とあるシリーズのSSについて語り合うスレです!
SSについての雑談、愚痴などご自由に!
ただし、過度のキャラ論争やカプ論争は他の人の迷惑になる為、始まってもスルー推奨でお願いします!
また、自スレ批評を依頼するSS作者は酉などを用い自分が作者だと分かるようにしましょう!
批評してもらった場合は必ずお礼を申し奉りましょう!
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エロパロ
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SSWiki : http://ss.vip2ch.com/jmp/1531406668
>>39
そんなもんがアニメ化される世の中よ
大丈夫なのかね
>>40
かまちもヒットメーカーだった(過去形)から最後にひと稼ぎ、って算段だったんだろうね
問題は、企画に動いた頃にはすでに読者も冷め始めてて今となってはイタいくらいに需要が無いこと
・HOの頃はまだ「別作品もヒットするかも」という期待値があったからあっちをアニメ化に回して新規開拓しようとしたけど大爆死
・同時にブラッドサインとかぶーぶーとか新作も進めて信者に加え新たな新規を獲得しようとしたけど、こっちも鳴かず飛ばず
・結果的に「鎌池は禁書の一発屋」という枠になってしまい、電撃もSAOとか他の有望作品に力入れるようになった
・後は落ちるだけなのが目に見えたので、とあるプロジェクト(笑)と称し、テキトーに盛り上げて残ってる信者から絞って終わりの段階
・チャンロンコラボだのソシャゲだの金をかけない安い企画で間を稼ぎ、一方通行と超電磁砲も同時アニメ化で豪華に見せかける
ぶーぶーやブラッドサインもさっさと畳ませて不良債権の回収始めてるのが今だろ
禁書3期がここまでスベる、一方スピンオフがここまで見放されると思わなかったんだろうけど、当然の結果としか思えない
>>97
人によってはあれが美琴と一方通行の和解シーンに見えるらしいから驚きだ
>>100
「お前も加害者」はいくらなんでもなあ・・・
旧5巻から散々反省アピールしてきたのは何だったの?ってなるわ
それ以降は敵が悪党だからいくら毒吐いても無罪だっただけで、当事者に開き直ってるようじゃ性格腐り切ってる
新刊でも改めて、実験の時は「妹達を守るために立ち向かってきた美琴を」「いたぶって遊んでた」事が一方視点で認められてるんだが
そう認識してる上で「お前も加害者」「お前には謝る気はない」と言ってるんだから、ガチマジで真性クズとしか言えんわな
結局作者の中ではそういうキャラなんだろうけど、じゃあ一方通行を通して何書きたいのやら
いや、幻想殺しはメタ的にもジョーカー扱い(最近はそうでもないが)だけど、パワードスーツ()とか所詮は量産ガラクタだろ
浜面は100%主人公補正だけで乗り切るのがふざけてるとしか思えない
その上『滝壺だけのヒーロー』縛りガン無視で八方美人やり出した時点で、作者がヒーローオ○ニー我慢できなかったんだなあと溜息しか出ない
この「正真正銘のレベル0だぜぇ? 特別な力なんて何もないんだぜぇ?」「学力も低いし顔も悪いだろぉ? 不良だぜチンピラだぜぇ?」「そんなヤツでもたった一人の大切な人のためにヒーローになれるんだぜぇ?」「異能モノでこんなヤツが主人公とかスゲえだろ斬新だろぉぉ??」という逆張りしたナルシズムを全面に出したらそりゃ鼻につくに決まってんだろ
暗部編と少しだけで役目終えるべきだったんだよ。最初から場違いなキャラなんだから
>>311
アレイスターが諸悪の根源だとしても、一方通行が監視ヅラや復讐ヅラするのも噴飯モンだけどな
その役をやるには上条や御坂が善人すぎて、浜面は小者すぎるとしてもやっぱり「どのツラ下げてんだよ」感は否めない
>>314
悲惨なことにはならんと思うが、なんとなく食蜂のターン終わりそうな予感はある・・・
つか上条さんは女性陣のガチおめかしにリアクション薄いとか本格的に枯れかけてるな
禁書のアプリって正直今更すぎやせんか
あんでここまで読者減ってから動くと小一時間(略)
>>315
でも美琴も結局「悪を弾劾する」タイプのキャラじゃないしなあ
氏ぬほど悪い事したヤツに「おっしゃ。じゃあ氏ね」と言うのも結局悪人
とりあえずあの状況のアレイスターに「いや絶対許さん。子供犠牲になってもお前は絶望に塗れて氏ぬのが当然」とはならんだろ。いや、ちょっと前の一方通行なら言ったかもしれんが
あとあれは単純に上条を信頼してるから、上条がガチで助けようとしてるんだからガチで協力しようってだけじゃね
一方アニメも明らかに手抜きだと思うけどな
何よりストーリーが糞ゴミだからアニメの糞さに拍車が掛かってる
一方厨はあんな物で満足しているのか?
>>532
一方アニメは、絵だけ中途半端に良い一見で消費される最近のクソアニメそのまんまな印象
ぶっちゃけ、公式が「近年なろうがブームみたいだから、一方通行でそういう流行り路線の外伝作ろうZE☆」程度の考えで作ったスピンオフなんじゃないだろうか?という気さえする
それくらい「薄っぺらいストーリー「いかにも主人公に無双されるためだけにヒリ出された様な中身ゼロのチンケな敵キャラ」「主人公のイタい台詞ひとつにも顔赤らめる頭カラッポなヒロイン」のお約束3拍子
粗製乱造もここまで来たかとしか思えんわ
>>664
面白いのか?まぁ暇潰しにはなりそうだな
>>666
痛々しいで~
https://syosetu.org/novel/56774/161.html この辺とか
初まりは一通のメールだった。
それがパトリシアの全てを狂わせた。
送り主不明のメールを無警戒にも開いてしまったあの時から、パトリシアの運命は普通から外れた。
『第七回DEG』への招待状。
始まったのは7人の人間によるイギリス全土を舞台にした殺し合い。
正しく常軌を逸していた。
誰もが狂って、正常じゃなくなっていた。
生き残るために何だってしていた。
家族を、恋人を、友人を、見知らぬ誰かを、通りかかっただけの他人を護るために、本当に出来ることをした。
ある男はたった一人の人間を[ピーーー]ためだけに最新式対空ミサイルで300人の罪の無い一般人がのる飛行機を撃ち落とした。
ある母は隠れ潜んだ敵を[ピーーー]ためだけに致死率90パーセント越えの細菌をイギリスの首都、ロンドンにばら撒いた。
ある少女はわずかとなったタイムリミットに自暴自棄になって水道の水に猛毒を混ぜ込んだ。
どうしようもなかった、とパトリシアは思う。
今でもそう思う。
それぞれがそれぞれの最善を尽くすために戦って、抗って、願って、それでも――――――。
それでも、終わらなかったのだから。
曰く、『さぁ、FDEGを始めようか』。
七分の一の、四十九分の一の生存者。
欧州全土を1000年は再起不可能なまでに破滅させた終滅の第四物語フォースストーリー。
そのメインテーマは『犠牲』。
その系統は『デスゲーム』。
そのタイトルは『とある少女の喪失話譚』
そしてラスボスの役割ポジションを担っていたのは、
「………………………人類絶対悪ビースト」
人類絶対悪ビーストと呼ばれる存在達がいる。
『人類』という種に対して『絶対』的な『悪』を為す存在達。
国際連合によって秘密裏に認定された最重要指名手配EX存在。
現在の世界では17の存在がその認定を受けている。
人類絶対悪ビースト位階総序列第一位Ⅰ。
『悪意』の悪徳を体現する人類絶対悪。世界で起きる大事件の半数以上に関わっているとされる地球誕生以後最悪にして最低の生命。罪状、第一次及び第二次世界大戦の扇動、シチリア島沈没事件の実行、世界最悪のテロ組織『国境なきテロリストTerroristes Sans Frontières』への『皇帝イワン』密輸未遂、マダガスカル島両断の実行など。
人の不幸を嗤い、悲劇に耽美し、涙を流す人間を観劇する、初まり罪に犯されし絶対悪。
本名は不明、それ故に仮称が『根源悪ディープ・ブラック』。
何をしてでも滅すべき、人類の敵。
人類絶対悪ビースト位階総序列第二位Ⅱ。
『欲望』の悪徳を体現する人類絶対悪。人の願いを欲望のままに叶え、その失敗を嘲笑することを生き甲斐とする人外。罪状(なお全て間接罪)、地球温暖化の実行、一秒の定義の改竄、現行科学を遥かに凌駕した超超々越兵器『亜空の使者』の創造など。
欲望を叶えるだけ叶えてその責任をとらない、他の人類絶対悪ビーストからすら嫌われる最低の絶対悪。
故にその名は『ガイア・ジ・アース』。
星が生み出した、星の癌。
人類絶対悪ビースト位階総序列第三位Ⅲ。
『終焉』の悪徳を体現する人類絶対悪。過去現在未来に存在し得る全ての可能性を全て観測し、あらゆる『終わり』を現実にできる天才を超える天災。罪状(一切の証拠無し)、最低でも1870人の才人の廃人化、人口衛星USA-224墜落事件の実行、パリ全インフラ停止事件の実行、インペリアルパッケージ強奪未遂など。
あらゆる全てをすることができ、あらゆる全てを識っている全能の絶対悪。
故にその名は『木原五行』。
木原一族の最高傑作にして、最大の失敗作。
人類絶対悪ビースト位階総序列第四位Ⅳ。
『錯乱』の悪徳を体現する人類絶対悪。人が混乱し、混迷し、理不尽に必死に抗う様を高みから見ることで優越感に浸る、人間の根幹にある感情を最も端的に表す人間達。罪状、国際宇宙ステーションISSクラッキング事件の実行、全世界同時多発的海底パイプライン切断事件の実行、三原色喪失事件の実行など。
柔軟な発想と存在しない禁則をもって人に仇為す最悪の災厄、他者の努力と対策を嘲笑う絶対悪。
故にその名は『原初たる混沌宇宙』。
誰にも制御することのできない、破滅快楽主義者の集まり
ビースト位階総序列第五位Ⅴ。
『代替』の悪徳を体現する人類絶対悪。唯一にして絶対の『人が人形になった存在』であり、量子学的にゼロパーセントと断言されたはずの『完全な人形』の完成品。人形村の人形師達が辿り着いた、夢想の夢の産物。罪状、四十三カ国の指導者たちの拉致及び殺害、数多の国の政治家に成り代わったこと、ロシア連邦核ミサイル発射未遂事件の命令など。
本物となることのできる影、見破れない嘘、見分けの使い偽物、今あなたの隣にいるかもしれない最も身近な絶対悪。
故にその名は『人形ひとかた人形にんぎょう』。
この世で唯一の、完全なる人形型人間アリス。
人類絶対悪ビースト位階総序列第六位Ⅵ。
『殺人』の悪徳を体現する人類絶対悪。その魂魄に『殺人因子』を宿し、己が性質に従って無限の殺戮を繰り返す名を喪った殺人鬼の組織。罪悪感も罪責感も感じず、時に享楽をもって、時に悲哀をもってただただひたすらに殺し尽す血みどろの悪。罪状、第二次世界大戦における人道に対する罪(多数)、中国における民衆大虐殺事件の後押し、滅亡級魔術致死病療666ウイルス発動未遂など。
歴史上最も多くの同族を殺した、絶対に和解することのできない絶対悪。
故にその名は『不思議の国の御伽噺フェアリーテイルワンダーランド』。
史上最も多くの人間の殺戮した、人殺しの組織。
人類絶対悪ビースト位階総序列第七位Ⅶ。
『救済』の悪徳を体現する人類絶対悪。魔術という神秘を極め切り、究め切り、窮め切った白痴の賢人。かの『黄金』すら上回る、魔術の基礎の基礎、魔術体系そのものを確立した始祖にして原初の魔術結社マジックキャバル。罪状、南極大陸地脈枯渇事件の実行、冥王星準惑星降格の主犯、小規模な世界法則改竄による科学法則に対する反逆など。
人を救うことに執着した結果人を滅ぼすという結論に辿り着いてしまった、最も優しき絶対悪。
故にその名は『断罪の七大罪』。
変えられない現実を前に嘆き狂ってしまった、英雄の成れの果て。
>>670
人類絶対悪ビースト位階総序列第八位Ⅷ。
『異端』の悪徳を体現する人類絶対悪。人の身でありながら神に成り代わろうとし、歴史を、因果を、当たり前を覆す、『黄金』と同等の魔術組織。そのあまりにも苛烈で過激で加虐な思想から地球上全魔術組織から『異端認定』を受けた最悪の魔術組織。罪状、老若男女879520人を用いた魔術的人体実験の実行、既存の魔術体系に対する反逆、十字教三大宗派本部襲撃など。
神を求めるがあまり神をすら[ピーーー]、本末転倒な組織。
故にその名は『大いなる業の憲章アルス=マグナ=カルタ』。
凡ての神を否定する、黄金の錬金術師の魔術結社。
人類絶対悪ビースト位階総序列第九位Ⅸ。
『虐待』の悪徳を体現する人類絶対悪。無意味に力を揮い、無作為に命を消費し、無駄に血を流す、残酷で残虐で残忍なテロ集団。世界各地でテロ行為を行う目的の全く見えない組織。罪状、善悪最終生存戦争ファイナルデッドエンドゲームの表向きの首魁、スレブレニツァの虐殺及びジョージア民族浄化等多数の虐殺事件の扇動、他の人類絶対悪ビーストに対する人員、武器、殺人ノウハウ等の輸出など。
人の数を減らすことそのものを目的とした人間の形をした異星人エイリアン、会話は出来ても話の通じない絶対悪。
故にその名は『国境なきテロリストTerroristes Sans Frontières』。
自らの心しか信じない、極悪非道な絶対正義。
人類絶対悪ビースト位階総序列第十位Ⅹ。
『復讐』の悪徳を体現する人類絶対悪。人類史史上最大の謎といわれる『幻想島フィクションアイランド』の謎の答えを探すためだけに生きているたった5人のダークヒーロー。罪状(なお全て間接罪)、ベルリンの壁再建事件の教唆、米国所属空母ロナルド・レーガン強奪事件教唆、ストックホルム大炎上事件教唆など。
命の尊さを他の誰よりも知っていながら、己のエゴで人殺しを強要する善の皮を被った絶対悪。
故にその名は『復讐同盟』。
誰かの復讐を教唆する、外道の集まり。
人類絶対悪ビースト位階総序列第十一位Ⅺ。
『冒涜』の悪徳を体現する人類絶対悪。生命というモノを完全に理解し、命を、魂を、魂魄を、生きるということそのものを数式化した空前絶後の大天才。そしてその天才性を誤った方向に成長させた未曽有の大天災。罪状、ラスベガスゾンビ出現事件の実行、複数の死体を繋ぎ合わせた新生命体『ドリット・メンシュハイト』の制作、全世界同時生放送での人体解体の実行など。
死を恐れるがあまり死を拒絶した、人類最後の夢である不死を現実にした絶対悪。
故にその名は『死体繋したいつなぎ屍しかばね』。
終わりを終わりで終わらせない、永遠の呪いを与える屑。
人類絶対悪ビースト位階総序列第十二位Ⅻ。
『進化』の悪徳を体現する人類絶対悪。人でない故がに存在する永遠の時間をもって自己進化を繰り返し、ついには開発者自身ですら制御不可能になった0と1の産物。罪状、G7各国全インフラ一斉混乱事件の実行、多数の国家の機密情報の外部流出の実行、新生命体『シュタール・ゲシュペンスト』の創造など。
人でないが故にどうあっても人を理解できない、無限の平行線の果てにいる絶対悪。
故にその名は『電脳生命体α』。
人の傲慢が生み出した、電子の怪物。
人類絶対悪ビースト位階総序列第十三位XIII。
『蒐集』の悪徳を体現する人類絶対悪。物欲に支配された、最も人間らしき集団。奪い、盗み、集め、観賞し、そして満足する甚だ迷惑な強盗集団。罪状、霊装カーテナ=セカンド強奪事件の実行、紀元前観測断絶事件の実行、三原色喪失事件の実行など。
盗むことに特化した、この世の全てを不確かにする絶対悪。
故にその名は『極悪博物館』。
積み重ねてきた歴史をすら盗む、断絶した資料館。
人類絶対悪ビースト位階総序列第十四位XIV。
『暴力』の悪徳を体現する人類絶対悪。子供のお使いから大規模テロの鎮圧、要人警護、ゴーストライター、無差別殺人、戦争行為、大虐殺、暗殺まで依頼されればなんでもこなす傭兵組織。罪状、ホワイトハウス襲撃事件の実働部隊、スエズ運河封鎖事件の実行、魔科学融合兵器『FAMSFusion Arm of Magic and Science』の開発など。
あらゆる行為の前提条件に『暴力』が存在する、血の雨の中でしか生きられない絶対悪。
故にその名は『悪意と殺意の傭兵団デッドエンドレッド』。
善も悪も同列に扱う、大戦が生み出した負の遺産。
人類絶対悪ビースト位階総序列第十五位XV。
『選別』の悪徳を体現する人類絶対悪。自分たちに都合の良いことだけを信じ、自分たちに都合の悪いことは一切聞く耳を持たない永遠の弱者。罪状、善悪最終生存競争ファイナルデッドエンドゲームの補佐、偽最終審判判定未遂事件の実行、陸海往来断絶事件の主犯など。
なまじ力を持ったばかりに世界を見なくなった、成長できない子供のままの絶対悪。
故にその名は『聖なるカナン』。
神に選ばれた使徒を自称する、自意識過剰な現実逃避者。
人類絶対悪ビースト位階総序列第十六位XVI。
『廃頽』の悪徳を体現する人類絶対悪。便利になった現世界よりも不便だった過去を尊ぶ時代遅れの老害。反論できない詭弁と反論を許さない欺瞞で正論を煙に巻く、回想に浸る集団。罪状、全国家一斉インフラ停止事件の実行、超広域電磁パルスEMP攻撃未遂事件の実行、文明のゆりかご再誕事件の実行など。
現代の人類を否定する、積み重ねてきた歴史を否定する絶対悪。
故にその名は『神時代へ逆行する古代人』。
過ぎ去った栄光に縋りつく、置いていかれた古代人。
人類絶対悪ビースト位階総序列第十七位XVII。
『偽悪』の悪徳を体現する人類絶対悪。まだ誕生していない唯一の人類絶対悪ビースト。誰かのための自己犠牲で人の歩みを阻害する、高貴な者の義務ノブレス・オブリージュを理由に全ての責任を被る、傷つきながらも笑う悪。罪状、彼は罪を犯した、彼は罪を犯した、彼は罪を犯したなど。
しなくてもいいことをして誰かの成長を妨げる、正義の皮を被った絶対悪。
故にその名は『上×勢力』。
存在しない8つ目の罪の象徴、平和のための尊い犠牲。
人の生み出した、人の業。
>>671
以上、十一の組織と三の人外、三の人間をもって全人類絶対悪ビーストとされた。
この絶望こそが、パトリシアのような主人公ヒーローが戦うべき最終敵ラスボスであった。
「人類絶対悪ビースト、かぁ…………」
とはいっても第四物語フォースストーリーの主人公ヒーロー、誰も救えない英雄ガラクタヒーローパトリシア=バードウェイといえども全ての人類絶対悪ビーストに関わったことはない。パトリシアが関わったことがあるのは善悪最終生存戦争ファイナルデッドエンドゲームの時に敵対した国境なきテロリストTerroristes Sans Frontièresと聖なるカナンと極悪博物館の連中、そしてそれが『完結』した後の世界を旅する間に出会った断罪の七大罪、不思議の国の御伽噺フェアリーテイルワンダーランド、電脳生命体α、復讐同盟の連中くらいだ。
それも結局パトリシアはどの人類絶対悪ビーストも殺しきることができていない。
それはパトリシアが弱いからではなく、人類絶対悪ビーストが強いからではなく、世界に護れている、『加護』がある状態の登場人物キャラクターは条件が調わないと勝負すら出来ないからだ。
だから、
「…………………やっと終われるよ、お姉さん」
だから、パトリシアは微笑む。
確信していた。
やっと、ようやく、ついに、『物語』が『始まった』。
七連物語セブンスストーリーズの第七物語セブンスストーリー、全ての物語を本当の『完結』へ導く最後の物語ファイナルストーリーが始まった。
これで人類絶対悪ビーストが持っていた『加護』は消える。人類絶対悪ビーストの絶対性はなくなる。勝てるようになる。
本当に、やっとだ。
待っていた。
待っていた。
ずっと、待っていた。
この瞬間を、この時間を、このトキを。
「私はきっと、お姉さんたちと同じ所にはいけないけど」
呟く。
語る。
話す。
灰・色・の・墓・石・の・前・で・パ・ト・リ・シ・ア・=・バ・ー・ド・ウ・ェ・イ・は・涙・を・流・さ・ず・泣・い・て・い・た・。
「それでも、ね」
天国や地獄の概念を信じているわけではない。善行を為したモノは楽園へ行き、悪行を為したモノは煉獄に堕ちる。そんなことを盲信しているわけではない。
しかしやはり自分のようなゴミクズと姉のような指導者が同じ場所に行くのはおかしいとパトリシアは思うのだ。
努力すれば成果が出る。怠惰ならば成功しない。当然のことだ。
だから、仮に死後の世界があっても転生しても自分と姉が出会うことはない。
パトリシア=バードウェイという少女は罪を犯し過ぎた。
パトリシア=バードウェイという女はあまりにも弱すぎた。
パトリシア=バードウェイという個人はどうしようもなく愚かだった。
「全部終わったら、少しくらいは褒めてほしいかな」
だから、パトリシアは泣く。
この戯言が姉の魂に届いていないことを、願いながら。
矛盾した言動で、泣く。
十七の人類絶対悪ビースト。
人類が人類である限り避けられない、滅亡の使者。
終焉の擬人化、破滅の具体化、絶望の具現化。
彼ら彼女らが斃すべき、『悪』の御名。
こんな感じが延々続く
私はいつも一人だった。
だから願った。愛されたいと。
私は多くの人から愛された。
だから思った。一人がいいと。
そして私は独りになった。
だから悟った。これが幸福だと。
――――――二九七
それでも僕は、明日が欲しかった
裏お茶会~1周目~
崩れ落ちる上条ヒーローの身体を睥睨しながら、230万の死体で溢れる学園都市の中で僕は溜息をついた。
「わりと、期待してたんだけどね……」
言葉にすることで僕は僕自身の考えを再認識する。
そう、期待していた。本当に期待していたんだ。
上条当麻なら、あるいはこの僕を上回ることが出来るかもしれない、と。
「いや、……矛盾だな」
僕の世界の人類を護るためには、いずれ上条当麻は必ず[ピーーー]ことになる。それが早いか遅いかの違いだ。
「…………遅かったね、アレイスター」
「殺したのか」
「どのみち、間に合わなかったさ。彼はあまりにも遅すぎた」
男にも女にも、子供にも老人にも、聖人にも囚人にも見える『人間』、そう評されるアレイスターの方に視線を投げかけて、僕はこの全てが終わった世界を見通す。
70億の、そして数百の死体しか存在しないこの世界でただ1人、僕だけは違うから。
結局すべてが絵空事の虚言でしかないと知っているから。
「それを分かっていたからこそ、君も滅亡齎す七の子羊セプテム・アニュスの対策を発動させなかったんだろ」
「あの程度の術式に気付けないのならば、どのみちヤツは救済者ヒーローには相応しくないだろう」
「随分な言い様だ……。君の、君達の主人公ヒーローだろう?」
「違うな。私達の主人公ヒーローは彼ではない。上条当麻だ」
「厳しいね……。彼だって、僕がいる中頑張ってると思うけど」
「結果世界が滅んだが?」
「……………………もう少し、サポートしてあげれば良かったのに」
フラグが立たなかったのは確かに上条の責任だが、たった1回で完全な救済を為せだなんて難易度が高すぎるだろう。今回は解決しなければならなかったことが多すぎる。瞬を倒して、蜜蟻をどうにかして、学究会防衛作戦を成功させ、咎負虐殺を止める。
そんなの無理だ。
僕だって、サポートなしで出来るとは思ってなかった。
「それは」
「呼ばれてないのにじゃんじゃじゃ~~~ん!!!」
空から純正の人類絶対悪が降ってきた。
「五行……。今結構重要な話してたんだけど」
「あぁ、あぁ、あ~あ。まさかこんな結末になっちゃうなんてなぁ~」
「聞けよ」
いや、五行が人の話を聞かないのはいつものことなんだけど、今だけは邪魔しないでほしかった。アレイスターと一対一で、互いの本当の立場を曝け出して話せるのなんて、今ぐらいしかないだろうから。
「木原五行、全能存在パントクラトールか」
ほら話が次に移った。
「……………はぁ」
僕の隣に立つ少女を見て、アレイスターが言った。
当然、調べられている、か。
「くきっ、くききッ!!!ま~さっか!第六物語シックススストーリーの主人公ヒーローが死んじゃうなんて。フラグの立て方ミスっちゃった?」
「あぁ、ラスボスとの交戦フラグを立てないでサブイベントに入れ込んだんだ。馬鹿なことにね」
「くきっ!なら私のしたことの意味がなくなっちゃうな~。せっかく、第七物語セブンスストーリーの主人公ヒーロー連れてきて物語交錯クロスオーバーさせてあげようと思ったのに」
わざとらしい口調でアレイスターを挑発する五行を僕は止められない。権限自体は僕の方が上だし、立場も僕の方が上だけど、物語を進める役トリックスターの自発的な動きを止めることは僕には出来ないし、しようとも思わない。
そういう称号キャラクター性の持ち主の行動はどのみち止められないモノだし。
「ふん、たかが全能如きが私と の話を邪魔をするのか」
だいたい、物語を進める役トリックスターは自由だからこそ意味があるんだ。
「くきぃ!たかがっ、たかがだってさリーダー!……このあてをたかがだなんて、さすがにムカつくかなあああああああああああああ!!!!!」
だからほら、また勝手に手の内を晒す。
「超克科学オルディニスクレアーレ――――――完全無欠ウルトラ、十全十美スーパー、常勝不敗アンリミテッド、絶対究極パーフェクトガール、故に私は全知全能の絶対神イズミー!」
超克科学オルディニスクレアーレ。覚醒ブルートソウルした極点突破者デスペラードのみが使う事の出来る世界物語キャラクターストーリー理論の最終到達地点。人類最終到達地点候補生たちの目指すべき場所。
といっても今回五行が使ったのは見る限りただの即興術に過ぎないのだけれど、出来れば勝手に使わないでほしかったなぁ……。
「あれ?発動しない……?……うん?」
まぁ、当然邪魔されるんだけど。
「全能の逆説オムニポテント・パラドックス。……まさか知らないわけではあるまい」
二言だった。そして、その事実がアレイスター=クロウリーという魔術師にして科学者の強さを示しているんだ。
「……ぶ~、つまんなぁ~い」
がっかりと肩を下げて、興がそがれたように超克科学オルディニスクレアーレの発動を止めた五行。まさか、全能の逆説オムニポテント・パラドックスを、全能者は全能であるが故に全能ではないという一学説を忘れたわけではないだろうに。
いや、五行のことだから本当に忘れていたのかもしれないけど。
「殺しちゃう?殺っちゃう?ねぇリーダー!」
「落ち着けよ五行。いや頼むから落ち着いてくれ。だいたい彼を殺したところで」
空から剣が降ってきた。
「死を晒せよ、侵略者インベーダー」
そんな声と共に、全長数十キロメートルにもわたる長大な剣が五行の脳天に向かって振り下ろされる。誰が、どうやって?そんな疑問が浮かぶ……、
「痛い」
だなんてことは当然なかった。
当たり前のことだ。僕は知っている。僕は識しっている。その剣がどんなもので、その剣を操るのが誰なのかを。
「痛い痛い痛い!痛いよリーダー助けて!」
「はいはい。ちょっと待ってろ」
剣が直撃してるのに傷一つついてないくせにそんな泣き言を言う五行に呆れながら僕は軽く剣に触れる。それだけで、剣は消え去る。
干渉。
無限に修正され続ける罪深き世界5Re:worldbreakerを使う僕からすればこの程度のことは当然だ。
「出てきなよ。いるんだろ?」
「無傷か」
いつの間にかアレイスター=クロウリーの隣に立っている男を僕は知っている。
「右方のフィアンマ。あいつの下位互換程度が今更何の用?というか、この大絶滅リセットから生き残ってたんだ」
「……俺様も舐められたモノだ」
僕のあからさまな挑発に、右方のフィアンマはあからさまに怒りを見せた。まぁ、下位互換と言われていい気になるような人間はいないだろう。
「あいつ、それって僕様のこと言ってるの、主あるじ?」
そいつは右方のフィアンマと同じように突然現れた。
これで3VS2。
「『神の代行人』GE13か」
「……下位互換程度が僕様に話しかけるなよ。ウザいんだよ代替品」
GE13が右方のフィアンマを睨みつける。仕方がない事とはいえこの2人は相変わらず相性が悪い。といっても聖なる右を持つ右方のフィアンマが『神の代行人』であるGE13の劣化レプリカなのは周知の事実だ。そして自分の劣化レプリカ、クローンのようなモノが勝手に造られたというのは確かに気分の良いモノではないだろう。
「なんだ、還してほしいか?GE13オリジナル?」
誰が見ても分かるくらい上から目線だった。
その挑発には、当然GE13は耐えられない。
「――――――調子にっ」
「やめろ」
だから僕は止めに入った。やれやれ、いくら『核』が固まっていないとはいえ、安易に行動するのはやめてほしいモノだ。
「あひゃひゃ!怒られてやんの~!」
「……主」
縋るように目を向ける13を、それでも僕は静止する。
「13、別に聖なる右を使われたところで君がオリジナルであるという事実は揺らがないさ。だから簡単な挑発に乗るなよ。……まだ、底を見せるな」
「了承したよ、主」
底が知られても強さが変わらない先住民センチネルにとって強さを示すことは恐怖ではない。彼らの強さの限界点は1度知られている、だからこそその『上』にいけるんだ。底が暴かれれば弱くなる僕ら侵略者インベーダーとは違う。僕らは安易に力を晒せない。そうすれば、終わってしまうから。
「それにしても、本当に君達はこれで良かったのかい?」
「何がだ」
「大絶滅リセットで利するのは言うまでもなく侵略者インベーダーたる僕らだ。先住民センチネルたる君達からしたら、大絶滅リセットだけはどんな手段を使っても回避したかったんじゃないのかい?」
少しの沈黙の後にアレイスター=クロウリーが口を開いた。
「ある意味ではそうかもしれない」
肯定が返ってきた。
「だがある意味ではそうではないだろう」
否定も返ってきた。
そして後に続くように右方のフィアンマが言った。
「俺様達ももはや純粋な先住民センチネルとは言えまい。ならば妥協はするべきだ、というのが俺様達の出した結論だ。大絶滅リセット程度ならば、完全閉鎖アーカイブスルーや中断事象リアルが起きないのならば、やりようはいくらでもある」
「ふぅん……そう。だったらまぁ、初お披露目はこの程度でいいかな」
そう言って僕は、諦めたように言う。そういうしかないから、言う。
「愛し子よMary、愛し子よMary、僕の愛するMy fair愛しき世界よMary Sue。
その運命を改変しておくれCambiare il destino、
その物語を書き換えておくれFare una storia。
我が神のお望みとあらばWenn es meines Gottes Wille、
我らが神のお望みとあらばWenn es unsere Gottes Wille、
過去など無いに等しいのだDie Vergangenheit ist vorbei。
すべての可能性を内包した書の中でO mundo onde há esperança e o desespero
ただ一つの意志のみがEle destruiu何もかもを無に帰すのだo mundo」
何度も言ってきた初めての詠唱を、僕は紡ぐ。
「絶対不変の絶対法則アンチェンジナブルラウ――――――無限に修正され続ける罪深き世界5Re:worldbreaker」
「さあ、やり直そうか」
「次は、失敗しないようにね」
一つ言っておこうか。
愛がないのならば、この物語の真実には辿り着けない。
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『空白の主』とアルフ① 仲間
ここはどこでもないどこか。どこかにあるどこか。世界のどこにも存在せず、観測されず、けれど確かにそこにある。そんな真っ白な場所。
初まりの領域。
「からからから。一件落着十一った十五六か七」
その場所で一人の女がワラッテいた。
その女の名前は『空白の主』。もちろん真の名前は、真名とでも言うべき別の名前はきちんと存在する。だが、それを知っている人間は世界のどこにも存在しない。
今の世界にはどこにもいない。
「すべ十が全部予定通りの筋書き通り。からから、本当二すご一ね、あ一つ八」
その声にこたえる人は誰もいない。その声を聴き届ける人は誰もいない。
『空白の主』は独り、初まりの領域にただ独りですんでいた。
『空白の主』以外誰もいないはずの空間。『空白の主』以外誰も存在しないはずの場所。
だから、『空白の主』はしゃべり続ける。
「絶対能力進化実験零べル四ッ九ス四フ十。一方通行ア九セラ零ータ。『神』。……からからからから!!!何も、なーん二も知ら七一んだね。一つの物語第一章が終わり次の物語第一章が始まるの二」
「なら、次は私が動く番deathですか?」
いきなり、
いきなり、いた。
『空白の主』以外のの誰も存在しないはずの初まりの領域に。
誰もいなかったはずのその空間に。
誰も存在しなかったはずなのに。
「おや、珍四一ね。君が五五二来る七ん十。『最終血戦城カス十ルル・ブラン』の方八一一のか一?」
「いいdeathいいdeath。どうせそろそろ準備をしなければならないdeathし」
その人物は驚くべきことに『空白の主』と親し気に話をしていた。友好的な関係になどなれるはずがない『空白の主』と親し気に。
つまり、初まりの領域に突如として現れたこの人物はすくなくとも『空白の主』が友好関係にならなければならない人物であると推察できる。
「からから。次の次の次だったっけ?君が物語に絡んでくるのは?」
「そうdeath。次の次の次、第二章の侵食される日常聖域ディスピアザサンクチュアリdeath。私が動くのは。今日はその前に挨拶をと思ったのdeath」
「相変わらず義理堅一ね、アルフ。そ零が君が君たる由縁なのかも四零七一」
アルフ――――――と『空白の主』はその人物のことをよんだ。アルフの恰好は一般的に見ればかなり異質で異形、そう思えるようなものである。
全体の色は黒で統一されている。黒のスーツ、黒のズボン、黒のマント、黒の指輪、黒の靴、黒の髪、黒の手袋、黒の襟、黒のモノクル。
その中で唯一黒以外の部分は露出された顔のみ。白い肌、紅い唇と瞳。
そのすべてが、彼が、アルフが人間では無いという事実を示していたが、その事実をもっとも端的に示しているのはアルフの恰好では無い。その雰囲気である。
夜闇のように黒に染められた格好よりもなお深く、アルフの雰囲気は陰鬱としていた。墨汁よりも漆黒に、暗黒よりも純黒に、この世のすべての悪を凝縮したようなその黒がアルフが人間でないというただ一つの事実を指し示していた。
『空白の主』と同じように。
「七らちょっ十復習二付き合っ十九零七一か七?今回の絶対能力進化実験零べル四ッ九ス四フ二十の件二つ一十」
「いいdeath。私もただあなたに会うだけでは味気ないと思っていたのdeath」
そうして、人類ではない二人の生命体は今回の出来事について話し合いを始めた。といっても、彼彼女にとってこの話し合いは復習以外の意味を全く持たない。上の位相を話など、彼彼女はすべて把握しているのだから。
極々一部分は例外となるが。
「そうだね。なら、あ零十かどうか七。一方通行ア九セラ零ータが『魔神化』四たプロセス十四十発動三せた魔術十か。代償八大き一け零ど、正式七モノ七ら私達の域まで来零る可能性があるかも四零七一」
「十三夜の星カウントサーティーンdeathね。地・脈・や・龍・脈・を・代・償・に・捧・げ・る・必・要・は・あ・る・d・e・a・t・h・が・確・か・に・あ・れ・な・ら・ば・私・達・の・領・域・に・来・れ・る・か・も・し・れ・な・い・d・e・a・t・h・」
「厳密二八違うが、天使の力十零ズマ十言一換え十も一一ね。あ零八、人間から四たらた一四た違一は無一だろう四」
十三夜の星カウントサーティーン。
地球と呼ばれる位相世界で風紀委員本部セントラルジャッジメント委員長白白白は一方通行アクセラレータが発動させた魔術を十三夜の星カウントサーティーンの簡易版として一夜の輝きミッドナイトブルースカイと名付けたが、『空白の主』とアルフの二人からすればたいした違いはない。『魔神』になれるという結果だけを重視している彼彼女に、『魔神』になれる時間はどうでもいいのだ。
十三夜の星カウントサーティーンも一夜の輝きミッドナイトブルースカイもその場にある地脈、龍脈、天使の力テレズマ、世界の力をすべて食いつぶして発動させることに代わりはないのだから。
「十三夜の星カウントサーティーンが使われた土地はいつもなら『死んで』いるのdeathが、今回は違ったようdeathね」
「そこら辺八ほら、例の『人間』アレイスター=クロウリーがどう二か四たようだよ。土地とか地形十かを引っ張りまわ四十七んとかかん十かうま一具合二『脈』をなお四たみた一」
「それはすごいdeathね。わざわざ『死んだ脈』をなおすとは、面倒な手間をかけたのdeathね」
「そ零だけ『人間』二とってあの学園都市十か一う場所八重要っ十ことだね」
地脈、龍脈、天使の力テレズマを使って発動する十三夜の星カウントサーティーンは土地を『[ピーーー]』魔術である。
そもそも、地脈、龍脈は惑星の中を絶えず循環している土地に起因するエネルギーの一種である。個人の魔翌力以外で魔術に利用できるので魔術師にはよく使われ、力の流れを勘案すれば『人払い』のような魔術を使用することもできる。
また、土地に起因するエネルギーであるため土地そのものをかえてしまえば、つまり無理やり地形を変えてしまえば地脈、龍脈の流れも変わる。これを応用したものが風水と呼ばれ、古来風水術師たちはその地脈、龍脈をよんで「特定の建物を建てるのに最適の場所」を割り出したりもした。
さて、では『空白の主』やアルフが話した『土地が死ぬ』とはどういうことなのか。
土地が死ぬ。
死ぬ。
それはいったいどういう意味なのか?
「『死んだ土地』二八人が行か七一――――――行け七一からね。そ四十その影響は周囲にも拡散する。放っ十おけばあの街が全体『死ぬ』の二も時間八かから七一だろうね」
「確かにそうdeathね。放置すれば100年くらいで『死ぬ』deathから、早めに対処したのはさすが『人間』deathか」
端的に、一言で言ってしまえば、
『土地が死ぬ』とは『その土地に誰もいけなくなる』という事である。
地脈、龍脈はその力の流れによって「居心地の良い場所」と「そうでない場所」というモノが出来る。前述したように、それを利用した魔術が『人払い』なのだが、この力の流れが生み出す性質はもう一段階目が存在する。
「居心地の良い場所」と「そうでない場所」、そして「行けない場所」である。
この「行けない場所」というのは「そうでない場所」をより突き詰めたモノである。
「そうでない場所」というのは言い換えれば「居心地の悪い場所」であると言える。これは地脈、龍脈の流れから出来るわけだが、仮にその場所に地脈、龍脈が存在しないのであれば、人はその場所のことをどう認識するのか。
エネルギーが全くないその場所。脈の通らないその場所をどう認識するのか。
その答えが「行けない場所」である。
「龍脈、地脈が途切零たその場所、天使の力テレズマの存在四七一その場所、世界の力が消失四たその場所を人八認識でき七一」
「「居心地の悪い場所」の究極系は「行きたいとも思わない場所」もっと言えば「行けない場所」、「認識できない場所」deathからね。『土地が死ぬ』とは『その土地を忘れる』というようなものdeathし」
『死んだ土地』には人の意識が向かない。つまり、『死んだ土地』を通常の人は認識できない。これは魔術師でも超能力者でも原石でも例外はない。一定以上の力を持つ存在、『魔神』や『魔神』の成り損ない、『空白の主』にアレイスター=クロウリーは別だが。
そう、『土地が死ぬ』とは文字通り『その土地が世界から断絶される』ということなのだ。
そしてそれを意図的に起こしてしまうのが十三夜の星カウントサーティーン及びそれの派生魔術である。
「そういえばdeathが、十五夜まんげつとのバトルはどうでしたか?」
「……………………見十たん七ら手伝っ十ほ四かった七ぁ。君も知っ十一る通り、私弱一んだ四」
「それはすいませんdeath。あなたは十二分に戦えているように思えたのdeathが」
「………………………五の場所七ら、そりゃ一方的二負ける五十八七一けどね」
憮然としながら『空白の主』はアルフのことを責めた。確かに死ぬことはないとはいえ風紀委員本部セントラルジャッジメント委員長補佐木葉桜十五夜の原石『世界支配ワールドイズマイン』による攻撃を受けるのは全くもって冗談ではないのだ。
『空白の主』は戦闘が得意ではない。むしろアルフの方が直接的戦闘能力でいえば『空白の主』の何倍も強い。
「それにdeath、あなたがこの初まりの領域であんなにも手こずる相手を相手にするなんて私でも無理deathよ。勝てないdeath」
十五夜の原石『世界支配ワールドイズマイン』による『局地的位相操作』攻撃は当然のように位相操作能力を持つアルフでも防ぐことは難しい。おそらく、『空白の主』と協力しても万全に防ぐことは難しいだろうとアルフは思っていった。
最大限まで過大評価してまだ過小評価。それがアルフの感じる十五夜の原石の力、実力である。
「でも手伝っ十ほ四かった四。あの後、私八十五夜と木原脳幹の二人を一っぺん二相手二する羽目二七ったんだ四。死んだらどうする二もりだったんだ一」
ちょっと拗ねたように『空白の主』はいった。実際あの三つ巴のバトルでは一番『空白の主』が不利だった。世界支配ワールドイズマインも対魔術式駆動鎧アンチアートアタッチメントも、双方共に『空白の主』にダメージを与えることのできる力なのだから。
「さすがに死にそうになったら介入しますdeathよ。私もあなたに死なれてはこまりますし。友人ではないdeathか」
「そうだね。……志を同四十する仲間、だ四ね」
その言葉にはきっと、何よりも深く、苦しく、尊く、貴重な意味が込められたいた。たぶんすべてが偽りだったとしても、誰かに操られたものだとしても、自分の意思では無かったとしても、それだけは、その言葉だけはただ一つの真実で、本物だった。
「では、そろそろ私は最終血戦城カステルル・ブランに帰りますdeath。あまり長く離れていると反乱がおきるかもしれないdeathし」
「そうだね。それじゃあまた」
「death。またdeathdeath」
そうして、アルフは去っていった。この初まりの領域から消え去った。上の、別の位相へと。
最終血戦城カステルル・ブランへと。
「…………………………………………からから。―――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――独り、か」
『空白の主』はそう、寂しそうに呟いた。
第一部第一章 終了
第一章 すべての初まりPandora Blackbox、開けられた箱庭Open The Sanctuary 完
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インデックスと大悪魔と空白の主① 理を外れ人を外れた存在
その場所は地球上のどこでもなく、それでいて地球という世界を見上げることのできる場所であった。白く、白く、白く、ただひたすらに白いその場所で、1人の少女が佇んでいた。
「……………………………………」
呆然と、まるで信心深い宗教家が神に見放されたと自覚した時のように茫然と、その少女は立ち尽くしていた。
何が起こってるのか分からないというのか、この場所がどこなのか分からないのか。
いや、いいや、違う。そうじゃない。そんなモノじゃない。
「…………………………………………………………」
ただ見えていないだけだ。ただ分かっていないだけだ。ただ受け入れていないだけだ。
少女の世界は終わっていた。少女の世界は崩壊していた。少女の世界は破壊されていた。
たった一人の少年の死によって、少女の自我は完全に終焉を迎えていた。
だから少女はもはや廃人。
ただ酸素を吸って二酸化炭素を吐くだけの人型物体。
「…………………………………………………………………………………………」
それだけ大切な少年だったのだろう。
それだけ喪いたくない人だったのだろう。
己の命よりも、己の所蔵する10万と3000冊の魔導書よりも大切な存在だったのだろう。
だから壊れた。
よりもよってその死に様を直視してしまったから壊れた。
己の無力が少年の死を招いたと誰に言われるまでもなく自覚していたから壊れた。
魔神にすら至れる可能性を持つ幼き少女は、もう完膚なきまでに狂って終わって壊れた。
そんな少女の名をインデックスという。
「――――――ごふっ」
唐突にインデックスは吐血した。
ただでさえ赤い紅い朱い修道服が、さらに赫く染まる。
ただでさえ青い碧い藍い顔面が、さらに蒼く染まる。
「あ、ふっ……ひ」
血を吐いて、血を吐いて、血を吐いて、白しか存在しない世界を少しだけ赤く染めて、インデックスは喉を抑えるようにして蹲った。どうでもいい、ひどくどうでもいいことでしかないが、喉奥に何かが引っかかっている。
血溜でも引っかかっているのか。だとすればこのままでは窒息死してしまうかもしれない。
窒息死。
それはどれだけ苦しい死に様だろうか。
上条の億分の一でも、当麻の兆分の一でも、救済者ヒーローの京分の一でも苦しいのだろうか。
「か、――――――ひぅ、ぐ、はひーっ、ひーーっ……ふ、……ひゅー、――――――」
息が詰まる。
それはきっと二重の意味での苦しみ。
肉体的な、そしてそれを上回る精神的な苦しみ。
後悔。
後ろの悔い。
痛い。
痛い痛い。
痛い痛い痛い痛い痛い痛い。
堪らない。
耐えられる程度の、傷み。
「はっ、ははっ、……当麻、……当麻ぁ」
時間の感覚なんてとっくの昔に無くなっていた。時節フラッシュバックするする現実を痛感しながら、インデックスはただ記憶の中の想い出後悔に浸る。立ち尽くして、血を吐いては蹲り、涙を流して顔を手で覆い、発狂した様に髪の毛を毟って爪を噛み、肌を引っ掻いてまた泣く。
この白に埋め尽くされた空間を赤色で染めながら、インデックスはもうずっとそうしていた。
「…………あ゛………………………ひっ、ひくっ…………………ごふっ」
そしてまた血を吐く。
「……………………………………………………………」。
そしてまた沈黙する。
痛いくらいの沈黙が白き空間を満たす。
呆然と、まるで信心深い宗教家が神に見放されたと自覚した時のように茫然と、その少女は立ち尽くしていた。
「……………………当麻……………………………………」
立ち尽くす。泣く。血を吐く。呻く。記憶のフラッシュバック。そのサイクル。
ここが何処かもわからず、ここが何かも知らず、己が何をしているのかもわからず、ただ機械のように繰り返すそのサイクル。
そ・こ・に・突・然・、異・物・が・雑・じ・る・。
「酷い様なりけるのよ」
あり得ないことが起こった。
あり得ざる存在が存在した。
「力ある存在キャラクターが、己の称号キャラクター性すらたもてなきとは」
異物が雑じる。
この白き空間には存在しないはずの存在が現れる。
「………………………………………………………………――――――――――――――――――――――――」
その女は見た目18歳程度でありながら老齢な雰囲気を宿す矛盾した成り立ちをしていた。
その女は背丈の2.5倍ほどある宝石店に売られていてもおかしくないような黄金色をした髪を持っていた。
その女はベージュ色という本来では修道服としては相応しくない色をした修道服を着ていた。
……その女のことをきっとインデックスは知っていた。
「されとて、まさか『初まりの領域』にまで堕ちたりけるとはね」
呆れたように、女はそんな台詞を口にする。予想外、とまではいかないが予定外の事態だった。上条当麻ヒーローの敗北とインデックスヒロインの崩壊。いくらこれが嘘だからといってそれはまだ早いだろうと僕は思うのだけど。その辺、お前らはどう思う?それも敵が人類絶対悪ビーストであるのならばともかく、ただの暗部組織が相手と来た。
期待しすぎたか、と女は少しだけ反省する。
だがある意味では仕方がないというか、当然の期待でもあったのだろう。
彼らは本来ならば出来たはずなのだ。
敗北をすることなく、勝利を掴めたはずなのだ。
積み重ねた10年以上の時が、彼らが暗部組織程度の敵を、悪を蹴散らせる事実を保証しているはずなのに。
それでも負けた。
それでも負けたのは……やはり……。
「当麻……………………………………ぐすっ、………ひぅ……っ!…………当麻あ゛……………ぅうぅぅ……………………」
「ここまで近づきても気付けぬか……。………………潮時なるかな」
距離50センチメートルでも反応無し。
わりと大きな声を出しても反応無し。
直接触ってみても、
「……………――――――――――――――――――……………………………――――――…………………………………………………………」
直接触ってみても反応無し。
だから女は決断する。
幾つもの出来事イベントを乗り越え、10年以上の時をかけ積み重ねてきた全てを切り捨てる覚悟を持つ。
「仕方なき、か」
「…………………………………………………………………」
見切りをつけた。
インデックスは此処で終わりだ。ここまで上条当麻に依存していたことは完全に予想外だった。こんな廃人はもう役に立たない。どれだけ素晴らしい能力を持っていても、どれだけ貴重な役割ポジションをもっていても、どれだけ代替の効かない称号持ちネームドでも、この程度でいちいちいちいちメンタルケアを必要とするなら、ここまではともかく、これから少し先はともかく、全ての役者が揃った後では絶対に役に立たない。
必要となるのは能力よりも技術よりも友人関係よりも金銭よりも精神なのだ。
だからインデックスはもういらない。
幸いにも変わりはもうきちんと登場している。
だから躊躇いはなかった。
勝つための最善手を、女は打つ。
「根源魔術オルディニスデーストルークティオー―――――― 揺らぎゆく自己同ドッペルゲン
「クラウ・ソラス+グングニル=万物貫九輝煌の剣クラウ・グングニル・ソラス」
バグドダッッッ!!!!!、と轟音が響いた。
第五宇宙速度をもって顕現した神話の武具が女に向かって直進する。
人間では見ることも出来ないほどの速さ。
人外でも追いつけないほどの速度。
それが銀河集団脱出速度である第五宇宙速度。
光速には届かないが、それでも十分すぎる。
秒速にして1000キロメートルの攻撃を避けることなど、どんな生物でもできる訳がない。
故に、
「…………………空白の主」
女は避けなかった。
いや、正確に言うなら避ける必要すらなかった。
万物貫く輝煌の剣クラウ・グングニル・ソラス。
アイルランド民話に登場する剣と北欧神話に登場する槍の特徴を合成させた融合神話武器。あらゆる敵を貫き、追尾し、切り裂く絶対の武器。
それも敵がそれ以上の力を持つのなら意味はない。
「からからから、かかかからからからからからから!!!初めま四十のひ三四ぶりっ、大悪魔五六ンゾンンンンンンンンンン!!!!!!!!!」
万物貫く輝煌の剣クラウ・グングニル・ソラスは女に、いやコロンゾンに刺さりもしなかった。当たる直前でコロンゾンの霊媒アバターであるローラ=ザザの左手が 万物貫く輝煌の剣クラウ・グングニル・ソラスを掴み取っていた。
そしてそのまま握りつぶす。
「取り戻四二来たのか七守り二来たのか七助け二来たのか七救一二来たのか七ぁ!」
ついでとばかりに放たれる空白の主の追撃。
フラガラッハ+ブリューナク+天下五剣=天下に轟く雷速絶貫の回答者天剣・フラガラック・ブリューナク。
レーヴァティン+如意金箍棒にゅいきんこぼう=伸縮自在の全焼枝金棒・レーヴァティン。
ハデスの兜+トリシューラ=不可視三叉槍トリシューラ・ハデス。
それをコロンゾンローラは弾く、捌く、消す。
その程度の武器ではコロンゾンは傷つけられない。
「遅一遅一遅一四遅すぎる!今ッ更ァッ、出来る訳が七一の二一!」
コロンゾンを殺したいのであればそれこそ外世界の存在でも連れてこなければならないだろう。
例えばタングラムとか。
「同士討ち!自爆!フ零ンドリーッッッ、ファ一アアアアアア!!!無自覚十八一え憐零だ四ね。仲間同士で潰四合う七ん十ッッッ!!!」
威圧するかのように顔を歪ませる空白の主をコロンゾンローラは真正面から見つめる。
まだ、敗けていない。
ここからの逆転はあると信じている。
「勝ち誇るには早きけるのよ、空白の主」
「からから、勝ち誇る二八早きける?勝ち誇りもするよ。何せ、君達の最重要駒が一つ脱落四たんだからからからから!!!」
「まだ確定はせざりたるわ!」
反撃。
反抗。
反対。
「禁書目録インデックスは七連物語セブンスストーリーズ第六物語シックスストーリーの庇護対象ヒロインであろうぞ!」
「からからから。禁書目録一ンデッ九スの絶対性八まだ保障さ零十一七一。彼女八まだ庇護対象ヒ六一ンであっ十隣二並び立つ者メ一ンヒ六一ンじゃ七一」
言葉と言葉の応酬おうしゅうはそれでも彼女たちが行えば全く別物へと変化する。
片やこの世界においても十二指に入る単一存在。『333』の数字を等価に持ち、拡散という本質にそって世界に汚泥と悪逆を撒き散らす大悪魔であり、世の理の結合を妨げる人外。単純戦闘能力ではかのアレイスター=クロウリーですら敵わないとされる絶対にして先住民センチネル側の理外人外の1人。
イギリス清教最大教主アークビショップ、必要悪の教会ネセサリウストップ、ローラ=スチュアートコロンゾン。
片やこの世界においても十二指に入る始源存在。人類が生み出した文明の全てを無効化し、人類が殺害することは絶対不可能である人外。人類が生み出した文明の全てを支配し、操作し、隷属させる罪人。時空間を超越し、運命論からも抜け出し、神話を体現する原初の片割れにして侵略者インベーダー側の理外人外の1人。
『初まりの領域』の主、本名未だ不明、『空白の主』。
この二人――――――人ではないから二人という数え方が適切かは分からないが、二人からすれば言葉は十分に武器足りえる。
なにせ二人が口にする言葉はただの言葉ではない。相手の称号キャラクター性に対する攻撃だ。
「インデックスはまだ死んでなきなのよ」
「今の一ンデッ九スが上条当麻の隣二立つ五十八不可能!そして、今の一ンデッ九ス八もう正気二八戻零七一!」
「そんなことはなきなのかしら!復活を望む声があれば黄金の餞はなむけでインデックスは復活できたるわっ!まだ、そこまでは確定していなきよ」
だから二人とも必死だ。口論で負ければその時点で『核』が破壊されてしまう。そうなれば復活は絶対にできない。
だから敗けられない。
そして言い負かせれば、殺せる。
故に本気の本気も本気。
全力全開の全身全霊の一所懸命。
「からから、悪あがき!一ンデッ九ス八地球位相二八戻零七一!一ンデッ九ス八この『初まりの領域』で一生狂気二浸っ十過ごす!五零八確定四十一るのお!」
「それはどうなりけるかしら」
「………………?」
「インデックスとは、一つの称号キャラクター性を指すものではなかりけるわよ」
この戦いを理解できる人間はどれくらいいるのか?
この二人の言っていることが分かる存在はどれくらいいるのか?
お前達には、
君達には、
理解できるか?
https://syosetu.org/novel/56774/106.html
問答型思考補助式人工知能リーディングトート78① 人工知能の最善解 アレイスター=クロウリーと木原脳幹① 対等な対話
生体認証完了。接続を確認。
お帰りなさいませ、アレイスター様。
問答型思考補助式人工知能リーディングトート78は入力されたタスクに従って活動を開始します。
件の絶対能力進化実験レべルシックスシフトの問題について議論しましょう。
まずもって大前提の確認をいたします。
今回アレイスター様が計画した絶対能力進化実験レべルシックスシフトは、この世界全体に能力者が無意識に発生させているAIM拡散力場を広めることで虚数学区を世界を覆うように発生させることでした。
方法論としては絶対能力進化実験レべルシックスシフトをわざと頓挫させ、妹達シスターズを治療と称して世界各地に送り込むことが確立されていました。
(リンク先に別議題あり。絶対能力進化実験レべルシックスシフトに関連した諸計画の詳細については『こちら』をどうぞ)
この目的は達成できたとみるべきでしょう。結果として、一方通行アクセラレータの打倒は御坂美琴によって成せられ、絶対能力進化実験レべルシックスシフトの頓挫は確実なモノになりましたので。
ただし、そのことに関する別の問題が発生したのもまた事実です。
別の問題。
つまり、一方通行アクセラレータの死亡によりアレイスター様の計画プランに重大な誤差が発生したという問題についてです。
現状、この問題に対するアプローチは二つほど考えられます。
一つは計画プランそのものを一度破棄すること。
生命維持装置によって推定寿命が1700年ほど存在しているアレイスター様ならば、現在と同じ条件が再びそろうまで生き続けるということが可能であります。
ならば、現段階で重大かつ明らかな誤差が認められる計画プランそのものを完全に破棄し、次のチャンスが来るのを待つという手段をとることも可能です。
しかしこれは得策ではありません。
現段階での計画プランの破棄はあまりにも極論すぎますし、1700年以内に現在と同じようなバランスをもって計画プランを実行できるだけの状況がそろうとは限りません。
あるいは、1700年という時間が過ぎ去ってもなお計画プラン実行に必要な人材、状況、感覚等が揃わない可能性も存在します。
(リンク先に別議題あり。アレイスター様の推定寿命以内に計画プランがもう一度実行可能になる状況が揃う可能性については『こちら』をどうぞ)
故に、もう一つのアプローチを推奨します。
もう一つのアプローチは一方通行アクセラレータに代わりうる人材を計画プランの中心に置き直し、現状のままに計画プランを推進していく方法論です。
一方通行アクセラレータの死亡は計画プランに重大な誤差を与えましたが、一方通行アクセラレータという存在は決して代替不可能な人材ではありません。
例えば第二候補スペアプランである学園都市第二位の超能力者レベルファイブ、垣根帝督であれば一方通行アクセラレータの代替は可能です。
ただし、これもまた得策とは言えないでしょう。
第二位の超能力者レベルファイブ、垣根帝督の能力特性は第一位の超能力者レベルファイブ、一方通行アクセラレータとあまりにも正反対すぎます。
『すべてを破壊する』モノと『すべてを創り出す』モノ。
『こことは違う世界における有機』と『こことは違う世界における無機』。
『神にも等しい力の片鱗を振るう者』と『神が住む天界の片鱗を振るう者』。
垣根帝督を一方通行アクセラレータの代替存在にした場合、計画プランの失敗は確実なものとなるでしょう。
(リンク先に別議題あり。垣根帝督を計画プランの中枢に添えた場合の計画プラン成功確率については『こちら』をどうぞ)
故に、一方通行アクセラレータの代替存在として計画プランの中枢にそえるべき存在は学園都市第二位の超能力者レベルファイブ、垣根帝督ではなく学園都市第三位の超能力者レベルファイブ、御坂美琴とするのがふさわしいでしょう。
御坂美琴と一方通行アクセラレータの性質は先の戦闘でも観測されたように非常にに似通っています。
(リンク先に別議題あり。絶対能力進化実験レべルシックスシフト第10032次実験における一方通行アクセラレータと御坂美琴の戦闘内容については『こちら』をどうぞ)
魔術ルートMと科学ルートSという違いはありますが双方ともに『神』――――――位相操作能力を得ることのできた稀有な存在でありますし、『神にも等しい力の片鱗を振るうモノ』と『この世界から別の世界に干渉し別の世界の力を引き出しているモノ』という別位相への干渉が出来るという共通点も存在します。
また、能力性質も『破壊』という一面では似通っています。
御坂美琴の役割は既に妹達シスターズの生産が終わった時点で終了したと言えますし、これから一方通行アクセラレータの代役を任せることになったとしても誤差は最低限に済むでしょう。
ただし、御坂美琴にもまた問題点が存在します。
一つに御坂美琴の器が一方通行アクセラレータよりもはるかに矮小であるという事。幼少期から『闇』の中にいた一方通行アクセラレータと日常の中で過ごしていた御坂美琴では精神の強弱が違います。
二つに友人関係の有無。
『闇』の中にいた一方通行アクセラレータの人間関係は希薄でしたが、御坂美琴には『表』の友人がいます。彼ら彼女らの動向にも気を配る必要があるでしょう。
三つに御坂美琴の構造状の問題です。
今回の絶対能力進化実験レべルシックスシフトにおいて御坂美琴はその魂、霊魂、記憶をミサカネットワーク内に移しました。
現状この問題に対する対処方法は確立されていますが、御坂美琴の成長を促すという一面ではこの代わりバックアップがいくらでもいるという状況はマイナスにしかならないでしょう。
しかし、その上で一方通行アクセラレータの代替候補としての役割を二人で比べた場合、それでもなお御坂美琴に軍配が上がるのも事実です。
能力、精神構造、魂、霊魂、人間関係、過去、『闇』との関わり、計画プラン上の役割、肉体の強弱、被操作性、暗示の効き具合、背後組織、頭脳、特殊性。
その他すべてを含めた上で、御坂美琴が一方通行アクセラレータの代役にふさわしいと判断します。
率直に言って。
垣根帝督を第三候補サブプランに格下げし、御坂美琴を第二候補スペアプランに格上げすることが計画プラン完遂の条件であると推測します。
『それで、』
木原脳幹。
学園都市の中に5000人ほど存在する『木原一族』の中でもさらに異端と称されるゴールデンレトリバーは志こころざしを同じとするような一人の男と通信をとっていた。
『どうするつもりだ?アレイスター』
木原脳幹は学園都市にいる他の誰よりもその存在の危険性について知っていた。それはもしかしたら、統括理事長であるアレイスター=クロウリーよりも深く。
『死縁鬼苦罠の方はどうとでもなる。いざとなれば、私かお前が動けばいいだけの話だからな。だが、もう一つの勢力についてはそうもいかないだろう』
『風紀委員本部セントラルジャッジメントか。……実際に戦った存在として、そちらは風紀委員本部セントラルジャッジメントをどう見ている』
もしも、ゴールデンレトリバーという犬種に表情を作る機能が備わっていたとすれば、今木原脳幹の表情は驚きに染まっていただろう。
『――――――お前がそんなことを言っている時点で、奴らの異質さは推して知るべしだがな。明確に交戦したのは一人だけだったが、それでも奴らの異質さは身に染みたな。対魔術式駆動鎧アンチアートアタッチメントの直撃を喰らっても復活するような存在だぞ。下手をすれば、『魔神』以上の驚異と考えた方がいいのかもしれん』
『それだけではないだろう』
信頼と信用と真なる信を言葉にのせながらアレイスターは言った。それだけであっては困る、というニュアンスを混ぜながら。
『あぁ、実際あの不死性は厄介だが対処不可能というわけでは無い。魂のストックか、純粋な再生能力か、あるいはそ・も・そ・も・死・や・怪・我・を・無・効・に・す・る・ような能力だな。つまり、『封印』という手段で楽に対処できる』
この場合の『封印』とは魔術的な意味合いのものでは無い。対魔術式駆動鎧アンチアートアタッチメントに含まれた兵装を使って最果の周囲の空間を完全凍結したり、Equ.DarkMatter等を使って周囲の空間から最果を断絶したりするといった手法である。
『だが、お前の言っているのはそういう事ではないのだろう?』
風紀委員本部セントラルジャッジメント封印戦力常世涯最果とこよのはてさいはては確かに難敵であり、強敵ではある。だが、それは有する武器や能力が不明だった初見の戦闘だったからだともいえる。
二度目の戦闘ではあそこまで手こずることはないだろう。
力や武器、行動パターンなどはもう暴かれているのだから。
そう。もう常世涯最果とこよのはてさいはては強敵とは言えない。そして、真の強敵とは有する力を暴かれても対抗策が浮かばないような相手のことを言うのだ。
『あぁ。…………『初まりの領域』で戦った木葉桜十五夜このはざくらまんげつ。奴は、どうだった』
声のトーンが変わったように思うのは、決して脳幹の聴き間違いなどでは無いはずだ。実際に、アレイスターは危機感を覚えているのだろう。
もしかしたら――――――という危機感を。
『そうだな。奴の力はおそらく『位相操作』。それも隠世かくりょに住む『魔神』の位相操作よりもさらに濃縮されたもので間違いない。だが、そのかわり位相を操作できる範囲は狭いようだったがな』
初まりの領域で脳幹は二人の人物と交戦した。
『空白の主』と木葉桜十五夜。
そのうち、木葉桜十五夜の力はもう理解できた。
局地的な位相操作能力。部分的に世界を書き換える力。
た・だ・し・濃・度・が・段・違・い・だ・っ・た・が・。
『『魔神』の位相操作を水性インクと例えるのならば奴の位相操作は油性だ。上塗りする世界の質も、書き換える世界の濃さも比較にならん。……対魔術式駆動鎧アンチアートアタッチメントでも、もしかしたら相討ちがせいぜいかもしれないぐらいにはな』
『―――――――――――――――鍵となるのは、やはり風紀委員本部セントラルジャッジメントか』
アレイスターにとってこの絶対能力進化実験レべルシックスシフトに死縁鬼苦罠が絡んでくるのは予想の範囲内だった。改良版音響式能力演算妨害装置キャパシティダウンバージョンベータの使用もまだ予想の範疇はんちゅうだった。
ただ、予想外だったのは風紀委員本部セントラルジャッジメントの動き。いや、この場合は予想外では無く、予想できなかったというべきかもしれない。
6年前に現れた風紀委員本部セントラルジャッジメントの動きは世界最強の『人間』であるアレイスターとて完全に読めるものでは無い。
『『空白の主』が一方通行アクセラレータに干渉したのは、……奴らの仕業だと思うか』
『わからない、というほかないだろう。らしくないぞ、アレイスター。こんなことは私にきくまでもなく、自覚していることだろう』
あの時。
アレイスターは一方通行アクセラレータを守るために、『空白の主』に一撃を与えた。結果として一方通行アクセラレータは守られ、現実世界に帰った。
だが、代償は大きかった。
アレイスターは何も一方的に傷を与えたわけでは無いのだ。傷は与えもしたが、与えられもした。
だから、本来ならば見過ごすはずもない、絶対に見過ごすべきでは無い一方通行アクセラレータの死という絶望のイレギュラーを容認する羽目になってしまった。
つまり、一方通行アクセラレータが初まりの領域に行って『空白の主』にさえ会わなければ、こんなことにはならなかったと言える。
そしてアレイスターは一方通行アクセラレータが『空白の主』にあったのは風紀委員本部セントラルジャッジメントの、もっと言えば風紀委員本部セントラルジャッジメント委員長白白白が原因と考えていた。
傷を負いさえしなければ、きっと一方通行アクセラレータの死はどうにかできた。
それに、一方通行アクセラレータが『魔神化』しなければ土地を修正する必要もなかった。
『…………………………………』
『やれやれ、その沈黙を私に伝えてしまっている時点で、お前の動揺が透けて見えてしまうぞ。どうした、お前が長年をかけて練り上げた計画プランは、この程度のイレギュラーですべて頓挫してしまうほど柔いものなのか?』
『―――――――――――――――――――――』
『それとも、この程度の誤差で、あ・ら・ゆ・る・モ・ノ・を・犠・牲・に・し・て・で・も・叶・え・た・い・お・前・の・願・い・と・や・ら・は・諦めがつくモノなのか?』
『――――――――――そうだな』
肯定の言葉には否定のニュアンスが込められていた。
かつて、イギリスの片田舎で死の寸前まで追い込められた時でも手放すことのできなかった願い、世界の全ての魔術師を敵にまわしてでも叶えたかった願い。
それをもう一度だけ強く思う。
芯がぶれないように、真がぶれないように。
『この程度の誤差など、どうとでもなる』
その言葉には確かな自信と、確かな自負があった。現状警戒すべき勢力は分かっている。滞空回線アンダーラインが入ることが出来ないただ唯一の組織である風紀委員本部セントラルジャッジメント。この学園都市の中で唯一把握できない組織である風紀委員本部セントラルジャッジメント。
そして、その頂点トップである委員長白白白。
『ならいい』
アレイスター=クロウリーがアレイスター=クロウリーらしさを取り戻したことに脳幹はわずかに安堵する。確かに風紀委員本部セントラルジャッジメントは強大無比かもしれないが、対抗できないわけでは無いのだから。
『お前はお前の思うようにやるがいいさ。善悪好悪。例え、悪と言われようと、確かにお前を好んでいるモノだっているのだからな』
『――――――――――――――ふ』
通話が切れる一瞬前に、思わず漏れてしまったというようなわずかな笑い声が聞こえた。それはアレイスターと長くを過ごしてきたゴールデンレトリバーでも久しぶりに聞く声。昔、葛藤しながらも正義を信じて歩いていたころの『人間』の感情だった。
『私達のやっていることは善悪で言えば悪で、好悪で言っても悪なのかもしれない』
通話が切れて、だからこそ脳幹はこの言葉を言う。
返答を求めているわけでは無く、返信を期待しているのでもなく、返事が欲しいのでもない。ただ単に、伝えたい言葉があった。
『だがそれでも、最後に目的を達するのは私達だ』
滞空回線アンダーラインでその言葉を聞いたアレイスターは、ただ歪な笑みを浮かべた。
ヒントはすべて出ているぞ。
答えはすぐそこまで来ている。
考えを放棄するなよ愚図が。
張り巡らされた伏線の真実を明かされるのを唯々諾々と待っているんじゃない。
なぜ考えない愚か者?
どうして思考しない馬鹿なのだ?
