アニ「アルミン・カモミール」(51)

季節は5月あたりの、訓練兵時代アニとアルミンの会話。ネタバレなし。
ちなみにアルミンの誕生花はカモミールらしいです、が誕生日ネタではありません。誕生日おめでとう。



ザッ ザッ …


ザッ




アルミン「アニ」




アニ「アルミン」


アルミン「なにしてるの?」

アニ「別に」

アルミン「そう」


アニ「問題でも起きたの?」

アルミン「いや。今のところ誰にも、馬にも問題はないよ。順調に進んで来れた」

アルミン「このペースなら、僕らの班は夜までに目標の地点まで行けそうだね」

アニ「ふうん」

アルミン「うん」

アニ「訓練の事じゃないなら、何の用?」


アルミン「えっと……特に用事はない、かな」


アニ「は?ならどうして?」

アルミン「うーん……」

アニ「……」

アルミン「単純に、この休憩時間、アニはなにしてるのかなあって気になって来てみたんだけど」

アニ「木陰で寝っ転がってる。それだけだよ」

アルミン「この丘は見晴らしがいいし、今日は天気もいいし、絶好の寝っ転がり日和だもんね」

アニ「……まあ」


アルミン「……」


アニ「……」

アルミン「他の皆はさ、むこうでかたまって休憩してる」

アニ「……」



アルミン「アニは、1人になりたいの……?」


アニ「そう、1人になりたいんだ。休憩中くらい」



アルミン「そっか」


アニ「……」


アルミン「へえ」


アニ「……」


アルミン「……」


アニ「……」

アニ「今の会話、通じた?」

アルミン「うん通じてるよ」

アニ「戻らないの?」

アルミン「やっぱり戻った方がいい?」



アニ「……」


アルミン「……?」



アニ「……はあ。好きにすれば」

アルミン「ありがとう」

アニ「別に」

アルミン「隣、いい?」

アニ「どうぞ」

アルミン「どうも」



アニ「……」


アルミン「……」ヨイショ


アニ「アンタさ……」

アルミン「ん?」


アニ「膝抱えて座るの、趣味なの?」


アルミン「趣味……趣味というより癖かな」

アルミン「同室に大柄の人が多いから、遠慮する癖がついちゃったのかも」

アルミン「ライナーとかベルトルトとかマルコも……皆大きいよなあ」

アニ「むさ苦し」

アルミン「そう言わず」

アニ「アンタが小さいだけじゃないの」

アルミン「これからだよ」

アニ「ふうん」



アルミン「……だよね?」


アニ「知らないよ」

アルミン「のはず」

アニ「そう」



アルミン「……」


アニ「……」



アルミン「僕も寝っ転がろうかな」

アニ「勝手にすれば」

アルミン「うん」ゴロン

アルミン「んー!きもちいー!」ノビノビ


アニ「……」


アルミン「空青いね」


アニ「……」


アルミン「雲が流れてる」


アニ「……」


アルミン「今日は遠近感がよくわかる空だね」


アニ「……」


アルミン「あの雲とか、真下まで行けば飛び乗れそうだし」

アルミン「あっちのは、きっと宇宙に一番近い」


アニ「……」

アルミン「寝っ転がって見る空って、全然違うものに見えるから、特別感があるよね」

アルミン「……」チラッ


アニ「……」


アルミン「アニ」

アニ「ん」


アルミン「目を瞑ってても見えてる?」


アニ「見えてる」

アルミン「ならよかった」


アニ「……」


アルミン「そう言えば。風で葉っぱや茎が揺れると、風が間接的に目で見えるけどさ」

アルミン「そのときに聞こえる、このサラサラって音も、僕好きだなあ」

アルミン「目じゃなくて、耳で風が見えそうな気がするから」


アニ「……」


アルミン「それも見えてる?」

アニ「うん。見えてる見えてる」

アルミン「そう」



アニ「……」


アルミン「……」



アルミン「僕、黙った方がいい?」

アニ「どっちでも」

アルミン「じゃあ喋りたいときに喋るね」

アニ「うん」




アルミン「……」


アニ「……」




アルミン「僕、アニと喋ってみたかったんだ。今まであまり機会がなかったから」

アニ「……そうだっけ?」

アルミン「ほら、エレンは格闘術でアニと組んでるし、ミカサはアニと同室だけど」

アルミン「僕とはなんとなく挨拶するくらいでしょ?」

アニ「まあ」

アルミン「2人から話は聞いていても、僕は実際のアニをよく知らないなと思って」

アルミン「今日初めて遠征訓練の班が一緒になったから、ぜひちゃんと話してみたいと思ったんだ」

アニ「別に……エレンとミカサとも、特別親しいって訳でもないし」

アニ「実際のアニってやつも、アンタの想像とそう変わらない。冗談も言えない、大して面白みのない人間だよ」

アルミン「大丈夫。僕は皆から冗談が通じないって言われてるから」

アルミン「それに、話し相手は面白さで選ぶものじゃないだろ?だからいいんだよ」

アニ「あっそ」



アルミン「……」


アニ「……」





アルミン「ん……?」




