響「全力アマゾン卓球ナイトクルーズ」 (55)
【某日・事務所】
P「なぁ、響」
響「なんだ?」
P「今度の生っすか、響チャレンジなんだけど」
響「うん」
P「今回は、放送日が響の誕生日に近いってことで……スペシャルだ」
響「す、スペシャルか……」
P「いや、変なことはしないぞ」
響「え?」
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P「スペシャルってことで、美希と貴音も参加する。 フェアリーチャレンジだ」
響「おぉ、フェアリー!」
P「そして、今回のチャレンジは……」
響「チャレンジは?」
P「ミステリーツアーだ」
響「ミステリーツアー……! すごい、普通のバラエティっぽいぞ!」
P「ははっ、そうだろう!」
P「それで、趣旨的にはどこに行くか不明なんだけど」
響「そこは……不安だな」
P「響は、海外パスポート持ってたっけ?」
響「海外なのか!?」
P「可能性もあるって話だ」
響「うーん……確か、この前ロケでフランスに行ったような……」
P「じゃあ大丈夫だな。 ……でもな、響」
響「え?」
P「響にだけ言っておくけど……今回の行き先、実は沖縄なんだ」
響「お、沖縄っ!?」ガタン
P「落ち着け。 ……まぁ、響チャレンジとはいえ、誕生日だしな」
P「故郷に帰るのも悪くないだろうと思ったんだ」
響「お、おぉ……ありがとう、プロデューサー!」
P「それで、ツアーの内容だけど」
響「うんうん!」
P「自然に触れ、十分楽しんで……美味しいご飯を食べる、って感じだ」
響「うんう………って、なんか随分ざっくりしてないか?」
P「一応ミステリーツアーだしな」
響「そういうものなのか……?」
P「悪いけど、あまり細かい内容は話せない。 サプライズが入る可能性もあるし」
響「おぉ、サプライズ!」
響「……それは、言っちゃってよかったのか?」
P「ははっ、それもそうだな。 忘れてくれ」
響「ええっ!?」
P「それじゃ、ロケは来週だからな。 風邪引くなよ?」
響「それは大丈夫さー! なんてったって自分、かん」
P「はいはいはいさーい」ガチャッ バタン
響「うぎゃー! 最後まで聞けー!」
響「沖縄、か…………」
響(沖縄に帰れるんだ……いつ以来かな)
響(家族のみんなは、元気かな)
響(海は、今も変わらないのかな)
響「……」
響「早くロケの日、来ないかな」
――――
――
【ロケ当日・空港】
貴音「おはようございます、響」
響「貴音、はいさーい!」
美希「ねぇ響、昨日寝た? クマすごいよ?」
響「えっ!?」
美希「冗談なの。 ホントに寝てないんだね、あはっ☆」
響「うぐぐ……」
P「お前ら、カメラ回ってるぞ……」
P「それじゃ、これを着けてくれ」
響「アイマスクか……まぁ、ミステリーツアーだしね」
貴音「なんとも、面妖なでざいんですね……」
美希「どうハニー、似合ってるー?」
P「あと、これも」
響「これは……ヘッドホン?」
P「耳栓代わりだよ、念の為な」
貴音「……」カポッ
美希「ねぇハニー、この曲何ー?」
P「『夜明けのスキャット』だ」
響「これ、無駄に大音量だぞ……」
P「しばらくは会話も無くて辛いだろうけど、我慢してくれ」
P「……あ、聞こえないのか」
響「……」
美希「……」
貴音「……」
P「……ふふっ、現地が楽しみだな」
ルー ルールルー ルー ルールルー
響(そろそろ……飛行機に乗ったのか?)
美希「……」グカー
貴音「……」スー
響「……」
響(時間の感覚が狂うな……)
ルー ルールルー ルー ルールルー
響「……」スースー
P「………びき。 響! 着いたぞ!」
響「むにゃ……あ、プロデューサー」
響(耳栓がない……着いたんだ!)