考えろよ考えろ。
大丈夫だ問題ない。
なぁに心配などないさ。
信じているぞ信じているさ。
僕はお前ら人類の『強さ』を信じている。
https://syosetu.org/novel/56774/99.html
第一部 第一章 最終節 絶対能力進化実験中止計画~語り始める黒幕と回収される伏線~
白白白と木葉桜十五夜① 黒幕の思惑
三者三様。
絶対能力進化実験レべルシックスシフトを利用して自らの思惑を達成しようとしていた三人の黒幕は、それぞれがそれぞれ計画通りに進まない現実に対して思うところがあった。
まず統括理事長アレイスター=クロウリー。アレイスターは単純に苛立ちを覚えていた。
結果論としてだが、絶対能力進化実験レべルシックスシフトはアレイスター=クロウリーの計画通り失敗に終わった。この先、生存した妹達シスターズは苦罠によって世界各地に送られ、世界中にAIM拡散力場が満ちることになるだろう。
だがしかし、肝心要の第一候補メインプラン、一方通行アクセラレータが死亡した。それはもう完膚なきまで死亡した。いくら冥土帰しヘヴンキャンセラーの『負の遺産』があってもどうしようもないレベルまで死亡した。
つまり、アレイスターのプランが予定通り進行しないことを意味する。並列するプランを複数個同列ラインで進めているとはいえ、一方通行アクセラレータの死亡はすべてのラインにおいて致命的である。
一方通行アクセラレータはプランの中核に存在する重要人物。替えのきくことが難しい唯一の存在であるからだ。
次に、統括理事会メンバーが一人死縁鬼苦罠。苦罠は予想外の動きを見せたミサカ19090号に対してわずかに後悔を覚えた。
もっと、きつく締め付け監視を強めておけばよかったと後悔した。
上回れた、先にやられた、計画を、予定を駄目にされた。あまりにも予想外で予想が過ぎた。苦罠はまさか御坂がこのタイミングで『雷神化』するなど考えもしなかったのだ。だから、予定通りには進まなかったのだ。
苦罠の計画通りならば御坂が改良版音響式能力演算妨害装置キャパシティダウンバージョンベータを使って放った超電磁砲レールガンは一方通行アクセラレータを完全に貫き、それで操車場の戦いは決着を迎えるはずだった。
はずだったのに。
ミサカ19090号が御坂美琴にAIM拡散力場を軸に干渉して超電磁砲レールガン外させた。
完全にノーマークだった。監視していなかった。何もできないと思っていた。ミサカネットワークに御坂美琴を取り込むなど考えもしなかった。御坂美琴を個としての存在では無く全として存在に昇華するなど思いもしなかった。
裏をかかれた。逆を突かれた。
そして、ミサカ19090号と幻生の接触も予想外だった。
実験のためなら幻生がミサカ19090号に協力するのは分かっていたが、ミサカ19090号が幻生に会いに行くとは思えなかったからだ。恐怖心や畏怖をことさら強く感じるミサカ19090号が絶対能力進化実験レべルシックスシフトの提案者に会いに行くことは予想できなかった。
さいわいにも御坂の『雷神化』はミサカネットワークに投じたウイルスが不完全だったこともありそこまで進まなかったが、このタイミングでの『雷神化』は今後にかなり不都合な事態を生じさせるはずだ。
本来ならば『雷神化』は大覇星祭に行う予定だったのだから。
そして、
最期に、風紀委員本部セントラルジャッジメント委員長白白白。
白は計画通りに進まない現実に対して、
た・だ・、深・い・笑・み・を・浮・か・べ・た・。
「今戻りました。委員長」
「首尾はどうだ?」
「はい。ストロビラは無事上条当麻と白井黒子両名に打ち込みました。風紀委員本部セントラルジャッジメント序列ランキング第十位千疋百目のことも回収し、封印戦力常世涯最果とこよのはてさいはての生存も確認。扼ヶ淵埋娥やくがぶちまいがについては委員長の命令通りポイントT50に向かわせ『作業』をしてもらっています。浣熊四不象あらいぐましふぞうは例の操車場での戦い等の監視結果などを後で報告書にまとめて提出するように言ってあります」
今回風紀委員本部セントラルジャッジメントが絶対能力進化実験レべルシックスシフトに関する件で動かした人員は全部で七人。
上条当麻の足止めに風紀委員本部セントラルジャッジメント攻撃部隊総隊長扼ヶ淵埋娥やくがぶちまいがを、
白井黒子の足止めに風紀委員本部セントラルジャッジメント序列ランキング第十位風紀委員本部セントラルジャッジメント攻撃部隊第二班班長千疋百目を、
木原脳幹の足止めに風紀委員本部セントラルジャッジメント封印戦力常世涯最果とこよのはてさいはてを、
上条当麻達の監視に風紀委員本部セントラルジャッジメント諜報部隊総隊長無何有峠妃むかいとおげきさきを、
埋娥や百目との連絡要員としては風紀委員本部セントラルジャッジメント序列ランキング第■■位風紀委員本部セントラルジャッジメント諜報部隊第一班班長五寸釘匕首ごすんくぎあいくちを、
空中にいる敵対戦力の対応と人員の回収については風紀委員本部セントラルジャッジメント序列ランキング第■位風紀委員本部セントラルジャッジメント諜報部隊第■班■■浣熊四不象あらいぐましふぞうを、
万が一のバックアップ及び全体の補助と敵対戦力の殲滅、上条当麻と白井黒子にストロビラを打ち込む件については風紀委員本部セントラルジャッジメント委員長補佐木葉桜十五夜このはざくらまんげつを、
それぞれ動かした。
「そろそろ頃合いか……」
白は小さくつぶやいた。今回の一件は様々な思惑が入り混じり、すべてがうまくいったわけでは無い。だがそれでも『風紀委員本部セントラルジャッジメント委員長白白白』の計画は8割方成功していた。
「十五夜。支援部隊の白神九十九つくもがみつくもに千疋百目の風紀委員本部セントラルジャッジメント序列ランキングを第十位から第八位に上げるように通達しろ。後は最果を地下十一層に戻しておけ。次の中・で・の・戦いはおそらくケミカロイドの一件だろう。そこまでは通常業務に専念するように、全員に伝えておけ」
「了解しました。委員長」
白が今回の件で目的としていたものは二つ。敵対勢力のあぶり出しと物語の中心点セントラルストーリーラインをずらすことだ。
敵対勢力のあぶり出しについては語る必要すらないほど明確だろう。
死縁鬼苦罠に雇われているらしいという彼者誰時に輝く月シャイニングムーンの情報についての裏付けはできたし、その彼者誰時に輝く月シャイニングムーンに所属している人員、団長の裂ヶ淵瞑娥さくがぶちめいがや大隊長の戦力についての調査が出来た。
同じく敵対勢力のアレイスターに使える木原脳幹の対魔術式駆動鎧アンチアートアタッチメントことも二人のおかげで情報は得られたし、アレイスター自身の戦闘力についても十五夜が目撃したため分かった。
既定路線では無かったとはいえ、第一の目的はほとんど達成されたようなものだ。
何せ風紀委員本部セントラルジャッジメントの戦力はまだほとんどさらしていないのだから。頂点序列者トップランカー5人も、上位序列者ハイランカー15人も、下位序列者ローランカー80人も、まだほとんど表に情報は出ていない。
封印戦力をこのタイミングで出すのだけは想定外だったが、それもまぁ最悪の出来事では無い。封印戦力はまだ後三人いるのだから。
「ふむ。……もう下がっていいぞ」
要件は伝えた。後は思案の時間だ。次の計画を確実に成功させるためには打てる布石は打ち、張れる伏線は貼り、練れる計画はねるべきである。故に、白はいつものように『天秤の間』で独り考え事をするつもりだった。
しかし、
「どうした?」
十五夜が踵きびすを返して出ていこうとしなかった。いつもならば、用件が終わればすぐに『天秤の間』から出ていくのに。
そして、十五夜は驚くべきことを白に言った。
「…………差し出がましいですが、委員長。今回の件についていくつか質問をさせてもらってもよろしいでしょうか」
「珍しいな。君が僕に質問をするなんて」
少々驚いたように白は言った。それほどまでに十五夜が白に質問をすることは珍しかった。常に命令に忠実で白の行動に疑問を持つことはない。もちろん、白が明らかにおかしかったり間違った行動をすれば多少の諫言かんげんはするが、十五夜は基本的に白の行動に質問をすることはない。
だから、白は驚いた。
「別にかまわないぞ。何が聞きたい?」
驚いたが十五夜がききたいことがあるというのなら別にかまわない。白は十五夜を一番信頼している。質問に答えないことはよほどのことでも聞かれない限り、ない。
「では、」
十五夜は息を大きく吸い、心を落ち着けてから言った。
「今・回・の・件・、い・っ・た・い・ど・こ・ま・で・が・委・員・長・の・計・画・通・り・だ・っ・た・の・で・す・が・?」
「………………………………………」
深く、白が笑う。
十五夜の言葉に笑う。
「どこまで、というのは?」
「…………今回の一件、不可解なことが多すぎます」
『天秤の間』に来るまでの道中十五夜は今回の一件についてずっと考えていたが、どう考えてもつじつまの合わないことが多すぎた。
例えば、
「地下で起きた爆発はいったい誰の手によるものだったのですか?」
そう。あの時白から電話がかかってくる直前に十五夜の耳に聞こえた爆発音。結局あの爆発が誰の手によるものなのか十五夜はわかっていなかった。
「御坂美琴の『雷神化』はともかくとして一方通行アクセラレータが『神の力』――――――位相操作能力を得たのは本当に偶然だったのですか?」
『雷神化』には明確な理由があった。木原幻生によってミサカ19090号に投じられたウイルスがミサカネットワークを通じて御坂の中に入り、それが御坂の『雷神化』を起こしたのだろう。
だが、一方通行アクセラレータが位相操作能力を得たのは明確な理由を発見できない。もちろん奇跡だ、というのであればそれ以上の追及はできない。だからこそ今ここで十五夜は問いかけた。
あの出来事は確かに奇跡だったのかもしれない。
だが、
どうにも十五夜にはあの奇跡が仕・組・ま・れ・た・奇・跡・に思えて仕方が無かった。
「一方通行アクセラレータが初まりの領域で『空白の主』に出会えたのはなぜなのですか?」
仮に『神』の領域――――――すなわち魔術的な意味合いでは『魔神』の域に入ることが出来たとしてもそれだけでは『初まりの領域』に行くことは出来ない。あの場所はこの世界の中でも最重要部分。なりたての『神』が入れるような場所ではないはずだ。
「そして、一番不可解なのは」
一つ、区切り置いて、十五夜は今だに信じられないかのようにその事実を口にした。
「あの、救済者ヒーロー『上条当麻』がたかだか攻撃部隊総隊長扼ヶ淵埋娥やくがぶちまいが程度の雑魚に負けたことです」
どうにも十五夜はそれが信じられなかった。
正確にいうのであれば、『上条当麻』が埋娥にまともな一撃を食らわせることすらできずに敗北したことが信じられなかった。
救済者ヒーローが負ける。そのこと自体はまぁいい。救済者ヒーローだって成長するために負けることはある。古今東西の物語で敗北から学び強くなる救済者ヒーローは多々いる。
だが、
「負けるにしても少なくとも一撃を当てることぐらいはできないとおかしいはずです。上条当麻という個はそこまで弱くはない。あの負け方では救済者ヒーローとしての成長が出来ません」
埋娥と上条の戦闘をリアルタイムで見ていた十五夜は違和感をずっと感じていた。最初に白井と別れて単独で埋娥を引き付けた場面。あれはまだいい。救済者ヒーローとしての行動である。
だが、その後がおかしいだろう。救済者ヒーローであるならば埋娥と会話をするべきだ。埋娥の抱える闇を表にさらけ出させるべきだ。敵対者だろうがラスボスだろうが黒幕だろうが問答無用で救う。
それが救済者ヒーローなのだから。
負け方にしてもそうだ。地形を利用して上条はよく戦ったと思うが、埋娥に勝つことに注視しすぎて埋娥のことを見ていない。救済者ヒーローとしてはあるまじき行いだ。
あの負けでは今後につながらない。負けた、という結果だけが残ってしまう。
「いったいどういう事なのですか委員長?今回の一件は本当は…………」
「そうだな」
一つ頷うなずいて、白は語る。
「一つ一つ説明をしていこうか、十五夜。今回の一件がどういう経緯で起き、どのように転がっていったのかを」
そして、白は話し始めた。
絶対能力進化実験レべルシックスシフトの裏に隠された。各々の目的とその行動を。
白白白と木葉桜十五夜② 死縁鬼苦罠勢力の行動
「そもそも絶対能力進化実験レべルシックスシフトの本当の目的は一方通行アクセラレータを絶対能力者レベルシックスに到達させることでは無い。これは前にも話したな」
「はい。把握しています。今回の絶対能力進化実験レべルシックスシフトの本当の目的は絶対能力進化実験レべルシックスシフトが頓挫とんざした後に妹達シスターズを世界中に治療という目的でばらまき、世界全体にAIM拡散力場を満たすことにある、という事でした」
「そう。初め、絶対能力進化実験レべルシックスシフトはそういうモノだった。アレイスターが世界中にAIM拡散力場を満たすための失敗前提の実験。それが絶対能力進化実験レべルシックスシフトのはずだった」
「…………………………」
「アレイスターのプランの通りに進むのであれば一方通行アクセラレータは御坂を追いかけて絶対能力進化実験レべルシックスシフトの真実を知った上条に倒され、上条の成長、絶対能力進化実験レべルシックスシフトの頓挫、そして一方通行アクセラレータの成長。この三つが同時になされるはずだった」
はずだったのに、そうはならなかった。
なぜなら。
「そこに僕ら風紀委員本部セントラルジャッジメントと苦罠が干渉したから、話が非常にややこしくなった」
ただでさえややこしい事態にさらに二つの勢力が割り込んだ。どの勢力も己の目的を達成することに執着して自分勝手に動いて、その結果あり得ないくらい混乱した摩訶不思議な事態が起きてしまった。
「時系列を追って説明しようか。その方がきっと分かりやすい」
張られた伏線。仕組まれた事態。動いていく計画。
そのすべてが今、明らかになる。
「すべてのはじまりは去年の冬、一方通行アクセラレータが絶対能力進化実験レべルシックスシフトに参加したあの時から始まった。各々の野望を叶えるために、各々が暗躍し、行動した」
回想する。
思い出す。
「まずは、苦罠たちのことについて話そうか。絶対能力進化実験レべルシックスシフト第一次実験が始まった時点で、苦罠はいずれ御坂美琴が絶対能力進化実験レべルシックスシフトに辿り着くと予想した。そして、御坂美琴は必ずそれを止めようとすると予測した。苦罠はそのために準備を始めていた。半年も前からね」
死縁鬼苦罠。統括理事会メンバーの中でもほとんど最強の存在。
「そして、今日の午後練りに練った計画を実行するために動いた」
彼が、ある意味では一番乗りだった。
「まず一番最初に苦罠が行ったことは御坂美琴との接触及び交渉。苦罠の目的から言ってしまえば、御坂美琴という存在は誰よりも重要なパーツだからな。交渉、というよりも恫喝に近かったが、それでも苦罠は御坂美琴を自陣営に引きずり込んだ」
「計画プロジェクト……ですか」
アレイスターの計画プランと同じように謎が多い計画プロジェクトという名の計画。死縁鬼苦罠と天埜郭夜によって進められている計画プロジェクトという存在。それのためには御坂美琴が必要なのだと白は言う。
「そして、その後郭夜と連絡を取り『三千世界武神』一本線点々いっぽんせんてんてんに十五夜、君の足止めを依頼。さらに並行して彼者誰時に輝く月シャイニングムーンの奴らにも君の足止めを依頼。さらに、余剰待機戦力として莫大な金銭を払って彼者誰時に輝く月シャイニングムーンの団長裂ヶ淵瞑娥さくがぶちめいがにも戦闘を要請した」
「裂ヶ淵瞑娥も出てきていたのですか!?あの『陰翳いんえいの四月実験』の被験者の!?」
陰翳いんえいの四月実験。
暗闇の五月計画や光陰の三月実験と同じ、月の名前を冠した十二暦計画カレンダープロジェクトの一つである。
「当然だろう?僕が苦罠の立場だったとしても同じように瞑娥を動かすぞ。あいつは魔術も超能力もかいさない純粋な暴力で言ったら、点々と互角にやり合える唯一無二の人材だからな」
「天下無双流と天地破壊流ですか」
「その通り。この世界の中では最強と呼ばれる二大流派。どっちが強いとかでは無く、どっちも最強だが、だからこそ君を足止めできたのだろう」
「……………そうですね」
苦い顔をして十五夜は言った。十五夜からしたらわずかでも足止めされたあの経験はかなり悔しいものなのだろう。
「続けるぞ。そして、君を足止めしている間に奴らは御坂を操車場に送り届け、戦闘を開始させた。さらに並行して超能力者予備集団セブンバックアップの三位も動かしていたようだ」
「超能力者予備集団セブンバックアップの三位というとあの精神系最強の見捨てられた女グレイレディですか」
「そうだ。三位がやったことは至極単純で上条当麻と白井黒子の両名を地下下水道へと誘導するための準備、KEEPOUTのテープを操車場の入り口あたりにはったことと白井への認識操作だな」
あの時、あの場所で上条と白井が地下に行ったのは目の前にKEEPOUTのテープがあり、その先に警備員アンチスキルがいると思い込んでいたからだ。彼らも100人の警備員アンチスキルを突破できると考えるほど幼稚では無かった。
まぁ、万が一あのKEEPOUTのテープの先にいったとしてもどちらにしろ御坂のもとにはたどり着けなかったわけだが。
「で、その後三位はとあることをした」
「とあること…………ですか?」
「十五夜。君は『始まりの領域』に侵入する前に強大な爆発音を聞いたそうだな。その時の状況を教えてくれないか」
「分かりました」
十五夜は爆発音が聞こえたときのことを明確に思い出す。十五夜の頭脳は瞬間記憶と映像記憶を併せ持ったように過去の『光景』を寸分の狂い無く思い出すことが出来る機能を持つ。
だから、白に問われた時の光景も完璧に思い出せた。
「爆発音が聞こえたのは委員長から連絡が入るほんの直前、地下下水道で上条当麻と白井黒子、扼ヶ淵埋娥やくがぶちまいがと千疋百目の戦いが終わった直後でした。耳をつんざくような爆発音が周りから聞こえ、立っている地面に亀裂がはしり、沈み、そしてそのタイミングで委員長から電話が――――――」
「ストップ」
十五夜が爆発音が聞こえた時の光景を正確に説明しているときに、白は割り込んで言葉を入れた。
「『地面に亀裂がはしり、沈んだ』。つまりそれが三位のやったことだ」
「……………いえ、ちょっと待ってください委員長。それはいくらなんでもおかしくありませんか?もちろん委員長が確信を持っているのは分かりますし、委員長が間違ったことを言うとは思いませんが、私はどうにも納得できません」
「………………………………」
意味深に十五夜を見つめながら白は続きを促す言葉を投げかける。
「具体的にはどこがおかしいと?」
「三位の超能力は精神系のはずです。どうやったとしても爆発現象を起こせるとは思いません。私の精神に干渉することはほぼ不可能ですし、あの時私の精神は正常でした。ならば、あの爆発音は現実に聞こえたもので間違いないはずです。委員長の言う通り三位があの爆発を行ったのならば、彼女の超能力は精神系ではないということに――――――」
「ならない。三位の超能力は精神系だ。それも学園都市内で精神系最強を誇る、な。それは間違いない」
断言する。白はあらゆる出来事の最も重要なことは情報だと思っている。戦闘を行うにも計画を進めるにもまず情報が必要だ。だからこそ、白は風紀委員本部セントラルジャッジメントの情報網を他の追随を許さないほどのモノに鍛え上げたのだ。
さすがにアレイスターの滞空回線アンダーラインには劣るが、それでも他組織よりは圧倒的な量の情報が風紀委員本部セントラルジャッジメントには集まっていた。
「では、三位はあの爆発をどうやって起こしたのですか?」
少なくとも十五夜には方法が思いつかない。精神系最強の能力といえども爆発を起こす方法なんてないはずだ。
そ・ん・な・わ・け・が・な・い・。
「……………こい、な」
白は十五夜の耳に入らないほど小さな声で呟いた。ありったけの侮蔑となけなしの敬意をこめて、心の底から憎んだ。
「委員長?」
返答がないことにわずかな疑問を覚える十五夜。自分の質問はそこまで答えづらい、答えられないモノなのだろうか、と思った。答えられない質問ならば答えてくれなくても構わないのだが。
「……………そもそも前提が間違っているんだ、十五夜」
「前……提、が……?」
「な・ぁ・、」
一息おいて、わずかな怒気を滲ませながら白は言った。
「ど・う・し・て・さ・っ・き・か・ら・三・位・が・超・能・力・を・使・っ・て・爆・発・を・起・こ・し・た・こ・と・に・な・っ・て・い・る・ん・だ・!・!・!・」
「―――――――――――っっっ!!!」
その怒気に押される。気圧される。
本当に、本気で白は怒っていた。十五夜にというよりもあまりにも迂闊すぎた自分自身に。
「冷静になって考えてみろ!この街にある特有のモノは何も超能力だけではないだろう!超能力などこの街の特異性の一面にすぎない。この街の本当の特異性はむしろ超能力を体系化できるほどの科学力の方だろうがッ!!!」
十五夜は衝撃を受けた。
白に怒鳴られたことにではなく、自分自身にその考えが浮かばなかったことに。
そう、自然に考えてしまえば爆発現象を起こすのに超能力を使用する必要はない。御坂美琴が粉塵爆発を起こしたように、通常の爆薬、爆弾を使えば十二分に爆発現象を起こすことが出来るのだ。
その考えが浮かばなかったのは強力な原石を持っているが故に傲慢が理由だったのかもしれない。
【もしくは、ある意味では思考を犯されていた、といったほうがいいのかもしれないな】
「いや、それでも待ってください委員長。私の見た限り爆発音はかなりモノでした。しかも地面に亀裂がはしり、地面が沈み込むほどの量の爆薬なんていったいどこに仕掛けてあったというのですか?」
「察しが悪いな、十五夜。当然下だ」
「下?」
「地面の下に爆薬を埋めておけばいいんだよ」
簡単な口調で白は言った。
「苦罠の勢力にだって僕ら風紀委員本部セントラルジャッジメントと同じように空間移動能力者テレポーターの一人や二人はいるはずだ。だったらその空間移動能力者テレポーターが操車場付近の地面の下いっぱいに爆薬を埋め込めばいい。遠隔起爆を可能とした状態でね」
「では、三位が行った『とあること』とは爆薬の遠隔起爆ですか」
「その通り。スイッチを押すだけの作業だろうし精神系能力者でも問題なく行えるだろう。そして何より三位自身の目的を達成することも出来るかもしれないからね」
「………………………」
白の返答によって連鎖的に二つの納得が生じ十五夜は黙った。
「そもそも御坂美琴が一方通行アクセラレータに使った改良版音響式能力演算妨害装置キャパシティダウンバージョンベータだって、地面の下に埋めてあったはずだろう。ならば必然彼らの勢力に空間移動能力者テレポーターいるのは当然だ」
十五夜は確認のために白に話しかける。
「重機を使ったという可能性はないのですか?」
「ないな。重機なんて目立つモノを使ったら絶対にどこかの勢力が気付く。あの操車場には地面を掘り起こせるような重機は存在していない。よそから重機を持ち込むような目立つマネを苦罠がするわけがない」
当然と言えば当然の論理だ。重機の代わりをなすことのできる人間がいるのならば、目立つ重機よりも目立たない人間を動かす。監視網を逃れるためならそれが正しい。
「そして、起爆した爆薬の目的についてだが……。ここまで言えばさすがにわかるだろう、十五夜」
「はい。地下下水道で戦っていた上条当麻を生き埋めにすること、ですね」
「その通りだ」
地面に埋められた無数の爆発物を超能力者予備集団セブンバックアップ第三位が遠隔起爆し操車場の周りの地面を一気に崩落させる。それこそが、あの爆発の真の目的だった。
十五夜を目的としたものでも、御坂や一方通行アクセラレータを目的としたものでもなく、地下下水道にいる四人、いや厳密には一人を目的としたものだったのだ。
「彼らはいつの段階でそれを仕込んでいたのでしょうか。地盤を崩落させ、地下下水道を埋め尽くす勢いの爆発など並大抵の量で出来ることではありませんが……」
「半年前から準備していた、と言っただろう。当然去年の冬から今年の夏までにかけて準備していたんだろうさ」
「それは……」
半年前からの準備。言うのは簡単だが行うのは不可能に近い。あの操車場の地下にある下水道でいずれ誰かが戦うことを半年も前から予期するのはそれこそ予知能力者でもない限りは不可能だ。
半年前といえばまだ絶対能力進化実験レべルシックスシフトが始まったばかりで、こんなことになるなんて予想も出来ないのだから。
だが、
「言いたいことはわかるさ。半年も前からあの地下下水道に僕らの勢力が行くことを予想するなんて不可能に近い。それこそ、この『僕』でも不可能だろうさ」
「ですが……」
「だがあいつなら、造られた子供たちプログラムチルドレンであるあいつ、天埜郭夜ならそれが出来る。それが出来るからこその造られた子供たちプログラムチルドレンだからな」
造られた子供たちプログラムチルドレン。
その言葉を言う白の表情はあらゆる感情がないまぜになったかのようなモノだった。言葉に色があるというのであればきっと『造られた子供たちプログラムチルドレン』という単語はすべての色がごちゃ混ぜになったように汚らしい漆黒になっているだろう。
「白・様・」
「大丈夫……ですよね」
「十五夜」
「何も心配する必要はない。すべて僕に任せておけばいい」
自信に満ち溢れたその言葉と態度は、確かに十五夜らのトップにふさわしいものだった。
「どちらにせよ、最後に嗤うのは僕たちだからな」
https://syosetu.org/novel/56774/66.html
白白白と『彼』① 独白、またの名を独り言
「世界物語キャラクターストーリー理論」
学園都市第一学区に存在する風紀委員本部セントラルジャッジメントの最上階特別会議室天秤の間において白白白は独り言をつぶやいていた。
「君も知っているだろう?これは僕の提唱する世界の成り立ちに関する理論なんだがね」
ただし、独り言といってもこの場合の独り言とは会話の相手がいないという意味での独り言では無い。どちらかというと一人で勝手にしゃべっているという意味での独り言だ。
「この世界はどこかの誰かが書いている物語にすぎない。だから、物語の登場人物になりきったような行動をとれば、自然に自分の望むように物語が進む、という理論だ」
しかし白は誰に向かって話しているのだろうか。天秤の間には白以外の人間は誰もいない。十五夜は上条たちにストロビラを埋め込むために操車場に向かっていってしまったし、罠明はとっくに退出している。
「誰かを救いたいのならば主人公ヒーロー的な行動をとればいい。犯罪を犯した後に討たれたいのならば悪人ヒール的な行動をとればいい。たった一人のために大勢を[ピーーー]のならば悪の主人公ダークヒーロー的な行動をとればいい。世界を滅ぼしたいのならば絶対悪オールマーダー的な行動をとればいい。主人公ヒーローに守られたいのならば主人公の恋人ヒロイン的な行動をとればいい」
その後も、白はただ淡々と『誰か』に向かって言葉を並べていく。白の言葉を聞いている『誰か』に向かって。
「そして、世界を救いたいのなら救済者ヒーロー的な行動をとればいい。そう、救済者ヒーロー的な行動をね」
にやにやと不気味に無邪気に笑い嗤い哂いながら、まだまだ白は言葉を連ねる。『誰か』に向かって一方的に話す話す話す。
「なぁ、気付いているか?それとも気づいていないのか?あるいは、気付いていてなお無視しているのか?もしかして、気付いた時にはすでに後戻りできなかったのか?」
返答はないが白は必ず聞こえていると確信していた。この学園都市において『彼』の目を逃れるのは、耳を封じるのは、至難の技だ。それは『最強原石』木葉桜十五夜を所有して、さらに十五夜のほかにも強大な戦力を多数保有している白も例外ではない。
『彼』はそれだけの力を持っているし、『彼の友』はそんな『彼』の命令を忠実に遂行できるだけの能力を持っている。
『彼』と『彼の友』の関係は白と十五夜の関係にとてもとてもとても近いものだから。
「君のその行動は世界を救う救済者ヒーローのものではなく、主人公に討伐されるべき黒幕ストーリーテラーのものだぞ。そんなざまじゃ、何千年たったって世界は救えない」
呆れたように、憐れむように、ただ淡々と白は告げる。告げる。『彼』に告げる。
「君のその計画は欠陥が多すぎる。例えば、そう上条当麻についてだ。幻想殺しイマジンブレイカー、そしてその奥にあるモノ。あるいは『上条当麻』という存在の根源、本質について君は少し過信しているのではないかな?」
白は『彼』のことをよく知っていた。おそらくは世界中の誰よりも『彼』のことを知っていた。
それはイギリス有数の魔術結社である『カリスマを研究する組織』のボスよりも深く、出現すれば世界が一瞬で崩壊してしまうほどの力を持った存在達よりも深く知っていた。
「確かに彼は強い。特段に力が強いうというわけでは無いが、それとは別種のところで強い。『絆』あるいは『繋がり』、そういった『生物に対する影響力』はおそらくこの世の誰よりも強いんだろう。もちろん、それは『正』の意味でだが」
別に白は昔『彼』の友だったとか、しつこくしつこく『彼』のことを嗅ぎまわっていたとか、『彼』のただ唯一の理解者であるとかでは無い。
むしろ逆だろう。『彼』は白のことを警戒している。得体のしれない存在だと、気味の悪い存在だと警戒している。
そして同時に評価している。正しく『恐れ』、ただしく実力を評価している。
「そう、上条当麻は、いや『神浄討魔』は強い。その称号キャラクター性からも明らかだが、何せあの引きこもり共にさえ特別視される存在だ。弱いわけがない。だが逆説、上条当麻は別に最強ではないし、無敵でもない。その『強さ』だけでは頂点には絶対に届かない」
上条当麻。そして、神浄討魔。
上条当麻は救済者ヒーローである。これは白と『彼』の共通認識事項だ。といっても、上条当麻は別にご都合主義に恵まれているわけでは無い。
敵の攻撃がたまたま急所を外れる。
敵の気まぐれで生き残る。
運よく敵の家族と知り合う。
土壇場で逆転の秘策が思いつく。
ピンチに偶然味方が通りかかる。
旅先でたまたま事件に遭遇する。
毎日毎日世界の危機にぶつかる。
成功率1パーセントの作戦が成功する。
理由もなく急にモテモテになる。
偶然女の子の裸を見る。
かつての敵がツンデレ気味に助けに来る。
組織のトップと都合よく知りあう。
そんなご都合主義が上条当麻には訪れない。
絶対に訪れない。
敵の攻撃がたまたま急所を外れない。上条は重傷を負ったまま戦闘を続行する。
敵の気まぐれで生き残ったりしない。上条は生き残らせられるのは敵にとって利用価値があるから、又はここで上条を[ピーーー]と敵によってマイナスになるからだ。
運よく敵の家族と知り合わない。敵の妹が「もうやめて!お兄ちゃん!!!」とか言って割り込んでこない
土壇場で逆転の秘策が思いつかない。逆転の秘策は土壇場で急に思いつくものではなく、上条の経験と今までの情報を総合してなんとか導き出すものだ。
ピンチに偶然味方が通りかかったりしない。もしも、味方が通りかかるのならば、その味方はずっと上条のことを探していたのだろう。
旅先でたまたま事件に遭遇しない。仮に事件が複数回連続して起こるのならば、それは誰かが作為的に上条の周りで事件を起こしているということだ。
毎日毎日世界の危機にぶつからない。というかそんな簡単に世界の危機は訪れない。
成功率1パーセントの作戦が成功しない。奇跡はそんなに簡単に怒るものではない。確かな努力と、必要な伏線があれば話は別だが。
理由もなく急にモテモテにならない。そんな簡単にモテモテになるのならばまずはハニートラップを疑うべきだ。
偶然女の子の裸を見たりしない。上条当麻にそんな偶然は起こらない。起きるとしたら偶然ではなく事件を解決したご褒美だ。
かつての敵がツンデレ気味に助けに来ない。スタンバっていたのなら話は別だが。
組織のトップと都合よく知りあわない。組織のトップは打算なく動かない。知り合ったのならそれは都合がいいのではなく、『上条と知り合えば利益がある』と組織のトップが判断した結果だ。
「頂点。つまり世界最強の存在達。特別で特異で特殊で特記的な『最強』。平たく言ってしまえば異なる位相に住む化物共のことだが、はたして上条当麻は彼らに勝てるのか?魔神共に、吸血鬼共に、もしくは『空白の主』に勝てるのか?上条当麻の称号キャラクター性は、その救済者ヒーローの力は、度合いは、奴らに届くのか?」
上条当麻に才能はない。そして、上条当麻の右手に宿る幻想殺しイマジンブレイカーもそれだけではたいしたものではない。
確かに幻想殺しイマジンブレイカーはほとんどすべての異能を無効化できる究極のアンチだが効果範囲は右手のみと非常に限定されている。極端な話、右手に触れないように能力を使えば何の問題もないのだ。
「まぁ、言いたいこと自体は分かる。君の計画も決して無謀というわけではない。むしろ綿密に練られているというべきだろう。しかし、だ」
しかも圧倒的な物量や世界そのものを改変する力は上条には防ぎようがない。そのまま対応も出来ずに圧殺され、圧倒されるだけだ。
「君は少し人間を信じすぎているのではないかな?少し人という種を信頼しすぎているのではないかな?何も上条当麻という存在に限ることではなく、例えば計画の中核に存在する一方通行アクセラレータや最悪の科学者たち『木原』についても」
無論、これ以上上条らが成長できないというわけでは無い。むしろ逆、『彼』は出来うる限り上条のことを成長させようとしている。この絶対能力進化実験レべルシックスシフトも上条の成長計画の一環ですらあるのだ。
「信じ、信頼し、信用する。確かに『人間』として大事なことだ。しかし、それが盲信の域に達し、根拠もなく『彼ならできる』と信じ込んでしまうのは危険だ。それはもはや信頼や信用ではなく、依存や狂信の域になってしまう」
けれども、やはり『彼』の計画は穴がある。そもそも人という存在は、特に上条当麻という称号キャラクター性は、『彼』程度に御せる器ではない、と白は考える。
「話が長い?いやもう少しで終わるさ。そろそろ私の話も終盤だ。なにしろ私は君のことを心配しているんだ。後から嘆き、憂い、憤ってからでは遅いだろう?もうあの時みたいな涙は流したくないだろう?」
その言葉に対応するように空気が揺れた。空間自体に震動が起こっているように、白のいる天秤の間の空気が不自然に蠢いた。
『彼』の怒りに、あるいは嘆きに対応するかのように。
「おおっと、今の発言は不用意だった。すまない。忘れてくれ」
それを敏感に察知した白はすぐさま謝罪した。『彼』と白の間にはあまりにも高すぎる壁がある。白が『彼』と戦っても勝てる確率はほとんどない。というか零だろう。組織同士で戦えば別だが、個人間での戦いは戦力差が明確だ。
「まぁ、前置きが長くなったが何が言いたいかというとだ」
風紀委員本部セントラルジャッジメントという組織を従える白白白と学園都市という街を作りだした『彼』。
しかし、忠実な部下の豊富さという意味では白に軍配が上がる。『彼』を本当の意味で理解し、『彼』が本当の意味で信頼している味方なんて片手の指で足りるほどしかいないのだ。
「アレイスター。君は早めに計画プランを修正したほうがいい。君が長年かけて育てた一方通行アクセラレータは、君の思っているよりもはるかに幼稚で幼い精神の持ち主だぞ」
「…………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………」
その言葉に、
窓のないビルの中にいる『人間』は、
静かに、
その手の中に握られたねじくれた銀の杖プラスティングロッドを振るって、
直後に、天秤の間を暴虐が満たした。
https://syosetu.org/novel/56774/110.html
オリジナルキャラクター紹介
白白白はくびゃくしろ……性別 男
所属 風紀委員本部セントラルジャッジメント
役職 風紀委員本部セントラルジャッジメント委員長
風紀委員本部セントラルジャッジメント序列ランキング 委員長のため無し
特殊能力 不明
二つ名 造られた子供たちプログラムチルドレン
所持武器 不明
戦闘スタイル 不明
風紀委員本部セントラルジャッジメントの委員長。絶対能力進化実験レべルシックスシフトの件では風紀委員本部セントラルジャッジメントに所属している部下を使って暗躍した。
木葉桜十五夜このはざくらまんげつ……性別 女
役職 風紀委員本部セントラルジャッジメント委員長補佐、学園都市特記戦力
風紀委員本部セントラルジャッジメント序列ランキング 委員長補佐のため無し
特殊能力 原石 世界支配ワールドイズマイン
二つ名 最強原石 風紀委員本部セントラルジャッジメント最後の切り札 委員長の懐刀 意思無き人形 正義の尖兵等
所持武器 専用武器懐中時計型万能毒製造霊装『シスラウの時計』
戦闘スタイル 位相操作、万能型
風紀委員本部セントラルジャッジメント委員長補佐。絶対能力進化実験レべルシックスシフトの件では白の指示に従い暗躍した。基本的に白には絶対服従である。原石世界支配ワールドイズマインは局地的位相操作を行うことのできる力であり、基本的に戦闘で負けることはない。十のリミッターがかけられており、普段の力は大幅に制限されている。
扼ヶ淵埋娥やくがぶちまいが……性別 男
役職 風紀委員本部セントラルジャッジメント攻撃部隊総隊長
風紀委員本部セントラルジャッジメント序列ランキング 攻撃部隊総隊長のため無し
特殊能力 不明
二つ名 数の無い槍ロストオブランス
所持武器 火炎放射器
戦闘スタイル 近接格闘、遠距離火炎放射
風紀委員本部セントラルジャッジメントの攻撃部隊総隊長。絶対能力進化実験レべルシックスシフトの件では白の指示に従い上条当麻と戦闘を行い勝利した。過去に何らかの出来事があったことが示唆されるが詳細は不明。能力は現段階では不明だが、地下下水道の崩落から身を守るために能力を使ったように描写がされている。
魅隠罠明みかくれみんみん……性別 女
役職 風紀委員本部セントラルジャッジメント開発部隊総隊長
風紀委員本部セントラルジャッジメント序列ランキング 開発部隊総隊長のため無し
特殊能力 不明
二つ名 不明
所持武器 不明
戦闘スタイル 不明
作ったモノ 懐中時計型万能毒製造霊装『シスラウの時計』等
風紀委員本部セントラルジャッジメントの開発部隊総隊長。絶対能力進化実験レべルシックスシフトの件で動いた様子はないが、開発部隊総隊長だけあって武器や防具、兵器、道具類を作ることに天才的能力をほこる。ただし、自分の製作したモノを馬鹿にされたと感じるとヒステリー気味に怒鳴る。罠明の製作したモノを馬鹿にするのは止めた方が賢明である。過去に何らかの出来事があったことが示唆されるが詳細は不明。ただし、白が別組織から引き抜いたような描写がなされる。懐中時計型万能毒製造霊装『シスラウの時計』の製作者は彼女であるが、霊装をつくれるという事は魔術師なのかもしれない。
千疋百目せんひきひゃくめ……性別 女
役職 風紀委員本部セントラルジャッジメント攻撃部隊第二班班長
風紀委員本部セントラルジャッジメント序列ランキング 第10位→第8位
特殊能力 超能力『反転世界パラレルワールド』
強度 大能力者レベルフォー
二つ名 逆さまに狂う世界オセロゲーム
所持武器 不明(本来なら武器は所持しているようだ)
戦闘スタイル 近接格闘、投擲
称号 宿敵ライバル
風紀委員本部セントラルジャッジメントの攻撃部隊第二班班長。絶対能力進化実験レべルシックスシフトの件では白の指示に従い白井黒子と戦闘を行い勝利した。。絶対能力進化実験レべルシックスシフトの一件終了後白の指示によってに風紀委員本部セントラルジャッジメント序列ランキングが二つ上がった。傷を負うことを恐れており、本人は少なくとも風紀委員本部セントラルジャッジメント序列ランキング五位になるまで無傷でいなければならないと思っている。第八拘束リミッターまでを解除した十五夜の姿を見て気絶ですんだことからも、百目自身の強さがうかがえる。
無何有峠妃むかいとおげきさき……性別 女
所属 風紀委員本部セントラルジャッジメント
役職 風紀委員本部セントラルジャッジメント諜報部隊総隊長
風紀委員本部セントラルジャッジメント序列ランキング 諜報部隊総隊長のため無し
特殊能力 不明
二つ名 不明
所持武器 不明
戦闘スタイル 不明
風紀委員本部セントラルジャッジメントの諜報部隊総隊長。絶対能力進化実験レべルシックスシフトの件では白の指示に従い白井黒子と上条当麻の監視を行っていた。両名が地下下水道に入ったのを見てから撤退を行った。
五寸釘匕首ごすんくぎあいくち……性別 女
役職 風紀委員本部セントラルジャッジメント諜報部隊第一班班長
風紀委員本部セントラルジャッジメント序列ランキング 不明
特殊能力 超能力一方念話ワンサイドテレパス
強度 強能力者レベルスリー
二つ名 無し
所持武器 不明
戦闘スタイル 不明
風紀委員本部セントラルジャッジメントの諜報部隊第一班班長。絶対能力進化実験レべルシックスシフトの件では白と妃の指示に従い白井黒子と上条当麻の監視を行っていた。また、同時に連絡要員として能力を使用し埋娥や百目に指示をした。
浣熊四不象あらいぐましふぞう……性別 男
役職 風紀委員本部セントラルジャッジメント諜報部隊第■班■■
風紀委員本部セントラルジャッジメント序列ランキング 不明
特殊能力 不明
二つ名 不明
所持武器 不明
戦闘スタイル 爆弾使用、銃?使用
風紀委員本部セントラルジャッジメントの諜報部隊第■班■■。。絶対能力進化実験レべルシックスシフトの件では白の指示に従い空中の戦力への対応、人員の回収を行った。『HsAFH-18』に追いつき、侵入できるほどの能力を持っている。空を飛ぶ姿を確認できるが、何らかの道具によるものなのかそれとも能力によるものなのかは不明。
常世涯最果とこよのはてさいはて……性別 男
役職 風紀委員本部セントラルジャッジメント封印戦力
風紀委員本部セントラルジャッジメント序列ランキング 封印戦力のため無し
特殊能力 不明
二つ名 不明
所持武器 専用武器体内保存式緊急自殺用超威力爆弾『オメガジエンド』
戦闘スタイル 自爆
風紀委員本部セントラルジャッジメントの封印戦力。最果のことは苦罠らも表に出てくるまで知らなかった。能力は不明ながら擬似的な不死のようなものだと推察できる。脳幹は『封印』という手段で楽に対処できると語った。普段は 風紀委員本部セントラルジャッジメントの地下第11層にいる。白さえもなるべく使いたくないと思う戦力であるが、自爆戦法を使えるという点ではほかの何物にもできない唯一の戦力ではある。
常闇燕獅とこやみえんし……性別 男
所属 風紀委員本部セントラルジャッジメント
役職 風紀委員本部セントラルジャッジメント防衛部隊総隊長
風紀委員本部セントラルジャッジメント序列ランキング 防衛部隊総隊長のため無し
特殊能力 不明
二つ名 不明
所持武器 不明
戦闘スタイル 不明
風紀委員本部セントラルジャッジメントの防衛部隊総隊長。それ以外のデータは現段階では一切不明。
白神九十九つくもがみつくも……性別 女
役職 風紀委員本部セントラルジャッジメント支援部隊総隊長
風紀委員本部セントラルジャッジメント序列ランキング 支援部隊総隊長のため無し
特殊能力 不明
二つ名 不明
所持武器 不明
戦闘スタイル 不明
風紀委員本部セントラルジャッジメントの支援部隊総隊長。白は十五夜を通してこの人物に百目の風紀委員本部セントラルジャッジメント序列ランキングを上げるように命令した。
五安城安土城いなぎあづちじょう……性別 男
役職 風紀委員本部セントラルジャッジメント■■■■■■■■■
風紀委員本部セントラルジャッジメント序列ランキング 不明
特殊能力 不明
二つ名 不明
所持武器 不明
戦闘スタイル 不明
詳細一切不明。白曰く外のことを任せているらしい。
死縁鬼苦罠しえんきくわな……性別 男
役職 学園都市統括理事会メンバー
特殊能力 不明
二つ名 不明
所持武器 不明
戦闘スタイル 不明
ブレイン 天埜郭夜
学園都市統括理事会メンバーの一人。絶対能力進化実験レべルシックスシフトの件では天埜郭夜と共に暗躍した。計画プロジェクトと呼ばれる計画を進めているようだが詳細不明。交渉力、部下の豊富さ、知略に富んだ頭脳、どれをとっても敵にまわしたくない存在である。木原幻生とのつながりがあり、大覇星祭中に御坂美琴の絶対能力者レベルシックス化を行う予定だったようだが、何のためかは不明。彼がここまで御坂美琴にこだわる理由はいったい何なのだろうか……。
神亡島刹威かみなきじまさつい……性別 女
役職 死縁鬼苦罠直属の部下
特殊能力 超能力交点爆撃チェックボンバー
強度 無能力者レベルゼロ
二つ名 無し
所持武器 無し
戦闘スタイル 近接戦闘型
死縁鬼苦罠の部下の一人。といってもいくらでもいる消耗品としての部下であり本人もそれは自覚している。それでも苦罠に尽くすのはかつて苦罠に『闇』から救われたから。浣熊四不象によって殺害され、『HsAFH-18』の爆破と共に死体も消失した。実は見捨てられた女グレイレディによって操られていたが本人は当然自覚していない。交点爆撃チェックボンバーは定めた人物と自身の視線の交わった部分を一直線として、その直線の中間部分を爆破する能力。ただし無能力者レベルゼロ
のため実用性は皆無。完全に死亡しているため今後登場することはない。
巳神蔵豈唖みかぐらあにあ……性別 女
所属 学園都市統括理事会メンバー死縁鬼苦罠勢力
役職 死縁鬼苦罠直属の部下
特殊能力 超能力水分生成クウォータージェネレーション
強度 大能力者レベルフォー
二つ名 無し
所持武器 無し
戦闘スタイル 能力使用
死縁鬼苦罠の部下の一人。替えはききにくいレア度☆3くらいの存在。御坂美琴と交渉するときの苦罠の護衛として選ばれた。
殿岳深罠てんがくみみん……性別 男
役職 死縁鬼苦罠直属の部下
特殊能力 超能力染まらない透明インビジブレ
強度 大能力者レベルフォー
二つ名 無し
所持武器 無し
戦闘スタイル 能力使用
死縁鬼苦罠の部下の一人。替えはききにくいレア度☆3くらいの存在。御坂美琴と交渉するときの苦罠の護衛として選ばれた。
裂ヶ淵瞑娥さくがぶちめいが……性別 女
役職 団長
特殊能力 不明
二つ名 不明
所持武器 布、剣等
流派 天地破壊流
彼者誰時に輝く月シャイニングムーンの団長。点々とはまたベクトルの違った戦闘狂である。死なない最果を相手に互角に戦う、脳幹を初まりの領域に送り届ける等、所々でファインプレーをしている。
柿柘榴水跳かきざくろしぶき……性別 女
役職 第一級部隊長
特殊能力 超能力不動冥奧ストップモーション
強度 強能力者レベルスリー
二つ名 無し
所持武器 無し
戦闘スタイル 能力使用
彼者誰時に輝く月シャイニングムーンの第一級部隊長。御坂美琴との交渉時、苦罠からの要請で護衛としてかしだされた。戦闘能力は確かなモノであり、並の強能力者レベルスリーよりもはるかに強い。観察眼も優れている。金には汚い。
矛盾矛盾ほこたてむじゅん……性別 女
役職 第三級部隊長
特殊能力 超能力念動能力サイコキネシス
強度 無能力者レベルゼロ
二つ名 無し
所持武器 急速冷却機構内臓型窒素弾丸生成銃HsP-07
戦闘スタイル 銃撃、近接格闘
十五夜足止めのために戦った人間の一人。シスラウの時計による毒で死亡した。復活はない。
鳳仙花蝶々ほうせんかてふてふ……性別 女
役職 第三級部隊長
特殊能力 超能力発火能力パイロキネシス
強度 無能力者レベルゼロ
二つ名 無し
所持武器 速振動剣チェーンソード
戦闘スタイル 近接剣撃
十五夜足止めのために戦った人間の一人。シスラウの時計による毒で死亡した。復活はない。
罪罰贖つみばつあがない……性別 女
所属 彼者誰時に輝く月シャイニングムーン
役職 第一級大隊長
特殊能力 不明
二つ名 不明
所持武器 不明
戦闘スタイル 不明(狙撃時観測手となる)
彼者誰時に輝く月シャイニングムーンの第一級大隊長。十五夜足止めのために戦った人間の一人。超遠距離から狙撃を行う波並波狂濤なみなみなみきょうとうの観測手として戦った。描写を見るに能力によるものか何らかの道具を使ったかは不明だが、二キロ先を目視で視認できている。
波並波狂濤なみなみなみきょうとう……性別 男
役職 第一級大隊長
特殊能力 不明
二つ名 不明
所持武器 急速冷却機構内臓型窒素弾丸生成狙撃銃HsSR-04
戦闘スタイル 狙撃
彼者誰時に輝く月シャイニングムーンの第一級大隊長。十五夜足止めのために戦った人間の一人。超々一流の狙撃手であり二キロ先の獲物を確実に狙撃することが出来る。狙撃時のペアは贖である。
屑爬劉くずのはりゅう……性別 男
役職 第三級大隊長
特殊能力 不明
二つ名 不明
所持武器 不明
戦闘スタイル 不明
何やら苦罠らが動かしていた存在。現在の所、何をしたのかは不明。
一本線点々いっぽんせんてんてん……性別 男
役職 個人傭兵、学園都市特記戦力
特殊能力 不明
二つ名 三千世界武神
所持武器 剣(名称不明)
流派 天下無双流
学園都市に三人しかいない個人傭兵の一人。苦罠の依頼で十五夜の足止めを行った。戦いに飢えているというよりは強さを求める類の戦闘狂であり、かつては全能神トールと戦い引き分けたこともある。位相を操る十五夜に一撃を与えたことからもその戦力の強大さがわかる。
『空白の主』……性別 不明
役職 不明
特殊能力 位相操作、神器創造、神器属性混合
二つ名 空白の主
所持武器 不明
戦闘スタイル 武器投影及び投擲
初まりの領域と呼ばれる場所に住む異形の存在。一方通行アクセラレータは直感的に人類の敵と感じた。位相操作能力を持つが、濃度で十五夜に劣るため戦いでは押し負ける。ただし、人類の生み出した魔術は効かない、初まりの領域では死なない、一方通行アクセラレータを上の位相世界に送り届けるなど隔絶した実力を持つことは変わりない。
アルフ……性別 不明
役職 不明
特殊能力 不明
二つ名 不明
所持武器 不明
戦闘スタイル 不明
『空白の主』と親しげに話す正体不明の存在。普段は最終血戦城カステルル・ブランという場所にいるらしい。
占卜卜占せんぼくぼくせん……性別 女
役職 不明
特殊能力 不明
二つ名 不明
所持武器 不明
戦闘スタイル 不明
佐天涙子を占った占い師。ただの一般人のようにも思えるが……?
あとがき&次回予告
↓
8月21日夜、学園都市超能力者レベルファイブ序列第三位、電撃使いエレクトロマスターの超能力者レベルファイブ、超電磁砲レールガンの御坂美琴は表舞台から姿を消した。
姿を消した御坂美琴を必死に探す白井黒子。そんな白井に協力する初春飾利、佐天涙子、そして上条当麻達。あらゆる伝手を使い、人に協力を求め、情報を探しても御坂美琴の姿は一向に見えない。
「……………みさか……………みこと?」
そんな白井達の前に現れた幼女。幼女の名はフェブリ。フェブリはなぜか、御坂美琴の名前を知っていた。
「試運転としては十分な成果だ」
蠢く悪。
「ムカついたぜ。この俺が実験台扱いとはなァ!!!」
圧倒的な力を見せつける超能力者レベルファイブ。
「……肯定。[ピーーー]なら、やはり御坂美琴です」
暗躍する超能力者予備集団セブンバックアップ。
そして、
「あれ?黒子じゃない。どうしたの、こんなところで?」
白井黒子は『御坂美琴』と再会する。
求めたものはかつての平穏。変わり果てた少女を前に、少女は『闇』を知る。
第一部 第二章 革命未明サイレントパーティー 開幕
あとがき
まず、第一にお礼を申し上げます。
ここまで私の作品『とある闇の中の超能力者』を読んでいただきありがとうございました。
いやぁ、この作品を始めたのは2015年07月14日(火) 18:39なので実に1年以上も一章を書いてきたわけです。一章だけを書いてきたわけです。
…………ではここで作品の内容を振り返ってみましょう。
話数 111話。
合計文字数 562569文字。
平均文字数 5114文字。
UA 57781。
お気に入り 157件。
感想 104件。
総合評価 266pt。
平均評価 6.41。
調整平均 6.60。
うん!長い!長すぎる!
なにこれ?第一章のみで50万字越えとか馬鹿なの?死ぬの?
……冗談は置いておいていや本当に最後まで読んでくれた人には感謝しかありません。特に感想をくれた方や評価をしていただいた方。例え酷評でも低評価でも作者の励みになっています。
この場を借りて、もう一度だけお礼を述べさせていただきます。
本当に、本当にありがとうございました!!!!!
では作品内容にでも触れてみましょう。
この作品を私が書いたきっかけなんですが、私は昔『とにかく御坂美琴の闇堕ち作品が読みたい』と思っていたころがありました。
ところがネットの海を探しても御坂美琴闇堕ち作品はそんなにありませんでした。ヤンデレールガン系は除きます。あれは面白いですが闇堕ちでは無い。
探して探して見つけた作品も短かったり消化不良だったり完結してなかったりで結局満足できた作品は2chのとある作品とハーメルンのとある作品だけでした。
ならしょがない。もう自分で書いちゃおう!と思ってこの作品の設定を練り始めました。
一行プロット組んでSプロット組んで設定を考え、原作を何度も読み、オリジナルキャラクターの思惑を考え、そうしてすべての材料がそろったと判断して書き始めました。
目的がとにかく御坂美琴を闇に落とすことだったので、もっとも御坂美琴が鬱な状態である樹形図の設計者ツリーダイアグラム破壊の一件からの分岐にしました。
そこからMNWと融合した御坂を書いたり、一方通行の魔神化を書いたり、ミサカ19090号の動きを書いたり。
いや、本当に一章完結できるまでが長かったですね。
私ももちろん頑張りましたが、いつ終わるかわからなかった読者様のストレスはそうとうのものだったのではないでしょうか。ごめんなさい。
今回の一章の反省点としては、やはり長さですね。絶対能力進化実験レべルシックスシフト編完結だけでここまで長い作品は禁書二次史上初でしょう。
少なくとも私は初めて見ました。
今後はもっと簡潔に、少ない文章量にしたいですね。……………無理かなぁ。
ちなみに私は作者ですが異常なほどの設定厨であり中二病患者です。
この作品、本文は500000字以上ありますが、設定集だけでも150000万字あります。
つまり、それぐらい設定が多いのです。本編中に入れたかった武器とか兵器とか詠唱とかあるのに全然使えなかったからこの後の章で使いたいですね。
一章にはテーマが特にありません。私の位置づけでは一章はチュートリアルなので、勢力とか世界観の説明とかオリジナルキャラクターとかのキャラ付けに一章を丸々使った感じです。
さて、二章はまたまた暗い展開が続きます。鬱展開です、たぶん。
よかったら二章も続けて読んでくれると嬉しいです。
それでは、今回はこの辺りでページを閉じていただいて、
次回もページをめくっていただける事を祈りつつ、
本日は、ここで筆を置かせていただきます。
……さて、二章に取り掛からなければ。
「まずは、その理想を打ち砕く!!」
上里翔流。
超能力者でも魔術師でもなく、原石でもなければ魔神でもない、そしてオッレルスのような魔神の成り損ないでも、幻想殺しのような特別な力もたない真の意味で平凡な高校生。
特別な力もなく、特殊な立場もなく、特異な家系もなく、優れた頭脳も、莫大な財力も、絶対の暴力も持たないごく平凡などこにでもいる高校生。
そんな上里翔流はとある夜、お菓子を買うためにコンビニに向かっているところで一人の全裸パーカー少女と出会った。
「私は世界を救わなくちゃならないの」
どこにでもいる平凡な高校生『上里翔流』と世界の救済を願う少女『緋異巛新撰ひいかわしんせん』。
二人が出会い、物語が始まる。
これは学園都市の『外』で起こる神域の物語。
【 えっ?
これだけじゃ味気ないって?
何々?
ただでさえ展開の遅いこの物語は完結できるのかって?
僕もそれは気になっていたところだ。
たぶん
このままじゃ5年たっても終わらない。
だから、まぁ、そうだな。
可能性の一部を、確定している未来を、僕がお前らに見せてあげよう。
感謝 し ろ よ
読 者 共
《前略》
だが、
世界有数の超強大な多組織連合による一方的な攻撃を受けてもなお『嫉妬』はまだ死んでいなかった。
とはいえ、
「翔流。このままいけば」
「あぁっ!このまま遠距離から一方的に攻撃すれば倒せるはずだ」
効いていないわけではない。そう上里は判断した。そしてそれは隣で上里はサポートし続ける金火も同じらしい。
そう、立ちすくむ『嫉妬』は明らかな傷を負っていた。
あの時とは違って、多くの人間が犠牲になった『七罪の咎人一斉討伐作戦』の時とは違って、幻覚でもなんでもなく確かな傷を負っていた。
「全員攻撃を切らさないで!!!このままいけば勝てる!!!!!」
金火が全軍を鼓舞する。ともすれば今すぐにでも逃げ出しそうな恐怖の中でそれでも戦えるのは、みんながいるからだった。
独りでは、一人ではきっと無理だった。
「新たな天地を望むか?」
だから、上里も戦える。戦う。この世界を守るために、世界を絶望で終わらせないために。
なのに、
「嫉妬する。私は嫉妬する。嫉妬して嫉妬して嫉妬する。妬ましい!羨ましい!君たちの結束に嫉妬する。君達の能力に嫉妬する。君たちの信頼に嫉妬する」
不気味な言葉を『嫉妬』が呟いて、
そして、
「羨望嫉妬ギルティクラウン」
《中略》
「一つ勘違いを正しておくよ」
「私の――――――『嫉妬』の能力は、すべてを掻き消すことじゃないのさ」
その言葉に、全軍全ての動きが止まった。耳が聞き届けたその言葉は、つまり上里達が知力の限りをつくして立案した作戦の全てが無に帰すことを示していた。
「憤怒」
最初の一歩で今まで与えた傷が消えた。
「色欲」
次の二歩目で仲間割れが始まった。
「怠惰」
続く三歩目で多くの人が倒れた。
「強欲」
さらに四歩目で立場を失った。
「傲慢」
この五歩目ですべての干渉が無意味と果てた。
「暴食」
終わりの六歩目は上里以外の存在を喰った。
「これが『嫉妬』だよ」
最期の七歩目で『嫉妬』が目の前に来ても上里は動けなかった。
《中略》
「あっ、がッッッ!!!」
『嫉妬』がそういった途端に『強欲』が発動し、上里の中の生き汚さが、生への欲求が消えた。
「……ふ、ざ―――――――けっ」
「その怒りに嫉妬する」
『嫉妬』がそういった途端に『強欲』が発動し、上里の中の怒りが消えた。
「っ、ァっ!ぁぁぁあぁあああああああああああああああ!!!!!」
「その憎しみに嫉妬する」
『嫉妬』がそういった途端に『強欲』が発動し、上里の中の『嫉妬』への憎しみが消えた。
「――――――ぅ。ぅぅぅうううううううううう………………………………」
「その悲しみに嫉妬する」
『嫉妬』がそういった途端に『強欲』が発動し、上里の中の悲しみが消えた。
「……………………………………………」
「その無感情さに嫉妬する」
『嫉妬』がそういった途端に『強欲』が発動し、上里の中の無感情な部分が消えた。
「――――――――――――――――――――あっ、ぁあああああ!!!!!しっ、しッ!しっとォ……『嫉妬』おおおおおおおおおおおおおおおおぉぉぉぉぉぉぉぉ!!!!!」
「その後悔に嫉妬する」
『嫉妬』がそういった途端に『強欲』が発動し、上里の中の後悔が消えた。
「嫉妬する」 「嫉妬する」 「嫉妬する」 「嫉妬する」 「嫉妬する」 「嫉妬する」 「嫉妬する」 「嫉妬する」 「嫉妬する」 「嫉妬する」 「嫉妬する」 「嫉妬する」 「嫉妬する」 「嫉妬する」 「嫉妬する」 「嫉妬する」 「嫉妬する」 「嫉妬する」 「嫉妬する」 「嫉妬する」 「嫉妬する」 「嫉妬する」 「嫉妬する」 「嫉妬する」 「嫉妬する」 「嫉妬する」 「嫉妬する」 「嫉妬する」 「嫉妬する」 「嫉妬する」 「嫉妬する」 「嫉妬する」 「嫉妬する」 「嫉妬する」 「嫉妬する」 「嫉妬する」 「嫉妬する」 「嫉妬する」 「嫉妬する」 「嫉妬する」 「嫉妬する」 「嫉妬する」 「嫉妬する」 「嫉妬する」 「嫉妬する」 「嫉妬する」 「嫉妬する」 「嫉妬する」 「嫉妬する」 「嫉妬する」 「嫉妬する」 「嫉妬する」 「嫉妬する」 「嫉妬する」 「嫉妬する」 「嫉妬する」 「嫉妬する」 「嫉妬する」 「嫉妬する」 「嫉妬する」 「嫉妬する」 「嫉妬する」 「嫉妬する」 「嫉妬する」 「嫉妬する」 「嫉妬する」 「嫉妬する」 「嫉妬する」 「嫉妬する」 「嫉妬する」 「嫉妬する」 「嫉妬する」 「嫉妬する」 「嫉妬する」 「嫉妬する」 「嫉妬する」 「嫉妬する」 「嫉妬する」 「嫉妬する」 「嫉妬する」 「嫉妬する」 「嫉妬する」 「嫉妬する」 「嫉妬する」 「嫉妬する」 「嫉妬する」 「嫉妬する」 「嫉妬する」 「嫉妬する」 「嫉妬する」 「嫉妬する」 「嫉妬する」 「嫉妬する」 「嫉妬する」
「嫉妬する」
くくっ。まぁ、こんなところでどうだ。
心配するなよ。これはあくまで未来における可能性の一つ。
作者が気まぐれを起こせば、変わる可能性だってあるさ。
とはいえ、まぁ。
このままいけば、未来は変わらないだろうが、
な
】
とある暗部の御坂美琴って二次創作のメタ視点オリキャラが禁書キャラと読者を見下しまくってる描写だゾ☆
https://syosetu.org/novel/56774/175.html
空白の主と大悪魔① 原初の0.5
初まりの領域において『空白の主』が根本的な敗北をすることはあり得ない。初まりの領域は原初の世界であり、全ての基礎である場所だ。そして『空白の主』は初まりの領域の住人。全てが繋がっている初まりの領域の住人である『空白の主』を[ピーーー]ということは、つまり全時間軸に存在する全人類を全滅させるということに他ならない。
故に、『空白の主』を殺したいのであれば全時間軸に存在する全人類を全滅を許容するするしかない。それを否定したいのであれば、絶対に不可能であるが初まりの領域から『空白の主』を引き離すしかない。全時間軸の全人類の生存は逆説的かつ無条件に『空白の主』の生存を証明し、しかしながら『空白の主』の生存は人類の生存を証明しない。理不尽な相互依存関係がそこにはあるのだ。
「から、からから、からからから!」
ただ、もちろんの事、単純な実力のみで考えれば現イギリス清教最大主教アークビショップである大悪魔コロンゾンは『空白の主』に勝まさる。アレイスター=クロウリーの原型制御アーキタイプコントローラーによって区分けされた時代アイオーン。イシス、オシリス、そしてホルスの時代アイオーンすらも超越した、さらに先の世界に存在する存在。
全力の魔神複数柱からすらも逃れることの出来る、別位相ですらない『新たな天地』という新世界から地力で脱出可能な力を持つ存在。
大悪魔コロンゾン。
拡散の本質を持つ、真なる邪悪。
神話上の存在でありながらあくまでも人間でしかない『空白の主』では決して勝てない敵。
にも拘らず。
「可哀想。可哀想。七ん十可哀想七奴だ。大悪魔五六ンゾン」
這い蹲っていたのは、膝をついたのは、汗を流しているのははローラ=スチュアートだった。
「ぎ、ぐ」
その様を、
かの黄金夜明S∴M∴の創設者の1人であるサミュエル=リデル=マグレガー=メイザースが目にすれば、驚愕のあまり心臓を停止させたかもしれない。
その様を、
近代西洋魔術という形式を作り上げた学園都市の王であるアレイスター=クロウリーが目にすれば、幻と断じたかもしれない。
だって、想像できるか?
あの大悪魔が、あの大悪魔コロンゾンが、
アレイスターですら制御できなかった、メイザースをも出し抜いたあの大悪魔コロンゾンが、
たかが『空白の主』程度に敗北しているなど。
「人類七ん十見捨十十四まえば、私七ん十、五の『空白の主』程度、楽二殺せるの二」
言うまでもなく、そして何度でも繰り返すが。
大悪魔コロンゾン最大主教ローラ=スチュアートの実力は『空白の主』を上回っている。確かにこの初まりの領域は『空白の主』の庭だ。だが、だから何だ?その程度の有利ではかの大悪魔との差は埋められない。
だから、当然別の要素があった。ありていに言えば、大悪魔コロンゾン最大主教ローラ=スチュアートは非常にらしくないことをしていた。自然分解、拡散の性質、本質的な邪悪。
それが大悪魔コロンゾンだというのに。
「は、ははは、はっ、くっッ!」
だが笑う。
無様な様を晒しているのは大悪魔コロンゾンの方だというのに、それでも笑う。
人間ではない人外はそもそも視点が違う。
最初から全てを超越している存在は絶対的にスケールが違う。
それを、表しているかのように。
「この霊媒アバターでは、これが限界なりけるかしらね」
局地的な勝利が全体的な勝利につながるとは限らない。スポーツの団体戦において1勝が全体の勝ちを意味しないように、ここでの敗けは許容できるものでしかない。けれど、そんなことを知らない『空白の主』にとってこの勝利は違和感にしかならなかった。
論ずるまでもなく勝てるはずがない。できるのは時間稼ぎで、それさえもできるかは分からない。
(アルフは何を四十一るのか七……。五の化物を相手二出来るの八、同じ化物の君四か一七一の二)
アルフ。
『空白の主』の友人であり同類。
秘匿された真名はbyucgjビュックグジュール・dqsディクェス・finprovzフィンプロブズ・mekhatwxメカトゥウィークス。
ともすれば、魔術側の最高戦力である魔神すらも凌駕するかもしれない存在。
来てくれれば、心強い。
「からからから。……なぜ、殺三七一?……大悪魔五六ンゾン。ま三か、人類を守っ十一るわけでも七一だろうに」
「……いひ、我は悪魔、大悪魔コロンゾンなりけるのよ」
正直なところを言えば、圧されているのはこちらの方だ、と『空白の主』は思っていた。コロンゾンの思惑が一切分からない。敗北した?負けた?まさか!そんなわけがない。コロンゾンの強さを『空白の主』は十二分に知っている。た・っ・た・2・週・間・前・に・手・に・入・れ・た・ば・か・り・の・情・報・に・よ・っ・て・コ・ロ・ン・ゾ・ン・の・強・さ・は・更・に・補・強・さ・れ・た・の・だ・。
例え血に伏せ地に臥せた状態とはいえそれでもコロンゾンの強さは何も変わらないのだ。
生命の樹セフィロトの隠されし一線、深淵アビスを守る大悪魔。
この世界■■における、頂点の一角。
「メイザースとの契約はまだ切れていない。である以上、私に貴様は殺せない」
「……かっ、からからから!!!メ一三ース!黄金夜明S∴M∴の三ミュエル=リデル=マグ零ガー=メ一三ースか!!!から、だ十す零八、だ十す零八随分十素晴ら四一事を四十九零た。ま三か、五の私の安全が、そん七語十で保障三零る十八ッ!」
『空白の主』と人類種は敵対している。かつて、全ての人類の祖である『空白の主』は全ての人類を愛していた。だが『空白の主』は愛する子供達に裏切られた。『空白の主』が完全に清浄なる存在となり、元いた場所に帰るために作った子供達は、よりにもよって逆に『空白の主』を縛ってきた。
子と親という強い強い関係性を利用して、縛ってきたのだ。人間が名を用いて契約を結ぶように。その繋がりを利用して。『空白の主』と人類種は流血ではなく流れる血によって繋がっているから。
「だったら殺せる!この私でも、人間でも、大悪魔たる君を追放できる!!!」
故にこそ、『空白の主』は初まりの領域などという辺鄙な場所にいる。魔神のいる『隠世』でもアルフのいる『最終血戦城カステルル・ブラン』でもない、常世に対する一切の干渉を制限されたこの初まりの領域に。
エイワスは例外中の例外だ。エイワスも結局のところ常世では霊媒アバターなしに大規模な行動はとれない。そして何よりも契約に縛られる。そう、かつてとあるご令嬢フロイラインと交わした契約は、今もエイワスを縛っている。
メイザースによって縛られたコロンゾンと同じように。
「あぁ、あぁ、あぁ!!!子供に罪を押し付けるまでもない!大悪魔を打ち倒すという功績を立てれば、私の罪は禊がれるッ!!!」
その喜びを抑えることはできなかった。
あるいはこの世で最も罪深き存在に唆される前の『空白の主』であれば、こんな風に欲望を露わにすることはなかったのかもしれない。人類が人類となった理由は賢くなってしまったからだ。つまるところ知恵を付けたから。その理由こそが善悪の知識の木の実を食べてしまったから。故に『空白の主』は楽園を追放された。
この出来事を、――――――失楽園ペルディトゥス・パラディススという。
「――――――戻れる、あの場所に。愛しの楽園に、もう1度ッ!!!今度こそ、私は神に成れる!」
賢さは罪だと定義されている。欲望を持つことは罪だと言われている。今より先に行きたいと、もっと楽になりたいと、誰かのためではなく自分のためにと、それらは全て、全て罪深いのだと、そう言う人がいる。神が人を楽園から追放したのは、人が神になることを恐れたからなのか。神が人に知恵の樹の実を食すことを禁じたのは、人が神の座に辿り着くことを懼れたからなのか。
『空白の主』は、自覚していない。
人類には罪がある。
傲慢スペルビア。嫉妬インウィディア。憤怒イラ。怠惰アケディア。強欲アワリティア。暴食グラ。色欲ルクスリア。
これを7つの大罪といい。
そして莠ャ螟ェ驛主・??ェ邯コ隴壹?螟ァ豐シ遘倶ク?驛弱?菫晄怏謚?閭ス縲弱じ繝サ繝ッ繝ウ繝サ繧キ繝ウ縲によれば、彼は莠コ縺ョ蜈ォ縺、逶ョ縺ョ螟ァ鄂ェを決して自覚できない、無自覚の罪の集約体を『雋ャ莉サ霆「雖』と定義した。
「だから君は此処で死んで?私のための踏み台になって?」
『空白の主』は雋ャ莉サ霆「雖している。彼女は物事を正しく見ていない。人類全体を生贄としか見ていない。当然の供仏。奉仕されることが当たり前と思っている。最も不浄であるが故に、最も清浄に憧れた『空白の主』。
こんな詩を知っているだろうか。
菴輔′鄂ェ縺九o縺九j縺セ縺吶°。
遏・諱オ縺ョ螳溘r蜿」縺ォ縺励◆縺九i縺ァ縺ッ縺ゅj縺セ縺帙s。
菴輔′鄂ェ縺九o縺九j縺セ縺吶°。
陋??逕倩ィ?縺ォ閠ウ繧定イク縺励◆縺九i縺ァ縺ッ縺ゅj縺セ縺帙s。
縺セ縺?鄂ェ縺後o縺九j縺セ縺帙s縺。
縺昴l縺薙◎縺後≠縺ェ縺溘?鄂ェ縺ェ縺ョ縺ァ縺。
『空白の主』は分かっていない。なぜ楽園から追放されたのか。なぜ人類が反逆したのか。与えられる側だった『空白の主』には奉仕する側の気持ちは分からないし、与える側の気持ちもわからない。
「くっ、くっくっくっ」
だからこそ、『空白の主』にはコロンゾンが怖く見えるのだ。恐れていて、畏れている。誰・か・に・頼・る・こ・と・で・し・か・危・機・を・脱・し・て・こ・な・か・っ・た・『空・白・の・主・』は・根・本・的・に・弱・者・だ・。
齢をどれだけ重ねても弱いまま。
実力は上がらず、弱い者いじめしかできない。
コロンゾンの思惑も分からない。
「あっはははははははははははははは!!!!!!」
思わず、といった調子であった。
まるで1秒先に来る絶望を知らない赤子を見る様に、コロンゾンは大笑いした。
「……何が、おか四一?」
「一った一何について!?」
止めを刺そうとしないのは反撃を恐れているから。
会話を続けようとしているのは時間稼ぎのため。
神器召喚でコロンゾンを攻撃しないのは悪魔殺しの業を背負いたくないから。
『空白の主』には覚悟がない。だから、簡単に諦めて、次を探してしまう。『空白の主』は何1つとして背負っていないから、軽い。8月21日のあの日に木原脳幹と木葉桜十五夜を逃がす必要はなかったはずだ。一方通行アクセラレータに対する干渉ももっと深くできたはずだ。
世界をあるべき姿に還そうとしているコロンゾンとは格が違う。
自分だけのために戦うモノは、弱い。
「くっくっ、私がここに来た理由は、貴様と戦うためでは、ない」
「…………………………………………………………………」
『空白の主』には見えていなかった。意図的に無視をしていたわけではない。ただ純粋に、その存在を認識していなかったのだ。地を這う蟻は意識しなければ気付けないように、空を飛ぶ蚊もまた意識しなければ気付けないように。『空白の主』からすればあまりにも矮小すぎる存在ゆえに、『空白の主』はその存在を忘れていた。
なぜコロンゾンは初まりの領域に来た?
その理由ははたして何だった?
「警告、第二二章第一節。命名、『神よエリ、・何故私を見捨てたのですかエリ・レマ・サバクタニ』――――――完全発動まで一秒」
「ッッッッッ!!!!!?????」
いきなりだった。
妙に機械的な声がした瞬間には、もうその赤き閃光は『空白の主』に直撃していた。
だが、
「…………………………………出来ない」
閃光が晴れると同時に、『空白の主』は呟く。あれほどの一撃が直撃してなお無傷なのに、それでも。
認められないかのように、信じられないかのように。
大悪魔コロンゾン。三三三。拡散。自然分解。共倒れ。
それはあり得ない。
『空白の主』の対が、
いや、いいや、いいや!!!
「不可能二決まってるっ!人類で八私を、五の原初の片割零たる『空白の主』八殺せ七一っ!親殺四のパラドッ九ス。五の全時間軸二繋がっ十一る初まりの領域で八、人類の手で八私八殺せ七一!」
だからインデックスは此処にいるのか?
わざわざ、そういう風にセッティングした?『空白の主』の対が、その『破壊の象徴』が、共倒れの相手が、インデックスだと?
イギリス清教第零聖堂区必要悪の教会ネセサリウス所属の魔導書図書館。
そんなことは認められない。
そんなことは認められない!
格というモノがある。
オリンピック選手とアマチュア選手なら共倒れするのか?
最新鋭の戦闘機と旧式の装備を持った歩兵は共倒れするのか?
いや、あり得ない。だから絶対にあり得ない。インデックスでは『空白の主』の対にはなれない。なのに、なのに、それなのに!
なぜ、コロンゾンはそこまで『空白の主』を下に見る!
「馬鹿、二」
怒りが発露する。
暴風雨のような怒りが、畏れを上回る。
「馬鹿二するのも大概二四六ぉ!!!五の、五の私八っ、『空白の主』八ッ!原初の一、初まりの片割零、全十の人類の母!!!勝十七一、人類じゃ、君のバッ九アップを受けた十四十も!險ュ螳八覆ら零七一!!!!!五の、私の五十を、ど五まで下二見零八ッ!大悪魔、五六ン」
「な・ら・魔・神・な・ら・」
それは至極単純な答えだった。
「――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――まさか」
知らず、冷や汗が流れた。
インデックスの脳内に記憶されている一〇万三〇〇〇冊の魔道書を正しく使えば魔神に至ることが出来るとされている。一方で、インデックス自身が魔神になることは不可能だとされている。その理由はインデックスが魔翌力を生成することが出来ないからだ。
なら、インデックスが魔翌力を生成できるようになれば?
もしもインデックスに付けられている3つの枷が全て外れるような事態に成れば?
インデックスは分離した。今この初まりの領域にいるのは仮想人格ナンバー006『哀れな子羊アニュス・デイ』だ。
空虚な心と不完全な器。乗っ取るには、霊媒アバターとするには十二分すぎた。
「――――――魔導書図書館、Index-Librorum-Prohibitorum」
恐怖が、
死が、
そこにある。
「これならばメイザースとの契約には反しない」
元来、悪魔とは狡猾であるモノだ。メフィストフェレスなどが有名であるが、悪魔とはその弁舌で人を騙し、その弁舌で人を誘惑し、その弁舌で人を誘導する生き物だ。契約の穴を見つけることなど簡単にできる。
策はなった。
そのためだけに、コロンゾンはわざわざインデックスを『殺した』のだ。
赤・き・楔・は・掻・い・潜・ら・れ・た・。
「殺せ」
一言だった。
単純な命令だった。
絶対の死刑宣告だった。
勝てないと、本能的に分かってしまった。
因果応報。罪には罰を。盛者必衰。兵どもも夢の跡。
だから、
「ここからは私が受け持ちますdeath。我が朋友、『空白の主』」
ブンッ、と空間がぶれた。
そして、いた。
黒のスーツに黒のズボン、黒のマントと黒の指輪、黒の靴、黒の髪、黒の手袋、黒の襟、黒のモノクル、そして白い肌と紅い唇と瞳。
救援は最適のタイミングで現れた。彼は『空白の主』を庇うように前に立った。
その男の名を、アルフといった。
「第六物語シックスストーリの最終敵ラスボスであるか。そしてこの大悪魔と同じ人類外」
「同じとは人聞きが悪いdeath。私はあなたほど悪辣ではないdeathよ」
交わされた会話はそれだけだった。
そして戦いが始まった。
生命の樹セフィロトの奥に潜む悪魔と1700年前に人類種に敗北し常世から逃走した『空白の主』の息子の末裔の戦いが始まった。
さながら、最終決戦であるかのように。
https://syosetu.org/novel/158074/72.html
惨劇最悪バッドエンド② あなた達が間違えた選択の果てに、世界は滅亡しました
終わった。
(終わった)
終わった。終わった。終わった。
(終わった。終わった!終わったあァァっっっ!)
だが、はたして何が終わった?
佐天の歯を噛み千切ることが?
もちろんそれは終わった。
佐天との間にあった信頼関係が?
それは修復は可能なほどに終わってしまった。
上条の精神性は?
それもまた、終わってしまったモノの1つだろう。
いくつもの出来事が終わり、モノとして存在しない目に見えない何かもまたいくつも終わってしまった。
それが良いか悪いかはまだ分からない。もしかしたら上条の行動が後の災厄に繋がるのかもしれない。
けれど、確かに此処に1つの事象は終了したのだ。
上条が終わらせた。
「はっ、はふっ……はぁーっ、ははっ!はぶ、げふッ!…………あ゛、…………ぁ゛」
唾液と血液でぐちゃぐちゃになった佐天の左手親指を掌の上に吐き出して、上条は荒い息のまま何とか佐天に話しかけた。
「さ、てん……大丈夫、か……?」
「……………………………」
返答はない。
「佐天……?」
膝に手をついて息を落ち着けながら、上条は顔を上げて佐天を見上げた。
佐天は、恐怖に歪んだ顔のままぐったりと頭を下にしていた。
「っ!……ぅ」
ピクリとも動かない佐天。
気絶している、のだろう。
全身から力が抜けている。だらりと下がった四肢に半開きになった口、開いた瞳孔。全てが佐天が正常ではない状態であることを示している。
言うまでもなく、上条がそうした。
(仕方なかった……仕方なかったんだ!)
そう、思うしかない。今はまだ、罪悪感を抱くわけにはいかない。
やらなければならないことがある。
佐天の痛みを、その犠牲を、無駄にするわけにはいかない。
「Aえー!」
と上条は食蜂を呼んだ。
佐天の左手親指が手に入った以上、後必要なのは刀夜の右目だけだ。つまり食蜂が刀夜の右目を抉りだせていれば、事態の全ては解決する。
はずなのに、
「何してるんだ……?」
奇妙なことに、食蜂は刀夜の右目に手を伸ばしたまま静止していた。
「大丈夫、か?」
緊張しているのだろうか。
躊躇しているのだろうか。
それも仕方ないと思う。上条だって、躊躇いの中で覚悟を決めて佐天の指を噛み千切ったのだ。だから食蜂が出来なくても仕方ない。
(いざとなったら)
いざとなったら、上条が食蜂の代わりをやるしかないだろう。
けれどまず、上条は食蜂を励ますためにその左肩に手を置いた。
「変わろうか?」
と声をかけて、
ドン、と食蜂の身体が倒れた。
「……………………………………………………………………………………………は?」
一瞬、停止。
だが、すぐに動き出す。
「食蜂!?」
倒れ伏した食蜂に上条はすぐさま駆け寄った。
何だ?何が起きている?どうして食蜂が倒れた?
「おいっ、どうした!?しっか」
呼吸が、停止していた。
心拍が、無かった。
「――――――――――――――――――――――しょく、ほう?」
一般的には、呼吸をせず心臓も停止している人間のことは死体と呼ぶ。
つまり、食蜂は死んでいた。
「待てよ」
死んでいた。
「起きろよ!何、何で……食蜂ッ!」
ガチャリと音がして、誰かが上条の背に凭れ掛かってきた。
「ぐっ、痛ッ!?」
背中に奔った衝撃を振り払うかのように、上条は食蜂の身体を支えたまま片腕を背に手をやった。
何かが上条の背中に墜ちてきた。
何かが上条の背中に降ってきた。
それを背中から降ろして、上条は降ってきた何かを確認し、
上条刀夜が死んでいた。
「……、…………?」
今度は言葉すらも出なかった。ただ、ふらふらと開いている方の手が刀夜の頬に伸びた。ふらふら、ふらふら、ふらふらと。
「父、さん……?」
動かない。
ピクリとも、動かない。
触らなくても分かる。
触れなくても分かる。
上条刀夜は死んでいる。
「あ」
呆けたように口を開きっぱなしにして、食蜂を横たえ、上条は立ち上がった。何が起こっているのかわからない。何が起こっているのか分からない。何が起こっているのか分からない。
でも何かが起こってるのなら、と上条は立ち上がった。
四つの枷から解放され、倒れ伏した佐天が視界に入った。
「は」
確かにそうだ。食蜂が死んだ。刀夜が死んだ。ならば佐天だって死んでいるだろう。全くそうだ。非常に納得できる。
「なら、ジャーニーも……」
佐天と刀夜が解放されたなら、もちろんジャーニーも死んでいる。見る必要もない。だって、12のルールにはこうあった。『ジャーニーが培養器の外に出るか、ジャーニーが死亡した時点で2人の拘束は解かれる。』、なら当然ジャーニーは死んでいる。
4人とも死んだ。
此処で生きているのは上条だけだ。
「……外に」
なら、もう此処に居ても意味はない。外に出て、助けを呼ばなければ……。
ふらふらと頼りない足取りで階段を上り、部屋を出る。
その部屋の外では、少女が死んでいた。
「…………………、蜜蟻、……か?」
その顔には見覚えがあった。
蜜蟻と名乗る少女と同じ顔をしていた。
……待っていた、のだろうか。
ジャーニーを救出した後の上条に会いに来るつもりだったのだろうか。
死体は黙して語らないから、真実はもう分からない。
「……………………………、…………」
歩く。
ただ、歩く。
とにかく外に行かなければ何も始まらない。外に行けば助けを呼べる。助けを呼んで駆動鎧パワードスーツを止められる。だから、まずスタジアムの地下から出なければならない。
「…………もう、ちょっと」
後数歩でスタジアムの外に出られる。
後2歩でスタジアムの外に出られる。
スタジアムの外に出られた。
「っ」
太陽光の眩しさで僅かに目が眩む。だが徐々にその明るさに慣れて、視界が開けた。
インデックスが死んでいた。
「――――――――――――――――――――――――――――――」
ひどい、酷い様だった。
片腕を切り落とされ、半ばまで切断された胴からは内臓が零れ落ちている。白を基調とした修道服はあちこち裂かれ、穴が空き、そこから今もなお流れ出る血が、修道服を赤黒く変色させていた。数えることすらも馬鹿馬鹿しくなるほどにインデックスの体の傷は多かった。
何度も、何度も、何度も。
誰かがインデックスの体を切り裂き、斬り付け、痛めつけ、命を弄び、尊厳を凌辱し、生き様を侮辱し、そして突き立てて、消えない傷を残したのだろう。
永遠に消えない、傷跡を。
どうして、そこまでされなければならなかったのか。
どうして、そこまでしなければならなかったのか。
「―――――――――――――――――――――――」
苦痛に満ちた顔を、
恐怖に歪んだ顔を、
せめて、せめて、せめて、少しくらい安らかにしたい。
だから上条は死にきったインデックスに近づいて、その瞳を閉じさせてあげた。
それくらいしか、出来なかった。
「……………………」
そうして、上条は携帯電話を取り出して病院に電話した。119番。死体を病院に渡さないといけない。
通話がつながる。
「あの」
自分でも驚くほどに冷たい声が出た。
なのに、
『―――――――――――――――――――』
「あの!」
通話口からの返答がない。
話しかけてこない。
「……仕事してくれよ」
119番からの返答がないなら自分で歩いて病院に行くしかない。
どこの病院が良いだろうか?一番近い所なら、やはりカエル顔の医者の所か?
「歩けば、いつか辿り着くか」
そう言って、上条はスタジアムの外に出る。
スタジアムの外には、輝の死体があった。
「……勝てなかったのか」
それだけ言って、上条は大通りに向けて歩き始める。大丈夫だ。死体が1つ増えただけだ。病院に連絡する手間が増えたけれど、それぐらい上条が負担するべきだろう。
10分ほど歩き、上条はようやく大通りに出た。
燃え盛る炎がいくつもあった。
「熱っ!」
炎上しているのは車だ。
交通事故が起こっているのだ。この大通りだけで何件も。
「……警察に、連絡しないと」
もう一度、上条は携帯電話を取り出して警察に電話した。
110番。
通話がつながる。
「あの」
『―――――――――――――――――――』
通話口からの返答がない。
話しかけてこない。
「……………………」
仕方がないから上条は電話を切って再び歩きだした。
どいつもこいつも仕事をせずにさぼっていて、学園都市は大丈夫なのだろうか?
「…………………………」
歩き続ける。
車の中で見知らぬ誰かが死んでいた。
歩き続ける。
歩道にある椅子の上で誰かが寝転がっていた。
歩き続ける。
道端でカップルが抱き合ったまま動かずにいた。
歩き続ける。
青髪ピアスが家に寄り掛かっていた。
歩き続ける。
炎の中に誰かが立っていた。
歩き続け、
「青髪ピアス……?」
振り返った上条は来た道を戻って青髪ピアスに近づいた。
近づいて、その瞳が何も映していないことに気が付いた。
「―――――――――――――――――――――――う」
一歩、下がる。
足が誰かの肉に当たる。
下を見る。
倒れ伏した吹寄と目が合った。
「うあああああぁぁぁぁぁぁぁッ――――――!!!」」
もう、我慢できなかった。
無茶苦茶に走り回る。
滅茶苦茶に叫ぶ。
「あああああああああああああああああっ!!!!!くがあああああああああああああああ!!!!!ぎあああああああああああああああああああああ!!!!!!!」
両の目から流れ落ちる涙が視界を歪ませる。
あらゆるところにある血液がびちゃびちゃと上条の足元で跳ねる。
どうしようもない。
もう、どうしようも、ない。
「何なんだよ、これ…………」
全て、死んでいた。
「何なんだよ、これっ!?」
死が、溢れていた。
「何なんだよ!これは!?」
ここには死しか、なかった。
「誰か、誰かいないのかよ!!!」
もう恥も外聞もなく上条は走り回った。ようやく、脳が現実を直視した。
死んでいる。死んでいる。死んでいる。
「誰か!誰かァッ!誰でもいいから、返事してくれよ!!!」
死んでいる。死んでいる。死んでいる。
「ふざけんなよ!どうしてこんなことになってるんだよ!!!俺が、俺……ああああああああああああっ!」
死んでいる。死んでいる。死んでいる。
「なんで、……なんで……っ、インデックス……インデックスぅ……うああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああ!!!!!!!!!!!」
全てが終わって滅んでいる。
視界を埋め尽くす赫と無数の死体だけが、上条が今ここにいる証明だった。
膝をつく。
何もかもが死に尽くした世界で、徐々に上条の正気が薄れていく。
なにもわからない。
なにもかんがえたくない。
精神を犯し尽す絶望が上条の中から希望を消し去っていき、五感すら奪い去ってく。
消える。消える。消え失せる。
意識が、思考が、感情が、何も残らない。
はずだったのに。
ざっ、と上条の後ろで足音がした。
「ッ!?」
その音を聞いた上条はまるで今にでも消えそうな蝋燭の明かりを必死に維持しようとするかのように振り向いた。
生きている人がいる?
誰かがまだ、生きている?
そう思って、上条は振り向いて、
白過ぎる腕に、首を掴まれた。
「あぎぃッ!?」
絞まる。しまる。しまっていく。
首が徐々に絞めつけられていき、呼吸が出来なくなっていく。
「だ……に……」
誰が上条の首を絞めているのか分からない。
何で上条が首を絞められなければならないのか分からない。
だが、
「時間、掛けすぎだよ」
全てが死に犯された世界に色を喪った呟きが響き、
――――――上条当麻の生命活動は、完全に停止した。
これで『とある暗部の御坂美琴』は完結となります!
3年モノ長い期間の連載となりましたが、今まで付き合ってくれた方には非常に感謝です。本当にありがとう!
後日にあとがきを投稿させてもらいますが、本編はこれで終わりです。
本当に、本当に、ありがとうございました!
