穏乃「胸大きくしたい!」和「はあ……?」 (38)
和「久しぶりに会いに来た友人にかける言葉がそれですか……」
穏乃「久しぶりってインハイで会ったじゃん!」
和「それはそうですけど、奈良に来たのは久しぶりじゃないですか。もっとこう昔を懐かしむような……」
穏乃「そんなことより、どうやったらそんなに胸大きく出来るの!?」
和「そんなことって……特に気にしたことはありませんよ。自然にこうなっていたんです」
穏乃「嘘だ! 絶対なんか秘密があるはず!」
和「ありませんってば」
穏乃「い~や! 小学生の頃からあんなに大きくなるなんておかしい! 和は普段の生活で何か胸を大きくするようなことをしてるんだよ!」
和「胸を大きくするようなこと?」
穏乃「……もしかして毎日自分で揉んでたり――」
和「してません!」
穏乃「だよね~、効果ないもんね」
和「いえ、適切にやれば大きくなると何かで見ましたけど……というか穏乃、その言い方だともしかして……」
穏乃「う、うるさいな! 私は必死なの!」
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和「必死さはわかりました。けれど一体何のために胸を大きくしたいんです?」
穏乃「えっと……誰にも言わないでよ?」
和「言いませんよ」
穏乃「実は私、く……」
玄「和ちゃ~ん」
穏乃「うわっ!?」
玄「きゃっ! あれ穏乃ちゃん? 来てたんだ」
穏乃「の、和が来てるって聞きましたから」
和「何のご用ですか玄さん?」
玄「ああ、うん。お昼出来たから持ってきていいか聞きに来たんだよ」
和「そうですか、それじゃあお願いします」
玄「おまかせあれ! ふっふ~ん、うちの板前さんのお料理はなかなかのなかなかだから楽しみにしててね」
和「はい、楽しみにしてますよ」
玄「あっ、穏乃ちゃんも何か食べる? 板前さんじゃなくて私の簡単なお料理になっちゃうけど」
穏乃「お、お願いします!」
玄「ふふっ……じゃあ少し待っててね。和ちゃんのお昼はおねーちゃんがすぐに持ってくるから」
和「……行きましたか。穏乃、さっきの話の続きをお願いします」
穏乃「……私だって女だよ。胸大きくしたいって思うことに理由いるかな?」
和「でも昔はそんなに気にしてなかったじゃないですか」
穏乃「私も大人になったの!」
和「大人になったのならその服装をどうにかした方がいいと思いますけど……」
穏乃「その言葉そっくりそのまま返すよ……もう、いいから和の普段の生活の中で胸大きくするのに関係ありそうなこと教えてよ!」
和「そう言われても……少し調べてみましょうか」
穏乃「あっ、スマホだ。私まだガラケーなんだよね」
和「便利ですよ麻雀アプリなんかもありますし……出ました」
穏乃「なになに……大豆を食べるといい?」
和「大豆に含まれるイソフラボンという成分が胸の発育にいいようですね」
穏乃「よし! 早速大豆買ってくる!」
和「待ってください穏乃。たんぱく質も摂らなければならないようですよ」
穏乃「たんぱく質って何食べればいいの?」
和「お肉、お魚、卵、乳製品、それに件の大豆です」
穏乃「じゃあ大豆だけでいいじゃん」
和「駄目です。大豆は植物でしょう? お肉やお魚みたいな動物のたんぱく質も必要なみたいです」
穏乃「んじゃお肉も!」
和「食べすぎもいけませんよ。偏った食事は病気の元ですからね」
穏乃「わかってるよ、行ってくる!」
和「穏乃、玄さんが料理作ってくれているの忘れたんですか?」
穏乃「……! そうだった、玄さんの手料理は食べていかないと」
和「私のお昼に大豆料理があれば分けてあげますよ」
穏乃「ありがと」
宥「お昼お持ちいたしました~」
和「噂をすれば、ですね。どうもありがとうございます」
穏乃「お邪魔してます」
宥「こんにちは穏乃ちゃん。和ちゃんもしばらくぶりだね」
和「お久しぶりです。お家でもその格好なんですね」
宥「うん、そろそろ寒くなってくるからもっと厚着しないといけなくなるの。憂鬱だなぁ……」
和「長野の冬でもそれだけ着ていれば充分以上なんですけどね普通は」
穏乃「豆腐がある……豆腐って大豆から出来てるよね?」
和「ええ」
穏乃「じゃあ貰うよ?」
和「どうぞ」
穏乃「いただきま~す!」
宥「穏乃ちゃん大豆好きなの?」
和「そういうわけではないんですが……って穏乃! その箸を使ったら私の使う箸がなくなるじゃないですか!」
穏乃「むぐっ! もう使っちゃったよ」
和「はぁ……玄さんが来るまで待ちますか」
宥「玄ちゃんがどうかした?」
和「穏乃のお昼ご飯を作ってくれるそうで、一緒に箸も持ってきてくれるだろう、と」
宥「そうだったんだ。でも穏乃ちゃんいっぱい食べちゃってるけど食べられるのかな?」
和「えっ? あっ、こら穏乃! 何で豆腐以外の物にまで手を出してるんです!?」
穏乃「和が言ったんじゃん。ちゃんと植物のたんぱく質だけじゃなくて、動物のたんぱく質も摂れって」
