P「馬鹿なこと言うんじゃない」 (67)
さてこんなことを言うのは
正直言って概念レベルで定められていることだろうし
不要だと思うが
あえて言わせて頂こう
春香って良いよね?
さいっこーに最高だよね
優しいし、お菓子作るの上手だし
体つきは最高だし、ドジっ子だし、そして可愛いし
この溜まりに溜まった欲望は
もはや精神的に害を及ぼしてしまいそうなレベルだってのは理解している
だから別に怒ったりしないぞ
だから……さ、正直に言えよ
俺の春香の写真集に白濁液ぶっかけたの誰だよ!
「そこにいる下半身出してるお前だろ!」
目の前の男を指差すと
男また俺に向けて指を指す
なんだよ、俺の真似するな!と、つい怒りそうになったが
よく見たら鏡でした
SSWiki : http://ss.vip2ch.com/jmp/1383224965
あれ?
鏡ってことは……ん?
「そっかぁ、俺が自分でやったんだな」
いやぁ無事に犯人も見つかったし
これなら他の春香の写真とかが襲われる心配はないな
よし、とりあえず窓から飛び降りてみようか
今ならなんだって出来る気がするぞー
「って、ちょっと待てよ!」
いつ、いつだ!?
俺はいつはるるんで[はぁぁぁぁん]しちゃったんだ!?
いつものように仕事を終えて
いつものように春香の笑顔映る待受でにやけて
いつものように風呂に入って
いつものように寝ようと思った――なのに
「なんでこうなってるんだッ!」
(アカン)
いや待て。落ち着くんだ
俺はみんなが認めてくれる凄腕プロデューサーだ
そんな俺が春香で一発発散しちゃった程度で何を慌ててるんだよ
「……ふぅ」
……あっれ
春香の写真集のベタつきが酷くなっているような……
ううん、気のせいだよな
「それよりも考えるべきは……春香になんて告白するかだよな」
雪歩もそうだが
春香のプロポーションは悪くない
むしろ絶妙な肉感でマジグッジョブなんだよ
けど、他のみんなが綺麗だったり、可愛かったり、ボンキュッボンだったり
そのせいかあんまり容姿に自信がないから
冗談っぽく好きだって言ったら笑って私なんて不釣合ですよ~なんて言うんだよな
俺は別に容姿に惚れたわけじゃないのに
……そうじゃないだろ
なんで告白云々で考えてるんだよ
「もう寝よう……」
きっと疲れてるんだよ
俺のアレだってもう萎びれちゃってるしさ
忘れるんだ
そして寝るんだ
そしてまたいつものように春香の……にひひっ
「いやいやいや」
少し落ち着いて深呼吸
後片付けをして、寝巻きを整えて
布団を被って目を閉じる
闇の中で見えてくる春香の困った笑顔
そして――
【プロデューサーさんの……えっち】
「かふっ……」
俺は安らかな眠りについた
翌朝、俺はいつものように事務所へと来ていた
あれは俺の家での事件
だからつまり
俺が何も言わなければ
誰にも知られることなく事件は終わる
「おはようございますっ、プロデューサーさん」
「おはよう、はるるん」
「え?」
「どうした?」
「い、いえ……今、はるるんって呼びませんでした?」
馬鹿な
俺がそんなミスをするわけがない
あれは自分の妄想の中で
しかも、嫁、幼馴染、彼女という条件下でしか呼ばない名前だぞ!?
……まぁ、大抵嫁だが。
「噛んだのかもしれないな。気にしないでくれ」
「それよりも今日のスケジュールは把握してるか?」
「はい一応確認してあります」
春香はもうすでにトップアイドルのラインに足を踏み入れている
凄いアイドルだ。まぁ当然だな
で、そういうわけで春香の仕事量は半端じゃなく多い
もしも付き合えたとしても
デートとかもろくにできなくて
物凄く残念そうな顔するけども
現場までの短い移動時間の中で
ちょっとだけ手をつないだり
むぎゅーってしたり……ん?
