西城樹里と支え合って (8)

アイドルマスターシャイニーカラーズ 西城樹里のSSです。

アイドルそれぞれにPがいます。

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どこかで見た覚えのある光景だ。

薄暗い舞台袖と、すぐ前には眩しいくらいのスポットライトに照らされたステージ。

ふと隣を見ると、よく知った少女が立っていた。

西城樹里、俺の担当アイドルだ。


「……次は準決勝か…。絶対カッコよく決めてやる……」


ユニット衣装に身を包んだ彼女が呟く。

その表情は不安と緊張に満ちていた。


「大丈夫。いつも通りやれば上手くいくよ」


そう言って俺は、微かに震えている樹里の手を取る。

彼女は一瞬慌てたがすぐに落ち着きを取り戻したようだ。


「カッコいいステージ、期待しているよ。俺もここで見守っているからさ」

「……ああ、見ててくれよ。バシッと決めてきてやる!」


手を力強く握り返される。さっきまでの不安な表情は無くなっていた。


「放課後クライマックスガールズ!! おーー!」


ユニットリーダーである小宮果穂の元気な掛け声に続き、樹里も光に照らされたステージへと駆け出してゆく。

そして彼女たちは……。

…………。

……。

「……じゅり……」

「ん、呼んだか?」

「……!?」


どうやら眠っていたらしい。

呼びかけに反応して目を開けると、樹里の顔が目の前に。

一気に意識が戻る。


「じゅ、樹里!」

「おわっ! 急に起き上がるなよプロデューサー!」

「あぁ……ごめん」

「ったく……ほら、喉渇いただろ?」


樹里が差し出してくれたペットボトルの水をとりあえず飲む。

えーと、今はどういった状況だ?

事務所のソファでうたた寝していたらすぐ隣に樹里が座っていた……?

……樹里は今の時間、レッスンじゃなかったか?

というか事務所に誰もいないし……。

……寝起きで頭がよく回らない。


「水ありがとう、樹里。……俺はいつの間にか寝てたんだな」

「そうみたいだな。アタシのレッスンが終わった後もずっと、だ」

「…………え」


慌てて時計を確認すると、樹里のレッスンが終わってから一時間以上経っていた。

これはマズイ…………樹里の顔を恐る恐る覗くと怒りの表情が明らかに窺える。

「ご、ごめん樹里! 今日のレッスン見に行くって話してたのに……」

「約束破りやがって。せっかく新しいダンス見せてやろうと思ってたのによー」

「うぅ……本当に申し訳ない……」

「…………ふふっ……あはははは!!」


怖い顔をしていた樹里が急に笑い出す。


「なーんてな! 冗談だよプロデューサー。そんなに怒ってねーよ」

「ほ、本当か!?」

「まぁ、レッスン見に来てくれなかったのはちょっと寂し……っ……ムカついたけどよ。アンタが最近疲れ気味だったの、知ってたんだ」

「樹里……」

「W.I.N.G.で優勝してからすげー忙しくなっただろ? 仕事頑張り過ぎてるんじゃねーかってさ」


W.I.N.G.か……。

さっき見た夢の続き、あの後彼女たちは準決勝と決勝を見事勝ち抜いて優勝を果たした。

こうして個性派アイドルユニット【放課後クライマックスガールズ】の名は業界に轟くことになる。

それと同時に雑誌やラジオ、テレビ……仕事の依頼が彼女たちに大量に押し寄せた。

アイドルそれぞれにプロデューサーが付いているとはいえ、山の様な仕事を少人数でこなすには無理をする必要があり……日々の疲れから今に至る。

「そっか……心配かけさせちゃってごめんな」

「べっ、別にアタシは心配なんて…………してたけど、さ」

「ん?」

「いつもアタシに休めー、とか言うくせに自分は全然休んでねーからさ。何かあってからじゃ遅いんだから、あんま無理すんなよ……」


隣に座っていた樹里がググっと近づいてくる。


「夏葉もチョコもみんな自分のプロデューサーと支え合って頑張ってる。アタシたちも一緒に頑張って、一緒に休んで、一緒に上を目指して……そうやって支え合っていこうぜ」

「樹里……!!」

「アタシたちはパートナーなんだからさ」

「……そうだな。俺たちはパートナーだもんな」

「へへっ♪」


歯を見せてニカっと笑う樹里はとても可愛らしかった。

この笑顔を裏切らないようにしないとな。

なんて事を思っていると、ぽすん、と俺の肩に樹里の頭が乗ってくる。

「……えーと……なんか近くない?」

「あ、あぁ……近いな」

「じゃあ離れ……」

「逃がさねーぞ。ほら、アンタもこっち寄れよ」

「……はい」


観念して樹里に体を預けると、彼女の体温を感じられた。

アイドルとプロデューサーの距離感にしては近すぎるが、そんな事どうでもよくなるくらい温かい気持ちになる。


「温かいな、樹里。すごく癒されるよ」

「……おう」

「照れてる?」

「照れてねーよっ!!」

「あっはははは!」

「ったく……」


ぶつぶつ言いながらも離れようとしない樹里。

彼女の優しさに心が満たされる。


「…………ありがとう」

「……ん。素直に癒されとけよな」


……結局この後、社長が戸締りしに来るまで俺たちは身を寄せ合っていた。

散々からかわれたのは言うまでもない。

~~~

~~


「樹里、そろそろ本番だ」

「おう! いつでもいけるぜ!」


あれから数週間後、今日は放課後クライマックスガールズが主役のミニライブだ。

舞台袖は本番前特有のピリピリした緊張感に包まれている。

樹里のコンディションはバッチリ。

ユニットの皆も自分の担当プロデューサーと最後の調整に入っているみたいだ。


「……プロデューサー」

「あぁ」


言わずともわかる。

樹里の手を優しく握ると、彼女も握り返してくれた。


「プロデューサー、アタシ頑張るからさ……ずっと一緒にいてくれよな」

「もちろん。俺は樹里のパートナーだ。ずっと一緒だよ」

「へへっ♪ ……じゃあプロデューサー、行ってくるぜ!」


アイドルが輝くステージへと羽ばたいてゆく。

彼女たちの物語はまだ始まったばかりだ。

終わりです。

樹里可愛い

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