和「言いましたけど私は大豆料理を分けるとしか言ってないでしょう! それは私のお昼ご飯なんですよ!?」
穏乃「お昼一回抜いただけじゃ死なないって。和はこれ以上胸大きくする必要ないんだからさ」
和「胸が大きくてもお腹は空くんです!」
穏乃「胸から栄養を補えばいいでしょ」
和「ラクダのコブじゃないんですよ! ああもう、主采がほとんどなくなってるじゃないですか!」
穏乃「この食い意地が巨乳の秘訣か……」
和「食い意地張ってるのは穏乃の方です! もう、玄さんが持ってくるのは私が食べますからね!」
穏乃「それは駄目! 玄さんの手料理は私が食べる!」
和「なら箸を止めてください!」
宥「えっと、穏乃ちゃんは胸を大きくしたいの?」
穏乃「えっ!? いや、その……」
和「ええ。見たところ宥さんもそれなりに大きいですね。何かアドバイスしてあげてください」
穏乃「の、和!」
和「そんなに恥ずかしがらずともいいじゃないですか。私には話したんですし」
宥「う~ん、アドバイス……特に気にしたことないんだけど……」
穏乃「くそ~! 胸が大きい人は皆そう言うんだ~!」
和「止めたと思ったら! 穏乃! いい加減にしないと怒りますよ!?」
宥「あっそうだ。玄ちゃんなら何か知ってるかも。いっつもおもちおもちって胸のこと気にしてるもん」
穏乃「んぐっ!? く、玄さんには内緒にしてください!」
宥「どうして?」
和(箸が止まった今のうちにお膳をこっちに移動させておきましょう)
穏乃「いやその……玄さん胸のこととなると人が変わりますから」
宥「あはは、そうだね、穏乃ちゃんに迷惑かけちゃうかもしれないね。わかった。玄ちゃんには内緒にしておく」
穏乃「ありがとうございます!」
玄「でんげきいなずまねっぷ~、でんげきいなずまねっぷ~」
宥「あっ、玄ちゃんだ」
玄「穏乃ちゃんお待たせ~。ごめんね少ないかもしれないけど」
穏乃「いえ! 和のご飯を少し食べましたから充分ですよ!」
和「少し?」
玄「もしかして和ちゃんは食べてない? 駄目だよ穏乃ちゃん、それは和ちゃんのご飯なんだから」
穏乃「す、すいません」
宥「怒らないであげて玄ちゃん。穏乃ちゃんはねむ……」
穏乃「うわぁあ! 宥さん!」
宥「あっ……ごめんね、なんでもない」
玄「……?」
和(あの慌てっぷり何か変ですね……)
穏乃「ふぅ~、食べた食べた」
和「私はあまり食べた気がしませんよ……」
穏乃「これでだいぶたんぱく質摂れたよね?」
和「……肝心のイソフラボンの方はそうでもないと思いますけどね」
穏乃「じゃあやっぱり大豆買ってくる!」
和「待ってください。さっきも言ったとおり偏った食事は体に毒です。それに食べてばっかりいると胸の前にお腹が膨れますよ?」
穏乃「うっ……太るのは嫌だなぁ」
和「次は食べること以外の豊胸法を試してみましょう」
穏乃「えっと……他人に胸を揉まれる?」
和「他人でなくとも性的刺激を受ければ自分で揉んでも効果有り……」
穏乃「……こ、こんなほんとか嘘かわからないネットの情報じゃなくて、実際に胸が大きい和の真似をしてみるのが一番いいと私は思うんだ!」
和「そうでしょうか?」
穏乃「そうだよ! だって和は別に大豆を特別に多く食べてたわけじゃないでしょ?」
和「そうですね、意識して沢山食べたということはありませんよ」
穏乃「ほらやっぱり! だから和が普段どんなふうに生活してるか教えてよ!」
和「どんなふうにって……特筆するところがないので説明するのは難しいですね」
穏乃「う~……とりあえず服装から真似てみるよ! 瑞原プロも胸大きいし!」
和「服装を真似たところで……けど穏乃はこういう服持ってるんですか? 一応替えの服は持って来てますけど私と穏乃ではサイズが合いませんよ」
穏乃「探せば服屋さんに売ってるんじゃない?」
和「こういった服を扱ってる店がこんな所にあるでしょうか?」
穏乃「また田舎馬鹿にしたな!? 女子校だってあるんだからあるって!」
和「女子校の有無とは何の関係も……ってちょっと穏乃! もう、ああやってすぐ走ったりして成長に必要な栄養まで消費してるから、背も胸も小さいんじゃないんでしょうか」
和「……まさか本当にあるとは」
穏乃「どう? 田舎も馬鹿にならないでしょ」
和「ええ、そうですね……」
穏乃「うわ~、どこもかしこもフリルだらけだ」
和「あっ、これいいですね。私も新しい服買いましょうか」
穏乃「和のセンスはよくわからないや。和、私の服も見繕ってよ」
和「これなんてどうでしょうか?」
穏乃「わぁ……ピンクでフリフリで、まるで魔法少女の衣装だねこれ。やっぱりこういうの普段着にするのっておかしくない?」
和「おかしくありません。ジャージ一枚だけよりはよっぽど女の子らしいじゃありませんか」
穏乃「そりゃまあ女の子らしくはあるけどさ……とりあえず試着してこよう」
和「私もこれ着てみましょう」