「ぁ、あの……プロデューサーさん?」
あったかやわらか。気持ち良いなぁと思ったら
春香を抱きしめていた
何を言っているのか解らないと思うが
俺も何を言っているのか解らない……驚いてる春香可愛い
「す、すまん春香」
「いえ……べ、別に……」
春香は顔を真っ赤にして首を横に振る
これはもしかして満更でもないってやつなんだろうか?
それとも
女の子だから恥ずかしかっただけで
実は物凄く嫌だけど
相手がプロデューサーである俺だから
仕方なく嫌でもないって感じに……
「は、春香!」
「ふぁい!?」
「俺はプロデューサーだが、嫌いって言ってもいいんだからな!?」
「えぇっ……?」
何言ってるんだ俺は
くそっ、仕事だ! 仕事に行くぞ!
中断
はるるんは可愛い
またお前かwww
いい加減に落ち着けよ
はるるるんに癒やされたいです
「あの、プロデューサーさん」
「どうした?」
「さっきの事なんですけど……」
さっきの事?
抱きしめたことか?
やっぱり警察行きましょうって言うのか?
春香への猥褻行為は無罪確定だろ
じゃなきゃおかしいし
誘惑罪でまずは春香が罰せられなくちゃおかしいじゃないか
「春香、俺は悔いはない。もし警察にいけというならいく。だがまずは聞くんだ」
「は、はい?」
「今までありがとう。これからも頑張れよ」
「一体何言ってるんですか?」
あれ?
「何って……さっき抱きしめたことで警察行くんだろ?」
「え、いえ、そんなつもりはないですよ……? だから右折せずにまっすぐ現場行って欲しいです」
春香の呆れたようなため息可愛い
春香のおかしな人を見るような冷めた目最高
でも、違うなら何なんだ?
「私、別にプロデューサーを嫌いじゃないですよ?」
「な、なんだってーっ!?」
キキィィーッと車が急停止し
ゴンッとハンドルに頭がぶつかった
「あ、危ないですよプロデューサーさん!」
「す、すまん……いや、待て今の葉悠が嫌いじゃないって言うからだろ?」
「なんでそうなるんですか……元々、プロデューサーさんが嫌いって言っていいって言ったからですよ?」
>>13訂正
「何って……さっき抱きしめたことで警察行くんだろ?」
「え、いえ、そんなつもりはないですよ……? だから右折せずにまっすぐ現場行って欲しいです」
春香の呆れたようなため息可愛い
春香のおかしな人を見るような冷めた目最高
でも、違うなら何なんだ?
「私、別にプロデューサーを嫌いじゃないですよ?」
「な、なんだってーっ!?」
キキィィーッと車が急停止し
ゴンッとハンドルに頭がぶつかった
「あ、危ないですよプロデューサーさん!」
「す、すまん……いや、待て今のは春香が嫌いじゃないって言うからだろ?」
「なんでそうなるんですか……元々、プロデューサーさんが嫌いって言っていいって言ったからですよ?」
「そんなこと言ったなぁ」
「ついさっきのことじゃないですか……」
春香は呆れ返ってしまい
そのあとに何かを言うことはなかった
もしも春香と付き合っていたら
車の中ではいつもこんな感じになるんだろうか
【次、お休みはいつ頃なんですか?】
【すまん、しばらくは働き詰めだ】
【えーっそれじゃぁデートできないじゃないですか】
【春香は超人気アイドルだから仕方ないだろ?】
【プロデューサーさんと疎遠になるなら仕事なんて……】
【馬鹿言うなよ……仕事があるから。こうして一緒に行動しても怪しまれないんだろ?】
【えへへ……プロデューサーさん……】
ヒヤッホゥ、はるかわいい!
「なぁ春香」
「なんですか?」
「いや……その、なんだ。春香は告白されたことはあるのか?」
「えっ!?」
な、何を聞いてるんだ
そうじゃないだろ
アイドルとプロデューサーが付き合うことについて聞きたいんだろ!?
