モバP「どん兵衛のきつね食べてたら」  周子「こーん♪」 (50)

・書き溜めをどんどん投下していきます
・誤字脱字がありましたらすみません

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【事務所でどん兵衛作ったら―――♪】

~事務所~

モバP(以下、P)「」カタカタカタカタ

P「」グゥー

P「・・・小腹が空いたな。事務所に何かあったっけ」ガタッ


P「えーっと」ガサガサ


どん兵衛「」


P「おっ、一個だけ残ってた。ラッキー」

P「~♪」コポコポ・・・

P「あとは5分待つと・・・その間トイレにでも行ってくるかな」スタスタ

ガチャン


「・・・」


― 数分後 ―

P「ふぃー・・・・え?」

周子「」モグモグ

P「・・・・おい」

周子「ん? やっほー」

P「やっほーじゃないんだが。それ俺のどん兵衛だぞ」

周子「いや~、お出汁の良い匂いにつられちゃってさー」

P「・・・というか何で猫耳なんかつけてるんだ?」

周子「猫耳じゃないよ? 狐耳」

P「狐耳?」

周子「しゅーこちゃんの正体はなんと、どん兵衛きつねの妖精だったのです」

P「はいはい、どいたどいた」ズイズイ

周子「やーん♪」

P「まったく」ハァ・・・

P「さてと・・・・ってあれ、お揚げは?」キョロキョロ

P「なぁ周子、食べるときお揚げ入ってなかっt―――」チラッ
周子「」タッタッタッタッタ・・・

P「おまっ!? こら、待てぇっ!」

【どん兵衛の夏は刺激的(スパイシー)――――♪】



~事務所~

周子「・・・」

P「さっきからスマホ耳に当てて何してるんだ?」

周子「んー? これ聞いてた」

P「?」スッ

P「・・・・・・お、この声ってあの人じゃないか? ほら、最近結婚したって話題になった声優さん」

周子「らしいね」

P「らしいねって自分からかけたんだろ?」

周子「どん兵衛のキャンペーンだってさー。これなんだけど」スッ

P「【もう戻らない刺激的な夏を取り戻せ―――】?」

周子「ここの電話番号にかけると声優さんが青春っぽいセリフを言ってくれるんだって」

P「へぇー・・・・って周子は青春を思い返すような年齢じゃないだろ」

P「そういうのは俺くらいの年齢の人間が聴くもんだ」

周子「Pさんにもそういう時代あったん?」

P「失礼なやつだな・・・俺だって甘酸っぱい青春の一つや二つくらい・・・一つや二つ・・・・・・いや、一つくらいは・・・・・・」

周子「・・・」

P「・・・まぁ甘酸っぱいだけが青春じゃないし」

周子「女性声優バージョンもあるけど聴く?」スッ

P「うん・・・」プルルル・・・

P「・・・・・・・・・・・・・蘭子!?」

【あなたを見てると思い出す―――――♪】



P「うっめ、どん兵衛うんめっ」ズルズル

周子「」ジーッ・・・

P「なんだ?」

周子「・・・ううん、昔の事を思い出しちゃってさー」

P「昔の事?」

周子「うん――――――
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男の子『うめぇ、どん兵衛うめぇ!』ズルズル

『クゥーン・・・』

男の子『ん?』

子狐『クゥーン』ヨロヨロ

男の子『あ、子狐だ!』

男の子『君一匹だけ? 親とはぐれて人里まで降りてきちゃったのかな・・・』

子狐『・・・!』クンクン! クンクン!

男の子『ん?・・・あ、もしかしてこれの匂いにつられてきたの?』スッ

子狐『!』プンプンプン!

男の子『あはは、そんなに尻尾振っちゃって! そうか、お腹が空いてるんだね』

男の子『じゃあこのお揚げ食べる?』スッ・・・ポトッ

子狐『!』バクッ! タッタッタッタッタ・・・!

男の子『あっ』

子狐『』タッタッタッタッタ・・・ピタッ

子狐『』チラッ・・・



男の子『元気でねー!』フリフリ!