穏乃「はぁ~、もうフリルの塊にリボン付いてるだけみたいなもんだね」
和「思いがけずいい物を見つけられました」
穏乃「あれがいいものなのか……っと私も試着しなきゃ」
和「あまり乱暴に扱ってはいけませんよ」
穏乃「わかってるよ! こんな機会でもなきゃ絶対着ることなかっただろうな~。あれ? これどうやって着るんだろう……ねぇ和、これどうやって着るの?」
和「きゃっ! いきなり試着室のカーテンを開けないでください!」
穏乃「う~ん、やっぱり直で見ると尚更大きく見えるなぁ」
和「いいから早く閉めてください!」
穏乃「高いだろうなとは思ってたけどまさかあそこまで高いなんて……結構切り詰めないと厳しいなぁ」
和「そんなに高いんですか?」
穏乃「高いよ! これだからお金持ちは!」
和「でもよく似合ってますよ」
穏乃「そ、そうかな? けどこれ着て歩くの少し恥ずかしい……」
憧「和! もうこっち着いて……ってシズ!? 何よその格好は!?」
和「憧、久しぶりです」
憧「久しぶり……じゃなくて!」
穏乃「やっぱり変?」
憧「いや似合ってるけどいつもがいつもだけに……どうしたのよいきなり?」
和「胸を大きくするために私の格好から真似してみるそうです」
憧「胸を?」
穏乃「わ、悪い?」
憧「悪くないけどそれこそどうしたのよいきなり?」
穏乃「もう! 私だって女なんだから胸くらい気にするよ! 憧も和も私をなんだと思ってんの!?」
憧「そうは言ってもあんた今まで胸どころか服装にだって気を配ったことなかったのに……あっ! さてはシズ、好きな人でも出来たんでしょ?」
穏乃「んなっ!? そそそ、そんなわけないじゃん!」
憧「やっぱり。誰よ? 男の知り合いなんかいたっけ?」
穏乃「だ、だから違うってば!」
憧「照れない照れない。いや~、シズもそういう年頃かぁ」
穏乃「違うって言ってるのに! もう行くよ和!」
和「……」
穏乃「和?」
和「……憧の家は神社でしたよね?」
憧「え、ええそうよ。それがどうかした?」
和「いえ、インハイで戦った鹿児島の永水と言う高校の選手の人達が皆巫女服を着ていて、胸の大きな方が多かったなと思い出したんです」
憧「ああ、あたしも録画したの見たよ。大将の人なんか和より大きかったわよね? なんかの病気なんじゃないかって心配になったわ」
穏乃「和よりも!? だったらこのフリフリより巫女服の方が効果あるよね!?」
憧「いやないから。巨乳の人の服装真似たって巨乳になれるわけないでしょ」
和「私と打った永水の副将さんは胸どころか背も小さかったですからね」
穏乃「ぐぬぬ……だったらどうしろって言うんだ……」
憧「でもまあ好きな人にアピールしたいって言うならいつものジャージ着てるよりは可愛い服着てたほうがいいんじゃないの? さすがにそれはいきすぎだと思うけど」
和「いきすぎ?」
穏乃「……やっぱりそうかな?」
憧「当たり前でしょ。そこまで派手派手しくなくとも服一つでも結構変わるもんよ……ってやっぱり好きな人が出来たんじゃないの!」
穏乃「ああっ! ち、違うって! これは言葉の綾というやつで」
憧「いい加減観念して白状なさい!」
穏乃「う、うぅ……」
和「憧、こんなに嫌がってるんですから無理に聞きだそうとするのは感心しませんよ」
穏乃「そ、そうだそうだ!」
憧「あんたねぇ……まあいいわ。ほっといてもいつかわかることだろうし」
穏乃「助かったぁ……ありがとう和」
和「どういたしまして」
憧「さてと、せっかく会ったんだしどっか遊びにって言いたいところだけどもういい時間ね」
穏乃「憧がさっさと和のとこに来ないからだよ!」
憧「長旅で疲れてるだろうと思って遠慮してたのよ! そのおかげで相談出来たんだから感謝しなさいよ!」
和「まあまあ。では明日は一緒に遊びましょうね」
憧「ええ。とは言ってもここら辺じゃ遊べるようなところなんてほとんどないんだけどね」
穏乃「山があるじゃん」
和「登山用の服なんて持ってきてませんよ」
穏乃「私のジャージを貸してあげるよ」
憧「二度と着られなくなるからやめなさい。それに本当はジャージ一枚で行くようなところじゃないわよ山って」
和「加えて言うならその服を明日も着るなら山はやめておいた方がいいと思いますよ」
穏乃「そっか明日からも着ないといけないんだ。そうなると着替えも必要になるのか……あぁ、私のおこづかいが……」
憧「気になる……」
和「憧」
憧「はいはい、無理には聞かないって。じゃ和、シズ、また明日。何するかは会ってから決めましょう」
和「はい。また明日会いましょう」
穏乃「じゃ~ね~」
和「……それで、穏乃は何故旅館まで着いてきてるんですか?」
穏乃「もっと和の生態を探るためだよ」
和「生態……先ほど言ったとおり特筆するところはありませんよ」
穏乃「自分じゃ気付かない内に何か変なことしてるかもしれないでしょ」
和「してないと思いますけど……」
玄「あっ、帰ってきてたんだ、おかえり~」