そりゃ、気になるけどさぁ
「……あるって言ったらどうします?」
そんな俺の思考回路を破壊する
春香の声が車の中で静かに響く
「え?」
「…………………」
聞き返しても、春香は2度言うことはなく
ただ黙って俯いていた
ま、ままっままままママー
じゃなくて
落ち着くんだ、冷静になれ
告白されたことあるかどうかを聞いただけで
キスしたかーとか
えっちぃしちゃったのかーとか
そもそも、付き合ったことあるのかーとかいう質問ではなく
告白されたことあるのかどうかって話だろ?
そのくらいあって当たり前だろ
美希なんてしょっちゅうされてるとか言うし
真美や亜美、真……はちょっと違うが
みんなそれぞれ告白された経験があるって聞いてる
だから、別に何ら問題はない
むしろ、この女の子の中の女の子である春香に告白するくらいの勇気があった
その男の子を褒めてやるべきではないだろうか?
「そ、それは流石だな」
「………………」
「アイドルともなれば告白されるなんて日常茶飯事だろ?」
「……そう、ですね」
春香は少し影のある声で答えると
俺の方を見つめてきたのが横目で見えた
「どうした?」
「私がもしも、付き合ったことがあるって言ったらどうします?」
「――はい?」
それは
空間そのものが瞬間的に圧縮され
刹那とも言える僅かな時間でも虚無に放り出され
呼吸さえも忘れてしまい
まるで世界が止まっているかのような錯覚を覚えてしまうほどに
嫌な言葉だった
中断
嫌やそんなん嫌や
私なんて不釣り合い~って振る時の決まり文句じゃないすか?
春香が付き合ったことある……だと?
そんな馬鹿な
いや、春香ほどの女の子なら
付き合った事ないはずないのかもしれないが
春香が付き合っていたなんてことは考えたくない
だって付き合っていたってことは
セクロスしたり、キスしたり
腕組んだり、手繋いだり
ギュってしたり、デートしたり
あーんしたり……したってことなんだろ?
【えへへっ今日はどこ行く~?】
とか
【手、繋ぎたいなぁ……】
とか
【もっと近づこうよ。腕組んだりとかさ】
とか
【春香さんコートだよ~。暖かくなった?】
とか
【んっ……初めてのキスって……味わってみると物足りないね】
とか
【私の初めてだけじゃない……全部、受け取って欲しいな】
とか、とかとかとかぁぁぁぁぁあああぁぁぁぁ!!!!
「あの、プロデュ」
「あぁぁぁぁぁああぁぁぁぁぁッ!」
「ひぃっ!?」
「はぁっはぁっ……はぁ……すまん。取り乱した」
嫌すぎる
というか羨ましすぎて妬ましすぎて
今なら殺しちゃいそうだし
正直言ってふざけんな!
春香は俺のものだぁぁぁぁぁぁとでも殴り込みに行きたい……けど
「そいつが春香を幸せにできているなら、俺は……よかったな。としか言えない」
「……………………」
春香は少し複雑な表情で笑うと
俺から目をそらした
「そうですか……嬉しい、かな?」
「ん?」
ちょっと不自然な言葉だったが
そのことを春香に訊ねるまもなく
車は目的地へとついてしまった
中断
おいww
思いつく順番逆だろwwww
春香さんコートとか着たい!
どこにいけば買えますか!?
嫌や嫌や
「春香、頑張ってこい」
「はい」
「どうした?」
「なんでもないですよ?」
にこっと笑う
春香は嘘をついた
でも、撮影は待ってくれない
春香も待ってはくれない
時間の流れも待ってくれない
「……春香」
その悲しそうな背中を見送ることしか
俺にはできなかった
春香が悲しそうだった理由
春香が車の中で漏らした……聖水
ではなく、
最後に漏らした言葉が不自然だった理由
冷静になって考えれば
それは考える必要などないほどに単純だった
何が
【そいつが春香を幸せにできているなら、俺は……よかったな。としか言えない】
だよ!!
