麻琴「お母さんの声…?」(180)

代理

麻琴「~♪」カチャカチャ

朝7時。白井家のキッチンには、黒髪の少女が立っていた。

フライパンを器用に使いこなし、その隣の小さな鍋は湯気を立てている。

麻琴「まあ、こんなもんかな」

目玉焼きにソーセージ、ブロッコリー。中学生にしては手際よく短時間で二人分の朝食を作り上げてしまった。
ちなみにご飯やパンといった主食はセルフサービスである。
それを食べ終えると、出掛ける前の最後の役割が彼女を待っている。

一応ノックをしてから家主の部屋に入る。

麻琴「黒子おばさん起きてっ…?!」

バサッ
黒子「ああん!お姉さま!いけませんわそんな!」バタバタ

家主――白井黒子の寝姿は少々衝撃的だ。今朝もいつものように枕を抱き抱え、髪を振り乱して体をくねらせている。

麻琴「毎度のことだけど…こ、これ…寝てるんだよね…?」

正直近づくのは勇気がいるが、彼女が仕事に遅れてしまっては一大事。
麻琴は意を決して歩を進める。

黒子「くかー」

麻琴「黒子おばさん、朝ですよ!起きて下さい!」ユサユサ

黒子「うぅ…な…なんですのぉ…お姉さま?」

緩みきった口許から涎が垂れていたが、見なかったことにしておく。

麻琴「もう!仕事遅れちゃいますよ!」

黒子「麻琴でしたの…私今日は非番ですのよ」
むにゃむにゃ言いながら答える黒子はまだ半分寝ているようだ。

麻琴「そ、そうだっけ?とにかくキッチンに朝ごはん置いておきましたから、食べて下さいね?」

黒子「わかりましたの~」

麻琴「じゃあ黒子おばさん、いってきまーす!」パタパタ

黒子「いってらっさい~」
ベッドからひらひらと手を振って、黒子はまた惰眠をむさぼり始めた。

朝の学園都市は通学する生徒でごった返していた。
10年ほど前と比べ実績を積み世間的にもますますその名声を高めた学園都市は年々入学希望者が増加し、モノレールなどの混雑はかなり深刻になっているらしい。

友達1「麻琴ちゃ~ん!おはよ~」

元気のいい声に振り返ると、仲良しな友達二人が人混みの向こうから手を振っていた。

麻琴「あ、友達1・2ちゃんおはよう!」

友達2「今日身体検査だよね~嫌になっちゃう」

ため息をつく友人は既に疲れてしまっているようだ。

麻琴「へっ?そうだっけ?」

友達1「あれ?忘れてた?」

上空を見上げると、確かに飛行船のモニターに自分の中学の名前が表示されていた。

麻琴「あちゃー…」

友達1「麻琴ちゃんってたまにうっかりしてるよね~」

バチバチッ!

教師「ハイ、上条さんもういいわよ」

麻琴「はぁ…」

肩をほぐす麻琴の後方で生徒たちの歓声が上がる。

教師「…!すごいわ上条さん、レベル4よ!」

麻琴「う、うそ…」

友達1「麻琴ちゃんすごーい!」

クラスメイト2「さすが上条さんだよねー」
友達2「……」

友達1「麻琴ちゃん、帰ろー」

麻琴「うん」

三人で通りを歩いていると、信号の向こうの仲良さげな集団が目にはいった。

友達1「あ、あの制服って常盤台じゃない?」

麻琴「本当だ」

言われてみれば、どことなくやんごとないオーラに包まれている。
お母さんと黒子おばさんもあんな感じだったのかな。

友達1「はぁ…優雅だなぁー私もお嬢様だったらよかった~」

麻琴「えーそうかな?なんか大変そうだけど…」

友達1「でもさ!おほほ、お釣りは結構ですのよ~とか言えるんだよ?!」

友達2「そこかい!」

目を輝かせる友達1にすかさず友達2のツッコミが入る。

友達2「てか麻琴ちゃんなら入れそうだよね~」

友達1「だよね!レベル4に上がったんでしょ?すごいよねー」

麻琴「ええっわ、私には無理だよ」

友達2「相変わらず謙虚だなぁー」

麻琴「…………」

友達1・2「じゃあね~また明日ー」

麻琴「うん!またねー」

トボトボ
麻琴(レベル4か…)

