一夏「鈴のとびっきりの笑顔が見たい」(106)
一夏「と、いうわけなんだけど」
箒「どういうわけだ」
一夏「だからそのままの意味だよ。鈴の最高の笑顔が見たい」
一夏「何か良い方法は無いか?」
箒「……」
一夏「おーい、箒さーん?」
箒「知るか!」
一夏「? 何怒ってるんだよ?」
箒「知らん! 笑わせたいならくすぐればいいだけだろう!」ズカズカ
一夏「……?」
一夏「鈴めーっけ」
鈴「あれ一夏? 珍しいじゃない、こっちに来るなんて」
一夏「まぁな、頼みがあってさ」
鈴「高くつくわよ? まぁ言うだけ言ってみなさい」
一夏「ちょっと脇を触らせてくれ」
鈴「……腋?」
一夏「おう、脇だ」
鈴「ふんっ!!!」ブォン!
一夏「ぶふぅっ!?」スパーン!
―――
一夏「い、痛い……痛過ぎる……」ジンジン
一夏「多分今まで喰らったビンタの中で最高の痛みだ」
一夏「こんなんじゃ、鈴の笑顔なんて夢のまた夢……」
どーんっ
一夏「っと」
ラウラ「嫁か。曲がり角では気を付けて歩け」
一夏「あぁ、悪いなラウラ」
ラウラ「何か考え事でもしていたのか?」
一夏「そうだ、ラウラの意見も聞かせてくれ」
一夏「かくかくしかじか」
ラウラ「まるまるうまうま。なるほど」
一夏「すげぇ勢いでビンタされた」
ラウラ「『笑顔を見せてくれ』と頼めばいいだけではないのか?」
一夏「えらく直球で来たな」
ラウラ「笑うこと自体簡単な事じゃないか。労力を使わないし、出費も要らん。それを断るほど冷たい人間ではないだろう?」
一夏「だよな……分かった、それで行ってみる」
ラウラ「では私はこれで」
一夏「おう、ありがとなラウラ」ナデナデ
ラウラ「うむ」
鈴「うぅ~……」ジタバタ
ティナ「いつまでやってるの……」
鈴「だって、思いっきり殴っちゃったし……自分で言うのもなんだけど、人生最高の手応えだった……」
鈴「あれは痛い。あたしだったらあんなの絶対やだ……」
ティナ「やっちゃったものは仕方がない。だから謝りに行きなよ」
鈴「……また殴っちゃう気がする。或いは『アンタが悪い』って言っちゃいそう」
ティナ「その時に考えればいいんじゃない? とにかく、謝らないといけないのは事実だと思うけど」
鈴「むぅぁぁぁ~……」バタバタ
ティナ「……はぁ」ムンズ
鈴「な、何すんのよ! 放しなさい!」
ティナ「謝ってくるまで部屋に入れないから」ポイッ
鈴「いだっ……ちょ、ちょっと! 開けなさいよー!!!」ドンドン
―――
一夏「とはいえ、鈴怒ってるだろうなぁ……はぁ」
………さいよー!!!
