「セレブリャコーフ少尉」
「はい、なんでしょう?」
「貴官は軍人になって後悔はしてないか?」
ある日、少佐殿にそう尋ねられました。
いきなりの質問だったので最初は何を仰っているのか理解しかねましたが、私の所属する第二〇三航空魔導大隊の指揮官であらせられるターニャ・フォン・デグレチャフ少佐はまだ年端もいかぬ幼女であり、自らの将来に不安を抱いているのだろうと察して、そのことを考慮した上で私はこう答えました。
「軍人にしかなれぬ者もおります故」
すると目を丸くした少佐殿は自嘲げに笑い。
「私のようにか?」
そう語る目の前の幼女の出自を、私は詳しく知っているわけではありませんが、ある程度のことは知っているつもりで話を続けます。
「少佐殿こそ今ならばまだ違う未来も……」
「ない。私の未来は運命付けられている」
「少佐殿……」
運命という言葉を用いて断言する少佐殿の美しい青い瞳を見つめていると、その視線に込められた覚悟の強さと儚さに居ても立っても居られず、思わず抱きしめてしまいました。
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「……なんのつもりだ、少尉」
私の胸に埋もれて、不機嫌そうに無礼を咎める少佐殿に反射的に謝罪しかけましたが、ここで離してなるものかとばかりに抱きしめる力を緩めずに苦しい弁明をしました。
「失礼。少々、立ちくらみが……」
「立ちくらみ、か。ならば、仕方ないな」
明らかに虚言であるとわかっているでしょうに少佐殿は私を支えるように抱き返します。
私がこの幼女を支えなければならないのに、やはり少佐殿には敵いませんね。強いです。
「少尉は軍人には不向きだと思っていた」
「自分でも向いているとは思いません」
「向き不向きなど、あてにはならんということだ。貴官は戦場で軍人となったのだ」
まるであやすように私の背を撫でる少尉殿。
だからそれは私の役目の筈なのに、ズルい。
どうにも悔しくて私は思い切り幼女の尻を。
「えいっ!」
ぎゅむっ!
「ふあっ!?」
デグレチャフ少佐のお尻は私の手にも収まるくらい小さくて柔らかくて、かわいいです。
「な、なな、なにゅを……!?」
「少佐殿のお尻を鷲掴みにしました」
「ひ、開き直るな!」
こうなったらとことん揉んでやりますとも。
両手を使って左右のお肉を均等に揉み解すことこそが、帝国軍人としての私の使命です。
もにゅもにゅもにゅもにゅ。
「ふあああああああっ!?」
おやおや、この幼女ったらまさかお尻で感じているのでしょうか。けしからんです。
教育上よろしくありませんね。まったく。
「少佐殿、気持ちいいですか?」
「い、今すぐ馬鹿なことをやめろ!」
「そのご命令には承諾しかねます」
よもや人生初の抗命をこんな場面で使うことになるとは。しかし、帝国軍人として。
少佐殿の副官として、一歩も引けません。
ぐにゅっ!
「っ……!?」
「痛かったですか?」
「い、痛くはない……」
「ならもう少し強く揉んでも平気ですね」
「やっ……もう、やめっ」
少佐殿ったらその気になれば私ごとき簡単に倒せるのに口ばかりでまったく抵抗しないところを見ると、そういうお年頃なのかも知れませんね。まだ早いです。おませさんです。
「少佐殿は幼女であらせられるのですから、もっと幼女らしい反応をしてください」
「む、無茶を言うな……!」
「お姉ちゃんもうやめて、と言ってくれたらやめてあげないことも無きにしも非ずです」
我ながら頭の煮えたぎったわけのわからない要求をすると、意外にも素直にこの幼女は。
「お、お姉ちゃん、もうやめて……?」
「っ!?」
もぎゅあっ!!