P「それでは、現地に到着ということで……」
美希「……」
貴音「……」
P「外して下さいッ!!」
響「……」ゴクリ
美希「………おぉ……!」
貴音「ここは……面妖な」
響「……」
美希「どーりで暑いと思ったの」
貴音「日本とは、気候が違いますからね……」
響「…………」
響「どこだ? ここ」
P「今回のミステリーツアー、行き先は……なんと! アマゾンです!!」
響美希貴音「「!?」」
響「あ、アマゾン!?」
美希「ミキ知ってるよ、アマゾン。 便利だよね」
響「多分、そのアマゾンじゃないと思うぞ」
貴音「わたくしも存じておりますよ、仮面らい」
響「そのアマゾンでもないぞ!」
響(というか……なんでアマゾン!?)
響(沖縄のはずじゃ……まさか自分、騙されて)
貴音「響」
響「貴音?」
貴音「何か、不本意なことがあったのでしょうが……」
貴音「わたくし達は、アイドルです。 そのような表情をしては……いけませんよ?」
響「貴音……」
響(そうだな……落ち込んでる場合じゃない)
響(文句は後で言うとして、今は仕事を――)
P「これからやるのは卓球だ」
響「!?」
響「たっ、卓球!?」
P「あぁ」
響「アマゾンで卓球? この熱帯林で!?」
P「あぁ」
響「……」
P「……あ、川下りしつつだぞ?」
響「もっと分からないぞ……」
美希「響、ゴチャゴチャうるさいの」
貴音「わたくし達は……アイドルですから」
響「なんでそっちは順応してるんだ!?」
P「ボートを担当してくれる、現地スタッフのクリスだ」
スタッフ「▲◆○☆…♪」
P「……」
響「プロデューサー、何て言ってるんだ?」
P「……」
P「楽天初優勝おめでとう、って」
響「絶対違うと思うぞ」
P「アマゾン川の風景を眺めながら卓球を楽しむ、というのが今回のツアーだ」
響「自分、未だに意味が分からないぞ」
美希「ミキ、卓球久しぶりなの!」
貴音「ふふ……手は抜きませんよ?」
響「……」
P「ちなみに、卓球台が乗るようなボートを用意したぞ」
響「無駄に大きいな……」
P「それから、ピラニア等にはくれぐれも注意してくれ」
響「そもそも何でアマゾンに来たんだ?」
P「それでは、出航ッ!」
スタッフ「……」ギコー
P「……さて、卓球台を広げてと」ガシャン
美希「なんか、ワクワクしてくるね」
貴音「胸が高鳴りますね」
響「嫌な予感しかしないぞ」
P「ペアは、俺と響でいいか?」
美希「えー、ミキはハニーとが」
P「いーや、決定だ」
P「……」
響「……」
貴音「……」
美希「……」
P「ふっ!」コン
美希「とうっ!」カコーン
響「……たぁっ!」スパーン
貴音「……………っ」
響「さーっ!」グッ
美希「待って、響」
響「え?」
美希「あの掛け声、やっぱり言うの?」
響「掛け声……あぁ、自分卓球やってたからな。 習慣みたいなものさー」
美希「それ、ダサいって思うな」
響「!?」
美希「せっかく響は沖縄出身なんだから、こう、はいさーい、とか」
響「そういう意味で使う言葉じゃないぞ、それは……」
響「……」
美希「……」
P「……」
貴音「……」
響「……たぁっ!」バコーン
美希「っ!」
P「やった!」
響「はいさーい!!」グッ
美希「……やっぱりナシで」
響「ええー……」
貴音「美希」
美希「ん?」
貴音「何を戯れに興じているのです……わたくし達は、遊びに来たのではありませんよ」
美希「貴音……」
貴音「全力で、あの二人を叩き潰すのです。 出来ますか?」
美希「……モチロン、なの」
響「え? これって遊びじゃないのか?」
P「少なくとも俺は全力だ」
貴音「それでは、全力で……」スッ
美希「……」コキッ コキッ
響「あれ、サーブ貴音なのか?」
P「そこら辺はノリだ」
貴音「……行きますよッ!」スパーン
P「うおっ!?」パコーン
美希「おおっ!」
響「ドンマイドンマイ、当たってたぞ!」
P「……おお、卓球っぽい」
響「卓球っぽい……?」
響「プロデューサー」
P「ん?」
響「もう一回あのサーブが来たら、返せるか?」
P「……無理だな。 体が追い付かないよ」
響「……」
P「まぁ、美希のサーブなら……いや、それも本気出されると……」
響「分かった。 自分が返す」
P「出来るのか?」
響「なんくるないさー!」グッ
P「……おお、沖縄っぽい」
響「ぽいも何も、沖縄の言葉だぞ……」
貴音「作戦会議は……終わりましたか?」