麻琴(お母さん…中二の時にはレベル5だったんだよね…)

麻琴(それに…ずっとレベル3だったのにお父さんがいなくなってから急に上がるなんて…)ハァ

ガチャリ
麻琴「黒子おばさん、ただいま…」

パンッパンッ

麻琴「わぁっ?!」

黒子・初春「麻琴(ちゃん)おめでとう(ですの)!」

麻琴「えっ?えっ?」

初春「聞きましたよ、レベル4なんてすごいです!」

麻琴「それどこでk」

黒子「まあ、麻琴はがんばり屋さんですから当然ですの」

初春「さあさあ早く入ってください!」グイグイ

麻琴「わわっ飾利さん…!」

パタパタ

麻琴「そういえば涙子さんは?」

黒子「佐天さんはまだお仕事だそうですわ。もうすぐ来るでしょう」

バターンッ
佐天「おっ邪魔しまーす!」

黒子「早っ?!」

佐天「麻琴ちゃんおめでとう!これ、うちの新作ケーキ持ってきたよ~」

初春「やったぁ~」パァア

黒子「初春…ケーキに飛びつかないでくださいまし」

麻琴「わぁー…ありがとうございます、涙子さん」

佐天「いいのいいの!」

初春「ではでは、麻琴ちゃんのレベルアップを祝して~」

黒子・初春・佐天「かんぱーい!」

麻琴「か、かんぱーい…?」

ゴクゴク
黒子「かーっ!生き返りますわー!」

佐天「ぷはーっ!うまいっ!ほらほら、麻琴ちゃんも食べた食べた!」ヒョイヒョイ

初春「ああ!佐天さんどうして私のお皿からとっちゃうんですかぁ~」

麻琴「あはは」
ワイワイ

数時間後

初春「うぅ…きもちわるいです…」

黒子「はぁ…いい加減自分の適量というものをわきまえなさいな」

麻琴「飾利さん、お水飲めます?」

初春「うぅ…ありがとうございます…」

佐天「麻琴ちゃんは気が利くなぁー!美琴さんに似て可愛いし、学校でモテるんじゃない?」ニヤニヤ

麻琴「えぇっ?!」カァッ

初春「そうですよぉ!あ、もしかしてもう恋人がいたり…」

黒子「なんですって?!麻琴?!」

麻琴「なっないない!全然いませんよ!」

佐天「照れちゃって~かわいいなぁもう」

初春「あ!私この間街で麻琴ちゃんが男の子と歩いてるの見ましたよ!」ニヤニヤ

麻琴「そ、それはただのクラスメイトで…偶然放課後会っただけです!」

黒子「麻琴~?!」ゴゴゴ…

麻琴「ほ、本当ですよ!」

黒子「はぁ…異性に対しては父親似なんですのね…油断できませんわ」イライラ

佐天「まぁまぁ白井さん!似てるといえば麻琴ちゃんはお母さん似ですよねー」

初春「本当ですね、顔や能力も似てますよ」
麻琴「そ、そうかな…」

初春「そうですよぉ!能力レベルも高いですし、将来が楽しみです!」

麻琴「…」

佐天「うんうん、もしかしたらお母さんみたいに研究者になったりし」

麻琴「やめて下さい!」ガタッ

シーン…
麻琴「あ…ご、ごめんなさい…あの」

麻琴「ちょっとトイレ行ってきます…」パタパタ

初春「わ、私たち何かまずいこと言ったでしょうか…」オロオロ

黒子「あの子…もしかしたらあまり喜んでいないのかもしれませんわね」

佐天「え…レベルが上がったことをですか?」

黒子「お姉さまも類人猿も未だに行方しれずですし…お祝いなんて少々無神経だったのかもしれませんわ…」

麻琴の部屋

麻琴「……」パタン

分かってる。
二人に悪気がないことも、自分を本当に可愛がってくれていることも分かってる。

だけど、今はまだどうしてもお父さんとお母さんの話はしたくなかった。聞きたくなかった。

机の小さな引き出しから取り出した写真は、去年の入学式に親子三人で撮ったものだった。

麻琴「お父さん…お母さん…」グスッ…グスッ…
小さく折り畳まれた新聞記事が静かに床に落ちた。

もしかして製作で書いてなかったか?

