グンタ「……よぉ。お前も来ちまったな」 (70)
グンタ『リヴァイ兵長……イヤ、違う! 誰だ!!』
ヒュンッ
・
・
・
グンタ「くそっ、死んじまった! 不意打ちかよ!!」
ネス「やられちまったな、グンタ」
グンタ「っ! ネスさんももう来てたんですね……」
ネス「死んじまったもんはしょうがねぇ……それより残ったヤツらを応援してやれ!」
グンタ「は、はい!」
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エレン『グンタさん!? えっ!? ちょっと……!』
グンタ「……俺あんな殺され方してたのか……。
と、それより! 馬鹿野郎エレン! 止まるんじゃ……!」
オルオ『エレン止まるな! 進め!』
グンタ「! オルオよくやった! 良いぞ、そのまま行け!」
ペトラ『誰だ!!』
エルド『エレンを守れ!! 立体機動で襲ってくるぞ!!』
エレン『グンタさんが……!』
グンタ「だからエレン、お前は前を向いて早く進め!
……そこまで言ってくれんのはちょっと嬉しいけどよ」
ネス「ふっ……俺はあっちでエルヴィン団長の方を見てくるか。
お前はしっかりあいつらを応援してやれよ」
オルオ『女型の中身が!? それとも複数いるのか!?』
ペトラ『クッソ……よくも!! かかって来い!! 最低でも刺し違えてやるから!!』
グンタ「気合は十分だがペトラ……。
刺し違えたらお前、そいつと一緒にここへ来ることになるかも知れんぞ。
イヤ、俺も死後にこんな場所に来るなんて知らなかったんだが……。っ!」
エルド『やはりか!! ……来るぞ! 女型の巨人だ!』
グンタ「出やがった!」
エレン『今度こそやります!! オレが奴を!!』
グンタ&エルド「『だめだ!!』」
グンタ(……かぶった)
グンタ「イ、イヤ。良いだろ別に。エルドの言う通りだしな」
エルド『エレンはこのまま全速力で本部を目指せ!!』
エレン『オレも戦います!』
エルド『これが最善策だ! お前の力はリスクが多すぎる!』
グンタ「そうだ、その通りだ! お前はそのまま進むべきだエレン!」
オルオ『俺達の腕を疑ってんのか!?』
ペトラ『そうなのエレン? 私達のことがそんなに……信じられないの?』
グンタ「そいつらを信じろ、エレン! そいつらならやれる!」
エレン『……我が班の勝利を信じてます!! ご武運を!!』
グンタ「ぃよしッ!!」
エルド『うおおお!』
グンタ「! よし良いぞ! 目を潰した!!
……あっ!? くそっ、やはりうなじを守るか!!
腕を落とせ! 肩だ! 肩の筋肉を狙え!! よし良いぞ! そうだ、その調子だ!!」
ネス「オイ、グンタ」
グンタ「あっ、ネスさん。見てくださいよあいつら! あの女型を一方的に……」
ネス「いや、それがな。さっき向こうでエルヴィン団長見てたらな。
どうも……エレンが巨人の力使って戦った方が良いような気がするんだが」
グンタ「は? イ、イヤ、そんなはず……。だってほら、女型の腕はもう落ち……
っ!? ま、待てエルド! 何かおかしい! 煙が、片目からしか……!」
エルド『今すぐそのうなじを――』
ギョロッ……バクッ
グンタ「ぅおおおい!?」
エルド「なんだよそりゃあ!?」
ネス「言わんこっちゃねぇ……」
エルド「なんであいつ目が治っ……グンタ!!」
グンタ「……よぉ。お前も来ちまったな……」
エルド「お、おう……それより! ペトラとオルオはどうなってる!?」
グンタ「そ、そうか! あぁ!? あいつもヤバイぞ!」
ペトラ『片目だけ!? 片目だけ優先して早く治した!?
そんなことが、できるなんて!!』
エルド「あ、あいつ体勢を崩してやがる!」
エルド&オルオ「『ペトラ!! 早く体勢を直せ!!』」
エルド(……かぶった)
グンタ「オ、オイオイこりゃまさか……!」
オルオ『ペトラ!! 早くしろ――』
ブチュ
グンタ「やっぱりかぁああああ!!」
ペトラ「もう何なのアレ!! ずるくない!?」
エルド「うおっ!?」
ペトラ「あっ、グンタ、エルド!! 2人もそう思うでしょ!?