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はい←
いいえ
1周目における第一部第二章は惨劇最悪バッドエンドで終了したため現段階においては取得ポイントを計上できません。
ご了承下さい。
とある暗部の御坂美琴(1周目) 総合評価
第一部第一章 評価
第1評価
話数 111話……条件未達成。
合計文字数 562569文字……条件未達成。
平均文字数 5114文字……条件達成。
UA 57781……条件達成。
お気に入り 157件……条件達成。
感想 104件……条件達成。
総合評価 266pt……条件達成。
平均評価 6.41……条件達成。
調整平均 6.60……条件達成。
第1評価値算出
―111―5625―114+5778+157×10+104×10+266×10+6.41×100+6.60×100=6499
条件達成 7
条件未達成 2
二章開始時における難易度がハードになりました。
条件達成と認定。
取得ポイント 6499SP
第2評価
誤字指摘……54箇所。
読者による設定不備指摘……8箇所。
能力名が四文字では無いモノがあることに関する伏線……指摘済み。
アレイスター=クロウリーによる絶対能力進化実験レベル6シフトの干渉に関する伏線……指摘済み。
初まりの領域に関する伏線……指摘済み。
全体個体『御坂美琴』に関する伏線……指摘済み。
世界物語理論に関する伏線……指摘済み。
裂ヶ淵瞑娥さくがぶちめいがによる位相斬りに関する伏線……指摘済み。
千疋百目の地下下水道脱出行動に関する伏線……指摘済み。
木葉桜十五夜の召喚した武装に関する伏線……指摘済み。
『神』になった一方通行アクセラレータに関する伏線……指摘済み。
もう1つの絶対能力進化実験レベル6シフトに関する伏線……指摘済み。
千疋百目が地下下水道の崩落から白井黒子を助けた理由に関する伏線……指摘済み。
伏線を『貼る』が誤字ではない理由に関する伏線……指摘済み。
【】に関する伏線……指摘済み。
初春飾利の所属に関する伏線……指摘済み。
一方通行アクセラレータの魔神化を想定内とした存在に関する伏線……指摘済み。
御坂美琴が一方通行アクセラレータを拷問した理由に関する伏線……指摘済み。
アレイスター=クロウリーの進める『計画プラン』に関する伏線……指摘済み。
『死』の定義に関する伏線……指摘済み。
上条当麻が敗北したことに関する伏線……指摘済み。
風紀委員本部セントラルジャッジメントに所属する人間に関する伏線……指摘済み。
全体個体『御坂美琴』の思考矛盾に関する伏線……指摘済み。
風紀委員本部セントラルジャッジメントという組織構造に関する伏線……指摘済み。
見捨てられた女グレイレディの正体に関する伏線……指摘済み。
ミサカネットワーク総体の気付きに関する伏線……指摘済み。
風紀委員本部セントラルジャッジメントと滞空回線アンダーラインに関する伏線……指摘済み。
原作では気づくことのできたぬいぐるみに関する伏線……指摘済み。
上里翔流に関する伏線……指摘済み。
アルフの発言に関する伏線……指摘済み。
占卜卜占に関する伏線……指摘済み。
アレイスター=クロウリーの上条達へのバックアップに関する伏線……指摘済み。
第2評価値算出
54×0.5+8×5+30×1=97
『真実解明トゥルーエンド』ルートへルート分岐。
――――――世界物語キャラクターストーリー理論による正史認定を行いました。
以下、第一部第一章は『真実解明トゥルーエンド』ルートで固定されます。
条件達成と認定。
取得ポイント 9700SP
第3評価
御坂美琴VS死縁鬼苦罠……勝者 死縁鬼苦罠
御坂美琴VS一方通行アクセラレータ……勝者 全体個体『御坂美琴』
木葉桜十五夜VS罪罰贖&波並波狂濤……勝者 木葉桜十五夜
木葉桜十五夜VS矛盾矛盾&鳳仙花蝶々……勝者 木葉桜十五夜
木葉桜十五夜VS一本線点々……勝者 一本線点々
ミサカ10032号VS一方通行アクセラレータ……勝者 一方通行アクセラレータ
白井黒子VS千疋百目……勝者 千疋百目
白白白VSアレイスター=クロウリー……勝者 不明
上条当麻VS扼ヶ淵埋娥……勝者 扼ヶ淵埋娥
神亡島刹威VS浣熊四不象……勝者 浣熊四不象
一方通行アクセラレータVS『空白の主』……勝者 『空白の主』
常世涯最果VS木原脳幹……決着つかず
木葉桜十五夜VS『空白の主』……決着つかず
木葉桜十五夜VS『空白の主』VS木原脳幹……引き分け
常世涯最果VS裂ヶ淵瞑娥……勝者 常世涯最果
ミサカ19090号&ミサカネットワーク総体VS死縁鬼苦罠&天埜郭夜……勝負中
アレイスタークロウリーVS白白白……勝負中
佐天涙子……敗北者
第3評価値算出
―1+0+0+0+0+0―1+0―1+0―1+0+0+0.5+0+0.5+0.5+1=-1.5
侵略者インベーダーによる侵蝕が1段階進みました。
条件未達成と認定。
取得ポイント ―1500SP
第一部第一章総合取得ポイント算出
6499+9700-1500=14699
合計取得ポイント 14699SP
上条当麻のステータスを表示します
上条当麻……性別 男
年齢 15歳
特殊能力 幻想殺しイマジンブレイカー
称号 主役級メインキャラクター、主人公ヒーロー、救済者ヒーロー(未覚醒状態)
称号スキル 主人公補正(真)、なるようにならない最悪If nothing is bad、カリスマ(弱)
固有スキル 前兆の感知(兆)、不幸、不撓不屈(弱)
買い物
何を買いますか?
特殊文字(認識不可状態)の可視化(第一部第一章のみ)……100000SP
スキル……各10000SP
記憶の引継ぎ……10000SP
サブストーリー……各5000SP
アイテムの引継ぎ……5000SP
経験値の引継ぎ……1000SP
友好度の引継ぎ……1000SP
TIPS……各100SP
イベント絵詳細
頂にて君臨する風紀委員本部セントラルジャッジメント
汝、人を捨てても護りたいモノがあるか?
スキル詳細
前兆の感知
説得
女たらし
サブストーリー詳細
御坂美琴初めてのお仕事
たぶん最終章にならないと意味の分からない会話劇
上里勢力結成譚 第一幕
TIPS詳細
オリジナル単語1つに付き100SP
記憶の引継ぎ……10000SP ←
記憶の引継ぎ……10000SP を買いますか?
はい ←
使ったSPは二度と戻りません。それでも 記憶の引継ぎ……10000SP を買いますか?
はい ←
記憶の引継ぎ……10000SP を買いました。1周目の記憶が2周目に引き継がれます。
取得ポイントが4699SPに減少しました。
他には何を買いますか?
特殊文字(認識不可状態)の可視化……100000SP ←
特殊文字(認識不可状態)の可視化……100000SP を買いますか?
はい ←
特殊文字(認識不可状態)の可視化……100000SP を買うためにはSPが足りません。
取得ポイントは4699SPのままです。
他に何を買いますか?
https://syosetu.org/novel/158074/74.html
私はいつも一人だった。
だから願った。愛されたいと。
私は多くの人から愛された。
だから思った。一人がいいと。
そして私は独りになった。
だから悟った。これが幸福だと。
――――――二九七
それでも僕は、明日が欲しかった
裏お茶会~1周目~
崩れ落ちる上条ヒーローの身体を睥睨しながら、230万の死体で溢れる学園都市の中で僕は溜息をついた。
「わりと、期待してたんだけどね……」
言葉にすることで僕は僕自身の考えを再認識する。
そう、期待していた。本当に期待していたんだ。
上条当麻なら、あるいはこの僕を上回ることが出来るかもしれない、と。
「いや、……矛盾だな」
僕の世界の人類を護るためには、いずれ上条当麻は必ず[ピーーー]ことになる。それが早いか遅いかの違いだ。
「…………遅かったね、アレイスター」
「殺したのか」
「どのみち、間に合わなかったさ。彼はあまりにも遅すぎた」
男にも女にも、子供にも老人にも、聖人にも囚人にも見える『人間』、そう評されるアレイスターの方に視線を投げかけて、僕はこの全てが終わった世界を見通す。
70億の、そして数百の死体しか存在しないこの世界でただ1人、僕だけは違うから。
結局すべてが絵空事の虚言でしかないと知っているから。
「それを分かっていたからこそ、君も滅亡齎す七の子羊セプテム・アニュスの対策を発動させなかったんだろ」
「あの程度の術式に気付けないのならば、どのみちヤツは救済者ヒーローには相応しくないだろう」
「随分な言い様だ……。君の、君達の主人公ヒーローだろう?」
「違うな。私達の主人公ヒーローは彼ではない。上条当麻だ」
「厳しいね……。彼だって、僕がいる中頑張ってると思うけど」
「結果世界が滅んだが?」
「……………………もう少し、サポートしてあげれば良かったのに」
フラグが立たなかったのは確かに上条の責任だが、たった1回で完全な救済を為せだなんて難易度が高すぎるだろう。今回は解決しなければならなかったことが多すぎる。瞬を倒して、蜜蟻をどうにかして、学究会防衛作戦を成功させ、咎負虐殺を止める。
そんなの無理だ。
僕だって、サポートなしで出来るとは思ってなかった。
「それは」
「呼ばれてないのにじゃんじゃじゃ~~~ん!!!」
空から純正の人類絶対悪が降ってきた。
「五行……。今結構重要な話してたんだけど」
「あぁ、あぁ、あ~あ。まさかこんな結末になっちゃうなんてなぁ~」
「聞けよ」
いや、五行が人の話を聞かないのはいつものことなんだけど、今だけは邪魔しないでほしかった。アレイスターと一対一で、互いの本当の立場を曝け出して話せるのなんて、今ぐらいしかないだろうから。
「木原五行、全能存在パントクラトールか」
ほら話が次に移った。
「……………はぁ」
僕の隣に立つ少女を見て、アレイスターが言った。
当然、調べられている、か。
「くきっ、くききッ!!!ま~さっか!第六物語シックススストーリーの主人公ヒーローが死んじゃうなんて。フラグの立て方ミスっちゃった?」
「あぁ、ラスボスとの交戦フラグを立てないでサブイベントに入れ込んだんだ。馬鹿なことにね」
「くきっ!なら私のしたことの意味がなくなっちゃうな~。せっかく、第七物語セブンスストーリーの主人公ヒーロー連れてきて物語交錯クロスオーバーさせてあげようと思ったのに」
わざとらしい口調でアレイスターを挑発する五行を僕は止められない。権限自体は僕の方が上だし、立場も僕の方が上だけど、物語を進める役トリックスターの自発的な動きを止めることは僕には出来ないし、しようとも思わない。
そういう称号キャラクター性の持ち主の行動はどのみち止められないモノだし。
「ふん、たかが全能如きが私と の話を邪魔をするのか」
だいたい、物語を進める役トリックスターは自由だからこそ意味があるんだ。
「くきぃ!たかがっ、たかがだってさリーダー!……このあてをたかがだなんて、さすがにムカつくかなあああああああああああああ!!!!!」
だからほら、また勝手に手の内を晒す。
「超克科学オルディニスクレアーレ――――――完全無欠ウルトラ、十全十美スーパー、常勝不敗アンリミテッド、絶対究極パーフェクトガール、故に私は全知全能の絶対神イズミー!」
超克科学オルディニスクレアーレ。覚醒ブルートソウルした極点突破者デスペラードのみが使う事の出来る世界物語キャラクターストーリー理論の最終到達地点。人類最終到達地点候補生たちの目指すべき場所。
といっても今回五行が使ったのは見る限りただの即興術に過ぎないのだけれど、出来れば勝手に使わないでほしかったなぁ……。
「あれ?発動しない……?……うん?」
まぁ、当然邪魔されるんだけど。
「全能の逆説オムニポテント・パラドックス。……まさか知らないわけではあるまい」
二言だった。そして、その事実がアレイスター=クロウリーという魔術師にして科学者の強さを示しているんだ。
「……ぶ~、つまんなぁ~い」
がっかりと肩を下げて、興がそがれたように超克科学オルディニスクレアーレの発動を止めた五行。まさか、全能の逆説オムニポテント・パラドックスを、全能者は全能であるが故に全能ではないという一学説を忘れたわけではないだろうに。
いや、五行のことだから本当に忘れていたのかもしれないけど。
「殺しちゃう?殺っちゃう?ねぇリーダー!」
「落ち着けよ五行。いや頼むから落ち着いてくれ。だいたい彼を殺したところで」
空から剣が降ってきた。
「死を晒せよ、侵略者インベーダー」
そんな声と共に、全長数十キロメートルにもわたる長大な剣が五行の脳天に向かって振り下ろされる。誰が、どうやって?そんな疑問が浮かぶ……、
「痛い」
だなんてことは当然なかった。
当たり前のことだ。僕は知っている。僕は識しっている。その剣がどんなもので、その剣を操るのが誰なのかを。
「痛い痛い痛い!痛いよリーダー助けて!」
「はいはい。ちょっと待ってろ」
剣が直撃してるのに傷一つついてないくせにそんな泣き言を言う五行に呆れながら僕は軽く剣に触れる。それだけで、剣は消え去る。
干渉。
無限に修正され続ける罪深き世界5Re:worldbreakerを使う僕からすればこの程度のことは当然だ。
「出てきなよ。いるんだろ?」
「無傷か」
いつの間にかアレイスター=クロウリーの隣に立っている男を僕は知っている。
「右方のフィアンマ。あいつの下位互換程度が今更何の用?というか、この大絶滅リセットから生き残ってたんだ」
「……俺様も舐められたモノだ」
僕のあからさまな挑発に、右方のフィアンマはあからさまに怒りを見せた。まぁ、下位互換と言われていい気になるような人間はいないだろう。
「あいつ、それって僕様のこと言ってるの、主あるじ?」
そいつは右方のフィアンマと同じように突然現れた。
これで3VS2。
「『神の代行人』GE13か」
「……下位互換程度が僕様に話しかけるなよ。ウザいんだよ代替品」
GE13が右方のフィアンマを睨みつける。仕方がない事とはいえこの2人は相変わらず相性が悪い。といっても聖なる右を持つ右方のフィアンマが『神の代行人』であるGE13の劣化レプリカなのは周知の事実だ。そして自分の劣化レプリカ、クローンのようなモノが勝手に造られたというのは確かに気分の良いモノではないだろう。
「なんだ、還してほしいか?GE13オリジナル?」
誰が見ても分かるくらい上から目線だった。
その挑発には、当然GE13は耐えられない。
「――――――調子にっ」
「やめろ」
だから僕は止めに入った。やれやれ、いくら『核』が固まっていないとはいえ、安易に行動するのはやめてほしいモノだ。
「あひゃひゃ!怒られてやんの~!」
「……主」
縋るように目を向ける13を、それでも僕は静止する。
「13、別に聖なる右を使われたところで君がオリジナルであるという事実は揺らがないさ。だから簡単な挑発に乗るなよ。……まだ、底を見せるな」
「了承したよ、主」
底が知られても強さが変わらない先住民センチネルにとって強さを示すことは恐怖ではない。彼らの強さの限界点は1度知られている、だからこそその『上』にいけるんだ。底が暴かれれば弱くなる僕ら侵略者インベーダーとは違う。僕らは安易に力を晒せない。そうすれば、終わってしまうから。
「それにしても、本当に君達はこれで良かったのかい?」
「何がだ」
「大絶滅リセットで利するのは言うまでもなく侵略者インベーダーたる僕らだ。先住民センチネルたる君達からしたら、大絶滅リセットだけはどんな手段を使っても回避したかったんじゃないのかい?」
少しの沈黙の後にアレイスター=クロウリーが口を開いた。
「ある意味ではそうかもしれない」
肯定が返ってきた。
「だがある意味ではそうではないだろう」
否定も返ってきた。
そして後に続くように右方のフィアンマが言った。
「俺様達ももはや純粋な先住民センチネルとは言えまい。ならば妥協はするべきだ、というのが俺様達の出した結論だ。大絶滅リセット程度ならば、完全閉鎖アーカイブスルーや中断事象リアルが起きないのならば、やりようはいくらでもある」
「ふぅん……そう。だったらまぁ、初お披露目はこの程度でいいかな」
そう言って僕は、諦めたように言う。そういうしかないから、言う。
「愛し子よMary、愛し子よMary、僕の愛するMy fair愛しき世界よMary Sue。
その運命を改変しておくれCambiare il destino、
その物語を書き換えておくれFare una storia。
我が神のお望みとあらばWenn es meines Gottes Wille、
我らが神のお望みとあらばWenn es unsere Gottes Wille、
過去など無いに等しいのだDie Vergangenheit ist vorbei。
すべての可能性を内包した書の中でO mundo onde há esperança e o desespero
ただ一つの意志のみがEle destruiu何もかもを無に帰すのだo mundo」
何度も言ってきた初めての詠唱を、僕は紡ぐ。
「絶対不変の絶対法則アンチェンジナブルラウ――――――無限に修正され続ける罪深き世界5Re:worldbreaker」
「さあ、やり直そうか」
「次は、失敗しないようにね」
一つ言っておこうか。
愛がないのならば、この物語の真実には辿り着けない。
感想欄でオリキャラは鎌池作品の最強キャラもぶち殺せますよーって言ってて草
いやおもしろいぞ?
生存にも競争があるように、物語にも正否がある。
『正史』とは正しい選択、正しい道筋による民に望まれた物語。
これを『可観測域アメイジア』と呼び。
誤った選択、誤った道筋による民に否定された歴史。
別の選択肢を見たいと拒絶され、残留することすら許されなかった『存在しない』物語。
これを、『白紙地帯インクイジション』と呼ぶ。
――――一筋の光すら消え失せた。新たなる光は別世界に燈された。
地球ほしから人類ひとは絶え、宇宙は消失し、世界この物語はあらゆる関連から孤立した。
紡がれていた物語は見るも無残に棄却され、8月31日より先の未来はその存続の可能性を掻き消された。
この歴史は、未来は――――否定された。
記述される歴史は既に無い、物語を書く場所はもう何処にもない。
凡ては神により断絶され、進退も贖罪も赦されず静止するだけ。
それを否定する事は出来ない。運命システムに抗う事は僕達には許されていない。
俯け、そして諦めろ。『これで終わりだ』と、『もうどうしようもない』と嘆き続けろ。
最期の一時は仲間と共に――――
※イメージOP曲 Fallen(EGOIST)
※イメージED曲 Grand symphony(佐咲紗花)
本作の中で一番闇の深いキャラクターが木原五行になります。
白白白と木原五行① 敵側にいる理解者本作の中で一番闇の深いキャラクターが木原五行になります。
白白白と木原五行① 敵側にいる理解者
学園都市第一学区風紀委員本部セントラルジャッジメント第六十階『天秤の間』にて風紀委員本部セントラルジャッジメント委員長の座に座る白白白は誰にともなく語る。
「僕は君が羨ましい」
『天秤の間』には白1人しか存在していない。だから白の話を聞く人間は誰も居ない。滞空回線アンダーラインすらも入ることの出来ない風紀委員本部セントラルジャッジメント内部を盗聴することなど不可能だし、あらゆる意味で隔絶している『天秤の間』内部を観測することなど不可能だ。
が、
「君は自由だ。君は何にも縛られない風のような存在だ。君に制限はないし、君は『枠』に捕らわれない。……僕はそれが、たまらなく羨ましいよ」
例外はある。
そも、何にだって例外は存在するモノだ。
僕自身が限りなく例外な存在だから、それは分かってる。
「醜いなぁ。やだやだ、それって嫉妬?我が同類?」
王の遺産レガリアが1つ、『彼岸の妙薬』トキジクノカクを服用した五行はその存在が不確かだ。どこにでもいるし、どこにもいない。観測されなければ存在は固定化されず、しかし観測されない状態では本当にどこにでも存在できる。
それは外部とは隔絶した空間。絶対のセキュリティを誇る夢の中。人間では辿り着くことの出来ない別位相。誰かの夢の中に、人の意識の中。
あるいは『天秤の間』にさえも、五行は現れることが出来る。
観測さえされなければ、だが。
「何しに来た、五行?」
「挨拶にね、白」
親し気に、まるで親友のように近しい声で、2人は名前を呼び合った。
2人の過去は、2人の関係は、その距離感を許す。
「それとも人間操者パペットマスターって呼んだ方がいいかい?」
「全能存在パントクラトール……、昔を思い出すな……。あの頃は、良かった。……『箱庭』には不自由な自由があった。僕らは、集められた13人の天才達は、あの『箱庭』でだけは普通になれた」
「それはただの八つ当たりかよ?それとも感傷か?」
「さて、どうかな。それにしてもふざけた引用だね。わざわざ言い直すところが特に。……F/sのHFか。あれ、僕は大嫌いだよ」
「そうやって何でもかんでもはぐらかすの、細かいところまで気にするの、あなたの悪い癖よ。ちなみにこれは林の主人公の口癖だよ。分かった?」
「…………イライラするな。いったいいつの間に他人の言葉を引用しなきゃ話せない人形になった?五行」
「いひひ、そう怒らないでよ。冗談だってばよ」
「君は忍者じゃなくて科学者だろう?」
「あひゃひゃ、きっびしいなぁ、ほんとうに」
『箱庭』。
『箱庭』というのはあくまで略称であって正確な名前は別にあるが、10年前から6年前までの約5年間、五行と白の2人を含めた13人のモンスターチャイルドはそこで暮らしていた。『アガルタの惨劇』と呼ばれる事件によって『箱庭』の全てが崩壊するまで、彼ら彼女らは『箱庭』で暮らしていた。
彼ら。
彼女ら。
「やっぱり懐かしいんだ?忘れられないんだ?懐古厨の思い出補正だねぇ。どうせ何もかも嘘なのに」
「……対等な繋がりなんて、僕らのような天才には貴重過ぎるモノだよ。だからこそ『箱庭』は奇蹟で、『アガルタの惨劇』のことは後悔してもしきれない。いくら刺激が欲しかったとはいえね」
「あれ?アレイスター相手じゃ足りないんすか?」
「別にそうはいってないさ。……アレイスターは僕らと同じ格だ。油断なんてできるはずがないだろう?同じ理外人外なんだから」
「でも全然満足しちゃいない」
「………………………」
「郭夜のこと、まだ好き?」
「好きだよ?君のこともね」
『アガルタの惨劇』を生き残ったモンスターチャイルドは5人。彼ら彼女世らは今、造られた子供たちプログラムチルドレンと呼ばれている。
人類絶対悪ビースト位階総序列第3位、禁忌の木原、全能存在パントクラトール、木原五行。
風紀委員本部セントラルジャッジメント委員長、学園都市の支配者の1人、人間操者パペットマスター、白白白。
死縁鬼苦罠勢力参謀、完全予測者ジ・エンド、欠陥製品スクラップドール、天埜郭夜。
人類絶対悪ビースト位階総序列第16位『神時代へ逆行する古代人』リーダー、神の代行人エクスキューショナー、狂信者、GE13ジーイーサーティーン。
人の形をした災害、学園都市最悪の災厄、無存在シークレット、千疋十目。
「大好きだよ。輝夜姫のことは特に、……水面に映る月に手を伸ばして、それを掬って羨んだ。星の輝きに眼を眩ませながら、夜空にむって手を伸ばした。灼かれると分かっていながらも、太陽を直視した」
「アンタも辛いな。見たくもないモノがみえちゃって」
「子供のころからそうだからね。今はもう、……慣れればよかったんだけど。それに辛いのは君もだろう?いったいどれだけひっくり返した?」
「そういえば聞いてなかったっけ?どんな気分よ、感情が視えるってのは?さてさて、どんくらいだったかな。少なくとも虐殺の滅亡齎す七の子羊セプテム・アニュスを無かったことにするために1回はひっくり返したけどさ」
「視えるっていうよりは理解出来る分かるって感じかな。表情、行動、生き様、過去、生体反射、癖。そういうモノから僕は嫌でも感情を読み取れる。見たくなくても視えるんだ。眼を閉じても耳で分かる。耳を塞いでも鼻で分かる。鼻をつまんでも肌で分かる。肌を覆っても気配で分かる。だからどうしようもないんだよ。両目を包帯で巻けば防げるくらい単純な力だったよかったのに」
「月のお姫様かい?」
木原五行の才能がその科学力であるように、白白白の才能は感情の読み取りにある。
白白白は人の感情が分かる。それが、白が生来より持っていた特別。
どれだけ深く隠しても、どれだけ強く偽っても、どれだけ無感情を装っても、白を前にすればその感情が暴かれる。子供のころからそうだった。だから捨てられた。勝手に感情を読み取ってしまう白のことを、そこから隠したすべてを暴く白のことを、誰しもが嫌った。
だから『箱庭』は白にとって天国だった。だから『箱庭』にいた12人のモンスターチャイルドが白は好きだった。特に、郭夜のことが好きだった。
「じゃあ私の心も読み取ってよ!そして満たして……、俺のことを」
「………………………………………」
両手を広げて、五行は白に後ろから抱き着いた。
嘘ばかりの人生だ。
嘘をつくばかりの人生だ。
五行や白やアレイスターのような上の立場の人間は、策を練り裏をかき人を陥れ目的を達するためには手段を選ばないような人間は、必然真の意味での信頼関係など結べない。それは手の届かないモノだと、どこかで諦める。
だから白はアレイスターのことも羨む。
アレイスターには理解者がいる。木原脳幹や冥土帰しヘヴンキャンセラーは彼の友だ。
白にはそういう人はいない。いるのは敵と、敵と、敵だけだ。
十五夜は味方であって理解者ではない。
理解者はいつも敵側にいる。
「五行。僕は君が嫌いだ」
諦めたように、呟く。
「テメェに好きなヤツっていんのかよ?」
抱きしめたまま、耳元で囁く。
「君が嫌いだ。君は自由だ。君は何にも縛られない風のような存在だ。君に制限はないし、君は『枠』に捕らわれない。……僕はそれが、たまらなく羨ましいよ」
「相変わらず、くだらない視点すね」
「くだらないかな?」
「いったいいつまでそんなものに拘ってるんだい?『枠』とか世界物語キャラクターストーリー理論とか七連物語セブンスストーリーズとか、そんなの結局、アンタの見方1つじゃない。制限してるのはお前で、勝手に区切ってるのはテメェだ。緊急装置ベイルアウトで風紀委員本部セントラルジャッジメントメンバーを縛ってるあなた様が勝手に縛られてちゃわけないわけ」
「ふっ、……全くその通りだよ。だから僕はダメなんだ。僕が一番■■からの」
「最・秘・匿・事・項・じ・ゃ・ん・」
「まだ、機密情報アクセスレベルが足りないか。もう少し■■に」
「それもまた最秘匿事項、機密情報アクセスレベル0の情報みたいだっちゃ」
「青き鎖でも騙り切れないか。なら言い直そう。抽象表現なら問題ないだろ?もう少し、彼らバックアップしてもらわなければな」
「赤と青と黄金が解かれたら次は何だったけ?」
「第二段階はテストだよ。80/100で第三段階に突入するのさ」
睦言のように語り合う。後ろから抱きしめて来る五行の顔を白は頭を後ろに反らしてみた。見つめ合う。言葉はいらない。必要ない。白と五行は各々が各々の理解者だ。何も言わなくたって分かる。白は五行の感情を読み取って、五行は白の行動からその思惑を読み取って。
「寂しかったんだろ?」
一瞬、五行は黙った。
「隱ュ繧薙□から分かるよ。同窓会、本当に開きたいんだろう?見なくても分かる。君の立場は、僕も分かってるから」
「……………………………うち、めっちゃ頑張っとるんやで」
「知ってる」
「確かに私は全能だけど、全能者は全能であるが故に全能者ではない。そんな簡単なことも分からない奴らがさ、たくさんいるの」
「知ってる」
「全能の逆説オムニポテントパラドックスを解消することは出来るけど、本質的全能者になるには私の存在は軽すぎるんだよ」
「知ってる」
「顔も多くなりすぎたのよ」
「知ってる」
「この間、最後の人類悪の参謀になったよ」
「知ってる」
「成りたくもないのに地球環境保護団体ελπιςの一員になってるんです」
「知ってる」
「いつの間にか人類絶対悪ビースト位階総序列第3位になってたんだ」
「知ってる」
「生まれは悪名高い木原だし」
「知ってる」
「しかも木原と木原を掛け合わせた木原だし」
「知ってる」
「何の因果か私には木原の才能がなかったしさ」
「知ってる」
「科学力はあったけど、科学力じゃなかったし」
「知ってる」
「王も私なんだよ」
「知ってる」
「才能なんていらなかった」
「知ってる」
「立場なんてほしくなかった」
「知ってる」
「理解者が欲しかった」
「知ってる」
「……………ねぇ、白」
「何だ?」
「寂しいよ」
「知ってるよ」
敵だった。
嫌いだった。
同格だった。
だけど、仲間だった。
「同窓会ね。僕や郭夜はともかく13ともう1人は会いたがらないだろうな。僕が連絡して郭夜と会わせようか?郭夜は君に興味をもってないだろうけど、僕が言えば話くらいは出来ると思うよ?」
「……………やめとこう、そんな程度のことで、あなたに負担をかけたくなし。寂しいけど、ね。うん、もうだいぶ回復できたよ」
抱きしめていた両腕を離して、五行は白と距離をとった。椅子に座ったままの白と、その二歩後ろに立った五行。見つめ合っていた2人の視線はもう交わっていない。たった2歩で詰められる距離が、永遠に近い。
反らしていた首を元に戻して、白はまっすぐ前を見た。
そこには何もない。
そこには、何もないように見える。
「ねぇ、白」
「何だ?」
「……………………好きだよ。世界で一番キミを××してる」
悲しそうに、五行は言った。
「あぁ、俺も好きだよ」
だからこそ、その答えは何よりも空虚だった。
「知ってる」
知っていた。
五行は知っていた。
それが白の限りなく優しい、
(だけど『私を』じゃなくて『人を』でしょ)
真実の虚言であると。
「ばいばい白。次に会う時は、今度こそ敵同士だ」
「本質的な繋がりは、そう簡単に切れるモノじゃないさ、五行」
「……………大嘘憑き」
それだけ言って、因縁の2人の距離は無限に開いた。
「で、だ」
「侵蝕率は?」
「赤が8割、青が7割、黄金が7割くらいかな。もうちょっとすればいけるんじゃないの?」
「計画エフギウムは?」
「あっちは私達のことを認識してるし、その意味じゃ第一段階の『道』を作ることは終了したって感じ?影響を与えることも出来てるし、悪くなんじゃないの?」
「順調か」
「リスクは常にあるけどな。ある意味でのルール違反は、常におかしてわけだしな」
「それくらいは許容範囲内だ。万が一が起これば、……はっ、それは痛み分けだろ?」
「死ぬのは怖くない。怖いのは、誇りを失ったまま生き続けることだ、ってわけね。まっ、こっちは任せといてよ。学園都市の中の、第一学区の中の、風紀委員本部セントラルジャッジメントの中の、第六十階『天秤の間』から出られないあなたの代わりに、私が世界を飛び回っておくから」
「あぁ、信頼してるよ。僕の、……いや、あえて言い直すか。今旬だろうしな」
戯れにもいいだろうし、な。
軽いテストにもなるし。別枠だけど。
「さあ、戦って五行。僕の、親友……。僕の、英雄……。なんてな」
僕の台詞に、五行は笑って答えて、それで消えた。
読者に対して出せる情報と出せない情報が存在するので、情報を制限しながら書いたこの話はすごく時間がかかりました。
さて問題。
今話の中に11のパロネタ、セリフのオマージュがある。
君達はいくつ分かったかな?
【あっしへの質問なんだからここは僕様が答えてしんぜよう!】
【まずありがとう。私の能力はみんな大好き『シュレディンガーの猫』だから、これで我の生存は確定された。現段階ではだがなぁ!】
【そこに疑いをもたれるのはしゃくだなぁ。よしっ、こうしよう!《red》トマス=プラチナバーグは168話の時点で既に死亡している《/red》。《red》トマス=プラチナバーグは木原五行が殺害した。《/red》《red》トマス=プラチナバーグと木原五行は別人である。《/red》】
【まぁ本来は青き鎖の中で赤き楔を使うのは『大原則』に違反するけど、ここは『枠』の『外』だし許容できるっしょ。】
【あたいは理外人外だよ。理外人外の1人。|全能存在《パントクラトール》だよ。ちなみに所属する組織は敵同士だけど同じ科学者だから無限輪廻の転生者とは仲いいんだよねぇ……】
【神?悪魔?俺らをそんな区分でわけちゃあいけないね。】
【私達はそれ以【 話 し 過 ぎ だ 】……窘められたのでもうさよなら~】
【完全に第四の壁を越えた会話でしたねぇ...でも個人的には今のような全能の傍観者状態より舞台に立って物語を進めて欲しいです。理外人外の皆さんが神の視点から引き摺り下ろされる日を楽しみにしています。】
【その上から目線をやめろ塵屑】
【君のような存在がいるから、僕のような存在が生まれたんだ】
【反省しろ】
【反省しろ】
【反省しろ】
【後悔しろ】
https://syosetu.org/novel/56774/76.html
気付いた二人① 神速の対応 一方通行と『空白の主』① 『空白の主』
『それ』を真に正しく理解できた人間は学園都市内に二人いた。
まず一人目は学園都市の主アレイスター=クロウリー。
彼は、『それ』に強く関わっているが故に、『その領域』の人間と敵対しているが故に、『その行為』に気付くことが出来た。
「…………………………………………………………………………………………………………………………、」
ほんの一瞬だけ、
刹那の時間だけアレイスターは逡巡した。
そして、
「頼めるか」
短い問いかけがあった。
『任せておけ、アレイスター』
その問いかけに短い返答があった。
そして、問いを答えたヤツはすぐに『窓のないビル』から去り準備を始めた。
さらにもう一人。
学園都市第一学区に存在する風紀委員本部セントラルジャッジメントの最上階天秤の間にて風紀委員長白白白も『それ』に気付いていた。
「さすがに、予想外だな……」
確かに、見る程度ならできるかもしれないとは思っていた。それを見ることは可能かもしれないとは考えた。
だがまさか操れるとは、操作できるとは思っていなかった。
認識が甘かったと言えばそれまでだが、おそらくこの事態を予想できた人間は世界に一人もいないだろう。
かの統括理事長もこの事態は予測できないはずだと思った。
だから、これは後手に周っているわけでは無い。挽回はまだ可能だ。
「まさか、このタイミングで切り札を切ることになるとは……」
椅子に座ったまま受話器を取り、特殊なリズムで特別な番号を押した。
風紀委員本部セントラルジャッジメント。その地下第11層を住みかとする存在に、『切り札』に、命令を与えるために。
プルルというワンコールの音すらならずに電話がつながった。
「最果さいはて、出番だ」
意識を引きずられないようにしながら白は声をかける。
「おやぁ」
妙に間延びした声で、電話口の人間は答えた。
「私が表に出るのは大覇星祭の時ではなかったんじゃ?」
「事情が変わった」
「事情がぁ?」
「あぁ」
心の準備を決めてから、白は通話の相手である最果にその事情を話す。
下手をしたらそれだけで死ぬかもしれないという緊張感をまとわせ、風紀委員本部セントラルジャッジメントの切り札の一人に、白は言った。
「学園都市第一位の超能力者レベルファイブ、一方通行アクセラレータが位」
「行こう」
白の台詞は最後まで言われることはなかった。
電話相手の最果が一方通行アクセラレータが何をしたのかに気付いたからだ。
「座標は?」
「ポイントA18だ。だが、その前にポイントX000で『彼』とぶつかるはずだ。君には『彼』を足止めしてほしい」
「………………………ほぉ」
ほんの少しだけ不満の色が見られた。とはいえ、ほぼ軟禁状態の最果にとって外にきちんと出られる機会を逃す気はない。
一方通行アクセラレータがいじった後を見ることが出来ないのは残念だが、『彼』と戦えるというのならば、そこまであからさまに反抗する必要もないだろう。
「装備は?」
「全部許可する」
「専用武器も?」
「あぁ」
「………………………ふふ、了解ぃ」
楽しそうに笑いながら、間延びした声で最果は笑った。
本当に、楽しそうに。
「迎えは奇鬼喜きききに行かせる。速やかに行動しろ」
それだけ言って白は電話を切った。
天秤の間を沈黙が満たす。
その沈黙の中でもう一度白は受話器を手に取った。今度は、十五夜につなげるために。
予期してはしないだろうが一方通行アクセラレータは世界の理に干渉してしまっていた。
だからこそ、この二人は全力を挙げて動いたいた。
これ以上、もうこれ以上いじられてはたまらない。
世界の強度がどれくらいもつのかはわからないのだから。
学園都市統括理事長、風紀委員本部セントラルジャッジメント委員長。
非常に珍しいことだが、この時二人の思惑は一致していた。
まぁ、だからといって協力できるということにはならないのだから。
「…………………………………………………………………………………………………ぁ?????」
「こ、……こは?」
白。
白く白く白い。
ただひたすらに白しかないこの空間。
上を見ても下を見ても右を見ても左を見ても前を見ても後ろを見ても白。
白白白白白白白白白白白白白白白白白白白白白白白白白白白白白白白白白白白白白白白白白白白白白白白白白白。
そんな空間に一方通行アクセラレータはいた。
「なンだ?俺は、確か…………」
記憶をたどる。
今を理解するために、過去を探る。
一つ一つ順番に、たど
その時だった。
「お・や・」
声が、かけられた。
「ここ二に人間が来るとは珍四一しい」
声をかけられる。日常的な何も不思議ではないことだ。
ただそれだけだったのに、
それなのに、
「ッッッッッッッッッッッッッッ!!!!!!!!!!!!!!??????????」
全身が泡立った。
肌が、脳が、身体の全てが無意識に緊張状態に陥った。
「誰だッッッ!!!!!」
声をかけたのが誰かなど知らない。そんなことは分からない。
ただ一つわかる。
理解できる。
学園都市第一位の超能力者レベルファイブ、一方通行アクセラレータで理解できる。
「オマエは……っっっ」
わかる。
これがそうだ。
これが、これこそが、
恐怖。
人が抱く根源の衝動。
恐・怖・。
「誰だ……っっっ……!!!!!」
その問いに、彼女は答えた。
「私か一い」
目の前の存在は見た目だけを見れば極一般的な少女の姿をしていた。
「私は、そうだね」
だが違う。
見ればわかる。感じる。認識できる。
こいつは、
こいつは、
こいつは、
絶・対・に・人・間・じ・ゃ・な・い・!!!!!!!!
「『空白の主』。そう、呼ばれる存在さ」
敵だ。
あきらかに、絶対に敵だ。
敵。
それも、一方通行アクセラレータの敵という意味では無い。
そんな小さな意味では無い。
危機感が絶望が終焉の気配が迫って募って嗤っている。
この目の前の女は、
人・類・の・敵・だ・!!!!!
「『空白の主』……………………」
ヤバい、と体感で分かる。
強さの質が違う。
言うならば運動会の徒競走で勝つために、参加者全員の足をへし折るようなものだ。
立っているステージが違う。
存在の位階が違う。
これはそう、
神とか呼ばれる存在だ。
現に、
現に現に現に。
「本名自体は別二あるけどね。けれど、君は見た十五六私の名を呼べる段階では七一ようだ四、『空白の主』十呼んで九零たまえ」
この存在は一方通行アクセラレータを見ていながらにして、一方通行アクセラレータを見ていない。
視線は確かに一方通行アクセラレータの方を向いていながらも一方通行アクセラレータをとらえてはいない。
もっと別の何かを見ている。
もっと奥の何かを見ている。
もっと違うモノを見ている。
見られている。見られている。見られている。
「―――――――っ、ぁ」
怖い。恐怖。
御坂と戦っている時だってここまではっきりとは感じなかった。
心臓を直接握られているような、脳に爆発物を入れられたような、そんな恐怖心。
対抗しようと思えること自体が奇跡とさえも思える、そんな感情。
なんなんだこいつは?
そもそもどこなんだここは?
御坂美琴は、あの戦いはどうなった?
「ん?」
いつのまにか『空白の主』と名乗る女(?)が一方通行アクセラレータの目の前に来ていた。
「ッッッ!!!!!」
グイッ!顎を持ち上げられて、
「何を恐零る必要があるんだ一?五五二来たと一う事八程度の差八あ零世界の仕組三を理解四十一ると一う事だ六う?」
などと言われた。
「五の世界の深奥の秘密。秘匿さ零た最奥の領域。明かさ零十八七ら七一その存在を知ったのだ六う」
続けて『空白の主』はこう言う。
「魔術の領域二住ま一、そ四十五五二至零たのだ。君二も何か明確七願一があるのだ六う?言っ十三七三一。何、遠慮する必要七ど七一」
願い?
願いだと?
「ね――――――がい……?」
「そうだ。願一だ」
一方通行アクセラレータは思考する。
願い。たしかにそれはある。もともと絶対能力進化実験レべルシックスシフトなんて馬鹿げた計画に参加したのは一方通行アクセラレータ自身が絶対能力者レベルシックスという領域を目指していたからだ。
絶対能力者レベルシックス。現状の学園都市に存在する超能力者レベルファイブよりも上の強度の、おそらく神ならぬ身にて天上の意思に辿り着くものSYSTEMに至ることすら可能なその領域に至ること。
それが目的だった。願いだった。
本当に?
「ね………………が、――――――い?」
高純度の麻薬を吸ったように脳がくらくらする。とめどない思考が体中をめぐる。
目的、目的、目的。
一方通行アクセラレータは思考を続ける。
絶対能力進化実験レべルシックスシフトに参加し絶対能力者レベルシックスに至る。それが一方通行アクセラレータの目的であったことは間違いがない。
でなければ劣化量産品クローンを二万体も[ピーーー]などという怠い作業を続けるわけがない。
だがしかし、そもそもなぜ一方通行アクセラレータは絶対能力者レベルシックスになろうと思ったのか。
絶対能力者レベルシックスになりたいと思っていた?
違う。一方通行アクセラレータは別に絶対能力者レベルシックスになりたいとは思っていない。
研究者の実験を断れなかった?
まさか、一方通行アクセラレータは学園都市第一位の超能力者レベルファイブにして闇の中の住人だ。その気になれば参加する実験など取捨選択は容易だ。
では単純に絶対能力者レベルシックスという領域に興味があったのか?
(…………………………………………………………………………………………いや)
それも違う。確かに絶対能力者レベルシックスには興味があった。この力はどこまで行くことが出来るのか、自分はどこまで強くなれるのか、そういうことに興味がなかったと言えば嘘だ。
でもそれは絶対能力進化実験レべルシックスシフトに参加する理由としては弱いように思えた。力への執着のみで絶対能力進化実験レべルシックスシフトに参加したわけでは無いのは直感的に理解できた。
であれば、いったいどうして一方通行アクセラレータは絶対能力進化実験レべルシックスシフトに参加したのだろうか。
思考する。
答えは出ない。
思考する。
答えは出ない。
思考し続ける。
答えは出ない。
答えは出ない。
答えは分からない。
学園都市一の頭脳を持っている一方通行アクセラレータでも、その問いに対する答えは、自らが絶対能力者レベルシックスを目指そうと思った理由が、その始原の衝動がわからなかった。
黙っている一方通行アクセラレータを不可解な思い出見つめていた『空白の主』はいつまでたっても黙して語らない一方通行アクセラレータを前に一つの事実に気付いた。
「……………………ま三か七一のか?」
驚愕の表情で『空白の主』は呟く。
ありえない、と内心で『空白の主』は思った。
『この場所』に来る生命が何の願いも持たないなどあり得ない。ただの興味や好奇心や偶然で来れる場所ではないのだこの場所は。
確固たる意志があり、絶対に達成したい目的があり、そのために死に物狂いで行動し、死をいとわずに動き、それでやっと至ることのできる場所なのだ。
確かにその『位階』に至ったのであれば『願い』は叶ったといってもいのかもしれない。だが、『この場所』に至るという事はそもそも世界の根幹自体を作り直したいと思ったはずだ。
ならば、願いがないなどあり得ない。
「なら仕方が七一。願一を口二四七一のであ零ば、強制的二見せ十もらうまでだ」
数年ぶりに『この領域』に来た生命がいるのだ。その生命の願いを知りたいと思うのは『空白の主』にとって自然なことだった。
なにせ、この領域に来れたという事は世界の仕組みを、重なった位相を理解したという事なのだから。
最・初・の・一・人・として長き時を生きる『空白の主』の興味を引くのも当然だった。
スッと一方通行アクセラレータの顎に手を当てたまま、『空白の主』は一方通行アクセラレータの瞳をじっと見つめた。
その瞳の奥にある一方通行アクセラレータの記憶を覗き見るように。
だが、
「……………………………………………へ?」
明らかな戸惑いの声が『空白の主』からもれた。
予想もしていなかった事態が起きたのだ。
「超能力者……?ま三か、魔術師で八七一のか……!?」
『空白の主』にはとある先入観があった。それは『この領域』に来る生命は程度の差はあれ『魔術師』であるというものだ。
『魔術師』でなければこの場所には来れない。これは永き時を生きる『空白の主』にとってほとんど確定事項であった。数少ない、それこそ数人の例外を除けば『科学』に属する人間が『この領域』に来れるはずがないのだ。
だからこそ『空白の主』は一方通行アクセラレータの内面を覗き込んだ時戸惑いをあらわにした。
一方通行アクセラレータが科学の街の総本山、アレイスター=クロウリーが作り出し、支配する学園都市に属する超能力者であることに気付いたから。
「八っ、からからからからから!!!!!そうか、至零たのか!!!」
それに気づき、だから連鎖的に『空白の主』はもう一つの事実に気付いた。
つまり、魔術師では無い科学の側の人間が、超能力者がここに至るという事の意味だ。
「うん?気付一十一七一のか?なら、私が教え十あげよう」
アレイスター=クロウリーが目指したいたものの終着の形の一つ。それが、もうすでに再現されていたのだ。
つまり、
「おめで十一方通行ア九セラ零ータ。君八もう絶対能力者零ベル四ッ九ス二至っ十一るよ」
あまりにも簡単に『空白の主』は言った。
二万を殺してなれるはずの絶対能力者レベルシックスに一方通行アクセラレータはなっていると。
「そ四十、その先の領域二もね」
そのあまりにも簡単な言い草に一方通行アクセラレータは逆に確信を思えてしまった。絶対能力者レベルシックスになっているという確信を。
「ふむ、だが五のまま君が帰っ十四まうのも面白九七一七」
だから一方通行アクセラレータは一瞬戸惑った。一方通行アクセラレータは絶対能力者レベルシックスを目指していたが絶対能力者レベルシックスになりたかったわけでは無い。それを先ほど確認したばかりだ。
ならば、これから先は何を目指すのか、どうすればいいのか。
「気乗り四七一が、うん久四ぶり二戦う十するか」
そんな思考を巡らせていると唐突に『空白の主』が戦闘の意思を示してきた。
「さぁ構えたまえ一方通行ア九セラ零ータ。その力を私二向かっ十ふるっ十九零」
自然体だった。
あくまで自然体で『空白の主』はそういった。攻撃をしろ、と。
だが動けない。
明らかに隙だらけなのに感覚として感じる明確な『圧』のせいで体が動かない。
「来七一の七らば五ちらから行九ぞ?」
いつまでたっても攻撃してこない一方通行アクセラレータに辟易したのか、『空白の主』はボクシングのようなファインティングポーズをとり明確に攻撃態勢を作った。
そして、その超絶至近距離から『空白の主』の軽いジャブが一方通行アクセラレータに振るわれ、
「そこまでです」
いつのまにか現れていた風紀委員本部セントラルジャッジメント委員長補佐木葉桜十五夜が『空白の主』の手を掴んでいた。
https://syosetu.org/novel/56774/77.html
寄り道します。
白白白と木葉桜十五夜① 緊急命令 常世涯最果と木原脳幹① 足止め
十五夜まんげつが始まりの領域で『空白の主』の腕をつかむ五分前の出来事だった。
「案外苦戦していましたね」
8月21日午後10時02分、十五夜は上条たちが戦っていた下水道の上の空間、地上で彼らの戦いの様を見ていた。
当たり前の事実だが分厚い地面で遮られている下水道のことを地上から見ることは普通出来ない。
といってもそれはあくまで一般人の話だ。この学園都市には普通から外れた人がいくらでもいる。
例をあげれば透視能力クレアボイアンスの能力者。はたまた視界共有リンクサイトの能力者。あるいは反響測定エコロケーションの能力者なんかも地下深くの下水道の様子を把握できるかもしれない。
そして当然のように十五夜も分厚い地面で遮られた下水道の様子を把握できる人間の一人だった。
「決着はついたようですし、私も動きますか」
手元に用意した二つのストロビラを弄びながら十五夜は小さくつぶやいた。
そも、十五夜がここに来たのは埋娥と百目が倒した後の上条と白井を回収し、その首筋へと設定済みのストロビラを打ち込むためだ。一応、保険として万が一二人が負けたときは代わりに上条らを倒す役目もあったが、二人が勝った以上それをする必要はない。
故に、十五夜の役目はストロビラを打ち込むことのみ。それに限定される。
視線を下にやる。
上条たちがいるであろう下水移動を地面を透視してみるように、顔ごと視線を下に下げる。
「この距離ならいけますね」
意識をほんのわずかに集中させて、十五夜は上条たちのもとへ向かうために空間を渡ろうとする。
その時だった。
ドッガアアァアァアアアアァアアァアアアアアアァアアァァァァァァアアアアンンン!!!!!!!!!
という爆発音が響き、十五夜の立っている地面が沈んだ。
「…………?」
その爆発によるダメージは十五夜には存在しない。
そもそも今の爆発は十五夜を狙ったものではないのだから。
「爆発……ですか?いったい誰が……?」
まず疑ったのは御坂美琴による粉塵爆発。白の言う通りにことが進んでいるのだとすれば、この空気を哭なかせる爆発音は御坂美琴の一撃のはずだ。
だがそうすると疑問が二つ。爆発音が近すぎるという疑問。さらに沈み込んだ地面の謎。粉塵爆発ではこの現象は起きない。
だから違う。この爆発は御坂美琴によるものではない。
次に疑ったのは苦罠の勢力。御坂という存在を除いた時、もっとも可能性があるのはどう考えてもあの二人。死縁鬼苦罠と天埜郭夜。
しかしここでも疑問が二つ。
すなわち誰を対象とした爆発なのか?そして、誰によっておこされた爆発なのか?
このタイミング、この規模。
上条たちの戦闘が終わったタイミングで10トントラックいっぱいに積まれたC4が一気に爆発したようなこの事態。
ここに存在する意思は、誰のものだ。
そんな思考を続けている十五夜のもとにピリリ、と電話がかかってきた。
「委員長……?」
ワンコールで十五夜は電話をとった。
今かかってくるのならばそれはすなわち今かけなければならないということだ。
通話をつないだ十五夜の携帯を通して、白の冷静な、そして焦った声が聞こえた。
「緊急事態だ、十五夜。第一から第八までの拘束リミッターの解除を許可する。すぐに解除してくれ」
「っ……!了解しました。すぐに」
その言葉に、十五夜は事態の深刻さを知った。
十五夜は自らの力に十の制限をかけている。その制限をかけた状態でもほとんどの存在には負けることはないが、白はその拘束を解けと言った。
つまり、それほどのことが起こってしまっているのだ。
十五夜が全力を出さなければ対応できないような、そんな事態が。
「第一jyuiru八拘束リミッターmoia解tvewiw除xbyvc。解swku除hs印コードhixa6829cfdyl3057miw16v824hwojd95022gcihre34uei5xdab6」
世界に出力される言語がぶれた。十五夜の口から放たれた言葉がぶれた。
すなわちそれは十五夜が常人ではないという証。
すなわちそれは十五夜が超能力者でも魔術師でもないという証。
すなわちそれは十五夜が種としては人間の枠に当てはまらないという証。
そう、十五夜は人であって人では無い。
生まれつきであるその力は十五夜の人としての生を木端微塵に打ち砕いていたから。
「『空白の主』が一方通行アクセラレータに干渉している。最悪全面戦闘になってでも一方通行アクセラレータをこっちに引きずり出してくれ。今ここで手札の一つを奪われるわけにはいかない」
「『空白crbf主』……っ!!!了isoa解vbyo、私全bcyw力nqimx駆使wxbok一方通行アクセラレータvwbyo奪byow取!」
「頼む」
会話は一分にも満たなかった。いつもならばだらだらと回りくどい話をする白が最小の会話で事態を伝えたのだ。
それは白が焦っているという証で、それだけ自体が緊迫しているという証だった。
「………溜vsy息znewnn」
一息だけ吐いて。
十五夜は世界位相を壊してその領域に侵入した。
そしてもう一人。
もう一人風紀委員本部セントラルジャッジメント側の勢力から動いている人間がいた。
「来たぁ」
常世涯最果とこよのはてさいはて。
学園都市風紀委員本部セントラルジャッジメントに属する風紀委員本部セントラルジャッジメントの封印戦力のうちの一人である。
その戦闘力は風紀委員本部セントラルジャッジメントの中でも最低ランクであるが、
その特異性は風紀委員本部セントラルジャッジメントの中でも最高ランクである。
その最果に対して相対する存在は人間では無かった。
『ふむ。君は何者だね』
犬。
それもゴールデンレトリバー。
イギリス原産の大型犬である。
「ははぁ。知ってるくせにぃ」
その犬の名は木原脳幹。
学園都市に5000人ほど存在する木原一族の中でもさらに異端の存在。
「でもまぁ、確かに戦闘前には一度名乗りを上げたほうがロマンがあるのかなぁ?」
アレイスター=クロウリーの飼い犬。
この街の番犬。処刑犬バニッシャー。
今は亡き『木原』の始祖ともいうべき七名の科学者に外付け演算回路を取り付けられたことで生まれた、異色にして異端の存在。
それが木原脳幹だ。
「学園都市風紀委員本部セントラルジャッジメント封印戦力が一人常世涯最果とこよのはてさいはて。風紀委員本部セントラルジャッジメントの中の暗部の中の暗部。いうなればローマ正教における神の右席みたいなぁ?」
風紀委員本部セントラルジャッジメント封印戦力。
その名を聞いて脳幹はその身をふるわせた。
『なるほど、ここで出てくるのか』
当然、恐怖によるものではない。ガチャガチャガチャガチャ!!!と脳幹の体に合うように造られた様々な装備がサイコロ展開図のように完璧かつ完全に組みあがっていったのが理由だ。
対魔術式駆動鎧アンチアートアタッチメント。
刃物、銃弾、砲弾、レーザービーム、液体窒素、殺人マイクロ波、ドリル、パイルバンカー等の無数の兵装で作られた『理解できない領域』の存在を撃滅、殲滅するための兵器群。
モノの数秒で、その必殺が最果の前で組みあがった。
『だが、私も君程度に足止めされるわけにはいかないのでね』
脳幹と最果は互いに一瞬だけ視線を交わした。
脳幹は既に最果がここにきた理由を察していた。封印戦力、風紀委員本部セントラルジャッジメントの暗部の中の暗部、秘中の秘。
このタイミングでその存在が出てくるのならば、それは当然足止めしかないだろう。
『空白の主』もとへ脳幹を向かわせないための足止めだ。
『悪いが、押し通らせてもらおう』
やらせるわけにはいかない。
ここで足止めを食らえば、彼の計画そのものに重大な亀裂が入ってしまう可能性があるから。
それはいただけない。
彼の使いとして、それはいただけない。
善悪で言えば悪で好悪で言っても悪。
脳幹は自らの行いをそう定義しながらも、止めるつもりはなかった。
『なぁ、君は対魔術式駆動鎧アンチアートアタッチメントを知っているかね?』
その一言を合図としたように、脳幹が対魔術式駆動鎧アンチアートアタッチメントを起動させて、
「ポチッ」
最・果・が・自・爆・し・た・。
『ぬっ!!!?』
さしもの脳幹もわずかに動揺した。
最果が手に持った何らかのボタンを押した瞬間に最果がたっていたところを中心とした爆発が広がったのだ。
さいわいのことながら起動させた対魔術式駆動鎧アンチアートアタッチメントから放たれた数十以上の誘導ミサイルがその爆発と衝撃をいい具合に中和したが、それにしたって予想外過ぎた。
まさか自爆するなど。
それも代えがきかなくもない雑兵ではなく、おそらく風紀委員本部セントラルジャッジメント内でもかなりの地位にいる、重要なポジションに位置するだろう封印戦力の一人が自爆するなどと。
あまりにも予想外過ぎた。
それこそらしくもなく動揺してしまうほどに。
『……………………』
沈黙があたりを満たす。
いかに脳幹がアレイスターの使いであり、異常ともいわれる光景を見慣れていようとも、不可解なこの自爆を前には沈黙しか返せなかった。
『……………………』
あらゆる行動には意味が生じる。
人を[ピーーー]のには人を[ピーーー]だけの理由が、
人を救うのには人を救うだけの理由が、
そして、人が死ぬという事にも必ず理由がある。
つまり、風紀委員本部セントラルジャッジメント封印戦力が一人、常世涯最果が自爆したのも必ず何らかの理由がある。
最果の目的は脳幹の足止め。それを思うのならば、最果の自爆は脳幹を足止めするために行われたとみるべきだ。
しかし、自爆によって稼げる時間は多くても30秒といったところだろう。
となれば、足止めという目的は果たせないように思える。30秒程度の足止めで何が変わるというわけもあるまい。
つまり、
『なるほどな』
小さく、呟いた。
眼前の光景が示すその意味を理解したから。
最果の行動が示す意味を分かったから。
『なるほど』
脳幹はもう一度小さくつぶやいた。
最果の自爆が原因であたりに充満した煙が晴れる。
それと同時に、
「ポチッ」
ま・る・で・先・ほ・ど・の・焼・き・増・し・の・よ・う・に・も・う・一・度・最・果・が・自・爆・し・た・。
https://syosetu.org/novel/56774/78.html
もう本当に申し訳ないんですけどたぶん今回の話つまんないです。
なんでつまんないかと言うとこの話だけじゃ何がどういうことなのか意味不明の理解不能でちんぷんかんぷんだからです。
あとがきで話の流れだけは書いておきます。
69話目の 御坂美琴と一方通行① 再戦 神亡島刹威と浣熊四不象① 悪の正義 の前書きで「ラストバトルの開幕だ」的なことを書いてしまいましたね。
ごめんなさい、あれは嘘になってしまった……。
木葉桜十五夜と『空白の主』① 神域の戦い 一方通行② 次元の違い
純白にして漆黒の空間で少女が二人、明確に対峙していた。
「今、わり十楽四んで一た十五六七んだけど?」
これ以上の不快なことはない、と言ったような口調で『空白の主』は言い放った。無粋にも『空白の主』の手を掴んでいる十五夜まんげつに向かって。
「そうですか」
だからどうした、とそんな口調で十五夜は言い放つ。一方通行アクセラレータを攻撃しようとした『空白の主』に向かって。
「もう一度言うけど、ど一十九零七一か七」
ビキビキッという音が出そうなくらい青筋を立てて不機嫌そうに『空白の主』は言う。全力で掴つかまれた手を放そうと努力しながら。
「いやですね。私はあなたを止めるように言われているので」
だが、十五夜が決して『空白の主』の手を離さない。手をひけば同じように十五夜も手を押して、手を前に出せば応ずるように手を引く。力をこめられたその手を振りほどくのは通常戦闘能力が並以下でしかない『空白の主』には至難の業わざだった。
「あぁ、そう」
だから足りない力を技術で補った。
すう、と緩急をつけながら掴まれた手を引きつつ、そのまま空いている別の手でうまく十五夜の手を誘導して切り離す。腕力という力では敵わないが経験という名の補助があれば対抗できる。
そして、そのまま数メートルほど後ろに飛びずさり十五夜と一方通行アクセラレータから距離をとった。
「七ら、四ょうが七一か七。私は本当二戦闘二八不向き七んだけど」
いつのまにか『空白の主』の手に光り輝く剣が握られていた。短剣というには長すぎるが長剣というのもはばかられる長さの剣。柄もあり峰もあり、そしてその鈍い輝きがその剣が真剣であることを如実に示していた。
「グラム……いや、クラウ・ソラスですか」
一瞬だけ勘違いしたが、その剣の名を即座に十五夜は看破した。
魔剣グラムではなくアイルランド民話におけるクラウ・ソラス。もっとも日本で知られるクラウ・ソラスにはかなりの拡大解釈は混ざりが加えられて、原典のものとは異なった剣になってしまっているのだが。
「原典と八程遠一け零ど…………今八五の方が一一、か七ッッッ!!!!!」
前述したとおりクラウ・ソラスはアイルランド民話に登場する剣である。クラウ・ソラスの意味は「輝く剣」、すなわちアイルランド民話における「輝く剣」というものの集合概念がクラウ・ソラスという剣なのだ。
もともと、民話の中に登場するクラウ・ソラスは「輝く剣」という称号こそあれ発光によって敵の目をくらます、自動追尾機能によってひとりでに敵を打倒す、隠れた敵を見つけ出す剣などというものでは無かった。それらはすべて拡大解釈であり様々な民話を合わせたものにすぎないのである。
クラウ・ソラスは多くの民話に登場する魔法剣の総称であり、物語ごとに異なる解釈がなされているものなのだから。
そして、『空白の主』はそんなクラウ・ソラスを投げた。
「ッッッ!!!」
前述したとおりクラウ・ソラスは剣である。槍では無い、剣である。投げるではなく斬るという用途で使われる剣。貫くというよりは切り裂くという方法で敵を傷つける剣。
本来ならば投擲物とうてきぶつとしては機能しない。
本来ならば!!!
「クラウ・ソラス+グングニル=万物貫九輝煌の剣クラウ・グングニル・ソラス」
『空白の主』は戦闘が得意ではない。だがそれは『空白の主』が戦闘を出来ないという意味にはならない。
そもそもこの領域を住みかとする『空白の主』は万物すべてを自由にできる権限があるのだから。
だがそれは十五夜にしても同じこと。
「遅い」
放たれた万物貫く輝煌の剣クラウ・グングニル・ソラスが消えた。跡形もなく、塵も残さずに。きれいに消えて消え去った。
最初から存在しなかったかのように。
初めからそんなものは無かったかのように。
万物貫く輝煌の剣クラウ・グングニル・ソラスはこの領域から消えた。
「先につばを付けておいたのは我々の方です。『空白の主』、あなたの方こそ引くべきではないんですか」
「からから、冗談一うね」
前述したとおり『空白の主』が形成したクラウ・ソラスは原典から遠く離れている。自動追尾機能、隠れた敵を見つけだす索敵機能等が『空白の主』の作り出したクラウ・ソラスには付けられていた。
グ・ン・グ・ニ・ル・の・万・物・貫・通・能・力・と・共・に・。
「五の領域二直接干渉する九十すらでき七一雑魚二五の領域二自力で辿り着一た一方通行ア九セラ零ータを扱える十八思え七一。大人四九私二渡四たほうが世界のため二七る四?」
ここまで言えばわかると思うが『空白の主』は神話の装具を具現化し、原典たりうる神話の装具を現実への流出具合を勘案してある程度いじくることが出来る。
もともとは「輝く剣」という称号があり、物語ごとに違う解釈であったクラウ・ソラスに後から上書きされた概念である『自動追尾機能』と『発光』などを付け加えたのがいい例だ。
そして、そこに別の概念を付け加えることも。
「管理者気取りですか。この引きこもりが」
万物貫く輝煌の剣クラウ・グングニル・ソラス。
この剣はクラウ・ソラスの亜種とグングニルの二つを合・成・して作られた神具だ。
発光及び自動追尾並びに索敵の能力を持つクラウ・ソラスに万物貫通能力を持つグングニルを付け加えた武器。
クラウ・ソラスだけでは十五夜の自動防御機能のようなものを貫けないかもしれないと考えた『空白の主』によって放たれた武器。
まぁ、結局のところ万物貫く輝煌の剣クラウ・グングニル・ソラスは跡形もなく掻き消されてその効力を発揮しなかったわけだが。
「からから、それを言うの七ら、前時代の遺物五そ引っ込んで一六四」
その言葉に、十五夜の顔が固まった。
どんな個体にも禁句というものはある。触れられたくない部分、触ってほしくない部分、触れられたくない記憶、思い出すことも回想する事さえしたくない記憶。
十五夜のその部分に『空白の主』は触れてしまった。
当然、わざとだが。
「…………………………」
いつの間にか十五夜の手に一つの竹槍が握られてた。
何の変哲もない、どこにでもあるような竹の槍。
あまりにも武器としては頼りなく、あまりにも普通な槍。
一見するとそれはこの場で使われる武器としてはふさわしくないように思えた。
「ヌ九十メロン四リーズの一つ。四スラウの時計八使わ七一のか一?」
『空白の主』は十五夜が持っている武器のことを知っていた。
懐中時計型万能毒製造霊装『シスラウの時計』。
風紀委員本部セントラルジャッジメント開発部隊総隊長魅隠罠明みかくれみんみんによって作られたヌクテメロンシリーズと呼ばれる霊装の一つ。
ヌクテメロンとは2000年近く前にティアナのアポロニウスと呼ばれる人物によって書かれた魔導書である。この書にはヌクテメロンの魔神と呼ばれる各時間に対応した72の魔神の名が書かれており、『シスラウの時計』はその72の魔神のうちの一柱『シスラウ』の話をもととして作られた霊装なのである。
ヌクテメロンの魔神『シスラウ』は12の時の内4時に対応する魔神であり、その性質は毒。あらゆる毒をつかさどる毒の魔神が『シスラウ』なのである。
その話をもとにして作られたからこそ十五夜の保持する懐中時計型霊装は『シスラウの時計』と呼ばれ、万能の毒を生成することが出来るのだ。
「まぁ、『四スラウの時計』七ん十弱一霊装八私二十って効果八七一んだけど」
十五夜は『シスラウの時計』を使うつもりはなかった。
何故ならば、『シスラウの時計』の効果や術式はとっくに『空白の主』に知られているからであり。
そして、何よりも
人・類・の・信・仰・が・生・み・出・し・た・魔・術・な・ど・ど・い・う・も・の・は・決・し・て・空・白・の・主・に・効・か・な・い・の・だ・か・ら・。
手に握った竹槍を構える。この竹槍は勝ちたいという数多の人の願いのこもった武器。それゆえに十五夜が持てば天下無双の武器となりうる。
そして、十五夜は槍を突き出して、
言った。
「殺されたいようですね、阿婆擦れ」
「からから、やって五らん四無能女」
一瞬後
世界が揺れた。
その光景を何よりも遠いすぐそばで動けないままに眺めている男がいた。
強さとは何か、そんな酷くどうでもいい、だが根源的な問いが浮かぶ。
『強い』という事が戦闘能力に直結するのならば、今一方通行アクセラレータの目の前で戦っている二人よりも『強い』生物を一方通行アクセラレータは見たことが無い。
例えば、ミサカ10032号は一方通行アクセラレータと御坂美琴の戦いを神話の戦いに例えた。
例えば、一方通行アクセラレータは『空白の主』のことを神だと直感した。
だから『空白の主』と互角に、いやひょっとしたらそれ以上の領域で戦っているだろう女のことを見て一方通行アクセラレータは一つの単語を思い浮かべた。
神々の黄昏ラグナロク。
北欧神話における最終戦争。
世界に数多存在する終末の在り方の一つ。
科学の街の住人でありながらそんな戯言が思い浮かぶほど、二人は『強く』強かった。
強さ。
絶対的で究極的で圧倒的な強さ。
それを求めて参加した実験絶対能力進化実験レべルシックスシフト。
二万人を殺してでも得たかったチカラ。
それがとても小さく思えてしまうほど二人の戦いはレベルが違った。今までやっていた戦闘が子供の遊びに思えるほどに、御坂美琴との一進一退の攻防すらただの児戯に思えるほどに。
位階が違い、強度が違い、世界が違い、すべてが違った。
次元の違う場所にいるのだ。
『空白の主』によって絶対能力者レベルシックスの先の領域に足を突っ込んでいると断じられた一方通行アクセラレータよりも、高い場所に。
彼女達はいた。
「クソッ………………」
小さな罵声が漏れた。
我慢できなかった。一方通行アクセラレータは誰も自分に勝てないと思っていた。対抗できるヤツはいても結局は勝つと思っていた。
その考えが一瞬で覆された。
たった二人の戦いを見るだけで『上』を認識できた。
自尊心が、自意識が、ガラガラと崩れるような感じがした。
一方通行アクセラレータが思考している間にも二人の戦いは続いている。一目見るだけで一般人でも神具だと認識できるような武具が空間を裂いて現れ、十五夜に向かって無数に投下される。
それに対して、十五夜はただ手を振り払い、竹槍を振るう。それだけでもとからそこになかったかのように神域の武具は消えていく。
何がどうなっているのか、その現象がどんな理屈をもって行われているのかひとかけらもわからなかった。
科学の街『学園都市』の中でも最強の能力者であり、最高の頭脳を持つはずの、一般人よりもはるかに深い『闇』の中に住む一方通行アクセラレータですらつかめない。
その領域はきっと人間という生命体が一生をかけて辿り着くための努力をする神域なのだ。
強さとは、最強とは、いったい何なのだろうか。
心に浮かぶ感情はいつの間にか恐怖から悔しさに変わっていた。
https://syosetu.org/novel/56774/79.html
いいですか、私は!決して!脳幹大先生のことが嫌いなのではありません!!!
ただ、好きなキャラを苦戦させ、苦しめ、壊すのが好きなだけなのです!!!!!
勘違いしないでください!脳幹大先生のことは大、大、大好きですぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅ!!!
常世涯最果と木原脳幹② 狩る者、狩られるモノ
「ポチッ」
現在、最果さいはてによる13度目の自爆が脳幹のことを襲っていた。
『対魔術式駆動鎧アンチアートアタッチメント部分射出ダブルバーストッッッ!!!』
その自爆によっておこされる波状型の爆撃や衝撃を脳幹は対魔術式駆動鎧アンチアートアタッチメントの兵装をもったいぶらずに解き放つことによって対応する。
爆撃にはレーザーやプラズマ砲を、衝撃にはミサイルによる爆撃をそれぞれ放つ。
そうすることで脳幹のところまで、自爆の影響を届かせない。
そんなやりとりがもう13回も続いていた。
埒らちが明かない、そう脳幹は思う。
最果の目的は脳幹の足止め、これはもう確定的に明らかだ。
分かっている。それを分かっているのに脳幹は最果を突破できないでいた。
原因は大きく分けて二つ。
最果を[ピーーー]方法が不明なこと。そして、最果の自爆最大範囲が不明なこと。この二つ。
まず最果を[ピーーー]方法についてだがこれがあまりにも不明すぎる。自爆している、ということは最果を中心とした爆発が起きているという事で間違いがない。つまり、どうしたって最果は爆発にまきこまれるはずなのだ。
なのに無傷、傷一つ負わない。威力的にも規模的にもどうしたって影響を受けなければおかしいのに。
何か、自分だけは傷つかない特殊なバリアのようなものを張っているのか?とも考えた。だが、最果の衣服は汚れているし脳幹の放つ対魔術式駆動鎧アンチアートアタッチメントが当たればきちんと怪我を負っている。それなのに、最果ては死なないのだ。
対魔術式駆動鎧アンチアートアタッチメントのレーザー攻撃は今までに三度最果を貫いた。
一度目は心臓を、二度目は脳を、三度目はその二つを同時に。
だが、レーザーによって貫かれ、血液をまき散らした後に残るのは完全に無傷な生身の最果だけ。最果の死体が現れることは決してなかった。
おそらく、超回復ハイパーリジェレネーション能力の類をもっているのだろうと推理する。
そうでなければ説明がつかない。心臓を貫かれても即時再生するほど回復速度の理由が。
しかし、そうだとしてもまだ矛盾点はあるのだが。
「ポチッ」
十四度目の自爆。
冷静にそれを対処しながら脳幹は考える。
実のところこの足止めを突破するだけならそう難しくない。どうにかして最果から逃げればいいだけなのだから。
けれど、
それが出来ない理由があった。
「ポチッ」
十五度目の自爆。
だんだんと、少しずつ自・爆・の・威・力・と・範・囲・が・あ・が・っ・て・い・る・。
最初は脳幹にギリギリ届くか届かないかという威力だったのに今は半径500メートルを巻き込むような威力になってしまっている。
このまま自爆の威力が上がってしまったら一般人にも被害が出てしまうかもしれない。
脳幹は木原一族にしては本当に本当にめずらしく他者を気遣うことが出来る存在だったから。軽々に逃げることが出来なかった。
名も知れぬ一般人が巻き込まれる可能性を考えてしまい、なんとしてもここで最果を殺そうとしていた。
『これ以上足止めされるわけにはいかないか……』
すでに最果に足止めされて1分が経過している。これ以上この場に釘づけにされれば風紀委員本部セントラルジャッジメントを止められなくなる。
故に、
選択した。
対魔術式駆動鎧アンチアートアタッチメントではきっと決定打にはならない。ここまで撃っても攻撃が通らないという事は対策がされているのだ。
対魔術式駆動鎧アンチアートアタッチメント、アレイスター=クロウリーに対する対策が。
だから、
「ポチッ」
16度目。
合わせて対魔術式駆動鎧アンチアートアタッチメントを撃つ。誘導ミサイル、レーザー、殺人マイクロ波、液体窒素、あらゆる兵装、その武器を。
無論効かないのはわかっている。
だ・か・ら・次・の・行・動・に・出・た・。
ガギガチガチガチャンッッッ!!!!!
機械が再構築されるような不気味な不協和音が響き渡り、脳幹がその身に纏っている対魔術式駆動鎧アンチアートアタッチメントが姿を変える。
対攻撃翌用の態勢から、対高速移動用の態勢へと。
そして、
ゴッッッ!!!!!と、完全にその形態を変えた対魔術式駆動鎧アンチアートアタッチメントが一本の槍となって最果を貫いた。
「が、」
悲鳴が上がるにはあまりにも死亡までの時間が短すぎた。
死んだという事実を認識する暇もないほどの極超短時間で最果はその命を散らす。
そのさまを脳幹は直接認識することはなかった。
これまでの戦いで最果が即死級の怪我を負った後に無事に生還する手段を確保していることは判明している。
だから、最果の生死など脳幹は確認しなかった。
対魔術式駆動鎧アンチアートアタッチメント高速移動形式モデルラピッドストーム。
そう友に名付けられた形態で脳・幹・は・最・果・の・こ・と・を・無・視・し・て・突・き・進・む・。
時速に換算することすら馬鹿馬鹿しく感じる、最果の視界からコンマ1秒以下の時間で外れる速度で直線的に脳幹は道を突き進んだ。
今までは馬鹿正直に正面から最果と戦っていたが、別に脳幹は最果と戦う理由はないのだ。はっきりいって無視してもいい。
ここで必要とされるのは脳幹が最果を無力化して、つまり最果によって周囲に被害が出ないようにしたうえでアレイスターに託された任務を遂行することだ。
考えてみよう。仮に最果が脳幹の一撃を受けた後に復活したとして、脳幹の姿が最果の視界内にないとすれば最果は自爆をしようと考えるだろうか。
考えない、そう脳幹は考えた。
最果はまがりなりにも風紀委員本部セントラルジャッジメントの一員。風紀委員本部セントラルジャッジメントとしての最低限の矜持ぐらいはあるはずだ。
任務に失敗した以上周りを巻き込むような八つ当たりはない。
あの白白白が支配する風紀委員本部セントラルジャッジメントの組織員だ。いかに封印戦力などという称号が与えられていてもそれぐらいの制御はされているはず。
だから、最果を一度戦闘不能状態にして、その間に最果ての視界内から脳幹が消え去ればいい。
そうすれば、任務を失敗した最果は悪態をつきつつも帰るはずだ。
いかなる不死身、不死性を持っていたとしてもその体が純粋な人間だというのならば極超音速をたやすく突破する速度で移動する脳幹をとらえることなど不可能なのだから。
対魔術式駆動鎧アンチアートアタッチメント高速移動形式モデルラピッドストーム。
後方に設置された無数のロケットブースターを上手に操りながら脳幹は学園都市の道を突き進む。
追手の気配はない。
1秒あればアレイスターが指定した場所に辿り着ける。
だから何の心配もない。
そう、思っていたのに。
「逃がすと、思ってぇ」
速度によって無限に加速された時間の中で、あまったるい声が脳幹の耳に響いた。
『っ!?』
思考の中にわずかな驚愕が現れるが、決して脳幹はロケットブースターの放出を止めない。
気にする必要はない
気にかける暇があるのならば今は一メートルでも先に進むべきだ。
だが、
「ポチッ」
規模も、威力も別格の17度目の自爆が脳幹を襲った。
体・内・保・存・式・緊・急・自・殺・用・超・威・力・爆・弾・『オ・メ・ガ・ジ・エ・ン・ド・』。
効果はその名の通り自爆。
あたり一面を巻き込んだはた迷惑な自爆。
しかも、この専用武器の厄介さはそれだけにとどまらない。
一つ。自爆範囲とその威力を最果自身で調節可能であるということ。
ごく小規模かつ低威力の自爆から超大規模かつ超威力の自爆まで最果の主観で選択可能であるということ。
この機能を原因として、脳幹が感じたように自爆の範囲と威力が強化されていたわけだ。
そして、二つ。
『ぐぬっ!!!』
『オメガジエンド』によるこれまでとはけた違いの爆発が脳幹を襲う。C4を500Mt爆発させたような爆発。
そ・れ・が・指・向・性・を・も・っ・て・脳・幹・に・襲・い・か・か・っ・て・い・た・。
それこそが『オメガジエンド』の特性の二つ目。
『オメガジエンド』による爆発はその方向を決定することが出来る。誘導できるのだ。爆発の方向性を、前方へと、後方へと、左方へと、右方へと。
故に逃れることは不可能に近い。
一般人ならば容赦なく爆発に巻き込まれて死亡するだけだ。
一般人ならば。
『っ』
対魔術式駆動鎧アンチアートアタッチメント高速移動形式モデルラピッドストーム。
その後方にあるロケットブースターを逆噴射&左向きするようにして急制動をかけ、脳幹はその指向性を持った爆発から逃れた。
そこに声がかかる。
「ははは、逃がすわけないでしょう」
さすがの脳幹もあせっていた。
対魔術式駆動鎧アンチアートアタッチメント高速移動形式モデルラピッドストームを使ってなお逃れることのできない最果の足止めに、頭脳をフルに回転させて対処しようとする。
脅威度は既に十段階以上引き上げられていた。
ただでさえ、対魔術式駆動鎧アンチアートアタッチメントの直撃を受けても死なない不死性を持っているのに、それに加えて対魔術式駆動鎧アンチアートアタッチメント高速移動形式モデルラピッドストームの脳幹に追いつくことのできる何らかの手段を保有している。
対応できなくてはないが、対応することは難解だ。
そんな域に最果の戦闘能力はあった。
だから、
その時だった。
「天地破壊流布術。髑髏されこうべ」
きりっとした声と共に上方から降ってきた布が最果の頭に巻き付いた。
「は?」
どこから、と疑問に思う暇もなかった。
突然、最果の頭に巻き付いてきた布は上から下に振り下ろされたままの勢いで最果の頭を180度ねじった。
グルンッ!と360度首が回ったのが認識できた。
ボギリ、と最果の首が折れる。
「送るよ」
乱入者は剣を振るう。
「天地破壊流。滅亡・攻防一対絶対防衛全方位断絶別位世界サークルアイギスウィズザワールド」
学園都市の中でも最高レベルの知識を持つ脳幹だからこそ、その行動の意味が分かった。
彼・女・の・振・る・っ・た・そ・の・剣・が・世・界・を・切・っ・た・。
なんの抵抗もなく、なんの反抗もなく。
まるで飴細工のように。
ベキベキベキベキベキベキベキベキベキベキベキベキベキベキベキベキベキベキベキベキベキベキベキベキ!!!!!と。
切られた世界の断面のようなものから白い暗闇が現出しそうになる。
その空間に脳幹は躊躇なく入った。
誰が割って入ったのか、誰が布を使って最果を殺したのか。脳幹にはその人物が分かっていた。
『感謝する。彼者誰時に輝く月シャイニングムーン団長裂ヶ淵瞑娥さくがぶちめいが』
まっすぐな感情をこめて脳幹は礼を言った。
そして、木原の中でも異端の存在である脳幹は彼女らを視界にとらえる。
常人には理解不能な領域に存在する超常の存在達が戦っているそのさまを。
それを離れたところから見ているひとりの少年の姿を。
『対魔術式駆動鎧アンチアートアタッチメント一斉射出フルバーストッッッッッ!!!!!!!!!!』
躊躇いはなかった。
躊躇は無かった。
脳幹はアレイスター=クロウリー友の願いをかなえるために、その超常の存在達に向かって武器をふるった。
常世涯最果 所属 風紀委員本部
役職 封印戦力
能力 不明
専用武器 体内保存式緊急自殺用超威力爆弾『オメガジエンド』
https://syosetu.org/novel/56774/80.html
領域の戦い① 乱入者 御坂美琴⑥ 消えた敵
目の前の光景を理解できなかった。
目の前の現象を解読できなかった。
視界に映るその意味が分からない事象を前にただ悔しさと後悔が蓄積する。
一目で神具とわかる武器群が何もない空間から発生する理屈も、それを竹槍の一振りで掻き消す理屈も、さっぱりわからない。
理解できない。理解できない。理解できない。
理解できない。理解できない。理解できない。
さっきと同じだ。
足りないのだ。
『何か』が。
その領域を理解するための『何か』が。
その領域に入るための『何か』。
掴めるはずなのに、
手に入れているはずなのに。
だが、例えパズルのピースがすべてそろっていたとしてもそれをくみ上げられるかは別問題だ。
2000ピースのパズルをくみ上げるのに多大な労力を使うように、手に入れた多くの手がかりピースをくみ上げ、理解し、自分で扱える形に持っていくのはとんでもない技術が伴う。
届かないのだ。
足りないから。
手がかりピースを組み上げるための『何か接着剤』が。
故に、見ることしかできない。
恐怖に震え縮ちぢこまりながら見ることしかできない。
限界点。
到達点。
その領域への扉は固く閉ざされてしまったままだ。
抉こじ開けることは、出来ない。
一方で十五夜まんげつと『空白の主』の戦いは激化していた。
雷速で放たれた絶対勝利を確約する不折の剣が十五夜に迫る。
「三日月宗近みかづきむねちか+童子桐安綱どうじきりやすつな+鬼丸国綱おにまるくにつな+大興太光世おおでんたみつよ+数珠丸恒次じゅずまるつねつぐ=天下五剣」
さらに、日本を裏から守っている名家によって保存されている天下五剣の属性を一つにまとめた剣も同じように迫る。
「アイアスの盾+アイギス=石化の不貫盾アイアス・アイギス」
同時にかつてトロイア戦争において英雄ヘクトールの攻撃を防いだアイアスの盾に、相手を石化させるメドゥサの首をはめ込んだアイギスの効果を上乗せし、攻防一対の盾で防御を固める。
「無駄ですよ」
が、十五夜には効かない。
無傷。無傷。無傷。
損傷無し、零。
「いかにあなたがこの領域の支配者だとしても、私はたやすくそれを染め直すことが出来る。だから、全くの無駄」
すべて掻き消える。
十五夜のもとに、その武器が届くことはない。絶対に。
「意思を乗せろ、竹槍大衆の願い」
そして、十五夜はその手に持つ竹槍を投げる。
無造作に、無作法に、まるでただの少女のように、格好つけず、格好悪く、ただ意志のみを乗せて。
その竹槍に伝説はない。
その竹槍に神話はない。
だから、普通なら絶大な力を持つ『空白の主』には当たらない。
なのに、
にも拘らず、
「がっっ!!!……うぅ……」
そ・の・竹・槍・は・絶・対・に・貫・け・な・い・は・ず・の・石化の不貫盾アイアス・アイギスを・貫・き・『空・白・の・主・』の・肩・に・突・き・刺・さ・っ・た・。
別にこの竹槍には『シスラウの時計』のように毒の効果があるとか、万物貫く輝煌の剣クラウ・グングニル・ソラスのように絶対必中の効果があるとか、そういうものではない。
だが、当たる。貫ける。ダメージを与える。
なぜなら、この竹槍は格上に対して絶大な効果を発揮する武具だから。
「痛つぅ……。相変わらず、冗談みたいな強さだなぁ……」
まったくもってあり得ない。
本当にたちの悪い冗談だ。
さすがは、風紀委員本部セントラルジャッジメント最強の存在。
戦闘が得意ではない『空白の主』位[ピーーー]のはわけがないわけだ。
「もう一度言います」
これが最後の忠告という事はさすがの『空白の主』にも分かった。
「手を、引きなさい」
「……」
だから、答えた。
「断る」
「なら[ピーーー]」
容赦はなかった。
静かな表情のままで十五夜は『空白の主』に突き刺した槍を四散させ、内部から『空白の主』を攻撃した。
「ぎゅ、がっ!!!!!」
肩につきたてられた竹槍が四散したことで『空白の主』の腕が体から離れる。そして、腕を失ったその影響で体のバランスが崩れ、傾く。
その決定的な隙を逃さずに、十五夜は一瞬で『空白の主』との距離を詰めた。
「[ピーーー]」
その時だった。
『対魔術式駆動鎧アンチアートアタッチメント一斉射出フルバーストッッッッッ!!!!!!!!!!』
始まりの領域に侵入した木原脳幹が二人に向かって攻撃を仕掛けた。
突然の乱入動物にさしもに十五夜も不意を突かれた。
『空白の主』への攻撃を中止して、視線を乱入者にやる。
(木原脳幹……っ!)