思わず叩いた壁は硬く
ビリビリと右手がしびれた
クソッ……馬鹿だ。バカだよ、お前は
「……春香」
付き合ったことがあるとしたら。
つまり、今はもう付き合ってはいないということ
なのに、よかったな。なんて
幸せにできているなら……なんて
「……なんでッ、そんな簡単なことに気付けなかった!」
嫌だってなんで言ってやれなかった
そんなの冗談だろって、なんで聞き返してやれなかった
おれは……俺なら
春香と別れたりなんてしない
何があっても……絶対に別れたりなんてしない
春香に悲しい思いなんてさせないッ!
殺しちゃうかもしれないと言ったな?
それは訂正だ
殺してやるッ、やってやるぞ!
なんで春香と別れた?
なんで春香を捨てた?
自分がアイドルの邪魔になるからか?
まさか春香の体を弄んだ挙句
飽きたからポイッ?
「ぬわぁぁぁぁあああぁぁぁぁぁッ!!」
「ちょっとアンタ……静かに」
「していられるかぁッ! 女がポイ捨てされたんだぞ!?」
「いや、知らねぇよ……」
「ほほう、お前か。お前なんだな?」
耐え切れず騒いでしまったせいか
スタジオから追い出されてしまった
「……けど、本当に付き合ったことあるんだろうか」
いや、
春香が付き合ったことあるという可能性を否定するわけではない
もちろん全力で否定したくはあるが
もしもそれが今の春香を作った一部であるのであれば
俺はそれですらも愛する覚悟だってある
ただ、思い出してみよう
【私がもしも、付き合ったことがあるって言ったらどうします?】
春香はこう言った
つまり、付き合ったことはないが
もしも付き合ったことがあったら貴方はどう思いますか?
という例え話の可能性だってあるわけだ
そもそも告白の話だってそうだ
春香は一度も「されました」なんて言ってないじゃないか
「ハッハッハッハァーッ!」
そうだ、そうなんだ
何を慌ててるんだ俺は
あれはただの例え話なんだよ
だから別に本気にする必要なんてないのさ
「でも、ならなんであの時複雑そうだったんだ?」
「プロデューサーさん?」
考え込む俺の隣で
甘い囁きのような声で名前を呼ぶ春香
……春香?
「春香!?」
「どうかしたんですか?」
どうかしたんですかって……
「なんでもないよ」
「大道具さんに怒鳴って追い出されてたじゃないですか」
「あれは偶然だ」
「偶然で怒鳴っちゃうんですか? 疲れてませんか?」
人の気も知らないで……
俺は春香のことで悩んで、
春香のことが心配で
つい発狂してしまったというのに
「ほっとけ」
「放っておいてくれないのは、プロデューサーさんじゃないんですか?」
春香はそう言いながら
作ってきたであろう、ドーナツを差し出してきた
「食べますか?」
「……一口サイズにしてくれ」
「一口サイズ……ですか?」
「ああ、頼む」
「ん~……」
春香は不思議に思いつつも
ドーナツを手でちぎって一口サイズにすると
俺の方へと差し出してくれた
本当に良いやつだよな
こんな煩悩全開のお願いだって聞いてくれるんだから
「プロデューサーさん?」
「じゃ、いただきます」
「あっ!」
春香の指ごとパクッと咥え
リコーダーを咥えている時の呼吸のように
勢いよく吸い込んだ
「ひゃぁぁっ!」
チュプン......と
自分の唇が震えて
そこから逃げ出した春香の指が
自分の唾液に濡れ光っているのが視界に映った
「な、何するんですか!?」
「……これ、彼氏とはしたことないのか?」
「え?」
「いや……春香は付き合ったことあるのか?」
春香の甘いドーナツが味覚を伝って体の隅々に染み渡っていく
疲れが吹き飛び、煩悩溢れる思考
ふと出てきたのはそんな言葉
「……そんなこと考えてたんですか?」
春香はクスッと笑う
でも、俺は
「笑い事じゃないんだ」
真面目だった