子狐『・・・』ジーッ
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周子「あの時の狐です」ペコリ

P「そんな経験はない」

【○ちゃんのきつね食べてたら―――♪】



~事務所~

P「腹減ったな」ガサガサ

P「おっ、どん兵衛発見~♪」

P「・・・ん?」チラッ


○ちゃん赤いきつね「」


P「・・・」

P「たまにはこっちにしてみるか」

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P「いただきま~す♪」ズルズル

P「うん、○ちゃんも美味いな」

カランカラン・・・

P「え?」チラッ

箸「」コロコロ・・・
周子「」


P「しゅ、周子!?」

周子「Pさん・・・それって・・・」プルプル・・・

P「あっ、いやっ! これは違うんだ! その・・・たまたまあったから!」アセアセ!

周子「・・・」

周子「・・・・・ううん、いいんだ」スタスタ

P「え?」

周子「たまには違う物にも手を付けたくなっちゃったんでしょ? その気持ち分かるよ」スタスタ

P「周子・・・」

周子「でもこれだけは約束して欲しいな・・・最後にはあたしの所に戻ってくるって」カラカラカラ・・・

P「!」

周子「綺麗な満月・・・月見そば食べたくなっちゃったな」フフッ


P「しゅうこぉぉ! 俺は・・・俺はぁっ・・・!」ウオーン!



ちひろ「早く仕事に戻ってくれませんか?」

【今年もどうぞよろしくね―――♪】


~事務所~

『今年も残すところ10分となりました。神社にはたくさんの参拝客が―――』

周子「うわー、寒そう」

周子「こういう日はやっぱおこたに限るよー」ヌクヌク

P「うぅ~! 寒い寒い!」タッタッタッタッタ・・・

P「ほら、どん兵衛作ってきたぞ!」

周子「おつかれ~♪」

P「うぅ~さぶっ! 何で俺が周子の分まで作らなくちゃいけないんだよ」

周子「じゃんけんで負けたんだから言いっこなしだよ?」

P「そうだけどさ・・・」

P「というか周子は寮に戻らなくてもいいのか? 今日女子寮で年越しパーティーがあるんだろ?」

周子「う~ん・・・ギリギリまでお仕事だったから中途半端に帰ってもね。それにまだ年越しそばも食べてないし」

P「だとしても年末にオッサンと二人でそば啜るよりは楽しいと思うけどな」

周子「そんな事ないよ。Pさんは面白いオッサンだから」

P「そうか。できればオッサンの方も否定して欲しかったけどな」

周子「逆にPさんは帰らなくて良かったの?」

P「え?」

周子「年末に実家帰ったり友達と集まったりとかさー」

P「実家も友達も県外だからそういうのはないよ」

周子「そっかー・・・・・・・じゃあ彼女とかは?」

P「彼女・・・?」

周子「そ」

P「・・・」

周子「・・・」

P「先週のクリスマス二日とも残業してた俺にそれ聞くか普通?」

周子「・・・・・・えっ!?」

P「絶対に分かってて言っただろ!」

周子「まぁまぁ、じゃあ今日はシューコちゃんが一緒にいてあげるからさ。こんな美人アイドルと年越しだなんて滅多にあるもんじゃないよ?」

P「自分で言うか普通・・・まぁそうだな。今年は周子と年を越せて幸せだと思う事にするよ」

周子「よ、この幸せ者♪」


『Happy New Year~~!!!! 明けましておめでとうございます!』


P「あ・・・そんな事やってる間に年越しちゃったよ」
周子「あちゃー、まだ年越しそば食べてないのに」

周子「今年もこんな感じであっという間に過ぎていくんだろうねー」

P「そうだな」

周子「今年もよろしくねPさん♪」

P「あぁ、こちらこそよろしくな」フフッ

周子「・・・あ、お正月って事はPさんからお年玉貰えるじゃん」

P「何言ってんだ。お年玉は高校生までだよ」

周子「Pさんのケチー」

【どん兵衛は汁も美味しいよ―――♪】



~事務所~

P「」カタカタ・・・

P(ついに明日が周子の・・・)