穏乃「く、玄さん!?」
玄「あれ? 穏乃ちゃん、その服……」
穏乃「いや、あの、これは、えっと……」
玄「可愛いね」
穏乃「ほ、本当ですか!?」
玄「うん。前からね思ってたんだ。穏乃ちゃんせっかく可愛いんだからもっとお洒落したらいいのになって」
穏乃「可愛いなんてそんな……でもそれなら言ってくれればよかったのに」
玄「人のお洒落に口出し出来るほど私も気を使ってないからちょっとね。でも本当に可愛い。どこかのお姫様みたいだね」
穏乃「そ、そうですか? ありがとうございます」
玄「これからもそこまで派手じゃなくても可愛い服着るようにしてくれれば、私も嬉しいな」
穏乃「はい! 玄さんの期待に応えられるよう私精一杯お洒落します!」
和「この服も悪くないんですけどね……」
和「ロン。これで私のトップで終了ですね」
穏乃「ちぇ、やっぱり和は強いなぁ」
玄「伊達に個人で全国出てないね」
宥「負けちゃったぁ……」
和「三人ともとても手強かったですよ。今回勝てたのは運がよかったからです。次にやれば負けるかもしれません」
穏乃「相変わらず謙虚というか堅実だねぇ」
和「事実ですから。無論負けるつもりで打つわけではありませんけど」
穏乃「だったらもう一戦と言いたいところだけど、そろそろ帰らないとさすがにまずい時間になってきたよ」
玄「それなら穏乃ちゃんもうちに泊まればいいんだよ」
穏乃「えっ!?」
宥「そうだね。お夕飯は私達の家の方になっちゃうけど」
穏乃「い、いいんですか?」
玄「和ちゃんと色々話したいこともあるでしょ? いいよね和ちゃん?」
和「構いませんよ」
玄「じゃあ決定! 着替えはうちの浴衣で我慢してね」
穏乃「ふ、不束者ですがよろしくお願いします!」
和「嫁入りするわけじゃないんですから……」
玄「ふっふっふ、待ちに待ったお風呂タイムがようやく訪れたよ! 和ちゃ~ん、背中流してあげるよ~」
和「結構です。どうせ背中ではなく胸が目的なんでしょう?」
玄「そそそ、そんなことないよ! 私はただ和ちゃんの疲れを癒してあげようと……」
宥「玄ちゃん、あんまり和ちゃんに迷惑かけちゃ駄目だよ」
穏乃「……」
宥「やっぱり玄ちゃんにはお胸のこと教えないほうがいいみたいだね穏乃ちゃん」
穏乃「……他人に胸を揉まれると大きくなるんだよね。もしそう教えたら玄さんは私にもあんなふうに――」
宥「穏乃ちゃん?」
穏乃「……えっ? あっ、何でしょうか宥さん?」
宥「なんだか和ちゃんのことじっと見つめてたから。もしかして和ちゃんの胸に嫉妬しちゃってた?」
穏乃「嫉妬、まあそうですね」
宥「心配しなくてもきっとすぐに大きくなるよ」
穏乃「そうだといいんですけどね……嫉妬してたのは和の胸の大きさにじゃないんですけど」
宥「最後のほう聞こえなかったけどなんて言ったの?」
穏乃「いや、あの、ここまで格差が出る世の理不尽さを嘆いてみたりしてたんですよ、あは、あははは……」
玄「先っちょだけだから!」
和「そこが一番駄目です! 何言ってるんですか!」
穏乃「旅館の布団だけあってふかふかだぁ~」
和「よいしょっと。毎度窮屈な思いをさせてすいませんエトペン」
穏乃「和、それ毎日抱いて寝てるの?」
和「しょうがないじゃないですか、習慣になってしまったんですから!」
穏乃「いや馬鹿にしてるわけじゃないよ。ただ毎日抱いて寝てるならそれも胸の発育に関係してるんじゃないかなって」
和「そんなわけないですよ」
穏乃「いやわからないよ。ぬいぐるみが胸に押し付けられることによって胸を揉まれるのと同じ効果が出てるかもしれない!」
和「そんな馬鹿な」
穏乃「ともかく今日はとことん和の真似をするって決めたんだから、それ貸して」
和「こ、これだけは勘弁してください。エトペンがないと眠れないんです」
穏乃「あのさ和、もし大事な試合の前にそのぬいぐるみをなくして眠れなかったとか、抱いてないから本気が出せなかったとか、そんなことになったらどうするの?」
和「そ、それは……」
穏乃「大切なのはわかるけどそろそろぬいぐるみ離れする時期が来たんじゃないの?」
和「……そうかもしれませんね。連れまわして千切られたり蹴られたりもしましたし。ぬいぐるみ離れ、してみせようじゃないですか!」
穏乃「じゃあこいつは私が抱いてっと。それじゃおやすみ~」
和「もう寝てしまうんですか?」
穏乃「規則正しい生活しないと成長しないってことくらい私でも知ってるよ」
和「私の真似をするならこの時間はまだネトマを……寝つき速いですね」
和「ネトマ出来そうもありませんし仕方がありません、私も寝ますか」
和(うぅ……電気を消して布団に入るとやっぱり不安で眠れません……)
和(隣に穏乃がいるんです、何も不安に思うことなんかないじゃないですか。落ち着きなさい私)
和(ああっ、あの天井の木目が人の顔に……そんなオカルトありえません! そんなオカルトありえません!)