一夏「この声……鈴?」
鈴「ちょっとだけ、気持ちの整理をさせてってば! 今はさすがに……」ドンドン
一夏「鈴?」
鈴「ひゃあぁっ!?」
一夏「な、何やってんだ?」
鈴「あ、一夏……えっと、……」
一夏「ん?」
鈴「いや、なんて言うかな……その……」
一夏「……悪かった」
鈴「え?」
一夏「だからさっきのだよ。よくよく考えれば唐突だった」
一夏「このビンタは自業自得って訳だから、鈴は気にしなくてもいい」
鈴「あ……あたしの方こそ、ごめん……さっきは、やり過ぎたから……」
一夏「別に気にしてないからな。俺も失礼だったって思ってる」
鈴「そ、そうよ……いくらなんでも……」
一夏「あれはもう忘れてくれ」
一夏「で、それとは別件……でもないけど、一個頼みがあるんだ」
鈴「ちょ、ちょっと待って一夏!」
一夏「なんだよ?」
鈴「さっきは、驚いちゃってつい手が出たんだけど……」
鈴「そ、そんなに……わ、わわわ腋が触りたいの!?///」
一夏「まぁ、その先にちょっとした目的があったんだけどな……俺の自己満足の為だったし、忘れてくれって」
鈴「あ、あたしのじゃないと駄目なの!?///」
一夏「そりゃあな。鈴の脇じゃないと意味が無い」
鈴「ぅ……///」
一夏「……顔真っ赤だけど大丈夫か?」
鈴「い、良いわよ! 触っても!!!」
一夏「ちょ、ちょっと待ってくれ!」
鈴「べ、べべっ別にもう殴ったりしないからぁ!!!///」
一夏「確かにそれは嬉しいけど、後から思えば女性に対して大分失礼だったなっていうレベルで……!」
鈴「何よ! あたしだって……勇気出して言ってるんだから!」
鈴「……本音言うと、驚いたわよ。一夏が……そういうの好きだったっていうのは」
鈴「で、でも! あたしはそれをちゃんと受け止める気でいるから」
鈴「アブノーマルのジャンルには入るだろうけど、軽蔑なんてしない」
一夏(微妙に話が噛み合ってないような……まぁいいか)
一夏「……ありがとな。鈴のそういう、人を差別しない所、好きだぜ」ポンッ
鈴「一夏……///」
一夏「それじゃ……良いか?」
鈴「う、うん……!///」
一夏「……よし」サワッ
鈴「んっ……!///」
一夏(鈴の弱いトコロ、分かんねぇよな……まずは探っていかないと)サワサワッ
鈴(す、すぐに行ってくれるんじゃないの!? まさか焦らされるなんて……///)
一夏(……さすがに制服の中に手を入れるのは駄目だな。あくまで服の上からか……)
鈴「い、ちかぁ……そんな、あたし……っ!?///」ビクン
一夏(ココか!!!)ガシッ
鈴(な、何!?///)
鈴「ひぅっ……へ? あ、あはぁっ!? い、ひひひははぁっ!?」
鈴「い、いちっ……あはっ、ひぃーっ!!!」
一夏(間違いない、ココこそ鈴の弱点!)
鈴「ま、待ってぇ! 駄目、ひっ、駄目駄目駄目っ!」
一夏(鈴が笑ってる……)
鈴「あははっ、はっ、はははひっ!!!」
一夏(嬉しいな……鈴の素敵な笑顔が)
千冬「ふんっ!!!」スパーン
一夏(小気味良い音と共に、俺の視界は完全に真後ろの物を捉えていた)
一夏(一日にして、『今まで受けた最も強いビンタランキング』の頂点は、二回も更新されることになったのである)
―――
一夏「……」
山田「織斑君……どうして、このようなことを……?」
一夏(俺、なんでこんな取り調べみたいな扱いを? 鈴をくすぐってただけなのに……)
一夏(言うなれば、子供の悪ふざけレベルであって……拘束とか要らないだろ……)
山田「私は、織斑君を信じています。何か、理由があったんですよね?」
一夏「その、鈴の笑顔が見たかっただけなんですけど……」
山田「……あの行為で、彼女が喜ぶと思っているんですか……!」
一夏「あ、あれぇ……?」
―――
千冬「凰……もう大丈夫だからな」
鈴「あの、わぷっ」ポフン
千冬「安心しろ。私が居る以上、手出しは絶対にさせん」ギュウッ
鈴(……何この状況?)
千冬「何も言わなくていい。今は何も考えずにこのまま休め。私がついていてやる」
千冬(顔や身体に傷は見られない。服の乱れも大したことはなかった)
千冬(……最悪の事態は免れたか。しかし、凰が心に受けた傷は……!)
鈴「その……」
千冬「なんだ?」
鈴(優しい顔できるんだ、普段はあんななのに……じゃなくて)
鈴「一夏は今何処に……?」
千冬「……大丈夫だ。今は別室……此処より遠い場所での事情聴取となっている」
千冬「仮にISを用いようとも、教員総出で取り押さえられるぞ」
鈴「そ、そんなっ!? 一夏が何を!?」
千冬(凰……こんな目に遭っても、まだ一夏の事を庇うのか……)
千冬(あの馬鹿者が……!)
千冬「何をしたか……一番よく分かっているのは凰のはずだ」
鈴(一夏にくすぐられただけのような……?)