周子「Pさん」ヒョコッ

P「なんだまだいたのか。明日は早いんだぞ?」

周子「分かってるって。それよりさ、どん兵衛買ってきたから一緒に食べよー」ニコッ

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P・周子「いただきます」

P・周子「」ズルズル

P「周子とこうやってどん兵衛を啜るのも今日で最後か」

周子「週に一度くらいなら一緒に食べてあげようか?」

P「それは大丈夫です」ズルズル

周子「強がっちゃって~。シューコがいないと寂しいでしょ?」

P「・・・」ズルズル

周子「そこはなんか言おうよ」アハハ・・・

P「・・・麺伸びるぞ」

周子「そういうことじゃないんだけどなー」

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周子「・・・ふぅ」

P「ん、もう食べきったのか」

周子「まーね。でも今日はおつゆも飲んじゃおうかなー」グビッ

周子「」ピタッ・・・

周子「・・・・ねぇPさん」

P「ん?・・・ってカップ置けよ」

周子「今まで本当にありがとう。こんなあたしを最後までプロデュースしてくれて」

P「・・・」

P「なんだよ急に。らしくない」

周子「初めはいつもテキトーな事ばかりやって迷惑かけてきたと思うんだ。アイドル活動とか興味なかったしタダ飯とタダ宿もらえてラッキー、くらいにしか思ってなかったから」

周子「大概の人はそこで見限っちゃうんだろうけど、Pさんは見捨てなかったよね」

P「当たり前だろ」

周子「いやー・・・・嬉しかったぁ。人に必要とされることってこんなに嬉しい事なんだって、柄にもなく思っちゃったりしてさー」

周子「それからは心機一転!・・・とまではいかないけど、Pさんのために少し頑張ってみようかなーって。今まで目標とかって立てたことがなかったんだけど、『少しだけ頑張ってみる』。それがあたしなりの目標になったんだよね」

周子「その『少し頑張る』って目標が次第に『もう少し頑張る』、『もっと頑張る』になって今では『自分の限界を超えたい』とか思っちゃったりするからねー。まったくPさんは恐ろしい人だよねホント」

P「それは周子が自分で変わっていったんだ。俺はサポートをしただけだ」

周子「でも多分Pさんがいなかったらあたしアイドル続けてなかったと思うんだよね。Pさんだからここまで来れたんだよ」

P「・・・っ」

周子「だからさ・・・・シューコを変えてくれてありがとう」

P「うっ・・・うぅっ・・・」

周子「・・・」

P「すまん・・・こんな見苦しい姿を・・・」プルプル・・・

周子「あたし今お汁飲んでるから見えてないよ・・・うん・・・見えて・・・ないからっ・・・」プルプル・・・

P「そうか・・・」

P「なら良かった」ポロポロ
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― 数年後 ―



【一人でどん兵衛食べてたら―――♪】

~P宅~

P「zzz・・・・んあっ?」

P「ふぁ~、もう昼過ぎか」

P「昼飯は・・・コンビニにでも行くか」



~コンビニ~

P「」テクテク

P「おっ」

どん兵衛「」

P(懐かしいな~。そう言えばここ数年どん兵衛食べてないっけ)

P「・・・」
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―――――――――

― 数年前 ―
~事務所~

周子『やっほー、Pさん♪』

P『周子じゃないか。遊びに来てたのか?』

周子『みんなに招待状を配りにね』

P『あぁ、そうか』

周子『せっかく来たし久しぶりに一杯どう?』

P『久しぶりって先週飲んだろ? それに今は勤務中だ』

周子『ちがうよ、あたしたちの久しぶりの一杯っていったらアレしかないやん』

P『?』



周子『どん兵衛お待ちー』コトッ

P『おう、サンキュー』

P『そう言えば周子が作ってくれるのって何気に初だよな』

周子『そうだっけ? ま、最近料理の勉強もしてるからこれくらいはサクサクっとね~♪』

P『お湯入れるだけだぞ』 
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――――――――――――――――
―――――――――
P「・・・・狐の嫁入りか」


