男「……町外れの林近く、駅から徒歩30分の場所にその小さな公園は息を潜めている」
男「人通りのないこの辺りは不審者の目撃情報も少なくない……」
「8年前の児童惨殺事件がとどめとなったようで、あれ以来、僕はこの公園で子供が遊んでいる様子を見たことがない。そろそろ取り壊した方がいいのではないだろうか、とも僕は思う」
男「僕がそんなところに特に用もなく、毎日のように足を運んでしまうのは訳がある」
男「惨殺事件の起きる数日前のこと、僕はこの公園でとある少女と出合った」
男「白いセミロングに、宝石のような赤い瞳。どこかファンタジックな印象を持つ彼女に心を奪われた僕は、ついついこの公園に立ち寄ってしまう」
男「あれは夢だったのかもしれない、とたまに考えてしまう」
男「こんなところに来るのは無駄だとわかっているのに、理解しているはずなのに、僕はこの習慣をずっと止められないでいる」
幼馴染「あっ……男くんだ」
男「ああ、久し振り。最近学校で顔合わせる機会もないし、いつ以来だったかな?」
幼馴染「……やっぱり、またここに来てたんだね」
男「…………」
幼馴染「お願いだから、もうやめてよ。毎日公園に行くの」
男「毎日は来てないよ。ここ最近は、すっかりね。今日はたまたま通りかかったんだ」
幼馴染「……嘘吐き」
男「本当だよ」
幼馴染「昨日も一昨日も来てた癖に」
男「なんだ、見られていたのか」
幼馴染「三日前も、四日前も、五日前も、六日前も……」
男「見たなら、声を掛けてくれたら良かったのに。趣味が悪いなー、もう」
幼馴染「嘘吐き、大嘘吐き」
男「…………」
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