アルミン「アニ、甘い……?」クンクン




アニ「は……?」

アルミン「アニから甘い香りがする……」

アニ「しない」

アルミン「いやするよ。何か持ってるの?」

アニ「セクハラ?」

アルミン「真面目に聞いてるんだ」

アニ「私じゃない。私じゃなくて……」チラッ



アルミン「……?」



アルミン「ああ!あれだね!」ムクッ

タタッ

アルミン「香りの元はアニじゃなくて、ここの自生してるカモミールだったんだ」

アニ「そういうこと」


アルミン クンクン

アルミン「うん、これこれ。いい匂い」クンクン

アルミン「もうそんな時期かあ。とってもきれいな花だよね」

アニ「まあね」

アルミン「僕、好きだよカモミール。可愛らしくて素朴な感じで、ふんわり甘い青リンゴみたいな匂い」

アニ「花にうっとりするなんて、女子じみてんじゃない」

アルミン「男子だってうっとりくらいするさ」

アニ「アンタくらいだと思う」

アルミン「そうかなあ」


アニ「……その子たちはまだ咲き始め」

アルミン「どうしてわかるの?」

アニ「中心の黄色の部分、もっと膨らむはずだから」

アニ「カモミールはさ、踏まれたぶんだけよく育つ、なんて言われてる。タフな花なんだ」

アルミン「知らなかった。見た目はこんなに可憐なのに。強かなんだね」


アルミン「ねえアニ」

アニ「ん?」



アルミン「もしかして君、この花があったからここまで来たんじゃない?」



アニ「は……」


アルミン「……」


アニ「違うよ。たまたま……」



アルミン「……」


アニ「……」


アルミン「……」





アニ「いいでしょ別に」



アルミン「うん。とてもいいと思う。よし、アルミンお兄さんが一輪とってあげよう」

アニ「アンタ私より年下じゃなかった?」

アルミン「こういう台詞、一度言ってみたくて」

アニ「くだらな。それに、やめといたほうがいいよ」

アルミン「んーどうしてー……?これかなー、うーん……」ガサガサ

アニ「……」


アルミン「うあっ」


アニ「……」


アルミン「アブラムシ……」


アニ「ほら」

アルミン「一匹ぷちっとしちゃった……」

アニ「大人しく香りだけにしときな」


アルミン「んー……」ゴソゴソ

アニ「続けるの……」




アルミン「……」ガサガサ


アニ「……」

穏やかでいいな

短いので今晩終わります。おやすみ。

いいね期待

ええな

いい雰囲気だ

これはいいな

かわいいな

アニ「アンタさ」

アルミン「んー?」

アニ「この前の立体機動の模擬試験」

アルミン「ああ、僕が森の中で派手に転んで最下位争いをしたやつ」

アニ「そうじゃなくて」

アルミン「?」


アニ「一部のやつらに馬鹿にされてたの、知ってるんでしょ」


アルミン「……うん」


アニ「腹立たないの?」

アルミン「うーん。もちろん嫌だとは思うけど……でも、僕に体力や技術がないのは本当のことだから」

アルミン「腹を立てるより先に訓練がんばろうって感じかな。今は」

アニ「そう」

アルミン「でもあれだよ。エレンやミカサ、いろんな人にコツを教えて貰ってるくせにこんな成績ってことは」

アルミン「僕は元々相当運動が苦手なんだろうね。あはは」

アニ「かもね」

アルミン「うん」



アニ「……」


アルミン「……」ガサガサ



アニ「……私は、悪くないと思う」


アルミン「……?」


アニ「他人を笑う奴らよりは、諦めの悪い奴の方が……いいと思う」


アルミン「……ありがとう」


アニ「……」

アルミン「じゃあそのお礼に……はい。どうぞ」スッ

アニ「え」

アルミン「この一輪、アブラムシはついていません」

アニ「ぷちっとしたの」

アルミン「してないよ」


アニ「……」


アルミン「ね、はい」スッ


アニ「どうも……」


アルミン「いえいえ」ニコ



アニ「……」


アルミン「……」ニコニコ



アニ クンクン


アルミン「……」



アニ「……」



アルミン「……」




アニ「アルミン」


アルミン「んっ?」


アニ「ジロジロ見下ろさないで」

アルミン「ごっごめん……座るよ」サッ


アニ「……」


アルミン「……」


アニ「今度は正座?」

アルミン「わっほんとだ」

アニ「無意識なの」

アルミン「これもまた癖なのかも」

アニ「そ」

アルミン「うん」


アニ「……それと頭、草がいっぱいついてる。そろそろとったら?」


アルミン「ああ。寝っ転がってたからね」パタパタ

アルミン「でもそれならアニだって」

アニ「私?」

アルミン「あっずるい。アニ、フード被ってる」

アニ「賢いと言いな」

アルミン「あっ賢い。アニ、フード被ってる」

アニ「言い直さなくてもいい」

アルミン「えっそうなの」

アニ「はあ。全く……アンタのせいで落ち着いて寝てらんない……」ムクッ





アルミン「……!」





アニ「?」



アルミン「……」


アニ「なに?」