美希「むー、後でペア交換したいの」
響「……」スッ
P「まぁ、後々な……」
貴音(前衛に響……ですか)
貴音(しかし、誰が相手であろうと……)
貴音「……やることは依然、変わりませんッ!」スパーン
響「覇ッッッ!!!!」バシュゥン
貴音「!?」
P「やった!」
貴音「………~~ッッッ」
P「ナイス響!」
美希「いい掛け声だったの!」
響「……突っ込まないでほしいぞ」
貴音「ふふ……それでこそ響、です」グラッ
響「貴音?」
貴音「かはっ……美希、後………は」ドサッ
響「え、ええっ!?」
美希「……!」
響「ちょ、ちょっとっ! 貴音!?」
P「いいんだ、響」
響「えっ、でも、貴音が」
美希「貴音は、負けたの。 だから、しょうがないって思うな」
響「しょうがない、って……」
美希「ほら、続きしよ? 3人になっちゃったから、シングルスだね」
響「何言ってるんだ美希、そんなの」
美希「ハニーは最後にとっておきたいから……響、勝負なの」
響「……」
響(さっきまで普通に卓球してたのに、突然貴音が倒れた)
響(これが、プロデューサーの言う……ノリなのか?)
美希「ほら響、早くー」
P「……」
響(だったら……うぐぐ、こんな企画にノリたくないけど……)
美希「響ー?」
響「……ってやる」
美希「え?」
響「やってやる! 美希もプロデューサーも……みんな、みんな倒して! 勝ってやる!!」
美希「へぇ……いい顔なの、響」
響「……」
美希「でもね、勝つのはミキだよ」
美希「ミキが……ミキが! 最後に! キラキラするのッ!!」バコーン
響「……!」パコーン
P「……」
P(やべ、ツッコミ居なくなった)
美希「ふっ!」パコーン
響「……」カーン
美希「てりゃっ!」パカーン
響「……っ」コーン
美希「……」パコーン
美希(響のショット、遅いの)
美希(これなら……楽勝ってカンジ?)
美希「たぁっ!」バコーン
響「……」
響「ふんッッッ!!!!」ズドン
美希「……!?」
美希(え、ウソ、速)
パッカーン
美希「……………そん、な」ドサッ
響「……」
P「すごいな、響。 今のはどういう技だ?」
響「いや、普通に思いっ切り打っただけさ。 眉間に行っちゃったけど……」
P「……なるほど」
響「プロデューサー、休んでいいか? 色々疲れたぞ」
スタッフ「……」ギーコ ギーコ
響「……っぷはぁ!」
P「……」
響「なぁ、プロデューサー」
P「ん?」
響「結局、今回はどういう企画なんだ?」
P「響チャレンジ、アマゾン編だ」
響「……」
響(沖縄、行きたかった……)
P「まぁ、沖縄なら後でいくらでも連れてってやる」
響「え?」
P「生きて帰れたら………な」
響「ちょ、それってどういう」
P「周りを見ろ」
響「え?」
ギー ギャーオ ア"ァーオゥ
P「アマゾンの生物たちだ……俺たちを狙ってるみたいだな」
響「なんで!?」
響「アマゾンの……って、人間には慣れてるんじゃ」
P「わからん……卓球は、目立ち過ぎてしまったのか……」
響「そういう問題か?」
P「何より、怖いのはな」
響「え?」
ドサァッ
猿「ア"ア"ア"ア"ァア"アァァァアァ"ア"ァーーッ!!!!」
P「こんなのは、予定にないってことだ……!」
響「なっ……!?」
猿「グルルォゥ……」ザッ
P「響、何て言ってるか分かるか?」
響「……ちょっと待ってくれ」
猿『女……その手に持っているものは……何だ……?』
響「……」
響「卓球に興味があるみたいだぞ」
P「マジで?」
響「これは……卓球に使う、ラケットだ」
猿『タッキュウ……? ラケット……?』
響「……」
P「おい響、どうにか説得を……」
響「分かってるさ」
響「……こう使うんだよッ!」バッコーン
猿『!?』
パカーン
P「!?」
P「何やってんだ響!」
響「先手必勝だぞっ!」
猿『……』
P「……いや、美希を葬った技だ……もしかしたら……」
猿『今のは……痛かったぞ……』
響「!」
猿『痛かったぞぉおおおおお!!!』
P「き、効いてない! むしろ怒らせたか……!」
響「……」ブン
猿『あぁン? これは……』
響「ラケットだ。 ねぇ、キミ」
響「自分と、勝負しないか?」
猿『……』
P「何言ってんだ響、そんな要求が……」
猿『いいだろう』
P「通ったっぽい!」
響(正直、ここに来てから意味不明なことばっかりだ)
響(ツッコミが追い付かない、っていうか……挙句、猿と卓球?)