優先して治すなんて出来ると思わないじゃない普通!!」
エルド「お、おう……」
グンタ「あっ!? オイ2人とも見ろ! オルオの奴が!」
エルド「あいつ、直接うなじを狙う気か!!」
ペトラ「行ける……! 女型は気付いてない!」
ネス「……いや、こりゃ多分……」
オルオ『死ね』
ガキィン
3人「えっ」
オルオ『……なぜだ。刃が通らねぇ……』
バシッ
オルオ「なんだよ今の……ふざけんなよクソ!!」
ペトラ「わっ!? いきなり隣に出て来ないでよ、びっくりするじゃない」
オルオ「っ! ペトラ! それにお前らも……
ってそりゃそうか。死んだんだもんな……」
エルド「そ、それよりなんですか今の! ネスさん、何か知ってるんですか!」
グンタ「うなじが硬化したように見えましたが、あれは一体……まさか!」
ネス「あぁ。俺はお前らが来るまでずっとこっから見てたんだが……。
女型には鎧の巨人と似たような、皮膚を硬質化する力があるんだよ」
オルオ「はぁあああ!? なんだそりゃあのクソ女型! 初見殺しにも程があるだろ!!」
オルオ「チートじゃねぇかそんなもん! ふざけんな!」
エルド「まったくだ……。色々ずるすぎるぞあの女型は」
ペトラ「優先して治せるとか知ってれば絶対勝ってたのに!!」
グンタ「…………」
ネス「? どうしたグンタ、ずいぶん大人し……あっ」
エルド「……そうか。グンタは人間のままの女型に……」
ペトラ「き……気にすることないよグンタ!」
オルオ「そ、そうだ。不意打ちだったんだしよ……!」
グンタ「……優しいな、お前ら……」
ネス「そうだな……団長はああ言っていたが、
お前らにはそんな選択肢を取れるはずもなかったんだよな」
ペトラ「? 団長が何か言ってたんですか?」
オルオ「団長は何と?」
ネス「ん、あぁ……『最善策に留まっているようでは勝てない』
『必要なら大きなリスクも背負わなければ』ってな」
エルド「……え? マジですか?」
ネス「それがどうかしたか?」
エルド「マジかよ……俺の言った事と真逆じゃないか……」
ネス「えっ! そ、そうだったのか」
オルオ「き……気にすんなエルド! 仕方ねぇよ!」
ペトラ「わ、私達だって口には出さなかったけど同じこと考えてたんだし!」
グンタ「何も知らなかったんだし仕方ねぇって!」
エルド「優しいな、お前ら……」
ネス(ふっ……良い同期愛だ。俺は席を外すか……)
グンタ「それに落ち込むくらいならエレンのヤツを応援しないとな!
あいつ俺達が居なくなってこれからどう……うぉお!?」
巨人エレン『アアアアアアアアア!!』
オルオ「あの馬鹿! 本部に向かえっつっただろうが!」
エルド「イヤ……仕方ねぇよ。俺達、殺されたんだしよ……」
ペトラ「確かにあのまま逃げてもいずれは追いつかれて……」
オルオ「だからって引き返して巨人化するか!?
追いつかれるギリギリまで逃げりゃ良いだろ!」
グンタ「オルオ、お前……エレンを心配してやってるんだな」
オルオ「なっ……何言ってんだバーカ! 違うんだが!?」
エレン巨人『アアアアアア! アアアアアアアアアッ!!』
ペトラ「それにしてもエレン……すごく怒ってるように見えるのは気のせいじゃないよね?」
エルド「あいつ、俺らが殺されたからあんなに……」
オルオ「くっ……もうこの際だ、やれエレン! 俺らの仇を取れ! やっちまえ!」
グンタ「あぁそうだ、エレンを応援しよう!
