この魂に遺された物。曖昧で、揺ぎ無く、何よりも近くて、幾ら手を伸ばしても決して届かない、
あの人の、唯一つの想い。
降りしきる雨の冷たさ。抱き締めた身体の温かさ。寄り添った笑顔の優しさ。頬に零れ落ちた、痛みにも似た熱さ。
そして憶えている。温もりは離れ、程無く潰えて。染み渡る儚さが、俺に永遠の離別を告げた。
この下に、俺の母さんが眠っている。子供の頃、よく此処で泣いた。誰にも見られないよう、秘め事にして、此処でだけ、俺は涙を流せた。
だが、何時からか、涙に取って代わった。疑念に似て程遠い、心を黒く震わせる情念。俺以外に、此処に来るべき“奴”がいる。
あの時、あんたは何をしていた?そして今、あんたは何をしている?
答えろよ、クソ親父が。
>>2
FF?
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