千冬「お前の一夏に対する想いは分かっている。経緯はどうあれ、ああなることを望んでいたのかもしれないが……」
千冬「そもそも学生である以上、同意の上でも認められん。処罰が必要となる」
鈴「は、はぁ……」
千冬(凰……現実が認められないあまり、無かった事にしようとしているのか)
鈴(ヤバい話読めない)
鈴「あ、あの、ちょっと一夏と話をさせてもらえませんか?」
千冬「何故そうまでして……!」
千冬「…………それは叶わん。特に、凰と会わせることは絶対に」
鈴「……あのー、一から説明してもらってもいいですか?」
鈴「なんていうか……何で一夏がそんな目に遭っているのかさっぱりで」
千冬「口にするのは憚られる……すまないが、そちらから先に頼む」
鈴「えっと、確か一夏にくすぐられて廊下で馬鹿騒ぎしたってくらいで……」
千冬「え?」
鈴「え?」
千冬「くすぐり……?」
鈴「あたしの記憶では……確かそうだったと」
千冬「……一夏は今強制わいせつの罪に問われているんだが」
鈴「強制わいせつ……は? な、なんでそんなことになってるんですか!?」
千冬「現場に最初に向かったのは私だが、主観的に、客観的にも……その、ご、強姦にしか見えなかった」
鈴「ち、違います! 一夏はそんなことしませんから!」
千冬「……そういうことを何故廊下で行おうとした」
鈴「そ、それは……その場の勢いっていうか……///」
鈴「じゃなくて、一夏の所に行かないと! 早く場所を教えてください!」
―――
山田「……何がくすぐりですか。見苦しいですよ織斑君」
一夏「……」
山田「ここまでとぼけて、罪の意識も感じられません」
山田「先生は……ショックですよ」
一夏(いやだからショックなのは俺の方だから)
鈴「一夏ぁ!!!」ドバン
一夏「り、鈴!?」
山田「何故ここへ!? 織斑先生はどうしたんですか!?」
鈴「盛大な勘違いです! あたしは……!」
一夏「?」
山田「?」
鈴「その……い、一夏に、お、おおお犯されそうになったわけじゃないんですっ!!!///」
一夏「はぁっ!?///」
山田「え?」
鈴「で、ですから、一夏とちょっと悪ふざけしてたっていうか、くすぐられてただけで……///」
鈴「先生達が思ってるような事は、全然無いんです!///」
山田「え?」
―――
一夏「はぁ……大変な目に遭った」
一夏「強制わいせつとか……鈴にそんなことするはずないだろっての……」
鈴(ぐっ……それはちょっと複雑ね……!)
一夏「でも、悪かったな、鈴」
鈴「……ホントよ。何が『腋を触らせろ』よ」
一夏「まぁ、いいか。ここまでなってしまったんだし、話す」
鈴「腋フェチってことを?」
一夏「なんでそうなるんだよ!」
鈴「違うの?」
鈴「だって腋を触らせろって言ったじゃない」
鈴「てっきり一夏が腋フェチで、あたしの制服姿に欲情したもんだと思ってたわよ」
一夏「す、するか!」
鈴「……あたしで興奮しないってのも、女としてショックよ」
一夏「あー……」
鈴「なに?」
一夏「鈴の笑顔が見たくてやったことなんだけど、な」
鈴「は?///」
一夏「笑って欲しかったから……何故かああいう手段に至ってしまった」
鈴「な、なんでまた笑顔が見たいと?」
一夏「ほら、鈴の笑顔って見てると元気になるし」
一夏「鈴は『ニコッ』じゃなくて『ニカッ』なんだよな。良い笑顔でさ」
一夏「それが見たかったんだけどなぁ……自分でもよく分かんねえよ」
鈴(あれ? これって深層意識であたしに恋してる?)