そこだ、行け! 良いぞエレン! そのまま攻めろ!」
ペトラ「ああっ惜しい! もう、避けるなよ女型! バカ!!」
エルド「ボディだ! ボディを打って足を止めろ! 目でも良いぞ!」
シス「……向こうはやけに盛り上がってますね」
ネス「よっぽど後輩が可愛いんだろう……泣かせるじゃねぇかよ」
グンタ「良いジャブだ、よしストレート……あっ!?」
エルド「カウンターだと!? しかも硬化してエレンの顎を……!」
ペトラ「何よあの能力! 冗談じゃ……。っ!!」
オルオ「うぉおお! なんだあのボディ!! アッパー!?」
エルド「女型の奴、体ごと吹き飛びやがった!!」
ペトラ「ざまぁ見ろ! エレンは強いんだ!! 舐めるなよ女型!!」
グンタ「よし良いぞ! そのまま追撃……クソッ! また避けやがった!!」
オルオ「オイオイこのクソ女型!! 逃げてばっかかよコラ!!」
エルド「ん! イヤ待て、どうやら逃げるのをやめたようだぞ!」
グンタ「エレンに向かってる……迎え撃てエレン!」
オルオ「……? オイ、エレン何してる! ボサっとしてんじゃねぇよ!」
ペトラ「エレン!? ちょっと、女型は構えてるよ! エレ……」
4人「あああああああああ!?」
ペトラ「エレンの顔が! 顔がぁ!!」
オルオ「オイ馬鹿、エレン!! 何してんだ馬鹿!!」
グンタ「さ、再生だ! 再生しろ! 立てエレン!!」
エルド「っ!? 何する気だオイ!? 女型この野郎! エレンに何……」
4人「あああああああああああ!?」
オルオ「く、食われた!! エレンが食われた!!」
ペトラ「そんな、エレンが……エレンが……」
グンタ「イ、イヤ、待て! 落ち着け!! まだ死んだとは限らん!」
エルド「そうだ! 奴の目的がエレンを連れ去ることにあるのだとすれば、
今頃エレンは口の中! まだ生きてる!!」
オルオ「そ、そうか、なら安心……イヤ駄目だろ!!
どっちにしろまずい! エレンが連れ去られたら俺達の完全敗北だぞ!!」
ペトラ「そうだよ! なんとかして、誰か止めないと……!
そうだリヴァイ兵長は! リヴァイ兵長はどこ!?」
エルド「へ、兵長を探そう! 兵長はどこに……!」
グンタ「っ! 見付けたぞ、ここだ!」
オルオ「流石リヴァイ兵長! 移動までなんて速さだ!」
エルド「行けるぞ、この調子なら女型に追いつける!!」
ペトラ「兵長、急いで……えっ? あ、あれ? 兵長、なんで減速……」
オルオ「はっ……! こ、ここは……!」
グンタ「俺達の死んだ場所……」
エルド「一人ひとり、確認してくれているのか……」
リヴァイ『…………』
ペトラ「……兵長……」
オルオ「だ、駄目だ見てられん……」
エルド「くっ……申し訳ありません、兵長……!」
ペトラ「兵長に、あんな顔をさせてしまって……ううっ……」
グンタ「兵長……どうか兵長は、ご無事で……!」
エルド「! また移動を始めた……!」
ペトラ「へ、兵長、お願いします! エレンを救ってください! でも死なないで!」
オルオ「ば、馬鹿、何言ってんだ! 兵長が死ぬわけねぇだろ!