和(いけない、穏乃からエトペンを取り返したくなってきました。穏乃は胸を大きくすることに必死なんです、邪魔をしてはいけません……!)
和(……しかし何故いきなりそんなことを言い出したんでしょうか? 憧の言うとおり好きな人が出来たのなら一体誰を好きに?)
和(憧曰く男性の知り合いはいない。ですが阿知賀は女子校ですし、穏乃の好きな相手は男性とは限りません)
和(相手が女性だとすれば何故胸を……!)
和(まさか……いや、でも付き合いは長いですし充分ありえる相手ですが……)
穏乃「う~ん……」
和(穏乃、貴女は……)
穏乃「胸大きくなってない……」
和「一日で目に見えるほど効果が出るわけないですよ。そもそも効果があるかどうか自体わからないんですし」
穏乃「はぁ……和くらいまでになるまでどれくらいかかるんだろ?」
和「……」
穏乃「和?」
和「穏乃、貴女が胸を大きくしたい理由はもしかして玄さん――」
玄「おはよ~」
穏乃「玄さん! おはようございます!」
和「……おはようございます」
玄「二人ともよく眠れた?」
穏乃「はい! ぐっすり眠れました!」
和「私は穏乃のせいでぐっすりとはいきませんでしたよ」
穏乃「えっ? そんなにいびきうるさかった?」
和「いびきではありませんよ。エトペンのこととか、色々です」
玄「今日は憧ちゃんも一緒に遊びに行くんでしょ? 眠れなかった分朝ごはん食べてしっかり元気にならないとね」
和「そのことですが、よければ玄さんも一緒に遊びに行きませんか?」
穏乃「……!」
玄「いいの?」
和「当たり前じゃないですか。宥さんも一緒に誘って遊びに行きましょう」
玄「うん! お姉ちゃんもきっと喜ぶよ!」
和「大勢いた方が楽しいですからね」
穏乃「和っ」
和「胸の話をしなければいいんでしょう? 憧には後でメールで伝えておきます」
穏乃「それならいいんだけど……」
和「穏乃は玄さんがいた方が嬉しいでしょう?」
穏乃「へっ?」
和「……いいえ、忘れてください」
和(今ここで問い詰めるわけにもいきませんからね)
穏乃「……?」
玄「よ~し、私も穏乃ちゃんや和ちゃんに負けないくらいめいっぱいおめかしするぞ~!」
憧「ふ~ん、それで気合入った服着てきたわけか」
玄「なかなかのなかなかでしょ?」
憧「ええ、比較がコスプレ二人組と不審者だから余計によく見えるわ」
宥「不審者……」
和「マイノリティであることは自覚していますがコスプレ呼ばわりは心外です」
穏乃(玄さん綺麗だなぁ)
憧「あ~はいはい、そんなことよりさちょっとこっち来てよ和」
和「……メールに書いたことですか?」
憧「そうに決まってるでしょ。本当なの、シズの好きな人が玄かもしれないって?」
和「はい。玄さんにはだけは胸を大きくしたいと思っていることを隠そうとしていました。自分の気持ちに気付かれることを恐れているんだと思います」
憧「気を引くために胸を大きくしようとしてるのに?」
和「小さいままでは想いを遂げることが出来ないと考えているんでしょう。胸を大きくしてしかるのち告白するつもりなんじゃないですか」
憧「シズなら思い立ったが吉日って直球で告白しにいきそうなもんだけど」
和「フラれるのが怖いんでしょうね。それだけ真剣な恋だということです」
憧「恋、かぁ。シズが玄にねぇ……」
和「……憧は、その、同性の間での恋愛についてはどう思っているんですか?」
憧「特に悪いとは思ってないわよ。あたしだって男苦手だしね。大変だろうけど応援してあげたい気持ちに変わりはないわ」
和「そうですか、安心しました」
憧「とは言うもののどうすればいいのかな?」
和「何よりも先ずやらなければいけないことは玄さんの方の気持ちを知ることです」
憧「そっか、玄がシズのこと、というか同性恋愛についてどう思ってるかにもよるのか」
和「もしかすると玄さんの方も穏乃のことを好きでいるかもしれませんし」
憧「そうだったら楽でいいんだけどね」
穏乃「さっきから二人で何話してんの?」