だいぶ落ち着いて戻ってみると、キッチンには食器を洗う黒子の姿しかなかった。

黒子「…」

麻琴「黒子おばさん…涙子さん達は…?」

黒子「客間で布団を敷いてますわ」

ザーッという水の音が響く。麻琴は黒子の隣に立つと、濡れた食器を拭き始めた。

麻琴「そっか…」

何も考えずに重なった皿を拭いていく。泣いてぼんやりした頭には心地よい作業だった。

>>31
すみません、製作ってなんですか?何かの略?

麻琴「ごめんなさい…皆、私のために集まってくれたのに…」

ようやくそう言えたのは、拭き終えた食器を二人で棚に戻し始めた頃だった。

黒子「麻琴」

カチャリカチャリと皿と皿のぶつかる僅かな音が聞こえる。

黒子「あなたが一人で我慢することないんですの。私も佐天さんも大人なんですから…初春は怪しいところですけど」

製作速報少し前までSSの移転先だったところ
今はここ
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黒子「もっとわがまま言っていいんですの」
なんでもないことのようにそう言って、黒子は優しく笑った。
嫌みのないさっぱりした笑顔だった。

麻琴「黒子おばさん…ありがとう…」

また涙が出そうになって、麻琴は慌てて笑顔を作った。


黒子「と・こ・ろ・で」

麻琴「へっ?」

黒子「な~ぜ二人はさん付けなのに私だけおばさんなんですの~?」

麻琴「え、えーっと…」アハハ

>>36
そうだったんだ
製作では書いたことなかったです
もっぱらVIPで叩かれながら細々とやってました
丁寧にありがとう
落ちたら行きます

これこないだ落ちたスレの続きか?

客間
黒子「お布団敷き終えましたの?」

初春「あ、お二人も一緒にUNOしましょうよ!」

麻琴「う、ウノ?」

佐天「もー古いよ初春!」

黒子「ほんとですの…かなり久しぶりに聞きましたわ」

黒子「ダウト!」
初春「あぁっズルいですよ白井さん!」
黒子「初春が弱すぎるんですの」
佐天「で、このカードをこうするとね…」
麻琴「えーっと…こうですか?あ、あがり?」
初春「えーっ麻琴ちゃんまでぇ!」

黒子「まったく…昔から変わりませんわね」

>>39
やり直しです
すみません

麻琴「昔って中学生の頃ですか?」

佐天「そうそう、私たちいっつもこんな感じでしたよねー」アハハ

麻琴「そうなんだ…」(…お母さんもこうやって楽しく過ごしてたのかな)