いくら女型が相手だからってそんな……」
グンタ「あっ、見えたぞ! 女型……と誰だありゃあ!?」
エルド「なっ……!? め、女型が膝をついている!?」
オルオ「あいつがやったのか!? 誰だ!?」
ミカサ『どこにいたってその女殺して……体中かっさばいて、
その汚い所から出してあげるから。ごめんね、エレン。
もう少しだけ……待ってて』
グンタ「な……なんだあいつ。エレンの恋人か……?」
ペトラ「イ、イヤもしかして、あれが話に聞いてた……。っ!」
ミカサ『待て!! ……ッ!?』
リヴァイ『一旦離れろ』
オルオ「もう追いついた……流石リヴァイ兵長だ」
エルド「しかしあの兵士は一体……。
女型の拳を避けた動きも一般の兵士とは思えんレベルだったぞ」
グンタ「ペトラ、お前は心当たりがあるようだったが何か知ってるのか?」
ペトラ「うん。エレンがちょっと話してくれたことがあるの。
ミカサっていうすごく強い幼馴染が居るって。訓練兵を主席で卒業したんだとか」
オルオ「フン……なるほどな、期待の新人ってわけか。
それならリヴァイ兵長の足を引っ張る可能性も多少は……」
ミカサ『そもそもは、あなたがちゃんとエレンを守っていれば
こんなことにはならなかった……』
4人「……は……?」
オルオ「オイ……前言撤回だ。
あのクソガキ、兵長の足を引っ張りまくるに違いない」
ペトラ「何アレ……何なの本当。え? 何なの……?」
エルド「まぁ落ち着けお前ら。相手は何も知らねぇ子どもなんだ。
落ち着いて枕元に立つ方法を考えよう。ヤツには説教が必要だ」
グンタ「それだけじゃ駄目だな……夢にも出よう。いや、取り憑いた方が……」
リヴァイ『エレンが生きてることにすべての望みを懸け、
ヤツが森を抜ける前にエレンを救い出す。
俺がヤツを削る。お前はヤツの注意を引け』
ペトラ「はっ……! そ、そうだ、今は先に兵長を応援しないと!」
オルオ「……あのクソガキが注意を引くのか。
兵長が仕事を任せたってんなら、ついでにてめぇも応援してやるよ」
今日はこのくらいにしておきます
エルド「! あいつが女型の前に出た……いよいよだな」
グンタ「兵長が構えたぞ!」
ペトラ「どうやって攻撃を仕掛け……ああッ!?」
オルオ「危な、おぅッ!? うぉおおおおお!?」
ペトラ「わっ、あっ!? えええっ!?」
オルオ「うぉおお!? うおおおぉおおおおおおお!!」
グンタ(殴りかかった女型の腕に沿って転がるように切り刻みつつ肩口まで進みそのまま顔面に突撃して刃を両目に突き刺した後頭上に飛んだと思えば落下しつつ前進を切り刻んで女型に尻餅を付かせた!?)
エルド「し、信じられん……なんて速さだ……!」
オルオ「ま、まだ続くぞ! うおっ!? うおぉおお!?」
ペトラ「すごい……! 私達が3人がかりでやった以上のことを、1人で……!」
グンタ「ヤツが疲弊しているというのもあるだろうが、それを踏まえても……」
エルド「ッ!! 腕が下がった! 今なら確実にエレンを救える!!」
オルオ「兵長! やってくださ……は!? 待てガキ! 何してる!?」
グンタ「あ、あの新兵……まさか!」
リヴァイ『! よせ!』
エルド「兵長!? 何を、危な……!」
リヴァイ『ッ……!』
4人「あああああああああああ!?」
エルド「ああああああ……あ!? イヤ待て!!」
オルオ「っ! 生きてる!! 兵長!!」
グンタ「女型の顎を切り開けた!!」
ペトラ「兵長……! あ……エレン!!」
リヴァイ『オイ!! ずらかるぞ!!』
オルオ「やった……! あのクソガキのせいでヤバイかと思ったが流石兵長!」
ペトラ「で、でもアレ、絶対足を痛めたよ!?
あのミカサって子をかばって! あの子にどう償いをさせ……」
リヴァイ『作戦の本質を見失うな。
自分の欲求を満たすことの方が大事なのか? お前の大切な友人だろ?』
4人「…………」
オルオ「かっこよすぎる……」
グンタ「なんて器のでかさだ……」
ペトラ「あれでも怒らないなんて、優しすぎます……!」
エルド「流石兵長……!」
オルオ「どーだ、ミカサとかいうヤツ! これが兵長だ! 分かったかバーカ!」
ペトラ「兵長に免じて祟るのは勘弁してあげるよ」
グンタ「これで自分の幼さを思い知ったことだろう」
エルド「これから一生兵長に感謝して生きるんだな」
グンタ「しかし……エレンはこれからどうなっちまうんだろうな」
ペトラ「あ、そっか……。女型の捕獲が失敗したっていうことは……」
エルド「……引き渡されるんだろうな」