今までにないくらいに、真面目だった
「……それを話さないといけない理由はありますか?」
「春香」
「………………」
明らかに様子がおかしい
まるで
付き合ったか否か。
その質問の先に春香の過去の傷があるような
そんな感じさえするような……不安を感じた
「私のプライバシーですから――」
「春香!」
「っ……」
逃げようとした春香の手を掴む
柔らかい温かい
揺れた髪の匂いが鼻腔をついて脳を揺らす
今すぐにでも抱きしめたい
……でも
「俺はお前のプロデューサーだぞ」
「でも、それはアイドル天海春香じゃなくて女子高生天海春香の秘密ですよ?」
「そんなこと知らん。俺は知りたい。だから言え」
「な、何言ってるんですか……?」
ほんと、何言ってるんだろうな
昨日から調子が狂いっぱなしだよ
「すまん、でも……車で言ったことが春香を傷つけたなら謝りたいんだ」
「……ないです」
春香は自由な方の手を胸元でギュッと握り締め
俯き気味に答えてくれた
「付き合った事……ないですよ?」
「え?」
「だから、私は誰とも付き合ったことなんてないんです!」
最後には
真っ赤な表情で俺を睨み
手を振り払った
「冗談に決まってるじゃないですか、私なんかが誰かと付き合えるわけないじゃないですか」
恥ずかしさではなく
怒りによる赤い顔なのかもしれない
それはそうだろう
ちょっとした見栄だったのかもしれないんだから
「……じゃぁ告白は」
「されたこともないです」
ショボンと落ち込み
春香は悲しげな笑みを浮かべた
「だから、好きとか言うのやめてください」
「なんで?」
「そのくらい察してください」
春香にしては珍しく冷たい声
まるで俺が鈍感みたいじゃないか
「俺は春香が好きだぞ?」
「え――っ」
一瞬だけ驚いて
すぐに眉間にしわを寄せて睨む
「仲間ですか? 友達ですか? 担当アイドルとしてですか?」
俺が使った引掛けの言葉
春香は呆れたように言い捨てると
スタジオに戻ろうと背を向けてしまった
「いや、異性として」
「そうですよね――え?」
「だから、友達とか仲間とかアイドルじゃなくて、天海春香を好きなんだ――って、あ」
あまりにも春香が失望していたからか
気づけもう後戻りができなくなってしまっていて
春香は驚いて振り向いた顔をだんだんと恥ずかしさの赤に染め上げていく
「な、なな何言ってるんですかプロデューサーさんっ!」
「わ、悪いか?」
そう聞き返した瞬間
春香はほんの少しだけ何かを喉元まで引き上げ
けれど飲み込んで首を振った
「わ、私よりも美希とか、あずささんとか、小鳥さんとか……いるじゃないですか」
「またそれか……」
春香はいつもそうやって
自分は不釣り合いとか言うんだ
いい加減にしよう
俺だって真面目に告白してるんだから
「ま、またって……美希達の方が可愛いいし、綺麗だし、胸だって」
「馬鹿なこと言うんじゃない」
「え?」
「可愛いとか綺麗とか関係ないッ! 他がどれだけ優れていようが、惚れた女はお前なんだよ!」
「っ……プロデューサーさん」
大道具の人とか
小道具の人とか
いろんな人たちがいるこの場所で
そんなことを叫ぶのは自殺行為かもしれない
だけど、知ったことか
「俺はッ! 天海春香が大好きだぁぁぁぁぁあああぁぁぁぁぁ!!」
「ぁ……」
あまりの出来事に方針仕掛けている春香の頭に手を置き
ゆっくりと撫で下ろす
「春香は俺が好きか? 嫌いか?」
「……………………」
「不釣り合いって答えは無しだからな?」
あらかじめ回答を潰したものの
その必要もなく、春香はすぐに答えた
「……好きですよ。私だって」
「でもっ、プロデューサーとアイドルなんです!」
「大人と子供でもあるな」
「解ってるなら――」
「そんなこと知ったことか!」
アイドルとプロデューサー?