和「これからどこに行こうか相談していたんですよ。結局具体的に決めずに出てきてしまいましたから」
憧(シズには内緒の方向でいくのね。あれだけ隠そうとしてたんだしそっちの方がいいか)
憧「そうよ。適当にぶらついててもしょうがないでしょ」
玄「そうかな? 私はこのまま歩いてるのもいいと思うよ。なんだか昔を思い出して懐かしい気分だから」
穏乃「昔、ですか?」
玄「うん。和ちゃんがまだ奈良にいた頃のこと。こうして皆で色んなとこに遊びに行ったよね」
和「……ずいぶんと昔のことのように感じられます」
憧「三年か。長いのか短いのかよくわかんないけど、でも確かに遠い昔みたいに思えるわね」
玄「またこうして皆でこうしてこの町を歩ける日が来て、私本当に嬉しいよ」
穏乃「玄さん……」
憧「……まあ皆って言ってもハルエがいないけどね」
玄「そうだけど……もう~、今は感傷に浸らせてよぉ!」
穏乃「そうだよ憧! せっかくいい雰囲気だったのに!」
憧「その雰囲気に入れない宥姉がいることを忘れないの。見なさい、こんなに震えてるじゃないの」
宥「これは寒いからだよ~」
和「今日は一段と冷え込むらしいですからね。私も少し肌寒いです」
憧「ハルエで思い出したわ。灼んとこに行きましょう。ここら辺じゃ遊べるところなんてあそこぐらいなもんよ」
和「ボウリング場でしたっけ?」
憧「ええ。外より暖かいし運動すれば体も暖まるからうってつけでしょ」
宥「あったかいところならどこでも~」
玄「そうだね、よく考えたら麻雀部の皆も赤土さん以外揃ってるんだから、灼ちゃんだけ仲間外れにするわけにはいかないね」
穏乃「ボウリングかぁ、久しぶりだけど上手くやれるかな?」
和(私なんて始めてです。大丈夫でしょうか?)
灼「いらっしゃいってなんだ玄達かって穏乃!? どうしたのその格好!?」
穏乃「コロコロ表情変えて忙しそうですね灼さん……」
憧「シズもようやくお洒落に目覚めたのよ。ちょうど和が来てるから参考にしてるそうよ」
灼「あんまり参考にしないほうがいいと思……」
和「そんなに駄目でしょうか?」
宥「可愛いとは思うけどやっぱり目立つからね」
玄「おねーちゃんは人のこと言えないよ。それで灼ちゃん、私達五人でやりたいんだけどお友達特価でただに――」
灼「ならないよ。少し安くするくらいはいいけど」
憧「何よケチね」
灼「見てのとおり閑古鳥が鳴いてる状況でこっちも余裕ない」
穏乃(私の財布もこの服のせいで寂しいけどさすがにボウリング代くらいはまだ残ってたよね?)
穏乃「やった! ストライク!」
憧「やるじゃないシズ」
玄「穏乃ちゃんすご~い」
穏乃「へっへ~、こっから全部ストライクでいきますよ!」
灼「だったら七面鳥用意しないと」
宥「しちめんちょ~?」
灼「三連続ストライクのことターキーって言うよね。あれって客寄せに三連続ストライクした人に七面鳥出してたことから来た言葉らし……」
穏乃「そうだったんですね。七面鳥目指してやるぞ~!」
灼「いや、冗談。から揚げくらいならコンビニで買ってきてもいいけど」
和(私もせめて一回くらいはストライクを……)
灼「はいから揚げ一丁お待ち」
穏乃「ありがとうございます灼さん!」
憧「本当に買いに行くなんて律儀ねぇ」
宥「あったかそう……」
和(結局ストライクどころかスペアさえ取れないなんて……いえ、初回の成果としてはまずまずでしょう。玄さんには勝てたことですし!)
玄「うぅ、最下位になっちゃったよぉ」
穏乃「なんだかおごってもらった物だといつもよりおいしく感じるなぁ」
玄「いいな~、ねぇ穏乃ちゃん。私にも一つ頂戴?」
灼「玄は最下位でしょ」
穏乃「まあまあ、いいですよ」
玄「やったぁ! じゃあ、あ~ん」
穏乃「わ、私が食べさせるんですか!?」
玄「嫌だった?」
穏乃「嫌なわけな……嫌じゃないです。そ、それじゃいきますよ」
玄「あ~ん。んん~、おいしい! ありがとね穏乃ちゃん」
穏乃「い、いえ喜んでいただけで何よりです……」
穏乃(恥ずかしいけど可愛い……!)