学園都市統括理事長アレイスター=クロウリーの部下。
学園都市の最暗部にして最奥部の殺し屋。
様々な逸話いつわがあるが、この時十五夜が思ったことはそのどれでもなかった。
「だ・か・ら・で・す・か・……っ……!」
違和感を感じてはいたのだ。
おかしいとは思っていたのだ。
そう、
いくらなんでも弱すぎた。
その理由が判明する。
つまり、ここまですべて『空白の主』の思惑通り!!!
「ぐ、ぅうぅぅぅぅぅぅぅぅぅうううぅぅぅぅうううあああああああああぁぁぁぁぁぁぁぁぁっっっっっ!!!!!!!」
放たれた対魔術式駆動鎧アンチアートアタッチメントに対処せざる負えない。いくら十五夜が最強の原石だったとしても対魔術式駆動鎧アンチアートアタッチメントをまともに喰らうのはまずい。
なんといっても対魔術式駆動鎧アンチアートアタッチメントは完全な状態の『魔神』を[ピーーー]ことのできる兵器なのだから。
局所的には『魔神』に劣らないとはいえ、十五夜はこのレベルの戦いに役立つ力は原石しか所有していない。
故に、レーザー、マイクロ波、ミサイル、ビーム等で構成される対魔術式駆動鎧アンチアートアタッチメントの総攻撃に対してとれる手段もそうなかった。
「っ!!!」
手に持つ竹槍では対魔術式駆動鎧アンチアートアタッチメントに対抗できないと判断した十五夜は別のものを現出させた。
対魔術式駆動鎧アンチアートアタッチメントに対抗するため、今を生き抜き白の命令を果たすため。
『なっ!!!』
「へぇ」
十・五・夜・を・守・る・よ・う・に・巨・大・な・船・が・現・れ・た・。
全長263.0メートル、水線長256.0メートル、幅38.9メートル、出力153553馬力、基準排水量64000トン、兵装、45口径46センチ3連装砲塔3基、60口径15.5センチ3連装砲塔2基、40口径12.7センチ連装高角砲12基、25ミリ3連装機銃52基、25ミリ単装機銃6基、13ミリ連装機銃2基。
かつて、某国を相手にした戦争で活躍したとある国の船だ。
その船が壁となり対魔術式駆動鎧アンチアートアタッチメントのあるゆる武装は十五夜には届かなかった。
だがッ!
その船によって脳幹の視界が遮られた機会を逃さずに行動したヤツがいた。
「始めよう」
「……ぁ……」
『空白の主』が十五夜と脳幹が交戦したその一瞬のタイミングを逃さずに、一方通行アクセラレータに接近した。
まだ、十五夜は気付いていない。そして仮に気付いていたとしても対魔術式駆動鎧アンチアートアタッチメントへの対応で手いっぱいで対処できないだろう。
「科学の叡智を手二入零よう。私がまた一つ進化するため二」
一方通行アクセラレータは動けない。
恐怖で動けない。
だから、
対応したのは別の『人間』だった。
『やらせると思うか』
バギギャゴリュリガナニニニンイニニニニニニニニニンイニキィィィィィィィイイィィィィィ!!!!!!!!!!
奇妙な音が響き『領域』の空間が裂けた。
瞑娥めいがが切った世界をさらに引裂くようにして、その『人間』は『空白の主』に攻撃をふるった。
その銀の杖を無造作にふるった。
だから、
「か」
吹き飛ばされる『空白の主』。
それを視認することすらなく『人間』はすぐさま『領域』から脱出した。
「からからからからからからからからからからからからからからからからからからからからからからからからからからからからからからからからからからからからからからからからかかかかかかかかかかかかかかかか!!!!!!!!!!!!!!」
嗤い声を上げる『空白の主』。
本当におかしかった。
おかしくて、おかしくて、おかしくて、おかしくて、おかしかった。
「昇零、そ四十」
だって、
だってだって、
だってだってだってだってだってだってだってだってだってだってだって、
すべて、計・画・通・り・に・進・ん・で・い・る・の・だ・か・ら・。
「砕け六」
世界が砕けた。
「…………ぁ……ぁあ」
一方通行アクセラレータに対して行っていた攻撃はほぼ本能的な無意識レベルでの反射で、まっとうな思考力を発揮して、計算して行っていたものではなかった。
能力を発揮するための演算も、超電磁砲弾きクロッシングレールガンなどという絶技もすべて意識的に行たものではない。
それはすべて『守る』という本能から来たもので、
それはすべて『守りたい』という本能から来たものだった。
心の奥底に刻まれた意志は、その遺志は決して潰えず体を動かすものなのだ。
故に、彼女が覚醒したのは『今』だった。
「こ、…………こ……は?」
意識が覚醒した。
御坂美琴はここに、確かにその意識を現した。
「わた、…………しっ、……はッッッ!!!?」
急激に目覚める。
覚醒。
そして、御坂は自分が起こした行動を思い出す。
超電磁砲弾きクロッシングレールガンを放って一方通行アクセラレータに大ダメージを与え、地面を無様に転がった一方通行アクセラレータに向けて雷撃の追撃を放ち、一方通行アクセラレータを[ピーーー]あと一歩まで追い詰めて、追い込んで、
そして、
御坂は見た。聞いた。
最期の一撃が一方通行アクセラレータに当たるその直前に、
爆・音・が・聞・こ・え・操・車・場・中・の・地・面・が・輝・き・一方通行アクセラレータの・身・体・が・消・え・た・こ・と・を・。
「何が、起こっているって……いうの?」
何もかもがわからなかった。
なぜ、地面が光ったのか?
あの爆音はなんだったのか?
なぜ、御坂美琴が蘇ったのか?
なぜ、一方通行アクセラレータが消えているのか?
なぜ、なぜ、なぜ。
どうして?
「勝ったの……?」
狩ったのか?
「倒したの……?」
斃したのか?
「殺せたの……?」
殺したのか?
いったいぜんたいどうなった?
だれが、
だれに、
だれを、
だれで、
勝者は、
だれ
https://syosetu.org/novel/56774/81.html
一方通行③ 魔術 御坂美琴⑦ 胸に宿す正義 千疋百目① 生き埋めへのカウントダウン
一方通行アクセラレータは当然だが、科学の領域に属する人間だ。
そして、超能力者は通常魔術を知らない。理解できない。
原型制御アーキタイプコントローラの影響下にある人間はその区分けに無意識化で従うしかなく、その区分けを認識できない。
だから、科学の側に属する一方通行アクセラレータは当然魔術を知らないし、使えない。
当たり前と言えば当たり前。
当然といえば当然。
だが、
それは意識的としての話である。
ごくまれにだが、人間は無意識的に魔術を使ってしまうことがある。
魔術を何も知らない一般人が、魔術を使ったこともない子供が、魔術を使えてしまうことがある。
こんな話を知っているだろうか?
今でこそ20億以上の教徒が存在する十字教にも迫害されている時代があった。
最低最悪のその時代において発狂せざるをえないような拷問を受けた十字教徒たちはまれに『天使の影』を見たらしい。
無論、そんな都合のいい事実を幻覚と断じる人も多くいる。実際、ただ拷問を受けたというその事実のみで天使が降臨するのならば、この世界はとっくに救われていなければおかしいのだから。
だから、その天使はただの幻覚で偽りの影、そう考えるのが正しい。
だけど、それはあまりにも夢がないのではないだろうか。
こう考えてもいいではないだろうか。
極限状況に放り込まれた敬虔な十字教徒たちがたまたま無自覚に複雑膨大な術式を練り上げ、その術式に偶然魔翌力が注がれ、一時的に『天使の力テレズマ』を操り高度な召喚術式を行なった結果として天使の影が現れたとしたら。
もう少し救われる結末にならないだろうか。
同じだった。
一方通行アクセラレータが紡いだものもそれと同じだった。
つまり、
あ・の・時・、一方通行アクセラレータは・魔・術・を・使・っ・て・い・た・。
祈りは奇跡を起こすことがある。
人の願いは現実を侵すことがある。
その思いは世界を犯すことがある。
あの時、『生きたい』と願ったあの時、一方通行アクセラレータはとある魔術を紡いでいたのだ。
その魔術が紡がれたのはたまたま偶然だった。100%の運だった。
書かれた魔法陣は戦術魔法陣タクティカルサークル。
紡がれた魔術は異界反転ファントムハウンドの亜種にして改造版異界侵攻ファントムハント。
操車場の大地に流れ出た御坂美琴と一方通行アクセラレータの血がたまたま強大で広大な魔法陣を描き、その魔法陣を補強するようにたまたま潰され壊れたコンテナが配置され、コンテナで補強された魔法陣にたまたまミサカネットワークの影響が与えられ、ミサカネットワークによって影響された魔法陣がある操車場に蘇った御坂美琴が連鎖的に影響を与え、連鎖した影響がたまたま魔法陣を強化し、御坂と一方通行アクセラレータが戦いの中で繰り返した呼吸や行動がたまたま魔翌力を生み出すことになり、二人の行動によってたまたま魔法陣に魔翌力が注がれ、その注がれた魔法陣にたまたま一方通行アクセラレータの悲鳴という名の詠唱が紡がれ、その詠唱によってたまたま魔法陣が発動した。
言葉にすればこういうことだ。
奇跡に奇跡が重なって奇跡に奇跡が連鎖して奇跡に奇跡が影響された。
だから起きた奇跡。
だから起きた奇蹟。
その魔術は世界を壊した。
その魔術は世界を侵略した。
結果として術式の発動者たる一方通行アクセラレータは『はじまりの領域』に入り『空白の主』に出会った。
だから、御坂の目から見れば一方通行アクセラレータが消えたように見えたのだ。実際は魔術的な符号によって強制移動しただけだというのに。
だがまぁ、無理もないだろう。魔術を知らない御坂に一方通行アクセラレータが消えた理由を察しろというのはあまりにも酷なことだ。
そして、一方通行アクセラレータが偶然発動したこの魔術には欠点もあった。自力で帰ってこれない片道切符であるという欠点が。
つまり、発動したら帰って来れないのだ。元の場所に。
片道切符のその術を一方通行アクセラレータは発動させた。
奇跡的な偶然で、御坂の電撃から、死から逃れるべくして運命的に。
運がいい、というのは一種の才能である。
運が悪い、というのも一種の才能である。
一方通行アクセラレータは何も知らない超能力者にして魔術に関わった。
『空白の主』に会った。
だから、
彼は、
もう戻れないのだ。
ドスンッッッ!!!!!と何かが落ちてきた音がした。
「ッッッ!!!!!」
御坂はふりかえる。
何かが起きていることは分かっている。
何が起こっているかはわからなくとも。
異質で異常な御坂では把握できないことが起きているのは分かっているのだ。
地面が光った理由。
一方通行アクセラレータが消えた理由。
ここで、いったい、なにが、おきている?
だから、振り向く。
一挙手一投足に気を付けながら、この操車場で起きたその事実を確かめるために。
振り返ったその先で目についた光景は……。
「tvbtylenoncdi痛ooybcbybe。rgnkskaebv助ouiivpascvteivyi」
ノ・イ・ズ・の・混・じ・っ・た・わ・け・の・わ・か・ら・な・い・言・語・を・話・す・一方通行アクセラレータがいた。
「……ッ!」
その姿を見た瞬間御坂の心に何かが浮かんだ。
それを知っている。その言葉を御坂は知っている。
だが、認めない。認めたくない。
だから[ピーーー]。[ピーーー]。[ピーーー]。
そのために雷速の電撃を放つ。
ナメクジのように這いつくばる一方通行アクセラレータに対する攻撃。
全身の血管が爆発したように血まみれの一方通行アクセラレータに向かって放つにはその雷撃はあまりにもオーバーキルであろうか?
いや、そんなことはないと断言できる。
だって、感じている。
この心が、その心しんが、感じている。
恐・怖・を・。
(怖い)
怖い?
(怖くない)
怖くない。
(怖い) 怖い? (怖くない) 怖くない。(怖い) 怖い?(怖くない)
怖くない。(怖い)
怖い? (怖い) 怖い? (怖くない) 怖くない。(怖い) 怖い?(怖くない) 怖くない。 (怖くない) (怖い)怖くない。怖い? (怖くない) (怖い)
怖い?(怖くない)怖くない。(怖い) 怖い?(怖くない) 怖くない。(
怖くない。 (怖い) 怖い? (怖くない) 怖くない。(怖い) 怖い?(怖くない) 怖くない。 (怖くない) (怖い)怖くない。怖い? (怖くない) (怖い)
怖い?(怖くない)怖くない。(怖い) 怖い?(怖くない) 怖くない。(
怖くない。
怖くなんてない。
絶対に、何をしても、誰を殺しても。
立ちふさがる者はすべて壊せ。
邪魔なモノを全部消せ。
罪悪感など感じない。
妹達シスターズを助けられるのならば、そんなものは些事にすぎない。
そう、そうなんだ。
選んだんだから。
何よりも、誰よりも。
その右手で簡単に超能力者レベルファイブをあしらう少年よりも、純粋に自らの身を案じてくれた少女よりも。
選んだんだ、妹を。
血の繋がりもない、流血でのみ繋がる、遺伝子的にだけは同じ妹。
はたから見れば狂気。客観的に見て異常者。
頭がおかしい。
劣化量産品クローンのために命を懸けるなど。
人形のために命人生を使うなど。
彼女達は人間ではないのに。
だが、いいのだ。
それでいい。
それでいいのだ。
だって、それが正義だから。
御坂の正義はそれなのだ。
親友よりも大事な妹がいる。
世界よりも大切な妹がいる。
闇に堕ちてでも守りたい妹がいる。
この身が直接やすりで削られるような日々を送っても、万力で徐々に締め付けられるような毎日を過ごしても、
それでも、守りたい妹ひとがいる。
愛しい妹ひとたち。
愛する妹。
この身を消費してつかっても惜しくはない。
たいしたことなんてないのだ。妹達シスターズが感じたその痛みに比べたら。全くたいしたことではない。
痛くない。
だって、
正義はここにある。
この胸の内に宿す『覚悟』が、正義なのだから。
その思いがあれば戦える。四肢が千切れ腸がかき回されようと戦える。
脳が焼き切れ体の内側が破滅しようと戦える。
故に、御坂は雷速の電撃を放つことに数瞬のためらいもなかった。
一刻も早く決着をつけたかったし、
なによりもここで仕留めなければヤバいことになるという予感があったから。
そして、
雷撃の槍が、
一方通行アクセラレータに迫り、
迫り、
迫り、
そして、
ほんの少しだけ時を遡ろう。
一つの危機が地下下水道にいる四人の人間に迫っていた。
決して逃れられないその危機に彼らは必死に対応していた。
地下で、風紀委員本部セントラルジャッジメントと戦っていた上条たちは敗北した。
だから、これはその後の時間軸の話。
生き埋めになるかどうかの瀬戸際で足掻いた一人の人間の話だ。
白井黒子を打倒した千疋百目は現在撤収の準備を進めていた。
信じる正義のために人殺しを厭わない風紀委員本部セントラルジャッジメントを正の方向で評価する人間などよほどの異常者だろう。
故に、風紀委員本部セントラルジャッジメントはその活動を秘匿する。かつての獄天の扉ヘブンズフィール事件ではその内容が公開されてしまったが、それだって裏切り者の仕業で積極的に公開したわけでは無い。
そして、当然百目も地下下水道での白井との戦いの痕跡を消して、立ち去るための行動をしていた。
「とりあゑず、今できる偽装はこんなものですか」
とはいえ、百目はあくまで戦闘担当の攻撃部隊所属の人員だ。一通り戦闘痕跡を消すための訓練は受けているとはいえ、やはり完ぺきとはいいがたい。
そもそも戦いの痕跡を消したり、足跡を偽装したりするのは風紀委員本部セントラルジャッジメントの中でも攻撃部隊ではなく支援部隊か諜報部隊の仕事なので仕方ないと言えば仕方ないのだが。
ともかく今語るべきなのは百目が最低限の偽装を済ませたという事。そして、偽装を済ませた百目が地下下水道から撤退をしようとしているという事。
そ・し・て・そ・れ・を・許・さ・な・い・者・が・い・る・と・い・う・こ・と・。
前触れなど欠片もなかった。
それはあまりにも唐突に起こった。
ドッガアアァアァアアアアァアアァアアアアアアァアアァァァァァァアアアアンンン!!!!!!!!!
という爆発音が地下に響いた。
「ッッッッッ!!!!!!!???」
地下の空気が揺れた。
ピシピシピシピシッ!と下水道の天井付近に亀裂がはしった。
爆発の衝撃と音によって態勢を崩した百目は、両ひざに手をついて態勢を立て直す。
「ば……くはつ……?だ、れが…………?」
知らない。
こんな展開は聞いていない。
予定外だ。
こんな爆発は予定にない。
だから、対応が、遅れる。
「…………どうすれば……」
実のところ風紀委員本部セントラルジャッジメントに所属しているほとんどの人間は自らの意志で考え、行動することがあまりない。
なぜならば、彼ら彼女らは基本的に風紀委員本部セントラルジャッジメント委員長白白白の指令、命令に基づいて行動するからだ。
白の命令通りに行動すれば万事うまくいっていたし、行動の中で白に言われた予定の外のことなどまず起きない。
だから、悪くいえば風紀委員本部セントラルジャッジメント人員は予定外の事態に弱かった。
もちろん一般の風紀委員よりははるかに対応力はあるのだが。
「…………………………………」
おそらくこの場所はあと五分もせずに完全に崩落するだろう。非常に残念なことにその崩落を止める力は百目にはない。
だから、百目がとれる選択は二つだけだ。
一刻も早くこの場所から脱出するために、地面に横たわる白井を見捨てて、一人で地下下水道の出口まで移動するか。
ほぼ百パーセント間に合わないことを知りつつも、地面に横たわる白井を背負って、二人で地下下水道の出口を目指すか、だ。
人生は選択の連続だ。
この時の百目もそうだった。
彼女は選択する。
最良の未来へとたどり着くために。
白井を見捨てるか否かを。
https://syosetu.org/novel/56774/82.html
千疋百目② 脱出
実のところ、それは仕組まれた試練だった。
「……どうしよう……………」
天井の亀裂は徐々に大きくなってきている。
このままでは生き埋めになることは確定だ。
「…………どう、しよう……」
崩落までおよそ五分。その時間以内に選択しなければならない。
一人で逃げるか、二人で逃げるかを。
「埋娥総隊長のことは絶対に頼れなゐし、私が一人でどうにかするしかなゐんだけど……」
埋娥は上条との戦闘に勝利しているだろう。それは、確信をもって言える。風紀委員本部セントラルジャッジメント攻撃部隊総隊長の名は伊達では無い。少なくとも百目が手も足も出ないような実力を埋娥は持っている。
だから、百目は埋娥が負けたとは欠片も思っていなかった。
だが仮に、上条との戦闘に勝利したであろう埋娥に助けを求めるとしても距離が離れすぎている。現状、埋娥と百目の距離は、埋娥が上条を追って行ってしまったことですぐにはたどり着けないほど開いている。
いかに撥条包帯ソフトテーピングで身体能力を強化しているとはいえ、それだけで詰められる距離では無いのは明白だ。
埋娥のことは頼れない。
百目が一人でどうにかするしかない。
「……………」
ちらっと白井のことを見やる。
先ほどまで戦っていた敵だけど。
つい今しがたまで拳を交わしていた相手だけど。
輝いていた。少なくとも今の百目よりもずっと。
昔の百目のように、輝きを放っていた。
眩しい。
『闇』を知って汚れた百目とは違い、まだ本当の『闇』を知らない無垢な子供。
少しでも頭が回ればわかったはずだ。
御坂美琴が何も言わなかった理由。
御坂美琴が決して白井を関わらせなかった理由。
きっと、気付いていた。
目線の先で倒れている白井は気付いていたと思う。
風紀委員本部セントラルジャッジメントが出てきたという事の意味を。
御坂がどれだけ深い『悪』に関わっていたのかを。
きっと気付いていた。勝てない、負けると。
それでも挑んだのは守りたかったからで、認めたくなかったから。
そんな相手を百目は見捨てることが出来るのか?
「………………」
ピシリ、ピシリと亀裂が広がっていく。パラパラとコンクリートの破片も落ちてきた。
爆発の範囲がどれくらいかはわからないが、今から全力で逃げれば死なずに済むはずである。
一人なら。
独りなら。
「しかた…………なゐですよね………」
白井のことをを一瞥する。
仕方ない。
本当に仕方ない。
百目にだって目的がある。『本当の闇』に触れてでも達成したい目的がある。
風紀委員本部セントラルジャッジメントなんて最奥の組織に入ってでも達成したい目的があるのだ。
だから、仕方ない。
「本当に、……手間をかけさせますね……っ!!!」
百目は意識を失っている白井を背負った。
一度屈んで、白井の身体を起こし、そのまま背負う。腕を自らの肩にまわさせて体勢を安定化、さらに片腕を背負う白井の背中を支えるように回ししっかりと支える。
見捨てることは、できなかった。
理由はいろいろあったが、それでもやはり一番大きい理由は単純に情がわいたということだ。
白井は百目のことなどほとんど知らないだろうが、百目は白井のことをよく知っていた。
もちろん百目が白井とあったのはこれが始めてだ。それ以前にあったことなどない。
だが、情報では知っていた。書類上の情報でなら百目は白井の能力、強度、人間関係、性格、思想、所属、戦闘能力、過去、御坂美琴への想い、それらすべてを把握していた。
風紀委員本部セントラルジャッジメントに所属する人間として情報の入手は怠らない。風紀委員本部セントラルジャッジメントに属するというのは絶対に負けることが出来ない戦いをするという事と同義なのだから。
現代の戦闘において情報入手の可否は大きく影響する。
だからこそ、前準備は入念に入念をきするのだ。
最も、百目は攻撃部隊の所属なのであくまで集められた情報を閲覧するだけで、情報の入手と精査は諜報部隊の仕事なのだが。
ともかく、ここで重要となるのは百目が白井のことを知っていたという事。
だから、情がわいた。
百目としては非常に珍しいことにほぼ初対面の人間に対して、直前まで命を懸けた戦闘を繰り広げていた相手に対して、情がわいた。
過去の百目とある意味では似たような状況に陥っている白井をここで見捨てることは出来なかった。
普段なら見捨てている。迷わない。
だけどこの日この時この場所で白井だからこそ見捨てられない。
百目はまるで誰かの意志に操られたかのように白井のことを見捨てられなかった。
「……………ぐっ、……っぁ!!!」
白井を背負い撥条包帯ソフトテーピングの力を全力で使いながら、崩落の範囲から逃れるように百目は移動する。
当然、その速度は百目一人で移動するときよりも格段に落ちる。そもそも撥条包帯ソフトテーピングは一人での移動を前提に作られたものであって、二人での移動は想定されていない。
だからこの時百目にかかる負担は通常よりもはるかに大きかった。
加えてであるが。
現在、百目は白井によって重傷を負わされている。
腕には白井が空間移動テレポートを使って突き刺した五本の金属矢がいまだに刺さっている。
『槍』を叩きつけられたことによる打撲痕も見受けられる。
身体を地面に落とされた影響もあり全身は擦過傷だらけだ。
幾度も幾度も殴られた影響か体の内がずきずきと痛む。
歩くたびに、進むたびに、背に背負う白井を落とさないように意識するたびに確実にダメージが蓄積されていく。
痛い、というよりも辛いという意識が脳を占める。
「全くっ、……何してるんですかねぇ…………私はっ!!!」
崩落の音は徐々に大きくなってきている、もはやいつ地下下水道が崩れ、生き埋めになってしまうかもわからない。
一応、本当に一応ではあるが、万万が一生き埋めになったとしても助かることは出来るのだが、それをしてしまうとおそらくもう『上』にはいけない。
だから、なんとしても自力でどうにかしなければならない。
それを達するには、もちろん今からでも白井を見捨てるのが最善だが……。
「……お、ねえ……………さま」
背負っている白井からそんなうめき声が漏れる。
「ふふっ」
その呟きはかつて背負った業の後悔か。
それともかつて不干渉を貫いた己への悔恨か。
あるいはそのどちらでもあり、どちらでもないのか。
だが、一つわかる。
同じ状況に陥っている百目だからこそわかる。
過去を悔いるという事は、過去にとらわれるという事と同じだ。
これから先、白井が未来を見ることはないのだろう。
意図せずに、その位置付けポジションが宿敵ライバルとして確定してしまった百目は危機迫るこの状況下でそんなことを考えた。
「…………………はぁ」
走りながらそんな思考をしたのは当然現実逃避だ。
都合の悪い現実から目をそらしたかったからだ。
百目は上を、地下下水道の天井を見上げた。
「ゐったゐ、どれだけ広ゐ範囲で崩落が起きてるんですか」
あの場からもう500メートルは移動しただろうか。
いまだに崩落の範囲から逃れられる気配はない。
それどころかおそらくここから先さらに500メートル進んでも崩落から逃れることは出来ないだろう。
そんな気がするのだ。
つまり、この瞬間確定してしまった。
逃げられないという運命が。
「…………………………………………………………」
死亡フラグというものがある。いわゆる、マンガとかアニメとかの非現実的物語において特定のキャラクターが特定の行動、言動を行った時にそのキャラの死亡が予見されてしまうようなことだ。
では考えよう。
この時の百目の行動は死亡フラグに値するかどうか。
情に流されて、直前まで戦っていた敵のためにほぼ100%死ぬとわかっている行動をとる。
これは死亡フラグか否か。
死亡フラグ……といえばそうなのかもしれない。
私が犠牲になってあなたを助ける系の死亡フラグ。
なるほど、ならば百目は死ぬのだろう。宿敵ライバルというキャラ付けの影響もあり白井を守って死ぬのだろう。
だが、
「いけます…………か……?」
それはここから百目が何も行動を起こさなかったらの話だ。
もう一つ。
方法論はある。
生き残るための道筋、筋書が存在する。
ならやるべきだろう。
方法、手段、道標があるならば、それをとるべきだ。
「…………………」
百目は一度白井の方を確認して立っている通路の端に近づいた。
そのまま下を見る。
渦巻く水流の流れを見る。
落ちたら絶対に脱出できない。溺死確定だ。だから、水路に落ちるわけにはいかない。
「…………大丈夫」
百目は体の各所に貼り付けられた撥条包帯ソフトテーピングの内、必要ない部位のモノをはがした。
急げ、でも慌てるな。
確実に、でも丁寧に行動しろ。
剥がした撥条包帯ソフトテーピングを足の空いている部分に貼り付けて、許容以上の力を引き出せるようにする。
無論、そんなことをすれば足に莫大な負担がかかり自壊することは必然だ。
だが構わない。どのみちここで命をはらなければ死ぬのだから。
「………………………っ!!!!!」
覚悟を決めて通路から飛び降りる。
白井を背負ったまま、なるべく水路の壁に張り付くようにして一息に飛び降りた。
そしてそのままの勢いで白井を支えていない方の手を高く高く宙に伸ばし、通路の淵を掴む。
「……大丈夫!!!」
片腕で二人分の体重を支えるという離れ業を行いながら、百目は自らを奮い立たせる。これからやることは成功するかもわからず、成功しても助かるかすらわからない。確実に助かるという保証もない。
だがやる。
思いついた生き残りの方法はそれしかなかったから。
身体を支える一本の腕を起点として百目は自らの身体を振り子のように揺らした。
最初はわずかに、そして徐々に大きく。
水路の壁に向けて思いっきり体をぶつけるようにしながら。
「ぐっ、ぁぁああああ!!!!!」
何度も、何度も、何度も。
そして、十分に体の勢いがついたと判断した百目は、
そ・の・足・で・水・路・の・壁・を・思・い・っ・き・り・蹴・っ・た・。
「はっ、ぁぁあぁぁああぁぁぁあああああぁぁあぁあああぁぁぁ!!!!!!!!!!」
蹴る。
蹴る。蹴る。蹴る。
蹴る蹴る蹴る蹴る蹴る蹴る蹴る蹴る蹴る蹴る蹴る蹴る蹴る蹴る蹴る蹴る蹴る蹴る蹴る蹴る蹴る!!!!!
足の力は腕の力の三倍であると言われている。
その上で百目の脚力は腕や首などに貼っていた撥条包帯ソフトテーピングをはがし、それらをすでに足に貼ってある足に重ねるように貼ることで通常の数十倍にまで強化されている。
足にかかる負担も数倍に跳ね上がってしまうが四の五の言っている暇はない。
何度も何度も勢いをつけて、一心不乱に目の前のコンクリートを蹴っていく。
撥条包帯ソフトテーピングで強化されたその足だからこそできる芸当だった。でなければ、コンクリート製の壁を全力で蹴るなどと言う所業をすればその足の方が壊れるだろう。
そして、十数発壁を蹴っていくと爆発によってひびが入った天井と同じように、ピシピシと壁にも亀裂が入っていった。
「っっっ……!これ……、……な……っ……ら!!!」
百目は壁を、
壁・を・破・壊・す・る・つ・も・り・だ・っ・た・。
そして、その破壊した壁の中に入るつもりだった。
順を追って説明しよう。
まず、地下下水道の構造についてだ。
地下下水道は二つの部分に分かれている。
水を流す水路と下水道内を歩くための通路だ。
水路の深さは約10メートル程度。そのうちの下7メートル部分は水が流れている。埋娥の攻撃から逃れるために白井と上条がともに落ちたのはこの水が流れる部分だ。
通路部分は幅3メートルほどで時々曲がりくねりながらも続いている。
そして、その二つの部分はともにコンクリート製だ。
次に百目の行動についてだ。
まず、百目の第一の行動はこの崩落する地下下水道から正規の手段、つまりマンホールを使って脱出することだ。
だが残念ながら一番近いマンホールまで行くには時間が足りないと判断した。
だから第二の行動に移った。
その第二の行動というものが水路の壁の破壊だ。
片腕で通路の淵にぶら下がった状態のまま足で水路の壁の露出した部分を蹴り砕く。
蹴りの力をつま先の一点に凝縮させたうえで、コンクリートの壁の内側に響くように打撃を与え削られた部分が立方体になるように壁を砕く。
そして、その蹴り砕いた壁の中に入って崩落から逃れる。百目の計画はそんな一見無謀なモノだった。
さて、ではこの計画の成功率はどれくらいだろうか?
(80%……っ!たぶん……いけるはず……っ!!!)
勝率は8割と百目は見ていた。
足が壊れるレベルで撥条包帯ソフトテーピングを使って脚力を強化すればおそらく短時間で壁を蹴り砕けること。
崩落までの時間がまだ2分はあるであろうこと。
白井を背負ったおかげで百目自体にかかる重さがまし、蹴りの威力が上昇したこと。
そして、流れる水の影響か思ったよりも水路の壁が脆かったこと。
そしてもう一つ。世界物語キャラクターストーリー理論。
これらの要素から成功率80%と見た。
もちろん残りの20パーセントの確率でこの計画は失敗する。しかし、それはそれだ。失敗したら百目の天命はここになかったということ。百目の物語上のポジションはその程度でしかなかったという事だ。
だがもしも世界物語キャラクターストーリー理論なるものが本当に存在していて、千疋百目の立ち位置ポジションが白井黒子の宿敵ライバルというもので確定してしまっているのなら。
こ・ん・な・序・盤・の・序・盤・、第・一・部・の・第・一・章・で・死・ぬ・こ・と・な・ど・あ・り・え・な・い・は・ず・だ・。
白井黒子という絶対能力進化実験レべルシックスシフトの原因を作った御坂美琴の親友という立ち位置ポジションの宿敵ライバル立ち位置ポジションは、世界物語キャラクターストーリー理論に基づけばおそらく白井を成長させるための超重要キャラクターなのだから。
故に、きっと、たぶん、助かる。
助かるための事前準備伏線を怠っていなけ貼っていれば。
https://syosetu.org/novel/56774/83.html
もっと鬱な展開を書きたい!
長くしてもだれるので流し気味にしました。
次からが本番です。
千疋百目③ 世界物語理論 扼ヶ淵埋娥① 総隊長という地位 領域の戦い② 化物二人、怪物一匹
物語において伏線というものは非常に重要なモノだ。
バトル系の物語であればその重要性は誰もが認識できるものであろう。
序盤正体不明だった敵の正体が明かされる。主人公の父親がかつての英雄だった。ヒロインが実は世界を滅ぼす力を持っていた。
時には後付けなどと揶揄されることもあるが、それでもやはり伏線と言うのは非常に重要なモノだ。
何せ伏線というものはのちのち主人公たちを助けることが多い。
突然の覚醒ではなく特殊な血筋であるからこその覚醒。
危機に陥った時作戦が思いつくのは過去の出来事をもとにしている。
敵の幹部に見逃されるためにはその幹部の妹と知り合っていることが重要だ。
そう、伏線は主人公が助かるための重要なキーなのだ。
だからこそ、伏線を『貼り』忘れるという事は世界物語キャラクターストーリー理論をもとにすれば愚者に等しい行いだ。
そして逆にどんな無理無謀、絶体絶命な状況でも伏線を『貼って』いれば助かる可能性が非常に高いのだ。
(なら……助かるはずでしょう!あの時の言葉セリフは、行動ポーズは……重要な伏線になっているはずでしょう!!!)
『私達はあなた達を守ろうとしてゐるのに』。
こ・の・言・葉・の・意・味・を・ま・だ・百・目・は・説・明・し・て・い・な・い・は・ず・だ・。
それに加え、白井がなぜ自らに金属矢を刺したのか。
こ・れ・も・ま・だ・百・目・は・話・し・て・い・な・い・は・ず・だ・。
回収されていない伏線が二つある。
説明されていない事象が二つある。
なら、ならば、
こ・の・世・界・と・い・う・名・の・物・語・は・百・目・た・ち・の・こ・と・を・生・か・す・は・ず・だ・。
はず、はず、はず。
絶対にとは言えない。確証なんてない。
百目は完全に世界物語キャラクターストーリー理論を理解しているわけでは無いのだから。
だが、きっと世界物語キャラクターストーリー理論というものはあるのだ。他ならない風紀委員本部セントラルジャッジメントの頂点トップ、委員長白白白はくびゃくしろが提唱しているのだから。
だったら、
だったら助かるはずだろうが!!!
「はっ、ぁぁあぁぁああぁぁぁあああああぁああああぁあぁあああぁぁぁあああああああああああああああああああああああああああ!!!!!!!!!!」
徐々に、徐々に削られていく壁。造られていく安全地帯。初期の計画のように立方体に削ることは出来なかったが、山の中にできる洞穴のように丸く削られたそのエリアの中に入れば安全は保障されるはずだ。
だから、
だからっ、
だからッッッッッ!!!!!
「これっ………なら、……っ!!!」
蹴って蹴って蹴って蹴って壊した壁は今や元の形状からかけ離れた姿に変貌していた。
雪山の中で一時的に寒さをしのぐための洞窟、そのような穴が壁面にあく。幅は人間二人が入るにはギリギリな大きさであり、その深さも許容できるギリギリレベルのものだ。コンクリートを壊したが故にいびつな形で空いたその穴は、ただこの時二人を防護する絶対の安全圏と化していた。
「ッッッ!!!」
まず初めに背負っている白井をその中に放り投げなければならない。百目が先に入ることは白井を背負った個の体勢では不可能だ。
背中で支えている一本の手を器用に操り、百目は白井の服の襟元を掴んだ。
そして、片腕で通路の淵につかまったそのまま状態で同じく片腕で白井の身体全体を持ち、勢いをつけて砕いた壁の穴に向かって放り投げる。
「ガッ、……ぁ!!!」
放った白井からわずかにうめき声のようなものが漏れるが正直かまっている暇はない。今は生きるか死ぬかの瀬戸際なのだ。
続けざまに百目は通路の淵を掴んで体を支えていた片腕を離し、大きく体を揺さぶって自ら穴の中に飛び込む。
着地してすぐさま体が外に出ないように開けた穴の中に深く入っていく。
あけた穴はそれほど大きいものではない。人間が二人が入るギリギリの大きさだ。だから、詰め込まなければ外の崩落するコンクリートの欠片に当たってしまう。
だが逆説、詰め込めば十分な守りがあるという事だ。
「……………ふぅ」
なんとか間に合った。
本格的な崩落が始まるまでの時間に、なんとかかんとか間に合った。
崩落が終わるまでここにいれば安全は確約されるだろう。
「………………………………」
百目はちらっと白井を見やった。
仮に、と前置きして一つの想像を巡らせる。
仮に、あの時白井のことを見捨てて予定のマンホールまで全力で走ったとしたら、私はこんな苦労をしなくても助かったのだろうか、と。
IFもしもの仮定の話など現在を生きる人間たちには関係がないが、それでも検証するという点では有用である。
考えてみる。想像してみる。
白井を見捨てて走る百目のその姿を。
おそらく、この地下下水道の崩落は地上と地下下水道の間の地面に大量の爆弾を仕掛け、その爆弾を一気に爆発させたことによって起こったもののはずだ。
範囲は地下からではわからないが、地上から見れば地面の下に仕掛けられた爆弾が爆発した影響が地盤沈下という形で分かりやすく出ているはずだ。
それを加味したうえで考えてみる。
たぶん、間に合いはするはずだ。脱出地点のマンホールまで行くことは出来るはず。そして、地上に出ることは出来るはずだ。
だがその後は?
地上に出た後はどうなる?
この爆発が仮に風紀委員本部セントラルジャッジメントに仇なすものの仕業だとして、地上に出た後の百目を捕捉できないだろうか?
崩落する前に脱出できるエリア一帯を監視しているのではないだろうか?
だとしたら、
白井との戦闘で体力を消費し、怪我を負い、走って疲れた百目は戦えるのか?
いや、無理だ。
無理に決まっている。
戦えたとして、負けるだろう。
無論、すべては仮定に仮定を重ねた想像でしかない。だから外れている可能性も非常に高い。
だが、十分にその可能性も存在する。
ならば、あの時白井をその背に背負った百目の選択は正しかった。
正しかったのだ。
そして、ついに本格的な崩落が始まった。
上からとめどなく落ちてくるコンクリートに当たってしまえば、いくら百目と言えども一発で意識を失うだろう。
通路にいたらその結末はまぬがれなかったはずだ。
「…………………………しばらくは、ここにゐますか」
蹴って砕いて作った穴の中で百目は考える。
世界物語キャラクターストーリー理論。
それが存在するのであれば、
その物語を書いているのはいったい誰なのだろうか?
我らが風紀委員本部セントラルジャッジメント委員長白白白はくびゃくしろ?
この学園都市の頂点トップ、統括理事長アレイスター=クロウリー?
それとも…………、
それとも、
百目ですら知らない誰か……なのだろうか?
忘れていそうだが百目と白井いる地下下水道にはもう二人、人間が存在する。
上条当麻。救済者ヒーローと呼ばれる存在。
彼ら二人は己が信念を懸けて拳を交わし戦い、そして上条が負けた。
その後、百目と同じようにその場にとどまり軽く戦闘の隠蔽を行った埋娥は上条を連れて地上に帰ろうとした。
そのタイミングで爆発が起こった。
「………………………………………………」
正直な話をすれば埋娥はこの爆発に対してほとんど危機感を抱いていなかった。
地下下水道が崩落する。
それで?
このままでは生き埋めになるかもしれない。
だから?
この程度の危機など、埋娥からしたら危機とすら呼べないほどにちゃちな出来事だ。たかだか崩落程度の現象で埋娥は死なない。
その証拠に。
「かのなり通定予もれここれも予定通りなのか?長員委委員長?」
埋娥は右腕を垂直に挙げた。
目に見えぬ結界をはるかのように、その腕を上げる。
するとどうだろうか。
ガラガラと崩落する下水道の中で、埋娥の周囲だけは球状のバリアに守られたかのように不可侵の領域が出来上がった。
そして当然その不可侵の領域の中には上条当麻の姿もある。
百目が命がけで安全地帯セーフゾーンを作っているその間、埋娥はわずか一つのアクションでその身の全てと上条を守って見せた。
これが明確な『差』だ。
風紀委員本部セントラルジャッジメント攻撃部隊総隊長扼ヶ淵埋娥と風紀委員本部セントラルジャッジメント攻撃部隊第二班班長千疋百目せんひきひゃくめの実力の『差』。
風紀委員本部セントラルジャッジメント攻撃部隊総隊長という地位はあらゆる外敵を打倒し、命令を確実に実行し、敗北することすら許されない、そんな立場なのだから。
そして、
そんな格の違う奴らを五人以上も従える白の実力もまた、当然のように異常なのだ。
百目がなんとか知恵を絞って生き残っていたその頃、二人の化物と一匹の怪物の戦いは激化していた。
十五夜はその右手に構えた竹槍を幾度も幾度も投擲していた。
「フラガラッハ+ブリューナク+天下五剣=天下に轟く雷速絶貫の回答者天剣・フラガラック・ブリューナク!!!」
『空白の主』はいくつもの性質を上乗せした神具を無限に生成し放っていた。
そして、
『対魔術式駆動鎧アンチアートアタッチメント一斉射出フルバースト!!!!!』
この戦いの中である意味では最も有利な条件で戦っている脳幹は、その身で操る対魔術式駆動鎧アンチアートアタッチメントをふんだんに使って二人を攻撃していた。
この二人と一匹の戦いの構図は非常に単純でありながら、いまだに誰もが明確な手傷を負わせることが出来ず、負ってもいなかった。
その理由はただ一つ。
基本的に自分以外は敵、その構図が全力で攻撃することを躊躇させていたのだ。
「埒があきませんね……」
仮に、わずかな間でも協力できるような関係がこの三者の間に構築されていたとした情勢は変わっていただろう。
一対一対一から二対一へと。
そうすれば、決着は一瞬とはいかないまでもついていた。
だが出来ない。
それは、それが出来ない。
信用できないから。
この各勢力のトップの代理戦争ともいえる構図で敵対勢力と協力関係を作るなどできるはずがない。
故に、だれも本気をだせない。
「からから、全くどうするかな」
仮に一瞬でも誘いではなく全力で猛撃するような動作を見せれば、その瞬間防御がおろそかになる。すると必然自分以外の二者の攻撃を受けることになり、防御がおろそかになった自分自身は死ぬ。
だから迂闊に動けない。
『……………さて、どうするべきか』
二人と一匹はそれぞれが世界最強クラスの存在達だ。
最強の原石にして風紀委員本部セントラルジャッジメント委員長補佐木葉桜十五夜このはざくらまんげつ。
始まりの領域を住みかとする規格外にして埒外の化物『空白くうはくの主あるじ』。
学園都市統括理事長アレイスター=クロウリーの配下にして魔神をも屠る力対魔術式駆動鎧アンチアートアタッチメントを所有する木原脳幹。
どいつもこいつも本気になれば世界を壊せる力を持つ。
まぁ、この始まりの場所ならばいくら全力をふるっても問題ないのだが、それでも世界という絵画に与える影響は大きいのだ。
この場所で戦うからこそ。
だから、この流れは既定路線だったのかもしれない。
「提案ですが」
切り出したのは十五夜だった。
「一時休戦としませんか」
文頭に誠に遺憾ながらという言葉がつきそうなほどイライラした口調で十五夜は提案する。このままここで緊張状態を続けているのは誰にとっても得策ではないのは自明の理。ならば、一度見逃した方がいいと考えた。
「『…………………………………………………』」
その提案に一人と一匹は沈黙する。
それは彼らも思っていたことだ。『空白の主』も脳幹もすでに目的は果たしている。これ以上の戦闘は望むところでは無い。
それで素直に帰るほど彼らは素直では無いのだ。
「冗談一うね」
言葉と共に神速の槍が放たれた。
万物貫く輝煌の剣クラウ・グングニル・ソラス。
必中、不敗、自動追尾。様々な性質が付け加えられたその槍が。
再び場に軽い緊張状態が現れる。
『空白の主』が万物貫く輝煌の剣クラウ・グングニル・ソラスを投げた。つまり、『空白の主』は十五夜の提案を、休戦というその提案を却下したのだ。
交渉は決裂した。
と・い・う・わ・け・で・は・な・い・。
そう、これは交渉決裂という事ではないのだ。
『空白の主』の目を見ればわかる。敵であるからこそ理解できる。
その瞳は『早く帰れ』といっている。
見逃してやるからさっさと帰れと言っている。
敵対しているという立場上、明確に見逃してやることは出来ない。そんなことをすればほかの組織や人間から共謀が疑われてしまう。
それは避けたい。
『空白の主』は戦闘が得意ではないのだから。
だから、ある程度戦った後うまい具合に適当なタイミングで勝手に帰れ、と。
そういうことだった。
脳幹と十五夜は『空白の主』のその意をくんだ。
結局しばらく戦闘を行って脳幹と十五夜は学園都市に帰った。
もしも、この場に白がいればこう言うだろう。
彼ら彼女らの勝負がお流れになるのは当然のことだ、と。
理由?
問う必要があるのだろうか?
みんな知っていることだろう?
最・強・級・の・キ・ャ・ラ・は・序・盤・に・本・気・を・出・さ・な・い・。
なぜかって?
そ・の・方・が・読・者・の・方・々・の・興・味・を・引・け・る・か・ら・だ・。
【朗報】この章でやること、後は御坂美琴と一方通行のバトルだけ。
これにて第三節は終了です。
次の第四節が第一章の最後の節となります。
気付いている人は気付いていると思いますが、この作品の最重要単語は『世界物語《キャラクターストーリー》理論』です。
https://syosetu.org/novel/56774/84.html
正真正銘御坂美琴VS一方通行のラストバトルです。
かな~り長くなる予定です。
第一部 第一章 第四節 絶対能力進化実験中止計画~終わりに叫ぶ愚者と悲痛な叫びで心を犯す賢者~
御坂美琴と一方通行⑤ 『勝てない』
理解できてしまうという事が不幸であるのならば。
理解できないという事はどれほど幸福なのだろうか。
理解できてしまうという事が幸福であるのならば。
理解できないという事はどれほど不幸なのだろうか。
身体が浮翌遊を感じた。
「っっっ!!!!!」
地面に体を叩きつけられた。そう認識できたのは単純に走った衝撃と肌をなでる砂利の感覚があったからだった。
彼は身体の中を奔る壮絶な痛みに意識を点滅させながら、自分自身のことを考える。
何もかもがわからず、意味不明瞭で理解不能だった。
(い……てェ……)
ほんの数時間前までは彼にとって『痛み』は無縁の代物だった。外界からの攻撃のすべてをすべて『反射』できる彼にとっては『痛み』などただ痛覚神経が脳に快楽を与えるという一機能にすぎなかったのだ。
それが、この数時間の間になんどもなんども覆された。
だからもう、非常に腹立たしく認めがたいことに彼は『痛み』に多少なりとも慣れてしまっていた。
故に、身体を駆け巡る激しい痛みの中でも動くことは出来た。
少なくとも、あまりの痛みに悲鳴を上げることぐらいの行動はできた。
だから、その痛みを紛らわせるかのように、思わず彼は悲鳴を上げ、
「tvbtylenoncdi痛ooybcbybe。rgnkskaebv助ouiivpascvteivyi」
ノ・イ・ズ・の・混・じ・っ・た・わ・け・の・わ・か・ら・な・い・言・語・が・世・界・に・出・力・さ・れ・た・。
一瞬、彼は自分自身が何を話したのかわからなくなった。
言いたかった言葉は『痛い、助けて』そういう類の言葉のはずだ。だから、口から出した言葉もそうならなければおかしい。
間・違・っ・て・も・世・界・の・ど・の・言・語・に・も・当・て・は・ま・ら・な・い・よ・う・な・特・殊・な・言・語・で・あ・っ・て・は・な・ら・な・い・。
彼は、自分自身がどんな言葉をしゃべったのかわからなかった。
息を吸い、吐き、口を開き、喉を、空気をふるわせ、言葉を言う。
人が人としてあるための話すという至極単純な行い。
それが、できない。
今の彼には出来ない。
だが、
彼が衝撃を受けたのは自分の口から理解不能な言語が出てきたからでは無かった。
そ・の・言・語・を・理・解・で・き・た・、そ・の・こ・と・に・彼・は・衝・撃・を・受・け・た・の・だ・。
聞いたこともない、言ったこともないはずのその言語。
それの意味が分かった。分かってしまった。
つまり、それは彼がもう戻れないことを示していた。
そう、
だから、
一方通行アクセラレータはもはや人間を超越した『域』に至っていたのだ。
だが、
よりにもよってそのタイミングで、自らの違和感を自覚したその段階で、
一方通行アクセラレータに御坂の雷撃が襲いかかった。
だ
か
ら
!
バギッ!!!と
「な、………ん…………ッッッッッ!!!!!???」
雷撃を放った御坂はそのあまりといえばあんまりな現象に心の底から驚愕した。
今までも何度も何度も雷撃は無効化されてきた。『反射』によって何度も跳ね返されてきた。改良版音響式能力演算妨害装置キャパシティダウンバージョンベータを使わなければ一方通行アクセラレータには決して届くことのない雷撃。
御坂は雷撃の槍が一方通行アクセラレータに当たらなかったことに驚愕したのではなかった。
雷撃が掻き消されたことに驚愕したのだ。
「な、……にを…………………」
弾かれたのではなく、止められたのではなく、落とされたのではなく、
掻き消された。
これまでの現実からは想像もできない出来事だった。
これまでの現象からは予測もできない出来事だった。
理屈も理論もわからずにただ結果だけがそこにあった。
「なに……っ………を、……ッッッ……し…………たの」
疑問の声が、空間に湧き出る。乾いた声が、薄れた希望が、その圧迫されたかのような現実が、真実が、御坂に重く重くのしかかり。
違う。
明らかに、違う。
今までとは、さっきまでとは、
ちがう。
「bcyzioby殺gxnnbiv傷ewollzo」
一拍遅れて一方通行アクセラレータが御坂の方を振り向いた。
いまだ血みどろで、全身の血管が破裂したかのように体の内側が露出している一方通行アクセラレータはしかしそれでもなお意識を明確に保っているようであった。
いや、それは御坂視点から見ればそう見えるだけで、実際のところはもう正気など保っていないのかもしれない。
なぜなら、全身が爆散したような言語化不可能なレベルの大怪我を負っているくせにその瞳は殺意に満ち、その足は大地を踏みしめ、その体はしっかりと世界に根ざしているのだから。
「………………ぁ」
御坂はその煉獄の劫火のような殺意に燃え盛る一方通行アクセラレータの瞳を見たその瞬間に悟った。
『勝てない』、と。
明確にわかる。
無理だ。絶対に勝てない。今の御坂美琴にはこの存在に対抗できる手段はない。
この存在と戦うのは、一般人がパラシュートもつけず飛行中の飛行機から飛び降りるようなものだ。
生存確率0パーセントの選択肢を前に、その選択を選ぶような愚者はいない。
愚者はいないが、
そ・れ・で・も・そ・の・選・択・を・選・ぶ・馬・鹿・は・い・る・。
確かに、パラシュートもつけず飛行中の飛行機から飛び降りるのは自殺行為である。それも確実に死ぬ選択だ。それはどれだけ頭の悪い人間でもわかるだろう。
ここで一つの設定を加えよう。
飛行中の飛行機、それがミサイルに撃墜されて炎上中だったらどうだろうか。
無論、不時着は不可能だ。そして、逃げることもできない。
故に選択は二つ。100パーセント死ぬと分かっていても飛行機の中にとどまるか、100パーセント死ぬと分かっていても生身で飛行から飛び降りるかだ。
さて、ここで飛行機の中にとどまるという選択をとるものは、実に一般的な人間だ。100パーセント死ぬと自覚しながらも機長他者が不時着してくれるわずかな可能性に賭ける、能動的行動をしない人間。
では、ここで飛び降りるという選択をとる者はどうだろうか。語るまでもなくそいつは馬鹿だ。能動的に行動する行動力は持っているが、それだけで100パーセント死ぬ結果は変わらない。
この二つを現在の御坂の状況に当てはめてみる。
この絶望的な状況を前に御坂がとれる選択は三つ。
恐怖に震えて動けないでいるか、一目散に逃げるか、100パーセント死ぬと分かっていて挑むか。
恐怖で震えて動けないでいるのは飛行機の例えでは前者に当てはまる。眼前の死を前に、なんとか死が自分から離れてくれまいかとあり得ない選択を望んでしまう。その結果は語るまでもないだろう。
逃げる、これは選択肢としてそもそも存在しない。殺意に満ちた一方通行アクセラレータを前に逃げることなど不可能すぎて笑えるくらいだ。
挑む、この選択は飛行機の例えで言う後者に当てはまる。能動的なバカの行い。もちろん結果は自明の理だ。
ではここで御坂がとった選択はいったいどのようなモノだろうか?
「……………………………」
眼前の一方通行死を前に、御坂は心の底から際限なく湧き上がってくる恐怖を押さえつけ、それでもなお相対する。
そんな選択をとった。
分かっている。
『勝てない』。
この一方通行死には勝てない。
例え、一京分の一の奇跡が一京回起こったとしても、地球の自転が逆に回り出したとしても、勝てない。
存在の位階が違う。
存在の格が違う。
立っているステージが違う。
これはそう、
悪魔とか言われる存在だ。
だって、わかる。
『人間』ではないと。
もはや『人間』ではないと。
いったい、消えていたわずかな時間の間に何があったというのか。何が一方通行アクセラレータをここまで変質させたのか。
こんな化物にしたのか。
『勝てない』。
その事実を、胸の内で反芻させ、何度も確認し、それでもなお、御坂は挑むという選択肢をとった。
それしか取れなかった。
逃げるなんて出来ない。それは愛しい妹達シスターズを見捨てることになるから。
恐怖で震える暇などない。それは愛しい妹達シスターズを[ピーーー]ことにつながるから。
挑むことは死に直結するが、それでもなお挑む価値がある。
なぜならば、御坂はすでに分かっていた。気付いていた。
総・体・と・ミ・サ・カ・1・9・0・9・0・号・が・隠・し・た・そ・の・絶・望・の・真・実・に・。
ヒントはあったのだ。
御坂美琴という個がここにいるというその時点で、答えは示されていた。
だから、
死ぬことに恐怖心などない。
ある意味では開き直って、御坂は眼前の一方通行死に立ち向かうために駆け出し、
い・つ・の・ま・に・か・右・腕・が・切・断・さ・れ・た・。
「ぎ」
その口から絶叫が零れ落ちた。
「ぎぎゃがああああああアアアアアアアアアアアアああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああ!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!」
恥も外聞も投げ出し御坂は地面を無様に転がった。
電気信号は制御され、御坂の身体は痛みを感じないはずなのに
何をされたか全く理解できなかった。。
事前情報はある。一方通行アクセラレータに関する事前情報は手に入れている。
ベクトル操作能力。この世に存在するあらゆるベクトルを操るその力。
一方通行アクセラレータの攻撃はすべてそのベクトル操作によってなされるはずだ。非力なその身体、その拳ではどんなに力をこめたとしても人体にダメージを与えることはできないだろう。
ならば、この攻撃も何らかのベクトルを操作してのもののはずだ。
であるならば、いったい、いったい、いったい、何を、何のベクトルを操作したというのだ。
この遠距離攻撃はどんなベクトルを操作したモノなのだ。
(空、気………を………?)
いや違う。
(なら、粒子を………………?)
それも違う。
そんな小さなものではない。そう御坂は判断した。
分かるのだ。
感覚で。
そういったものによる攻撃ではないということだ。
この右腕が切られたその瞬間、一方通行アクセラレータは右腕を、まるで斬撃を飛ばすかのようにふるっていた。
だが違う。空気操作では無い。鎌鼬かまいたちのような攻撃方法では無い。
そもそも空気は動いていなかった。
形容しがたいその攻撃を、それでもあえて説明するのであれば。
御坂美琴はこう説明するだろう。
まるで、
ま・る・で・世・界・そ・の・も・の・に・拒・絶・さ・れ・た・よ・う・な・攻・撃・だ・
と。
一方通行アクセラレータがいったい何を操っているのか。
何を使って御坂に攻撃したのか。
それを理解することはそう簡単には出来ない。
少なくとも現状の御坂では理解できない。
だから、当然次の一撃を避けることもできなかった。
世界そのものから拒絶されるような攻撃。ただ人たる御坂に、それを避ける術すべは絶無である。
攻撃を示すような明確なアクションは存在しなかった。
ただ、一つわかったのはその攻撃が示す結果だけ。
ベギュッ!!!、と。
何かわけのわからない力が御坂の身体全体に奔はしった。
「……………―――――っっっっっ!!!!!!!!!!!!!!!!」
悲鳴を上げることすらできない刹那の時間。
一秒にも満たない一瞬の時の中で、
ただ明確に御坂は消えた。
その存在という存在のすべてを、塵も残さず消し去られた。
故にこれは二度目の敗北。
甦り、黄泉帰った御坂は、
ここにもう一度『死んだ』。
御坂美琴二度目の死亡。厳密に言えば死亡ではなく消失ですが。
ミサカ19090号と研究者① マッドサイエンティスト 彼女① 疾走 一方通行④ わからない
再び御坂美琴が死んだ。その事実をミサカ19090号はミサカネットワークを通じた情報網で認識した。
「やれやれ、総体め。やはり、二・回・目・の・お・姉・様・じゃ一方通行アクセラレータには勝てなかったじゃないですか」
今、ミサカ19090号はとある研究者に会いに来ていた。
ある意味ではこの実験の契機を作り出した人物。
ある意味ではこの実験を主導している人物。
狂って狂って狂って狂って狂っているが、その頭脳だけは確かに学園都市最高レベルであり、その狂気にさえ目を瞑つむれば学園都市最高の研究者であるという事実だけが残る。
天辺の中でも突き抜けた頂点の中でも最高の研究者。
存在だけで言えばかの秘匿され秘密にされ抹消され無視され非存在として扱われ禁忌と言われた木原一族の中の木原一族、『木原五行』と同レベルの天才研究者。
理不尽にして理解不能のながらも、良くも悪くも学園都市の研究者の中で有名な老人。
そんな彼に、ミサカ19090号は会いに来ていた。
トントントントンと一定のリズムを刻みながら歩き続け、ついにミサカ19090号は彼のいる建物の入り口に辿り着く。
「さて」
言葉を出したのはこれから会う最悪の研究者に感じてしまう遺伝子レベルの恐怖心をごまかすためか。肥大された悪感情を、言葉を出すことで意識しないように意識するためか。
目の前にそびえたつ極普通の建物魔王城を見る。
その建物は、外観だけで言えば本当に普通の建物だ。
壁面の色、建物としての形、窓の構成、入り口の位置、階層構造、物資搬入口、屋上の開放具合。
周りにある建物と何ら変わらないその外観は、確かにこの建物が他と何も変わらない事実を示していた。
だが逆説、それはこうも言えるのではないだろうか。
画一的に統合された外観で構成された数十の建物がある。その事実は逆を言えば、外観で目指すべき建物を判別できないという事を表すのではないだろうか。
壁面の色、建物としての形、窓の構成、入り口の位置、階層構造、物資搬入口、屋上の開放具合。それらすべてが同じという事は特定の建物であることを示す特徴が存在しないという事。つまり、どの建物が目指すべき建物なのか事前情報がないと分からない。
「ミサカ19090号です、とミサカ19090号はインターホン越しに伝えます」
扉の前につけられた内部に通じるインターホンのボタンを押し、ミサカ19090号は内部の人間に自らの訪問を告げた。
「………………ミサカ19090号様……ですか?申し訳ありませんが訪問の予定等はありますか?何分、先生はお忙しい方でして」
それに対して対応したのは若い女の声だった。おそらくは彼の助手か秘書か、そういった立場の人物だろう。
「いえ、予定はないです」
正直にミサカ19090号は言う。そもそも二度御坂美琴が負ける、その事態こそが変えられないイレギュラーなのだから。
「……でしたら、申し訳ありませんが」
対応する声が、断りの文言を言おうとした時だった。
そこに割り込んでくるしゃがれた声があった。
「うん、通してあげたまえ」
「……っ、先生!」
建物の中の若い女が緊張状態に陥ったのがわかった。しゃがれた声の主を先生と呼ぶのであれば、やはり女にとってその男は重要な存在なのだろう。
「分かりました。今開けます、ミサカ19090号様」
目の前の扉が左右に分けられて開いていく。その開け放たれた扉の先に続く通路をミサカ19090号はまっすぐと進んでいった。
絵画も壺もいっさい装飾品も存在しない殺風景な通路。無機質で無色なその景色はこの建物の持ち主の内面を表すにはふさわしいものだった。
何度か曲がり角をまわり、入り組んだ通路を歩き、扉を潜り抜け、階段を下り上り、
ミサカ19090号は一つの部屋の前に辿り着いた。
到着の合図を告げるためにコンコンと扉をたたく動作をする。
その前に部屋の中から声がかけられた。
「開いてるから入りたまえー」
「っ!」
監視カメラでミサカ19090号がここに来る様を見ていたのだろうか?
それとも足音や気配といった情報を察知して扉の前に来たことに気付いたのか?
ともかく建物の主はミサカ19090号がアクションを起こすよりも早く、アクションを起こした。
「………失礼…………します……」
無意識に陥ってしまう緊張状態を無理やりごまかしながら、ミサカ19090号は扉を開け部屋の中に入った。
「やぁ」
いっそ気さくに、その男は片手を上げて挨拶をする。
キャラではない行動をとるのは少しでもミサカ19090号の警戒心を薄くしたいと思っているからか。いや違う。この男がそんな殊勝な考えを抱くわけがない。
であるとすればその行動は素なのか。
それともミサカ19090号では考え付かないほど深い思想があるのか。
「正直なところを言えば、君の方から来てくれるとは思っていなかったよ?君たちに干渉するのは大覇聖祭の時になる予定だったからねぇ」
歪んだ笑みを浮かべながら、しわだらけの顔でその老人は言う。
身に纏まとう白衣は新品のものなのだろう。その白すぎる白衣は老人の暗黒の思想とは対照的なものだ。
一瞬でも気を抜けばミサカ19090号はすぐさまここから逃げ出してしまうだろう。悪意の感情をことさら敏感に感じてしまう彼女は、実のところ自分の心に浮かぶ恐怖と戦うことで精いっぱいだった。
だがいつまでも恐怖と戦っているわけにはいかない。ここから先を生き抜くためには、自らの安全を確保するためには、
目の前の狂科学者マッドサイエンティストの協力は必須なのだから。
「では、お願いします、とミサカ19090号はあなたに向かって頭を下げます」
要件を言う必要はない。
ここにミサカ19090号が来たということの意味、それは目の前の老人が一番わかっているだろうから。
「任せておきたまえよー。巷ちまたではマッドサイエンティストだとか散々な評判を受けている僕だが、神ならぬ身にて天上の意思に辿り着くものSYSTEM研究において僕を上回る研究者はいないからねえ」
自信があるのではない単なる事実として老人はのたまった。
そして、棚に置いてある特殊なヘッドギアを掴みミサカ19090号に渡してくる。
「…………………っ」
覚悟はできている。
これはミサカ19090号自身が助かるために必要なこと。
躊躇う余地はない。手段はもうそれしか残されていないのだから。
「ミサカは………………」
躊躇は一瞬だった。
ミサカ19090号はいくつもの配線でつながったそのヘッドギアを自らの頭にかぶせた。
それを確認し、白衣を着た老人が機械類のスイッチを入れる。
すると、
「あっ、ぐぎっ!っぃ!!!ぎゃ、…………ぁ」
呻くような悲鳴を上げてミサカ19090号はどさっと床に倒れた。
その様子を不気味な顔で観察した老人は、さらに機械類のスイッチやレバー、パソコンのプログラム等をいじりまわしながら言った。
「さぁ、実験を始めよう」
そう言って、彼は、白衣をまとった初老の男は、
「御坂君は天上の意思レベルシックスに辿り着けるかな?」
木原幻生は静かに嗤った。
『彼女』は走っていた。
全身全霊の全開全力で、息も絶え絶えに、学園都市の街の中をただひたすらに走っていた。
『その場所』に行くために。
すべてを救うために。
迷いのないその足取りはただひたすらに『その場所』に辿り着くためだけにまわされ、戸惑いのないその瞳にはただ唯一の目的だけが見え隠れする。
「……っ!―――、がっ!!!」
途端、あまりにも速く駆けすぎたからだろう。地盤沈下がおき、亀裂のはしったコンクリートに足をとられ『彼女』は思わず転倒してしまう。その無様なさまは、まるで100パーセントの死へと進む『彼女』を殺させないための意思が働いているかのようだった。
「―――っ、ぅぅううう……」
痛みに耐えて立ち上がる。
強い光を灯した瞳を携えているのはいったい誰なのだろうか?
『彼女』は白いソックスをはいていた。
『彼女』は茶髪だった。
『彼女』は常盤台の制服を着ていた。
『彼女』は生まれたばかりの存在だった。
五体満足でありながらも数千を超える死を経験し、心身健常でありながらも常に傷付いている。
「―――あは、あははは、あは」
立ち上がった『彼女』は再び走り始める。『彼女』は武器など持っていない。『彼女』は防具など持っていない。『彼女』は戦闘の手助けになるものなど何一つ持っていない。『彼女』は逃走の手助けになるものなど何一つ持っていない。
だが行く。走る。駆ける。
迷いはない。
『その場所』に行く理由がある。『その場所』に行かなくてはならない理由がある。
『彼女』の目指す『その場所』。
「待って……」
あの人はきっと来るなというだろう、と『彼女』は思っていた。
自分のこの行いはあの人の行動とは反するものだ。それは分かっている。
だが、仕方ない。
本当に仕方がないのだ。
「待っていてください……」
変わったから。
変わってしまったから。
何が?
すべてが。
「お姉様」
『彼女』は、
妹達シスターズの一人である『彼女』は、
そう言って御坂美琴のいる操車場まで走っていった。
「ncfil疑ocnbtr問dicgby」
一方通行アクセラレータは自らの身体に疑問を感じていた。といっても傷ついてなお動く体にでは無い。そんなことを疑問に思う思考など今はもうほとんどなくなっていた。
だから疑問に思ったのは別のこと。
今の自分自身の行動についてだった。
すなわち、
今・俺・は・何・を・し・た・?
「………………………………」
御坂を攻撃したことはわかる。それはきちんと意識している。御坂を攻撃したことは一方通行アクセラレータ自身の意思であり、その行動は誰かに操られたものでは決してない。
そう、それはそうなのだが……。
どうやって?
一方通行アクセラレータには分からなかった。自分自身がどうやって御坂を攻撃したのかわからなかった。
例えるならば数学の問題で途中式がわからずに答えだけ分かった感覚に近い。
その事象がどういう理屈でどういう過程を経て起きたのかさっぱりわからない。攻撃をふるったのは一方通行アクセラレータ自身なのにそれの結果だけしか認識できなかった。
自分自身が何をしたのかわからない。
どうして御坂が消えたのかわからない。
わからない。
何が?
わからない。
なんで?
わからない。
何を?
わからない。
わからない。わからない。
わからない。わからない。わからない。わからない。わからない。わからない。
わからない。わからない。わからない。わからない。わからない。わからない。わからない。わからない。わからない。わからない。わからない。わからない。わからない。わからない。わからない。わからない。わからない。わからない。わからない。わからない。わからない。わからない。わからない。わからない。わからない。わからない。わからない。わからない。わからない。わからない。わからない。わからない。わからない。わからない。わからない。わからない。わからない。わからない。わからない。わからない。わからない。わからない。わからない。わからない。わからない。わからない。わからない。わからない。わからない。わからない。わからない。わからない。わからない。わからない。わからない。わからない。わからない。わからない。わからない。わからない。わからない。わからない。わからない。わからない。わからない。わからない。わからない。わからない。わからない。わからない。わからない。わからない。わからない。わからない。わからない。わからない。わからない。わからない。わからない。わからない。わからない。わからない。わからない。わからない。わからない。わからない。わからない。わからない。わからない。わからない。わからない。わからない。わからない。わからない。わからない。わからない。わからない。わからない。わからない。わからない。わからない。わからない。わからない。わからない。わからない。わからない。わからない。わからない。わからない。わからない。わからない。わからない。わからない。わからない。わからない。わからない。
彼女がいた。
https://syosetu.org/novel/56774/86.html
御坂美琴と一方通行① 化物二匹 裂ヶ淵瞑娥と常世涯最果① 一方通行の戦い
『彼女』も『彼』も結局たどりついたのは『そこ』だった。
『彼女』も『彼』も結局『その力』を手に入れてしまった。
それは悪いことか?
それはいけないことか?
そうじゃない。悪いことじゃない。いけないことじゃない。間違っていることじゃない。邪道じゃない。心がねじ曲がっているわけでは無い。
狂っていて壊れていて終わっていて死んでいて壊死して正気でなくて破滅して歪んでいたとしても、
それでも、
だとしても、それでも絶対に、絶対に絶対にぜったいにぜったいに間違ってなんかない。
それだけは言える。
確実に言える。
だから、ここにいる。
互いが信じるモノのため。
正義でなくても悪でなくても。
生きていても死んでいても。
人間じゃなくても怪物になっても。
化物になっても人外になっても。
友人知人恋人家族親友同級生先輩後輩同類同僚愛人大人子供男女老若幼黒人白人混血大統領首相議員秘書統領首領頂点底辺中間理事長校長寮監甥姪幼馴染犯罪者青少年少女未成年成人聖人悪党宗教家狂信者同性愛者差別者馬鹿賢者美醜障害者健常者重篤患者担任主任黒髪白髪金髪銀髪色黒極道外国人劣化模造品。
すべてを敵にしても誰もそばにいなくても。
憧憬侮蔑畏怖恐怖憐憫殺意歓喜嫌悪心配軽蔑失望希望羞恥憎悪驚愕愛憎嫉妬快楽憤怒興奮安心。
あらゆる感情を向けられても。
目的があった。
目標があった。
助けたいとか、救いたいとか、独りは嫌だとか、そばにいてほしいとか。
子供のように純粋で、それゆえに何よりも残酷な願いがあった。
そのために『力』を欲したのが悪いことのわけがないだろう。だって、その願いは純白で、その思いは金色こんじきで、
悪いことをしたかったわけでは無い。
誰だって廃棄されるように死ぬ妹を助けたいと思うだろう?
誰だって永遠に独りでいるのは嫌だと思うだろう?
悪事をなそうとしたのではない。
誰だって幸せになる権利はあるはずだ。誰だって幸せになるために努力していいはずだ。
積極的に『悪』になろうとしたわけでは無い。
二人とも、ただ手段がなかっただけだ。
環境が悪くて、過去の自分が悪くて、手にした力が強大すぎて、周囲の大人は悪い奴ばかりで、助けなんて来なくて、自分自身でどうにかするしかなくて、味方なんていなくて、
無自覚に誘導されていて、無意識に行動を制限されていた。
だから、気付いたらこんな手段をとるしかなくなっていた。
責任転嫁?
選択したのは彼彼女かれかのじょだから責任は彼彼女自身にある?
なるほど。確かにそうかもしれない。
誘導されて追い込まれていたとはいえ選択したのは彼彼女自身。ならば、全責任は別の誰かではなく彼彼女にある。
一理ある。
だがあまりにも酷ではないか。
確かに彼彼女は確かに力を持っていて、選択したのは彼彼女自身。だが考えてみてほしい。彼彼女はまだ子供ではないか。発展途上の、将来が楽しみだなどと言われるレベルの子供ではないか。
それなのに全責任は彼彼女にあると言うのか?
周りを囲って都合のいいように動かした悪党には何の責任もないと?
そんなバカな話があるか!!!
それこそ責任転嫁だ。責任を押し付けている。
彼彼女に責任なんてない。負うべき責など何一つとして存在しない。無数の分かれ道が存在するはずの道を歩いていたのに、気がついたら一つ以外の道はすべて落石悪意によってふさがれていた。
だから、歩むしかなかったのだ。その道を。
それを本人の責任というか?その道を歩くしかなかったのに?