アルミン「びっくりした……」


アニ「なんで?」


アルミン「アニで……」


アニ「だからなんで……」





アルミン「だって……アニが、カモミールにそっくりだから」





アニ「は……?アブアムシがついてるって?」ム

アルミン「ちちち違うよっ!もう!」アセアセ

アルミン「金髪のアニが白いフードを被ってると、そっくりだよ!ほら、この花も中心が黄色で周りが白だろ?」

アニ「真面目に言ってるの?」

アルミン「大真面目だよ!」

アニ「そ、そう……」


アルミン「うん、やっぱり似てる!それにだって君は強くて、可憐で……!」



アニ「……!」



アルミン「で……」



アニ「……」



アルミン「あの……つまり、こんなに似てる……///」

アルミン「みたいな……とか……///」



アニ「……」


アルミン「……」


アニ「そう」

アルミン「うん。そっ……そう。あは、あはは」




アニ「……」


アルミン「……」





アニ「私は、アルミンの方がよっぽと似てると思うけどね」

アルミン「え……どうして?」

アニ「アンタも金髪ってこと、忘れてるの?」

アルミン「あっ確かに」ハッ

アニ「オカッパ頭だし」

アルミン「あはは、この花の中心にある黄色の丸い部分のことね」

アニ「そう……まあ。ふわふわ……そうだから」

アルミン「ははっ、ふわふわかあ」

アニ「多分……」

アルミン「褒めてくれてるの?」

アニ「多分……」

アルミン「ありがとう」


アニ「それに」

アルミン「……それに?」


アニ「アンタさ……カモミールの花言葉は知ってる?」


アルミン「ううん。そういえば知らないなあ」

アニ「ふうん」

アルミン「アニは知ってるの?」

アニ「まあね」

アルミン「教えてよ」


アニ「……」


アルミン「……」



アニ「やだ」



アルミン「えっなんで」

アニ「なんかやだ」

アルミン「そんなざっくりと断らないでよ」

アニ「私の勝手でしょ」プイッ

アルミン「花言葉が僕に関係してるの?」

アニ「さあね」

アルミン「えーっ」

アニ「自分で調べれば」

アルミン「わかった。じゃあこの訓練が終わったら調べるよ」

アニ「……」


アルミン「あっそろそろ時間だね。戻ろう」

アニ「次の先頭は誰?」

アルミン「次はダズだよ」

アニ「ふうん」


アルミン「ねえ、見てよあっち」


アニ「……?」


アルミン「もうすぐ出発っていうのに、皆遊んでる。ははっ、あれじゃ休憩にならないよね」ケラケラ



アニ「……」


アルミン「……アニ?」




アニ「先行って」


アルミン「?」


アニ「……」


アルミン「どうして?」





アニ「言ったでしょ」


アニ「私……1人が好きなんだ」



アルミン「……」


アニ「……」


アルミン「そっか」


アニ「うん」


アルミン「わかった。じゃあお先に失礼するよ」

アニ「ああ」



アルミン テクテク







アニ「……アルミン」



アルミン「ん?」クルッ



アニ「……」


アルミン「……?」





アニ「あの……」


アニ「ありがと」




アニ「花……」


アニ「と」


アニ「似てる、とか……」


アルミン「……!」


アニ「……」



アルミン「……こちらこそ」ニコ



アニ「……」


アルミン「あっねえ」

アニ「?」


アルミン「またアニの1人の時間を、邪魔してもいいかな……?」


アニ「アルミン」

アルミン「ん?」

アニ「図々しい」

アルミン「あはは、だね」






アニ「まあ」


アニ「たまになら、いいんじゃない」





アルミン「ありがとう」


アニ「……うん」






アルミン「早くおいでよーっ!」


タタタ…


アニ「……」


アニ(カモミール……いい香り……)クンクン






アニ「“あなたを癒やす”……」







アニ「……油断した」


アニ「癒やされた」





おしまい

以上、地味ほのぼの系短編でした。アルミンには癒やしの力があると思う
カモミールは「あなたを癒やす」のほかに「苦難に耐える」「親交」などがあるよう

カモミールティーおいしいよ。アルミンお誕生日おめでとう。11/03

乙可愛かった
アニが1人が好きって言葉先を考えるとなんだか切ないな

乙!よかった!
アルミンもアニも可愛い

本当は誰かといたかったとしても…って事情あるからなぁ、アニ

癒された

癒された~乙です
アルミン誕生日おめでとう!

アルミンの誕生日にふさわしいSSだった

>>1です。レスしてくれた方、皆様ありがとうございます

良かったよ!

このSSまとめへのコメント

1 :  なぎ   2014年09月27日 (土) 23:41:54   ID: 91L7rUNv

癒された…

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