オルオ「は!? それって殺されるってことじゃねぇのか! 解剖されてよ!」
ペトラ「な、なんとかならないの!?」
グンタ「普通に考えりゃどうにもならないが……エルヴィン団長のことだ。
何とかしてエレンを調査兵団に留める方法を模索してくれるに違いない」
エルド「あぁ、きっとそうだ。団長を信じよう。
っと、兵長達はどうなった……ん! 本部と合流したか」
ペトラ「あ……遺体、もうあんなに回収できたんだ」
エルド「確かになかなかの数だな……死者の数自体がいつもに比べてずっと多いからか。
見ろよ、今ここに居る顔ぶれを。今日まで生きてた兵士ばかりだぜ」
オルオ「っ! オイ、あれ見ろ! 俺達の死体じゃねぇのか!」
ペトラ「えっ……ほ、本当だ! 回収できたんだ……」
グンタ「……俺の死体どうするんだろうな」
エルド「あぁ……そうか。お前のだけどう見ても巨人にやられたようには……。
……ゆ、行方不明扱いにされるかも知れんな」
グンタ「…………」
オルオ「き、気にすんなって! 元気出せグンタ!」
ペトラ「そうそう! 遺体を見せた方が余計悲しかったりするかも知れないし!」
エルド「俺なんかホラ見ろよ! バラバラだぞ! ハハハハ!」
グンタ「……泣けてくるぜ……お前らの優しさによ」
・
・
・
エルド「しかし……客観的に見て改めて思うが、物凄くハラハラする光景だなこりゃ」
グンタ「あぁ、壁外で遺体の整理だもんな。
いくら近くに巨人が居ないからと言ったって危険なことには変わりねぇのによ」
オルオ「まぁこうでもしなきゃ遺体を持ち帰ることなんて出来ねぇだろうがな……」
ペトラ「? ねぇ見て。兵長が何か……」
グンタ「……なんだ? 遺体に向かって……」
オルオ「オイ、ありゃあもしかしてペトラ! お前じゃねぇのか!」
ペトラ「えっ!?」
エルド「! 見ろ、布を少しはだけさせたぞ」
グンタ「……あの位置は……胸か」
ペトラ「え……えっ? えっ……!?」
ペトラ「む、胸って……えぇっ!? 兵長、何を……!?」
リヴァイ『…………』
ペトラ「やだっ、へ、兵長っ! そんなっ、私、心の準備が、待って……え?」
グンタ「……エンブレムを切り取ってるな」
エルド「そうか……兵長、形見にと思って……。
そして、見ろ……俺達の死体も捜してくれているようだ」
エルド「リヴァイ班全員のエンブレムを持って帰ろうと……」
ペトラ「…………」
オルオ「……ペトラお前今……」
ペトラ「いっそ殺して」
グンタ「もう死んでるよ」
ペトラ「兵長の追悼の想いを私、なんて勘違いを……消えてなくなりたい……」
エルド「まぁ……そう落ち込むなペトラ。
兵長だって、俺達にはこっちで元気で居て欲しいと願っているはずだ」
ペトラ「それはそうかも知れないけど……」
オルオ「なぁペトラ? お前心の準備がどうとか言ってたが、一体どんな……」
ペトラ「うるさい! 聞かないで!」
オルオ「おぶん!? ……あれ、痛くねぇ。もう死んでるからか」
エルド「なるほど、こっちでは痛みは感じないのか。
遺体の方を殴られた時はどうなんだろうな。痛いんだろうか? 遺体だけにな」
グンタ「オイオイ、そいつはブラックジョーク過ぎやしないか。はははっ」
サシャ『良かったじゃないですか……生きてるんですから』
コニー『死んだ奴らの遺体に向かってそう言えるか?』
オルオ「全然言って良いと思うぞ」
エルド「と、まぁふざけるのはこのくらいにしてだ。
やっぱり今回の壁外遠征は、生き残った者達にとってもかなりキツいようだな」
グンタ「そりゃあな……。これで女型捕獲に成功していればまだ犠牲の意味もあっただろうが、
失敗したってことは無駄に死んだってことになる……。
多くの兵士はそう考えているはずだ」
オルオ「特に新兵のガキ共にはかなりのショックだっただろうぜ」
ペトラ「うん……。同期も例年以上に多く死んだだろうし……」
ディター『納得いきません! エルヴィン団長!』
グンタ「!」
ディター『回収すべきです! イヴァンの死体は、すぐ目の前にあったのに!』
エルド「……なるほど。確かに新兵にとってはショックだったようだ」
イヴァン「オ、オイ、よせディター……!
気持ちは嬉しいが団長に突っかかるこたねぇだろ、この馬鹿!」
ペトラ「! もしかして、あなたがイヴァン? 彼とは仲が良いの?」
イヴァン「は、はい。同郷で幼馴染なんですが、
どうもあいつは昔っからすぐ熱くなるところがありまして……。
あぁクソっ! ユルゲンも止めろよ!