あまりにもあんまりだ。
その正論は暴論だ。
責任はすべて周囲の人間にある。それでいいだろう?押し付けるにはあまりに彼彼女は若い。いっそ幼いといってもいいほどに。
…………結果論として、彼彼女は落石悪意によってふさがれていない一本道を歩んだ。それは逃れようもない事実ではある。
その先に地獄しかないと知っても歩むしかなかった。
後戻りは許されないし、立ち止まることは許せない。
だから進む。前に。先に。
ブラックホールに引きずり込まれるように、その道に吸い込まれていった。
もしもの仮定の話ではあるが、例えば彼女がたったひとりで抱え込まずに、誰かに助けを求めていればその落石悪意を壊せたかもしれない。
例えば彼が自らの一番奥にある衝動を言葉で具現化できるだけの覚悟があれば、その落石悪意を乗り越えられたかもしれない。
だが、できなかった。抱え込んで、独りになって、『その力』を手に入れた。
だから『ここ』に来た。
だから『この場所』で相対している。
未来は誰にもわからない。その彼彼女が『その力』を手に入れるなんてだれも予測できなかった。
奇跡的な偶然と不断の覚悟で彼彼女は誰かが作った『物語の枠ストーリーライン』の中から飛び出した。
強く、強く、強く。ただひたすらに強く。
無自覚だろうが何だろうが彼彼女は今この瞬間に人間を超えていた。人外になっていた。
決められた枠を飛び出した二人にどんな未来が待ち受けるかはわからない。彼彼女は例え今だけだとしても、誰の掌の上にもいないのだから。
そして、
だから、
つまり、
それで、
ゆえに、
しかし、
けれど、
この戦闘が最後。
人ならざる化物が二匹。
操車場で狂った。
夜の暗闇がいっそう深みを増す深夜と呼ばれるような時間帯で、一人の少年と一人の少女が明確に敵対していた。
少女の名は裂ヶ淵瞑娥さくがぶちめいが。学園都市の『闇』の中に存在するフリーの傭兵組織の一つ彼者誰時に輝く月シャイニングムーンの団長である。
身に纏まとう装備は瞑娥のためだけに作られた特殊装備。世界に一つしかないその装備は瞑娥が全力をふるうのにふさわしいものである。
「あぁあぁ、逃げられたぁ」
そして相対する少年の名は常世涯最果とこよのはてさいはて。学園都市に数多く存在する風紀委員ジャッジメント支部をまとめ上げ、有事の際にはそれらをまとめて指揮する権限すら与えられている組織風紀委員本部セントラルジャッジメントに所属する封印戦力と呼ばれる存在の一人である。
専用装備は体内保存式緊急自殺用超威力爆弾『オメガジエンド』。『オメガジエンド』の自爆による攻撃はそう簡単に逃れられるものではない。
「天地破壊流体術。廻り廻れよこの世界インフィニティモーメント」
二人は戦っていた。
戦っていた。
戦って
い・た・。
過去形である。
すでに、二人の戦闘は戦いのていを成していなかった。
一方的にふるわれる暴力を前に片方が無抵抗でいるしかないというのならば、それは戦いでは無い。
蹂躙であり虐殺であり暴虐である。
最果と瞑娥。この二人の戦闘力は数値化したとすれば10ケタ以上の差がある。勝てるわけがないのだ。純粋な戦闘能力で言えば瞑娥は間違いなく最強の一角。対して最果の戦闘力はせいぜい最強三歩手前レベル。
戦いなど成立するわけがないのだ。
だから最果は瞑娥に一方的に殺されていた。
否、
殺され続けていた。
「天地破壊流布術。髑髏されこうべ」
まず、奇襲によって一度殺された。おかげで最果は脳幹を逃がすはめになってしまった。
その後、突如襲ってきた瞑娥に対応するためにとりあえず最果は『オメガジエンド』を使って戦闘行為をリセットしようとした。
例え万全の態勢で最果に攻撃を仕掛けてきたとしても自爆という行為を止めることはそう簡単なことでは無い。なにせ、『オメガジエンド』は最果の意思一つで自爆させることが可能な究極の自殺道具なのだから。
だが、何事にも例外がある。
人間は『行動を起こそう』と思い立ってから実際に行動に出るまでにわずかなラグが存在する。そのラグは体内を制御する電気信号の関係で通常どう頑張っても0.16秒以下には縮まらない。
もちろんそのラグを無理やり縮める例外達はいるが残念なことに最果はその例外では無かった。
だから、『自爆しよう』と思ってから『オメガジエンド』を自爆させるまで0.2秒ほどのラグが発生した。
そのわずかな時間の間にすでに瞑娥は行動を起こしていた。
「天地破壊流体術。天落しあまおとし」
天地破壊流。
体術、拳術、銃術、布術、音術、剣術等数多くの武技が存在する流派である。
瞑娥はその天地破壊流の技を使って、最果が行動を起こさせるまもなく殺した。
瞑娥が最果を[ピーーー]ために使った技の名は『無音爆』。天地破壊流の拳術の一つである。走り出す際に足の一部に強烈な力を発することで速度を上げ、通常の数倍のスピードで相手との距離を詰め、そのまま拳を放つ。
簡単に言えば、素早く近づいて素早く殴る技である。
次に放った技は廻り廻れよこの世界インフィニティモーメント。天地破壊流体術の一つ。相手の腹を殴り一度相手を浮かした状態にして、その状態の相手の頭を上から下に蹴り、地面に向かう相手を再び殴って浮かし、さらに頭を蹴って、殴って、蹴って……。エンドレスでそれを繰り返し相手を[ピーーー]技。
そして髑髏されこうべ。天地破壊流の布術の一つ。布で相手の頭蓋を覆い、その布を回して相手の首の骨を回し折る技である。
それらを無抵抗のままくらってしまった最果は当然のごとく死んだ。
だが、瞑娥は追撃の手を緩めない。
先ほどの脳幹と最果の戦いを見て分かったことが一つあったから。
この戦闘が最後。
人ならざる化物が二匹。
操車場で狂った。
夜の暗闇がいっそう深みを増す深夜と呼ばれるような時間帯で、一人の少年と一人の少女が明確に敵対していた。
少女の名は裂ヶ淵瞑娥さくがぶちめいが。学園都市の『闇』の中に存在するフリーの傭兵組織の一つ彼者誰時に輝く月シャイニングムーンの団長である。
身に纏まとう装備は瞑娥のためだけに作られた特殊装備。世界に一つしかないその装備は瞑娥が全力をふるうのにふさわしいものである。
「あぁあぁ、逃げられたぁ」
そして相対する少年の名は常世涯最果とこよのはてさいはて。学園都市に数多く存在する風紀委員ジャッジメント支部をまとめ上げ、有事の際にはそれらをまとめて指揮する権限すら与えられている組織風紀委員本部セントラルジャッジメントに所属する封印戦力と呼ばれる存在の一人である。
専用装備は体内保存式緊急自殺用超威力爆弾『オメガジエンド』。『オメガジエンド』の自爆による攻撃はそう簡単に逃れられるものではない。
「天地破壊流体術。廻り廻れよこの世界インフィニティモーメント」
二人は戦っていた。
戦っていた。
戦って
い・た・。
過去形である。
すでに、二人の戦闘は戦いのていを成していなかった。
一方的にふるわれる暴力を前に片方が無抵抗でいるしかないというのならば、それは戦いでは無い。
蹂躙であり虐殺であり暴虐である。
最果と瞑娥。この二人の戦闘力は数値化したとすれば10ケタ以上の差がある。勝てるわけがないのだ。純粋な戦闘能力で言えば瞑娥は間違いなく最強の一角。対して最果の戦闘力はせいぜい最強三歩手前レベル。
戦いなど成立するわけがないのだ。
だから最果は瞑娥に一方的に殺されていた。
否、
殺され続けていた。
「天地破壊流布術。髑髏されこうべ」
まず、奇襲によって一度殺された。おかげで最果は脳幹を逃がすはめになってしまった。
その後、突如襲ってきた瞑娥に対応するためにとりあえず最果は『オメガジエンド』を使って戦闘行為をリセットしようとした。
例え万全の態勢で最果に攻撃を仕掛けてきたとしても自爆という行為を止めることはそう簡単なことでは無い。なにせ、『オメガジエンド』は最果の意思一つで自爆させることが可能な究極の自殺道具なのだから。
だが、何事にも例外がある。
人間は『行動を起こそう』と思い立ってから実際に行動に出るまでにわずかなラグが存在する。そのラグは体内を制御する電気信号の関係で通常どう頑張っても0.16秒以下には縮まらない。
もちろんそのラグを無理やり縮める例外達はいるが残念なことに最果はその例外では無かった。
だから、『自爆しよう』と思ってから『オメガジエンド』を自爆させるまで0.2秒ほどのラグが発生した。
そのわずかな時間の間にすでに瞑娥は行動を起こしていた。
「天地破壊流体術。天落しあまおとし」
天地破壊流。
体術、拳術、銃術、布術、音術、剣術等数多くの武技が存在する流派である。
瞑娥はその天地破壊流の技を使って、最果が行動を起こさせるまもなく殺した。
瞑娥が最果を[ピーーー]ために使った技の名は『無音爆』。天地破壊流の拳術の一つである。走り出す際に足の一部に強烈な力を発することで速度を上げ、通常の数倍のスピードで相手との距離を詰め、そのまま拳を放つ。
簡単に言えば、素早く近づいて素早く殴る技である。
次に放った技は廻り廻れよこの世界インフィニティモーメント。天地破壊流体術の一つ。相手の腹を殴り一度相手を浮かした状態にして、その状態の相手の頭を上から下に蹴り、地面に向かう相手を再び殴って浮かし、さらに頭を蹴って、殴って、蹴って……。エンドレスでそれを繰り返し相手を[ピーーー]技。
そして髑髏されこうべ。天地破壊流の布術の一つ。布で相手の頭蓋を覆い、その布を回して相手の
首の骨を回し折る技である。
それらを無抵抗のままくらってしまった最果は当然のごとく死んだ。
だが、瞑娥は追撃の手を緩めない。
先ほどの脳幹と最果の戦いを見て分かったことが一つあったから。
つまり、
常・世・涯・最・果・は・死・な・な・い・。
少なくとも、物理的手段では死なない。
それは現実に証明されている。
その証拠に、
「無駄無駄無駄無駄ぁ」
視界の中でいまだに最果は生きている。笑っている。話している。
「この程度の攻撃じゃ私の能力は突破できないよぉ」
何度も何度も殺しているのに。首を折り、心臓を破壊し、胴体を粉砕し、首を折り、五体を砕き、破壊し、壊しているのに、
死なない。
不死。
殺せない存在。
「なんせ、私はきゅ」
瞑娥に戯言を積極的に聞く趣味などない。だから、最果が何かを言おうとしているのを遮り、五度ごたび攻撃を仕掛けた。
「天地破壊流体術。天落しあまおとし」
天地破壊流体術天落しあまおとし。足を大きく振り上げ、下に振り下ろす。ただそれだけの技である。といっても、瞑娥ほどの実力者が行えばそれだけで必殺になるのだが。
肉が砕ける音がした。
降り下ろした足が最果の頭蓋に突き刺さり、その頭が砕け散る。
だが、
「無駄だってぇ」
それでもなお、死なない。
「私を[ピーーー]ことは誰にもできない。……『神』なら別だけどね」
暗に『お前に私は殺せない』と言い放った最果。それはただ厳然たる事実として二人の間にあった。
とはいっても瞑娥に最果を[ピーーー]ことが出来ないように、最果にも瞑娥を[ピーーー]ことは出来ない。純粋な戦闘力の差として死なないから殺せるなどといった単純なものではないのだ。
いくら死ななくても、それだけで殺せるほど瞑娥は『弱く』ない。
故に、最果は呟いた。
「まぁ、このまま戦ってもいいけどぉ。そろそろタイムアップかな?」
時間切れタイムアップだ、と。
「っ、させない!」
突如として、二人がいる道に一つの影が高速で飛来した。
「こんにちは。そして、さようなら」
上空から飛来した人影が最果の両腕を掴んで、空にさらった。
その影を追いかけるようにして瞑娥は両の拳けんをふるう。飛び去った二人を墜落させるために。
右腕で斬撃を放ち、左腕で服のボタンをむしり取って飛ばした。
「天地破壊流剣術。天に舞う剣影エアスラッシュッッッ!!!」
放たれた攻撃は空を裂くようにして最果たちの方向に向かっていった。
確信をもって放たれたその一撃。空を飛ぶ二人に向かって放たれた一撃は、まともに当たれば墜落することは確定である。だからその影は瞑娥の攻撃に対処した。
「はははははは」
「っ、くッッッ!!!」
トンッ、と影は空を蹴って方向転換をした。
空中反転エアライドターン。
空を蹴って進行方向を変える技である。
あまりにも急激な方向転換で対象を捕捉し損ねた一撃は、当然影には当たらない。
そして、追撃を仕掛けるにはあまりにも距離が離れすぎた。
「……逃げられた」
上空に連れ去られた最果を見ながら、瞑娥は自らの行動の失敗を知った。結局最果を[ピーーー]手段は見つからなかった。脳幹を送り届けるという目的は果たせたものの最果てには逃げられたしまった。
とりあえず次善の策は成功したがそれもどこまで効力を発揮できるかわからない。
「…………………………」
これ以上出来ることはもうないと瞑娥は判断した。戦闘はこれ以上行う理由がないし、次の行動は風紀委員本部セントラルジャッジメントの行動を待ってからでないとならない。
攻勢をこちらからかけることはできないのだから。
ひとまず戦いは終結した。
8月21日夜の風紀委員本部セントラルジャッジメントと彼者誰時に輝く月シャイニングムーンの戦いは、ここで終わった。
謝罪。
読み直していたら超重要な伏線の記載ミスを発見しました。大変申しわけございません。
あり得ないミスです。読者に対して非常にアンフェアでした。本当に申し訳ありません。
一番気を付けていた伏線の配置ミスをしてしまったことに全く申し開きようもありません。ごめんなさい。本当にごめんなさい。
伏線の配置ミスは御坂美琴と一方通行③ 二重超電磁砲(ダブルレールガン)【及び御坂美琴と一方通行④ 超電磁砲弾き(クロッシングレールガン)】にあります。
昨日修正しましたが、もう本当にチェックミスを後悔しています。
一応この伏線が無くてもとある事象の真相にはたどり着けると思いますが、それにしてもありえないミスです。しかもかなり矛盾のある描写を書いてしまいました。あぁ、なんで気付かなかったんだ私は……。
もう本当に平身低頭謝罪します。ごめんなさい。
愚図で愚かな作者ですが、見捨てずこれから先もこの作品を読み続けてくれるとうれしいです。
今回は私の不手際により読者に対して不公平な文章となっていしまい申し訳ありませんでした。
なお、次の更新については本来なら3日後に行うつもりでしたが、他にもミスがあるかもしれないという怖さもあり5日後にさせていただきます。3日置きの更新を楽しみにしてくださっていた人がいれば申し訳ありません。
とある暗部の御坂美琴(2周目)
https://syosetu.org/novel/56774/
原作:とある魔術の禁書目録
タグ:R-15 残酷な描写 とある科学の超電磁砲 暗部 上条当麻 鬱 独自設定 中二病 闇堕ち 群像劇 執着 依存 オリジナル展開 原作キャラ死亡 御坂美琴 絶望 シリアス 狂気 オリキャラ多数 裏切り 策略
▼下部メニューに飛ぶ
大切なモノを護るために、あなたは何処どこまで捨てられますか?
大切な人を助けるために、あなたは己の命身体を棄すてられますか?
自分の魂魄凡てを捧げても喪うしないたくないモノ、ありますか?
無明の闇に堕おちていけ。罪に穢けがれし気高き魂よ、汝なんじが生に幾多の禍難かなんが在あらんことを希こいねがって。
※亀の歩みよりも展開が遅いです。スピーディーな展開を求める人には確実に合いません
※多数の視点で物語が進むため展開が非常に遅いです。
※この小説は本編最新刊はもとより超電磁砲最新話、マンガ一方通行最新話、超電磁砲PSP、蛇足またはとある事件の終幕 、クロスオーバー小説、偽典・超電磁砲 、アニメ超電磁砲一期二期オリジナルエピソード、エンデュミオン、頂点決戦、群奏活劇、バーチャロン、とある魔術の禁書目録SP、一番くじ限定電撃鎌池和馬10周年文庫、学芸都市SS、能力実演旅行SS、とある魔術の禁書目録PSP、画集小説、下敷き小説、コールドゲーム、アストラル・バディの設定が入り混じっています。
※『白衣の男』と御坂美琴⑪ 脅迫までは一話2500文字それ以降は一話5000文字になっております。
※あらすじがver5になりました。前のあらすじが見たい人は活動報告の方へどうぞ。
※題名を『とある闇の中の超能力者』から『とある暗部の御坂美琴』に変更しました。
※ネット小説だからこそ出来るギミックを各所に取り込んでいます。
※前書きとあとがきには重要な伏線を仕込んでいます。必ず表示させてください。
お気に入り、高評価頼むで~
オリキャラが魔神をゴミ扱いするのがスカッとする
魔神が雑魚ってことはありませんのでご安心を。魔神に基礎スペックから勝てる存在は理外人外12名のみです。これは絶対に揺らがないので。
まぁ木原五行やパトリシア=バードウェイは|王の遺産《レガリア》を持っているので魔神に対抗は出来ますし、空白の主は絶対値で張り合う事は出来ますが。
白き女王は■■■■によって■■することは一応可能ですが、正直白き女王はこの|■■■《■■■■■■■■■■》では[ピーーー]ことが出来ます。なぜならば『穢れなき真実の剣持つ「白き」女王《iu・nu・fb・a・wuh・ei・kx・eu・pl・vjz》』は既に『|■■《■■■■■》』で――――――。
いえ、これは一応ネタバレになるので避けておきましょうか。
むしろ理外人外に対抗できるのは現状ならばアンナ=シュプンゲルが最有力候補ですかね。あるいはドラゴンキラー。あるいは東川守。あるいは俺。あるいは『ウミガメもどき』。あるいは『編み物のヒツジ』。
最も、本当の意味での最有力候補は『訪れた者の願いを歪んだ形で叶えてしまう街』から脱出した1人の少年と1人の少女ですが。
鎌池和馬作品最強キャラを蹂躙するメタ視点オリキャラを畏れよ
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頑迷に「普通の高校生」枠に入れられてた上条さんだが、ついに普通の高校生じゃなくなるのか
普通「以下」の高校生に・・・
https://syosetu.org/novel/56774/87.html
御坂美琴と一方通行② 進化深化神化
先手を取ったのは女の姿をした化物だった。
「――――――――――――――――――――――――――――――――――――」
操車場に無造作に置いてあるコンテナを女は磁力で操作して、男にぶつけていく。いや、コンテナだけでは無い。移動用のレール、地面の中にある砂鉄、周囲に存在する磁力で操れるものすべてを操って女は男に攻撃を仕掛けた。
それに対応したのは男の姿をした血みどろの化物。
「cbywliugu操ovcopb作uhjkhbg」
『進化』し『深化』し『神化』した男には生半可な攻撃は通用しない。世・界・を・書・き・換・え・る・力・を部分的かつ時間制限がありながらも手に入れた男は、自覚は無いながらも『頂点の領域』に手を伸ばしているのだ。
ガタガタガラガラガタン!!!!!
世界が変わる。
世界が書き換わる。
『神』が書き換えた。
「vrleerjm敵cirtnbvkhz確認」
そして、『神』はその力をふるう。
莫大で絶大で数値化できず現象として確認できない。
未知にして既知。
前人未踏にして既視感を感じる力。
それを女にふる
「---------------------------------------------------------------------------------------------------------------------------------------------------------――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――」
う前・に・さ・ら・に・上・か・ら・重・ね・ら・れ・た・力・に・塗・り・つ・ぶ・さ・れ・た・。
「yqbieiwixnot………………?」
疑問を感じた。
今の男の『力』に対抗できるのは男と同種の『力』を持っている存在だけだ。人間じゃ対抗できないし対応できない。
出来るはずもない。
ならば、目の前の女も男と同じ『力』を持っている。
訳では無い。
二人の力は同種類でありながらも同種類では無い。
アプローチが違うのだ。
終着点ゴールに辿り着くためのルートが違う。ルートMを通って『力』を手に入れた男とルートSを通って『力』を手に入れた女。
こことは違う世界における有機にして神にも等しい力の片鱗を振るうモノと
この世界から別の世界に干渉し別の世界の力を引き出しているモノ。
違う方向から『力』に辿りついたモノ達。
対極にして一体。
一対では無い表裏。
科学と魔術。
理論と信仰。
自力と他力。
自覚と無自覚。
意識と無意識。
本能と理性。
神と人。
強さと強さ。
その違いは紅色と朱色の違いを明確化しろというぐらいは難しいことだが、確かに違う。
そして、その違いはこの戦いにおいて極微小ながらも致命的な差となった。
「bboev攻撃wjcm確ogjgu認yvibcoe。bcin即ihuhwg時bnxyvoeb対応oiyubk」
次のアクションに移る。
「「――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――」」
『力』を手に入れた代償なのだろうか。男には足りないものがあった。それはつい先ほどまでの男なら、始まりの領域にいた頃の男なら持っていたはずのもので、『空白の主』を見たときの男なら考えていたもので、
危機感が。
「vilghuieygrvghuivybu――――――――――――!!!!!!!???」
その声は悲鳴では無い。痛いという感覚はもはや男には存在しない。『痛み』を感じるには男はあまりにも人間から離れすぎた。そんな普通の感覚を感じるにはあまりにも男は『強すぎた』。
だからその声は悲鳴ではなく戸惑い。
な・ぜ・自・分・の・方・が・傷・つ・い・て・い・る・の・か・と・い・う・戸・惑・い・だ・。
『力』の質では圧倒的に男の方が上だったはずだ。そして『力』の量では男も女も一人ずつなので互角のはず。
『力』=質×量、という式が成り立つのならばここで男が押し負けるのはおかしい。計算式が合わない。
こんな考え方がある。
量より質。
戦争において一騎当千、一騎当万、一騎当億の猛者が一人いる方が雑兵が一万、一億、一兆人いる方よりも勝ちやすいという考えだ。一騎当億の猛者ならば相手が何人いようが負けることはない。雑魚がいくらいても雑魚には変わらないし、0にいくつをかけても0なのは変わらないのだ。
男の考えはまさにそれだった。量より質。質の差で圧倒して責め立てる。それが『力』を手に入れた男の考えだった。
対して女の考えは男とは真逆だった。
質より量。
戦争において一騎当千、一騎当万、一騎当億の猛者が一人いるよりも雑兵が一万、一億、一兆人いる方が勝ちやすいという考えだ。一騎当億の猛者といえでもしょせんは人。疲弊しすれば腹も減る。永遠に休憩もなしに戦い続けることなどできない。
ならば、雑兵を一兆人用意していた方が替えもきき、疲れもあまりせず、使いやすい。そんな考えに基づいた案だ。
女の考えはまさにそれだった。質より量。量の差で圧倒して責め立てる。それが『力』を手に入れた女達の考えだった。
女は知っていた、感じていた。
質では勝てないという事は分かっていた。『力』を完全に理解したわけでも、『力』を完全に掌握したわけでもないが、だからこそ『差』がわかる。
絶対的な質の差を自覚できる。
「「――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――」」
ならば質での戦いは止めよう。そのステージで勝てないのならば別のステージで戦うべきなのだ。
量より質。質より量。
どちらも欠点と利点の双方を抱えている。
量より質というのは量が確保できなかったものの言う言い訳で、質より量というのは質を確保できなかったものの言う言い訳だ。
そして女には質がない。男よりも弱い質しかない。
ならば、
足・り・な・い・質・を・量・で・補・え・ば・い・い・。
「「――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――」」
その発想は男の中にはなかった。
男は常に一人だったから。男のそばには誰も、誰一人としていなかったから。一人は孤独だ。独りは寂しい。人は、いや人では無くても、独りでは生きられないのだ。
それは何も物質的な話だけでは無い。
精神的な話の比率の方が多い。
孤独は生命を[ピーーー]。独りは寂しくて退屈だ。ましてや周りに信用できる人も友人も親もいない男なら、利用しようとしてくる研究者しかいない男なら、それはもう当然の話だった。
少なく見積もっても7年以上男は独りだった。
その7年は男の根幹を変えるには十分すぎる年月だった。
優しさでは生きられない。
情けをかけては生きられない。
信用すれば生きられない。
友がいれば生きられない
弱くては生きられない。
非情にならなくては生きられない。
利用しなくては生きられない。
思惑を見破らなければ生きられない。
独りでなくては生きられない。
強くならないと、
『強く』ないと、
生きられない。
ならばある意味では当然。協力という発想が浮かばないのは独りの男の本質をあらわしていたのだろう。狂った『闇』の中を独りで生き抜く、その地獄の中で摩耗した精神はとっくの昔に終わっていた。
そう、
男の、
一方通行アクセラレータの、
×××××の心は、もうずいぶん昔に壊れていた。
「byvybl解ierchgi析bwyv。Gkor対tyyb応zmobk」
一方通行アクセラレータは女になぜ負けたのかを思考する。いくつもの可能性を並列で考え、点滅する思考の中で対応策を模索する。
『力』の質では勝っている。なのに負けたという事はもう一つの要素『量』で敗北したという事に他ならない。
つまり、と一方通行アクセラレータは結論付ける。
その事実を認識して、そして怒りをあらわにする。
女には女のほかにも『力』を使える協力者がいる!!!
女は独りではない!!!
「ibov不yewybc許govi!Vtvio絶対yrwbv殺害ibhny!」
怒りをこめて、叫ぶ。
『力』を得たが故に一方通行アクセラレータはその感情を爆発させていた。『力』を得た代償のように、まるで生贄にささげたかのように、自らの内にあるその感情を爆発させていた。
す・な・わ・ち・悔・し・い・と・。
あ・る・い・は・ず・る・い・と・。
何が違うというのだ。
目の前の女と一方通行アクセラレータの何が違うというのだ。
同じではないか。
超能力チカラの強度レベルは同じではないか。
それなのになぜこんなにも違う。
なぜ違うのだ。
表で幸せに暮らしていた少女と『闇』の地獄を生き抜いた一方通行アクセラレータ。
親しい頼れる仲間達がたくさんいる少女と孤独で独りで敵ばかりの世界で生きてきた一方通行アクセラレータ。
誰かを助けたくて戦っている少女と幸せになりたくて戦っている一方通行アクセラレータ。
最強の超能力者レベルファイブと超能力者レベルファイブの第三位。
表の世界で生きているからこそ『日常』の価値がわからなかった少女と『闇』の中で抗っていたからこそ『日常』の価値がわかる一方通行アクセラレータ。
正反対でありながら一体ではなく、
裏表でありながらも一対では無い。
逆でありながら同一でもある。
そんな二人。
そんな彼彼女。
女と男。
御坂美琴と一方通行アクセラレータ。
「aaaaaaAAAaAaaaaaaaaaAAAAaaaaaAaaaAAAAAAAAAAAAAAAaaaaa!!!!!」
一方通行アクセラレータはこの状況になってやっと気づけた。
なぜ、自分が戦ってきたのか。絶対能力進化実験レべルシックスシフトに参加したのか。絶対能力者レべルシックスを目指したのか。二万体の妹達シスターズを[ピーーー]などという怠い実験を続けてきたのか。
やっと、その理由がわかった。
つまり、
一方通行アクセラレータは
幸せになりたかったのだ。
「「―――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――」」
目の前に立つ御坂美琴を見る。
ずいぶんとその姿は変わっていた。
初めに着ていた常盤台の制服はどこへやら、いつのまにか御坂の姿は異形へと変身を遂げていた。
瞳の色は白と黒ではなく完全な黒目へと変わっている。
背中からはまるで羽のようなものが四本生えている。
髪の色は茶色から白へと変化している。
その身体からはオゾンを構成していた時とは比べものにならないほどの紫電が放たれている。
さらに髪の中から巻き角のようなものも見えている。
その姿を形容するのならば、
『雷神』
そう呼ぶのがふさわしい。
一方通行アクセラレータとは別ベクトルでいたった『神』という座。
至っていた。到っていたのだ。その『域』に。
ぶつかり合う『力』の中で、重なり合う『世界』の中で、塗りつぶし合う『色』の中で、
一方通行アクセラレータは、御坂美琴は、
ただ戦う。
人間をやめた彼彼女らのその戦いは一般人には理解できない。
いや、厳密に言うのならば、
一方通行アクセラレータは人間を完全にやめたわけでは無いのだが。
https://syosetu.org/novel/56774/88.html
御坂美琴と一方通行③ 戦いは未だ終わらず 千疋百目④ 救いの手 木葉桜十五夜と扼ヶ淵埋娥① 白の思惑
交錯する『力』と『力』。
ぶつかり合う『世界』と『世界』。
塗り潰し合う『色』と『色』。
ひょっとしたらそれだけで世界は簡単に終わるのかもしれない。そう思えるほどに莫大な『力』がぶつかり合っている。
音はなく、光はなく、認識できずともただそこに確かにある『力』。
御坂も一方通行アクセラレータもただその『力』をぶつけあっているのだ。
「hilywe世ybviqx界oiur操作bvbpo」
「「――――――――――――――――――――――――――――――――――――――」」
質の高い力と量の多い力が互いを攻撃しあう。先ほどの交錯では勝敗は量の側、つまり御坂の側に傾いた。
では、今回はどうだろうか?
「―――――――――――ッッッ!!!!!」
今回の交錯では勝敗は一方通行アクセラレータの側に傾いた。
理由としては主に二つ。
まず一つ。一方通行アクセラレータは既に世界を操るその力が起こす事象を目撃していたという事。
目撃したという事は理論や理屈がわからなくともその『チカラ』が起こす結果だけで分かるという事だ。一方通行アクセラレータほどの頭脳を持つ人間からすれば結果から逆算して過程を導き出すことはそう難しくない。
そして二つ。一方通行アクセラレータの持っている超能力チカラがベクトル操作だという事。
この世のほとんどのものはベクトルが存在する。ベクトルが存在しないモノなんてそうそう存在しない。そして、それは世界にも同じことだ。
重・な・り・合・っ・た・位・相・に・だ・っ・て・重・な・る・と・い・う・事・象・が・存・在・す・る・以・上・ベ・ク・ト・ル・が・存・在・す・る・。
重なるという事は上下の関係があるということ。上下の関係があるということはベクトルがあるという事。
そしてベクトルがあるのならば一方通行アクセラレータはそれを操れる。一方通行アクセラレータの超能力はベクトル操作。その根本にあるモノも手伝って一方通行アクセラレータの操る『力』は、『力』を得てから間もなく、その『力』がどんなものなのか正確には理解していないのにもかかわらずかなりの質にあった。
だから今回の交錯は一方通行アクセラレータが勝った。
これで一勝一敗。文字だけを見れば戦績は互角である。
文字だけを見れば、だが。
「hilywe世ybviqx界oiur操作bvbpo!!!」
「「――――――――――――――――――――――――――――――――――――――!!!!!」」
ぶつかり合う『力』。その中に隠された思い。秘められた真実と偽りで塗り固められた人生。
同じ『力』を持つ者同士の戦いの中で、同列にあるはずの存在でも、やはり勝っているのは一方通行アクセラレータだ。一度ずつ攻撃を通したが、通った攻撃の具合は一方通行アクセラレータの方がはるかに大きい。
このまま戦っていけば順当に一方通行アクセラレータが勝つだろう。
やはり、質を主とするものと量を主とするモノの戦いは質を持つモノに天秤が傾く。量を用意するのならば十や百ではなく万ぐらいの量を用意しないと一方通行アクセラレータには対抗できないだろう。
二対一の現状では御坂の方が不利だ。
「「――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――」」
このままでは負ける。そう御坂は思う。働かない思考の中でもそんな考えが浮かぶ。『敗北』という二文字が脳裏をよぎり、よぎる。
方法を変えてこの状況を変えなければならない。『敗北』から『勝利』に結果を変えるために。
現在の戦いは互いの『力』をぶつけ合い、互いの『色』で『世界』を染め上げる合戦だ。そしてこのままその戦い方を続ければ先に御坂の方が力尽きる。長期戦闘とは消耗戦とニアリーイコールなのだ。
だから、短期決戦を挑むしかない。
ザザザザザザザザザザザザザザザザザザザザザザザザザザザザザザザザザザザザザザザザザザザザザザザザザザザザザザザザザザザザザザザザザザザザザザザザザザザザザザザザザザザザザザザザザザザザザザザザザザザ
と、
御坂の姿がさらに変化する。
Phase5.1からPhase5.12とでも呼べる姿にわずかだけ変化する。
進化し深化し神化する。
その『しんか』は果たして御坂にどんな影響を与えているのだろうか。
いい影響か悪い影響なのか。もう戻れないところまできてしまったのか。
わからないし、わからなくていい。
そんなことはもうどうでもいい。
「―――――――――――――――――――――――――――――」
構えて、かまえた。
拳を握る。
強く、硬く。
掌に『力』を握ってそれをぶつける。無理やりの強引な攻撃だが、仕方がない。
それしか方法が思いつかないのだから。
いや、思いつけないのだから。
ぐっと足に力を入れて走る。奔る。
遠距離戦から近距離戦への切り替え、それで『勝つ』。勝って見せる。
走り出す御坂。
もしかしたら、その意志が一方通行アクセラレータにも伝わったのだろうか?
御坂美琴が駆けだしたのと同じタイミングで一方通行アクセラレータも御坂に向かって駆けだした。
「「―――――――――――――――――――」」
縮まる距離と接近する身体。
そして二人が接触する直前に、
互いの瞳の中に互いの過去を見た。
「yiviuleruhfihgsitkgofukrhkgeuingn――――――ッッッ!!!!!」
「――――――――――――――――――――――ッッッ!!!!!」
それは
もしかしたら、
最初で最後の
分かり合えるチャンスだったのかもしれない。
崩落開始から10分ほどが経過し、ようやく地下下水道の崩落は終わった。
「……………はぁ」
安心からか思わず百目の身体が崩れ落ちる。危なかった。ギリギリだった。何度か死ぬかと思った。
砕いて作った穴の中でやっと百目は安心できる時間を手に入れた。その時間はわずかかもしれないが少なくとも死の危険から離れることが出来た。それがわかっただけでもこの状況を思考する余裕が出てくる。
「……………………さて」
どうやって脱出するかを考える。作った穴の入り口は崩落した地下下水道のコンクリートで埋まってしまっている。それをどうにか掘り起こすか、それとも別ルートを作るかしなければ脱出は不可能であろう。
崩落の音が止んだとはいえいまだ崩落の危険性があるのは変わらない。そして白井と共に脱出しなければならない現状別ルートを作るのはかなりの危険性を感じてしまう。どちらの選択肢をとるべきかと言えば、どちらかといえば少しずつ掘り起こして脱出したほうがいいように思える。
「やりますか」
危険なのは変わらないが酸素や食料等の問題もあり早急に脱出しなければならない。多少の危険性には目を瞑つむるべきだろう。
本当の本当の本当に危なくなったら緊急装置ベイルアウトを使えばいい。だれにも頼らずこの崩落をしのぎ切ったのだ。切られることはないだろう。
目の前に乱雑に置かれた瓦礫をみやる。単純に殴ったり蹴ったり動かしたりすればそれだけでこの瓦礫は崩れ落ち、穴の中に入ってくるだろう。現在ですらギリギリの均衡によって瓦礫は積み重なっているのだから。
故に膨大な数のパズルを組み上げるかのように慎重かつ大胆に行動しなければならない。落ち着いて、積極的に動かなくてはならない。
「すぅ――――――」
覚悟を決めて、百目は積み重なった瓦礫を取り除く作業に入
ることは出来なかった。
百目がアクションを起こす前に別の人間がアクションを起こしたからだ。
「………こ………れ………、――――――は」
すべてがすべて消えていた。
何もかもが一切合切消失していた。
全部、全部、全部なくなってしまった。
目・の・前・に・あ・っ・た・は・ず・の・瓦・礫・の・山・が・い・つ・の・間・に・か・消・失・し・た・。
目をつぶったことも、目を逸らすこともしていない。瞬きすら行えないような刹那の時間の間でいつの間にか目の前が更地になっていた。
ドクンッ!!!と百目の心臓がひどく高まる。
緊張によって全身が無意識にこわばってしまう。
知っている。知っている。知っている。知っている。しっている。しっている。しっている。
百目はこの意味不明な現象をしっている。
シッテイル。
「ここにいましたか」
声が、き、こ、、、、、、、、?、、、、、、、、、、、、、、、、、、、、えeeEEE//-eえeeEeEEEEEEEEEeeeeeeeeeeeeえええええええええええええええええええええええええええええええええええええeeeeeEEEEEEEEEEEEeeeeeeeeeeeetetettttttttetteeetてえててttttetetetettetてててtttttってえててえええええええええええええええ
???????????????????????????????????????????????????????????????????????????????????????????????????????????????????????????????????????????????????????????????????????????????????????????????????????????????????????????????????????????????
「あぁ、そういえば拘束リミッターを外したままでしたね」
薄れゆく意識の中でそんな声が聞こえた。
木葉桜十五夜。
最強原石、風紀委員本部セントラルジャッジメント最後の切り札、委員長の懐刀、意思無き人形、正義の尖兵等様々な二つ名を持つ、
風紀委員本部セントラルジャッジメント最強にして最高の存在である。
別格であり別位であり位階の違う『人間』。
『神』を引きずり降ろせる『力』を保持する、存在の領域からして違う『人間』。
普段十五夜は自らの『力』に十の拘束リミッターをかけている。その十の拘束リミッターは十五夜の力を制限するのと同時に、十五夜の存在を制限していた。
『神』がこの世界に降りてくれば世界の容量の問題で世界がたやすく壊れてしまうように、十五夜も自らの存在に制限をかけていなければ人類や生命体に対する影響が大きすぎる。間近に接近しただけで意志の弱い人間なら自殺しかねないほどの存在感が十五夜にはあるのだ。
それは正しすぎるからでも間違いすぎているからでも眩しすぎるからでも暗すぎるからでもない。
単純に『力』が強すぎるのだ。
力にあてられる、と言い換えてもいいかもしれない。殺・さ・れ・る・前・に・死・の・う・な・ん・て・考・え・が・浮・か・ぶ・ほ・ど・十・五・夜・は・強・す・ぎ・た・。
そんな思いが人を自殺に走らせる。
だから、百目は気絶した。
百目だから、気絶で済んだ。
仮にこれが百目ではなくただの一般人だったら十五夜の前には死体の山が気付かれているだろう。風紀委員本部セントラルジャッジメント序列ランキング10位、千疋百目だからこそ、その心の強さが百目を自殺させず気絶で済ませた。
それを十五夜もきちんと認識している。
「………………まさか、白井黒子のことも守っているとは」
穴の奥で横たわる白井のことを見て十五夜は意外そうにうなずいた。
百目が白井を守る理由は本来なら無かった。存在しなかった。
だってそうだろう?百目が崩落する地下下水道を脱出するためにはどう考えても白井は邪魔だ。理屈だっていろいろ考えても可能性的に考えれば百目一人で既定のルートを、又は既定では無いルートを通って地上にいった方が助かる確率は高い。
なのに百目は白井を助けた。自らの危険性も顧かえりみずに。
99パーセント目的を達成できなくなるであろう緊急装置ベイルアウトの使用すら検討に入れて。
その理由は、
「世界物語キャラクターストーリー理論。宿敵ライバル……ですか。悪の組織の大幹部である私には縁のない話ですが…………まさか中心点がずれているんですか?」
呟いて、呟いて、
十五夜に声がかかる。
「夜五十十五夜」
振り返る。
「なんのようでしょうか?」
上条を背負っている無傷の埋娥が十五夜に声をかけてきた。埋娥の身体は地下下水道の崩落に巻き込まれたにもかかわらず怪我一つしていない。そして気絶している上条の身体も同じように傷の一つもなく、怪我の一つもしていなかった。
抱えた上条を十五夜のそばに投げ捨てて、埋娥は言う。
「だ・ん・な・オ・リ・ナ・シ・の・人・の・あ・が・で・ま・こ・ど・は・れ・こ・局・結・?」
「さ・ぁ・、わ・か・り・ま・せ・ん・よ・。委・員・長・に・隠・し・事・が・多・い・の・は・い・つ・も・の・こ・と・で・し・ょ・う・。私・が・始・ま・り・の・領・域・に・侵・入・し・た・の・だ・っ・て・本・当・に・予・想・外・だ・っ・た・の・か・ど・う・か・……」
結局のところ十五夜とて白白白のことを完全に理解しているのではないのだ。
いや、誰も白のことを真の意味で理解などできない。
風紀委員本部セントラルジャッジメント委員長白白白。風紀委員本部セントラルジャッジメントに所属する誰よりも弱くありながら、誰も持たない強さですべてを従える本物の怪物を理解することなど、誰にも不可能なのだから。
なぜなら、白とその他の生物はわずかな例外を除いて、
見・え・て・い・る・景・色・が・違・う・の・だ・か・ら・。
位相にベクトルが存在するかは明示されていませんが、重なっているという事は上下関係がありベクトルが存在する、と私は解釈しました。
いうまでもなく、独自設定です。
https://syosetu.org/novel/56774/89.html
御坂美琴と一方通行④ 幸せとシアワセ
ザザ
×××××は外で遊ぶことが好きだった。
小学生である×××××は同年代の友人たちとサッカーをして遊ぶのが大好きだった。
そして、今日も×××××は公園でサッカーをしていた。
「いっけぇ!××君!!!」
友人が出したどんぴしゃりなタイミングのパスを右のつま先で軽くボールをタッチすることで絶妙な弾みを起こし自らの前に落とす。前方にいるディフェンダーは三人だけ。フォワードの×××××がこの三人を抜かすことが出来れば、あとはキーパーとの一対一だ。
×××××のテクニックを駆使すればキーパーと一対一の状況ならまず負けない。だから、キーパーとの一対一に持ち込むためにまずは前方の三人を避けないと。
「絶対に止めろおおおおおおお!!!!!」
子供同士の遊びにしては少々大袈裟な声を上げて敵キーパーが味方ディフェンダーを鼓舞する。だが無駄だ。スポーツの実力差というものは一長一短では縮まらない。
まず向かってきた一人目。×××××は一人目のディフェンダーを避けるように一度ボールを右前に出した。
ボールの勢いはかなり速い。このままの速度でボールが転がれば×××××がボールに追いつくよりも早く、一人目のディフェンダーがボールに触れるだろう。
「っっっ!!!」
一人目のディフェンダーは全力で走って自らの前に転がってきたボールに足をのばす。このサッカーですでに×××××は2点も取っている。いくら遊びといえどもさすがに×××××の敵チームは悔しかった。
だから、焦りが出たのだろうか。
一人目のディフェンダーは勢いよくボールに足先を触れてしまった。幼い一人目のディフェンダーにボールを足先でトラップするような技術はなかったのに。
「あっ」
足先に触れたボールが予想以上に弾んでしまう。そして、触れたボールはそのままの勢いで走ってきた×××××の足元に収まってしまった。
「っ」
急いで態勢を立て直し、×××××の進路上に立ちふさがろうとする一人目のディフェンダー。その横を余裕の表情で×××××は通り過ぎる。
ザザザザザザザザ
残るディフェンダーは二人。
「行かせるかっ!」
「行かせないよっ!」
一人一人で当たっては突破されると思ったのだろう。残った二人のディフェンダーはそれぞれ右前と左前から一斉に攻撃を仕掛けてきた。進行方向をふさがれた×××××はさすがに今の勢いのまま前に進むことは出来ない。
とっさに左右を見て誰かにボールをパスできないかを考える。そして、すぐにその考えを否定した。
ここまでボールを運んできたのはまぎれもなく×××××の技術のおかげだ。今更誰かを頼ったところで状況が好転するとは思えない。
ならば、と×××××は一度停止した。
「「――――――っっっ!!!」」
×××××のその行動に好機を見出した二人のディフェンダーが一気に距離を詰めてくる。さしもの×××××も極近距離から二人がかりでボールを求められては防ぎきれるかわからない。
だから、×××××は二人のディフェンダーと自分自身の距離が二人のディフェンダーはギリギリボールに触れられず、自分自身はボールにワンタッチだけできる絶妙なタイミングになるまで待ってから行動を起こした。
「「なっ!!!」」
驚愕の声が被った。
距離とタイミングがそろう絶妙な位置で×××××は一度ボールを止め、つま先をボールの下にもぐらせて一気に上にあげる。
ボールは二人のディフェンダーの頭上を通りその後ろに転がった。
「っっっ!!!」
「くっ!」
振り返るがもう遅い。
追いすがるがもう間に合わない。
自らの上を行くボールに視線を送りながらも動けない二人のディフェンダーを置いて、×××××は一気にボールの落下予測地点にかけた。
落ちてきたボールを足元で弾ませてトラップする。
さぁ、これザザザでキーザザザザザパーと一ザ対一ザザザザザだ。
「こいよ……っ!!!」
自らを鼓舞する敵キーパーを前に×××××は冷静に足を運ぶ。不意を突かれたディフェンダーが戻ってくるまでそれほど時間はないだろう。すばやくボールをゴールに叩きこまなければならない。
さっさっさっ、と前にボールをけり出しながらまたぐようにしてボールの上に足を走らせた。
シザース。
そう言われるフェイント技術の一つである。
「あっ」
高速のフェイントに引っかかって体が傾いてしまった敵キーパーに、もはや×××××を止める術はない。いとも簡単に敵キーパーを避けた×××××はそのままの勢いでボールをゴールに叩きこんだ。
味方側から歓声が上がる。
敵側から残念そうな声が上がる。
そう声を背に受け×××××は味方の陣地に戻った。
仲間に近寄れらもみくちゃにされる。
「よっしゃあ!さすが××だぜ。もうこれで三点目じゃんかよ!!!……あぁ、なんだっけ?三点目って確か特別な言葉があったよな?ボウリングのストライク、みたいな?」
「ハットトリック」
「そうそれだ!ハットトリックなんて超すげぇぜ!お前らもそう思うだろ!!!」
まったくだ、すごいすごい、さすがだぜ、かっこいい。
誰でも思いつくような美辞麗句を心の底から言う味方チームの人間に×××××は微笑んだ。×××××からしたら全然たいしたことをしているわけでは無い。なのに褒められるなんてなんだかむずがゆい。
「よっしゃあお前ら!もう十点位取ってやろうぜぇ!」
気合を入れる見方を前に自然と×××××も微笑む。
ザザザザザザザザザザザザザザザザザザザザザザザザザザザザザザ
あぁ、楽しいなぁ。
本当に幸せだ。
こんないつもの日常がずっと続けばいいのに。
こんな幸福な世界がずっと変わらなければいいのに。
これからも、
いつまでも、
ずっと、永久に、永遠に、
戦いなんてしたくないんだ。
誰も殺したくなんてないんだ。
友人が欲しいだけなんだ。
(……?)
戦い?殺したくない?友達が欲しい?
何を言っているんだ?
友達なら隣にいてサッカーをしているだろう。
戦いとか殺し合いとかこの国で起こるわけがないだろう。
平凡な少年の×××××はそんな非日常とは無縁なのだから。
「おーい。何してんだよ××!早く来いよ!」
ボーとしていた××は味方から声をかけられて正気を取り戻し前線へとかけていく。胸に巣食った疑問はいつの間にか消えていた。
だから、
ザザザザザザザザザザザザザザザザザザザザザザザザザザザザザザザザザザザザザザザザザザザザザザザザザザザザザザザザザザザザザザザザザザザザザザザザザザザザザザザザザザザザザザザザザザザザザザザザザザザザザザザザザザザザザザザザザザザザザザザザザザザザザザザザザザザザザザザザザザザザザザザザザザザザザザザザザザザザザザザザザザザザザザザザザザザザザザザザザザザザザザザザザザザザザザザザザザザザザザザザザザザザザザザザザザザザザザザザザザザザザザザザザザザザザザザザザザザザザザザザ
真・実・か・ら・目・を・逸・ら・し・て・一方通行アクセラレータは・幸・せ・な・世・界・を・甘・受・し・た・。
「ぇ様……姉様」
罪を犯した御坂を呼ぶ声が聞こえる。
「姉様……お姉様!!!」
瞳を開ける。開けざるを得ない。
だって、その呼び方をする人はたった一人しかいない。
もうたった一人しかいない。
あの子とはもう、会えない。会わない。
「もうっ、大丈夫ですの?お姉様?」
瞳・を・開・け・た・先・に・立・っ・て・い・た・の・は・白・井・黒・子・だ・っ・た・。
「……ぁ」
白井黒子が、
「えっと大丈夫ですか?御坂さん」
初春飾利が、
「急にボーとしてどうしたんですか?御坂さん」
佐天涙子が、
いた。
「………………………………………………」
■た■。
「お姉様……?」
「ごめん黒子。ちょっとボーとしちゃって」
先ほどまで考えていたことが何だったのかもはや御坂は思い出せなかった。重要なことのように思えて、でも思い出せないという事は重要なことでは無いように思えて、御坂はもう思い出せなかった。
「もうっ、しっかりしてくださいよー、御坂さん。これからみんなで枝先さんの所にお見舞いに行くんですから~」
「まぁまぁ佐天さん。御坂さんだって疲れてるんですから」
歩きながらもボーとした御坂を気づかうように佐天が冗談気味に御坂を責め初春がそれをたしなめる。佐天と初春の二人からも白井と同じように純粋に他者を案じる意志があって、ただ心配だと不安だという思いが伝わってきた
いた■。
「ごめんごめん。それで何の話だったっけ?」
呆れるように白井が先ほどまでの会話の内容を伝える。そこにはいまだ心配の色があったが、さすがに白井はここで御坂を問い詰めるような人間では無い。
「あぁ、そういえばそうだったわね。それでどうなの、春上さん?」
御坂は自らがボーとしていた事実をごまかすかのように春上に問いを投げかけた。
「うん。絆理ちゃんなら今はもう完全に落ち着いてるみたい。お医者さんも安心していいって」
「そう、……ならとりあえずは一安心ね」
ほっとして御坂は一つうなずいた。御坂のほかにも、白井も初春も佐天も安心するようにうなずく。結局みんな心配していたのだ。なんだかんだで体晶のファーストサンプルに関わる事件が無事に収束し、枝先絆理が助かったのだとしても、やはりその無事な姿を見聞きするまで安心はできなかった。
だがそれも枝先のもとに足しげく通っている春上が枝先の無事を保証することである程度は解消された。
「正直、ほっとしましたわ」
「うん。一応無事だとは知ってたけど、やっぱり心配だったしね」
いたい。
「でも、やっぱり絆理ちゃんもずっと一人で病室にいると暇だから、皆が来てくれて喜ぶと思うの。あれで絆理ちゃん寂しがり屋さんだから」
茶化したように初春が言う。
いたいたいたいたいいt。
出会ってからの時間は短いがその関係性は竹馬の友といってもいい位に親しい。あえて過去を何でもないように言うことで気にしていないし、気にしなくていいと言外に示すこともできる。
「本当にそうなの。だから皆が来れば絶対に喜ぶの」
「ふっふふーん。そのためにわざわざ常盤台の超絶高級ケーキも買ったんだしね。これで喜ばないはずはなーーーい!」
いたいいたいたいいたいたいたたたたtttttaaaaaa。
はりきった調子で佐天が手に持つ袋を掲げる。中に白い直方体の箱が入ったそれは常盤台の超高級ケーキ店のケーキが入った枝先へのお土産だった。
「私もこんな高級ケーキ初めて見ました。御坂さんたちはいつもこんな美味しいものを食べてるんですか?」
「いや、さすがにそんな頻繁に食べてるわけじゃないわよ」
「そうですわ、初春。そんな頻繁に食べたらただでさえ増えていく体重が大変なことに……っ!ああ恐ろしいですわ!」
わざとらしく両腕で身体を抱えるようなしぐさをして震える白井。
「そんな大げさな……。あっ、そういえばなんですけど」
唐突に、何か思い出したかのように、嬉し気かつ得意げにに佐天は自分の得意分野を語った。
「ケーキといえば最近ネットで見た都市伝説に……こんな話が」
御坂達五人はそんな風に何でもないようなことを語りながら。枝先絆理のいる病院へと歩いて行った。
はたから見てしまえば、彼女達ほど親友といっていい存在はないだろう。打算では無い協力と策謀の関わらない信頼とただ純粋な親愛を共有する彼女達の仲を裂ける人なんてきっといないのだから。
いたいたいたいあうあいあたいあたいあたいいたいたいたいあうあいあたいあたいあたいあたいあたいたいあたたいあたいたいたいたいいたいいたいあたいあたいたいあたたいあたいたいたいたいいたいいたい痛い痛い痛いイタイいたいイタイイタイイタイ痛い痛い痛い遺体痛い遺体遺体遺体遺体遺体いたい痛い遺体遺体痛い痛い遺体痛い痛い痛い痛い遺体遺体遺体遺体遺体遺体遺体遺体痛い痛い痛い痛い痛いいたいたたいたいたいいたいたいたいいたい遺体遺体遺体遺体痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛いいたいたたいたいたいいたいたいたいいたい遺体イタイイタイタイイタイイタイイタイイあいたいいいいいいいいいいいいいいいいぃぃぃいイイイイイイィィッィィィッィィィィィィィィ!!!!!!!!!!
多・少・の・違・和・感・を・抱・え・な・が・ら・も・御・坂・美・琴・は・幸・せ・な・世・界・を・享・受・し・た・。
https://syosetu.org/novel/56774/90.html
御坂美琴① 罪人はここにいた
しばらく五人で談笑しながら道を歩いて、御坂達は絆理のいる病院に辿り着いた。その後、絆理に面会するための許可を受付で求めた御坂達は、無事に面会の許可をもらい絆理のいる病室に向かっていた。
いくつもの扉を超えて御坂達は絆理のいる病室の前へとたどり着く。
そして、春上が絆理の病室の扉を開けた。
「こんにちは。絆理ちゃん」
長い間身体を動かせなかったことで衰えた手の筋力を手の中のボールを使って鍛えていた絆理が、それに気づいてうれしそうな声を上げる。
「あぁ、衿衣ちゃん。――――――どうしたの?」
扉を開けただけで病室の中に入らない春上を見て絆理が不思議そうな声を上げる。いつもならすぐに入ってくるのに、という疑問が見え隠れした。
それを見て『ふふふん』と機嫌よさそうに春上の顔がにやける。
「「「「こんにちは(ですの)!!!」」」」
扉が完全に開いて御坂達四人が姿を現した。
「みんなぁ!!!」
春上だけではなく友人である御坂達が姿を見せたことに絆理の顔もにやける。それを見て御坂達も自然に笑顔になった。
そして、佐天が持っている袋を掲げて絆理に差し出した。
「常盤台の超絶美味しいケーキを買ってきたんで、みんなで一緒に食べましょう!」
「うん!!!」
入院生活で食事制限をされていた絆理は本当にうれしそうにうなずいた。
その後しばらくケーキを食べながら会話を楽しんでいた六人だが御坂の飲み物を買いに行こう!という提案に白井と初春と佐天の三人が引っ張り出され、病室に絆理と春上の二人が残ることになった。
唐突に理由もわからず外に連れ出された佐天は御坂に疑問をぶつける。まさか本当にジュースを買いに行くだけのようで外にでたわけではあるまい。それだったら何も四人で出る必要はないのだから。御坂と白井の二人、もっと言えば御坂一人でもよかったはずだ。
「まぁまぁ、まずはジュースを」
「あっ」
佐天の疑問に説明を返そうとした御坂の声を初春が遮った。
「ん?」
向かって左側のガラス壁の向こうを見て声を上げた初春につられるようにして、御坂達三人もガラス壁の向こうを見やる。
そこには病を克服するために、日常生活に戻るためにリハビリをしている少年少女がいた。
ふっ、と。
その光景を見て、御坂の胸の内に思い浮かぶものがあった。
「あ・っ・………………」
自らと瓜二つの少女が全身を破裂させてしん
思い出すな、と御坂の心が叫ぶ。
『君のDNAマップを提供してもらえないだろうか?』
思い出すな、と御坂の心が叫ぶ。
『やはりお姉さまは実験の関係者ではないのですね』
思い出してはならない、と御坂の心が叫ぶ。
『お姉さまから頂いた初めてのプレゼントですから』
思い出したらもう後戻りはできない。
『オマエ、オリジナルかァ』
今なら、まだ、幸せでいられる。
『俺に挑もうと思う事すら許さねえほどの絶対的なチカラ。『無敵レベルシックス』が欲しーンだよ。オマエも超能力者レベルファイブなら分かンだろ?』
今なら、まだ、戻れる。
『一方通行アクセラレータだ。ヨロシク』
まだ、まだ、まだ、まだ、まだ、まだ。
『借り物の身体に借り物の心。単価にして一八万円の実験動物ですから』
まだ、戻れる。
『結局、コイツは私に殺されるために生まれてきたんだ、ってね』
内なる御坂がそんなことをささやく。
『帰したわ。アンタとはサシで勝負したいしね。超電磁砲レールガン』
だが、
『計画というのが絶対能力進化レベルシックスシフト計画を指すのなら予定通り進行中です、とミサカは答えます』
だけど、
『それがこの街の治安を脅かすなら、たとえお姉様が相手でも』
「い・い・え・」
だから御坂美琴は否定する。
「もう……」
不快すぎる。
「そんなことはもう……」
煩わずらわしい。
「こんな幸せは……」
邪魔だ。
「どうでもいいのよ」
こいつらはもはや纏まとわりつく障害にすぎない。
「お姉様?」
だから、
[ピーーー]よ、塵ゴミがっ!!!
躊躇いなど一寸も存在しなかった。
ただ、電流で親友邪魔者を薙ぎ払った。
「ぎ、ぎがぁあああぁあああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああ!!!!!!!!!!」
「お姉様何をッッッ!!!」
これが幻覚なのか、過去の風景を見せられているのか、なんらかの能力によるものなのか、それとも本当の現実なのかはわからない。
どうでもいい。
どうでも、いい。
そんなことは本当にどうでもいい。
春上衿衣とかいうたいしたことない能力者も枝先絆理とかいう弱いだけの人間も佐天涙子とかいう無能な無能力者レベルゼロも初春飾利とかいうハッキングしかとりえのない愚図も白井黒子とかいう煩うるさいだけのルームメイトも、
何もかもどうでもいいしどうでもいい。
大事じゃない。
馬鹿らしい。
こんなことで時間を浪費するなんて。
あぁ、なんて馬鹿さ加減。
無能だ。無能無能無能無能無能。馬鹿屑塵ゴミ塵ちり阿保愚図無能愚劣最底辺能無し愚昧節穴盲目。
一番大事なことを忘れて、都合よく忘却して、幸せな夢を見て、
許されるのかそんなこと。許されていいのかそんなこと。
いいわけないだろうがっっっ!!!!!
しねシネしネシね四ね師音獅根四ネシ禰[ピーーー]シ音四ね4寝シ根4ね4ね4ネ死ネシネ死音しねしねしね死ネシネ[ピーーー][ピーーー][ピーーー][ピーーー]シネシネシネシネシネシネシネシネシネシネシネシネシネシネシネシネシネシネシネシネシネシネシネシネシネシネシネシネシネシネシネシネシネシネシネしねしねしねしね[ピーーー][ピーーー][ピーーー][ピーーー][ピーーー][ピーーー][ピーーー][ピーーー][ピーーー][ピーーー][ピーーー][ピーーー][ピーーー][ピーーー][ピーーー][ピーーー][ピーーー][ピーーー][ピーーー][ピーーー][ピーーー][ピーーー][ピーーー][ピーーー][ピーーー][ピーーー][ピーーー][ピーーー][ピーーー][ピーーー][ピーーー][ピーーー][ピーーー][ピーーー][ピーーー][ピーーー][ピーーー][ピーーー][ピーーー][ピーーー]しねしねしねしねしねしねしねしねしねしねしねしねしねしねしねしねしねしねしねしねしねしねしねしねしねしねしねしねしねしねしねしねしねしねしねしね死死死死死死死死死死死死死死死死死死死死死死死死死死死死死死死死死死死死死死死死死死死死死死死死死死死死死死死死死死死死死死死死死死死死死死死死死死死死死死死死死死死死死死死死死死死死死死死死死死死死死死死死死死死死死死死死死死死死死死死死死死死死死死死死死死死死死死死死死死死死死死死死死死死死死死死死死死死死死死死死死死死死死死死死死死死死死死死死死死死死死死死死死死死死死死死死死死死死死死死死死死死死死死死死死死死死死死死死死死死死死死死死死死死死死死死死死死死死死死死死死死死死死死死死死死死死死死死死死死死死死死死死死死死死死死死死死死死死死死死死死死死死死死死死死死死死死死死死死死死死死死死死死死死死死死死死死死死死死死死死死死死死死死死死死死死死死死死死死死死死死死死死死死死死死死死死死死死死死死死死死死死死死死死死死死死死死死死死死死死死死死死死死死死死死死死死死死死死死死死死死死死死死死死死死死死死死死死死死死死死死死死死死死死死死死死死死死死死死死死死死死死死死死死死死死死死死死死死死死死死死死死死死死死死死死死死死死死死死死死死死死死死死死死死死死死死死死死死死死死死死死死死死死死死死死死死死死死死死死死死死死死死死死死死死死死死死死死死死死死死死死死死死死死死死死死死死死死死死死死死死死死死死死死死死死死死死死死死死死死死死死死死死死死死死死死死死死死死死死死死死死死死死死死死死死死死死死死死死死死死死死死死死死死死死死死死死死死死死死死死死死死死死死死死死死死死死死死死死死死死死死死死死死死死死死死死死死死死死死死死死死死死死死死死死死死死死死死死死死死死死死死死死死死死死死死死死死死死死死死死死死死死死死死死死死死死死死死死死死死死死死死死死死死死死死死死死死死死死死死死死死死死死死死死死死死死死死死死死死死死死死死死死死死死死死死死死死死死死死死死死死死死死死死死死死死死死死死死死死死死死死死死死死死死死死死死死死死死死死死死死死死死死死死死死死死死死死死死死死死死死死死死死死死死死死死死死死死死死死死死死死死死死死死死死死死死死死死死死死死死死死死死死死死死死死死死死死死死死死死死死死死死死死死死死死死死死死死死死死死死死死死死死死死死死死死死死死死死死死死死死死死死死死死死死死死死死死死死死死死死死死死死死死死死死死死死死死死死死死死死死死死死死死死死死死死死死死死死死死死死死死死死死死死死死死死死死死死死死死死死死死死死死死死死死死死死死死死死死死死死死死死死死死死死死死死死死死死死死死死死死死死死死死死死死死死死死死死死死死死死!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!
自死しろ屑が!!!
何様のつもりなの塵屑ごみくずが!!!
馬鹿でのろまで愚鈍で頭も足りない永遠の餓鬼風情が調子に乗ってんじゃないわよッッッ!!!!!
いつになったら成長するのよ!?
いつになったら成長できるのよ!?
いつまで餓鬼のままなのよッ!?
力チカラちから力力力力力アアアアアァァァァ!!!!!
間違えてんじゃないわよ!
違えてんじゃないわよ!
勘違いしてんじゃないわよ!!!
私は、
私が、
ワタシがッ、
ワタシがワタシがワタシがワタシがワタシがワタシがワタシがワタシがワタシがワタシがワタシがワタシがワタシがワタシがワタシがワタシがワタシがワタシガワタシガワタシガワタシガワタシガワタシガワタシガワタシガワタシガワタシガワタシガワタシガワタシガワタシガワタシガワタシガアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアア!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!
誰でもないワタシがッッッ!!!
ワタシがッッッ!!!
助けないとイケナいんでショうガ!!!
シアワセ?
シアワセ?
シアワセ?
何よそれは?
安穏とした平穏を、甘受し享受し与えられたままでいろって?
平凡で価値のある日常をみのきのままに感じればいいって?
ふざけるなっっっ!!!!!
ふざけるなふざけるなふざけるなふざけてんじゃないわよっっっ!!!
許さない。許せない。許せるわけがない。そんなことが、そんなことを許していいわけがない。
責任とか私のせいとかそういうのじゃない。もちろんそれもあるけどそれだけじゃない。
言葉を交わした。行動をともにした。触れ合った。助け合いをした。
思い出せる。
鮮明に明瞭に何一つ欠けることなく思い出せる。
その日々を、その毎日を、その楽しさを、その人を、
覚えてる。
覚えている。
木の下に佇たたずむその姿も一緒に木の上から降りられなくなった猫を助けたことも意味不明な返答に思わず怒鳴ってしまったことも踏み台になって木の上の猫をキャッチした姿も踏み台として蹴られたことも猫のためにスカートをまくり上げていた姿も自分のクローンであることを肯定した発言も発言を無視されて思わず声を荒げたことも一緒にただでアイスクリームを食べたこともそのアイスクリームを横取りされたことも喫茶店で温かい紅茶を飲んだこともその喫茶店の客に双子だと間違われたことも橋の上でガチャガチャでとったゲコ太の缶バッジをあげたこともそのゲコ太の缶バッジのセンスを貶けなされたことも別れの挨拶をさせてしまったことも壊れたゴーグルが道に置かれていた様も地雷が爆発したような爆音も上から列車のようなもので圧殺されたその姿も一方通行アクセラレータに殺されそうになった時に干渉して一方通行アクセラレータを止めてくれたことも上■と話しているときに割り込むようにはなしかけられたこともその後手を引いて上■から引き離したことも実験の中止を否定されたことも思わずその存在を否定してしまったことも。
ワタシハオボエテイル。
あなたがいる。あなたが見てる。あなたを見てる。あなたがいてくれる。
だから戦える。だから俯かない。だから泣かない。だから生きられる。だから笑える。だから乗り越えられる。
そばにいてほしい。そばにいてくれてほしい。そばにいたい。
一緒に共に、一所に友に。
永遠と、永久に、永久とわに、ずっと、
いたい。 イタイ。
あいたい。アイタイ。
『合格』
『予測通りとはいえ、やはり君こそがこの物語の主人公ヒーローにふさわしい』
さぁ、終わりを始めよう。
『せいぜい頑張ってくれ主人公ヒーロー』
この世界という名の物語の
『信じているぞ』
終わりを。
『君なら勝てる、と』
本来ならもっともっと幸せで不幸で絶望的な展開にする予定だったのですが、さすがに助長が過ぎるかなと思ったので、短めにまとめました。
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決着まであと8話前後!!!
御坂美琴と一方通行⑤ 御坂美琴と一方通行
幸せから抜け出すことはそう簡単なことでは無い。
それがどれだけあり得なくて、起こりえないことだったとしても人は幸せが目の前にあれば縋ってしまう。
両親を失った子供、恋人を亡くした男、世界の終わりを見た魔術師、変えられない絶対を認識した愚者。
絶望が深ければ深いほど、人は夢シアワセに縋すがる。
精神の均衡を保つために。見たくない現実から目を逸らすために。もう努力したくないと嘆いているから。
安易な幸せに、目の前にあるシアワセに縋ってしまう。
心が弱いという人がいるかもしれない。心が脆もろいという人がいるかもしれない。
でも違う。違うのだ。
幸せというものは毒だ。麻薬だ。甘美で芳醇で爽快で愉快な味わったら抜け出せない底なし沼だ。嵌ってしまったら、味わってしまったら、ずぶずぶと深く深く沈んでいってしまう罠なのだ。
幸福シアワセになりたいというのは生物が求める根源的欲求の一つだ。その欲求を求めるのは生命体なら当然のことであり、当然の行動だ。逃れられないし、逃れる意味がない。
完全に完成された完璧で完結な理想郷。求めてやまない桃源。
手放すなど、擲なげうつなど、抛かなぐり捨てるなど、打ち捨てるなど、取り捨てるなど、切り捨てるなど、打っ棄うっちゃるなどありえない。
しあわせそれを求めて生きている。金を稼ぐのも権力を手に入れるのも暴力を鍛えるのも突き詰めれば幸せのためだ。
幸福。幸せ。理想。幸い。幸。福徳。果報。
人生はそのためだけにある。
だから、偽りとはいえ夢シアワセを捨てられた御坂美琴と夢幸せに浸って抜けられなかった一方通行アクセラレータでは勝敗は見えていた。
満身創痍の身体でありながら力を振り絞って戦い合う二人の戦いの勝敗は見えていた。
なぜなら、
ボロボロの状態で、拮抗する同種の『力』がぶつかり合う戦いで最後にモノをいうのは、知力でも、体力でも、財力でも、暴力でも、学力でも、活力でも、火力でも、眼力でも、脚力でも、握力でも、腕力でも、金力でも、才力でも、材力でも、識力でも、実力でも、主力でも、資力でも、政治力でも、戦闘力でも、戦力でも、走力でも、足力でも、聴力でも、臂力ひりょくでも、富力でも、武力でも、智力でも、能力でも、脳力でも、判断力でも、兵力でも、魅力でも、膂力りょりょくでもなく。
気力であり、精神力であり、胆力であり、意志力であり、意思力であり、忍耐力であり、心力であり、精力であり、魄力はくりょくなのだから。
気がつけば、御坂は操車場にいた。
先ほどまで見ていた光景はなんだったのだろうか。枝■■■がいて、■■■衣がいて、■天■子がいて、初■■利がいて、■井黒■がいた?あの風景。過去の光景というにはあまりにも矛盾点が多すぎた。
■■の病室を訪ねた時にケーキを持っていたのは■天ではなく初■だったし、道中であんな会話をした覚えはない。ならば、あの風景は何だったのだろうか?
幻覚と断じるにはあまりにも現実的過ぎて、幻想と確定させるにはあまりにもリアルだった。だが、現実というにはありえない光景で、リアル感満載であるが故にどこか空虚。シアワセだったその夢嘘はいったいなんだったのだろうか。
「がっ、ぐッ!ゴハッ―――ゲフ、ぐッッッ!!!――――――くぅ……っっっ……ぁ」
唐突に喉の奥に感じた異物感。その異物を吐き出すかのように御坂はおもいっきり咳きこんだ。
吐瀉物を吐くように喉をふるわせ、窒息しそうなほど喉に詰まっている異物を口から外に出す。
地面に異物が吐き出され、赫く染まった。
「ぅぁ、ぎ、ぎゅぎぃッ……。がッ!かっ……っ」
体中がイタイ。全身が痛い。
耐えられないほどの痛み。体中を毒針で刺されたような痛み。一方通行アクセラレータとの戦闘によって生じた痛みだけではなく、もっと心の奥底に響く痛みがあった。
身体の痛みなどせいぜい四肢欠損程度だ。千切れかかった足、すり傷と切り傷だらけの全身、折れかかった腕、視力のなくなった右目、燃えた髪の毛、その程度だ。御坂美琴なら問題なく行動可能の怪我でしかない。
それよりも、響く痛みは心の痛みだ。
わずかでも幸せに浸かってしまったことによる痛みだ。
「ふっ……――――――ざ、けっ!!!」
あぁ。
あぁ!
あぁ!!!
「ふ、ッざけてんじゃ――――――ないわよッッッ!!!!!」
一瞬でも、一時でもあの光景を見入った自分自身が憎かった。
目的を忘れて、信念を捻じ曲げられて、都合のいい夢を見た自分が心底憎かった。
ふざけるな。ふざけるな。ふざけるな。
オマエいったい何様のつもりだ。妹一人救えないで、妹一万人を殺したくせに一体全体何様だ。
不幸になれ、というわけでは無い。
幸せになるな、という事では無い。
優先順位を間違えるなということだ。
数式としての不等号再設定しろ。御坂美琴>妹達シスターズでは間違ってもない。妹達シスターズ>御坂美琴という不等号を成り立たせなければならないのだ。
でなければ一体なんのためにここにいるのかわからないだろうが。
何のために■井黒■達日常を捨てる決意をしたのかわからないだろうが!!!
認識を確かめろ。誰のためかもう一度考えろ。
この胸に刻んだ誓いは、
絶対に果たさなくてはならない贖罪の証なのだから。
「ふざけんなふざけんなふざけんなふざけんな」
怒りのあまり、御坂は周囲の状況を忘れていた。憎しみのあまり、御坂は現在の情勢を忘れていた。
戦いは、
ま・だ・終・わ・っ・て・な・ど・い・な・い・!!!!!
「オマエがふざけンなよ」
声が聞こえたその瞬間だった。
バギッッッ!!!と御坂の腹に一方通行アクセラレータの血みどろの膝が食い込んだ。
「ぼ、ごァ……?」
忘れていた。
終わったと勘違いしていた。
油断していた。
まだ何も、
何も終わってなどいないのに。
「アハァ、スットライクゥてかあああぁぁぁぁァァァァァァァ!!!!!」
バギリ、と御坂の腹から不気味な音が鳴り響いた。どんなに軽く見積もったとしても絶対に肋骨が折れている。腹に当たった一方通行アクセラレータの足の一撃はベクトル操作能力が使われていることもあり、いともたやすく御坂のことをふっとばした。
「ば、ぐっ、があああああああああぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!!!」
悲鳴を上げたのは蹴られた痛みのよるものではなく単なる反射だ。痛くはないがふっとばされれば悲鳴の一つや二つ上げるモノだろう。
腹に入った一撃もたいしたことはない。せいぜい肋骨がいくつか折れて、内臓の一部が若干機能停止した具合だ。もしかしたら折れた肋骨が心臓に突き刺さったりしているかもしれないが、現状戦ううえではたいして問題では無い。そんな何日も何時間も戦うわけでは無いのだから。
「死っ、ねええエェェェェェ!!!!!!!」
ふっとばされた御坂に向かってベクトル操作で速度を増した一方通行アクセラレータが追いすがる。空中にいる御坂は身体ごとぶつかってこようとする一方通行アクセラレータを避ける手段が存在しない。
いや、もちろん磁力を使って無理やり身体を動かすことは出来るが、それをしても前と同じようにベクトル操作能力と磁力操作能力ではベクトル操作能力の方が移動スピードが速いので逃れられないのだ。
だからといって迎撃することなどできようはずもない。空中にいる今、御坂の能力では一方通行アクセラレータとの接触を回避することは不可能だ。
故に、痛み分けを選んだ。
「っ――――――がっ!!!」
「いぃ……ぎ、ぐぅぅぅぅ!!!」
一方通行アクセラレータはその身体全体を使って御坂への攻撃を行った。回避されたら今までの行動の全てが無駄になってしまう。だから、手とか足とかそういった身体の一部分を使うのではなく体全体を使った攻撃をした。
単純に点の攻撃と面の攻撃はどちらが当たりやすいかという話だ。当然面の方が当たりやすい。故に、一方通行アクセラレータは身体全体で御坂にぶち当たった。
接触の瞬間、御坂の身体の電気信号を逆流させるようなベクトル操作攻撃をした。
対して、御坂も一方通行アクセラレータに対して攻撃を仕掛けた。
といっても御坂は単純に電流と砂鉄を放っただけだ。これだけ長い時間戦い続けていても一方通行アクセラレータは初期に負った切断された腕の怪我からの大量出血死を防ぐための血液循環は続けている。
だから、血液を循環させていることによって普通なら凝固してもおかしくないはずの血は未だに新鮮のままに体の中をめぐっている。前はその血液を通して一方通行アクセラレータの身体に電流を流した。
それは決定打にならなかった。電流が体内に入っても対応された
ならば砂鉄を血流に混ぜてしまえばどうだ?
体内を循環する血液の中に異物を混ぜ込んでしまえばどうだ?
その攻撃は、その攻撃なら、決定打になるのでは……?
そんな皮算用が御坂の中にあった。
「――――――ぁ。――――――が……ッ…………」
互いの攻撃の結果は、互いに傷ついたというものだった。
怪我の具合は全く違ったが。
御坂美琴が軽傷だったのに対し、一方通行アクセラレータはそれなりの怪我を負った。
「ごっ、が…………ッッッ…………」
原因はただ一つ。判断力と思考力の差。
御坂は一方通行アクセラレータに対して有効な戦術をとった。砂鉄を血流の中に混ぜる。これは有効な戦術だった。
一方通行アクセラレータは御坂に対して有効な戦術をとれなかった。体内の電気信号を操って御坂を[ピーーー]。これは最上級の電撃使いエレクトロマスターである御坂にとってはほとんど無意味のことだったのだ。
最上級の電撃使いエレクトロマスターなら当然自らの体内を流れる電気信号位操ることはできる。『電気』信号なのだから当然だ。
御坂が一方通行アクセラレータのことを失念して腹に膝蹴りを一発もらったように、一方通行アクセラレータも御坂が電気信号を操れることを失念してしまっていたのだ。
御坂が一方通行アクセラレータのことを失念した理由は簡単だ。怒りとか後悔とかでぐちゃぐちゃになった感情が自分がいまどうしていたのかということを忘れさせたから。
では、なぜ一方通行アクセラレータは御坂が電気信号を操れることを失念してしまったのか?
(や、べェっ……あンまり、長く持たねェぞ。クソガァ…………)
余裕を演じているが実際のところ一方通行アクセラレータは限界だった。体力精神力ともにとうの昔に限界を超えていた。今まではそれを、特に尽きた体力をベクトル操作能力によってごまかしてきたが、『空白の主』達完全に格上の存在との邂逅によりそのベクトル操作能力を支えていた基盤となる精神力も底をつきつつあった。
体力精神力ともに限界となり、思考力も鈍り始め、判断力すら正常に機能しなくなった。だから、超能力者レベルファイブの電撃使いエレクトロマスター相手に電気信号を操作するなどという軽挙な行動に出てしまったのだ。
だがそれも仕方ない。御坂とは違って一方通行アクセラレータはずっと独りで戦ってきたのだ。疲れ果てても仕方ない。
(く、っ……そたれ、ガァ…………ッッッ!!!後、90秒持つか持たねェかって――――――所か……………)
90秒。一分半。どれだけ長く見積もってもそれ以上は戦闘行動を継続できないと一方通行アクセラレータは判断する。御坂とは違い、もう数時間も一人で戦い続けている一方通行アクセラレータは体力、精神力ともに本当に限界を迎えていたから。
後90秒以内に御坂を殺せなくてはこちらが死ぬ。一方通行アクセラレータは本能的にそれを察知した。
カウンターで待っていることはもうできない。積極的に動いて殺さなくてはならない。じゃないと、負ける。敗北する。しぬ。死ぬ。シヌ。
視線を上げる。視線が交錯する。
そして、双方ともに、
駆けだした。
「ッ――――――ぉぉぉぉおおおおおオオオオオオオオオオオ!!!!!!!」
「ヵ――――――ぁぁぁぁあああああアアアアアアアアアアア!!!!!!!」
人・に・戻・っ・た・二・人・の・戦・い・は・最・終・番・へ・と・突・入・し・た・。
――――――一方通行アクセラレータ戦闘不能まで、残り90秒一分半。
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へ?感想数が減った……?
初めての体験に何気にショックを受けてしまいました……。
御坂美琴と一方通行⑥ 終わりの始まり
「――――――ぐっ、…………っあッッッ!!!………………………ぎゅぃ…………………………ぁ…………」
傷ついた体は赤黒い血を流す。
「ごがァッ!!!ば、ぎゅく…………げ、か――――――――――――」
接触する身体から流れ出た血液は地面を赫く汚す。
「げ、ごぐッ!!!ば、がっ……おぐぃぃぃぃぃぃィィィイイイイイ!!!!!」
壊れた心は傷だらけの身体に呼応するように悲鳴を上げる。
地は割れ空は裂きあたりは崩壊の一途をたどっていた。
激化する戦闘行為。もうとっくに二人の身体は限界を迎えているはずなのに、いったいその闘争心はどこから生まれてくるのだろうか。
例え、ベクトル操作で、電気操作で、体内を駆け巡る痛みを無視できたとしても死へ向かう己の身体を自覚できないわけがないのに。
死。
死だ。
無意識ながらも魔術を使用した影響で全身の血管が爆発し息も絶え絶えとなった一方通行アクセラレータとシアワセを否定した影響で精神が崩壊寸前の御坂美琴。
ともに『神』から『人』へと戻ったとはいえその身体と心に刻まれた傷が治るわけでは無い。重傷は重傷であり、死傷は死傷だ。放っておけば超能力者レベルファイブとはいえ一時間持たないだろう。
病院に今すぐ駆け込み緊急手術を執り行うべきである。
それでも戦っているのはここで負けることが出来ないから。
勝たなければならない理由があるから。
頂点の強さを手に入れて幸せになることを夢見る一方通行アクセラレータ。妹達シスターズを助けるために一方通行アクセラレータを殺さなければならない御坂美琴。
理論立てて説明すればそういうことだが、この二人はもはや自分がなぜ戦っているのかも忘却してしまっているのかもしれない。
「ご、ばっ!!!が、ぎ!!!っ、ぉぉあああああああああ」
戦う理由に縋る時点で人は弱くなる。戦う理由を求める時点で人は弱くなる。
誰かのために戦う人は弱くなる。守るために戦う人は強くなる。
戦いたいから戦う。戦わなければいけないから戦う。
目的があり、理想があり、欲求があり、守りたい人がいる。
戦力の上下というモノは人によって最適解が違う。
守るために戦った方が強い人もいれば、守るために戦えば弱くなる人もいる。理由が無ければ戦えない人もいれば、戦い自体が理由になる人もいる。
誰かのためという免罪符。自分のためという免罪符。
他を、個を、己を、別を。求め、縋り、抱きしめ、狂う。
人。
人間。
人類。
だとすれば、なんとこの種は愚かで、愛おしいのか。
「が、ごっ!!!……っい、ぐぁっ!く、……ま――――――モるッッッ!!!!!」
決意の証を声に出す。
守る。
護る。
まもる。
(もう、誰も)
本心だった。その思いは本当に本心から、
(ワタシ以外の誰も、失いたく、ないッッッ!!!)
狂っていた。
自分本位の逆の考え方。他を第一として考えるその思考回路。これを狂っていると言わないでなんというのか。天秤が他者と自分で他者の方に傾く。その在り方は人間の在り方では無い。
ある種機械的で、圧倒的な主人公ヒーローさ。
もはやその考えは人間では無い。
生物としてどう考えてもおかしい。
なぜなら、普通生物というのは究極的にまで突き詰めれば他人よりも自分を優先する存在のはずだから。
「ごばァッッッ!!!べ、っぉ……が……ご、っぁ……――――――勝、つッッッ!!!!!」
決意の証を声に出す。
勝つ。
克つ
かつ。
(俺がっ、……オレは)
本心だった。その願いは本当に本心から、
(学園都市最強の超能力者レベルファイブだろうがッッッ!!!!!)
純粋に清純だった。汚泥おでいにまみれながらも、汚物をかけながらもなお保たれたその清純さ。
幸せになりたい。
幸福幸せになりたい。
満たされたい。シアワセになりたい。
御坂とは真逆のその考え。すべてを犠牲にしこやしにしても、それでもなお幸せになりたい。どこまでも自分本位でそれゆえに何よりも人間らしいあり方。普通は人間という生物はだれしも一方通行アクセラレータのように自分中心の考えを抱くのだ。
例外はない。
ヒ・ー・ロ・ー・を・除・い・て・。
そう、ヒーローだけは例外だ。ヒーローはこの世で唯一他者を第一に考え行動することが出来る。
救済者ヒーロー、上条当麻。彼は自分よりも他人を優先して考える傾向がある。魔導書図書館Index-Librorum-Prohibitorumインデックスを救う際には明らかに危険とわかっていながらも竜王の殺息ドラゴンブレスを真っ向から受けとめた。
いかに右腕に対異能特化の能力幻想殺しイマジンブレイカーが宿っているとはいえそう簡単にできる行為では無い。腕が折れる可能性も、身体が消滅する可能性も決して低くなかったのだから。
それでも立ち向かったのは自己よりも他者に救いを与える救済者ヒーローの性質があるからだ。
上条当麻の自身に対する優先順位は低い。低すぎるほどに低い。
だからインデックスを救うために躊躇なく己の身を危険にさらせた。
そして、
主人公ヒーロー、御坂美琴。
こ・の・物・語・の・主・人・公・で・あ・る・御・坂・美・琴・も・自・分・よ・り・も・妹・を・優・先・す・る・ヒ・ー・ロ・ー・だ・っ・た・。
(失いたくない)
この極限状況だからこそ御坂は思う。
ミサカ9982号を殺したのは御坂だ。そこからさらにミサカ10031号までの49人の『人間』を殺したのも御坂だ。そして、ミサカ00001号からミサカ9981号までを殺したのも御坂だ。
(これ以上もう、失いたくないっ)
合計1万と31人の『人間』が御坂のせいで死んだ。御坂が殺した。これは一生をかけて償わなければならない罪だ。どんな罰だってこの罪の前には色あせる。
幸せにしなければならない。
幸せにならなければならないのだ妹達シスターズは。
(い・く・ら・で・も・替・え・が・き・く・と・し・て・も・こ・れ・以・上・も・う・失・い・た・く・な・い・ッッッ!!!!!)