初春「あっ!そうそう、大通りに新しいケーキ屋さんが出来たんですよ!明日みんなで行きましょう!」

黒子「初春…あなた本当に変わってませんの…」

佐天「ふぁあ…そろそろ眠くなってきたなぁ…」

黒子「ではこの辺でお開きにしましょうか」
初春「そうですねぇ…」

麻琴「うん…」ウトウト…

麻琴「じゃあ涙子さん飾利さん、おやすみなさい」

初春・佐天「おやすみ(なさい)~」

麻琴「じゃあ黒子おばさんもおやすみなさい」
黒子「ええ。おやすみなさい、麻琴」

カチャリ
麻琴「うわぁ~」ボスッ
麻琴「楽しかったけど…さすがに眠…」

麻琴「お父さん…お母さん…おやす…み…」

麻琴「すぅ…すぅ…」
カチャリ
黒子「まったく…ブランケットもかけずに…」フワッ

麻琴「すぅ…すぅ…」

黒子「…」ナデナデ

あれ…ここ、見覚えがある…
そうだ、私の家…

じゃあ…あの後ろ姿は…お母さん!
お母さ…

当麻『ただいま~麻琴いるかー?』

麻琴(幼)『おとうしゃんおかえりー!』ダキッ

なんだ…いつもの夢か…

当麻『くぅ…俺は幸福者だーっ』タカイタカーイ

美琴『おかえり…ってアンタ!またおもちゃ買ってきたの?!』ビリビリッ

当麻『』ピクピク…

麻琴(幼)『おかあしゃん、おとうしゃんうごかないよ?』

美琴『大丈夫、10分もすれば起きるわよ~…はい麻琴、ご飯食べちゃいなさい』

当麻『ふ…不幸だ…』

お父さん…お母さん………

玄関の三人が消え、キッチンの場面に移る。
…いつものパターンだ。

美琴『麻琴、おいしい?』

麻琴『うん!』

当麻『麻琴は好き嫌いしないでえらいなぁ』ナデナデ

食卓を囲む親子はとても幸せそうだ。

でも、私はそこに入れない。私が座るべき椅子には、4歳の私が座ってニコニコと母の手料理をほおばっている。

私はそれを傍観しているだけだ。

三人は相変わらず楽しそうに食事を続ける。

この夢は別に今始まったことではなかった。

両親が行方不明になった日からずっと、私はこの幼い頃の夢を見続けている。
来る日も、来る日も。

それはおそらく私の願望が夢になっているんだろう。
だからこそ、眠りにつくといつも幸せだった。
学校をずる休みして一日中眠っていた時期さえあった。

幸せな思い出の再生。
それが私の夢の全てだった。

暖かな笑い声が満ちていく。
そのなかに混じった雑音は微かで唐突なものだった。

『―――ま―こ』

「えっ?」

振り返ると、リビングであるはずのそこは何もない真っ暗な空間だった。

笑い声が飽和する。

それは次第に波打ち、歪み――――大音量で響き出した。

なんだ。
なんなんだ、これは。

思わず振り返って、私は驚愕した。

『何か』が私を見つめていた。

さっきまで三人がいた椅子の上。料理も食器もそのままの状態でテーブルに並んでいる。
違うのは、座っている『それら』だけだ。

私を指差し、顎が外れんばかりに開いた口からけたたましいサイレンのような笑い声が溢れ出している。

悲鳴を上げる。

異様な笑い声が行き場を失ってわだかまっていく。

穏やかなはずの夢は、今や理解不能な空間になっていた。

『麻琴!麻琴!』

それらの笑い声と私の悲鳴が擦れ合い、不協和音をつくる。

私は、私は、私は、私は――――!