大人と子供?
ピーポーくんに監禁されるかもしれない?
そんなこと知ったことかよ
「俺たちが付き合いたいか付き合いたくないか。必要なのはそれだけだろ」
「……私、トップアイドルになりたいです」
「そうか」
「でも、せっかくの恋を捨てたくもないです……」
「………………」
「………………」
「……プロデューサーさん」
「なんだ?」
黙り込み、
フル稼働させた思考
それは春香も同じだったのか
先に言葉を投げかけてきたのは春香だった
「お断りします!」
「なっ」
「うまくいくわけないですから……」
「そんな……」
「けど、嬉しかったですよ?」
春香はにこっと笑った
「正直、付き合ってもいいかなって思いました。でも……」
春香は申し訳なさそうに首を振る
「まぁ、今はアイドル優先したいので、無理です」
「…………」
「すみません」
フラれた……?
春香と両想いだったのに?
何が足りなかった?
時期が悪かったのか?
「……プロデューサーさん。答えは初めから決まってたんです。ごめんなさい」
「は?」
なんだよそれ
答えは初めから決まってた?
なのに、好きだなんて言ったのか?
悩むふりなんてしたのか?
「春香、お前っ!」
「スタジオに戻りますね」
春香は俺の怒りに見向きもせず
さっさと歩いて行ってしまった
ここまで。あとは朝にでも
なんか不自然だと思ったらそう言うことか
はるるん策士やなぁ
春香 is あざとい
結果的に言えば
春香に盛大に振られたのは良かったのかもしれない
スタッフたちにも聞こえていたことだったし
盛大に玉砕したとなれば
スキャンダルでもなんでもなく
ただの笑い話、風化して消えていく
アイドルによくある些細な出来事みたいなものになるからだ
そのおかげで
春香のアイドル生命になんの支障も来すことはない
「……………」
最初は
春香の悩む態度もすべて意味はなく
初めから答えが決まっていたという言葉に苛立った
でも、春香がそういうのなら受け入れるしかない
けれども
告白し、断られたというものは
俺たち2人のあいだには残るわけで
やっぱりそれはなんだか気まずいわけで
春香の仕事が終わるよりも早く
車で事務所に帰ろうとしていたことに気づき
「こっちですよ~! こっち~!」
戻る頃には春香の仕事も終わっていて
駐車場で大きく手を振る可愛い姿が目に入った
「もう、酷いじゃないですか」
「助手席には乗るな」
「え?」
「後ろに座ってくれ」
当たり前のように春香は助手席に座ろうとし
俺はそれを拒んでしまった
「なんでですか?」
「良いから、後ろに座ってくれ」
「……解りました」
春香は困惑したまま
だけど俺の言うことだからと
後部座席へと乗り換えてくれた
乗り換えてもらった理由
そんなのは、ただ俺が嫌だからっていうわがままでしかない
「次の取材は別に俺はいなくて平気だよな?」
「え? いてくれるんじゃないんですか?」
なんでそんなことを平然と言うんだ
なんで、どうして……解ってくれないんだ
フラれた相手がどれだけナーバスになるかわかってないのか?