リヴァイ兵長まで出てきて……お前ら調査兵団追い出されても知らねぇぞ!」
グンタ「まぁ……団長達もあいつらの気持ちはよくわかるはずだ。
そんなことで追い出されたりはしないだろう」
エルド「その通りだ。特にリヴァイ兵長はあぁ見えて部下のことはよく……」
ディター『お2人には……人間らしい気持ちというものは無いのですか!?』
4人「……は?」
イヴァン「うぉおおおおおい!?」
オルオ「オイ……今期の新兵はどうなっていやがる」
ペトラ「何も知らない癖に……兵長の優しさ知らない癖に……」
エルド「落ち着け、落ち着くんだ……。
いずれあいつも気付くさ、兵長の優しさにな……。
尤も……それまで生きていられればの話だが」
グンタ「気付く前に死んだ時はこっちで説教だな。
……イヴァンと言ったか」
イヴァン「は、はい!?」
グンタ「お前は分かってるよな?
兵長達は感情を押し殺して任務に専念しているということを……」
イヴァン「え、えぇもちろん!」
エルド「まぁヤツのことは後だな。それより、そろそろ荷馬車に遺体を積み終わるようだ」
ペトラ「あ……今運ばれてるの私だ。……ちょっと、そんなに重そうに運ばなくても……」
オルオ「ん! こりゃまさか……」
グンタ「? どうしたオルオ?」
オルオ「イヤ……今、ペトラの遺体が別の遺体の上に乗せられたよな? ありゃ俺だ」
ペトラ「え!? ウソ!?」
エルド「ははっ、良いじゃないか。お前らよく2人一緒に居ただろ?」
ペトラ「や、やだよオルオと重なってるなんて! だったらいっそ降ろして!」
オルオ「なんだペトラ……もしかして照れてるのか?」
ペトラ「誰が!!」
オルオ「フッ……安心しろ。お前が多少重くても、
鍛えられた俺の体ならその程度の重さ、楽に支えてやるぜ」
ペトラ「そんなに重くないよ!」
オルオ「そいつはどうだろうな。
いつだったか訓練中に偶然お前に圧し掛かられた時はなかなか……」
ペトラ「う、うるさいな! 昔の話でしょ!」
エルド「ん! オイ、夫婦漫才も良いが後にしろ。出発するようだぞ」
グンタ「近くに巨人も居ないようだし、
この様子なら何事もなく帰還できそうだな」
ペトラ「そっか……早く壁内に戻って荷台から降ろして欲しいよ。出来るだけ早く」
オルオ「やれやれ、素直じゃないヤツめ」
・
・
・
エルド「出発してからしばらく経つが……エレンはまだ目を覚ましそうにないな」
グンタ「あぁ。やはり巨人化はかなり体力を消耗するようだな。
無理矢理かじり取られたからってのも原因としてはあるかもしれ……」
イヴァン「何やってんだ馬鹿野郎がぁああああ!!」
ペトラ「わっ!? びっくりした……」
オルオ「あいつさっきの……。なんだ、また同郷の新兵が何かやらかしたのか?」
グンタ「オイ、イヴァン。どうした、何があったんだ」
イヴァン「せ、先輩! 見てくださいアレ!! ディターとユルゲンのアホが!!
俺の死体と一緒に巨人連れて来やがりました!!」
4人「!?」
オルオ「はぁあああ!? 何やってんだアイツ!! 命令違反かクソガキが!!」
イヴァン「お前ら何してんだよ馬鹿!! 気持ちは嬉しいけどよ!!