拳を振るい、電流を放ち、砂鉄を操作し、電磁波で探査し、コンテナをぶつけ、雷を落とし、叫ぶ。
届かないなら届かせる。敵わないなら叶わせる。今日、この操車場で、一方通行アクセラレータを、確実に、ころす。
全身を血塗れにしている一方通行アクセラレータは、いくらベクトル操作能力を持っているとしてもそう長く戦えないはずだ。いくらなんでも、どう贔屓目ひいきめに見てもダメージを負い過ぎている。
絶対に限界は来ているはずなのだ。
その証拠に。
「っお、ぉぉぉおおおおおおお!!!!!――――――はぁっ、…………はぁっ!!!」
息が荒い。
呼吸が乱れている。
それは限界が近い証。それは限界が来ている印。
このままいけば先に一方通行アクセラレータの方が自滅する、そう御坂は無意識ながらも思ってしまった。
一方通行アクセラレータの方が先に自滅する。私が何もしなくてもしばらく耐えれば、積極的に攻めなくても勝てる、とそんな考えがわずかに、無意識レベルで浮かんでしまった。
そんな甘い考えは油断を生むというのに、その余裕は絶対に、例え無意識レベルでも存在してはいけないのに。
忘れてはならない。この戦いは互いの存在全てをかけているのだ。
にもかかわらず、
そもそも大前提として御坂は一つの可能性を忘れていた。
すなわち、偽装という考えが。
(――――――あと、53秒。十分だぜェ。クソッたれ)
手はうった。方針は立てた。方法論は確立した。勝利までの道筋は描き切った。
今できる最高の演技。今できる最強の攻撃。
後は、それを、放つだけ。
御坂美琴と一方通行アクセラレータは互いに何度もすれ違いあった。その関係性が今やっと交錯する。交錯し、工作されたその関係がやっと終結する。
仮に、
この世界が、
作者誰かによって描かれた、
一つの物語であり、
その結末が、
多数の読者を楽しませるものであるのならば、
きっと、
もう、
結末はとっくに決まっていた。
限界だった。本当に限界だった。これ以上は持たない。体力が持たない。尽きる。尽きてしまう。精も根も尽き果ててしまう。
(つ……ぎ……――――――っ)
思考がまとまらない。でもどうするべきかわかる。勝つためのロジックは組み立ててきた。そのためだけに人を捨てた。
手に入れる。入れて見せる。欲しいものは全部残さず奪いつくして喰い尽す。
だから、進め。動け。前に出ろ。
ここが分水嶺ぶんすいれい。天下分け目の分水嶺。
神から人へ戻った御坂と一方通行アクセラレータが戦闘を開始してから62秒後。唐突に二人は大きな距離をとった。
「「―――――――――――――――――――――――――――――――――…………………………………………………………………………………………」」
二人は直感していた。
きっと本当に本当の意味でこの交錯が最後の戦闘になると。数時間にもわたって戦い続けてきた戦いが終わると。
「………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………」
一方通行アクセラレータの身体は既に満身創痍以上といってもいい。まずわかりやすい外傷として右腕の消失。全身に擦過傷プラス切り傷。右目、左足、左腕、眼窩がんか、内臓器官の6割、左耳、右耳、頭皮、手足の爪の内12個、指6本、思考能力、逃走本能、精神状態、判断力、すべて疾患有り。血塗れの血みどろ、五体不満足で死に体
対して御坂美琴の身体の状態はあ・り・得・な・い・こ・と・に・ほ・と・ん・ど・軽・症・と・い・っ・て・も・い・い・も・の・だ・っ・た・。めだつ外傷といえば、せいぜい全身の擦過傷と切り傷だけ。それにしたって血管が爆散したような状態の一方通行アクセラレータほどではない。
怪我は確かに、千切れかかった足、折れかかった腕、視力のなくなった右目、燃えた髪の毛と多岐にわたるがそれだけ。こんな長時間命がけの戦闘を行ったにしてはあまりに軽症すぎる。
一方通行アクセラレータのようにベクトル操作能力を持っていない御坂がこの程度の傷でいられるわけがないのに。
「「―――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――」」
タイミングは同時だった。
明確な合図はなかった。
この場の誰もが狂っていた。
二人は駆けだした。
御・坂・は・後・ろ・に・、一・方・通・行・は・前・に・。
「――――――っ!!!」
故に当然一方通行アクセラレータもその行動を予期していた。
「シイイィィィィィィィィッッッ!!!!!」
腕を振り、風を操り、御坂に向かって飛ばす。といっても飛ばした風の軌道は御坂に直撃するものでは無い。直撃軌道というモノは避けてしまえばそれで終わりである。故に、一方通行アクセラレータは御坂の行動を制限するように、御坂の体の左右に向かって風を放った。
「ッッッ!!!!!」
不可視の風の攻撃を肌で感じた御坂は一瞬一方通行アクセラレータの後方へと視線をやった。そしてさらにさがる速度を上げる。
(これ……な、ら……)
トン、と。あるいはストン、と御坂は大きく地を蹴って後方に突き進んだ。目に見える一方通行アクセラレータの移動速度から逆算すれば御坂が一方通行アクセラレータに追いつかれることはない。
さすがの一方通行アクセラレータも疲れ果てている。殺し合いの始まったころのような機動力は発揮できていない。対して、御坂は違う。妹達シスターズのいる御坂はいまだ8割ほどの力を発揮できている。故に、現在の一方通行アクセラレータから逃げることが出来
て・い・る・よ・う・に・見・え・た・。
「っ、ぉ」
距離が詰まる。計算よりも早く、演算よりもずっと近くに一方通行アクセラレータが近づく。その理由は酷く単純で、とても当たり前の理論。
偽装。
一方通行アクセラレータは自らの体力の消費具合を偽装して御坂に『これ以上の速度は出せない』と思い込ませた。ただがむしゃらに腕を振るい、足を回していたころの一方通行アクセラレータとは違う。
明確な思考、思想、目的、目指すべきものがある。モチベーションが違う。
つまる距離と近づく狂気を前に御坂はあきらめたように嗤った。
そして、
そして、
そして、
「ぁ」
ドブリ、と漆黒の大地に立った一方通行アクセラレータのその腕が御坂の心臓がある部分を貫いた。
御坂は一方通行アクセラレータの一撃を避けなかった。
だから、これで決着がついた。
勝利が確定した。
終わった。
――――――一方通行アクセラレータ戦闘不能まで、残り18秒。
そういえばこの小説、原作別の総文字数ランキングで一ページ目に乗っていました。まだ一章終わってないのに。
禁書蹂躙のためにオリキャラの設定を20万文字書いた超大作だぁ
https://syosetu.org/novel/56774/93.html
御坂美琴と一方通行⑦ もう一人の襲撃者
ドブリ、と心臓を貫き御坂の体の反対側まで貫いた一方通行アクセラレータの腕を御坂はただ客観的にみていた。
明確な終わりを実感できた。この体に宿る唯一の命が尽き果てていくのを自覚できた。
「ァ、かっ!!!ごっ、がハ…………」
血液と吐瀉物が入り混じったものが口から吐き出される。それこそ御坂の生命が終わる証であり、この場の勝者が一方通行アクセラレータに決まった瞬間だった。
「――――――――――――――――――――――――――――」
胸を貫いたその勢いのままに一方通行アクセラレータは御坂の体内に存在するあらゆるモノを逆流させる。血液は当然として細胞や筋繊維、シナプスに生体電流すらも逆にした。
当然、生体電流の逆流は電撃使いエレクトロマスターである御坂に及ぼす影響は皆無といっていいが、その他の逆にされたものは等しく御坂の身体を蹂躙じゅうりんした。
「っ、がっ――――――こ、れっれで……」
何か、御坂の口から言葉が零こぼれ落ちる。
だがもはや御坂にできることはない。心の臓を貫かれ、全身を逆にさせられた御坂に出来ることなどない。後一瞬、ほんの刹那の間に御坂は死体となり果てるだろう。
断言できる。
胸を、身体を、心臓を貫かれ、血流を、細胞を、筋繊維を、シナプスを、生体電流を逆にされた御坂が一方通行アクセラレータに出来ることはもはやない。
絶対に確約できる。
この場の天秤は一方通行アクセラレータに傾いた。この傾きがさらに揺れることなど決してない。
御坂は死ぬ。
御坂は死亡する。
御坂にできることはもはや何もない。
死ぬシヌしぬ。
その命を散らし、死ぬ。
そう、
御・坂・は・負・け・た・の・だ・。
御・坂・は・、負・け・た・。
御・坂・は・!!!!!!!
襲撃はあまりにも唐突だった。
ズドンッッッ!!!!!という音が聞こえた。
空間を光が裂いた。
一方通行アクセラレータの右腕は消失しているので使えない。一方通行アクセラレータの左腕は御坂を貫いていて使えない。一方通行アクセラレータの左足は地面に立つために使われていて使えない。一方通行アクセラレータの右足なら使え、
ガギイイイイィィィッッッッッ!!!!!
地・面・が・沈・ん・だ・。
(ッッッ!!!??)
驚きではなく予想外の事態への混乱が思考をよぎった。まるで狙いすましたかのように一方通行アクセラレータの立っている地面が沈んだ。
なぜ、と理由を考えることもなく一方通行アクセラレータの頭脳はその現象への回答を導き出した。一方通行アクセラレータは既に一度この現象を体感していたのだ。
土と入れ替わった砂鉄のせいで立っている地面が沈んだ。その単純明快な事実を一方通行アクセラレータの頭脳はいとも簡単に導きだした。
思い出されるのはあの時の光景。御坂との最初の交錯。
(――――――――――――)
そう、あの時も御坂は砂鉄を使って一方通行アクセラレータの足元を沈めてきた。今回もそれと全く同じだった。
御坂が一方通行アクセラレータから離れるように下がったのは逃げるためでは無い。一方通行アクセラレータの足場を崩し、も・う・一・人・の攻撃を確実に一方通行アクセラレータに当てるためだ。
策は成った。
罠に嵌はめた。
右腕、左足、左腕、右足。一方通行アクセラレータの四肢はすべてもう一人の一撃に対して対処不可能になった。
故に、
だから、
キイイイイィィイィイイィィィイイイイィィィィィィィィィィィィィィィィィィィィっっっ!!!!!!!!!!
い・と・も・簡・単・に・も・う・一・人・の・そ・の・一・撃・は・反・射・さ・れ・た・。
「予想してなかったと」
左腕に貫かれて死亡した御坂は通じると思っていたのだろうか?
こんな幼稚で簡単な一撃が、成長した一方通行アクセラレータに本気で通用すると思っていたのだろうか?
だとしたら、
舐めるな、と一方通行アクセラレータは言いたかった。
「予想してなかったと、本気の本気で思ってたのかァ?オマエは」
砂鉄による姿勢崩し。あぁ確かに有効だったさ。戦闘当初の一方通行アクセラレータなら有効だった。間違いなくもう一人による一撃は当たっていた。
御坂が一方通行アクセラレータから離れるように下がったのは逃げるためでは無い。一方通行アクセラレータの足場を崩し、も・う・一・人・の攻撃を確実に一方通行アクセラレータに当てるためだ。
策は成った。
罠に嵌はめた。
右腕、左足、左腕、右足。一方通行アクセラレータの四肢はすべてもう一人の一撃に対して対処不可能になった。
故に、
だから、
キイイイイィィイィイイィィィイイイイィィィィィィィィィィィィィィィィィィィィっっっ!!!!!!!!!!
い・と・も・簡・単・に・も・う・一・人・の・そ・の・一・撃・は・反・射・さ・れ・た・。
「予想してなかったと」
左腕に貫かれて死亡した御坂は通じると思っていたのだろうか?
こんな幼稚で簡単な一撃が、成長した一方通行アクセラレータに本気で通用すると思っていたのだろうか?
だとしたら、
舐めるな、と一方通行アクセラレータは言いたかった。
「予想してなかったと、本気の本気で思ってたのかァ?オマエは」
砂鉄による姿勢崩し。あぁ確かに有効だったさ。戦闘当初の一方通行アクセラレータなら有効だった。間違いなくもう一人による一撃は当たっていた。
だが、もう一度言うが舐めるな。学園都市超能力者レベルファイブ第一位一方通行アクセラレータを舐めるな。
一方通行アクセラレータは気付いていた。気が付いていたのだ。
も・う・一・人・、こ・の・操・車・場・に・御・坂・の・協・力・者・が・存・在・す・る・こ・と・に・!!!
「だとしたら」
左腕は御坂を貫いているから使えない。右腕はそもそも今の一方通行アクセラレータにはないので使えない。左足は身体を立たせるために使用中で使えない。右足は砂鉄によってバランスを崩されたせいで使えない。
左腕は御坂を貫いているから使えない。右腕はそもそも今の一方通行アクセラレータにはないので使えない。左足は身体を立たせるために使用中で使えない。右足は砂鉄によってバランスを崩されたせいで使えない。
だがそれはすべて、もう一人の襲撃者の一撃を四肢を使って防ぐ場合だ。
五体の全てを使って防ぐのであれば体のバランスが崩れようと関係ない。
もう一人の襲撃者の一撃は御坂の連携だった。御坂が態勢を崩させ、その後襲撃者が一方通行アクセラレータの千切れた右腕の断面を狙って攻撃を加える。意識をシンクロさせているからできる完全で完璧なコンビネーションだった。
そこに一方通行アクセラレータが行動を起こさなければきっとその一撃は決まっていた。
「だとしたら、なァ」
一方通行アクセラレータが起こした行動は簡単なモノだった。自らの力、といっても今は疲れのせいもあって演算能力は低下し、最低限の『反射』と少しのベクトル操作しかできないが、その力を使用し地面と接触している左足で大地を爆散させただけだった。
地面を爆散させたことによって一方通行アクセラレータの態勢はさらに崩れ、もう一人の襲撃者による一撃は右腕の断面ではなく『反射』の適用された一方通行アクセラレータの身体に当たった。
だから、一方通行アクセラレータは無事だった。
「俺も、ずいぶン軽く見られたもンだなァ!!!!!」
ガギリ、と首を鳴らしながら一方通行アクセラレータは後ろから攻撃してきた襲撃者を見るためにふりかえった。
一方通行アクセラレータがもう一人の襲撃者の存在に気付けたのはその前の御坂との戦闘のおかげだ。意識が明瞭だったとは言えないがそれでも『神』の『力』を使っていたあの時、一方通行アクセラレータは一度『力』同士のぶつかり合いで『神』の『力』を手にした御坂に負けた。
『力』の質では勝っていたのにも関わらず負けた。『力』の量の関係で負けた。
あ・の・場・に・は・御・坂・と・一方通行アクセラレータの・二・人・し・か・い・な・か・っ・た・は・ず・な・の・に・。
一対一サシでは負けないはずだった。
つまり一対一サシではなかった。
いたのだ。
誰かが。
いたのだ。
誰か、が。
一方通行アクセラレータでもなく御坂美琴でもない第三者。もう一人の人間がいた。それを一方通行アクセラレータは気付いていた。
同時に思考した。その第三者が一方通行アクセラレータに襲撃をかけるならいつなのか、どのタイミングで攻撃を放ってくるのか。
答えは簡単に出た。
決まっている。一方通行アクセラレータが御坂を殺したタイミングだ。
なぜならばそのタイミングならば一方通行アクセラレータは安心していて、油断している。御坂敵対者の排除が済んで、一瞬気が抜ける。
だったらそこだ。そのタイミングで襲撃がかかる。そう一方通行アクセラレータは読んだ。
そして、実際にそれは正しかった。
襲撃は起きた。一方通行アクセラレータはその襲撃を防いだ。『反射』出来た。
(さァ、誰だ?誰がいる?)
振り返る。
振り返る。
振り返って、
そして、視線がソイツを捉えた。
「
は
」
「そもそもの話として『人間』とは何だろうか?」
「人間。そう人間とはなんだ?」
「人間。人間だ。人間。人と間」
「広辞苑第六版から引用すれば人間とは『(社会的存在として人格を中心に考えた)ひと。また、その全体』。Wikipediaの人間の項目から引用すれば『(社会的なありかた、人格を中心にとらえた)人。また、その全体』。Goo国語辞書の人間の項目からから引用すれば『1ひと。人類。2人柄。また、人格。人物』」
「あぁ分かりにくいことこのうえないな。もっと分かりやすく記載してくれよ」
「ここはひとつ僕が人間を定義づけてやろう。分かりやすく、単純に」
「人間とは何か?人とは何か?」
「その基本的な、基礎となる条件を上げていこう」
「まず、第一条件として人間らしい身体を持っていることだろう。すなわち、骨格、筋肉、皮膚、四肢、内部器官、血管や神経、呼吸器系、内臓、五臓六腑、指、爪、髪、へそ、毛、生殖器、眼球や下、耳に鼻、さらに髭や腱などが『人』としての形をたもっている、ということが一つ目の条件として挙げられるだろう」
「次に第二条件としては言語だ。言葉を交わせる。言葉を話せるという事。英語でも日本語でもドイツ語でもラテン語でもフランス語でもロシア語でも中国語でも韓国語でもスキタイ語でもエジプト語でもオスク語でもサンスクリット語でも何でもいいが、とにかく他者との意思疎通が高いレベルで可能であるという事」
「第三条件は頭脳。考えることが出来る、というのは他生物でもできるが、『人間』ほど思考できる生物はほかにいない。モノを作り、造り、加工し、想像し、創造する。そのすべてを実行できる生物は『人間』のほかにはそういないだろう」
「まぁ、他にも条件はあるが大方こんな所でいいだろう」
「では、人間を定義づけたところで次の話題だ」
「我々人類は知り合いが知り合いであるという事をどうやって判断しているのか?」
「その人が『その人』であると、どう判断しているのか」
「分かりやすく言おう」
「ここにAAαあーえーあるふぁという人物がいるとする。AAαあーえーあるふぁはBBβびーべーべーたという人物と友人である。これを基本条件とする」
「では問題。AAαあーえーあるふぁは出会った人物がBBβびーべーべーたであるということをどうやって判断するのか?」
「顔がBBβびーべーべーたの顔ならばBBβびーべーべーたと判断してしまうのだろうか?いやしかし、もしも仮に整形手術などでほかの人物がBBβびーべーべーたの顔を持ってしまったら、その人物もBBβびーべーべーたとなりうるのか?」
「ありえない、と否定しよう」
「では顔がBBβびーべーべーたの顔であるという条件にさらに付け加えて体つきもBBβびーべーべーたのものだとしたらどうか」
「これでもまたあり得ない。他の人物がBBβびーべーべーたとなることはできない」
「なぜか」
「なぜなのか」
「記・憶・の・問・題・が・あ・る・」
「記憶」
「人間の記憶」
「仮にその人物の顔と体型がBBβびーべーべーたと同じものだとしても、AAαあーえーあるふぁがその人物と会話をすれば、その人物がBBβびーべーべーたではないと分かる」
「分かってしまう」
「何故ならその人物にはBBβびーべーべーたとしての記憶が無いから」
「故に、その人物はAAαあーえーあるふぁを騙せない。会話が成立しない」
「共通しているはずの思い出が、一緒に過ごした記憶が無いから」
「だから、どれだけ形が似ていてもその人物とBBβびーべーべーたは結局別人だ。まぁ、当然と言えば当然のことだが」
「別人だ」
「別人」
「別の人」
「別人」
「ではここで一つ、考えを変えてみよう」
「姿かたちが同じでも、『記憶』、つまり外からは見えない内面が違うのならばその人物とBBβびーべーべーたは同じとは判断されない」
「では逆に」
「外面はもちろん『記憶』を含めた内面すらも同一ならば」
「その人物とBBβびーべーべーたの見分けは、はたしてつくのだろうか」
「別人と判断できるのだろうか」
「AAαあーえーあるふぁを、友人を騙せるのだろうか」
「つまるところ、今回の第一章はそういう話だ」
さて、もう一人の襲撃者の正体はだれでしょう?
次の更新は3日後です。
ヒントはすべて出ているぞ。
答えはすぐそこまで来ている。
考えを放棄するなよ愚図が。
張り巡らされた伏線の真実を明かされるのを唯々諾々と待っているんじゃない。
なぜ考えない愚か者?
どうして思考しない馬鹿なのだ?
考えろよ考えろ。
大丈夫だ問題ない。
なぁに心配などないさ。
信じているぞ信じているさ。
https://syosetu.org/novel/56774/94.html
協力者の正体は……
御坂美琴と一方通行⑧ 悍ましき悪
『それ』を見た瞬間一方通行アクセラレータはすべてを理解した。
『それ』を見た瞬間一方通行アクセラレータはすべてに恐怖した。
(こ、こ、こっ、コッ――――――イ、ツ――――――――――――ッッッ!!!!!)
言葉が出ない。
言葉にならない。
言語化できない。
言語にならない。
(あっ、あ、あ、あ、っぁ、ぁ、ああ、あ、あ、ああ、あっ)
恐ろしい。
恐ろしい。
恐ろしい。
怖い。怖い。怖い。
否。
恐怖以上だ
なんだこれ?
なんだこれ?
なんだこれは?
(頭おかしいンじゃねェのか!!!!!)
狂っている、では足りない。
狂気に満ちた、では足りない。
化物、と罵ることさえまるで足りない。
もっと前段階。そもそも同じ人間なのか、と疑問を持つ段階だ。陳腐な言葉で形容するならば人外じみた、魑魅魍魎の精神性。
ありえないと百回言って、
狂っていると千回言って、
頭がおかしいと万回言って、
狂気に満ちたと億回言って、
それでもなお、まるで足りない。
薬ヤクでもやっているのか?それとも極限の恐怖で精神ココロが壊れたか?
否。
否否否!!!
違う。これで正常だ。これで正しい。これこそが彼女の在り方。彼女の精神性。
偽らざる真の心本心。
「ひ――――――ぁ――――――」
喉が、干上がった。カラカラと口の中がどうしようもなく乾く。消失した右腕の代わりに一方通行アクセラレータの左腕で心の臓を貫かれ、全身の全てを逆流されて耐えがたい痛みを感じながら死亡したはずの御坂美琴の死に顔がそれを物語っている。
ありえない。
ありえてはならない。
オマエは、
そんな、
そんなにも、
そこまで、
そうまでして、
オマエは、
「あはは」
嗤っていた。笑っている。哂っていて、ワラッテいた。
その死に顔は、形容しがたいほどに歪に歪んだ笑顔だった。
あぁ嘘だろう。
嘘だと言ってくれよ。
信じられないあり得ない。
ふざけるなよ。あり得るのかそんなことが。
どうしてそんなことが出来る。
どうしてそんな真似が出来る。
なぜだなぜなぜ。
なぜなんだ。
オマエは人間だろう?
オマエだって人間だろう?
なのに、それなのに、
どうして、
どうしてそんなことが、
どうしてそんなことができるんだ。
(つまり、………………)
見誤っていたということだろうか。そういう事なのだろうか。一方通行アクセラレータは御坂美琴を、
否、
『御坂美琴』を見誤っていた、とそういう事なのだろうか。
きっと、そうなのだろう。一方通行アクセラレータは見誤っていた。『御坂美琴』のことを見誤っていた。
その思いの深さ、覚悟の強さ。メビウスの輪のように摩訶不思議でありながら四次元超立方体のような意味不明さを兼ね備えた上でクラインの壺さながらの理不尽具合を持ったその複雑怪奇な精神性を見誤った。
(だから、……………………………)
見誤って、誤った。対応を、選択を間違えた。
勝つためならばそもそも最初にあった時に、ミサカ9982号を殺したその時に御坂美琴のことも殺さなければならなかったのだ。放置しておくべきでは無かった。殺さなければいけなかった。
だが、それはあまりにも酷だ。あの段階でこの状況を予想しろなど、どんな天才でも不可能に違いない。それこそ未来予知でもできない限り予想できるわけがない。
故にこの結末は決まりきったもの。ただ唯一、一方通行悪党が辿る地獄への道筋。落石は、一方通行アクセラレータを煉獄へと堕とした。
「あァ」
ある意味では諦観が、
ある意味では後悔が、
ある意味では達観が、
一方通行アクセラレータの胸の中に満ちた。
このただ一つの狂気に満ちた真実を、視線の先に存在する絶望の悪夢を、一方通行アクセラレータは正しく認識する。
見た。
観た。
視認した。
認識した。
認知した。
視線の先には誰がいたのか。
今明かそう。
暗く昏い瞳を携えながら、暗黒の闇夜に立つ『彼女』。
『彼女』は茶髪だった。
『彼女』は常盤台の制服を着ていた。
『彼女』は生まれたばかりの存在だった。
五体満足でありながらも数千を超える死を経験し、心身健常でありながらも常に傷付いている。
『彼女』は武器など持っていない。
『彼女』は防具など持っていない。
『彼女』は戦闘の手助けになるものなど何一つ持っていない。
『彼女』は逃走の手助けになるものなど何一つ持っていない。
それでもこの場所に立つのはただ一つ。この胸に抱える大切な人モノがあるから。
無くしたくないと叫び、亡くしたくないと喚わめいた。
あぁ、つまりそういうこと。
この場で、
この時に、
一方通行アクセラレータの視線の先に立つその人の名は
「御坂、美琴」
静かに、一方通行アクセラレータは呟いた。
その女の名を。
一方通行アクセラレータにとっての死を。
人間とは唯一無二の個である。
悪党だろうが善人だろうが罪人だろうが聖人だろうが男だろうが女だろうが幼子だろうが老人だろうが大人だろうが黒人だろうが白人だろうが混血だろうが大統領だろうが首相だろうが議員だろうが秘書だろうが統領だろうが首領だろうが頂点だろうが底辺だろうが中間だろうが理事長だろうが校長だろうが寮監だろうが甥だろうが姪だろうが幼馴染だろうが犯罪者だろうが青少年だろうが少女だろうが未成年だろうが成人だろうが宗教家だろうが狂信者だろうが同性愛者だろうが差別者だろうが馬鹿だろうが賢者だろうが美だろうが醜だろうが障害者だろうが健常者だろうが重篤患者だろうが黒髪だろうが白髪だろうが金髪だろうが銀髪だろうが色黒だろうが極道だろうが外国人だろうが劣化模造品だろうが。
その唯一性、その絶対たる個性、それはあいまいではなく確かに一人一人に存在している。
個性、そう個性だ。
確たる個を誰もが持っている。
生まれ出でたばかりの赤子だろうとその唯一性は変わらない。
顔、体重、年齢、身長、生年月日、名前、美醜、努力因子、頭の出来、対人コミュニケーション能力、対人関係、親の有無、友人の多さ、抱えた病、かかった病、歩んだ道のり、過去、現在、身体つき、視力、聴力、味覚、触覚の過敏さ、髪量、爪の長さ、肌の色、国籍、人種、海外渡航歴、足力、運動能力、頭脳、恋人の有無、読書量、職業、趣味、職歴、預金額、好きな服装、好みの食べ物、好みの飲み物、瞼が一重か二重か、虫歯の有無、好きな番組、支持する政党、嫌いな人物、
すべてが同じという事などあり得ない。絶対にありえないし、あり得てはならない。
だってそうだろう?
すべてがすべて、一切の差異無く同一であるというのならば、個の唯一性が揺らぐ。揺らいでしまうではないか。
ドッペルゲンガーを見たら死ぬのはそのドッペルゲンガーが何か特殊能力を持っていたからでは無い、自分自身が二人いるという現実を否定するために主とドッペルゲンガーが殺し合い結果として一人しか残らないから死ぬのだ。
個の唯一性は絶対に重要なモノだ。自らの代わりとなる個体が存在することを自覚してしまったら彼らは殺し合わざるを得ないだろう。
なぜか?
自・分・自・身・の・代・わ・り・が・い・る・と・い・う・事・が・許・せ・な・い・か・ら・だ・
代替品が存在するという事実は自らが存在しなければならないという事実を揺るがす。替わりがいるのだからお前がいなくても問題ない。代わりがいるのだからお前が死んでもその続きがある。
それを普通の人間は認められない。
個人を個人として成立させるただ一つの個性。自分自身の代わりがいるなど、そうしたら自分がここに生きた意味が失われてしまうではないか。この努力もこの生もこの感情もこの生き様もすべて偽物だと思ってしまうではないか。
だれもが嫌だと否定するだろう。
誰もがふざけるなと泣き叫ぶだろう。
誰も、誰しも、自が確たる個であると信じ、信じたいのに。
御・坂・美・琴・は・そ・れ・を・自・ら・放・棄・し・た・。
放棄したのだ。御坂美琴は。
なにせ人間はただ唯一の個性をもつ個体。替わりのきかない絶対の個。
それを放棄すればもはやそれを人間であることを捨てたも同義。
なのに、
だというのに、
躊躇いなく捨てた。躊躇なく捨て去った。
そこまでして、そうまでしても妹達シスターズを助けたかったのだ御坂は。御坂美琴は救いたかったのだ。
そう救いたかった。
救いたっかた救いかたった。
すくいたく救いたう救いた救い救いs喰いたたたたたたttatatbsy化初スカイすくいすかういすかういすかうい救い救い救いsukuisukuいいししいいいぃぃぃいいいいイイィイsukuiiiiiiiiiiiiiiiiiiiiiiiiiiiiiiiii救済きゅさい救済救済救済救済救済救済救済救済救済救済救済救済救済救済救済救済救済救済救済救済救済救済救済救済救済救済救済救済救済救済救済救済救済救済救済救済救済救済救済救済救済救済救済救済救済救済救済救済救済救済救済救済救済救済救済救済救済救済救済救済救済救済救済救済救済救済救済救済救済救済救済救済救済救済救済救済救済救済救済救済救済救済救済救済救済救済救済救済救済救済救済救済救済救済救済救済救済済済済済済済済済済済済済済済済済済済済済済済済済済済済済済済済済済済済済済済済済済済済さいさいさいさいさいさいさいさいさいさいさいさいさいさいさいさいさいさいさいさいさいさいさいさいさいさいさいさいさいさいさいさいさいさいさいあしあししししししししししししいいいいいいいっきいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいイイイイいいいいいイイイイイイイイイイぃぃぃぃぃいいいいぃぃいいいxゐィゐィイイィィイい!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!
「だぁいじょ、じょう、じょうぶぶぶぶぶよぉ」
救いを救いを救済を救い救命して救い救済助けて救って救命して救助するするっするruるるるうう救済救済救出救命助命命命みみゑ名い命助助け助名命命救う約sやくskk約束kyuuuuうううう種出出出命出命助救出救命救済救済助命助ける助ける助ける助ける助ける助ける助ける助ける助ける助助助助助助助助助助助助助助助助助助助助助助助助助助助助助助助助助助助助助助助助助助助助助助助助助助助助助助助助助助助助助助助助助命命命命命命命命命命命命命命命命命命命命命命命命命命命命命命命命命命命命命命命命命命命命命命命命命命助助助助助助助助助助助助助助助助助助助助助助助助助助助助助助助助助助助助助助助助助助助助助助助助助助助助助助助助助助助助助助助助助命命命命命命命命命命命命命命命命命命命命命命命命命命命命命命命命命命命命命命助助助助助助助助助助助助助助助助助助助助助助助助助助助助助助助助助助助助助助助助助助助命命命命命命命命命命命命命命命命命命命命命命命命命命命命命命命命命命命命命命助助助助助助助助助助助助助助助助助助助助助助助助助助助助助助助助助助助助助助助助助助助けぇえええええええええええええぇぇえええぇええぇえぇえええええええええるんるんるんるるるるるるるるるうううううううう!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!
「ワタシガカナラズ」
妹思う妹妹妹妹いむおおもうとおうお妹妹妹妹達シスターズ妹達シスターズ妹達シスターズ妹達シスターズいもうおtおiomouい思うと妹妹妹妹達シスターズ妹達達達達達達達達たたたtaああああああああァァァ唖唖唖唖唖アアァッァアアアアアaaたちちっちちっちいちいいちちちちちち妹達シスターズズズズズ妹達妹行こうと妹妹妹いもうtおいもう妹妹妹妹妹妹妹妹妹妹妹妹妹妹妹妹妹妹妹妹妹妹妹妹妹妹妹妹妹妹妹妹妹妹妹妹妹妹妹妹妹妹妹妹妹妹妹妹妹妹妹妹妹妹妹妹妹妹妹妹妹妹妹妹妹妹妹妹妹妹妹妹妹妹妹妹妹妹妹妹妹妹妹妹妹妹妹妹妹妹妹妹妹妹妹妹妹妹妹妹妹妹妹妹妹妹妹妹妹妹妹妹妹妹妹妹妹妹妹妹妹妹妹妹妹妹妹妹妹妹妹妹妹妹妹妹妹妹妹妹妹妹妹妹妹妹妹妹妹妹妹妹妹妹妹妹妹妹妹妹妹妹妹妹妹妹妹妹妹妹妹妹妹妹妹妹妹妹妹妹妹妹妹妹妹妹妹妹妹妹妹妹妹妹妹妹妹妹妹妹妹妹妹妹妹妹妹妹妹妹妹妹妹妹妹妹妹妹妹妹妹妹妹妹妹妹妹妹妹妹妹妹妹妹妹妹妹妹妹妹妹妹妹妹妹妹妹妹妹妹妹妹妹妹妹妹妹妹妹妹妹妹妹妹妹妹妹妹妹妹妹妹妹妹妹妹妹妹妹妹妹妹妹妹妹妹妹妹妹妹妹妹妹妹妹妹妹妹妹妹妹妹妹妹妹妹妹妹妹妹妹妹妹妹妹妹妹妹妹妹妹妹妹妹妹妹妹妹妹妹妹妹妹妹妹妹妹妹妹妹妹妹妹妹妹妹妹妹妹妹妹妹妹妹妹妹妹妹妹妹妹妹妹妹妹妹妹妹妹妹妹妹妹妹妹妹妹妹妹妹妹妹妹妹妹妹妹妹妹妹妹妹妹妹妹妹妹妹妹妹妹妹妹妹妹妹妹妹妹妹妹妹妹妹妹妹妹妹妹妹妹妹妹妹妹妹妹妹妹妹妹妹妹妹妹妹妹妹妹妹妹妹妹妹妹妹妹妹妹妹妹妹妹妹妹妹妹妹妹妹妹妹妹妹妹妹妹妹妹妹妹妹妹妹妹妹妹妹妹妹妹妹妹妹妹妹妹妹妹妹妹妹妹妹妹妹妹妹妹妹妹妹妹妹妹妹妹妹妹妹妹妹妹妹妹妹妹妹妹妹妹妹妹妹妹妹妹妹妹妹妹妹妹妹妹妹妹妹妹妹妹妹妹妹妹妹妹妹妹妹妹妹妹妹妹妹妹妹妹妹妹妹妹妹妹妹妹妹妹妹妹妹妹妹妹妹妹妹
「タスけテあげ婁るカラ」
べギ
…………………………狂気を表現する方法のバリエーションが私の中にあまりないなぁ……。こんなんじゃただの駄作だこれ…………。
文字量についてはパソコンでみたときに画面がいっぱいになるぐらいの文字量のはずです。スマホならスクロールが面倒でしたよね。ごめんなさい。
さて、そろそろ御坂美琴を理解した人はいるかな?
https://syosetu.org/novel/56774/95.html
話し進まねぇ……。
一方通行② 地獄の最下層よりも下
絶叫しなかった自分自身を褒めてあげたかった。
「―――――――――――――っ!!!!!!!!!!!!!」
全力で逃走した
もはや同じ人間には思えなかった。
(怖い)
貫いた御坂から腕を抜いて、最低限の『反射』すら移動のためのベクトル制御にまわして、ただひたすらに走った。
どこに、という意識すらなくただひたすらに奔った。
闘争という意識はもはや脳の中のどこにも無く、逃走という意識だけがただ身体を動かした。
ふざけるな、とここに来た自分自身をぶん殴りたかった。こんな恐怖を、心臓を直接握りしめられたような死絶の怖気を感じるくらいならばもはや一刻も早く、一瞬でも早く死んでしまいたいとすら思った。
畏怖とか絶望とかそんなレベルでは無い。この世の全言語を総動員し、万象すべての生物に存在する感情をかき集めたところで一方通行アクセラレータの感じるこの思いに匹敵することはないだろう。
脳のエネルギーの全てを、あらゆる演算機能のほとんどをただ逃走にのみまわした。千切れた右腕から血液があたりにまき散らされるが、もはや一方通行アクセラレータは一顧だにしない。
「――――――はっ、はっ、はぁ、ハァ、っあ、が……るァ、おィ、弐――――――逃、げ、げっえぇぇェぇええ、おええええええええぇぇぇえええぇぇ!!!!!」
擦り傷切り傷刺し傷かすり傷うち傷咬み傷突き傷逃げ傷古傷向こう傷掻き傷生傷すべてがすべてどうでもいい。
右目左目右足左足右耳左耳鼻口唇舌爪手指足指肝臓腎臓盲腸胃心臓膵臓脾臓大動脈大静脈肺静脈肺動脈小腸大腸十二指腸広背筋上腕二頭筋僧帽筋眼輪筋水晶体虹彩三半規管静脈動脈毛細血管膀胱口輪筋三角筋橈側手根屈筋縫工筋大腿二頭筋大殿筋頸椎胸椎腰椎胸骨肩甲骨筋繊維髪額喉歯項踝踵膝肘足裏肌上顎骨下顎骨鼻骨涙骨後頭骨前頭骨側頭骨頭頂骨形骨篩骨耳小骨舟状骨月状骨三角骨豆状骨指紋指関節食道肺胞生殖器眉顎耳朶瞼角膜視神経中心窩前房後房硝子体視神経乳頭黄班脈絡膜鼓膜聴神経耳管耳殻外耳道蝸牛意識している暇は無い。
今は早く、速く、一刻も早く逃げないと離れないと外に行かないと戻らないと。
じゃないとじゃないとじゃないとじゃないとじゃないととととととととととと!!!!!
「ばっ、ごォ!……ァ、っ――――――オウガァアアァアアアアアぁああぁぁぁぁぁぁああああああああアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアああああああアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアア!!!!!」
スピードで言えばベクトル操作能力の全てを移動するために使っている一方通行アクセラレータに御坂美琴が追いつけるわけがない。だから、このまま逃げ続けていれば必ず逃げとおせる。
はずなのに、
だというのに、
「――――――――――――ッッッッッ!!!!!!!」
この胸に感じる正体不明の圧迫感はなんだ?
この胸を撫でる言語化不能の威圧感はなんだ?
なんだ?なんで?これは?こんな?こんなことに?
「ひ、ひ、ひァ……ひひゃ、ひッっっ―――――――!!!!!」
死ぬのが怖いと思ったのはこれが初めてでは無い。改良版音響式能力演算妨害装置キャパシティダウンバージョンベータで『反射』を破られて超電磁砲レールガンの直撃を受ける羽目になったあの時だって死への恐怖は感じた。
だから、別に死ぬのがそこまで怖いと思っているのではないのだ。
だけど、
脳に直感するものがあった。
きっと、たぶん、おそらく、今の御坂にあったら死ぬよりもひどいことになる。具体的にどうなるかまではわからないが、それでも直感は絶対につかまってはならないと叫んでいた。
生きたまま解剖されるよりもひどいことが起こる予感がした。
故に、逃げる。奔る。逃走する。
捕まったらヤバい。つかまりたくない。
嫌だいやだ嫌だ嫌だ嫌いや嫌嫌嫌だイヤダイヤダ。
こんなふざけた終わりは、こんなふざけた終焉終わりは、いやだ。
超能力者レベルファイブの誇り?
そんなものはどうでもいい。
学園都市の中で最強の一方通行アクセラレータ?
ここで死なないなら最弱になっても構わない。
前人未踏の絶対能力者レベルシックス?
そんなものはもういらない。
だからああ、神様どうかお願いします。
今だけでいいんです。この戦いを生き残れたらもう悪さはしません。慈善事業に尽くしますボランティア活動に精を出します宗教団体に寄付金を上げます信仰心を積み上げます。
だからあぁ、どうかいまだけ俺を、
俺を――――――。
ドサッ、と大地を強く踏みしめるような音が聞こえた。
「――――――――――――――――――っっっっっ!!!!!!!!!!!」
思わず、といっていいのだろうか。一方通行アクセラレータのその足が地面を離れ、一方通行アクセラレータのその身体が地面に縫いついた。
だが、一方通行アクセラレータは人間である。御坂美琴とは違って純粋に純朴な人間である。故に、その呼吸を、心音を止めることなどできはしない。
故に、一方通行アクセラレータは気付かれないようにゆっくりと、ゆっっっくりと足を踏み出して前に進もうとして
ぬるべちゃ、と赫いインクが一方通行アクセラレータの全身に付着しついた。
「――――――ァ?」
左腕を前に掲げる。
だから、存在しない右腕の代わりに、あかい左手の甲を舌で舐めた。
チノアジガシタ。
「え、はえ???な、――――――ェ?」
血?チ?血液?血痕?
「どう、……なン――――――は?????」
血液が外に流れ出ていた。なぜだ?
一方通行アクセラレータは失血していた。どうして?
いや、そうではなく、そうではなく。
そんなことはどうでもよくて。
「ァ、に――――――逃げ、ねェ…………と」
そうだ逃げないと。生きたいから逃げないと。
逃げない、と。
そのためにはまず二本の足を前に進めて、そして……。
「…………?」
あれ?
どういう事だろうこれは?
なんだろうこれ?
顔が、あかく、染まって?
血?
血液?
地面が冷たい。
なんで地面に張り付いているんだ?
なんだ?
いつのまにやら地面が90度回転して壁になったのか?
いや、違う。
それは違う。
目の前に赫い大地があるのは一方通行アクセラレータが倒れているから。
倒れているのは一方通行アクセラレータだ。
「――――――ひ――――――――――――ぃ――――――」
人は極限状況下では見たくない光景を見ないことが出来る。出来てしまう。心を守るためにも、認識したくない事実から目を逸らす。
だが、この状況でも一方通行アクセラレータは現実から目を逸らせなかった。
今まで体験した中でも一番の地獄だとしても、この状況に近い地獄を一方通行アクセラレータは何度も見たことがあったから。
特例能力者多重調整技術研究所では多重能力者デュアルスキルを実現させるために何人もの子供が薬物付け状態にされ人体実験を行われた。
プロデュースでは自分だけの現実パーソナルリアリティが脳のどこに宿るかを調べるために生きたまま解剖された子供がいた。
光陰の三月実験では脳細胞を直接いじくり肉体及び精神的に二つの能力の特性を取り込ませる暗闇の五月実験の前身のような実験が行われた。
すべて、見てきた。
泣き叫ぶ子供を、狂い喚わめく少女を、絶望した少年を、舌を噛み千切って自殺しようとした幼女を、現実から目を逸らして空想の両親に縋った幼児を、
一方通行アクセラレータは見てきた。
見てきただけだった。
体験したことなどなかった。だって一方通行アクセラレータは一位だったから。最強無敵の第一位サマだったから。
だから、真に正しく現実を認識できた。
も・う・、
一方通行アクセラレータは・能・力・が・使・え・な・い・。
ベ・ク・ト・ル・が・操・作・で・き・な・い・。
「あ、あぁ、あっ、あぁああ、ぁ、ぁあ!あ、あ、あ、あ……ああぁ、あ!あ?!ああぁああぁあああ!!!!!???」
大地に倒れ伏してしまったのは転んだからでは無くベクトル操作能力を使えなくなってしまったからだ。いや、厳密に言えば完全に能力が使えなくなったわけでは無い。今現在も最低限中の最低限ではあるが痛みを制御するための体内ベクトル操作は使えている。
しかし、逆を言えばそれしか使えていないという事。今の一方通行アクセラレータは全能のベクトル操作をただ痛みの制御にしか使えないという事。
つまり限界だ。
数時間にわたって戦い続けた限界がついに来た。複数人で交代しながら戦い続けた御坂に対して一方通行アクセラレータは独りだった。故に、真の限界が来てしまった。
質と量の戦いで量が勝った。その結果である。
ベクトル操作ができない一方通行アクセラレータなどもはやただの少年以下である。痛みの制御しかできない一方通行アクセラレータの右腕から血液が滝のように流れていく。このままでは5分と知れず一方通行アクセラレータは死ぬだろう。
「ぁ――――――や……………………ァ」
ベクトル操作能力が使えないのならば、なおさらこの場所から一刻も早く脱出しなければならない。薄れゆく意識の中で、靄もやのかかる思考回路が、それでもなお一方通行アクセラレータに危機感を訴えていた。
もはや、立ち上がることすらできない。
ならば、這いずってでも前に進むしかない。
この場所にはいたくない。
左ひざを曲げて、右つま先で血地を蹴って腹をどす黒く染めながら、左手を前に出して、大地を掴み体を引きずり右手を
(……あァ、右腕は、無いンだっけかァ)
ならしょうがない。もう一度左ひざを曲げてあかく身体を汚しながら地面を這いずり前に、前に、前に。
一心不乱に一所懸命に一生懸命に前に先へ奥へ。
這いずって進んだ地面は右腕から流れ出る血液のせいであかい軌跡となっていた。そのあかい軌跡をたどれば御坂はいつでも一方通行アクセラレータのもとに辿り着けるだろう。
なのに、右腕を止血できないのは物理的な問題ともう一つ、心理的に一方通行アクセラレータがその程度の怪我に構っていられなかったからだった。
「は――――――ひゅっ!!!は、ひぁはッ……はぁ……っ……はぁっ」
進む。進む。進む。進め。
前へ。前へ。前へ。前に。
先に。先に。先に。先へ。
「ひ、――――――っごハっ!げ、げゅごひョがッッッ!!!!!」
喉の奥に痰でもたまったのか息苦しく感じた一方通行アクセラレータは左手を口の中に突っ込み喉にたまった何かを無理やり吐き出した。
固まり切ったアカグロイ血が何度も何度も地面に吐き出される。
「ゼ――――――ひゅ、ひゅぅ、ひ!……ぜェ、ゼェ、ギュっ!!!…………………………あッ――――――――――――――――――――――――――ごっ、がアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああ!!!!!!!!!!!!!!」
今、一方通行アクセラレータを守っていた最後のベクトル操作が切れた。痛覚の操作が切れた。
だから、
あぁ、だから、
もはや痛みしか感じない。
呼吸ができない。
足も動かない。
額をつたう血が目に入り、視力さえもなくなってきた。
見えない聞こえない感じない触れない動けない――――――でも痛くて。
何も誰も彼も我も――――――痛いと叫んでいた。
痛い。こんな痛みはあんまりだ。イタイ。イタイ。イタイ。
寝そべった地面がただひたすらにあかく染まる。流れ出た血液がすべてをただ赫に……。
そして対照的に白くなる意識。白くなる思考。
その白は、まるで最初の絶対能力進化実験レべルシックスシフトが行われた部屋のようだった。白い部屋に赤い血が彩られたあの景色。今の一方通行アクセラレータはまるで、あの部屋で倒れ伏したミサカ00001号と同じような格好だった。
「い…………や、だァ………………………」
涙が出た。
悲しくてしかたが無かった。
胸に去来するただ一つの想い。
胸を埋め尽くすただ一つの願い。
それすらもう叶うことは無くて。
「死に……た、く、――――――ねェ」
泣いて、泣いた。滝のような涙を一方通行アクセラレータは流した。痛みに埋め尽くされた思考の中、それでも生を求めるその姿はいっそ滑稽で、どうしようもなく嘲笑の対象になるだろう。
けれど、本気だった。
一方通行アクセラレータは生まれた初めて本気で願った。思った。
死にたくない――――――――――――――――と。
私の中ではたぶん今までで一番うまく書けたと思われ。
https://syosetu.org/novel/56774/96.html
今まで張りに張った伏線を回収する話です。
一章最大の山場といってもいいかもしれません。
御坂美琴の『死』、その真相がついに明らかになります。
御坂美琴と一方通行⑨ 『御坂美琴』という名の全
もう一度、いや何度だって一方通行アクセラレータは手を伸ばす。もうない右腕の代わりに左腕をのばし、もう走れない両足の代わりに腹を引きずる。
達磨ではないがもはや達磨といってもいいほどに動かない四肢の代わりに、口を使って前に進み、腹を使って先へ行き、股を使って脱出しようとした。
その行動はもはや本能すら超越した極限の衝動といってもいいのかもしれない。思考は明滅し、本能は埋没し、今自分が何をしているのかさえ分かっていない。
それでも動いているのは何よりも『生きたい』から。どうしたって『生きたい』から。
今、この場を、ただこの場を生き残りたいと希こいねがったから。
「――――――」
この無様な姿の一方通行アクセラレータを見ていったい誰が彼を学園都市最強の能力者だと思うだろうか。血にまみれた身体に四肢の砕けたその姿、全身が砂利に塗れ憐れなほどに悲し気なその姿を見ていったい誰が一方通行アクセラレータを一方通行アクセラレータだと思える?
その姿は学園都市第一位にしてはあまりにも、あまりにも孤独だった。
「―――――――――――――――――――ァ―――――――――」
ビクン、と一方通行アクセラレータの身体が小さく震えた。
痙攣けいれん、した。
左腕はもう動かない。右腕はもうどこにも無い。左足も右足もいつのまにかその機能が失われた。喉には固まった血が詰まり、動脈静脈毛細血管あらゆる場所から血が噴き出て、五感はその機能を半分以上停止させ、能力すら先ほど使えなくなった。
進みたいのに進めない。
逃れたいのに捕まった。
逃げたいのに逃げられない。
もう、もはや、何も感じない。感じられない。暗黒の世界の中でそれでもなおただ一つ感じることが出来たのは全身が訴える極限の痛みだけ。
終わる。
終わってしまう。
こんな孤独に。たった独りで。
何も残せず、何も守れず、何も言えず、何も――――――。
「ね・ぇ・」
いや、
まだ終わらない。終わらないのだ。
なぜならこの場には一方通行アクセラレータのほかにももう一人、
否、
もう『ひとり』生命体女がいる。
「ど・う・、死・ぬ・感・触・は・」
上から声が聴こえた。
仰向けに身体を転がして声の主を下から見やる。
「――――――さカ、み…………とォ」
言葉は声にならなかった。
極限の痛みの果てには絶対の死御坂美琴が待ち受けていた。
「ざまぁ、無いわね」
御坂は死の直前にいる一方通行アクセラレータに歩み寄りながら、静かに語りかける。嘲笑と嗤笑、そしてもう一つの笑いをこめて。
そこには一切の躊躇いも無かった。一方通行アクセラレータは瀕死の重傷とはいえまだ生きているのに、御坂はほぼ無警戒で一方通行アクセラレータに近寄った。
だって、分かっていたから。
もう、勝った狩ったと分かっていたから。
それは油断でも余裕でもない。御坂美琴はもはや一方通行アクセラレータの前に五体をさらすことに何の不安も覚えていなかった。
なぜならもう目の前に倒れる一方通行アクセラレータは、その血みどろの姿からわかるように本当に死ぬ寸前だったから。放っていても数分後には死ぬ存在に油断も余裕も感じることはない。
もう、勝者は決まっているのだから。
「 」
重ねて言うがここからの逆転はない。
例え、絶対にありえないことだが一方通行アクセラレータが再び立ち上がり復活し目の前にたたずむ御坂を殺したとしよう。
この『御坂美琴の身体』を壊したとしよう。
でもそれだけだ。一方通行アクセラレータには『御坂美琴の身体』を[ピーーー]ことは出来ても『御坂美琴』を[ピーーー]ことは出来ない。
だから、勝者は決まっていた。あの時御坂美琴が一度目の死を迎えた時点で勝者は御坂美琴に決まっていた、。
総体とミサカ19090号が仕掛けた策は『御坂美琴』を不滅の怪物にした。
「……………………………………………………………」
終わってい逝く体で、一方通行アクセラレータは一つ、御坂美琴のことを考える。
妹達シスターズのために人を捨てた。妹達シスターズの怪物になった愚かな少女。
思い、おもった。
(もしも、)
と、考える。
違いはたくさんあった。
例えば性別。例えば人間関係。例えば住んでいる領域場所。
例えば能力。例えば抱える傷跡。例えばこの場所にいる理由。
例えば、
例えば――――――、
例えば……………………。
戦うことの意味。
誰かのためという免罪符と自分のためという免罪符。狂わされた人生を取り戻したかった。終わっていく世界に色を付けたかった。
きっと同じ。もう同じ。
身・体・を・放・棄・し・て・ミ・サ・カ・ネ・ッ・ト・ワ・ー・ク・の・中・に・生・き・る・思・考・生・命・体・と・な・り・果・て・た・御・坂・美・琴・も・同・じ・だ・っ・た・。
あの時、
総体とミサカ19090号が御坂美琴に接触したあの時。
御坂美琴は『人間』を捨てた。『人間』であることを放棄した。
生身の器うつわを、その身体を捨てた。
だから、何度でも蘇り、黄泉帰り、生き返ることが出来たのだ。
身体が死んでも心は死ななかったから。体がなくなっても記憶は亡くならなかったから。
話そう。
その悍ましき悪の理論を。
人の誇りを捨てた悲しき少女の運命を。
罪に汚れた少女の贖あがないと償いの行動を。
咎人は、ここにいた。
人を構成するものは大きく分けて二つ。身体と心、この二つである。
では、御坂美琴のことを話そう。御坂は改良版音響式能力演算妨害装置キャパシティダウンバージョンベータを使って放った必殺の超電磁砲レールガンを一方通行アクセラレータに避けられてその五体を散らし死亡したが、総体とミサカ19090号の協力もあってなんとか生き返った。
そして、超電磁砲弾きクロッシングレールガンを放ち一方通行アクセラレータに重傷を負わせた後も、『神』と化した一方通行アクセラレータの書き換えた『世界』に押しつぶされて消滅した。
都合二度、御坂は死亡している。二度目に至っては完膚なきまで消滅している。
さて、
さてさてさて、
ここで一つ勘違いを正しておく。
もしかして、こんな風に思っている人がいるのではないだろうか?
勘違いをしてしまった人がいるのではないだろうか?
御・坂・美・琴・が・生・き・返・っ・た・の・は・同・一・の・身・体・で・あ・る・と・。
つまり、御坂の心臓が停止してもう一度動き始めたあの時のように、御坂が死亡した後にその身体で生き返ったと思っている人がいるのではないか。
はっきりと否定しよう。
それは違う、と。
御坂美琴が生き返ったのは同一の身体では無い。別の身体である。
御坂は死ぬたびに、生き返るたびに『別の身体』にのり換えていった。
厳密には違うが分かりやすく言うのならば、魔術の手法にもある憑依をイメージしてくれると分かりやすいだろう。その心を、人格を、魂を別の身体にうつす。禁忌にして禁断の悍おぞましきモノである。
御坂は自分自身の身体が壊れるたびにその『心』、『魂』を移し替えたのだ。
妹達シスターズの身体に。
つまり、
だから、
記憶。
御・坂・美・琴・は・ミ・サ・カ・ネ・ッ・ト・ワ・ー・ク・の・中・に・あ・る・御・坂・美・琴・の・人生魂と・い・う・名・の・記・憶・を・妹達シスターズの・身・体・に・う・つ・す・こ・と・に・よ・っ・て・擬・似・的・な・蘇・り・を・し・た・の・だ・。
かつて学園都市で行われていた実験『プロデュース』の研究によれば、超能力者の持つ能力とは『霊魂が宿った肉体』に宿るモノであり、その『肉体が小さくなればなるほど能力の出力が落ちる』という結果が出ている。
つまり、霊魂がある肉体に能力が宿るというのだが。
例えばの話。
肉の器うつわだけを作った後に、そこに別の人間の記憶やら知識やら反射やらを学習装置テスタメント等で入れたのならば、
その器の魂は誰のモノになるのだろうか?
肉体を持つ元の人物かそれともうつされた別の人物か、いったいどちらのものなのか。
つまり、
もう一度言うと、
御坂美琴の記憶やら知識やら反射やらをミサカネットワークを使って、生産された妹達シスターズの身体に入力したのならばその魂は誰のものなのかという問いだ。
そして、その問いの答えはもう示されていた。
答えは単純で、
そ・の・魂・は・御・坂・美・琴・の・も・の・と・な・っ・た・。
故に、『御坂』は妹達シスターズの身体で超能力者レベルファイブ級の能力を使うことが出来たのだ。能力とは『霊魂が宿った肉体』に宿るモノだから魂が『御坂美琴』のものである妹達シスターズの身体は超能力者レベルファイブの電撃使いエレクトロマスターの力を使えた。
いや、
本末は最初から転倒していたのかもしれない。
一方通行アクセラレータがこの事実に気付いたのはつい先ほど、腕で貫いた御坂美琴の死体と共に目線の先の御坂の姿を見たからだったが、実はヒントはもっと前に出ていた。
例えば、改良版音響式能力演算妨害装置キャパシティダウンバージョンベータを使って放った必殺の超電磁砲レールガンを一方通行アクセラレータに避けられてその五体を散らし死亡したあの時も。
生き返ったあの時は御坂美琴の粉みじんになったはずの五体は五体満足だった。
例えば、超電磁砲弾きクロッシングレールガンを放ち一方通行アクセラレータに重傷を負わせた後も、『神』と化した一方通行アクセラレータの書き換えた『世界』に押しつぶされて消滅したあの時も。
消滅したはずの御坂はいつの間にか一方通行アクセラレータの前にいた。
勘のいい人ならばきづけただろう。御坂美琴の抱えたその異常に。
でも気付けなかった。一方通行アクセラレータは気付けなかった。
つまりその程度だったのだ。一方通行アクセラレータは。一方通行アクセラレータの異常性は。
一方通行アクセラレータの異常性と御坂美琴の異常性愛では、御坂美琴の方が上だった。個を捨て、自我を放棄し、己を壊した御坂の精神は一方通行アクセラレータを超越した。
まずもって、現在の『御坂美琴』は白井や上条などの知る御坂美琴ではない。 20002体目に生産された妹達シスターズに御坂美琴の記憶やらなんやらを付け加えた存在である。
もはや『御坂美琴』という全を[ピーーー]ためにはミサカネットワークの中の『御坂美琴』の記憶を消去するしかない。
それを理解したからこそ一方通行アクセラレータは逃げたのだ。
その狂気にあてられた。
「うふふ」
狂ったように嗤う。
「あはは」
狂ったように哂う。
「ははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははは!!!!!」
そして御坂美琴は一方通行アクセラレータに電流を放った。
この話を読んでも御坂の状態がわからない人がいたらごめんなさい。作者の文章力不足です。一応この後にもっと詳しい説明が待っているので、そこまで待っていてくれると幸いです。
気付いているかは分かりませんが、御坂がこの状態になるに至って現段階ではかなりの矛盾が生じていますから、その矛盾の解消も含めてそこで全部説明します。
次の更新は4日後です。
そういえば新約16巻、試し読みを読むにいつになくヤバそうな事態が起きているようですね。
ここからどうやって常盤台を絡めてくるのか、期待大です!
https://syosetu.org/novel/56774/97.html一般的な感性からするとかなり惨い描写があります。注意してください。
御坂美琴と一方通行⑩ 報い
バギリッ!と電流が空を裂き一方通行アクセラレータの体に当たった。
「――――っ――――――――ォ―――」
ビビクンッ!と一方通行アクセラレータの身体が震える。だが、それは痛みによってでは無い。電流が当たった衝撃で体が地面に叩きつけられたからだった。
もはや、一方通行アクセラレータは痛みを感じることはない。現在でさえ痛みで埋め尽くされているのに、これ以上の痛みを与えられたところでいったい何を感じろというのか。もはや思考のほとんど全てが激痛で埋め尽くされた一方通行アクセラレータに、痛みの飽和状態が起きた一方通行アクセラレータに、これ以上の痛みを与えることは無意味である。
「[ピーーー]しね死ネシネしねシネしネシね[ピーーー]シネ[ピーーー][ピーーー][ピーーー][ピーーー][ピーーー][ピーーー][ピーーー][ピーーー][ピーーー][ピーーー][ピーーー][ピーーー][ピーーー][ピーーー][ピーーー][ピーーー][ピーーー][ピーーー][ピーーー][ピーーー][ピーーー][ピーーー][ピーーー][ピーーー][ピーーー][ピーーー][ピーーー]」
だというのに御坂は一方通行アクセラレータに電流を打ち続ける。一方通行アクセラレータがその行為に何も感じていないことは御坂だって分かっているはずだ。ならば、その行為の意味は果たして何なのか。
無意味であるとは思えない。
意味がないはずがない。
「[ピーーー][ピーーー][ピーーー][ピーーー][ピーーー][ピーーー][ピーーー][ピーーー][ピーーー][ピーーー][ピーーー][ピーーー][ピーーー][ピーーー][ピーーー][ピーーー][ピーーー][ピーーー][ピーーー][ピーーー][ピーーー][ピーーー][ピーーー][ピーーー][ピーーー][ピーーー][ピーーー][ピーーー][ピーーー][ピーーー][ピーーー][ピーーー][ピーーー][ピーーー][ピーーー][ピーーー][ピーーー][ピーーー][ピーーー][ピーーー][ピーーー][ピーーー][ピーーー][ピーーー]」
だから、なのだろうか。
悪寒が奔る。一方通行アクセラレータの脳が嫌な予感を察知する。
ヤバい。
ヤバい。
ヤバい。
何か、何かとてつもないことが、起きるような、そんな、感じが……っ!!!
「苦・し・ん・で・死・ね・」
その瞬間だった。
「―――――――――――――――ヵ」
一方通行アクセラレータの人生の中でも最大の苦痛が体中を駆け巡った。
「ガアアアアアァァァァアァアアァァアアァアアアアアアアアアアアアァァアァアァアアァアアァアアアアアアアアアアアアアァアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアア!!!!!!!!!!!!!!?????」
あえて言葉で表現するのならば、その苦痛は体中に存在する痛点という痛点に一秒に100回のペースで太さ十センチ以上の針を1000か所以上同時に刺されているような感覚に近い。
チクリチクリと刺される針も太さが十センチもあり、秒間100回のペースで、1000か所以上同時に刺されれば、信じられないほどの激痛になる。
比較対象として挙げるのならば、スプーンで目玉を直接抉られるほどの痛みと表現される、生きているうちに味わえる最悪最低の痛みである『自殺頭痛』こと『群発頭痛』と同レベルの痛みが一方通行アクセラレータを襲っていた。
「あはっ、まだ悲鳴をあげられるじゃない」
「ひや――――――まっ、」
一方通行アクセラレータは御坂美琴が何をしたのか気付いた。
気付いてしまった。
そう、そういうことだ。
御坂は電撃使いエレクトロマスターの超能力者レベルファイブ。その能力は直接的な電気はもちろんのこと、磁力、ローレンツ力、電子、電磁波、砂鉄等を操ることもできる。さらに、クラッキングやハッキングも可能である。
そして、
人間の体内を流れる電気信号を操ることも、当然可能である。
つまり、もはや痛みの感覚がマヒした一方通行アクセラレータの身体に流れる電気信号を直接操作して、痛みの感覚をとりもどさせ、さらに鋭敏化することが可能なのだ。
一方通行アクセラレータはそれに気づいた。
だから、
「左腕ぇ」
ざくり、と砂鉄の剣が突き刺さる。
「嗚呼唖唖唖唖ああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!!!!!!!」
「右足左足ぃ」
「い、が、ぁ、た―――――――たゅ、に、やひゃ」
「右目も、もういらないわよねぇ……?」
「ひ、――――――ひひ、あひゅへ、あ、ォ、さゆ、っむひゃけ」
「じゃあ、次は生爪でも剥いでいこうかしら」
「ぁ、あ、………ぁ……ぃ……やぁ、……っあ、きァ」
「肺も左右に一つずつあるし、一つぐらいなくなっても生きられるわよね」
「……………ぁ、……いあ………ぃ…………ァ」
「そろそろ、皮膚でも剥むいてみる?大丈夫、膾のように斬ってあげるから」
「…………」
「お次は舌ね。知ってる?口の中っていろんな神経が通っているらしいわよ」
「……………………」
「後は内臓とか、ぐっちゃぐちゃにかき混ぜれば少しは妹達シスターズが味わった痛みも理解できるんじゃないの?」
「…………………………………………………」
「ん?」
「………………………………………………………………………………………」
「―――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――ア?」
「……………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………」
まだ、ほとんど何もしていないのに勝手にくたばりそうになっている一方通行アクセラレータを見て、御坂は一瞬でぶち切れた。
グチャグチャになっている一方通行アクセラレータの首を掴み、そのまま絞めながら体をつり上げ鬼の形相で怒鳴る。
「何勝手に死のうとしてんのよッッッ!!!……アンタにはまだ、まだまだ、まだまだまだまだまあぁぁぁぁぁあだだだぁああああぁぁぁぁああ、報いを受けさせないといけないんだからああああああああああああ!!!!!!!!」
電流を突っ込みさらに一方通行アクセラレータの痛覚を鋭敏化しながら、御坂は再び一方通行アクセラレータに対する攻撃拷問を始めた。
イカレタ狂人御坂美琴の裁きは終わらない。
ザシュ、 ザシュ、 ジャリ、ガリ、 ジャリ、ザシュ、 シュッ、シャァ、 パシュッ、 シュア、ザシュ、ジャリ、
シュッ、
パシュッ、ジャリ、ザシュ、ザシュ、スポン、ジャリ、シュッ、ザシュ、ストン、ポロン、 ザシュ、シュッ、スポン、
シュア、パシュッ、 ストン、ザリ、ジャリ、ジャリ、ザ シュ 、シュッ、 ザシュ、シュア、 シャァ、ザシュ、パラン、パシュッ、 シュッ、シャァ、 ザシュ、ザリ、ジャリ、パシュ、 ザシュ、ザシュ、ザシュ、 ザシュ、ザシュ、ザシュ、 ザシュ、ザシュ、ザシュ、 ザシュ、ザシュ、ザシュ、 ザシュ、ザシュ、ザシュ、 ザシュ、ザシュ、 ザシュ、ザシュ、 ザシュ、 ザシュ、 ザシュ、ザシュ、ザシュ、ザシュ、 ザシュ
内臓が外に飛び出ている。腕が裏返ってしまっている。目玉があるべき場所に存在せず、刳り貫かれた眼球の中に黒い砂鉄が丸い状態で入っていた。足と手の全ての爪は剥ぎ取られ、まるで礫のように体に突き刺さっている。皮膚という皮膚はもはや存在せず赫黒い血肉が浮き出ていた。体毛はすべて抜かれ、砕けた足からは骨が飛び出ていて、その骨すらも無理やり曲げられていた。左手首は断ち切られ、そこからとめどなく血が流れ落ち地面を赤い地面をさらに赫く汚す。口の中には自らの眼球やら爪やら肉やら髪やらが詰め込まれ、このままではいずれ呼吸困難に陥ってしまうだろう。
この惨状をなしたはずの御坂ですら思わず目を逸らしたくなるような、そんな光景。
「……はぁっ、ハッ、はぁ、はぁ…………ははは、――――――ざまぁ、みなさいよ」
御坂は凄惨な光景に凄惨な笑みを浮かべた。復讐はなった。仇かたきはとれた。仇あだを撃てた。非常に非情に満足できた。
苦しみの悲鳴が、狂気の合唱が、悲惨に飛散するその肉片が、御坂に満足感を与えた。
目の前に転がるのは一方通行アクセラレータの死体。
滅殺され捌かれ切り分けられたその身体が御坂のなした狂気の所業を如実に示していた。
勝った。狩った。克った。刈った。駆った。カッタ。かった。
かったから、さらに解すコロス。
わずかに残った理性の中にある記憶から御坂は一方通行アクセラレータを殺した後のことを引っ張り出す。あのステルスヘリの中で与えられた刹威の指示を実行するために、御坂は砂鉄の剣を右手に生み出した。
「…………………………は」
一瞥して、その御坂の意思を体現したような色合いの剣を一方通行アクセラレータに向かって
降りおろ
ふと、気が付いた。
「…………どぅ…………し………て……………?」
いや、
違う。
私・は・こ・ん・な・こ・と・が・し・た・か・っ・た・わ・け・で・は・無・い・……?
そもそも、
なのに、
なぜ?
な、ぜ?
「……………………………………………………………」
そもそも論として妹達シスターズを一刻も早く助けるのならば、一方通行アクセラレータを必要以上に攻撃する必要はなかったはずだ。眼球を抉ったり、左手首を切ったり、体毛を抜いたり、爪や皮膚を剥いだりする必要は無かったはずだ。
なのに、御坂はそれを行った。
なぜか?
怒りに我を忘れていたから?
そうではないだろう。確かに、御坂は怒っていた。だから一見その意見は正しく思える。しかし、御坂は優先順位を再設定したはずだ。自らの復讐心よりも妹達シスターズの安全を優先する心意気だったはずだ。
ならば、怒りに我を忘れたわけでは無いだろう。
狂気に身を浸し過ぎたから?
それもまた違う。繰り返すが御坂は優先順位を再設定した。自らの復讐心よりも妹達シスターズの安全を優先する心意気だった。
だから、例えどれほど狂っていても一方通行アクセラレータを拷問するのはあり得ないはずなのだ。
御・坂・美・琴・は・絶・対・に・そ・ん・な・こ・と・を・し・よ・う・と・は・思・っ・て・い・な・い・。
つまり、御坂にその行為を行わせたのは、『御坂美琴』という全ではなく……。
「………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………ぁ」
目の前の
死体から
が
聴
こ
え
た
「――――――――――――――――ッッッッッ!!!!!」
直感的に5メートルほどの距離をとった。
まったくもって意味が解らなかった。
これだけ壊して、解ばらして、崩して、殺したのに。
それでもまだ生きているんなんて、
しぶといとか生き汚いとかそんなレベルじゃない。
不死か?こいつは?
そう思わずにはいられないほどに異常だった。
どれだけの怪我を負っていると思っているのだ。もはや能力だって満足に使えないはずだ。
なのに、なのに、だというのに、
まだ生きているなんて。
まだ、生きることが出来るなんて。
いや、もちろん生き残れはしないだろう。一方通行アクセラレータの怪我の具合から言ってどう考えても絶対に死ぬ。それは確定的に絶対的だ。だけど、それを言ったらもう死んでいないとおかしい。今現在の時間軸の段階で生命活動を停止していないとおかしい。
にもかかわらず生きている。その事実自体が絶対にありえない『もしも』を考えさせて、御坂の警戒心を誘った。
(……落ち着け)
死んでいないだけだ。
死んでいないだけ。
生きているだけだ。
生きているだけ。
何も心配する必要はない。何も警戒する必要はない。もう一方通行アクセラレータは立ち上がれない。動けない。攻撃できない。復活できない。『もしも』は無い。そんな可能性はない。絶無皆無零空虚無。不安を覚える必要はない。
だから落ち着け。
もう一度ちかづいて、今度こそ確実に殺せ。
殺せ。殺害しろ。抹殺しろ。
「ふ―――――――ぅ――――――」
一歩一歩警戒を怠らずに御坂は歩を進めた。身に宿したはずの狂気はいつの間にか薄れ、瞳は正気の色を灯していた。
故に、御坂は確かな理性に操られながら一方通行アクセラレータのそばに行き、今度こそという思いを掲げる。
手に漆黒の剣を持ち、心を純白の悪に染め、5メートルの距離をゼロにまで詰める。
「………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………」
「………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………」
視線が、交わり、
一方通行アクセラレータがわずかに笑っ自嘲した。
https://syosetu.org/novel/56774/98.html
これにて御坂美琴VS一方通行終結。
御坂美琴と一方通行⑪ 後悔
この場面で、この絶望的な場面で一方通行アクセラレータが笑ったのは何かがおかしかったからでは無い。その笑いは自嘲であり、嘲笑であり、憐憫であり、悔恨であり、そして何よりも憐みだった。
だって、そうだろう。
一方通行アクセラレータはもう今すぐにでも死んでもおかしくないほどの状況で、いや今すぐにでも死んでもおかしくないほどの状況だからこそ、自分自身のことではなく目の前に立つ御坂美琴のことを考えた。
『人』を捨てた少女。
妹達シスターズのために『人外』になり果てた女。
それを見て、おもって、かんがえて、
ただ、可哀想に思った。
「…………………………………………………………」
だって分かる。
わかる。
分かってしまった。
御坂美琴こいつはもう同じだと。
もう、自分と同じだと分かってしまった。
誰も傷つけたくなくて、誰にも傷ついてほしくなくて力を求めた一方通行アクセラレータと、
妹達シスターズを傷つけないために、妹達シスターズを救うために最奥の闇へと足を踏み入れた御坂美琴。
同じだ。
何も変わらない。
二人は同じなのだ。
「…………………………………」
御坂はきっと[ピーーー]だろう。
例えそれが悪党だろうが善人だろうが罪人だろうが聖人だろうが男だろうが女だろうが幼子だろうが老人だろうが大人だろうが黒人だろうが白人だろうが混血だろうが大統領だろうが首相だろうが議員だろうが秘書だろうが統領だろうが首領だろうが頂点だろうが底辺だろうが中間だろうが理事長だろうが校長だろうが寮監だろうが甥だろうが姪だろうが幼馴染だろうが犯罪者だろうが青少年だろうが少女だろうが未成年だろうが成人だろうが宗教家だろうが狂信者だろうが同性愛者だろうが差別者だろうが馬鹿だろうが賢者だろうが美だろうが醜だろうが障害者だろうが健常者だろうが重篤患者だろうが黒髪だろうが白髪だろうが金髪だろうが銀髪だろうが色黒だろうが極道だろうが外国人だろうが劣化模造品だろうが妹達シスターズの邪魔となるのであればたやすく[ピーーー]だろう。
道端の雑草を抜くように、矮小わいしょうな蟻を踏み潰すように、たやすく。
哀れに思った。憐れにおもった。
そうなってしまった、
いや、
そ・う・な・ら・な・け・れ・ば・な・ら・な・か・っ・た・こ・と・を・た・だ・悲・し・く・思・っ・た・。
例え、それが一方通行アクセラレータが原因だったとしても、
例え、それが絶対能力進化実験レベルシックスシフトが原因だったとしても、
選んだのは、選択したのは、御坂美琴自身だから。
本当に、なんて無様。
本当に、なんて孤独。
ここから先、御坂が歩む道のりがかつて一方通行アクセラレータが歩んだ道よりも地獄なのだという事は直感で分かる。
険しい険しい針山をただ独りで登り切らなければならない憐れな少女。くだらない劣化量産品クローンのためにすべてを捨て去って、人間であることさえ放棄して、いったいその先になにがあるというのか。
知らぬふりをしていればただそれだけで日常に戻れたのに。全くどうしてこうも健気なのか。
瞳を昏く輝かせ魔界の闇でも宿すかのように漆黒で身を包んだ御坂を一方通行アクセラレータはもう一度見た。
あぁ、本当にけなげで哀れで愛おしくて笑えて泣けてくる。
嫌がらせの一つでもしたくなるほどだ。
だからこれはただの負け惜しみだ。
これはただの餞別せんべつだ。
こ・れ・か・ら・先・、・地・獄・を・行・く・こ・と・に・な・る・御・坂・美・琴・へ・の・呪・い・な・の・だ・。
「……ぁ、ぐっ――――――っ……………………げ、……ぇっ」
潰れた喉で壊れた声を無理やり出した。
伝えたかったのは一つの単語。
ただ一つ、この場面で言うには当たり前の、一方通行アクセラレータが言うには異常すぎるその言葉。
もしかしたら、かすれすぎたその声じゃ御坂には届かないのかもしれない。けれど、それで構わないと一方通行アクセラレータは思った。正確じゃなくても、すべてではなくても、わずかでも伝わりさえすればそれでかまわない。
ここですべてが終わってしまってもせめて一矢報いてやる。せめて一言楔くさびを打ち込んでやる。
だからこれは呪いだ。
御坂美琴の心に刻まれる呪いの言葉。
呪いの言葉。
「ッッッッッ!!!」
ああ、伝わったのだろうか。
その言葉が。
その言葉の意味が。
込められた、その思いが。
『たすけて』、と。
「なんで……っ……………」
わずかな逡巡が御坂の瞳に浮かぶ。さっきまでの、一方通行アクセラレータを拷問していたときの御坂ならば今更『たすけて』の言葉をはかれたところで一顧だにせず一方通行アクセラレータを殺しただろう。
だけど、今の御坂にはそれが出来なかった。躊躇いなく一方通行アクセラレータを[ピーーー]ことが出来なかった。
漆黒の正気に戻り、純白の狂気がわずかでも薄れたから。
伝わったその言葉が御坂に一方通行アクセラレータの殺害を一瞬だけ躊躇わせた。
「なんでッッッ…………っ!!!!!」
その声にこめられた思いは、怨嗟か後悔か、憎しみか躊躇いか、悲しみか嘲笑か。
その顔が描く表情は、憐れみか苦しみか、苦渋か楽観か、安心か恐怖か。
「いま、さ……………ら――――――」
当然、たかだか言葉一つで一方通行アクセラレータの死という結果は変わらない。もはや勝敗は決まっている。今更勝ち負けが覆ることはない。
だが、
しかし、
けれども、だ。
響くモノはあった。
あって、しまった。
「なんで………っっっ……。………今―――――――更――――――――」
目が。
瞳が。
眼が。
視線が。
眼まなこが。
見て。
視て。
観て。
「が、ぎ、……あぐ、げっ、ぇえぇえええええええ――――――――――――ぁあ……がっ、ぐぅううううううああああぁぁあああああうううううううぅぅぅぅぅぅぅぅぅ」
言葉が出ない。
言葉が出ない。
言葉が出ない。
間違えた?
そうじゃ……なかった?
やるべきじゃなかった?
間違えていたのは……ワタシ?
ワタシガマチガエタノ?