黒子「麻琴、麻琴っ…」

目を醒ますと、黒子おばさんと飾利さんが心配そうにこちらを覗き込んでいた。

麻琴「はぁ…はぁ…」
思わず辺りを見回す。カーテンから漏れる光は青白く、まだ夜らしいことがわかった。
そんな私を見て、二人がほっと息をついた。

喉がひどく渇き、掠れている。

今日は一旦おちます

おはよう

涙子さんが持ってきてくれた温かいお茶を飲むと、少し気分が落ち着いた。

初春「怖い夢でも見ちゃったんですか?」

麻琴「う、うん…なんだか変な夢見ちゃって…皆どうしてここに?」

私がそう言うと、三人は顔を見合わせた。

黒子「あなたの悲鳴が聞こえたものですから…」

私は現実でも夢のように叫んでいたのだろうか。
隣の黒子おばさんならともかく、離れた客間で寝ていた二人まで起こしてしまうなんてどれほどの声量だったんだろう。

麻琴「すみません起こしちゃって…もう、大丈夫ですから」

私が笑うと涙子さんと飾利さんは安心したようだったが、結局黒子おばさんは布団を運んできて隣に眠ると言った。

再び照明が消えると、部屋は薄暗くなった。
黒子「麻琴…どんな夢だったんですの?」

黒子おばさんが小さな声で話しかけた。
正直思い出すのも嫌だったが、少しずつ話してみる。

麻琴「――それで…誰かの声が聞こえて…そうしたら」

途切れた言葉の隙間から黒子おばさんの寝息が聞こえた。

…寝ちゃったんだ。
そこで私も話すのをやめて寝返りを打った。

そういえば、最後に誰かが私の名前を読んでいた。

懐かしい――あの声は…――そうだ。

麻琴「お母さんの声……?」

初春「あ、ここ!ここですよ~」

ふわふわと沢山の花が揺れる。飾利さんの髪飾りって不思議だなぁと言ったら、昔は頭全体花畑だったんだよと笑っていた。

麻琴「えーっと…どれにしようかなぁ」

初春「ん~これだけ種類が豊富だと迷っちゃいますよねへへへ」

佐天「初春、よだれ!よだれ出てる!」

昼下がりのカフェでおしゃべりしながらケーキを食べるなんて、なんだかすごくおしゃれだ。

初春「ん~おいひい~」

麻琴「飾利さん本当に幸せそう」

佐天「初春ほんと好きだもんね」

初春「白井さんも来られたらよかったんですけど…」

麻琴「さすがに今日は休めないって言ってましたから」

佐天「また今度一緒に来ればいいじゃん」

ごめんバイトがあるのでまた夜に来ます

保守ありがとうございます

再開します

セブンスミスト
麻琴「こ、これっ…!」キラキラ

佐天「ん?カエル…?」

初春「ゲコ太ですね~美琴さんも大好きでしたよね…って」

麻琴「これ下さいっ!」キラキラ

店員「ありがとうございましたー」

佐天「さすが親子…」
初春「ですね…」

麻琴「ゲコ太♪ゲコ太♪」

初春「今日は楽しかったですね~」

佐天「ほんと!中学の時に戻ったみたいだったよ~」

麻琴「今度は黒子おばさんも一緒に行きましょう」

佐天「うんうん」

初春「そうですね!またおいしい店探しておきます!」

二人と手を振って別れると、もう辺りはオレンジ色に染まっていた。

ごめん
書き貯め切れたのでまとめてきます
本当にすみません

インデックス「私はいつ出てくるのかな!」

怒ったインデックスは我慢できなくなった。

インデックス「ぬるぽ」

夕方の通りは子供たちで溢れている。友達同士で歩いている高校生たち。一人でぶらぶらしている人。おいかけっこをしているらしい小学生。

平和な時間がそこにはあった。
今日の夕食はなんだろう。黒子おばさんは疲れているだろうし、早めに帰って作ってみようかな。

麻琴「わっ」

そんなことを考えていると、誰かにぶつかってしまった。

麻琴「ご、ごめんなさ…」

不良1「あぁ?なんだチビ」

慌てて顔を上げると、いかにも不良といった感じの男たちが立ちはだかっている。

麻琴「…!」

ど、どうしよう…
私お金なんか持ってないよ…

不良1「聞こえねえんだよ!」

ゴミ箱が蹴飛ばされ、中身が飛び散る。
辺りの注目が一気に集中するのを感じた。

不良2「おいおいやめろって~」ニヤニヤ

体から血の気が引いていく。

不良1「謝ることも出来ませんってか?あぁ?」グイッ

麻琴「ひっ…」

不良1「ん?なんだお前、よく見りゃ可愛い顔してんじゃねぇか」
不良2「おっ、マジじゃん!今からヒマ?お兄さん達と遊ばなーい?」ヒャハハ

どうしたらそんな台詞が出てくるんだろう。

麻琴「やめ…」

誰か…助けて…
お母さん…!

「や、やめなさいよ!」

不良2「あぁ?!なんだこのガキ!」

麻琴「えっ…」

遠巻きに見つめる人達を掻き分けて出てきたのは、買い物袋をさげた友達1だった。

友達1「大の男が女の子に絡んでっ…は、恥ずかしくないの?!」

麻琴「と…友達1ちゃ…」

《逃げて!》
友達ちゃんの声。
彼女の能力は…確かレベル3のテレパシーだったはずだ。

不良1「なんだァ?仲良きことは美しきかなってかぁ?」

友達1「やめっ!離しなさいよ!!」ジタバタ

不良2「暴れんなよこのっ…!」バシッ

友達1「いったぁ…」


麻琴「友達ちゃん!!」

不良2「あ、暴れるからだろうが!」

オイダレカジャッジメントヨベヨ!モウヤッタッテ!