「……お前は告白したことあるか?」
「はい? ありますよ。ついさっきプロデューサーさんに」
そういえば、好きって言ってくれたもんな
言い方的に
それが初めてなのか……
「いいか? 相手をフッた場合、一緒に行動するのは危険だぞ」
「そうなんですか?」
「そうなんだ。しかも密室はもっと危険だ」
「例えば、今みたいな状況とか」
「え――っ!?」
車を道路脇に急停車させると
後ろから小さな悲鳴が聞こえた
「あ、危ないじゃないですかぁ」
「春香、襲われるぞ。そんなだと」
座席に頭をぶつけたのか
いたたた....と言いながら頭をさする春香は
そんな言葉に対して理解できないというように首をかしげた
「私が密室で二人きりになる男の人なんてプロデューサーさんくらいですよ?」
「だから言ってるんだ。春香は俺をフッたじゃないか」
「えっ、やだなぁ。私結構頑張って考えたのに」
春香はおかしそうに笑うと
ノートを取り出して何かを書き出し、見せてきた
【お断りします!】
【うまくいくわけないですから……】
【けど、嬉しかったですよ?】
【正直、付き合ってもいいかなって思いました。でも……】
【まぁ、今はアイドル優先したいので、無理です】
【すみません】
それは春香自身の言葉だった
断る際に言った言葉
「これがどうかしたのか? 怒っていいか?」
「怒るって、怒りたいのは私ですよ! もう、解らない人ですね」
春香は怒ってても可愛い
そんな彼女はまったくもう、ここまでしなきゃダメなんて。と
文句を言いながらも書き加え、見せられたノートに書かれていた言葉は
その意味を180度変えてしまっていた
お断りの【お】
うまくいかないの【う】
けど、嬉しかったの【け】
正直、付き合ってもの【し】
まぁ、今はアイドルの【ま】
すみませんの【す】
それらを抜き出してください
という問題のような書き方……でも
既に抜き出してあり、つながる言葉は
「お受けします……?」
「そうですよ!」
「え? でも、お前最初から答えは決まってるって」
「最初ですよ。言葉の最初! そこから答えは決まってるって!」
いや、こんな判りにくいことをされても……
納得いかないという俺に対して
春香は微笑んだ
「日本語って縦書きが主じゃないですか」
「知るか! 振られた言葉を縦書きで書き出すほどメンタル強くないから!」
「えープロデューサーさんなら気づいてくれると思ったのに」
これに気づけるやつは絶対にいないね
超能力者でもない限り
絶対に察する事なんて不可能だね
…………。
「春香」
「はい」
「良いのか? スキャンダルになるぞ?」
「バレなければなんとか。あそこのスタッフさん達にはプロデューサーさんが盛大に玉砕したってことになってるはずですし」
それが狙いでもあり
周りにはフラれたと思わせておきながら
本人には言葉の真意に気づいてもらいちゃんと……というわけか
うん、やっぱり解るわけがないな
「もちろん、事務所のみんなには隠したくないですよ?」
「解ってる……でも良いのか? 本当に。女子高生なんだからまだまだ」
「恋はいつでもできるけど。両思いになれるのはきっと……滅多にありませんから」
それに、と
春香は嬉しそうに笑って続けた
「私はプロデューサーさんが好きなんです。だから、付き合いたいです」
「……春香」
可愛い、優しい、家庭的、ドジっ子、体型だって理想的なもの
そんな春香と……付き合える?
「良いのか? 本当に良いのか? もうガッとやってチュッとやってはぁぁぁぁぁんしても良いのか!?」
「ぇっ……いや、まぁ……」
春香は言葉の意味が解っているらしく
真っ赤な顔で視線を逸らしわずかに頷いた
「プロデューサーさんがしたいなら……えへへっ」
あなただけが使えるテクニックでガッとやってチュッとやってはぁぁぁぁんした結果
取材には盛大に遅刻したことは言うまでもない
終わり
本当はこの半分くらいで終わるはずだったのに
はるかわいい
流石メインヒロイン
可愛いあざといさすがっす
乙
いつものクオリティで安心した
おっつん
はるるん可愛い
ちくしょうはるるんきゃわいすぎる
よくわかってる>>1だよ
乙
はるかわいい!!!
おかしいな、変態Pで華麗に玉砕したと思っていたのにくそっ春香は可愛いなあ
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