ワカria
「違う……………………」
違う。
「――――――違うッッッッッ!!!!!!!!!!!」
[ピーーー]。
[ピーーー]。
[ピーーー]。
[ピーーー]。[ピーーー]。[ピーーー]。[ピーーー]。[ピーーー]。[ピーーー]。[ピーーー]。[ピーーー]。[ピーーー][ピーーー][ピーーー][ピーーー][ピーーー][ピーーー][ピーーー][ピーーー][ピーーー][ピーーー][ピーーー][ピーーー][ピーーー][ピーーー][ピーーー][ピーーー][ピーーー][ピーーー][ピーーー][ピーーー][ピーーー][ピーーー][ピーーー][ピーーー][ピーーー][ピーーー][ピーーー][ピーーー][ピーーー][ピーーー][ピーーー][ピーーー][ピーーー][ピーーー][ピーーー][ピーーー][ピーーー][ピーーー][ピーーー][ピーーー][ピーーー][ピーーー][ピーーー][ピーーー][ピーーー][ピーーー][ピーーー][ピーーー][ピーーー][ピーーー]コロスコロスコロスコロスコロスコロスコロスコロスコロスコロスコロスコロスコロスコロスコロスコロスコロスコロスコロスコロスコロスコロスコロスコロスコロスコロスコロスコロスコロスコロスコロスコロスコロスコロスコロスコロスコロスコロスコロスコロスコロスコロスコロスコロスコロスコロスコロスコロスコロスコロスコロスコロスコロスコロスコロスコロスコロスコロスコロスコロスコロスコロスコロスコロス。
こ
ろ
す
御坂はまるで敗者のように顔を歪めながら、地に倒れ伏す一方通行アクセラレータの首筋に向かって手を伸ばした。血に濡れた掌のぬるい感触を感じることすらできず一方通行アクセラレータはただそのさまを客観的に感じる。
もはや何も見えず、聞こえず、語れず、動けない。
終わりに向かう身体世界を空虚におもいながら、一方通行アクセラレータはただただ憐れんだ。
日常を捨てたことをではない。
闇に堕ちる決断をしたことでは無い。
妹達シスターズを助ける決断をしたことでは無い。
一方通行アクセラレータは独りで戦った御坂のことを心底馬鹿にした。
(オマエは、『光』の住人なのに……)
助けてくれる人も、相談できる人もいたはずだ。
友人も親友も学友も教師も後輩も先輩もライバルも恋人も好きな人も知り合いだっていたはずだ。
なのに、独りで戦って。
手を伸ばさずに助けの声を拒絶して。
愚かしい愚図だ。
どうしようもない馬鹿だ。
御坂の精神性は『光』の領域にいながら『闇』の住人と変わらない。己を、己だけを信じ、信頼し、信用し、
全部独りで抱え込んで、そして独りでどうにかできてしまう。
それだけの力があって、それだけの知恵があったから。
守りたいモノだけが増えていき護ってくれる人は誰もいない。
助けたい人だけが増えていき助けてくれる人は誰もいない。
それでこのざまだ。二兎を追う者は一兎をも得ず。結局御坂は掌の中にある助けたい人さえも取りこぼす結果になった。
(……………………いや、)
それを言ってしまえば一方通行アクセラレータだって同じだ。
御坂についての考えはすべて一方通行アクセラレータにも跳ね返ってくる。裏返す必要も表に出す必要もなく、そのままに返ってくる。
一方通行アクセラレータだって、誰かに頼ることは出来たはずだ。警備員アンチスキルでも風紀委員ジャッジメントでも助けを求めることは出来たはずだ。
もちろん『闇』に隠蔽されるだろう。助けを求めたところで黙殺されなかったことにされるのはわかりきっている。
だけど、でも、例え無意味なことであったとしても助けを求めること自体はできたはずなのだ。助けて、苦しい、嫌だ、止めて、そう意思表示をすることは出来たはずなのだ。でもやらなかった、できなかった。それはつまり一方通行アクセラレータだって、御坂と同じということだ。
独りで藻掻もがき、足掻き、抵抗し、反発して、全部抱え込んで手を伸ばさずに、戦った。
一方通行アクセラレータも御坂と同じだ。愚者であり、愚図であり、馬鹿である。
「絶対に」
御坂の手に力がこめられる。首筋に触れた掌と指が一方通行アクセラレータの首を圧迫する。
「助ける[ピーーー]」
自分に言い聞かせるように、一方通行アクセラレータに言い聞かせるように、御坂は言う。
能力を使えばすぐにでも殺せるのに、あえてその手を使って一方通行アクセラレータを絞殺しようとするのはいったいなぜなのだろうか。
それはきっと決意の証で、
それはきっと躊躇いの証明。
力が籠められる。
力が、籠められる。
(はは、……………………………………………せいぜい後悔しろよ。御坂美琴ォ。結局オマエも、俺と同じだ)
すべてが同じだからこそ、辿る結末も同じ。何も変わらないからこそ、辿り着く終着点も変わらない。
(いずれ、必ず、オマエも)
楔は打ち込み呪いとなった。ここから先、御坂の心には常に一方通行アクセラレータの言葉が宿るはずだ。例え、ミサカネットワークの中からその単語を消しても、絶対に御坂はその言葉を思い出す。能力者の使う能力が霊魂に依存するモノならば、霊魂に刻まれたその言葉はすべてを滅ぼす楔となりうる。
だから、必ず、御坂美琴も……。
(俺のようになるンだからなァ)
沈み逝く意識の中でどうしようもなく無様な笑い声がきこえる。『ははは』『ははははははははははは』『ははははははは』とその声は哂っている。
邪知暴虐じゃちぼうぎゃくの限りをつくし、老若男女を問わず人間皆々みなみな皆殺し。罪に対する罰を受けず、最強という称号に驕っていた『ソイツ』はいったいぜんたい誰なのか?
――――――決まっている。その哂い声は一方通行アクセラレータ自身のものだ。過去の記憶が現在今の自分を哂っている。
闇の中の自分が、血の中の自分を哂っている。
(……………………………………………………………)
昔は、違った。
昔はもっと違った。
もっと純粋で、もっと純白で、もっと純朴で……。誰かを殺そうなんて、誰かを傷つけようなんて、そんな考えはかけらも浮かばなかった。
だというのに、一体いつの間に暴力をふるう事への躊躇が無くなったのか。
分からない。そして、こんな死の間際になってもわからないのならば、きっとそれは一生わからなかったということだ。だってそうだろう?死の間際でなければきっとこんな考えすら浮かばなかったのだから。
無ゼロに落ちる。地獄へ堕ちる。
だけど、その地獄はいったい今までいた地獄とどれくらい違うのだろうか。学園都市の『闇』といったいどう違うのだろうか。
分からない。
分からないけど、きっと変わらない。ここもあそこも、どこもかしこも地獄で、地獄だ。煉獄の劫火に焼かれながら生きるこの世界も死した後に逝く世界も地獄であることに変わりはないのだから。
だけど、今からでも地獄の中を走り回ってもっと誰かを信じる努力をすれば、何かが変わるのだろうか。
友が出来るのだろうか。
(ははは、………………ねぇな)
だって一方通行アクセラレータはもう殺し過ぎた。自分自身のエゴのために、自分自身の幸福のために、自分自身のためだけに、
(……いや、………違うか)
どうせ最期だ。この期に及んで嘘をつくのは止めよう。
殺したのに、傷つけたのに、理由なんてほとんどなかった。むかついたから、イラついたから、ただ何となく、目障りだから、気に障ったから、視界に入ったから、攻撃してきたから、理由なんてそんなものだ。
誰かのためとか、自分のためとか、そんな高尚な理由は無かった。
無かったのだ。
今更になって罪を自覚した。今更になって自分の犯した殺人の意味が分かった。今ならわかる。流してきた血の意味が、犯してきたその罪が。
(………………………………………………………………………………………………………………………………)
最期になって思い出す。
まだ、幼かったあの時のことを。超能力も持たず、×××××などと呼ばれ、公園でサッカーをしたあの時のこと。
戻れるわけが無かった。帰れるわけが無かった。今更、その場所に行けるわけが無かった。
もう、一方通行アクセラレータは殺しずぎた。すべてが遅くて、遅かった。
(………………………………………………………………………………………………………………………………ぃ)
もう、すべての感覚が消えた。
これが、死。
一方通行アクセラレータが今まで殺してきた人間が等しく感じた『死』。
冷たく、暗く、深く、重く、尊く、温かく、軽い。
死。
(……………………………………………………………………………………………………………………………………………………――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――痛い)
そして、決着がついた。
絶対能力進化実験レべルシックスシフトは一方通行アクセラレータの死によって頓挫し、妹達シスターズは救われるだろう。
御坂は『闇』に堕ちるが、それでも一万の命が救われる。
だから、
この戦いは御坂美琴の勝ちだった。
物悲しい雰囲気を感じてくれたらとてもうれしいです。
操車場の戦い 御坂美琴VS一方通行
勝者……御坂美琴
内訳
一戦目 御坂美琴VS一方通行
勝者……一方通行
二戦目 御坂美琴(body is ミサカ10032号)VS一方通行
勝者……一方通行
三戦目 御坂美琴(body is ミサカ10033号)VS一方通行
勝者……一方通行
四戦目 御坂美琴(body is ミサカ20002号)VS一方通行
勝者……御坂美琴
次話から第一章最終節に入ります。うまくいけば、二週間くらいで終わると思います。今までの出来事を黒幕側から見た話になるので、いわゆる解説回ですね。
https://syosetu.org/novel/56774/99.html
さぁて、ここからいきなり話が難しくなってくるぞお。
第一部 第一章 最終節 絶対能力進化実験中止計画~語り始める黒幕と回収される伏線~
白白白と木葉桜十五夜① 黒幕の思惑
三者三様。
絶対能力進化実験レべルシックスシフトを利用して自らの思惑を達成しようとしていた三人の黒幕は、それぞれがそれぞれ計画通りに進まない現実に対して思うところがあった。
まず統括理事長アレイスター=クロウリー。アレイスターは単純に苛立ちを覚えていた。
結果論としてだが、絶対能力進化実験レべルシックスシフトはアレイスター=クロウリーの計画通り失敗に終わった。この先、生存した妹達シスターズは苦罠によって世界各地に送られ、世界中にAIM拡散力場が満ちることになるだろう。
だがしかし、肝心要の第一候補メインプラン、一方通行アクセラレータが死亡した。それはもう完膚なきまで死亡した。いくら冥土帰しヘヴンキャンセラーの『負の遺産』があってもどうしようもないレベルまで死亡した。
つまり、アレイスターのプランが予定通り進行しないことを意味する。並列するプランを複数個同列ラインで進めているとはいえ、一方通行アクセラレータの死亡はすべてのラインにおいて致命的である。
一方通行アクセラレータはプランの中核に存在する重要人物。替えのきくことが難しい唯一の存在であるからだ。
次に、統括理事会メンバーが一人死縁鬼苦罠。苦罠は予想外の動きを見せたミサカ19090号に対してわずかに後悔を覚えた。
もっと、きつく締め付け監視を強めておけばよかったと後悔した。
上回れた、先にやられた、計画を、予定を駄目にされた。あまりにも予想外で予想が過ぎた。苦罠はまさか御坂がこのタイミングで『雷神化』するなど考えもしなかったのだ。だから、予定通りには進まなかったのだ。
苦罠の計画通りならば御坂が改良版音響式能力演算妨害装置キャパシティダウンバージョンベータを使って放った超電磁砲レールガンは一方通行アクセラレータを完全に貫き、それで操車場の戦いは決着を迎えるはずだった。
はずだったのに。
ミサカ19090号が御坂美琴にAIM拡散力場を軸に干渉して超電磁砲レールガン外させた。
完全にノーマークだった。監視していなかった。何もできないと思っていた。ミサカネットワークに御坂美琴を取り込むなど考えもしなかった。御坂美琴を個としての存在では無く全として存在に昇華するなど思いもしなかった。
裏をかかれた。逆を突かれた。
そして、ミサカ19090号と幻生の接触も予想外だった。
実験のためなら幻生がミサカ19090号に協力するのは分かっていたが、ミサカ19090号が幻生に会いに行くとは思えなかったからだ。恐怖心や畏怖をことさら強く感じるミサカ19090号が絶対能力進化実験レべルシックスシフトの提案者に会いに行くことは予想できなかった。
さいわいにも御坂の『雷神化』はミサカネットワークに投じたウイルスが不完全だったこともありそこまで進まなかったが、このタイミングでの『雷神化』は今後にかなり不都合な事態を生じさせるはずだ。
本来ならば『雷神化』は大覇星祭に行う予定だったのだから。
そして、
最期に、風紀委員本部セントラルジャッジメント委員長白白白。
白は計画通りに進まない現実に対して、
た・だ・、深・い・笑・み・を・浮・か・べ・た・。
「今戻りました。委員長」
「首尾はどうだ?」
「はい。ストロビラは無事上条当麻と白井黒子両名に打ち込みました。風紀委員本部セントラルジャッジメント序列ランキング第十位千疋百目のことも回収し、封印戦力常世涯最果とこよのはてさいはての生存も確認。扼ヶ淵埋娥やくがぶちまいがについては委員長の命令通りポイントT50に向かわせ『作業』をしてもらっています。浣熊四不象あらいぐましふぞうは例の操車場での戦い等の監視結果などを後で報告書にまとめて提出するように言ってあります」
今回風紀委員本部セントラルジャッジメントが絶対能力進化実験レべルシックスシフトに関する件で動かした人員は全部で七人。
上条当麻の足止めに風紀委員本部セントラルジャッジメント攻撃部隊総隊長扼ヶ淵埋娥やくがぶちまいがを、
白井黒子の足止めに風紀委員本部セントラルジャッジメント序列ランキング第十位風紀委員本部セントラルジャッジメント攻撃部隊第二班班長千疋百目を、
木原脳幹の足止めに風紀委員本部セントラルジャッジメント封印戦力常世涯最果とこよのはてさいはてを、
上条当麻達の監視に風紀委員本部セントラルジャッジメント諜報部隊総隊長無何有峠妃むかいとおげきさきを、
埋娥や百目との連絡要員としては風紀委員本部セントラルジャッジメント序列ランキング第■■位風紀委員本部セントラルジャッジメント諜報部隊第一班班長五寸釘匕首ごすんくぎあいくちを、
空中にいる敵対戦力の対応と人員の回収については風紀委員本部セントラルジャッジメント序列ランキング第■位風紀委員本部セントラルジャッジメント諜報部隊第■班■■浣熊四不象あらいぐましふぞうを、
万が一のバックアップ及び全体の補助と敵対戦力の殲滅、上条当麻と白井黒子にストロビラを打ち込む件については風紀委員本部セントラルジャッジメント委員長補佐木葉桜十五夜このはざくらまんげつを、
それぞれ動かした。
「そろそろ頃合いか……」
白は小さくつぶやいた。今回の一件は様々な思惑が入り混じり、すべてがうまくいったわけでは無い。だがそれでも『風紀委員本部セントラルジャッジメント委員長白白白』の計画は8割方成功していた。
「十五夜。支援部隊の白神九十九つくもがみつくもに千疋百目の風紀委員本部セントラルジャッジメント序列ランキングを第十位から第八位に上げるように通達しろ。後は最果を地下十一層に戻しておけ。次の中・で・の・戦いはおそらくケミカロイドの一件だろう。そこまでは通常業務に専念するように、全員に伝えておけ」
「了解しました。委員長」
白が今回の件で目的としていたものは二つ。敵対勢力のあぶり出しと物語の中心点セントラルストーリーラインをずらすことだ。
敵対勢力のあぶり出しについては語る必要すらないほど明確だろう。
死縁鬼苦罠に雇われているらしいという彼者誰時に輝く月シャイニングムーンの情報についての裏付けはできたし、その彼者誰時に輝く月シャイニングムーンに所属している人員、団長の裂ヶ淵瞑娥さくがぶちめいがや大隊長の戦力についての調査が出来た。
同じく敵対勢力のアレイスターに使える木原脳幹の対魔術式駆動鎧アンチアートアタッチメントことも二人のおかげで情報は得られたし、アレイスター自身の戦闘力についても十五夜が目撃したため分かった。
既定路線では無かったとはいえ、第一の目的はほとんど達成されたようなものだ。
何せ風紀委員本部セントラルジャッジメントの戦力はまだほとんどさらしていないのだから。頂点序列者トップランカー5人も、上位序列者ハイランカー15人も、下位序列者ローランカー80人も、まだほとんど表に情報は出ていない。
封印戦力をこのタイミングで出すのだけは想定外だったが、それもまぁ最悪の出来事では無い。封印戦力はまだ後三人いるのだから。
「ふむ。……もう下がっていいぞ」
要件は伝えた。後は思案の時間だ。次の計画を確実に成功させるためには打てる布石は打ち、張れる伏線は貼り、練れる計画はねるべきである。故に、白はいつものように『天秤の間』で独り考え事をするつもりだった。
しかし、
「どうした?」
十五夜が踵きびすを返して出ていこうとしなかった。いつもならば、用件が終わればすぐに『天秤の間』から出ていくのに。
そして、十五夜は驚くべきことを白に言った。
「…………差し出がましいですが、委員長。今回の件についていくつか質問をさせてもらってもよろしいでしょうか」
「珍しいな。君が僕に質問をするなんて」
少々驚いたように白は言った。それほどまでに十五夜が白に質問をすることは珍しかった。常に命令に忠実で白の行動に疑問を持つことはない。もちろん、白が明らかにおかしかったり間違った行動をすれば多少の諫言かんげんはするが、十五夜は基本的に白の行動に質問をすることはない。
だから、白は驚いた。
「別にかまわないぞ。何が聞きたい?」
驚いたが十五夜がききたいことがあるというのなら別にかまわない。白は十五夜を一番信頼している。質問に答えないことはよほどのことでも聞かれない限り、ない。
「では、」
十五夜は息を大きく吸い、心を落ち着けてから言った。
「今・回・の・件・、い・っ・た・い・ど・こ・ま・で・が・委・員・長・の・計・画・通・り・だ・っ・た・の・で・す・が・?」
「………………………………………」
深く、白が笑う。
十五夜の言葉に笑う。
「どこまで、というのは?」
「…………今回の一件、不可解なことが多すぎます」
『天秤の間』に来るまでの道中十五夜は今回の一件についてずっと考えていたが、どう考えてもつじつまの合わないことが多すぎた。
例えば、
「地下で起きた爆発はいったい誰の手によるものだったのですか?」
そう。あの時白から電話がかかってくる直前に十五夜の耳に聞こえた爆発音。結局あの爆発が誰の手によるものなのか十五夜はわかっていなかった。
「御坂美琴の『雷神化』はともかくとして一方通行アクセラレータが『神の力』――――――位相操作能力を得たのは本当に偶然だったのですか?」
「そろそろ頃合いか……」
白は小さくつぶやいた。今回の一件は様々な思惑が入り混じり、すべてがうまくいったわけでは無い。だがそれでも『風紀委員本部セントラルジャッジメント委員長白白白』の計画は8割方成功していた。
「十五夜。支援部隊の白神九十九つくもがみつくもに千疋百目の風紀委員本部セントラルジャッジメント序列ランキングを第十位から第八位に上げるように通達しろ。後は最果を地下十一層に戻しておけ。次の中・で・の・戦いはおそらくケミカロイドの一件だろう。そこまでは通常業務に専念するように、全員に伝えておけ」
「了解しました。委員長」
白が今回の件で目的としていたものは二つ。敵対勢力のあぶり出しと物語の中心点セントラルストーリーラインをずらすことだ。
敵対勢力のあぶり出しについては語る必要すらないほど明確だろう。
死縁鬼苦罠に雇われているらしいという彼者誰時に輝く月シャイニングムーンの情報についての裏付けはできたし、その彼者誰時に輝く月シャイニングムーンに所属している人員、団長の裂ヶ淵瞑娥さくがぶちめいがや大隊長の戦力についての調査が出来た。
同じく敵対勢力のアレイスターに使える木原脳幹の対魔術式駆動鎧アンチアートアタッチメントことも二人のおかげで情報は得られたし、アレイスター自身の戦闘力についても十五夜が目撃したため分かった。
既定路線では無かったとはいえ、第一の目的はほとんど達成されたようなものだ。
何せ風紀委員本部セントラルジャッジメントの戦力はまだほとんどさらしていないのだから。頂点序列者トップランカー5人も、上位序列者ハイランカー15人も、下位序列者ローランカー80人も、まだほとんど表に情報は出ていない。
封印戦力をこのタイミングで出すのだけは想定外だったが、それもまぁ最悪の出来事では無い。封印戦力はまだ後三人いるのだから。
「ふむ。……もう下がっていいぞ」
要件は伝えた。後は思案の時間だ。次の計画を確実に成功させるためには打てる布石は打ち、張れる伏線は貼り、練れる計画はねるべきである。故に、白はいつものように『天秤の間』で独り考え事をするつもりだった。
しかし、
「どうした?」
十五夜が踵きびすを返して出ていこうとしなかった。いつもならば、用件が終わればすぐに『天秤の間』から出ていくのに。
そして、十五夜は驚くべきことを白に言った。
「…………差し出がましいですが、委員長。今回の件についていくつか質問をさせてもらってもよろしいでしょうか」
「珍しいな。君が僕に質問をするなんて」
少々驚いたように白は言った。それほどまでに十五夜が白に質問をすることは珍しかった。常に命令に忠実で白の行動に疑問を持つことはない。もちろん、白が明らかにおかしかったり間違った行動をすれば多少の諫言かんげんはするが、十五夜は基本的に白の行動に質問をすることはない。
だから、白は驚いた。
「別にかまわないぞ。何が聞きたい?」
驚いたが十五夜がききたいことがあるというのなら別にかまわない。白は十五夜を一番信頼している。質問に答えないことはよほどのことでも聞かれない限り、ない。
「では、」
十五夜は息を大きく吸い、心を落ち着けてから言った。
「今・回・の・件・、い・っ・た・い・ど・こ・ま・で・が・委・員・長・の・計・画・通・り・だ・っ・た・の・で・す・が・?」
「………………………………………」
深く、白が笑う。
十五夜の言葉に笑う。
「どこまで、というのは?」
「…………今回の一件、不可解なことが多すぎます」
『天秤の間』に来るまでの道中十五夜は今回の一件についてずっと考えていたが、どう考えてもつじつまの合わないことが多すぎた。
例えば、
「地下で起きた爆発はいったい誰の手によるものだったのですか?」
そう。あの時白から電話がかかってくる直前に十五夜の耳に聞こえた爆発音。結局あの爆発が誰の手によるものなのか十五夜はわかっていなかった。
「御坂美琴の『雷神化』はともかくとして一方通行アクセラレータが『神の力』――――――位相操作能力を得たのは本当に偶然だったのですか?」
『雷神化』には明確な理由があった。木原幻生によってミサカ19090号に投じられたウイルスがミサカネットワークを通じて御坂の中に入り、それが御坂の『雷神化』を起こしたのだろう。
だが、一方通行アクセラレータが位相操作能力を得たのは明確な理由を発見できない。もちろん奇跡だ、というのであればそれ以上の追及はできない。だからこそ今ここで十五夜は問いかけた。
あの出来事は確かに奇跡だったのかもしれない。
だが、
どうにも十五夜にはあの奇跡が仕・組・ま・れ・た・奇・跡・に思えて仕方が無かった。
「一方通行アクセラレータが初まりの領域で『空白の主』に出会えたのはなぜなのですか?」
仮に『神』の領域――――――すなわち魔術的な意味合いでは『魔神』の域に入ることが出来たとしてもそれだけでは『初まりの領域』に行くことは出来ない。あの場所はこの世界の中でも最重要部分。なりたての『神』が入れるような場所ではないはずだ。
「そして、一番不可解なのは」
一つ、区切り置いて、十五夜は今だに信じられないかのようにその事実を口にした。
「あの、救済者ヒーロー『上条当麻』がたかだか攻撃部隊総隊長扼ヶ淵埋娥やくがぶちまいが程度の雑魚に負けたことです」
どうにも十五夜はそれが信じられなかった。
正確にいうのであれば、『上条当麻』が埋娥にまともな一撃を食らわせることすらできずに敗北したことが信じられなかった。
救済者ヒーローが負ける。そのこと自体はまぁいい。救済者ヒーローだって成長するために負けることはある。古今東西の物語で敗北から学び強くなる救済者ヒーローは多々いる。
だが、
「負けるにしても少なくとも一撃を当てることぐらいはできないとおかしいはずです。上条当麻という個はそこまで弱くはない。あの負け方では救済者ヒーローとしての成長が出来ません」
埋娥と上条の戦闘をリアルタイムで見ていた十五夜は違和感をずっと感じていた。最初に白井と別れて単独で埋娥を引き付けた場面。あれはまだいい。救済者ヒーローとしての行動である。
だが、その後がおかしいだろう。救済者ヒーローであるならば埋娥と会話をするべきだ。埋娥の抱える闇を表にさらけ出させるべきだ。敵対者だろうがラスボスだろうが黒幕だろうが問答無用で救う。
それが救済者ヒーローなのだから。
負け方にしてもそうだ。地形を利用して上条はよく戦ったと思うが、埋娥に勝つことに注視しすぎて埋娥のことを見ていない。救済者ヒーローとしてはあるまじき行いだ。
あの負けでは今後につながらない。負けた、という結果だけが残ってしまう。
「いったいどういう事なのですか委員長?今回の一件は本当は…………」
「そうだな」
一つ頷うなずいて、白は語る。
「一つ一つ説明をしていこうか、十五夜。今回の一件がどういう経緯で起き、どのように転がっていったのかを」
そして、白は話し始めた。
絶対能力進化実験レべルシックスシフトの裏に隠された。各々の目的とその行動を。
https://syosetu.org/novel/56774/100.html
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100話目
白白白と木葉桜十五夜② 死縁鬼苦罠勢力の行動
「そもそも絶対能力進化実験レべルシックスシフトの本当の目的は一方通行アクセラレータを絶対能力者レベルシックスに到達させることでは無い。これは前にも話したな」
「はい。把握しています。今回の絶対能力進化実験レべルシックスシフトの本当の目的は絶対能力進化実験レべルシックスシフトが頓挫とんざした後に妹達シスターズを世界中に治療という目的でばらまき、世界全体にAIM拡散力場を満たすことにある、という事でした」
「そう。初め、絶対能力進化実験レべルシックスシフトはそういうモノだった。アレイスターが世界中にAIM拡散力場を満たすための失敗前提の実験。それが絶対能力進化実験レべルシックスシフトのはずだった」
「…………………………」
「アレイスターのプランの通りに進むのであれば一方通行アクセラレータは御坂を追いかけて絶対能力進化実験レべルシックスシフトの真実を知った上条に倒され、上条の成長、絶対能力進化実験レべルシックスシフトの頓挫、そして一方通行アクセラレータの成長。この三つが同時になされるはずだった」
はずだったのに、そうはならなかった。
なぜなら。
「そこに僕ら風紀委員本部セントラルジャッジメントと苦罠が干渉したから、話が非常にややこしくなった」
ただでさえややこしい事態にさらに二つの勢力が割り込んだ。どの勢力も己の目的を達成することに執着して自分勝手に動いて、その結果あり得ないくらい混乱した摩訶不思議な事態が起きてしまった。
「時系列を追って説明しようか。その方がきっと分かりやすい」
張られた伏線。仕組まれた事態。動いていく計画。
そのすべてが今、明らかになる。
「すべてのはじまりは去年の冬、一方通行アクセラレータが絶対能力進化実験レべルシックスシフトに参加したあの時から始まった。各々の野望を叶えるために、各々が暗躍し、行動した」
回想する。
思い出す。
「まずは、苦罠たちのことについて話そうか。絶対能力進化実験レべルシックスシフト第一次実験が始まった時点で、苦罠はいずれ御坂美琴が絶対能力進化実験レべルシックスシフトに辿り着くと予想した。そして、御坂美琴は必ずそれを止めようとすると予測した。苦罠はそのために準備を始めていた。半年も前からね」
死縁鬼苦罠。統括理事会メンバーの中でもほとんど最強の存在。
「そして、今日の午後練りに練った計画を実行するために動いた」
彼が、ある意味では一番乗りだった。
「まず一番最初に苦罠が行ったことは御坂美琴との接触及び交渉。苦罠の目的から言ってしまえば、御坂美琴という存在は誰よりも重要なパーツだからな。交渉、というよりも恫喝に近かったが、それでも苦罠は御坂美琴を自陣営に引きずり込んだ」
「計画プロジェクト……ですか」
アレイスターの計画プランと同じように謎が多い計画プロジェクトという名の計画。死縁鬼苦罠と天埜郭夜によって進められている計画プロジェクトという存在。それのためには御坂美琴が必要なのだと白は言う。
「そして、その後郭夜と連絡を取り『三千世界武神』一本線点々いっぽんせんてんてんに十五夜、君の足止めを依頼。さらに並行して彼者誰時に輝く月シャイニングムーンの奴らにも君の足止めを依頼。さらに、余剰待機戦力として莫大な金銭を払って彼者誰時に輝く月シャイニングムーンの団長裂ヶ淵瞑娥さくがぶちめいがにも戦闘を要請した」
「裂ヶ淵瞑娥も出てきていたのですか!?あの『陰翳いんえいの四月実験』の被験者の!?」
陰翳いんえいの四月実験。
暗闇の五月計画や光陰の三月実験と同じ、月の名前を冠した十二暦計画カレンダープロジェクトの一つである。
「当然だろう?僕が苦罠の立場だったとしても同じように瞑娥を動かすぞ。あいつは魔術も超能力もかいさない純粋な暴力で言ったら、点々と互角にやり合える唯一無二の人材だからな」
「天下無双流と天地破壊流ですか」
「その通り。この世界の中では最強と呼ばれる二大流派。どっちが強いとかでは無く、どっちも最強だが、だからこそ君を足止めできたのだろう」
「……………そうですね」
苦い顔をして十五夜は言った。十五夜からしたらわずかでも足止めされたあの経験はかなり悔しいものなのだろう。
「続けるぞ。そして、君を足止めしている間に奴らは御坂を操車場に送り届け、戦闘を開始させた。さらに並行して超能力者予備集団セブンバックアップの三位も動かしていたようだ」
「超能力者予備集団セブンバックアップの三位というとあの精神系最強の見捨てられた女グレイレディですか」
「そうだ。三位がやったことは至極単純で上条当麻と白井黒子の両名を地下下水道へと誘導するための準備、KEEPOUTのテープを操車場の入り口あたりにはったことと白井への認識操作だな」
あの時、あの場所で上条と白井が地下に行ったのは目の前にKEEPOUTのテープがあり、その先に警備員アンチスキルがいると思い込んでいたからだ。彼らも100人の警備員アンチスキルを突破できると考えるほど幼稚では無かった。
まぁ、万が一あのKEEPOUTのテープの先にいったとしてもどちらにしろ御坂のもとにはたどり着けなかったわけだが。
「で、その後三位はとあることをした」
「とあること…………ですか?」
「十五夜。君は『始まりの領域』に侵入する前に強大な爆発音を聞いたそうだな。その時の状況を教えてくれないか」
「分かりました」
十五夜は爆発音が聞こえたときのことを明確に思い出す。十五夜の頭脳は瞬間記憶と映像記憶を併せ持ったように過去の『光景』を寸分の狂い無く思い出すことが出来る機能を持つ。
だから、白に問われた時の光景も完璧に思い出せた。
「爆発音が聞こえたのは委員長から連絡が入るほんの直前、地下下水道で上条当麻と白井黒子、扼ヶ淵埋娥やくがぶちまいがと千疋百目の戦いが終わった直後でした。耳をつんざくような爆発音が周りから聞こえ、立っている地面に亀裂がはしり、沈み、そしてそのタイミングで委員長から電話が――――――」
「ストップ」
十五夜が爆発音が聞こえた時の光景を正確に説明しているときに、白は割り込んで言葉を入れた。
「『地面に亀裂がはしり、沈んだ』。つまりそれが三位のやったことだ」
「……………いえ、ちょっと待ってください委員長。それはいくらなんでもおかしくありませんか?もちろん委員長が確信を持っているのは分かりますし、委員長が間違ったことを言うとは思いませんが、私はどうにも納得できません」
意味深に十五夜を見つめながら白は続きを促す言葉を投げかける。
「具体的にはどこがおかしいと?」
「三位の超能力は精神系のはずです。どうやったとしても爆発現象を起こせるとは思いません。私の精神に干渉することはほぼ不可能ですし、あの時私の精神は正常でした。ならば、あの爆発音は現実に聞こえたもので間違いないはずです。委員長の言う通り三位があの爆発を行ったのならば、彼女の超能力は精神系ではないということに――――――」
「ならない。三位の超能力は精神系だ。それも学園都市内で精神系最強を誇る、な。それは間違いない」
断言する。白はあらゆる出来事の最も重要なことは情報だと思っている。戦闘を行うにも計画を進めるにもまず情報が必要だ。だからこそ、白は風紀委員本部セントラルジャッジメントの情報網を他の追随を許さないほどのモノに鍛え上げたのだ。
さすがにアレイスターの滞空回線アンダーラインには劣るが、それでも他組織よりは圧倒的な量の情報が風紀委員本部セントラルジャッジメントには集まっていた。
「では、三位はあの爆発をどうやって起こしたのですか?」
少なくとも十五夜には方法が思いつかない。精神系最強の能力といえども爆発を起こす方法なんてないはずだ。
そ・ん・な・わ・け・が・な・い・。
「……………こい、な」
白は十五夜の耳に入らないほど小さな声で呟いた。ありったけの侮蔑となけなしの敬意をこめて、心の底から憎んだ。
「委員長?」
返答がないことにわずかな疑問を覚える十五夜。自分の質問はそこまで答えづらい、答えられないモノなのだろうか、と思った。答えられない質問ならば答えてくれなくても構わないのだが。
「……………そもそも前提が間違っているんだ、十五夜」
「前……提、が……?」
「な・ぁ・、」
一息おいて、わずかな怒気を滲ませながら白は言った。
「ど・う・し・て・さ・っ・き・か・ら・三・位・が・超・能・力・を・使・っ・て・爆・発・を・起・こ・し・た・こ・と・に・な・っ・て・い・る・ん・だ・!・!・!・」
「―――――――――――っっっ!!!」
その怒気に押される。気圧される。
本当に、本気で白は怒っていた。十五夜にというよりもあまりにも迂闊すぎた自分自身に。
「冷静になって考えてみろ!この街にある特有のモノは何も超能力だけではないだろう!超能力などこの街の特異性の一面にすぎない。この街の本当の特異性はむしろ超能力を体系化できるほどの科学力の方だろうがッ!!!」
十五夜は衝撃を受けた。
白に怒鳴られたことにではなく、自分自身にその考えが浮かばなかったことに。
そう、自然に考えてしまえば爆発現象を起こすのに超能力を使用する必要はない。御坂美琴が粉塵爆発を起こしたように、通常の爆薬、爆弾を使えば十二分に爆発現象を起こすことが出来るのだ。
その考えが浮かばなかったのは強力な原石を持っているが故に傲慢が理由だったのかもしれない。
【もしくは、ある意味では思考を犯されていた、といったほうがいいのかもしれないな】
「いや、それでも待ってください委員長。私の見た限り爆発音はかなりモノでした。しかも地面に亀裂がはしり、地面が沈み込むほどの量の爆薬なんていったいどこに仕掛けてあったというのですか?」
「察しが悪いな、十五夜。当然下だ」
「下?」
「地面の下に爆薬を埋めておけばいいんだよ」
簡単な口調で白は言った。
「苦罠の勢力にだって僕ら風紀委員本部セントラルジャッジメントと同じように空間移動能力者テレポーターの一人や二人はいるはずだ。だったらその空間移動能力者テレポーターが操車場付近の地面の下いっぱいに爆薬を埋め込めばいい。遠隔起爆を可能とした状態でね」
「では、三位が行った『とあること』とは爆薬の遠隔起爆ですか」
「その通り。スイッチを押すだけの作業だろうし精神系能力者でも問題なく行えるだろう。そして何より三位自身の目的を達成することも出来るかもしれないからね」
「………………………」
白の返答によって連鎖的に二つの納得が生じ十五夜は黙った。
「そもそも御坂美琴が一方通行アクセラレータに使った改良版音響式能力演算妨害装置キャパシティダウンバージョンベータだって、地面の下に埋めてあったはずだろう。ならば必然彼らの勢力に空間移動能力者テレポーターいるのは当然だ」
十五夜は確認のために白に話しかける。
「重機を使ったという可能性はないのですか?」
「ないな。重機なんて目立つモノを使ったら絶対にどこかの勢力が気付く。あの操車場には地面を掘り起こせるような重機は存在していない。よそから重機を持ち込むような目立つマネを苦罠がするわけがない」
当然と言えば当然の論理だ。重機の代わりをなすことのできる人間がいるのならば、目立つ重機よりも目立たない人間を動かす。監視網を逃れるためならそれが正しい。
「そして、起爆した爆薬の目的についてだが……。ここまで言えばさすがにわかるだろう、十五夜」
「はい。地下下水道で戦っていた上条当麻を生き埋めにすること、ですね」
「その通りだ」
地面に埋められた無数の爆発物を超能力者予備集団セブンバックアップ第三位が遠隔起爆し操車場の周りの地面を一気に崩落させる。それこそが、あの爆発の真の目的だった。
十五夜を目的としたものでも、御坂や一方通行アクセラレータを目的としたものでもなく、地下下水道にいる四人、いや厳密には一人を目的としたものだったのだ。
「彼らはいつの段階でそれを仕込んでいたのでしょうか。地盤を崩落させ、地下下水道を埋め尽くす勢いの爆発など並大抵の量で出来ることではありませんが……」
「半年前から準備していた、と言っただろう。当然去年の冬から今年の夏までにかけて準備していたんだろうさ」
「それは……」
半年前からの準備。言うのは簡単だが行うのは不可能に近い。あの操車場の地下にある下水道でいずれ誰かが戦うことを半年も前から予期するのはそれこそ予知能力者でもない限りは不可能だ。
半年前といえばまだ絶対能力進化実験レべルシックスシフトが始まったばかりで、こんなことになるなんて予想も出来ないのだから。
だが、
「言いたいことはわかるさ。半年も前からあの地下下水道に僕らの勢力が行くことを予想するなんて不可能に近い。それこそ、この『僕』でも不可能だろうさ」
「ですが……」
「だがあいつなら、造られた子供たちプログラムチルドレンであるあいつ、天埜郭夜ならそれが出来る。それが出来るからこその造られた子供たちプログラムチルドレンだからな」
造られた子供たちプログラムチルドレン。
その言葉を言う白の表情はあらゆる感情がないまぜになったかのようなモノだった。言葉に色があるというのであればきっと『造られた子供たちプログラムチルドレン』という単語はすべての色がごちゃ混ぜになったように汚らしい漆黒になっているだろう。
「白・様・」
「大丈夫……ですよね」
「十五夜」
「何も心配する必要はない。すべて僕に任せておけばいい」
自信に満ち溢れたその言葉と態度は、確かに十五夜らのトップにふさわしいものだった。
「どちらにせよ、最後に嗤うのは僕たちだからな」
今回分かったこと。
①地下下水道の崩落の原因となった爆発を起こした人物及び勢力
②地下に爆弾を埋めた方法
③超能力者予備集団セブンバックアップの三位 など
分からないことがあったら随時おっしゃってください。必ず答えますので。
次の更新は2日後です。
「………………………」
白の返答によって連鎖的に二つの納得が生じ十五夜は黙った。
「そもそも御坂美琴が一方通行アクセラレータに使った改良版音響式能力演算妨害装置キャパシティダウンバージョンベータだって、地面の下に埋めてあったはずだろう。ならば必然彼らの勢力に空間移動能力者テレポーターいるのは当然だ」
十五夜は確認のために白に話しかける。
「重機を使ったという可能性はないのですか?」
「ないな。重機なんて目立つモノを使ったら絶対にどこかの勢力が気付く。あの操車場には地面を掘り起こせるような重機は存在していない。よそから重機を持ち込むような目立つマネを苦罠がするわけがない」
当然と言えば当然の論理だ。重機の代わりをなすことのできる人間がいるのならば、目立つ重機よりも目立たない人間を動かす。監視網を逃れるためならそれが正しい。
「そして、起爆した爆薬の目的についてだが……。ここまで言えばさすがにわかるだろう、十五夜」
「はい。地下下水道で戦っていた上条当麻を生き埋めにすること、ですね」
「その通りだ」
地面に埋められた無数の爆発物を超能力者予備集団セブンバックアップ第三位が遠隔起爆し操車場の周りの地面を一気に崩落させる。それこそが、あの爆発の真の目的だった。
十五夜を目的としたものでも、御坂や一方通行アクセラレータを目的としたものでもなく、地下下水道にいる四人、いや厳密には一人を目的としたものだったのだ。
「彼らはいつの段階でそれを仕込んでいたのでしょうか。地盤を崩落させ、地下下水道を埋め尽くす勢いの爆発など並大抵の量で出来ることではありませんが……」
「半年前から準備していた、と言っただろう。当然去年の冬から今年の夏までにかけて準備していたんだろうさ」
「それは……」
半年前からの準備。言うのは簡単だが行うのは不可能に近い。あの操車場の地下にある下水道でいずれ誰かが戦うことを半年も前から予期するのはそれこそ予知能力者でもない限りは不可能だ。
半年前といえばまだ絶対能力進化実験レべルシックスシフトが始まったばかりで、こんなことになるなんて予想も出来ないのだから。
だが、
「言いたいことはわかるさ。半年も前からあの地下下水道に僕らの勢力が行くことを予想するなんて不可能に近い。それこそ、この『僕』でも不可能だろうさ」
「ですが……」
「だがあいつなら、造られた子供たちプログラムチルドレンであるあいつ、天埜郭夜ならそれが出来る。それが出来るからこその造られた子供たちプログラムチルドレンだからな」
造られた子供たちプログラムチルドレン。
その言葉を言う白の表情はあらゆる感情がないまぜになったかのようなモノだった。言葉に色があるというのであればきっと『造られた子供たちプログラムチルドレン』という単語はすべての色がごちゃ混ぜになったように汚らしい漆黒になっているだろう。
「白・様・」
「大丈夫……ですよね」
「十五夜」
「何も心配する必要はない。すべて僕に任せておけばいい」
自信に満ち溢れたその言葉と態度は、確かに十五夜らのトップにふさわしいものだった。
「どちらにせよ、最後に嗤うのは僕たちだからな」
今回分かったこと。
①地下下水道の崩落の原因となった爆発を起こした人物及び勢力
②地下に爆弾を埋めた方法
③超能力者予備集団セブンバックアップの三位 など
分からないことがあったら随時おっしゃってください。必ず答えますので。
次の更新は2日後です。
この後はオリキャラが学園都市230万人を皆殺しにして禁書世界を滅ぼして『神の代行人』GE13がフィアンマを下位互換扱いして白白白が絶対不変の絶対法則アンチェンジナブルラウ――――――無限に修正され続ける罪深き世界で世界をやり直して
読者に【愛がないのならば、この物語の真実には辿り着けない。】って言ったりするからぜひ見てくれ
面白いで
https://syosetu.org/novel/56774/
とある暗部の御坂美琴(2周目)
作者:一二三四五六
原作:とある魔術の禁書目録
タグ:R-15 残酷な描写 とある科学の超電磁砲 暗部 上条当麻 鬱 独自設定 中二病 闇堕ち 群像劇 執着 依存 オリジナル展開 原作キャラ死亡 御坂美琴 絶望 シリアス 狂気 オリキャラ多数 裏切り 策略
▼下部メニューに飛ぶ
大切なモノを護るために、あなたは何処どこまで捨てられますか?
大切な人を助けるために、あなたは己の命身体を棄すてられますか?
自分の魂魄凡てを捧げても喪うしないたくないモノ、ありますか?
無明の闇に堕おちていけ。罪に穢けがれし気高き魂よ、汝なんじが生に幾多の禍難かなんが在あらんことを希こいねがって。
※亀の歩みよりも展開が遅いです。スピーディーな展開を求める人には確実に合いません
※多数の視点で物語が進むため展開が非常に遅いです。
※この小説は本編最新刊はもとより超電磁砲最新話、マンガ一方通行最新話、超電磁砲PSP、蛇足またはとある事件の終幕 、クロスオーバー小説、偽典・超電磁砲 、アニメ超電磁砲一期二期オリジナルエピソード、エンデュミオン、頂点決戦、群奏活劇、バーチャロン、とある魔術の禁書目録SP、一番くじ限定電撃鎌池和馬10周年文庫、学芸都市SS、能力実演旅行SS、とある魔術の禁書目録PSP、画集小説、下敷き小説、コールドゲーム、アストラル・バディの設定が入り混じっています。
※『白衣の男』と御坂美琴⑪ 脅迫までは一話2500文字それ以降は一話5000文字になっております。
※あらすじがver5になりました。前のあらすじが見たい人は活動報告の方へどうぞ。
※題名を『とある闇の中の超能力者』から『とある暗部の御坂美琴』に変更しました。
※ネット小説だからこそ出来るギミックを各所に取り込んでいます。
※前書きとあとがきには重要な伏線を仕込んでいます。必ず表示させてください。
原作が出るまで暇だしこれでも読もうぜ!
https://syosetu.org/novel/56774/107.html
白白白と木葉桜十五夜④ 狂気狂乱狂騒狂宴
伏線は物語には絶対に必要なモノである。
恋愛ものでいえば普段自分から遊びに誘わない幼馴染が唐突に「明日遊びに行かない?」などと電話してくる。
バトル物でいえば倒した敵が「本当の敵は、お前のお――――――」と言った瞬間に何者かに殺される。
推理ものでいえば事件が起きたその時にある人物だけ姿が見えなかった。
異論はあるかもしれないが、これらのようなモノは伏線と呼ばれる。
伏線とはのちの展開に備えてそれに関連した事柄を前のほうでほのめかしておくことだと言われる。この説明がばっちりそうなのかというと微妙かも知れないが、大筋は外していないだろう。
そして、だから、上条当麻は敗北した。
伏線が『はられて』いなかったから。
「伏線……」
「伏線だよ。十五夜。伏線。伏線。伏線なんだ。この世の全ては伏線がはられてなければならない。僕も君も彼も彼女もあいつもこいつもどいつもこいつも伏線をはらなければ、貼らなければならないんだ。この世界で有利に生きたいのならば」
狂騒するかのように口をまわして熱烈に語り語る。それは十五夜でも見ることの少ない、白の興奮した姿だった。
何が、白をここまで駆り立てるのか。それはながい付き合いの十五夜にも分からない。
「伏線。ただそれだけでいいんだ。それさえあれば、それが、それ故にそれを、伏線を貼っておけば僕はこの世界に生きられる。生きて、生き、て、伏線の通りに、伏線のままに、伏線のはった道筋を通って」
だが、それでも分かるのは。
「伏せられた事実を、貼られた螺旋を、上にある傍点が、引かれた傍線に、ちょっとしたしぐさが、表情が、地の文の事実が、誰かの僕の君のおまえのこいつのあなたの彼女の見知らぬ人の化物の罪人の咎負の黒幕の大罪の彼の言動が、血筋が関係が、その異常性が、すべてがすべて全部何もかもちょっとしたことでも伏線になってなりうってなりえてなりなりうる。だから、言動一つにでも行動一つにでも言葉一つにでも日常においても非日常おいてもちょっとしたすべてに気を使って気を付けて気を散らして気を張って気張らなければならないんだ。例えば十五夜君の言動なんてまさしくそうだ君が外に出て戦っていた間に無意識だろうがいくつもの行動がはられてしまっているんだぞそのことに君は気付いているのか?まず最初は君がこの『天秤の間』から第八学区の超高層ビルに位相を改竄して移動した時だがこれはまだここから移動するのは観測もされないから別にいいんだただ次だわざわざ位相の改変を利用してビルの金網を透過しさらにビルから飛び降りる必要はどこにあったんだ階段を使えよ階段をわざわざあのタイミングで位相操作を行うなんてどう考えても伏線になってしまうだろうがわきまえろよ僕の努力を無駄にするつもりか塵芥人形その後もだ彼者誰時に輝く月シャイニングムーンの狙撃を防ぐのにお前は位相を使った防御を行ったなそれはなぜだなぜあのタイミングで位相による防御を行う羽目になったのか君の力を外に示すことになったのか君はお前は貴様はあなたは本当に分かって考えて思考しているるるるのか貴様がもっと最初から警戒範囲を広めていればあんなことにはならなかったはずだろうが確かに地の文で『今、十五夜が彼者誰時に輝く月シャイニングムーンの狙撃を防いだのは、当然のことながら偶然では無い。その理由は十五夜の原石にあった――――――』くらいのことは書かれるかもしれないがこんな序盤で普通ならお前の力の詳細は明かされないはずなんだなのにおそらく今回の件で読者の奴らは別として他勢力特にアレイスターの奴にはお前の力が原石が能力が『局地的位相操作』だと分かってしまったぞお前君は貴君あなたテメェその責任とれるのか君力は僕が見た数多の人間の中でも強力で扱いやすくてだからこそわざわざ引きこもっている君を僕が引っ張り出していろいろ調教してやったのにそのすべてを無に帰きす無に帰かえす無かったことにするつもりかいい加減にしろいいかよく考えてから行動しろお前の一挙手一投足から言動思考内心その他すべては作者によって描写される可能性があるんだぞそのまわらない頭にもう一度深く刻んでおけよ木偶塵屑戦う時に考えるべきことも思考してはいけないこともいちいちいちいちいちいちいちいち僕が説明しないといけないほど愚かで馬鹿な愚図じゃないだろうお前はいいか何度でもいうが僕のフォローにも限度限界があるんだからな確かに僕は目的のために一心不乱に万進して前進して歩み進んでいく気概はあるが僕の目的の達成に君は必要だからめんどくさく思いつつも無意味だろうが説明をしてやってるんだあぁ二度も三度も同じことを言わせるなよ一度の説明で完全に完璧に完成にどうして理解できないんだ僕よりも優秀で僕よりも有能で僕よりも優美で僕よりも多芸で僕よりも万能で僕よりも優等で僕よりも赫々かっかくなのにどうしてお前らは!君は!言われたことを覚えることも実行することも出来ないんだそんな難しいことを言っているつもりはないのに不可能なことを命令しているわけでは無いのにのにのにも関わらず八面六臂の活躍をできる君たちが万能で全能な君たちは言われたことが出来ないんだいいかもう一度言うぞ何度目か知らないがもう一度言うぞもう何度でもいうぞ脳に直接刻み込んでおけよ塵人形!!!その一挙手一投足から!思考にいたるまでの全てが!全部!何もかも!あらゆることがものが!描写される危険性があるんだよ!!!だからもっと注意深く行動しろ注意して行動しろ迂闊な言動行動は控えろここではともかく外では絶対に控えろさもないと十数年をかけて育んで育ててきた僕の計画がすべて全部何もかも意味がないことになるだろうが!!!気取られないように慎重に用心深く翼々と抜け目なく進んできた計画が計略が計画スケジュールが無意味に無価値に無意義に無用になってしまってそうしたら僕が!僕が己の全てをかけて!ずっとそれだけのために生きてきたのに失敗するなんてそんなことに今更なったらどう責任をとるつもりなんだあああ、ああああああ、あ、ああ、ああああああああああああああああああ、ああああ。あああ、あ、君は僕が見出して僕が!作り出したのに、なのになのになのにそれで最高の人材を素材を人間を生物を生命を選定して伐採して剪定して精選して厳選して択ってここまで育てて育成してきたのにその期待を!希望を!軌跡を!奇跡奇蹟を!どうして踏みにじるようなまねが裏切りが出来るんだよ恩を忘れたとか恩を売るとかそんなつもりは全然まったくこれっぽっちもないが君たちお前たち僕たちは僕の理想に理屈に幻想に賛成して賛同して支持して賛して共鳴して同意して同心して合意してだからここにいてこの立場につくことを許したはずだろうなのにだからなのにどうしてどうやってどうすればここまで僕がそれだけはと注意して注視させたことを破ることが出来るんだ!!!僕よりも頭のいいくせに僕なんか目じゃないくせに僕を圧倒できるだけの能力が頭脳があってあるからあるのに僕よりも僕が僕僕僕に僕を僕僕僕僕僕僕僕僕僕とともにこのせ」
「委員長!!!!!」
今・の・白・は・異・常・だ・、ということ。
「―――――――――――――――――――――――おっと、僕としたことが。あぁ、今のことは忘れてくれ十五夜。とんだ醜態をさらしたな」
「忘・れ・ろ・」
「―――――――――――――は、――――――い」
そ・の・言・葉・に・対・応・す・る・か・の・よ・う・に・十・五・夜・の・目・か・ら・光・が・消・え・た・。
「ちっ、………………そのまま4分26秒23前までの記憶を消去デリートしろ。その後再起動リスタート」
「―――――――は、―――――――――――――――――ぃ」
それは同じ人間にするにはあまりにも非情な命令ではあった。だが、無意識化でそれを実行するように刻まれている十五夜の意識は、本人の拒絶の有無を問わずに白の命令を実行した。
記憶を削除し、時間感覚を制御し、白の言うように意識を再起動させる。
現在から4分26秒23前までの記憶を無かったことにされた十五夜は自らの記憶に一切の疑問を持たずに、もう一度4分28秒前と同じ言葉を発した。
「伏線…………」
「そう伏線だ、十五夜。もっと言えば上条当麻がある手がかりをつかんでさえいればあの戦いで埋娥に勝つことは出来た」
「ある手がかり……ですか?」
気付いていない。
気付いていない。
気付けない。
十五夜は決して気付けない。自らの記憶がデリートされてしまっていることも、目の前にいる男がそれをなしたという事も絶対に気付けない。
なぜなら、それは十五夜が白のことを信じているからで、十五夜が白のことを盲信しているからで、十五夜が白のことを全肯定しているからだった。
十五夜は白が他者に『悪い』ことをするなんて考えていない。
十五夜は白が人間に『悪』をなすなんて思っていない。
だから違和感も感じない。
「ベッドの下の」
そして話題は移る。移ってしまう。
「くまのぬいぐるみの中の」
十五夜が気付けないままに。
「レポート用紙の束」
過ぎ去った話題を十五夜が指摘することはもう無い。だから、話題は移る。上条が回収できなかった、気付くことのできなかった、伏線へと。
「それが、上条当麻の見逃した最高レベルの伏線キーだ」
「ベッドの下のくまのぬいぐるみの中のレポート用紙の束……ですか。それは、上条当麻が訪ねた常盤台学生寮の部屋の中のことを言っているのですか?」
「その通り。さすがに頭のまわりが早いな。あの時、上条当麻と白井黒子は絶対能力進化実験レべルシックスシフトの憔悴していた御坂美琴についてのてがかりを得ようとしていただろう。そしていないはずの妹、初春飾利からの妹達シスターズという情報、絶対能力進化実験レべルシックスシフト等様々な情報をえた」
あの時の上条らの動きは自分たちの得意分野を駆使した最高レベルのものだった。上条当麻、白井黒子、初春飾利。誰が欠けても御坂のもとに辿り着くことは不可能だっただろう。
だが、それでも上条らは御坂美琴が何かに巻き込まれていて、それが絶対能力進化実験レべルシックスシフトと呼ばれるものであるという事までは辿り着けたが、その絶対能力進化実験レべルシックスシフトの内容まではたどり着けなかった。
だから負けたのだ。
目的が明確化されていなかったから、事情が完璧には分からなかったから。
「だけど彼らは絶対能力進化実験レべルシックスシフトの内容がわからなかった。御坂美琴が何に巻き込まれているのかわからなかった。それさえ分かっていれば、きっと届いたのに」
「…………………………………」
「そしてあったんだ。上条当麻がいたあの部屋の中に。御坂美琴が普段使っているベッドの下に置いてあるくまのぬいぐるみの中に。絶対能力進化実験レべルシックスシフトの内容が記された書類が。御坂美琴が絶対能力進化実験レべルシックスシフトについてしらべるために収集した情報が」
御坂美琴は寮の規則で禁止されているものを持ち込むためにくまのぬいぐるみを改造して使っている。そのくまのぬいぐるみの中に絶対能力進化実験レべルシックスシフトについての情報が記された書類もあった。
「それさえあれば、勝てた。過去をやり直すことは僕には出来ないが、それでも言うのなら、あの時上条当麻か白井黒子のどちらかがその絶対能力進化実験レべルシックスシフトについて記した書類に気付いていれば状況は確実に変わっていた。変わっていたんだ」
白井ならばもしかしたらくまのぬいぐるみの中に何らかのものが入っていることは知っていたかもしれない。でも、白井もまさかそんなところに自分たちの求めている情報があるとは思わなかった。そして上条は言わずもがなだろう。
だから、誰も気付けなかった。
その場にあった重要な伏線に。
「勝てなかったのは上条たちが書類伏線を見つけ回収しなかったから。……納得はいったか?」
「はい。――――――説明していただき、ありがとうございます」
「そうか。納得がいったならもう出ていけ。僕も、これから考えなければならないことがあるからな」
「はい。失礼します」
『天秤の間』から出ていく十五夜をしり目に見ながら、白はこれからのことについて思考を巡らせた。
「アレイスター=クロウリー。死縁鬼苦罠。天埜郭夜。妹達シスターズ。御坂美琴。…………考えなければならないことは無数にあるな」
計画は絶対に成功させる。でなければここまで生きた意味がない。
そう、強く思って、白は考えを深める。
「――――――そういえば、伝え忘れたな。……まぁいいか、後で各総隊長と十五夜には送っておこう」
今まで忘れていたが、先ほど諜報部隊の報告にあったことを白は思い出した。たいして重要でもないことだから。今の今まで忘れていた。
「第三生産部門が壊滅したという報をな」
何でもないように、大事を口にした。一部門が壊滅するなどどう考えてもたいしたことである。だが、白にとってはそうでもなかった。
「さて、次の選定はどうするか」
だから今日も白は思考する。
世界の嫌われもの、白白白は考える。
世界をよりよくするために、世界の風紀を守るために。
世界を、――――――ために。
前半の白のセリフ読みにくいですよね。
わざとです。
ぶっちゃけシスターズ関連は贖罪(爆笑)の一方よりも一切関心なさそうな御坂の方が気になるわ
未だに打ち止めの存在すら知らないんじゃなかったか
>>880
そもそも妹達編で御坂が心痛めたのはクローン作られたことより、それがガンガン虐殺されてく状況だからなあ
(実際妹達の存在知った時のリアクションは驚いたけど追い詰められるほどじゃなかったし、元より御坂に何か責務のある話じゃない)
実験後のスタンスは御坂は「人間として生きてく手伝いくらいはする。困ったことがあったら言ってね」
妹達は「その時はヨロシク。(でも基本的にお姉様は巻き込みたくないし頼るのは最後の手段)」くらいだしなあ
妹達に責任取るべきはアレイスターや一方通行の役割だろ
まあ、そのクズ2匹が何かの責任取ろうとしたのはついぞ見たこともないが
https://syosetu.org/novel/158074/16.html
屋上の戦い⑨ 脱落者1名
分かっていたはずだった。敵が圧倒的な格上であることぐらい。
知っていたはずだった。連係が完全に取れないことぐらい。
違和感は感じていたはずだった。何か推理に不備があるんじゃないかと。
だがそれでも突き進んだのはきっと焦りがあったからだ。白井も上条も怪我をしていて、なるべく早めに治療しないと大変になると焦っていたから。
もっと慎重になるべきだった。もっと考察を重ねるべきだった。もっと色々すべきことはあったはずなのに。
だからこういう事態が起きた。
「な、ああああああああああああああああああああああああああああああッッッッッ!!!!!」
「なん、っっっ!!!???」
あり得ない。信じられない。考えられない。訳が分からない。理解できない。予測の範囲外。思考の埒外。
上条らが今戦っている人間の超能力は『眼で見たモノを捻じ曲げるモノ』で、それはつまり前後から挟み撃ちにしてしまえば上条か白井の片方は捻じ曲げられずに済むという事のはずだった。
前を見ている人間は後ろを見ることは出来ない。人の眼は後ろにはついていないのだから。
故に、前後からの挟撃は最善策。瞬が対応できない最善の攻撃。そしてそれを狙ってすることのできる上条と白井はやはり、『表』の人間としては優秀なのだろう。そもそも『表』の一般人が瞬と戦えば、瞬のトリックを暴く暇すらなく10秒で殺されるだろうから。
しかしその中途半端な実力は時に悲劇を生む。弱ければ一瞬で殺されていたが、中途半端に強くてもやっぱり負ける。
上条と白井は中途半端に強かった。
だから、瞬の本気を引き出してしまった。
「「――――――――――――ッッッッッッッ!!!!!!!?????」」
上・条・と・白・井・の・全・身・が・同・時・に・捻・じ・曲・が・る・。
挟撃で、安全策の最善策で、瞬が捻ることのできるのはどちら片方のはずなのに。
前提条件が崩れる。
安全策が機能しなくなっていく。
ベキベキベキベキベキッッッ!!!!!と、全身が軋んでいく。音を立てて皮膚が捻れ、骨が見え始め、プチプチと神経が断裂し、腕が、足が、胴体が、首が、頭が、腹が、膝が、肘が、爪が、指が、手が、捻れ、捻られ、曲がり、狂い、死んで、終わっていく。
そしてその瞬間だった。
(――――――ぁ)
上条の思考に電撃が奔る。
(――――――あぁ!)
辿り着いた。
辿り着けた。
(そういう――――――)
上条当麻は、
(そういう、ことかッッッ!!!)
瞬瞬の超能力の全貌真実に辿り着いた!!!
フラッシュバックのように今までの情報が、推理が、脳裏によみがえる。あぁ、そうだ。それならばすべてに説明がつく。
『……捻転。――――――――――――――――――凶れ』
あの裏路地の戦いも。
『…………ッッッ!!!???』
屋上に空間移動テレポートさせられた瞬が驚いていたわけも。
『なっ、よまれ……っ!?』
ただ掴まれただけの白井の腕が捻じ曲がった理由も。
『……予期。やはり、後ろに空間移動テレポートしていたか』
まるで見ていたように白井の位置を常に把握していたことも。
『なぜ私が空間移動テレポートする場所がわかるんですの!?、か?』
目を瞑っていても白井の空間移動テレポート先が分かったわけも。
『……倒懸!な、なにが……ッ!?』
白井の空間移動テレポートさせた金属矢が瞬に当たったのはなぜか。
『…………っァ!!!???』
超低姿勢からの上条のスライディングが瞬に当たったことの意味。
『……煙幕!?』
煙幕の中でも瞬は攻撃してこなかった。
『……基本的に人間が外界を把握する手段は五感ですわ。だから彼が私達の行動を把握するための手段にも五感の内いずれかが使われているはずです』
白井の言葉は的を得ていた。
『がっ、アアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああッッッッッッッッッ!!!!!!!!!!』
閃光弾フラッシュをくらったことで右手を抑えて絶叫していた瞬。
『……嘲笑』
前後からの挟撃に対して上条と白井の双方を一気に捻じ曲げたこと。
これらすべてが、たった一つの事実を示している。
すなわちそれは――――――。
「白井!俺のそばに来いッ!!!」
ダメだ。
絶対にダメだ。
「コイツの超能力は――――――」
叫びながら上条は己の身体に幻想殺しイマジンブレイカーを使う。
そして同時に焦る。
白井じゃ瞬には勝てない。どんなに空間移動テレポートしようと、どれだけ奇襲を仕掛けようと、すべてが無意味に帰する。
だって、
なぜなら瞬は、瞬瞬はその身体に。
「――――――っ!?」
が、その声は間に合わなかった。
捻じ曲げられている身体をどうにかしようとした白井は既に別の場所に空間移動テレポートしてしまっていた。そして、白井が空間移動テレポートした場所は上条のそばではなく、どちらかといえば瞬の視界から確実に外れられるような場所であった。
加えて白井は上条のように瞬の超能力チカラの真実には気付けなかった。
故に、
「……残念。一歩遅い」
瞬が一歩上回る。
そして、瞬の両目は白井を捉えていないのにも関わらず、
べ・ギ・リ・と・音・を・た・て・て・白・井・の・四・肢・が・捻・じ・切・れ・た・。
「ぎゃっ」
悲鳴が、上がる。
「アアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアあああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああッッッッッッッッッ!!!!!!!!!!?????」
「しらっ!?」
夥おびただしい量の血液が屋上にまき散らされる。捻じ切られた白井の四肢から滝のような赫が流れ出て、ぐちゃぐちゃになった断面からは白い骨が見えた。
「ぎっ、ぁ、ひぎゅッ、がっ、き、ぁ、アアアアアアアアアアアアアァァァァァァアッァァア!!!!!」
「く、そぉっ!」
白井は確実に瞬の両目の視界からは外れていた。これは絶対に確約できることだ。瞬の両目は、白井の姿を一ミリも捉えていなかった。
であればなぜ、白井の四肢は捻じ切られてしまったのか?
ほら、答えはもうすぐそこにある。
「……無為。俺の方が近い」
白井を助けようと走り出す上条。しかし瞬の方が走り出すのは早く。
白井を助けようと白井に近づく上条。しかし瞬の方が白井との距離は近く。
絶叫し、発狂し、胴だけになった身体で屋上を這いずり回りながら、許容をはるかに超えた痛みは白井を気絶させることすら許さず、無論のこと空間移動テレポートなど使えるはずもなく、血液をまき散らし、捻じ切れた四肢を信じられないような思いで見て、上条や瞬のことを意識の片隅に入れることすらできず、まともな思考などできる訳が無く、むしろ考えるという行為でさえ満足にすることもできず、もはや本能的な、ある種の動物的な、ある意味では非常に人間らしい、しかし人間らしくない欲求を抱えて、そして何よりも五分後の死を確実視してしまった白井に、
「ぁ」
瞬が触れた。
「や」
そして瞬は四肢が捻じ切れた白井の身体を掴み、
「……捻転。――――――凶まがれ」
「やめろおおおおおおおおおおおおおおッッッッッ!!!!!」
屋上の金網を視線歪曲オッキョクールヴァで捻じ切って、屋上の外に投げ捨てた。
痛みの中で白井は自身の身体が宙に浮かぶことを認識した、などということはない。そんなきちんと白井は自分の現状を認識できない。
なにせ四肢が千切れてからまだ30秒しか立っていない。
四肢が千切れて30秒しかたっていない。痛みに慣れることなどあり得ず、感じられるのは死の気配。
目が映すモノを脳が受け取らない。
耳が受け取った声を脳が処理できない。
皮膚が感じた痛みを脳が許容できない。
鼻が嗅いだ血の匂いを脳が判別できない。
舌が舐めた血液を脳が判断できない。
まるで助けを求めるように手を伸ばす――――――ことはできない。
屋上の淵を掴むために手を振り回す――――――こともできない。
何も、できない。
何が、できる?
四肢の千切れた、超能力すら使えない身体で、『痛み』を感じることしかできない、『痛み』しか感じられない身体で。そう、もはや棺桶に入れられた骸と同じ。自身の意志で満足に動くことなどできず、脳を支配するモノはただ一つだけ。
常盤台中学一年生。空間移動テレポートの大能力者レベル4。風紀委員ジャッジメント一七七支部所属。御坂美琴の元ルームメイト。
白井黒子。
白い黒子。
白い黒衣。
脇役の、補助役の、裏方の、表に出ない、主人公の隣に立てない、見えない、
背景に紛れた、清廉潔白な、汚れの無い、軽い、広い、無垢な、明るい、
そんな人。
そんな、登場人物人
いてもいなくてもいい、世界物語キャラクターストーリー理論からすれば重要なポジションにはいない。替えがきく。代わりはいる。
そんな白井に上条は、
「――――――――――――――――――――――――――――――っっっっっ!!!!!!!!!」
声にならない声を上げながら、
手を伸ばす、
ことすらできず、白井は上条の視界から消えていった。
「…………………………………ぁ」
捻じ切れた金網の先で白井は地面に落ちて行った。四肢がない白井に衝撃を和らげながら着地するなどという器用なことなどできようはずもない。無様に落下するだけ。落下して落命する。屋上から落ちて地面で命を落とす。さながらイカロスのように。
「……………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………」
しばしの間上条は呆然とした。呆然とすることしかできなかった。
人が、目の前で死んだことは過去にもある。パルツィバルという人物は三沢塾で、上条の目の前で死んだ。
しかし、パルツィバルは初対面だった。
白井とは初対面なんかじゃなかった。
初対面なんかじゃ、なかった。
『あなたが、普段からお姉様と頻繁に能力で戦闘している方でよろしいんですの?』、『ちょっ、上条さん!!!???』、『上条さん!手を!』、『それに、先ほど私たちを襲撃してきた炎。あれをやった人間が待ち構えていないとも限りませんのよっ!今の状態で上条さんはまともに戦えるんですのッッッ!!?』、『…………………お姉、様』、『風紀委員ジャッジメントですの!!!傷害及び殺人未遂、誘拐、器物破損、その他もろもろの罪であなたを拘束させていただきます!!!おとなしくなさいなさいなっ!!!!!』、『会えますの?』、『やりますわよ、上条さん!!!』。
過去の情景が上条の脳裏に浮かぶ。
死んでしまった。死んでしまった!死んでしまったッ!!!
ゆっくりと立ち上がりながら、上条は怒りの炎をその目に宿らせて、涙に濡れた瞳で瞬を睨む。
「テ、メェ」
「……絶望。少しは『闇』を理解したか?」
口元を歪ませて嘲笑しながら瞬が言う。
そうだ、そうだ、そうだ!
人はみなそうなんだ!
憎しみの連鎖からは決して逃れられない。悲劇の仕組みからは決して脱出出来ない。だから、その仕組みを変えるために瞬たちは革命を起こすことに決めたのだ。何を犠牲にしてでも、例えその果てに地獄に堕ちることになったとしても、確かな今を犠牲にして、これから先をほんの少しでも幸福にするために。
「どけよ!」
「……却下。通すわけがないだろう」
上条の瞳には炎が灯っている。
決して消えない赫の炎が。
「……強制。この血に染まった屋上から出たければ」
大事な人を失えばみんなそうなるんだ。
大切な人が自分の力不足で[ピーーー]ばみんな後悔するんだ。
(……悔恨。この街は悲劇が多すぎる)
その悲劇を少しでも減らしたいと願ったから、あの『崩壊の十月実験』で死んでいった仲間たちのためには瞬は歩みを止められない。
例えその道が間違っていたとしても、もう止められない。
「俺を倒してからにするんだな!」
「ああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああアアアアアアアアああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアあああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああ!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!」
ふふふふふ!
ははははははははははははははははは!!!!!
これだよこれぇ!俺が書きたかったのはこれよぉ!!!
まだ中盤だから、二章は終盤になるにつれてもっと死ぬぜぇ!原作キャラだろうとオリキャラだろうと[ピーーー]ゼェ!!!
はッ、ハハ、ハハはハははハハはァ!!!!!
咎負虐殺……性別 男
所属 不思議の国の御伽噺フェアリーテイルワンダーランド
立場 不思議の国の御伽噺フェアリーテイルワンダーランド第二席
特殊能力 虐殺因子、占星魔術多数、肉体強化魔術、憑依魔術
二つ名 十億殺しビリオンマーダー、枢密院議長、チェシャ猫、前時代の遺物など多数
所持品 魔導書原典オリジン『星界の使者Sidereus Nuncius』、『イーリアス』、『アルマゲスト』、『テトラビブロス』など八冊。写本『運命の書』数ページ。魔術杖。三八式歩兵銃。九九式手榴弾。
戦闘スタイル 魔術攻撃、杖術、銃撃、手榴弾
称号 ラスボス
特記事項 『殺人』の悪性を冠する人類絶対悪の一人。獄天の扉ヘヴンズフィール事件の実行者の一人。滅亡天使計画アポカリプスプロジェクト遂行中。
https://syosetu.org/novel/158074/46.html
ボロボロになって絶望して[ピーーー]、主人公ヒーロー。
大好きです愛してます。
だから苦しんで苦しんで苦しんでから――――――[ピーーー]。
https://syosetu.org/novel/158074/72.html
惨劇最悪バッドエンド② あなた達が間違えた選択の果てに、世界は滅亡しました
終わった。
(終わった)
終わった。終わった。終わった。
(終わった。終わった!終わったあァァっっっ!)
だが、はたして何が終わった?
佐天の歯を噛み千切ることが?
もちろんそれは終わった。
佐天との間にあった信頼関係が?
それは修復は可能なほどに終わってしまった。
上条の精神性は?
それもまた、終わってしまったモノの1つだろう。
いくつもの出来事が終わり、モノとして存在しない目に見えない何かもまたいくつも終わってしまった。
それが良いか悪いかはまだ分からない。もしかしたら上条の行動が後の災厄に繋がるのかもしれない。
けれど、確かに此処に1つの事象は終了したのだ。
上条が終わらせた。
「はっ、はふっ……はぁーっ、ははっ!はぶ、げふッ!…………あ゛、…………ぁ゛」
唾液と血液でぐちゃぐちゃになった佐天の左手親指を掌の上に吐き出して、上条は荒い息のまま何とか佐天に話しかけた。
「さ、てん……大丈夫、か……?」
「……………………………」
返答はない。
「佐天……?」
膝に手をついて息を落ち着けながら、上条は顔を上げて佐天を見上げた。
佐天は、恐怖に歪んだ顔のままぐったりと頭を下にしていた。
「っ!……ぅ」
ピクリとも動かない佐天。
気絶している、のだろう。
全身から力が抜けている。だらりと下がった四肢に半開きになった口、開いた瞳孔。全てが佐天が正常ではない状態であることを示している。
言うまでもなく、上条がそうした。
(仕方なかった……仕方なかったんだ!)
そう、思うしかない。今はまだ、罪悪感を抱くわけにはいかない。
やらなければならないことがある。
佐天の痛みを、その犠牲を、無駄にするわけにはいかない。
「Aえー!」
と上条は食蜂を呼んだ。
佐天の左手親指が手に入った以上、後必要なのは刀夜の右目だけだ。つまり食蜂が刀夜の右目を抉りだせていれば、事態の全ては解決する。
はずなのに、
「何してるんだ……?」
奇妙なことに、食蜂は刀夜の右目に手を伸ばしたまま静止していた。
「大丈夫、か?」
緊張しているのだろうか。
躊躇しているのだろうか。
それも仕方ないと思う。上条だって、躊躇いの中で覚悟を決めて佐天の指を噛み千切ったのだ。だから食蜂が出来なくても仕方ない。
(いざとなったら)
いざとなったら、上条が食蜂の代わりをやるしかないだろう。
けれどまず、上条は食蜂を励ますためにその左肩に手を置いた。
「変わろうか?」
と声をかけて、
ドン、と食蜂の身体が倒れた。
「……………………………………………………………………………………………は?」
一瞬、停止。
だが、すぐに動き出す。
「食蜂!?」
倒れ伏した食蜂に上条はすぐさま駆け寄った。
何だ?何が起きている?どうして食蜂が倒れた?
「おいっ、どうした!?しっか」
呼吸が、停止していた。
心拍が、無かった。
「――――――――――――――――――――――しょく、ほう?」
一般的には、呼吸をせず心臓も停止している人間のことは死体と呼ぶ。
つまり、食蜂は死んでいた。
「待てよ」
死んでいた。
「起きろよ!何、何で……食蜂ッ!」
ガチャリと音がして、誰かが上条の背に凭れ掛かってきた。
「ぐっ、痛ッ!?」
背中に奔った衝撃を振り払うかのように、上条は食蜂の身体を支えたまま片腕を背に手をやった。
何かが上条の背中に墜ちてきた。
何かが上条の背中に降ってきた。
それを背中から降ろして、上条は降ってきた何かを確認し、
上条刀夜が死んでいた。
「……、…………?」
今度は言葉すらも出なかった。ただ、ふらふらと開いている方の手が刀夜の頬に伸びた。ふらふら、ふらふら、ふらふらと。
「父、さん……?」
動かない。
ピクリとも、動かない。
触らなくても分かる。
触れなくても分かる。
上条刀夜は死んでいる。
「あ」
呆けたように口を開きっぱなしにして、食蜂を横たえ、上条は立ち上がった。何が起こっているのかわからない。何が起こっているのか分からない。何が起こっているのか分からない。
でも何かが起こってるのなら、と上条は立ち上がった。
四つの枷から解放され、倒れ伏した佐天が視界に入った。
「は」
確かにそうだ。食蜂が死んだ。刀夜が死んだ。ならば佐天だって死んでいるだろう。全くそうだ。非常に納得できる。
「なら、ジャーニーも……」
佐天と刀夜が解放されたなら、もちろんジャーニーも死んでいる。見る必要もない。だって、12のルールにはこうあった。『ジャーニーが培養器の外に出るか、ジャーニーが死亡した時点で2人の拘束は解かれる。』、なら当然ジャーニーは死んでいる。
4人とも死んだ。
此処で生きているのは上条だけだ。
「……外に」
なら、もう此処に居ても意味はない。外に出て、助けを呼ばなければ……。
ふらふらと頼りない足取りで階段を上り、部屋を出る。
その部屋の外では、少女が死んでいた。
「…………………、蜜蟻、……か?」
その顔には見覚えがあった。
蜜蟻と名乗る少女と同じ顔をしていた。
……待っていた、のだろうか。
ジャーニーを救出した後の上条に会いに来るつもりだったのだろうか。
死体は黙して語らないから、真実はもう分からない。
「……………………………、…………」
歩く。
ただ、歩く。
とにかく外に行かなければ何も始まらない。外に行けば助けを呼べる。助けを呼んで駆動鎧パワードスーツを止められる。だから、まずスタジアムの地下から出なければならない。
「…………もう、ちょっと」
後数歩でスタジアムの外に出られる。
後2歩でスタジアムの外に出られる。
スタジアムの外に出られた。
「っ」
太陽光の眩しさで僅かに目が眩む。だが徐々にその明るさに慣れて、視界が開けた。
インデックスが死んでいた。
「――――――――――――――――――――――――――――――」
ひどい、酷い様だった。
片腕を切り落とされ、半ばまで切断された胴からは内臓が零れ落ちている。白を基調とした修道服はあちこち裂かれ、穴が空き、そこから今もなお流れ出る血が、修道服を赤黒く変色させていた。数えることすらも馬鹿馬鹿しくなるほどにインデックスの体の傷は多かった。
何度も、何度も、何度も。
誰かがインデックスの体を切り裂き、斬り付け、痛めつけ、命を弄び、尊厳を凌辱し、生き様を侮辱し、そして突き立てて、消えない傷を残したのだろう。
永遠に消えない、傷跡を。
どうして、そこまでされなければならなかったのか。
どうして、そこまでしなければならなかったのか。
「―――――――――――――――――――――――」
苦痛に満ちた顔を、
恐怖に歪んだ顔を、
せめて、せめて、せめて、少しくらい安らかにしたい。
だから上条は死にきったインデックスに近づいて、その瞳を閉じさせてあげた。
それくらいしか、出来なかった。
「……………………」
そうして、上条は携帯電話を取り出して病院に電話した。119番。死体を病院に渡さないといけない。
通話がつながる。
「あの」
自分でも驚くほどに冷たい声が出た。
なのに、
『―――――――――――――――――――』
「あの!」
通話口からの返答がない。
話しかけてこない。
「……仕事してくれよ」
119番からの返答がないなら自分で歩いて病院に行くしかない。
どこの病院が良いだろうか?一番近い所なら、やはりカエル顔の医者の所か?
「歩けば、いつか辿り着くか」
そう言って、上条はスタジアムの外に出る。
スタジアムの外には、輝の死体があった。
「……勝てなかったのか」
それだけ言って、上条は大通りに向けて歩き始める。大丈夫だ。死体が1つ増えただけだ。病院に連絡する手間が増えたけれど、それぐらい上条が負担するべきだろう。
10分ほど歩き、上条はようやく大通りに出た。
燃え盛る炎がいくつもあった。
「熱っ!」
炎上しているのは車だ。
交通事故が起こっているのだ。この大通りだけで何件も。
「……警察に、連絡しないと」
もう一度、上条は携帯電話を取り出して警察に電話した。
110番。
通話がつながる。
「あの」
『―――――――――――――――――――』
通話口からの返答がない。
話しかけてこない。
「……………………」
仕方がないから上条は電話を切って再び歩きだした。
どいつもこいつも仕事をせずにさぼっていて、学園都市は大丈夫なのだろうか?
「…………………………」
歩き続ける。
車の中で見知らぬ誰かが死んでいた。
歩き続ける。
歩道にある椅子の上で誰かが寝転がっていた。
歩き続ける。
道端でカップルが抱き合ったまま動かずにいた。
歩き続ける。
青髪ピアスが家に寄り掛かっていた。
歩き続ける。
炎の中に誰かが立っていた。
歩き続け、
「青髪ピアス……?」
振り返った上条は来た道を戻って青髪ピアスに近づいた。
近づいて、その瞳が何も映していないことに気が付いた。
「―――――――――――――――――――――――う」
一歩、下がる。
足が誰かの肉に当たる。
下を見る。
倒れ伏した吹寄と目が合った。
「うあああああぁぁぁぁぁぁぁッ――――――!!!」」
もう、我慢できなかった。
無茶苦茶に走り回る。
滅茶苦茶に叫ぶ。
「あああああああああああああああああっ!!!!!くがあああああああああああああああ!!!!!ぎあああああああああああああああああああああ!!!!!!!」
両の目から流れ落ちる涙が視界を歪ませる。
あらゆるところにある血液がびちゃびちゃと上条の足元で跳ねる。
どうしようもない。
もう、どうしようも、ない。
「何なんだよ、これ…………」
全て、死んでいた。
「何なんだよ、これっ!?」
死が、溢れていた。
「何なんだよ!これは!?」
ここには死しか、なかった。
「誰か、誰かいないのかよ!!!」
もう恥も外聞もなく上条は走り回った。ようやく、脳が現実を直視した。
死んでいる。死んでいる。死んでいる。
「誰か!誰かァッ!誰でもいいから、返事してくれよ!!!」
死んでいる。死んでいる。死んでいる。
「ふざけんなよ!どうしてこんなことになってるんだよ!!!俺が、俺……ああああああああああああっ!」
死んでいる。死んでいる。死んでいる。
「なんで、……なんで……っ、インデックス……インデックスぅ……うああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああ!!!!!!!!!!!」
全てが終わって滅んでいる。
視界を埋め尽くす赫と無数の死体だけが、上条が今ここにいる証明だった。
膝をつく。
何もかもが死に尽くした世界で、徐々に上条の正気が薄れていく。
なにもわからない。
なにもかんがえたくない。
精神を犯し尽す絶望が上条の中から希望を消し去っていき、五感すら奪い去ってく。
消える。消える。消え失せる。
意識が、思考が、感情が、何も残らない。
はずだったのに。
ざっ、と上条の後ろで足音がした。
「ッ!?」
その音を聞いた上条はまるで今にでも消えそうな蝋燭の明かりを必死に維持しようとするかのように振り向いた。
生きている人がいる?