不良1「おいお前らなに見てんだぁ?見せ物じゃねぇんだよ!帰れクズども!!」

バリバリッ
不良1「ギャアッ」ドサッ

不良2「お、おい、不良1?!」

麻琴「クズ…?」

パリパリッ

麻琴「それはもちろん自分自身に言ってるんですよね?」

パシッ

不良2「オイ!不良!オイ!」ユサユサ
「テ、テメェ何しやがった?!」

麻琴「何って…スタンガンと同じ要領ですよ」

不良2「なんだよ…お前…電撃使いだったのかよ…!」

麻琴「……」スッ…

不良2「や、やめろよっ…わかった!わかったよ!俺らが悪かった!」ビクビク

麻琴「だったら、早く療に帰って下さい」

不良2「お、おい不良1しっかりしろっ…逃げるぞっ!」ズルズル


麻琴「友達1ちゃん大丈夫?!」

友達1「麻琴ちゃん…」

麻琴「えっ…やっぱり痛いよねっ…今ハンカチを」オロオロ
ひしっ
友達1「すっごくかっこ良かったよ!」キラキラ

気が付くと、周囲から拍手が湧き起こっていた。

麻琴「あああ…」
我に返り、途端に恥ずかしさが込み上げる。
「と、友達ちゃんいこっ」グイッ

友達1「え…ちょっ、ちょっと!」

公園
友達1「もっと早くビリビリッとやっちゃえばよかったのに!」

麻琴「えっと…なんか驚いちゃってさ…友達ちゃんが来てくれなきゃやられてたよ」

友達1「もう、そんな時まで謙虚でいちゃ駄目だって!」

友達1「にしてもさすがだよね!やっぱり親がレベル高いと子供にも遺伝するのかなー?」

麻琴「……!」

『ほら…あの子ですよ!噂の超電磁砲の娘さん』ヒソヒソ

『きっとすごい才能を持ってるんでしょうねぇ』ヒソヒソ

麻琴(幼)『♪』

教師1『あの子…レベル2から上がる気配全然ありませんねぇ』

教師2『ええ…』

麻琴『……』

友達1「うちの親なんか学園都市出身ですらないしさ!」アハハ

教師1『父親?父親は確かレベル0の無能力者だったと思いますけど…』

麻琴「親は…関係ないよ」

友達1「えーそうかなぁ?あーあ、私も親が能力者だったら今頃さー」

教師2『やっぱり遺伝の影響ですかねぇ?』

ググッ…
麻琴「ごめん、私そろそろ帰らなきゃ!今日夕食当番なんだ!」ニコッ

友達「そうなの?じゃあまた学校でねー!」ブンブン

麻琴「またねー!」タタタッ

麻琴「ハァッ…ハァッ…」

小学生の頃からいつもそうだった。

児童1『ねぇ!この前の人ってまことちゃんのママ?!』

麻琴『うん!』

児童1『すっごーい!』

児童2『え?なになに?』

児童1『ほら、この間街で不良をやっつけてくれた人だよ!』

児童2『え!まことちゃんのおかあさんなの?!』

麻琴『えへへ…』

児童1『ねぇ!あれやってよ、コインをビリビリッてやるやつ!』

麻琴『えっ…あの…えっと…』

児童2『えー…出来ないの?つまんなーい』

麻琴「ハァッ…ハァッ…」

いつもいつも…私は『上条美琴の娘』でしかなかった。


麻琴『ぐすっ…ぐすっ…』

教師『麻琴ちゃん、気にすることないのよ』
教師『先生はお母さんやお父さんは関係ないと思うもの』

教師『麻琴ちゃんは麻琴ちゃんのペースがあるの。焦らなくていいのよ』ニコッ

麻琴『先生ぇ…』

でも見てしまった。
そのあと先生が私の身体検査の結果をみてため息をついているのを。
同僚教師とお父さんの話をしているところを。

麻琴「ハァッ…ハァッ…」

ガチャッ
バタン

バイトいってきます

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