてたくらい超安産じゃねえか」

「ううう」

「きらり、ホールド」

「うきゃ」

「ああっ、きらりの裏切りものぉ!!」


「杏ちゃんの将来のために、きらりはコワイコワイ鬼と化しゅよ?」

「ううう」

「タマゴのためだよ?」

 なんだろう。そう言われると、頑張らなきゃいけないような気がしてくる。
 もしかしてこれが、母性本能ってやつなのかな。

 でも、しょーがないよね、杏のタマゴだもの。

「きらりもがんばゆよ?」

「うん」


「二人のタマゴだから」

「うん」

 ん?
 ん?
 ……あ
 そうか
 タマゴ一人じゃ作れないものね。
 そーか、これは杏ときらりのタマゴなんだ。
 大切にしなきゃ。
 ふふっ、なんか嬉しいな。



 事務所に着くと、小梅ちゃんがタマゴを抱えていた。


「おはよ」

「……杏ちゃんも……タマゴ?」

「うん」

「これ……涼さんのタマゴ……だよ」

「杏のタマゴはきらりと一緒だよ」

「ほらほら、小梅。タマゴ抱いてるんならもっと温かくしないと。ほら、これ着な」

 涼さんがジャケットを小梅ちゃんに羽織らせている。
 ふぅむ。これがイケメン女子の面目躍如ってやつか。小梅ちゃんのタマゴはきっといいタマゴだよ。

「杏ちゃん、ホットミルクだにぃ。中から温まりゅよ」


 おおぅ、さすがきらり。
 あ、涼さんがムッとしてるよ。もしかしてライバル心?

「おはよーございまーす。あれ、小梅ちゃんと杏さんもタマゴ出来たの?」

 李衣菜がやってきた。
 え? 今「も」って言ったよね?

「なつきちは家でタマゴ抱いてるよ」

 そっちなんだ。意外だね。李衣菜のほうが産むと思ってたよ。
 でも、やっぱりタマゴは温めなきゃ駄目なんだね。

「ねぇプロデューサー、やっぱり杏はタマゴを温めるよ」

「駄目だ」


「へ? なんでさ」

「温めてどうするんだ?」

「孵さなきゃ」

「孵したら何が出てくるんだ?」

「何ってそりゃあ……」

 あ、あれ?
 何が出てくるんだろう。
 杏ときらりの……赤ん坊……じゃないよね。
 あれ?
 なんだろ。


「何が……出てくるの?」

 思わず尋ねると、小梅ちゃんとと李衣菜が目を丸くした。涼さんに到っては怒っている。

「杏、お前、そんなことも知らずにタマゴ作ったのかよ」

「え?」

「酷い」

 え?
 きらりが杏を睨んでる。
 きらり? どうしたの?


「杏ちゃん、酷い」

「……杏さん……ひどい」

「それは酷すぎですよ」

 どうして、みんな杏を?
 だって、タマゴから産まれるものなんて杏は知らない。
 このタマゴ……


 ひびが入ってる。
 どうして?
 割れてるの?
 なんで。
 杏のタマゴ。きらりのタマゴ。
 私のタマゴ。
 どうして、割れてるの?

 ひびが大きくなる。
 駄目だ。駄目だよ。
 割れちゃ駄目だ。割れちゃ駄目なんだ。

 広がるひびが止まらない。



 パリン。と。


 ものすごくいい匂いが辺りに広がって、そして杏は……
 杏は……

 
 目が覚めた。

「……」

 夢、だったの?
 杏のタマゴ。
 タマゴは何処?

 何処にもない。
 杏のタマゴは何処にもない。
 きっと、杏は産んでない。
 だけど、杏はタマゴを覚えている。
 手触りを覚えている。
 重さを覚えている。
 匂いを覚えている。

 
「杏ちゃん?」

 ああ、きらりの家にお泊まりしたのは夢じゃないんだね。
 きらりの心配そうな顔。
 杏は、魘されてたのかな。
 あんな夢を……
 夢?

 杏はその時見たんだ。
 そして、笑ったんだ。
 だって、また会えたんだから。
 だって、


「きらりのお腹の上にね、こんなのが」

 きらりの差し出したタマゴが、とっても愛おしくて。


 以上お粗末様でした

 
 最近の過去作

 モバP「爆発ウサミンロボ」
 みく「両手は挙げない」
 きらり「きらりは大きいよ」
 【モバマス】こずえ「ふわぁ……っく、ゆー」

おつおつ

あんたね
しっとりした雰囲気すきだ
これからも楽しみに待ってる

中二つと一番下が同じ作者だなんて…(困惑)

ふぁっくゆーもお前だったのか

二番目の作品好きだったわ
おつおつ

おつおつ
つまり、どういうことだってばよ・・・?

なぜかしゅごキャラ思い出した
そして中2つと一番下が同じ作者って驚愕した
ともあれ乙

にょわー

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