マジで馬鹿なんだな!! 気持ちは嬉しいけどマジで馬鹿なんだな!!」
エルド「複雑そうだなお前……。そ、それよりまずいぞ! このままじゃ追いつかれる!」
イヴァン「あっ……うぉおおおおおい!? 結局オレ落としちゃってんじゃねぇか!」
ペトラ「! もう1人の方が掴まった!!」
ユルゲン『うぁああああ! あぁあああああ!!』
イヴァン「ユ、ユルゲン!! あっ……あぁ!!」
グンタ「食われた……!」
エルド「クソっ……丸呑みってことはまだしばらくは生きてるだろうが……」
グンタ「生還は絶望的だ……!」
オルオ「オイ、ガキ。幼馴染との再会の挨拶でも考えとくんだな……」
イヴァン「あぁ!? ディター馬鹿、無茶するな! お前まで……!」
ディター『ぐぁあああああ!!』
イヴァン「ホラ言わんこっちゃねぇええええ!!」
ペトラ「っ! でも待って、ホラ!」
ミカサ『はあああッ!!』
イヴァン「ミ、ミカサ!! すまんミカサ! た、助かった!!」
グンタ「あの新兵は助かったか……だが状況が最悪なことに変わりはねぇぞ!」
エルド「もう一体が荷馬車の方に!」
オルオ「オイオイ……! このままじゃ更にこっち側に人が増えるぞ!」
ペトラ「なんとかしないと、追いつかれ……。っ!
そうだ! 遺体を降ろして! 荷馬車から今すぐ!」
オルオ「は……!? ペトラお前、まだそんなことを……」
ペトラ「違うよ! 私達が荷馬車に乗ってるから重くなってるんでしょ!?
私達を降ろせば、加速して逃げ切れる!!」
エルド「そうか……! ん、見ろ!」
兵士『俺があいつの後ろに回る! 一先ず気を逸らしてその隙にお前は……』
リヴァイ『やめておけ! それより遺体を捨てろ、追いつかれる!』
グンタ「兵長の言う通りだ、早く遺体を捨てろ!」
エルド「イヤ、だが……まだ迷ってるようだ……!」
オルオ「迷ってる場合か馬鹿! どっちにしろ俺らは死んでるんだ!
今更死体捨てられたとこで何も変わらねぇよ!」
兵士1『やるんですか……!? 本当にやるんですか!?』
ペトラ「ま、迷う気持ちは分かるけど、やらないとみんな死ぬの!! 早く決断して!!」
兵士2『ッ……やるしかないだろ!!』
4人「よしっ!!」
グンタ「ようやく決断したか!」
兵士『くっ、うぅッ……!』
兵士A「今捨てられたの俺の死体なんすよwwwww」
兵士B「あっ、今の俺……あぁああああ!? 巨人てめぇ踏みやがったなコラぁ!!」
ペトラ「次は私……うわっ! うわぁ~……」
エルド「……やはり自分の死体が捨てられるのは少しキツイか?」
ペトラ「捨てられるって行為がっていうより……単に痛々しくて嫌だ。
だってどう考えても全身の骨折れるじゃない、アレ……」
オルオ「今更何を……。もうとっくに内臓までグチャグチャだろ」
ペトラ「あっ、そっか」
・
・
・
エルド「もう大丈夫そうだな。荷馬車を軽くしたおかげで完全に逃げ切れた」
オルオ「ったく……考えの足りんガキ共のおかげでハラハラしたぜ」
イヴァン「あ、あの……」
グンタ「ん? どうかした……。っ!」
ユルゲン「う、うぅっ……」
ペトラ「あなた、さっきの……そっか。死んだんだね」
ユルゲン「じ、自分の、自分のせいで……!
せ、先輩方の、遺体まで、ぐすっ……!」
オルオ「チッ……ピーピー泣くんじゃねぇようるせぇな」
ユルゲン「ほ、本当に、申し訳ありませんでしたぁああ……!!」
エルド「まぁ……俺達は別に遺体のことに関してはそれほど気にしてない。
寧ろ生き残った者の方が辛い思いをしてるはずだ。あれを見ろ」
兵士1『うぐっ、っ、くっ、うぅうッ……!』
兵士2『泣くな……。泣いたって遺体は返って来ない。
仕方なかったんだ……仕方なかったんだよ……!』
ユルゲン「っ……!」
グンタ「済んだことをとやかく言っても仕方ないが、
どうしても謝りたいのならいつか彼らがこっちに来たときに直接謝るんだな」
ユルゲン「は……はいッ……!」
オルオ「問題は生き残った方のガキだと思うがな……。
いくらガキでも自分が大失態を犯したことくらいは分かってるだろ」
イヴァン『…………』
エルド「あの様子を見ると自責の念で潰れる可能性も……」
ペトラ「あっ! 見て、兵長が!」
グンタ「あいつのところに向かっていく……何か言うつもりのようだ」
ディター『……リヴァイ兵長。自分は……』
リヴァイ『これが奴らの生きた証だ。……俺にとってはな』
ペトラ「あ、あれ! さっきのエンブレム……!」
リヴァイ『イヴァンの物だ』
ディター『ッ……兵長っ……』
一同「…………」
オルオ「オイ、なんだよアレ……かっこよすぎるだろ……」
エルド「な、なんて完璧なフォローだ……!」
ペトラ「あれだけの言葉に込められたたくさんの意味……深すぎます、兵長……!」
グンタ「フォロー力も人類最強ということか……!」
イヴァン「一個旅団並みのフォロー……!」
ユルゲン「オレがッ……オレが間違ってましたぁああああ!!」
グンタ「どーだ新兵ども見たか! あの失態をフォローしたんだぞ!?」
オルオ「これがリヴァイ兵長の力だ!