「うひゃああんっ!?」
おっと、私としたことが、つい我を忘れて。
いけませんね、帝国軍人たるもの如何なる時も常に冷静沈着であるべきなのに失態です。
「や、やめてって言ったのに……!」
「少佐殿が悪いんですよ」
なんですか、さっきの舌足らずな声音は。
あんなに甘ったれた幼女の囁きに耳朶を打たれた私の身にもなってくださいよまったく。
「次は、お姉ちゃんごめんなさい、です」
「お、お姉ちゃん、ごめんなさい」
「次は、お姉ちゃん大好き、です」
「そ、それはさすがに……」
渋る幼女に私は怖い顔をして詰め寄ります。
「少佐殿は小官のことがお嫌いですか?」
「……好き」
「私もターニャちゃんが大好きです!」
あー軍人になって良かった。私は幸せです。
「さて、少尉。茶番は終わりだ」
「へ?」
先程までとは打って変わって軍人モードとなった少佐殿。怒っているのでしょうか?
「何か気に触ることをしましたか?」
「この期に及んでそのような台詞を口にする貴官はつくづく大物の器であると保証しよう」
「えへへ」
何だかわかりませんけど褒められました。
私が照れていると少佐殿はやれやれとばかりに溜め息を吐きつつ、私の背中を叩いて。
「今すぐに私を解放したまえ」
「何故ですか?」
「単刀直入に言おう。便意を催したからだ」
ぐりゅりゅりゅりゅりゅりゅりゅりゅ~っ!
少佐殿の衝撃のカミングアウトと同時に鳴り響く空襲警報ならぬお腹の音。びびります。
到底、この幼女の可愛いポンポンから鳴ってはいけない音に、小官は恐れ慄きました。
「ああ、神よ……」
「しょ、少佐殿……?」
ショックから立ち直れずに呆然自失としていると、少佐殿は天を仰がれて怨嗟を吐き出しました。
「せっかく我が愛しき副官との甘いひとときを堪能していたというのに、クソッタレな存在Xめ! よし、わかった……いいだろう。そんなに幼女が糞をしている様が見たいのならとくと拝ませてやる! 刮目して見るがいい!!」
「ちょっ!? 少佐殿!?」
あらぬ方向へと進む最悪の結末をなんとか回避しようと私がお止めする前に少佐殿は。
「あ、あああ、あああああああっ!!!!」
ぶりゅりゅりゅりゅりゅりゅりゅぅ~っ!
それはもう、まさしく帝国軍人の鏡とも呼べるほどに見事な脱糞を目撃した私は思わず。
「フハッ!」
ああ神よ。愉悦に呑まれた私を赦したまえ。
「見るなっ! セレブリャコーフ少尉!」
「フハハハハハハハハハハハハッ!!!!」
デグレチャフ少佐ってば、おかしなことを。
見せつけたあとに見るななんて、無理です。
少佐殿がうんちを漏らした姿が、愛しくて。
「フハハハハハハハハハハハハッ!!!!」
狂ったように嗤う私を、どうか叱って。
頬を叩いて、正気に戻して欲しいのに。
私の愛しの上官はそっと労わるように。
「貴官なら自力で戻ってこれる筈だ。いつだって、そうして死の淵より帰還してきただろう? 戻ってこい……貴官の代わりなど存在しないのだ。私の大切な副官は、貴官だけだ」
はい正気に戻りました。無事帰還しました。
「やれやれ……私としたことが見誤ったな。貴官を心配するだけ無駄だったらしい」
小憎たらしい口調と表情でいつものように嘲笑する少佐殿の目尻に輝く涙のひと雫に、裏腹な上官の想いが込められているようで、私は死ぬまで、この小さな上官についていこうと決意を新たにしつつ、意見具申をします。
「少佐殿!」
「なんだ、セレブリャコーフ少尉」
「キスしてもよろしいでしょうか?」
「はっ」
そんな私の切実な想いを少佐殿は鼻で笑い。
「尻を洗うまで待て」
「っ~~~~~~!」
「なんだね、その顔は? 実に私好みだな」
こんな風に意地悪なお預けに堪らなくなってしまう私はきっと、少佐好みの帝国軍人として調教されているのでしょうね。光栄です!
【幼女便記】
FIN
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