響(分からない。 これで合ってるのか、分からないけど……)
響「言っとくけど、自分完璧だからな! かかってこいエテ公っ!!」
猿『なんだと……!?』
響(全力で……全力でやってやるッ!)
響「……はっ!」パコーン
猿『……』
P「よし、サービスエースだ!」
猿『……なるほど、そうやるのか』
響「え?」
猿『……よっ、と』バコーン
響「な……っ!」
P「なにぃッ!? 一瞬で、今のプレーだけで、もう学習しているッ!」
猿『よし……ガンガンいこうぜ』バコーン
響「っ!」パコーン
猿『ほっ』パコーン
響「……」パコーン
P「まずいな……押されてる。 このままだと……」
響「なんくるないさー」ボソ
P「え?」
猿『チョロイな、まったく……』バコーン
響「どうだかなっ!」カッ
猿『フン…………』スカッ
猿『なにっ!?』
響「さて、と……ガンガンいくぞ!」カッ
猿『……っ』バコーン
響「ふっ!」カッ
猿『ゴラァ!』スカッ
猿『クソッ、どうなって……』
響「そりゃ、仕方ないと思うぞ」カッ
猿『なに……?』パコーン
響「だって自分……」カッ
猿『……』スカッ
響「カットマンだからな!」
猿『カッ……何だ?』
響「知らなくてもいいぞ」カッ
猿『……チッ、とにかく、この曲がりの対策を……』パコン
響「……」
響「とどめだッ!!!」バコォン
猿『う……目が…………目がァあぁああああ!!!』
響「フフン、自分の勝ちだな!」
猿『クソが……覚えていやがれ!!』バシャァッ
P「………響」
響「なんだ?」
P「カットマンって割には……最後スマッシュ打ったな」
響「嘘も方便さー!」
P「……」
――――
――
【アマゾン・展望台】
P「さて、みんな……本当にお疲れ様!」
美希「結局、ハニーと組めなかったの」
P「また今度な。 貴音も、変な役回りで悪かった」
貴音「いえ、わたくしは構いませんよ」
P「そして……響」
響「……」
響「プロデューサー」
P「うん?」
響「最後のエテ公も、ドッキリだったのか?」
P「……どうだかな」
響「……」
P「響。 今回の響チャレンジはな……『全力』がテーマだったんだ」
響「全力……?」
P「ああ」
P「最近、響も仕事が増えてきて……昔を思い出してほしかったんだ」
響「昔、って……」
P「響チャレンジで無茶してた頃だな」
P「今日は、みんな頑張ってただろう。 貴音も、美希も……響も」
響「……」
P「どんな仕事にも、全力で挑む……それが我那覇響の真骨頂だと、俺は思う」
響「……へへ、なんか照れるぞ」
美希「ねぇ、ハニー見て!」
P「ん? ……おぉ!」
貴音「これは……何とも綺麗な……」
響「日の出だ……!」
P「……よし、みんな」
響「え?」
P「日の出も見れたところで……いくぞ」
「「響、誕生日おめでとう!!」」
響「お……おおぉ……!!」
美希「響、今年もよろしくね!」
貴音「ぜひ、よしなに……」
響「2人共……ありがとう! 嬉しいぞ!」
P「響」
響「プロデューサー……」
P「俺からのプレゼントだ。 貰ってくれ」
響「……うん」
響「よし、開けるぞ……!」
響「……」カパッ
響「これ、って……」
P「ピラニアのフライだ」
響「なんでだ!!」
終わり
以上です。読んで下さって、ありがとうございました。
やっつけアンドぐちゃぐちゃだけど間に合ってよかった。響、誕生日おめでとう!
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