舐めてんじゃねぇぞこのバカ! どうだ!? わかったか!?」
新兵達「はい!!」
・
・
・
エルド「おっ、見ろ。壁が見えたぞ。無事着いたようだ」
ペトラ「一時はどうなることかと思ったけど、なんとかなって良かったよ」
オルオ「あとは、さっさと気合を入れ直すことだ。
特に落ち込んでいやがる新兵のガキ共はな」
グンタ「そうだ……。そう言えば今、家のみんなはどうしているだろうか」
ペトラ「あっ、私お父さんに手紙出してたんだった。読んでくれたかな?
元気かな? ……うん、ちょっと見て来よう。
えーっと……あっちに行けば見られるのかな」
エルド「俺も向こうで見てくるとするか……。最近あいつの顔もあまり見られていなかったしな」
オルオ「やれやれ、どいつもこいつもまだ家族が恋しいのか。
……ま、俺も様子くらいは見に行ってやるか」
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ペトラ「おかしいなぁ……なんでお父さん家に居なかったんだろ。
この時間はいつも居るはずなのに……どこに行ったのよ、もう」
オルオ&グンタ&エルド「…………」
ペトラ「あ、みんなお帰り。
家の人どうだった……って、ど、どうしたの? なんか元気が……」
エルド「……見るんじゃなかった……」
グンタ「まさか俺達の帰りをあそこまで楽しみにしているとは……。
イヤ、嬉しいことには嬉しいんだが、しかし……」
オルオ「めちゃくちゃテンション下がるぞ、アレ……」
ペトラ「えっ、そんなに……?」
エルド「ペトラ……お前はあまり変わりないようだが」
グンタ「親父さんの様子は見なかったのか……?」
ペトラ「いや、家を見に行ったんだけど、なぜか居なかったの。
どこかに出かけてるんだと思うんだけど……」
オルオ「だが時間の問題だぞペトラ……。お前もすぐに俺達のようになる」
ペトラ「えぇ~……。どうしよう、見るの怖くなってきたな……。
そうだ。お父さんは後にして、取り敢えず兵長達の様子を……」
ペトラ父『リヴァイ兵士長殿! 娘が世話になってます!』
ペトラ「」
ペトラ父『娘が手紙を寄越してきましてね云々……
あなたにすべてを捧げるつもりだとか云々……』
リヴァイ『…………』
オルオ「うわぁ……」
エルド「これはキツイ……」
グンタ「兵長に追い討ちをかけるようなもんじゃないか……。
見ろよあの表情……」
ペトラ「何この感情……恥ずかしいやら悲しいやら……。
ただとにかくテンションがもう……やめてよもう……」
ペトラ「うぅ、まさかここまでキツイものだったなんて……」
オルオ「ま、まぁそう落ち込むなペトラ。
俺の親なんか俺のために満面の笑みで飯作って待ってたんだぜ……。
これもなかなかキツイとは思わねぇか……」
グンタ「マジかよ」
ペトラ「私に関係なくても聞くだけでキツイからやめて……」
オルオ「すまん」
エルド「まぁ、なんだ……考えるか。枕元に立つ方法」
グンタ「夢に出る方法もな」
ペトラ「何しゃべるかも考えなきゃ」
オルオ「……カンペ作っとくか」
おしまい
アニオリがあまりに鬱だったのでついカッとなってやりました
付き合ってくれた人ありがとう、お疲れ様でした
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