憧「……これはひょっとするとひょっとするかもしれないわね」
和「……かもしれませんね」
宥「また内緒のお話?」
和「ああいえ、何でもありませんよ」
灼「どうする、もう一ゲームする? するならまたから揚げ買いに行くけど」
憧「あ~、その前にさちょっと聞きたいことあんのよね」
灼「なに?」
憧「最近ハルエとどうなの?」
灼「ど、どうって何が?」
憧「ほら、ハルエってば瑞原プロの誘い受けてプロに行っちゃったじゃない。遠距離恋愛って辛いんじゃないかな~って」
灼「れんっ!?」
和「鷺森さんは赤土さんとそういうご関係なんですか?」
穏乃「えっ、いや、私も初耳なんだけど……」
玄「……」
宥「そうだったんだぁ、知らなかった」
灼「ち、ちがっ……まだそんな仲じゃなくて!」
憧「まだ? 告白してなかったんだ」
灼「あっ、その……」
宥「わぁ~、なんだかあったか~い」
穏乃「……灼さん! 私応援しますから!」
玄「わ、私も!」
灼「いや、えっと……憧~!」
憧「普段からいちゃついてたから隠す気ないんだと思ってたんだけど、悪かったわね」
灼「……まあいいよ。どうせいつかバレることだし」
憧「けど誰も女同士だってことにツッコミ入れないとはね。皆そういうのに抵抗ないんだ」
和(なるほど、これに繋げるためにいきなりあんなことを言い出したんですね)
宥「たとえ女同士でも誰かを好きになることがあったかいことには変わりないから」
穏乃「わ、私はその、抵抗ないというかなんというか……」
玄「す、好きになったんならしょうがないんじゃないかなって私は思うんだ!」
憧「ほほ~う。玄ってばもしかして誰か好きな人いる?」
玄「きゅ!? な、なんでそんなこと!?」
憧「いや~、言い方がなんかそんな感じしてたから」
宥「そうなの、玄ちゃん?」
玄「そ、それは……」
憧「最下位の罰ゲームよ、吐きなさい!」
玄「ええっ!? そんなのあるなんて聞いてないよ!」
和「言ってませんから当然ですよ」
憧「この機会に洗いざらい吐いて楽になりなさい!」
灼「まるで尋問みた……」
玄「ああうう……」
穏乃「や、やめなよ憧! 玄さんが困ってるだろ!」
玄「ああ、あのね、私が好きな人は……」
穏乃「……っ! 私、トイレ行ってくる!」
和「穏乃!」
宥「穏乃ちゃん怒っちゃった?」
灼「怒ってたというよりなんか……」
玄「穏乃ちゃん……」
憧「……ちょっと強引だったかしら?」
和「……いえ、これでお膳立てはすみました」
穏乃「はぁ……なんで逃げてんだろ私」
和「穏乃」
穏乃「和」
和「怖いですか、玄さんの好きな人を聞くのが?」
穏乃「……! 和、お前……」
和「玄さんもあの場で明確に名前を挙げるようなことはしないと思いますよ」
穏乃「そうだけどさ、きっと胸の大きな人とか言うんだろうなって思ったらさ……」
和「……玄さんを好きになった理由を聞かせてくれますか?」
穏乃「……玄さんが阿知賀の麻雀部の部室を麻雀教室が終わってからもずっと掃除し続けてたことは話したよね?」
和「聞きました。私が転校する少し前までやっていたのは知っていましたが、まさかその後もずっと続けていたなんて驚きましたよ」
穏乃「私ね和も憧も赤土先生も皆離れて行っちゃって、世の中そんなもんとか言ったけど正直寂しかったんだ」
和「私もそうでしたよ」
穏乃「でも和のことテレビで見ていてもたってもいられなくなって部室に行ったら昔のまま変わってなくて。嬉しかったんだ、またあの頃に戻れるってそう思えたから」
穏乃「玄さんは私よりも強くそれを願いながら二年間も一人で部室を守ってくれていた。私達がインハイに出られたのは……私が今こうして和と一緒にいられるのは全部玄さんのおかげなんだよ」
穏乃「けどそうやって行ったインハイで玄さんは辛い思いをした。泣きながらドラを切る玄さんを見て、何で玄さんばっかりこんな辛い目に合うんだろうって思ってた」
穏乃「私は玄さんに笑顔でいてほしい。ずっと辛い思いをし続けた来たんだから」
和「穏乃……」
穏乃「胸大きくしたいって言ったのもさ、玄さんの気を引きたかっただけじゃないんだよ。宥さんはインハイで好成績残したからきっとプロのに行っちゃう。そうしたら玄さんの周りに胸が大きい人がいなくなると思って」
穏乃「最初は玄さん本人に相談しようと思ったんだ。そうしたら構ってもらえるだろうしさ。けどこの気持ちが知られたらって思ったら言えなかった」
和「そうだったんですか」
穏乃「無駄な努力だったけどね。明確に言おうとしなかったにしても好きな人がいるってことだよね。だったらそれはきっと私じゃないもん」