P「今頃何してるんだろうな。二人で仲良く店の手伝いとかしてるのかな?」

【夜にもどん兵衛食べてたら――――♪】



~P宅~

P「zzz・・・ふごっ・・・ん?」ムクッ・・・

P「・・・うわっ、もう夜かよ。せっかくの休みだったのに結局一日中寝てたのか」

P「晩飯買いに行かなくちゃ」チラッ


どん兵衛「」


P「・・・夜もこれでいいか」

コポコポ・・・

P「よし、と・・・・うぅ~、トイレトイレ!」タッタッタッ・・・

―――――――――――――――――――――――――
――――――――――――――――
―――――――――

P「ふぃ~・・・・・・・ん?」


「」チュルチュル・・・


P「・・・おい」

「ん? あ、ただいま!」




P「おかえり、それパパのだぞ」

娘「お出汁の良い香りがしてたからつい」テヘヘ

P「どっかで聞いたなそれ」

ガチャ・・・

「ただいまー」

P「おかえり」

「ただいま。晩御飯ちゃんと食べた?・・・ってどん兵衛じゃん」

P「あ、いやこれは・・・」

「自分で用意するから大丈夫って言ってたのは誰だっけー?」

P「あはは・・・」

P「それよりお義父さんの具合はどうだった?」

「ぜーんぜん平気。ギックリ腰で動けないって言うからお店の手伝いに行ったのに『孫の顔見たら治ってきた』だってー。まったく調子良いんだから」

P「そうか、なら良かった」

「あと『P君はいないのか』って残念がってた」

P「俺も行ければ良かったんだけどな」

「ライブ前で忙しい時期だし仕方ないって」

娘「パパにお土産あるんだよ!」

P「お土産? あ、お義父さんの所の八ッ橋か。俺好きなんだよ」

娘「ううん、違うよ」ガサガサッ・・・ゴトッ

どん兵衛「」

P「えぇ・・・」

「本当は持ってこようと思ったんだけど『これをやったらまたP君が来なくなるから』って」

P「そう来たかー」

「ま、それだけ会いたいって事だよ」

P「にしても京都のお土産がどん兵衛って・・・そこのコンビニでも買えるぞ」

娘「このどん兵衛は関西限定なんだよ!」

P「関西限定?」

「限定というか関東と関西のどん兵衛って使ってる出汁が違うんだってさ。関東がかつお出汁で、関西が昆布出汁」

P「へぇ、そうなんだな・・・じゃあせっかくだし食べてみようかな?」

「えー、晩御飯に食べるん~?」

P「いいじゃんか、俺どん兵衛の口になっちゃってるしさ」

「仕方ないなぁ・・・」

― 五分後 ―

P「いただきます」ズルズル

P「うん、確かに関東とは味が違うな。これはこれで美味い」

P「・・・ん?」チラッ


「ん~、昆布出汁のいい香り~♪」クンカクンカ
娘「ほんとだね~」スンスン


P(狐の親子・・・)



P「・・・少し食べるか?」ススッ

「いやいや、それはPさんのだし!」イヤイヤイヤ!
娘「パパのお土産だから!」イヤイヤイヤ!

P「そっか、じゃあ俺一人で食べ―――」
「まぁ、どうしてもと言うのなら」スッ
娘「少しだけ食べてあげるよ!」スッ

P「食べる気まんまんじゃないか。箸まで用意して」


「お揚げは半分こにしよっか?」
「うん、分かったー」
「いやいや! お揚げやるとは言ってないんだけど!?」



終り

~おまけ~

娘「お爺ちゃんのお店手伝ったんだ! カンカン娘だってー!」

P「カンカン?」

周子「それじゃあ怒ってる人でしょ。【看板娘】ね」フフッ

P「あぁ」

周子「あたしが子供の頃着てた着物を着て接客してたんだよねー?」

娘「おいでやすー♪」ペコリ

P「看板娘姿かぁ・・・きっと可愛いかったんだろうな~」

娘「色んな人に褒めてもらったんだよ!」

P「そうかそうか」ニコニコ

周子「・・・コホン」

P「?」

周子「あたしの看板娘も結構褒めてもらったけどねー? 一応元アイドルだし?」

娘「ママ色んな人に美人さんって言われてたよね」

周子「おおきにー♪」ペコリ

P「・・・まぁでも、看板【娘】って歳じゃないよなぁ」フッ

周子「・・・」

周子「これ明日のお弁当ね」ドンッ!
どん兵衛「」

P「えっ・・・?」

周子「」スタスタ

P「あの・・・冗談だよ? ねぇ、ちょっと!」

周子「知りませーん」スタスタ
P「ごめんって! 許してくれよ、な!?」スタスタ

娘「・・・」

娘「カンカン娘?」



終り

以上になります。最後までご覧いただきありがとうございました!

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