鈴「い、一夏!」
一夏「ん?」
鈴「こ、これでどう!?」ニコォ
一夏「違う」
鈴「な、なんでよ!?」
一夏「ぎこちないんだよな、なんか」
一夏「もうちょっと自然に笑えないか?」
鈴「こ、こう!?」ニヤァ
一夏「違う! なんていうかこう……白い歯!」
鈴「こう!?」ニヘラァ
一夏「怖い!」
―――
鈴「か、顔が痛い……後でマッサージしないと……」
一夏「どれもピンと来なかったな……」
鈴「その内あるでしょ。意識するからこそ出せないのよ。多分ね」
一夏「惜しいな……」
鈴「ここまででいいわ。送ってくれてありがとね」
一夏「おう。今日は色々悪かったな」
鈴「いいわよ、気にしてない。それじゃまたね、一夏♪」
一夏「ちょっと待った鈴」ガシッ
鈴「な、何?」
一夏「今のだ、俺が求めていた笑顔は。さぁもう一度見せてくれ」
鈴「あー……確かに今のは自然に出たわね」
鈴「無理よ、やろうと思ってやれる物じゃないって」
一夏「そうか……残念だ」
一夏「でも分かった。普段から意識して見ていれば、割と簡単に笑顔が見られるかもな」
鈴「……」
一夏「引き止めて悪かったよ。また明日」
鈴「ちょっと待った一夏」ガシッ
一夏「……なんだ?」
鈴「あからさまに嫌そうな顔しないでよ。アンタもやったことじゃない」
一夏「冗談だよ……」
鈴「忘れてたことがあってね。一夏にお願いしたい事があるの」
一夏「大変な目に遭わせちまったしな……いいぜ、一つだけなら何でも聞く」
鈴「うん……」スーハースーハー
一夏「さ、さぁ来い!」
鈴「あたし達、クラスが違うでしょ?」
一夏「? お、おう……」
鈴「一夏からも、あたしに逢いに来てよ」
鈴「あたしから行ってばっかりじゃない。でもこっちから行かないと、一夏はあの4人と一緒に居るばっかりで」
一夏「なるほどな……そうか、寂しい思いさせてたんだな」
鈴「べ、別に寂しくない!」
一夏「鈴でもそういうとこあるんだな。可愛い可愛い」ナデナデ
鈴「……嘘。やっぱり寂しい。だから、その……」
一夏「分かった。それぐらいお安い御用だ」
鈴「そ、それで、もうちょっと、一緒に居る時間を増やせない……かな?」
一夏「そうか? 今でも十分だと思うんだけど……」
鈴「全然、足りない……」
鈴「……一夏は言ったんだし、こっちも言わないとフェアじゃないわよね」
一夏「何が?」
鈴「あたしも、一夏の笑顔が大好き」
一夏「っ!?///」
鈴「一夏、すっごく優しい顔してるの。笑顔を見ると、ホッとするから」
鈴「だから、一緒に居る時間が増えたら、お互いに笑顔を見られる機会も増えるでしょ?」
一夏「そ、そうか……ありがとな……///」
鈴「って何言わせんのよ! さっさと返事しなさい!///」
一夏「……分かったよ鈴。その提案、受ける」
鈴「うん……ありがとう、一夏」
鈴「……///」
鈴「な、なんか照れくさいわね!///」
一夏「結構恥ずかしいこと言ってるからなぁ……」
鈴「で、出来れば忘れてくれないかなぁ……?///」
一夏「無理だな。それじゃ、俺は部屋に戻るから」
鈴「うん。ばいばい」
一夏「……」
鈴「……」
一夏「笑顔見っけ。サンキュ」
鈴「あたしも、今1つ見られたわよ。一夏」
あ、眠いしキリが良いしここで切ろう
落としてくれ
これでキリ良くないの?
一夏「って訳で、これから2組で昼飯食べることになった」
箒・セシ・シャル「「「え」」」
ラウラ「お、今日の日替わり定食はカレーか。カレーは好きだ、なんでも美味しく食べることが出来る」
箒「一夏、どういうことだ?」
一夏「いや、言ったまんまの意味だけど」
セシ「いえ、そうではなくてですわね…どうして一夏さんが2組…もとい鈴さんのクラスへ?」
一夏「いや、なんだかんだ言ってアイツさみしがってるみたいだからさ。それに俺もなんか鈴に会いたいし」
シャル「…!?え、一夏それって鈴のこと…」
やっぱキリよく終わってるから膨らませられんわ
一夏「?」
シャル「い、いや…なんでも…」
ラウラ「鈴の事が好きなんじゃ…と言いたかったのか?シャルロット」
シャル「ら、ラウラ!」
セシリア「余計な事を…」
一夏「…!そうか、俺は鈴の事が…好きなんだ…」
ネタを支給するから早く!
ほ
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