和「それは本人に聞かなければわかりませんよ」
穏乃「聞かなくてもわかるよ。だって私こんな貧乳だから」
和「……だそうですが、どうなんですか玄さん?」
穏乃「えっ?」
玄「……」
穏乃「ななな、なんで!?」
和「憧の携帯と通話状態にしておいたんです。今までの話は全部玄さんも聞いていますよ」
穏乃「そんな……」
和「穏乃、貴女が好きになった人は胸の大きさだけで人を判断するような人なんですか?」
穏乃「……!」
和「確かに玄さんは胸の大きな人のことが好きかもしれませんが、それだけで人の好き嫌いを決めるような人では決してありませんよ」
穏乃「……」
和「貴女の想い、しっかりと伝えてきてください」
穏乃「……わかった。どっちにしろもう逃げ隠れ出来ないもんね」
玄「……」
穏乃「玄さん! 私見てのとおり貧乳ですし、これから大きくなるかもわかりません! だけど、玄さんのことが好きです! 私と付き合ってください!」
玄「……」
穏乃「お願いします!」
玄「……えいっ!」
穏乃(だ、抱きしめられた!? ということは……)
玄「ありがとう穏乃ちゃん。私のことそんなに大切に想ってくれてたんだね」
穏乃「あ、あの、玄さん――」
玄「一人で部室を掃除し続けた二年間。いつかあの頃に戻れるようにってずっと願ってた。その願いに答えてくれたのは穏乃ちゃん、貴女だよ」
玄「いつものようにバケツと雑巾を持って部室に行って穏乃ちゃんの姿が見えた時、私本当に嬉しかった。たぶんね、きっとその時から……」
玄「私は穏乃ちゃんのことが大好きになってたんだ」
穏乃「玄さん……!」
玄「おもちかどうかなんて関係ないよ、付き合ってって私の方からお願いしたいくらいだよ。どうか私と恋人になってください」
穏乃「は、はい!」
玄「ふふふ……嬉しいなぁ、これもずっと願ってたことだから」
穏乃「こ、これからは何か願い事があったらすぐに言ってください! 私が叶えますから、こ、恋人として」
玄「うん!」
和「よかったですね穏乃……いえ、お二人とも」
穏乃「和、ありが――」
宥「えへへ、妹が増えちゃった」
憧「中々いい光景だけどボウリング場のトイレなのよねここ」
灼「私がハルちゃんに告白するときはちゃんと場所を考えてしよ……」
穏乃「なっ!? なんで皆いるの!?」
灼「憧の携帯で聞いてたから」
憧「もれなくばっちり全員聞いてたわよ」
宥「私もいつか誰かにあんなあったかい台詞言われてみたいなぁ」
玄「あはは、でも灼ちゃんも言ってたようにいつかバレることだから」
穏乃「で、ですがなんかこう……うぅ……うわぁぁ~!」
和「あっ、穏乃!」
宥「走ってっちゃったね」
憧「全くもうあいつは……」
玄「ふふ、でも穏乃ちゃんらしいね」
灼「外出てちゃったかな? じゃあ穏乃の分の料金玄が立て替えてね」
玄「えっ!?」
灼「恋人を遊び逃げ犯にしたくなかったから払って」
玄「う~、わかりました……」
和「やれやれ、先が思いやられますね」
憧「じゃあ和、元気で」
宥「風邪ひかないでね」
灼「機会があればボウリング教えてあげる」
和「はい。皆さんもお元気で」
穏乃「和、色々迷惑かけてごめんね」
玄「いっぱいお世話になっちゃったね。今度何かお礼をしないと」
和「いいえ、お二人が仲違いしないせず末永く幸せでいてくれるならそれで結構ですから」
穏乃「わかったよ」
玄「結婚式にはちゃんと呼ぶから」
和「出来ませんから結婚」
憧「そうだけど式挙げるだけなら出来るみたいよ」
灼「そうなんだ、覚えとこ……」
宥「この場合玄ちゃんがお嫁に行っちゃうのか、穏乃ちゃんがお嫁に来るのかどっちになるのかな?」
穏乃「私が嫁入りします! よく考えれば玄さん達も胸大きいですし、松実姓になれば私も大きくなるかもしれませんから!」
憧「ああ、まだ巨乳になるのは諦めてないのね」
和「ですから籍を入れられないんですから姓は変えられませんよ」
灼「けどいいの? 巨乳姉妹の中で一人だけまな板が混じってるって比較されるんじゃ……」
玄「もう~、おもちかどうかは関係ないって言った――」
憧「けど大きい方がいいんでしょ?」
玄「そりゃもう……あっ……」
穏乃「……」
和「穏乃?」
穏乃「くそぉ~! こうなったら鹿児島まで行ってやるぅ~!」
玄「待って~! 出来ればの話だから~! 贅沢を言うなら大きい方がいいなってだけから~!」
宥「玄ちゃん……」
憧「シズ~、そっち鹿児島と反対方向よ~」
灼「そういう問題じゃない……」
和「本当に大丈夫なんでしょうか……?」
カン!
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