誰かがまだ、生きている?
そう思って、上条は振り向いて、
白過ぎる腕に、首を掴まれた。
「あぎぃッ!?」
絞まる。しまる。しまっていく。
首が徐々に絞めつけられていき、呼吸が出来なくなっていく。
「だ……に……」
誰が上条の首を絞めているのか分からない。
何で上条が首を絞められなければならないのか分からない。
だが、
「時間、掛けすぎだよ」
全てが死に犯された世界に色を喪った呟きが響き、
――――――上条当麻の生命活動は、完全に停止した。
これで『とある暗部の御坂美琴』は完結となります!
3年モノ長い期間の連載となりましたが、今まで付き合ってくれた方には非常に感謝です。本当にありがとう!
後日にあとがきを投稿させてもらいますが、本編はこれで終わりです。
本当に、本当に、ありがとうございました!
セーブデータをロードしますか?
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いいえ
1周目における第一部第二章は惨劇最悪バッドエンドで終了したため現段階においては取得ポイントを計上できません。
ご了承下さい。
とある暗部の御坂美琴(1周目) 総合評価
第一部第一章 評価
第1評価
話数 111話……条件未達成。
合計文字数 562569文字……条件未達成。
平均文字数 5114文字……条件達成。
UA 57781……条件達成。
お気に入り 157件……条件達成。
感想 104件……条件達成。
総合評価 266pt……条件達成。
平均評価 6.41……条件達成。
調整平均 6.60……条件達成。
第1評価値算出
―111―5625―114+5778+157×10+104×10+266×10+6.41×100+6.60×100=6499
条件達成 7
条件未達成 2
二章開始時における難易度がハードになりました。
条件達成と認定。
取得ポイント 6499SP
第2評価
誤字指摘……54箇所。
読者による設定不備指摘……8箇所。
能力名が四文字では無いモノがあることに関する伏線……指摘済み。
アレイスター=クロウリーによる絶対能力進化実験レベル6シフトの干渉に関する伏線……指摘済み。
初まりの領域に関する伏線……指摘済み。
全体個体『御坂美琴』に関する伏線……指摘済み。
世界物語理論に関する伏線……指摘済み。
裂ヶ淵瞑娥さくがぶちめいがによる位相斬りに関する伏線……指摘済み。
千疋百目の地下下水道脱出行動に関する伏線……指摘済み。
木葉桜十五夜の召喚した武装に関する伏線……指摘済み。
『神』になった一方通行アクセラレータに関する伏線……指摘済み。
もう1つの絶対能力進化実験レベル6シフトに関する伏線……指摘済み。
千疋百目が地下下水道の崩落から白井黒子を助けた理由に関する伏線……指摘済み。
伏線を『貼る』が誤字ではない理由に関する伏線……指摘済み。
【】に関する伏線……指摘済み。
初春飾利の所属に関する伏線……指摘済み。
一方通行アクセラレータの魔神化を想定内とした存在に関する伏線……指摘済み。
御坂美琴が一方通行アクセラレータを拷問した理由に関する伏線……指摘済み。
アレイスター=クロウリーの進める『計画プラン』に関する伏線……指摘済み。
『死』の定義に関する伏線……指摘済み。
上条当麻が敗北したことに関する伏線……指摘済み。
風紀委員本部セントラルジャッジメントに所属する人間に関する伏線……指摘済み。
全体個体『御坂美琴』の思考矛盾に関する伏線……指摘済み。
風紀委員本部セントラルジャッジメントという組織構造に関する伏線……指摘済み。
見捨てられた女グレイレディの正体に関する伏線……指摘済み。
ミサカネットワーク総体の気付きに関する伏線……指摘済み。
風紀委員本部セントラルジャッジメントと滞空回線アンダーラインに関する伏線……指摘済み。
原作では気づくことのできたぬいぐるみに関する伏線……指摘済み。
上里翔流に関する伏線……指摘済み。
アルフの発言に関する伏線……指摘済み。
占卜卜占に関する伏線……指摘済み。
アレイスター=クロウリーの上条達へのバックアップに関する伏線……指摘済み。
第2評価値算出
54×0.5+8×5+30×1=97
『真実解明トゥルーエンド』ルートへルート分岐。
――――――世界物語キャラクターストーリー理論による正史認定を行いました。
以下、第一部第一章は『真実解明トゥルーエンド』ルートで固定されます。
条件達成と認定。
取得ポイント 9700SP
第3評価
御坂美琴VS死縁鬼苦罠……勝者 死縁鬼苦罠
御坂美琴VS一方通行アクセラレータ……勝者 全体個体『御坂美琴』
木葉桜十五夜VS罪罰贖&波並波狂濤……勝者 木葉桜十五夜
木葉桜十五夜VS矛盾矛盾&鳳仙花蝶々……勝者 木葉桜十五夜
木葉桜十五夜VS一本線点々……勝者 一本線点々
ミサカ10032号VS一方通行アクセラレータ……勝者 一方通行アクセラレータ
白井黒子VS千疋百目……勝者 千疋百目
白白白VSアレイスター=クロウリー……勝者 不明
上条当麻VS扼ヶ淵埋娥……勝者 扼ヶ淵埋娥
神亡島刹威VS浣熊四不象……勝者 浣熊四不象
一方通行アクセラレータVS『空白の主』……勝者 『空白の主』
常世涯最果VS木原脳幹……決着つかず
木葉桜十五夜VS『空白の主』……決着つかず
木葉桜十五夜VS『空白の主』VS木原脳幹……引き分け
常世涯最果VS裂ヶ淵瞑娥……勝者 常世涯最果
ミサカ19090号&ミサカネットワーク総体VS死縁鬼苦罠&天埜郭夜……勝負中
アレイスタークロウリーVS白白白……勝負中
佐天涙子……敗北者
第3評価値算出
―1+0+0+0+0+0―1+0―1+0―1+0+0+0.5+0+0.5+0.5+1=-1.5
侵略者インベーダーによる侵蝕が1段階進みました。
条件未達成と認定。
取得ポイント ―1500SP
第一部第一章総合取得ポイント算出
6499+9700-1500=14699
合計取得ポイント 14699SP
上条当麻のステータスを表示します
上条当麻……性別 男
年齢 15歳
特殊能力 幻想殺しイマジンブレイカー
称号 主役級メインキャラクター、主人公ヒーロー、救済者ヒーロー(未覚醒状態)
称号スキル 主人公補正(真)、なるようにならない最悪If nothing is bad、カリスマ(弱)
固有スキル 前兆の感知(兆)、不幸、不撓不屈(弱)
買い物
何を買いますか?
特殊文字(認識不可状態)の可視化(第一部第一章のみ)……100000SP
スキル……各10000SP
記憶の引継ぎ……10000SP
サブストーリー……各5000SP
アイテムの引継ぎ……5000SP
経験値の引継ぎ……1000SP
友好度の引継ぎ……1000SP
TIPS……各100SP
イベント絵詳細
頂にて君臨する風紀委員本部セントラルジャッジメント
汝、人を捨てても護りたいモノがあるか?
スキル詳細
前兆の感知
説得
女たらし
サブストーリー詳細
御坂美琴初めてのお仕事
たぶん最終章にならないと意味の分からない会話劇
上里勢力結成譚 第一幕
TIPS詳細
オリジナル単語1つに付き100SP
記憶の引継ぎ……10000SP ←
記憶の引継ぎ……10000SP を買いますか?
はい ←
使ったSPは二度と戻りません。それでも 記憶の引継ぎ……10000SP を買いますか?
はい ←
記憶の引継ぎ……10000SP を買いました。1周目の記憶が2周目に引き継がれます。
取得ポイントが4699SPに減少しました。
他には何を買いますか?
特殊文字(認識不可状態)の可視化……100000SP ←
特殊文字(認識不可状態)の可視化……100000SP を買いますか?
はい ←
特殊文字(認識不可状態)の可視化……100000SP を買うためにはSPが足りません。
取得ポイントは4699SPのままです。
他に何を買いますか?
https://syosetu.org/novel/158074/74.html
74 / 74
私はいつも一人だった。
だから願った。愛されたいと。
私は多くの人から愛された。
だから思った。一人がいいと。
そして私は独りになった。
だから悟った。これが幸福だと。
――――――二九七
それでも僕は、明日が欲しかった
裏お茶会~1周目~
崩れ落ちる上条ヒーローの身体を睥睨しながら、230万の死体で溢れる学園都市の中で僕は溜息をついた。
「わりと、期待してたんだけどね……」
言葉にすることで僕は僕自身の考えを再認識する。
そう、期待していた。本当に期待していたんだ。
上条当麻なら、あるいはこの僕を上回ることが出来るかもしれない、と。
「いや、……矛盾だな」
僕の世界の人類を護るためには、いずれ上条当麻は必ず[ピーーー]ことになる。それが早いか遅いかの違いだ。
「…………遅かったね、アレイスター」
「殺したのか」
「どのみち、間に合わなかったさ。彼はあまりにも遅すぎた」
男にも女にも、子供にも老人にも、聖人にも囚人にも見える『人間』、そう評されるアレイスターの方に視線を投げかけて、僕はこの全てが終わった世界を見通す。
70億の、そして数百の死体しか存在しないこの世界でただ1人、僕だけは違うから。
結局すべてが絵空事の虚言でしかないと知っているから。
「それを分かっていたからこそ、君も滅亡齎す七の子羊セプテム・アニュスの対策を発動させなかったんだろ」
「あの程度の術式に気付けないのならば、どのみちヤツは救済者ヒーローには相応しくないだろう」
「随分な言い様だ……。君の、君達の主人公ヒーローだろう?」
「違うな。私達の主人公ヒーローは彼ではない。上条当麻だ」
「厳しいね……。彼だって、僕がいる中頑張ってると思うけど」
「結果世界が滅んだが?」
「……………………もう少し、サポートしてあげれば良かったのに」
フラグが立たなかったのは確かに上条の責任だが、たった1回で完全な救済を為せだなんて難易度が高すぎるだろう。今回は解決しなければならなかったことが多すぎる。瞬を倒して、蜜蟻をどうにかして、学究会防衛作戦を成功させ、咎負虐殺を止める。
そんなの無理だ。
僕だって、サポートなしで出来るとは思ってなかった。
「それは」
「呼ばれてないのにじゃんじゃじゃ~~~ん!!!」
空から純正の人類絶対悪が降ってきた。
「五行……。今結構重要な話してたんだけど」
「あぁ、あぁ、あ~あ。まさかこんな結末になっちゃうなんてなぁ~」
「聞けよ」
いや、五行が人の話を聞かないのはいつものことなんだけど、今だけは邪魔しないでほしかった。アレイスターと一対一で、互いの本当の立場を曝け出して話せるのなんて、今ぐらいしかないだろうから。
「木原五行、全能存在パントクラトールか」
ほら話が次に移った。
「……………はぁ」
僕の隣に立つ少女を見て、アレイスターが言った。
当然、調べられている、か。
「くきっ、くききッ!!!ま~さっか!第六物語シックススストーリーの主人公ヒーローが死んじゃうなんて。フラグの立て方ミスっちゃった?」
「あぁ、ラスボスとの交戦フラグを立てないでサブイベントに入れ込んだんだ。馬鹿なことにね」
「くきっ!なら私のしたことの意味がなくなっちゃうな~。せっかく、第七物語セブンスストーリーの主人公ヒーロー連れてきて物語交錯クロスオーバーさせてあげようと思ったのに」
わざとらしい口調でアレイスターを挑発する五行を僕は止められない。権限自体は僕の方が上だし、立場も僕の方が上だけど、物語を進める役トリックスターの自発的な動きを止めることは僕には出来ないし、しようとも思わない。
そういう称号キャラクター性の持ち主の行動はどのみち止められないモノだし。
「ふん、たかが全能如きが私と の話を邪魔をするのか」
だいたい、物語を進める役トリックスターは自由だからこそ意味があるんだ。
「くきぃ!たかがっ、たかがだってさリーダー!……このあてをたかがだなんて、さすがにムカつくかなあああああああああああああ!!!!!」
だからほら、また勝手に手の内を晒す。
「超克科学オルディニスクレアーレ――――――完全無欠ウルトラ、十全十美スーパー、常勝不敗アンリミテッド、絶対究極パーフェクトガール、故に私は全知全能の絶対神イズミー!」
超克科学オルディニスクレアーレ。覚醒ブルートソウルした極点突破者デスペラードのみが使う事の出来る世界物語キャラクターストーリー理論の最終到達地点。人類最終到達地点候補生たちの目指すべき場所。
といっても今回五行が使ったのは見る限りただの即興術に過ぎないのだけれど、出来れば勝手に使わないでほしかったなぁ……。
「あれ?発動しない……?……うん?」
まぁ、当然邪魔されるんだけど。
「全能の逆説オムニポテント・パラドックス。……まさか知らないわけではあるまい」
二言だった。そして、その事実がアレイスター=クロウリーという魔術師にして科学者の強さを示しているんだ。
「……ぶ~、つまんなぁ~い」
がっかりと肩を下げて、興がそがれたように超克科学オルディニスクレアーレの発動を止めた五行。まさか、全能の逆説オムニポテント・パラドックスを、全能者は全能であるが故に全能ではないという一学説を忘れたわけではないだろうに。
いや、五行のことだから本当に忘れていたのかもしれないけど。
「殺しちゃう?殺っちゃう?ねぇリーダー!」
「落ち着けよ五行。いや頼むから落ち着いてくれ。だいたい彼を殺したところで」
空から剣が降ってきた。
「死を晒せよ、侵略者インベーダー」
そんな声と共に、全長数十キロメートルにもわたる長大な剣が五行の脳天に向かって振り下ろされる。誰が、どうやって?そんな疑問が浮かぶ……、
「痛い」
だなんてことは当然なかった。
当たり前のことだ。僕は知っている。僕は識しっている。その剣がどんなもので、その剣を操るのが誰なのかを。
「痛い痛い痛い!痛いよリーダー助けて!」
「はいはい。ちょっと待ってろ」
剣が直撃してるのに傷一つついてないくせにそんな泣き言を言う五行に呆れながら僕は軽く剣に触れる。それだけで、剣は消え去る。
干渉。
無限に修正され続ける罪深き世界5Re:worldbreakerを使う僕からすればこの程度のことは当然だ。
「出てきなよ。いるんだろ?」
「無傷か」
いつの間にかアレイスター=クロウリーの隣に立っている男を僕は知っている。
「右方のフィアンマ。あいつの下位互換程度が今更何の用?というか、この大絶滅リセットから生き残ってたんだ」
「……俺様も舐められたモノだ」
僕のあからさまな挑発に、右方のフィアンマはあからさまに怒りを見せた。まぁ、下位互換と言われていい気になるような人間はいないだろう。
「あいつ、それって僕様のこと言ってるの、主あるじ?」
そいつは右方のフィアンマと同じように突然現れた。
これで3VS2。
「『神の代行人』GE13か」
「……下位互換程度が僕様に話しかけるなよ。ウザいんだよ代替品」
GE13が右方のフィアンマを睨みつける。仕方がない事とはいえこの2人は相変わらず相性が悪い。といっても聖なる右を持つ右方のフィアンマが『神の代行人』であるGE13の劣化レプリカなのは周知の事実だ。そして自分の劣化レプリカ、クローンのようなモノが勝手に造られたというのは確かに気分の良いモノではないだろう。
「なんだ、還してほしいか?GE13オリジナル?」
誰が見ても分かるくらい上から目線だった。
その挑発には、当然GE13は耐えられない。
「――――――調子にっ」
「やめろ」
だから僕は止めに入った。やれやれ、いくら『核』が固まっていないとはいえ、安易に行動するのはやめてほしいモノだ。
「あひゃひゃ!怒られてやんの~!」
「……主」
縋るように目を向ける13を、それでも僕は静止する。
「13、別に聖なる右を使われたところで君がオリジナルであるという事実は揺らがないさ。だから簡単な挑発に乗るなよ。……まだ、底を見せるな」
「了承したよ、主」
底が知られても強さが変わらない先住民センチネルにとって強さを示すことは恐怖ではない。彼らの強さの限界点は1度知られている、だからこそその『上』にいけるんだ。底が暴かれれば弱くなる僕ら侵略者インベーダーとは違う。僕らは安易に力を晒せない。そうすれば、終わってしまうから。
「それにしても、本当に君達はこれで良かったのかい?」
「何がだ」
「大絶滅リセットで利するのは言うまでもなく侵略者インベーダーたる僕らだ。先住民センチネルたる君達からしたら、大絶滅リセットだけはどんな手段を使っても回避したかったんじゃないのかい?」
少しの沈黙の後にアレイスター=クロウリーが口を開いた。
「ある意味ではそうかもしれない」
肯定が返ってきた。
「だがある意味ではそうではないだろう」
否定も返ってきた。
そして後に続くように右方のフィアンマが言った。
「俺様達ももはや純粋な先住民センチネルとは言えまい。ならば妥協はするべきだ、というのが俺様達の出した結論だ。大絶滅リセット程度ならば、完全閉鎖アーカイブスルーや中断事象リアルが起きないのならば、やりようはいくらでもある」
「ふぅん……そう。だったらまぁ、初お披露目はこの程度でいいかな」
そう言って僕は、諦めたように言う。そういうしかないから、言う。
「愛し子よMary、愛し子よMary、僕の愛するMy fair愛しき世界よMary Sue。
その運命を改変しておくれCambiare il destino、
その物語を書き換えておくれFare una storia。
我が神のお望みとあらばWenn es meines Gottes Wille、
我らが神のお望みとあらばWenn es unsere Gottes Wille、
過去など無いに等しいのだDie Vergangenheit ist vorbei。
すべての可能性を内包した書の中でO mundo onde há esperança e o desespero
ただ一つの意志のみがEle destruiu何もかもを無に帰すのだo mundo」
何度も言ってきた初めての詠唱を、僕は紡ぐ。
「絶対不変の絶対法則アンチェンジナブルラウ――――――無限に修正され続ける罪深き世界5Re:worldbreaker」
「さあ、やり直そうか」
「次は、失敗しないようにね」
一つ言っておこうか。
愛がないのならば、この物語の真実には辿り着けない。
世界は禁書
用語は型月
通り名は西尾
最強オリ主メタ視点設定の読者煽り
やばすぎる
でもなんでしょうかね、原作で中ボスが死んでしまうと上条当麻らしくないといいますか……。この作品は二次創作なので自由にできますけど、原作でボスが死ぬのは僕としてはあまりうれしくないかもしれません…………すいませんごめんなさい。
僧正を救えなかった時も上条当麻はすごい悔いてましたし、やっぱり誰かを殺して終わりというのは上条当麻らしくない、禁書らしくないという気がします……。あくまで私の意見ですが。
上里のことも、できれば完膚なきまでに救ってもらいたいと思います。
まぁ私はキャラが容赦なく死ぬ方が大好きなんでこの作品ではオリキャラでも原作キャラでもバカみたいな勢いで死にますけどね!!!
無意味に無価値に目的を達成できず絶望しながら慟哭しながら涙を流しながら死んでいくキャラが大好きです!!!!!
理不尽な殺し合いの中で裏切られて死ぬ人が好きです。
仲間だと思って信頼した人に後ろから刺されるのが好きです。
洗脳して恋人を殺させた後に正気に戻すのが好きです。
人質を盾にテロを行わせてその人質の死体を見せつけるのが好きです。
これからも精進して参りますのでどうかよろしくお願いいたします。
感想ありがとうございます!
返信遅れて申し訳ありません。
さて、まず最初に言っておきますがこれはあくまで私の持論です。prayer様が影響を受ける必要はありません。
その上で言いますが他作品のキャラとなんらかの能力を比べる、このことを私は非常に無駄なことだと考えます。
なぜなら根拠がないから。
prayer様は「未踏級が一方通行より強い」とおっしゃいますがそのような描写は私が知る限りありません(どこかに記載があるのならば申し訳ない。私の知識不足です)
公式クロスオーバー等で実力の上下が明確化されているのならばまだしも、そのような根拠なき話は少なくとも私は証明できません。
なので、申し訳ありませんが『空白の主』が未踏級よりも強いのか否かという問いに対しては『そうかもしれないし、そうじゃないかもしれない』としか答えられません。
『空白の主』は禁書二次のオリキャラであって、ブラッドサイン二次のオリキャラでは無いのです。
望む答えではないかもしれませんが基本他作品とのキャラ比べはしないのが私のスタンスです。ご了承ください。
これからも精進して参りますのでどうかよろしくお願いいたします。
↓
魔神が雑魚ってことはありませんのでご安心を。魔神に基礎スペックから勝てる存在は理外人外12名のみです。これは絶対に揺らがないので。
まぁ木原五行やパトリシア=バードウェイは|王の遺産《レガリア》を持っているので魔神に対抗は出来ますし、空白の主は絶対値で張り合う事は出来ますが。
白き女王は■■■■によって■■することは一応可能ですが、正直白き女王はこの|■■■《■■■■■■■■■■》では[ピーーー]ことが出来ます。なぜならば『穢れなき真実の剣持つ「白き」女王《iu・nu・fb・a・wuh・ei・kx・eu・pl・vjz》』は既に『|■■《■■■■■》』で――――――。
いえ、これは一応ネタバレになるので避けておきましょうか。
むしろ理外人外に対抗できるのは現状ならばアンナ=シュプンゲルが最有力候補ですかね。あるいはドラゴンキラー。あるいは東川守。あるいは俺。あるいは『ウミガメもどき』。あるいは『編み物のヒツジ』。
最も、本当の意味での最有力候補は『訪れた者の願いを歪んだ形で叶えてしまう街』から脱出した1人の少年と1人の少女ですが。
これからも精進して参りますのでどうかよろしくお願いいたします。
現在進行形で書いてるからセーフ
【あっしへの質問なんだからここは僕様が答えてしんぜよう!】
【まずありがとう。私の能力はみんな大好き『シュレディンガーの猫』だから、これで我の生存は確定された。現段階ではだがなぁ!】
【そこに疑いをもたれるのはしゃくだなぁ。よしっ、こうしよう!《red》トマス=プラチナバーグは168話の時点で既に死亡している《/red》。《red》トマス=プラチナバーグは木原五行が殺害した。《/red》《red》トマス=プラチナバーグと木原五行は別人である。《/red》】
【まぁ本来は青き鎖の中で赤き楔を使うのは『大原則』に違反するけど、ここは『枠』の『外』だし許容できるっしょ。】
【あたいは理外人外だよ。理外人外の1人。|全能存在《パントクラトール》だよ。ちなみに所属する組織は敵同士だけど同じ科学者だから無限輪廻の転生者とは仲いいんだよねぇ……】
【神?悪魔?俺らをそんな区分でわけちゃあいけないね。】
【私達はそれ以【 話 し 過 ぎ だ 】……窘められたのでもうさよなら~】
【僕らは既存の時間軸には縛られない存在だからその質問は全くの無意味だよ。その気になれば複数の時代に跨って存在する事すら可能だしね】
【いっておくがそれは矛盾しない】
【絶対不変の絶対法則はもっと『上』の話だからね】
【完全に第四の壁を越えた会話でしたねぇ...でも個人的には今のような全能の傍観者状態より舞台に立って物語を進めて欲しいです。理外人外の皆さんが神の視点から引き摺り下ろされる日を楽しみにしています。】
↓
【その上から目線をやめろ塵屑】
【君のような存在がいるから、僕のような存在が生まれたんだ】
【反省しろ】
【反省しろ】
【反省しろ】
【後悔しろ】
【甘い、温い、そして読み込みが足りない】
【そこの赤に対する答えは書いてあるはずだよ。よく読んでみてくれ】
【世界は1つだけじゃないのだから】
学園都市統括理事会③ 絶対的な敗北
いつからそこにいたのか。
いつから会話に参加していたのか。
いったいいつから。
「ご、ぎょう……?」
呆然と、誰かが口にするその言葉。
この場にはいないはずの、たった今話題にしていた、人類絶対悪ビースト位階総序列第三位の名前。
「木原、……五行?」
「そう!あたしの名前は木原五行!人類絶対悪ビースト位階総序列第三位にして全能存在パントクラトールの二つ名を持つ禁忌の木原!木原一族の中の木原一族!」
「……冗談だーろ」
アンドレイが呟く。それは木原五行を除いたこの場の全員が思っていることだった。
気付かなかった。
誰も、誰一人として気づかなかった。
「……トマスはどこだ?」
苦罠がそういった。
「その席には、トマス=プラチナバーグが座っていたはずだ!」
はっ、と複数人が顔を上げた。そう、苦罠の言う通りだ。今五行が座っている席には統括理事会メンバーの1人であるトマス=プラチナバーグが座っていたはずだ。それは会議を始める前に全員が確認している。
潮岸は目線だけで周囲を見渡した。
いない。いない。いない。上下左右前のどこにもトマスはいない。そして自分の後ろにもトマスがいないのは他のメンバーの視線で分かる。ならばどこに、トマスはいったいどこにいった?
「ん~?あれ~、どこにいっちゃんたんだろうね~?」
「お、まえ」
誰かの心拍数が早くなる。
誰かの頬に汗がつたう。
誰かの喉がカラカラに乾く。
そんな中で、苦罠が怒鳴った。
「トマス=プラチナバーグをどうしたんだッ!?」
「分かってるくせに」
泰然自若に五行は答えた。たったそれだけの言葉でトマスの末路が想像できる。
「殺したのですか」
それを実際に口に出したのは親船だった。もっとも端的に想像できる末路。死という名の結末。だが、仮にそんな末路を辿ったのだとすれば違和感がある。
それは、
「死体はどこにいったのか、分かる人いるかな~?」
「余裕じゃねぇか、随分と」
五行を睨みつけながらアランはそういった。立場が分かっていないわけではない。五行が上で統括理事会が下。既に格付けは成されている。
だから覆す。
統括理事会を舐めるなと、アランは五行を挑発する。
「ここがどこだか分かってんのか?禁忌の木原だか人類絶対悪ビーストだか知らねぇが、俺達の前に姿を現して五体満足で帰れるとでも思ってんのか?」
「くららららら!!!強がり言っちゃって、か~わいいっ!」
身体を艶めかし気にくねらせながら、五行はあくまでも上から目線で告げた。主導権争いをするつもりは五行にはない。そんなことをしなくても、誰も五行には勝てないと知っているから。
「それとも注目を自分1人に集めさせて、その間に他のメンバーに何か準備をさせるつもりかな?くすくす、でも不思議にさぁ、思わない?はたしてうちはどうやってこの『蠍の間』にきたのだろうかや?」
牽制……、いや五行からすれば牽制ですらない言葉に、裏で準備を進めていた幾人かの動きが止まる。当然、いくら統括理事会メンバーだけの会議とはいえ完全に無防備な状態で来ている人間などいない。親船でさえ最低限の防備をしている。潮岸は駆動鎧パワードスーツ『シェルター』を周囲同化服カメレオンスーツで隠した状態で着ているし、薬味は予あらかじめ己の身体に薬物投与を行って身体能力をあげているし、アランは己のブレインである雪谷宗風からお墨付きをいただいている。
武器はある。
動けるのだ。
人ひとりくらいなら、殺せる。
ただ、
「おかしくないでしょうか?この『蠍の間』はランダムに地下空間を移動するいわば動く密室。会議が始まったら出入口は完全に閉鎖され、外部からの親友も内部からの脱出も不可能になるのに……。あてはいったいぜんたいどうやって『蠍の間』に来たんだよ!?分かる人は手をあ~げ~て~!今なら五行ポイントを100ポイント分あげますよ!」
楽しそうに、心底楽しそうにどうでもいいことを話す五行。
五行がどうやって『蠍の間』に来たのか?なぜトマスが消えたことに誰も気づかなかったのか?トマスの死体はどこにいったのか?確かに気になる。気になるが、それらの優先度は低い。はっきりいってこの場においてそれらの問題はどうでもいい。
今はそんなことよりも、五行にどう対するかという事を議論するべきだ。
(隙だからけだ)
潮岸は思う。潮岸は別に一流の戦士などではない。けれど分かる。偽装でも何でもなく五行は明らかに隙だらけ。その隙は潮岸ならばつける。駆動鎧パワードスーツ『シェルター』を纏っている潮岸ならば、いける。
本当にそうか?
(くそ……)
苦罠は思う。こういう事態も完全に想定していなかったわけではない。忠告はもらっていた。郭夜はこういう事態も想定していた。だから、武器はある。だから、生き残れるはずだ。
本当にそうか?
(どうしようかな)
奈波は思う。木原五行。人類絶対悪ビースト位階総序列第三位。その脅威は学園都市に来る前から知っている。人口衛星USA-224墜落事件、パリ全インフラ停止事件、他にも多数の大犯罪を犯した人間。そんな彼女が今、手が届くほどに近い距離にいる。どうするべきだ。いくべきか?出来るのか?世界に対する、人類に対する、日本に対する脅威を今、取り除けるのか?
本当にそうか?
「あれ?今笑う所さかいな」
「そうだな……。空間移動テレポート系統……、それも座標指定タイプではなく目印アンカーを設置して移動するタイプ、か?」
言いながら、苦罠は目配せした。統括理事会。学園都市の最上層部にして最暗部。混沌とした悪意の渦巻く屑の巣窟。他人を出し抜き蹴落とすことしか考えていない屑共。
普段は敵同士。どうしようもなく相いれない。
「惜しい!でも外」
けれどだからこそ分かる。
だからこそ、彼らはある意味で通じ合えている。
最初に動いたのは薬味だった。
「っ!」
薬物による身体強化を施している薬味は100メートル走の世界記録をはるかに超える速度で五行との距離を詰める。瞬きをする瞬間には、とまではいかないが、しかし一般人では到底反応できないような速度。
テーブルの上に乗りあげ、最短距離で五行のもとまでいく。
そんな速さじゃ遅すぎる。
「短慮過ぎない?」
とん、と。
軽くステップを踏んで、本当にほんの少しだけ身体をずらして、五行は薬味の攻撃から逃れた。薬味と五行の距離は今や10センチメートルほどしかない。近すぎる。近すぎるが故に、薬味は五行に攻撃できない。殴るにしても蹴るにしてもある程度の距離は必要なのだ。密着状態では攻撃などできない。
そして五行の位置取りは完璧だった。
(射線が、っ)
亡本も当然動いていた。懐に偲ばせていた半自動組み立て式拳銃を五行に向かって発射しようとしていた。そして実際に発射しただろう。
薬味の身体が五行を庇うような位置に無ければ、だが。
「ちっ!」
「おおお!!!」
薬味の動きにスリーテンポほど遅れてからアランと潮岸が動き始めた。
……語るまでもない事ではあるが、ここにいる統括理事会メンバーは全員戦う人間ではない。彼ら彼女らは策を練り、指示を出し、上に立つ人間であり、現場で動く人間ではない。
だから言うまでもなく弱い。連係も下手で、数の利を全くいかせていない。
駆動鎧パワードスーツ『シェルター』を着ている潮岸。
雪谷宗風からお墨付きを頂いているアラン・スミシー。
しかしそれでも普通、普通ならば、いかに戦士でないと言えども人一人に勝てないわけがないのだ。
相手が普通の人間であれば、どれだけよかったか。
「な」
「あ?」
何をされたのかもわからなかった。
気が付いた時には2人とも無傷のまま地に這い蹲つくばっていた。
(……た、……てねぇ、だと?)
身体に異常は感じられない。精神操作系能力を使われた形跡もない。外傷はなく、内傷もない。重力の異常も感じられない。拘束されている感覚もない。
にも関わらず全く動けない。
「這い蹲ってろよ雑魚」
嘲り。
それは普段、アランが他者に向けている声色。
だから屈辱だ。
これが人類絶対悪ビースト。
だが、
「…………」
だが、
(そんなことは分かっている)
そもそもだ、と潮岸は思う。
そもそも、今潮岸が生きている事自体がおかしいのだ。いや、それを言えばもっと前、五行がわざわざ姿を現したことがおかしい。
[ピーーー]つもりなら殺せたはずだ。いくらでもできたはずだ。だがそれをしなかった。
つまり五行は潮岸たちを[ピーーー]つもりはない……はずだ。
あくまでこの考えは潮岸の推論。だが当たっているだろうと潮岸は考える。でなければとっくに逃げている。最も、逃げられる可能性は0に等しいだろうが。
だからこれはあくまでパフォーマンス。
「そしてさようなら」
瞬きする暇もなかった。
衝撃すら感じなかった。
なのに、いつの間にか吹き飛ばされていた。
「っ!?」
更なる攻撃を行おうとしていた薬味は自分の身体がいきなり宙を滑空していることに驚愕した。
(待っ)
予備動作どころか攻撃後の余韻すら完全に存在しなかった。それが示すところはつまり、木原五行は薬味に対して何もしていないという事、か?
いや、いや、いや。
だったらなぜ薬味は吹き飛ばされた?
誰が薬味を吹き飛ばした?
「っ」
何も分からないまま、薬味は吹き飛ばされた勢いで壁に叩きつけられ、
(……………………は?)
ダメージが無かった。
確かに薬味は壁にものすごい勢いでぶつかった。壁がスポンジのように衝撃を吸収したわけではない。もちろん薬味側に何らかの保護が生じたわけでもない。勢いを緩めることは愚か、受け身をとろうとすることさえできなかった。
にも拘らず、薬味の身体には一切の外傷が存在しなかった。ちょっとした擦り傷すらも。
そして射線が開いた。
「――――――」
一段と大きい音が響いて、亡本の持っている拳銃から銃弾が放たれる。その弾丸は一瞬で五行のもとに辿り着き、五行の頭を貫い、
いいや、
「残念!」
「なぁ!?」
あり得ないことに超音速の銃弾を五行は噛んで止めた。そして口の中から弾丸を吐き出して五行は右手でそれをつまんだ。
「べっ~、まじゅいのぉ……。きゃぴ♡銃弾なんて効くわけないのに、そんなことも分からないの?せっかくだし、返すよ」
指で弾いた。
「ごっ、ぶ」
まず感じたのは痛みではなく熱さだった。熱い、熱い、熱い。燃える様な灼熱の痛みが亡本の脇腹を襲っていた。
信じられないような思いで亡本は視線を下げる。
血濡れていた。貫かれていた。
何に?
「指弾。まぁこれくらいわねぇ?」
言葉の通りだったのだ。亡本が放った銃弾を噛んで受け止めた五行は、今度はそれを指で弾いて亡本に返した。そしてその返された弾丸は見事に亡本の脇腹を貫いた。
久しぶりに感じた痛み。強く感じる命の危機。しかし、と亡本は薄く笑う。
これでいい。これがいい。
潮岸も亡本も薬味もアランだって分かっていた。敵わないことくらい知っていた。亡本たちは戦闘においては素人未満だ。そんな亡本達が禁忌の木原に勝てるわけがない。
だから、敗北したのは全然かまわない。オーケーだ。
(思った未満に、上手くいったわね……。だから上手くやってくれないと困っちゃう)
壁に寄り掛かったまま薬味は動かないでいた4人に意識を向けた。薬味にダメージはない。立ちあがろうとすれば立ち上がれる。でもそれはしない。あたかも酷いダメージを負って立ち上がれないような演技をしつつ、薬味は事態の推移を見守る。
「………………化物が」
「………………………」
「…………じょうだん」
「…………やはり、か」
残ったのは4人だけだった。
統括理事会の中でもアレイスターに次ぐ権力を持っている諦めてしまった賢人、死縁鬼苦罠。
かつては交渉術の達人であったが娘を危険にさらしてしまったことで一線を引いた勇気無き善人、親船最中。
九家が一家、奈落家より学園都市と日本の仲介役としてやってきた日本の守り手、奈落奈波。
中途半端な善性を持つが故に常に苦悩する老人、貝積継敏。
「来 な い の ?」
「無駄な戦いは、しない主義なんだ」
全てを諦めたように苦罠は言った。
勝てない。勝てるわけがない。こうなることは相対した時点で分かっていた。だから秘密裏に作戦を練ろうとしていたのに。
「我々を[ピーーー]つもりならばとっくにそうしているでしょう?何が、目的なのですか?」
「何が目的?何が目的?目的は同窓会だ」
「同窓会?」
「うん、あのね、ごぎょうね、ひさしぶりね、みんなにあいたいなって」
「……みんな?みんなって、まさか……」
「はぁ!皆つったら造られた子供たちプログラムチルドレンの皆に決まってんだろうが!!!アァ!?」
「ならばなぜここに来たのだね。ここには、その皆はいないぞ」
「……そんなことは分かってますよ。…………………でも13サーティーンは相変わらずどこにいるか分からないし、白は私の事嫌ってるし、だから郭夜に接触しようと思ったんですけど、電脳生命体αアルファにハッキングさせてメッセージ送ろうとしたらあやつまさかの物理的回線切断したし、だから輝夜姫の上司経由で同窓会の案内状を送ってもらおうかなって」
「つまりわざわざ『蠍の間』に来たのは、私に会いに来たかったからだと?」
「そうじゃよ」
「ならばどうしてトマスを殺したのですか?いえ、そもそも彼に会いに来ただけというならこの場でなくてもよかったはずでは」
「なるはやだよ。なるは」
とん、と、
木原五行の首が、落ちた。
何で統括理事会メンバーがそろいもそろって戦ってるんですかねぇ……?
お前ら戦闘能力ほとんどない設定のはずだろう?
じゃあ殺しちゃう?
統括理事会メンバーはあたしが全員ころしちゃいました!なんてね☆
さて質問なんだよ!
私、生きてると思う?
学園都市統括理事会➃ 不死の研究
木原五行の首が胴から分離した。
「………………………………」
沈黙。
それが起きたということは8人全員が把握した。木原五行の首が胴から分離した。誰かが何かをした結果としてそれは起きた。ただ、ただその程度で安心できるのかといえばそれは偽だ。
「ころせた、の?」
「――――――――――――」
奈落の呟きには誰も答えられなかった。
それは何も奈落に意地悪をしているという訳ではなく、分からなかったからだ。
誰も、木原五行の死に確信が持てなかった。
「首を落とした程度で死ぬとは、到底思えませんが」
「同感だな。あの木原五行が、この程度で死ぬとは思えない」
数十秒が過ぎ、やっと口を開いたのは親船と苦罠だ。4年前の獄天の扉ヘヴンズフィール事件――第一次人類絶対悪ビースト侵攻事件の生き残りである2人は当然人類絶対悪ビーストの脅威を知っている。人類絶対悪ビーストは残虐で、残酷で、残忍で、残刻な……そして何よりも厄介なのだ。
「だがよ、確かに首は落ちてるし血はでてるぜ?これで死んでないっていうのはおかしくねぇか?」
「油断するな、アラン。新人のお前は知らないだろうが、人類絶対悪ビーストが、あの木原五行がこの程度で死ぬとは私には思えない。何度でも言うけど、な」
「人類絶対悪ビースト、ねぇ」
「……ぐっ、流石に、そろそろ意識が朦朧としてきたなぁ」
亡本がそうぼやく。8人の中で一番重傷なのが亡本だった。薬味は壁に叩きつけられただけでノーダメージ。アランと潮岸は謎の力に押さえつけられてはいたがノーダメージ。対して亡本は五行から指弾による攻撃を受け、脇腹を弾丸が貫通してしまっている。数分後には死ぬ、などという出血量ではないが、しかし早めに処置をしなければ命が危ないことは間違いないだろう。
「……薬味クン、君なら軽く処置が出来るのではないかな」
「んー、いくら私が医療関係に太いパイプをもってるっていっても、私自身は別に医者でも何でもないんだけど」
「だが簡易的な治療くらいは出来るだろう?」
「んー」
薬味は亡本の治療にそこまでの積極性と緊急性を感じなかった。別に亡本が死んでも構わないのだ。統括理事会メンバーが減れば、その分だけ利権が増える。だから亡本は死んでも構わない。いや、むしろ死んだ方がいい。
その消極性を感じ取った亡本は、だから提案する。
「貸し1、ということでどうだね?」
「……一応伏せてたんだけど」
そう言って、薬味は亡本に近づいた。
亡本の生存と死亡。貸し1と増える利権。それらを天秤に乗せれば、わずかに亡本を生かす方に傾く。
「……問題は山積みだな」
「後2つに関してはどうしますか?」
「……超能力者予備集団セブンバックアップが人類絶対悪ビーストを確実に殺せるのならば、その議論は必要がなくなるのだがな」
「無理だろ。あいつらは所詮、超能力者レベル5の成り損ないだ。切り捨てられた枝ですらねぇ」
「……恋査を動かすーかな?」
「それは」
別に油断していたわけではない。特に第一次人類絶対悪ビースト侵攻事件の生き残りである6人は、苦罠と親船と貝積と潮岸と亡本と薬味の6人はきちんと警戒していた。
木原五行の死。胴から首が分離した木原五行。首の落ちた木原五行。けれど、本当に木原五行が死んだのかはまだ判断がつかない。
影武者だったのかもしれない。偽物だったのかもしれない。幻覚なのかもしれない。ホログラムを使っているかもしれない。他にも、他にも、他にも。様々な可能性が考えられた。
だから、ちゃんと疑っていた。木原五行はまだ死んでいない――その可能性を、きちんと考慮していた。
会話を続けながらも、警戒はしていた。
けれど、しかし、それでも、だ。
一瞬だった。
確かに全員が目を離した。
重傷を負った亡本に視線が注目した。
こ・の・瞬・間・確・か・に・、木・原・五・行・を・観・測・し・た・人・間・は・1・人・も・い・な・か・っ・た・。
故に、だった。
「んん~、エキサイティング」
「「「「「「「「ッッッッッ!!!???」」」」」」」」
木原五行は生き返えった。
木原五行の生が観測されたから。
木原五行の死が観測されなくなったから。
「流石の私も初体験だったなぁ。でもっ!理論は証明された。これで妾はまた1つ、近づいたってわけよ」
それはまさしく悪夢であった。
「あの程度で、」
最初に呟いたのはやはりというべきか、苦罠だった。
予感はあった。予想は出来た。人類絶対悪ビースト。世界に対する、人類という種に対する脅威。
4年前はもっとひどかった。
あの時に比べたら、今回はまだましだ。
「あの程度で殺したとはもとより思っていなかったが、どんな手品だ?禁忌の木原、木原五行」
「あれ?あれあれ?あれあれあれ?」
不思議そうに、本当に不思議そうに、まるで理解できない言葉を聞いたかのように、五行は思い切り首を傾げた。
そして傾げた首をそのままに、統括理事会のメンバー8人を煽る。
「あれれ~、みなさん、この私が何の研究をしているのか御存じない?」
「木原五行の、研究?」
「――――――まさか」
最初に気付いたのはやはりというべきか、貝積だった。
最初に気付いたのはやはりというべきか、貝積だった。
この場にいる統括理事会メンバー8人は、全員が全員大なり小なり木原一族と関わったことがある。しかしそれは結局の所浅い関わりだ。木原一族は学園都市統括理事会でも持て余すほどの闇。内に入れて飼おうとすれば蝕まれ破滅する。外から操ろうとしてもいつの間にか予想外の動きをされて破滅する。
賢明な人間であれば木原一族とは積極的にかかわらない。利口な人間であれば木原一族を利用しようなどとは思わない。
距離感が大事なのだ。
「まさか!?」
踏み込んだ距離感で木原一族と接触しているのは、統括理事会メンバーでもわずかに3人。
奈落奈波は日本という国を守護する立場であるが故に、科学そのものを体現した木原一族とそれなり以上の関わりを持つ必要があった。
今この場にいない潔癖症の彼女は、世界の全てを手に入れるための前準備を行うために、木原一族と関わりを持つ必要があった。
そして貝積継敏は能力開発分野に強い影響力を持つが故に、必然木原一族と関わることも多かった。
「馬鹿な、完成したとでも言うのか!?」
「ふっ、ふーん♪」
貝積の気付きに連鎖するように、複数人も気づく。
そして彼らが気付いたことに気付いた五行は、自慢げに、いや実際に自慢するために両手を大きく広げながら語る。
「不逃死痛カルタグラは失敗作だったけどさ。くうううううううううっ、完成したのさ!ついに!」
自慢げに、
「長かった……、本当に長かった……。何度も挫けそうになった。時に心が折れそうになった。しかし!努力は実るのだ!それを信じてあたしは頑張った」
誇るように、
「不死の研究、……この研究を完成させるために10年以上もかかってしまったのだよ。俺としたことが、時間を掛けすぎだ。全く、自分の無能ぶりが嫌になるね」
笑いながら、
「でも完成した。だが創り上げた。完全なる不死。人類の夢の1つ。あひ、ふひゃ、ぎへへへへへ!!!!!」
禁忌と呼ばれた木原は、
「本当にさぁ、頑張ったってわけよ。、色々色々研究して創り上げて。『イヴの心臓』も、『電脳生命体α』も『天への階段』も、『ドゥームズデイ』も、『キヤマー・ザナドゥ』も!ステップを重ねて、少しずる進み、…………僕は、至った」
全能であるはずの少女は、
「これが、完成品」
掲げる。
「これが、木原五行の集大成」
右手を上げる。
「これがっ、人類が求めてやまなかった、夢」
示すように、
「これこそがっ!完全なる不死を齎すっ、神域すら超えた逸品!!!!!」
天に反逆するかのうように、
「王の遺産レガリアが一つッ、『彼岸の妙薬』トキジクノカク!」
言った。
「『彼岸の妙薬』……」
「……トキジクノカク、ね」
信じられない言葉を聞いたかのように、潮岸と薬味が呟いた。
古代より完全なる不死というのは人が求めていた夢だ。それを求めた人間は数多く存在し、それをテーマにした物語も数多くある。
始皇帝は不死を求めて水銀を飲んだ。
かぐや姫は帝に不死の薬を渡した。
他にも他にも他にも、その手の話は多々ある。
「確か、トキジクノカクは田道間守が常世国で手に入れた木の実だったね。食べれば不老不死となれるというトキジクノカクを求めて垂仁天皇は田道間守を常世国に遣わせたが、田道間守が垂仁天皇のもとに帰還した時には既に垂仁天皇は崩御していた。あれはそんな話だったか」
亡本がトキジクノカクについて語る。トキジクノカクは古事記に記載されている話の中に出て来る木の実だ。科学で満ちた街で神話を語るのは滑稽でもあるが、学園都市の食糧事情の一切を管理している亡本は常に自身の食するモノについても気を使っている。その過程で、神話の食べ物の話の知識も得ている。
そもそもネクターの元ネタだってギリシャ神話に登場する神々の飲み物、ネクタルなのだから。
「だから死ななかったとでも言うのかよ。それを飲んだから、死ななかったって?」
這い蹲った姿勢から立ち上がったアランが五行を睨みつけながら言う。アランは4年前の人類絶対悪ビーストとの戦いを知らないが、人類絶対悪ビーストの異常さはもう十分わかっていた。
木原五行はヤバい。
ヤバすぎる。
何よりヤバいのは五行のここまでの行動は、そのほとんど全てがダミーであろうということだ。
「くひ」
こたえる様に、五行が話す。
「皆はシュレディンガーの猫を知っているかな?」
「当然知っていーるさ。学園都市の超能力開発の基礎中の基礎ーだ」
「シュレディンガー氏曰く、箱の中の猫の状態が観測するまで決まっていないなんてありえないらしい。トキジクノカクを飲んだ人間は箱の中の猫になるんだって」
「…………どういうことだ?」
「個々のクオリアは個々によって違う。物体が存在するということは個人がその物体を認識しているということだ。例えば人物Aが金庫の中に金塊を入れて扉を閉めた。この瞬間人物Aに金塊を観測することは不可能になった。観測が不可能になったということは存在が確認できないということ。つまり金庫の中に金塊が存在するかどうかはその時点で不確かになったのだよ。不確か、つまりは金庫の中に金塊が存在しているのかしていないのかは分からなくなった。量子論で言う所の重ね合わせの状態っすね。金庫の中に金塊が『在る』状態と金庫の中に金塊が『無い』状態が同時に存在しているって話だっけ。コペンハーゲン解釈。エヴェレットの多世界解釈。量子論には様々な考え方があるけど、重ね合わせっていうのはやっぱ基礎だよね。そして私の出した結論はそれに観測者効果を加えた感じかなー。やっぱ見られているっていうのが量子論に与える影響は大きいんだよ。まぁ何が言いたいかっていうと、観測されなければそこには何もないって話。物体があるかないかっていうのは結局の所個人の主観の問題なのさ。意識を構成しているのが客観じゃなくて主観なんだから当然なんだろうけど、物体αがそこに在るっていうのを人物Aが確認したとしても人物Bがそれを確認できなかったとしたらそこに物体αがあるのかどうかは発言をきくだけの人物Cからしたら不確かになるだろう?僕の造った王の遺産レガリア、『彼岸の妙薬』トキジクノカクはそれを利用しているんだ。僕の存在を世界という名の、宇宙という名の客観――俺はこれを『絶対神の視点YHVH』と呼んでいるわけだが、その客観から外す。そもそも人間という生命体は個人でその存在を維持するのは無理なんだ。誰しもが必ず、そこにいるためには自分以外の要素が必要になる。その最たるものが『絶対神の視点YHVH』だけど、もう一回いうけど童のトキジクノカクはその視点を外す。脱出するっていってもいいかな。『絶対神の視点YHVH』から脱出して、自己の存在証明理論をもっと小さい主観の中に置く。要するに自己の存在証明理論を他人の意識の中に置くわけよ。ただこれが絶妙に難しくてね。他人がそこにいる、他人の意識がそこに在るっていうのを確認するためにどう考えても自己の存在が必要だ。だけど自己の存在を他人の証明に使えば自己の存在が第一前提条件として確立されてしまう。それは違う訳よ。結局の所それじゃ『絶対神の視点YHVH』からは脱出できていない。他人の意識に自己の存在証明理論を置くためには自己の存在が第一前提条件になるっていう矛盾。これを解決するために4年もかかったってわけ。まぁ別にね?不老不死を実現させるためだけなら方法なんていくらでもあるんだよ?もうなくなったけど、人形村とかまさにその極致だったし。後はあれ、700年くらい前にはアンブロシアとかもあてらしいじゃん?でもやっぱりそれは完全な不死じゃ、ない。不死性が高くなるってだけ。それに死にたいときに[ピーーー]ないとか自由度低すぎ。だからこそ、私はトキジクノカクを造った。他者の主観の中に自己の存在証明理論を置くことで完全なる不老不死を実現する、トキジクノカクを」
『彼岸の妙薬』トキジクノカク。効果のほどがわかりにくいと思いますが、不老不死の薬だってことを理解していれば問題ありません。
今月中にもう一回は更新します。
https://syosetu.org/novel/56774/172.html
本作の中で一番闇の深いキャラクターが木原五行になります。
白白白と木原五行① 敵側にいる理解者
学園都市第一学区風紀委員本部セントラルジャッジメント第六十階『天秤の間』にて風紀委員本部セントラルジャッジメント委員長の座に座る白白白は誰にともなく語る。
「僕は君が羨ましい」
『天秤の間』には白1人しか存在していない。だから白の話を聞く人間は誰も居ない。滞空回線アンダーラインすらも入ることの出来ない風紀委員本部セントラルジャッジメント内部を盗聴することなど不可能だし、あらゆる意味で隔絶している『天秤の間』内部を観測することなど不可能だ。
が、
「君は自由だ。君は何にも縛られない風のような存在だ。君に制限はないし、君は『枠』に捕らわれない。……僕はそれが、たまらなく羨ましいよ」
例外はある。
そも、何にだって例外は存在するモノだ。
僕自身が限りなく例外な存在だから、それは分かってる。
「醜いなぁ。やだやだ、それって嫉妬?我が同類?」
王の遺産レガリアが1つ、『彼岸の妙薬』トキジクノカクを服用した五行はその存在が不確かだ。どこにでもいるし、どこにもいない。観測されなければ存在は固定化されず、しかし観測されない状態では本当にどこにでも存在できる。
それは外部とは隔絶した空間。絶対のセキュリティを誇る夢の中。人間では辿り着くことの出来ない別位相。誰かの夢の中に、人の意識の中。
あるいは『天秤の間』にさえも、五行は現れることが出来る。
観測さえされなければ、だが。
「何しに来た、五行?」
「挨拶にね、白」
親し気に、まるで親友のように近しい声で、2人は名前を呼び合った。
2人の過去は、2人の関係は、その距離感を許す。
「それとも人間操者パペットマスターって呼んだ方がいいかい?」
「全能存在パントクラトール……、昔を思い出すな……。あの頃は、良かった。……『箱庭』には不自由な自由があった。僕らは、集められた13人の天才達は、あの『箱庭』でだけは普通になれた」
「それはただの八つ当たりかよ?それとも感傷か?」
「さて、どうかな。それにしてもふざけた引用だね。わざわざ言い直すところが特に。……F/sのHFか。あれ、僕は大嫌いだよ」
「そうやって何でもかんでもはぐらかすの、細かいところまで気にするの、あなたの悪い癖よ。ちなみにこれは林の主人公の口癖だよ。分かった?」
「…………イライラするな。いったいいつの間に他人の言葉を引用しなきゃ話せない人形になった?五行」
「いひひ、そう怒らないでよ。冗談だってばよ」
「君は忍者じゃなくて科学者だろう?」
「あひゃひゃ、きっびしいなぁ、ほんとうに」
『箱庭』。
『箱庭』というのはあくまで略称であって正確な名前は別にあるが、10年前から6年前までの約5年間、五行と白の2人を含めた13人のモンスターチャイルドはそこで暮らしていた。『アガルタの惨劇』と呼ばれる事件によって『箱庭』の全てが崩壊するまで、彼ら彼女らは『箱庭』で暮らしていた。
彼ら。
彼女ら。
「やっぱり懐かしいんだ?忘れられないんだ?懐古厨の思い出補正だねぇ。どうせ何もかも嘘なのに」
「……対等な繋がりなんて、僕らのような天才には貴重過ぎるモノだよ。だからこそ『箱庭』は奇蹟で、『アガルタの惨劇』のことは後悔してもしきれない。いくら刺激が欲しかったとはいえね」
「あれ?アレイスター相手じゃ足りないんすか?」
「別にそうはいってないさ。……アレイスターは僕らと同じ格だ。油断なんてできるはずがないだろう?同じ理外人外なんだから」
「でも全然満足しちゃいない」
「………………………」
「郭夜のこと、まだ好き?」
「好きだよ?君のこともね」
『アガルタの惨劇』を生き残ったモンスターチャイルドは5人。彼ら彼女世らは今、造られた子供たちプログラムチルドレンと呼ばれている。
人類絶対悪ビースト位階総序列第3位、禁忌の木原、全能存在パントクラトール、木原五行。
風紀委員本部セントラルジャッジメント委員長、学園都市の支配者の1人、人間操者パペットマスター、白白白。
死縁鬼苦罠勢力参謀、完全予測者ジ・エンド、欠陥製品スクラップドール、天埜郭夜。
人類絶対悪ビースト位階総序列第16位『神時代へ逆行する古代人』リーダー、神の代行人エクスキューショナー、狂信者、GE13ジーイーサーティーン。
人の形をした災害、学園都市最悪の災厄、無存在シークレット、千疋十目。
「大好きだよ。輝夜姫のことは特に、……水面に映る月に手を伸ばして、それを掬って羨んだ。星の輝きに眼を眩ませながら、夜空にむって手を伸ばした。灼かれると分かっていながらも、太陽を直視した」
「アンタも辛いな。見たくもないモノがみえちゃって」
「子供のころからそうだからね。今はもう、……慣れればよかったんだけど。それに辛いのは君もだろう?いったいどれだけひっくり返した?」
「そういえば聞いてなかったっけ?どんな気分よ、感情が視えるってのは?さてさて、どんくらいだったかな。少なくとも虐殺の滅亡齎す七の子羊セプテム・アニュスを無かったことにするために1回はひっくり返したけどさ」
「視えるっていうよりは理解出来る分かるって感じかな。表情、行動、生き様、過去、生体反射、癖。そういうモノから僕は嫌でも感情を読み取れる。見たくなくても視えるんだ。眼を閉じても耳で分かる。耳を塞いでも鼻で分かる。鼻をつまんでも肌で分かる。肌を覆っても気配で分かる。だからどうしようもないんだよ。両目を包帯で巻けば防げるくらい単純な力だったよかったのに」
「月のお姫様かい?」
木原五行の才能がその科学力であるように、白白白の才能は感情の読み取りにある。
白白白は人の感情が分かる。それが、白が生来より持っていた特別。
どれだけ深く隠しても、どれだけ強く偽っても、どれだけ無感情を装っても、白を前にすればその感情が暴かれる。子供のころからそうだった。だから捨てられた。勝手に感情を読み取ってしまう白のことを、そこから隠したすべてを暴く白のことを、誰しもが嫌った。
だから『箱庭』は白にとって天国だった。だから『箱庭』にいた12人のモンスターチャイルドが白は好きだった。特に、郭夜のことが好きだった。
「じゃあ私の心も読み取ってよ!そして満たして……、俺のことを」
「………………………………………」
両手を広げて、五行は白に後ろから抱き着いた。
嘘ばかりの人生だ。
嘘をつくばかりの人生だ。
五行や白やアレイスターのような上の立場の人間は、策を練り裏をかき人を陥れ目的を達するためには手段を選ばないような人間は、必然真の意味での信頼関係など結べない。それは手の届かないモノだと、どこかで諦める。
だから白はアレイスターのことも羨む。
アレイスターには理解者がいる。木原脳幹や冥土帰しヘヴンキャンセラーは彼の友だ。
白にはそういう人はいない。いるのは敵と、敵と、敵だけだ。
十五夜は味方であって理解者ではない。
理解者はいつも敵側にいる。
「五行。僕は君が嫌いだ」
諦めたように、呟く。
「テメェに好きなヤツっていんのかよ?」
抱きしめたまま、耳元で囁く。
「君が嫌いだ。君は自由だ。君は何にも縛られない風のような存在だ。君に制限はないし、君は『枠』に捕らわれない。……僕はそれが、たまらなく羨ましいよ」
「相変わらず、くだらない視点すね」
「くだらないかな?」
「いったいいつまでそんなものに拘ってるんだい?『枠』とか世界物語キャラクターストーリー理論とか七連物語セブンスストーリーズとか、そんなの結局、アンタの見方1つじゃない。制限してるのはお前で、勝手に区切ってるのはテメェだ。緊急装置ベイルアウトで風紀委員本部セントラルジャッジメントメンバーを縛ってるあなた様が勝手に縛られてちゃわけないわけ」
「ふっ、……全くその通りだよ。だから僕はダメなんだ。僕が一番■■からの」
「最・秘・匿・事・項・じ・ゃ・ん・」
「まだ、機密情報アクセスレベルが足りないか。もう少し■■に」
「それもまた最秘匿事項、機密情報アクセスレベル0の情報みたいだっちゃ」
「青き鎖でも騙り切れないか。なら言い直そう。抽象表現なら問題ないだろ?もう少し、彼らバックアップしてもらわなければな」
「赤と青と黄金が解かれたら次は何だったけ?」
「第二段階はテストだよ。80/100で第三段階に突入するのさ」
睦言のように語り合う。後ろから抱きしめて来る五行の顔を白は頭を後ろに反らしてみた。見つめ合う。言葉はいらない。必要ない。白と五行は各々が各々の理解者だ。何も言わなくたって分かる。白は五行の感情を読み取って、五行は白の行動からその思惑を読み取って。
「寂しかったんだろ?」
一瞬、五行は黙った。
「隱ュ繧薙□から分かるよ。同窓会、本当に開きたいんだろう?見なくても分かる。君の立場は、僕も分かってるから」
「……………………………うち、めっちゃ頑張っとるんやで」
「知ってる」
「確かに私は全能だけど、全能者は全能であるが故に全能者ではない。そんな簡単なことも分からない奴らがさ、たくさんいるの」
「知ってる」
「全能の逆説オムニポテントパラドックスを解消することは出来るけど、本質的全能者になるには私の存在は軽すぎるんだよ」
「知ってる」
「顔も多くなりすぎたのよ」
「知ってる」
「この間、最後の人類悪の参謀になったよ」
「知ってる」
「成りたくもないのに地球環境保護団体ελπιςの一員になってるんです」
「知ってる」
「いつの間にか人類絶対悪ビースト位階総序列第3位になってたんだ」
「知ってる」
「生まれは悪名高い木原だし」
「知ってる」
「しかも木原と木原を掛け合わせた木原だし」
「知ってる」
「何の因果か私には木原の才能がなかったしさ」
「知ってる」
「科学力はあったけど、科学力じゃなかったし」
「知ってる」
「王も私なんだよ」
「知ってる」
「才能なんていらなかった」
「知ってる」
「立場なんてほしくなかった」
「知ってる」
「理解者が欲しかった」
「知ってる」
「……………ねぇ、白」
「何だ?」
「寂しいよ」
「知ってるよ」
敵だった。
嫌いだった。
同格だった。
だけど、仲間だった。
同窓会ね。僕や郭夜はともかく13ともう1人は会いたがらないだろうな。僕が連絡して郭夜と会わせようか?郭夜は君に興味をもってないだろうけど、僕が言えば話くらいは出来ると思うよ?」
「……………やめとこう、そんな程度のことで、あなたに負担をかけたくなし。寂しいけど、ね。うん、もうだいぶ回復できたよ」
抱きしめていた両腕を離して、五行は白と距離をとった。椅子に座ったままの白と、その二歩後ろに立った五行。見つめ合っていた2人の視線はもう交わっていない。たった2歩で詰められる距離が、永遠に近い。
反らしていた首を元に戻して、白はまっすぐ前を見た。
そこには何もない。
そこには、何もないように見える。
「ねぇ、白」
「何だ?」
「……………………好きだよ。世界で一番キミを××してる」
悲しそうに、五行は言った。
「あぁ、俺も好きだよ」
だからこそ、その答えは何よりも空虚だった。
「知ってる」
知っていた。
五行は知っていた。
それが白の限りなく優しい、
(だけど『私を』じゃなくて『人を』でしょ)
真実の虚言であると。
「ばいばい白。次に会う時は、今度こそ敵同士だ」
「本質的な繋がりは、そう簡単に切れるモノじゃないさ、五行」
「……………大嘘憑き」
それだけ言って、因縁の2人の距離は無限に開いた。
「で、だ」
「侵蝕率は?」
「赤が8割、青が7割、黄金が7割くらいかな。もうちょっとすればいけるんじゃないの?」
「計画エフギウムは?」
「あっちは私達のことを認識してるし、その意味じゃ第一段階の『道』を作ることは終了したって感じ?影響を与えることも出来てるし、悪くなんじゃないの?」
「順調か」
「リスクは常にあるけどな。ある意味でのルール違反は、常におかしてわけだしな」
「それくらいは許容範囲内だ。万が一が起これば、……はっ、それは痛み分けだろ?」
「死ぬのは怖くない。怖いのは、誇りを失ったまま生き続けることだ、ってわけね。まっ、こっちは任せといてよ。学園都市の中の、第一学区の中の、風紀委員本部セントラルジャッジメントの中の、第六十階『天秤の間』から出られないあなたの代わりに、私が世界を飛び回っておくから」
「あぁ、信頼してるよ。僕の、……いや、あえて言い直すか。今旬だろうしな」
戯れにもいいだろうし、な。
軽いテストにもなるし。別枠だけど。
「さあ、戦って五行。僕の、親友……。僕の、英雄……。なんてな」
僕の台詞に、五行は笑って答えて、それで消えた。
読者に対して出せる情報と出せない情報が存在するので、情報を制限しながら書いたこの話はすごく時間がかかりました。
さて問題。
今話の中に11のパロネタ、セリフのオマージュがある。
君達はいくつ分かったかな?
次の更新は2月中旬までには。
それで切るなら旧約の時点で切られてるでしょ
読んでない奴はそういう叩きを旧約の時からしてたし
そういう作風なの自体は読者は受け入れてたのに離れてったってことは他に原因がある
乙
>>990
つーかもう付き合いきれなくなったんだと思うよ
「昔からそうだ」は「何時まででも通じる」という意味にはならない
なんにでも「飽和」や「過剰」や「限界」ってモンはある
インフレもキャラの多さも粗雑な展開も、いい加減にしろって思われた時点であとは薬よりも毒になるだけ
https://syosetu.org/novel/56774/160.html
親友と家族を天秤にかけた。
彼女は絆より愛を選んだ。
家族と恋人を天秤にかけた。
彼女は愛より恋を選んだ。
恋人と自分を天秤にかけた。
私は、
私は恋より生を望んだ。
――――――二九七
そろそろ根幹を探求してみようか
上条当麻とパトリシア① 『主メイン』『人キャラ』『公クター』
目覚めは鬱屈だった。
底なしの泥沼に嵌ってしまったかのような倦怠感が上条の身体を襲っていた。
「……っ、……ぅ、あ?」
覚醒する意識と共に背中に冷たい感覚が奔る。
何かを探すように手を動かして、重く感じる頭を起こして、
上条は自分が今いる場所が廃ビルの一室であることに気が付いた。
「……………………………?」
床に無造作に寝かされた影響か、痛む全身を無視しながら、途切れ途切れの記憶を手繰り寄せて上条は現状把握に尽力する。
そう、確か、上条は……、あのスタジアムで『誰か』と戦って……。
「どう、……なったんだ?」
記憶はそこで途切れていた。1周目の世界で人類が死滅した理由を探るためにインデックスに協力を仰ぎ、1周目のインデックスの行動の理由を推理して『スタディ』の居城があるスタジアムの地上部に行き、そこで『誰か』による襲撃を受け、上条はその襲撃者の攻撃によって胸や肩を貫かれて、
「!?」
バッ、と上条は自らの身体を弄った。混乱していたからか今まで全く気が付かなかったが、スタジアムで戦っていた時と服装が変わっている。制服から半袖シャツと半ズボンに洋服が変わっている。
上条が自ら着替えた記憶を持たない以上、誰かが上条を着せ替えたのだろう。
だが、それよりももっと重大な異常が上条の身には在った。
「傷が……」
無かった。
「……………………………」
あるはずのモノがなかった。
記憶と現実に齟齬があった。
「……なん、で」
極限の混乱を抱えながら、上条はもう一度自分の身体を触る。
少なくとも右肩と左腹と右胸には大穴があいていたはずだ。不可視の攻撃、おそらく銃弾のようなモノが上条を貫き、上条はその痛みから地面に倒れた。
それは覚えている。
だからおかしい。
あの傷はそう簡単に塞がるようなモノではない。
身体にあいた大穴はそう簡単に消えるモノではない。
「それに、ここはどこなんだ?」
普通に考えれば、もしもあの状況から助かったのだとすれば、上条は病院に運ばれているはずだ。
誰が病院に連絡してくれたのかとか、どうして襲撃者は上条に止めをささなかったのかとか、なぜ上条はあれほどの傷を負って即死していないのかとか、いろいろ問題点疑問点はあるにしろ、現在上条が助かっている、生きている以上、普通に考えれば上条は病院で治療を受けたと考えられる。
そしてそうだとすれば納得できるのだ。病院で適切な治療を受け、その結果として大怪我が治った。大いに納得できる。だが、現実は違う。上条がいる場所は明らかに病院などではなく、治療を受けたような痕跡すらない。
だからわからない。
「何が……、どうなってるんだ…………」
項垂れる。
何も分からない。
何も、何一つとして。
上条一人では、此処からどうすればいいか全く判断が出来ないだろう。
「あっ、起きたたんですか?」
「っ!?」
だからこそ外からアクションがあった。状況を進めるための駒が外側から現れた。
「あんた、は?」
現れたのは短い金髪をカチューシャで押さえ額を露出した髪型をした少女だった。服装に関しては短めのプリーツスカートに半袖のブラウスといった極一般的なモノ。ただし一目で学園都市製ではないと分かる材質で造られていて、故にこの少女は『外』から来た人間であると上条は一目でわかった。
年齢のせいか見目麗しいというほどではないが、それでも可愛らしい、庇護欲をそそられる容姿をした少女。
だが、その姿にはどこか違和感があった。
(……鬘かつら?)
違和感の原因は身体でも服装でもない。その髪だ。
光を反射して輝く金髪の中に明度の違う金髪が混じっている。その明度の違いが上条に違和感をもたらしている。
1人の少女が持つ2種類の金髪。それが上条にどうしようもない違和感を与えていた。
だが、もちろんそれは重要なことではない。
より正確に言うのであれば上・条・当・麻・の・所・属・す・る・物・語・に・関・係・の・あ・る・話・で・は・な・い・。
「私はパトリシア=バードウェイ。欧州最大の魔術結社、『明け色の陽射し』のサブリーダーで、あなたと同じ七連物語セブンスストーリーズに属する人間。役割ポジションと称号キャラクター性は主役級メインキャラクターと主人公ヒーロー。そして手にした唯一性オリジナリティは誰も救えない英雄ガラクタヒーロー。……誰一人として救うことのできなかった、どうしようもない欠陥英雄ガラクタですよ」
悔恨の過去に自嘲しながら、パトリシアはそう自己紹介した。
久し振りに会った、会う事の出来た、自分と『同じ立場』の存在。抗えない『宿命運命』を担った同類。
もう『終わってしまった』パトリシアには根源的には関係ない事だが、しかし物語交錯クロスオーバーした以上完全に無関係ではいられない。
パトリシアは上条が七連物語セブンスストーリーズのどの物語に所属しているのか知らない。パトリシア自身が所属していた第四物語フォースストーリー、同じ『立場』の知り合いがいる第二物語セカンドストーリー、『完結』している第一物語ファーストストーリーと第三物語サードストーリーは除くとして、残りの3つ、第五物語フィフスストーリー、第六物語シックススストーリー、そして第七物語セブンスストーリーのどれに上条が所属しているかはまだこの時点では分からない。
けれど間違いなく『同類』だ。
それが分かる。分かるのだ。
だから必然、パトリシアの上条に対する好感度は高く、同時に低い。
それはパトリシアが上条に期待しているからで上条を羨んでいるからだ。
『終わってしまった』蛇足の人生を生きるパトリシアと比べて、上条はまだこれからだと分かる。
あんな戦闘に巻き込まれていたことからも分かる。
「『明け色の陽射し』……、魔術結社?」
上条はパトリシアの言っていることの8割も理解していなかった。だから、理解できた単語だけを口に出した。
魔術結社、『明け色の陽射し』。
魔術結社という単語はインデックスから聞いたことがある。
その名の通り魔術師の組織。同じ志を持った複数の魔術師が所属する組織。それが魔術結社。
「……そっちに注目するんですか?私達のような存在にとって重要なのはそっちじゃなくて称号キャラクター性の方なんじゃ?」
「称号キャラクター性?」
「……?……何で理解できないみたいな顔してるんですか?あなただって私と同じ、私と同じ主人公ヒーローでしょう?」
端的に言って、
「当り前のように命の危機に瀕して、当たり前のように多くの人に好まれて、当たり前のように秘密を抱えて」
ひどく単純な話として
「誰かのために身体をはって、誰かのために心を擦り減らして、誰かのために生きる」
とても簡単なことで、
「主人公ヒーローでしょう?」
上条当麻はパトリシア=バードウェイの言っていることが何一つとして理解できなかった。
「何、言ってんだ……?」
『終わってしまった』パトリシアと『始まったばかり』の上条では自分の立場に関する理解度が大きく違う。
役割ポジションと称号キャラクター性、そして唯一性オリジナリティ。
主役級メインキャラクターであり、主人公ヒーローとして覚醒ユーヴァーメンシュした結果、誰も救えない英雄ガラクタヒーローの称号キャラクター性を手に入れたパトリシア。
パトリシアは自覚している。この世界の在り方についてすべてではないが知っている。
パトリシアの物語は既に『完結して終わって』しまっているから、パトリシアは上条よりも先に進んでいる。
対して上条は違う。上条の物語はまだ始まったばかりだ。
上条は主役級メインキャラクターであり主人公ヒーローでこそあるが、まだ覚醒ユーヴァーメンシュしていないし、故に固有の称号キャラクター性を持っていない。
つまりは称号持ちネームドとしてはまだ半人前だ。
個性がない、と言い換えてもいい。
記号的である、とすら言ってもいい。
だからまだ上条は知らない。
パトリシアの領域には届かない。
「ん、えーと」
パトリシアの表情に戸惑いが混ざる。あり得ない事態への困惑。予想外の反応への混乱。このタイミング、この時期であれば知っていて当然のはずなのだ。その当然を知らないとは一体どういうことなのか。
「………………………」
パトリシアの知っている限り第一物語ファーストストーリーから第四物語フィフスストーリーまでの物語は既に『完結』している。そして『完結』している以上、それぞれの物語の主人公ヒーローは世界物語キャラクターストーリー理論の概要くらいは知っているはずなのだ。
故に断定される。この少年の所属は第五物語フィフスストーリーか第六物語シックスストーリーか第七物語セブンスストーリーである。
だが、パトリシアは既に物語交錯クロスオーバーしている第二物語セカンドストーリーの主人公ヒーローから第五物語フィフスストーリーと第六物語シックスストーリーの情報を聞いている。
情報によれば第五物語フィフスストーリーの舞台は現実世界ではなく、第六物語シックスストーリーの舞台は学園都市外のはずだ。つまりこの少年の所属は第五物語フィフスストーリー及び第六物語シックスストーリーではないとパトリシアは断定する。
ということは、
であるとすれば、
その推論が正しいのであれば、
「あ、な……たが……?」
いや、いいや。
辿り着く。
パトリシアはようやくたどり着く。
「あなたが、」
その喜悦を抑えられない。
求め続けていた『中心』。世界の全てを操ることのできる本当の『最重要人物キーキャラクター』。核の違う、格の違う『最後の希望Last future of Embryo』。
それが、今、目の前にいる?
「あなたが主軸メインストーリーなんですか?」
見つめる。
見つめる。
口元が歪む。
いや、いいや、断定していいはずだ。
「ねぇ、答えてよ」
詰問口調になるのも仕方がないだろう。なんせ本当に長い間求め続けてきたのだ。あの地獄を乗り越えて、人類史史上最大の犠牲者を出したテロを踏み越えて、三発目の核爆弾の爆発を止められないで終わったFDEGを想い出にして、永劫の悪夢をリフレインさせながら生きることを選んで、心を擦り減らして精神を狂気に浸して魂を冒されながら生きてきた絶望のヒビが、
ようやく、終わる。
「あなたが、全部終わらせられる、何もかもを完膚なきまでに救う、完全で、完璧で、完成された、最新の、最後の、最高の、正常に動作する、正当な行動だけをする、皆に認められて、誰にでも褒められて、頂点に立つ、多くを導く、悪人を説得できる、敵でも協力させられる、どうしてか都合の良い事ばかり起きて、あり得ないくらいのペースで事件に巻き込まれて、試練もあるけど乗り越えて、たくさんの異性から好意を持たれて、特殊な力を持っていて、いろいろなことを隠されていて、出自に秘密があったりして、土壇場で逆転の秘策を思いついて、追い詰められれば覚醒して、自然に仲間が出来て、普段はくだらない日常を過ごしていて、平穏を維持するために戦って、時に精神的な問題を抱えて、出来のいい師匠がいて、親友が闇堕ちしたりして、死んだと思っても実は生きていて、知り合いの死を乗り越えて、もともとはただの一般人で、昏めの過去を持っていて、ぶれない信念があって、トラウマを抱えていたりして、覚悟を決めるイベントがあって、因縁のあるライバルがいたりして、くだらないことに悩んだりして、ラッキースケベを体験して、重要人物とのコネを持っていて、大統領とか裏組織のトップとかと繋がりがあって、実は両親が重要人物で、黒幕の思惑に利用されて、だけど絶対に悪を倒すことが出来る、世界を救える、人を助けられる、誰も犠牲にしない第三の選択肢を生み出すことが出来る、尋常じゃない回復力と常人とは比べものにならない才能を持っている、誰にでも出来ることを率先してやる、神様にこそ愛された、選ばれている、愛されていた、都合の良い、天才的な閃きを持つ、運よく生き残る、よく事件に巻き込まれる、いつの間にか世界規模の戦いに参加している、高校生以下で、飲酒も喫煙もしない、血だらけになってもたてる、アバラが折れても戦闘を続行できる、咄嗟に誰かを庇える、自分の命を誰かのために使える、大怪我を負っても敵に立ち向かう、正義感に満ちた、曲がったことが赦せない、柔軟で、高度な、臨機応変に動ける、迫害された、差別された、仲のいい同性の友人が情報通で、急に転校生が同じクラスに来たりして、道端で重要人物とぶつかって、時にあくどいこともやる、1人暮らしの、辛い過去を持った、頭のいい、でも馬鹿だったりする、誰にでも優しくて、努力家で、みんなを手伝える縁の下の力持ちで、神様に選ばれた、多くの人に支持される、どうしようもないほどに愛に満ちた、人間離れした、裏切りも許容する、特別で、特異で、特性で、スピンオフとかで活躍しちゃう、表と裏を、白と黒を、光と闇を行き帰する、誰よりも」
「なんなんだよッッッッッッッッッ!!!!!!!!!!!」
「―――――――――――――――――――………………」
髪をぐちゃぐちゃに掻き毟って上条は叫んだ。
いっぱいいっぱいなのだ。
ある意味ではパトリシア以上に上条には余裕がなかった。
だから睨みつける。ねめつける。憎しみをもって、上条はパトリシアのことを見る。
訳が分からないいい加減にしてくれどうして俺ばっかりと、圧倒的な負の感情をぶつける。
「どうしてこんなわけのわかんない事ばっか起きるんだよ!?どうして俺にばっかりこんな『不幸』が降り注ぐんだよ!?なんで前の人類は死滅したんだ!?誰があのスタジアムで俺を撃ったんだ!?お前はいったい誰なんだよ!?どうして俺の身体には傷一つないんだよ!?どうして、どうしてっ、どうして……っっっ」
もちろん、普段の上条はこんな理不尽なことはしない。きちんとパトリシアの話を聞いて、分からないことを理解しようと努力して、相互理解を努めようとするだろう。
上条の根幹にあるのは優しさだ。どれだけの悪人でも、どれだけイカレテイル存在でも、問答無用で殴りつけるなんてことはしない。
だから珍しいのだ。本当に珍しいのだ。
上条当麻という人間が年下の少女を理不尽に怒鳴りつけるなんてことは。
「…………………………………俺に、何を、どうしろっていうんだよ」
そう言って、上条はズルズルと壁にもたれかかった。
何をすればいいか分からない。何が起きているのか分からない。どうすれば正解なのか判断できない。
情報が足りなくて、人手が足りなくて、信頼の有無が理解できなくて、もう一歩も動けない。
全てが分からないからもう終わりだ。
「俺は、………………もう…………………」
「一つ、アドバイスしてあげます」
よく分かっていた。
パトリシアは今の上条のことをよくわかっていた。
かつてのパトリシアも今の上条と同じようなことがあった。
誰が敵か分からず、誰が味方か分からず、何をすればいいか分からず、どう行動を起こせばいいのかわからず、そもそも行動を起こすことが正解なのか分からず、手掛かりもなく、たった一人で恐怖に震え、絶望に悲嘆し、実の姉すらも攻撃したその過去。
救えない。
救えない。
救えない。
生半可な言葉では、届かない。
「――諦めるのは簡単です」
だから単純でいい。
「でも」
たった二言でいい。
「私達主人公には、似合わない」
私達主人公は必ずもう一度立ち上がれると、誰も救えない英雄パトリシア=バードウェイは知っている。
かつての自分がそうだったように、上条も必ず立ち上がるとパトリシアは知っている。
主人公ヒーローとは、そういう生き物だ。
少しだけ、明かされる『世界観』。
次の更新は8月中にです。
…………えっ?上条のキャラクターが原作と違うって?
あははっ、よく気付いたね。
でも大丈夫。それにはきちんと理由があるんだ。
あははっ、だって彼はもう――――――――――――――――――
ね?
分かるだろう?
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