【デレマス】高垣楓「憧れとその先へ」 (17)
アイドルマスターシンデレラガールズの二次創作です。
【デレステ】楓「ライラちゃんとお友達になりました」
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【デレマス】ライラ「憧れの隣に」
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この2作品の続きです。
楓さんとライラさんが仲良し、ライラさんが楓さんに憧れてアイドルとして成長した。と把握してくだされば読まなくても大丈夫です。
楓さん視点のお話です。
では次から始めていきます。
SSWiki : http://ss.vip2ch.com/jmp/1535279928
「さすがに待ち合わせの一時間前は早すぎましたね……」
ディナーの時間帯もすぎて少し静かなカフェのテーブル席でのことです。
あんまり暇なもので、つい思っていたことが口に出てしました。恥ずかしいので誰にも聞こえていないといいのですが。
この後ライラちゃんとお会いする約束なんですけど、ちょっと早く来すぎてしまいました。
プロデューサーさんがスケジュールを調整してレッスンをお休みにしてくださったので、せっかくなので早めに来てゆっくりしようと思っていたのです。
いつもなら、こういう空き時間に台本のチェックやスケジュールの確認をします。
でも「たまには仕事を忘れて休んでください」とプロデューサーさんに取り上げられてしまったので手持ち無沙汰なんです。
しばらくはスマートフォンで話題のニュースをチェックしてみたり、同僚のアイドルたちのSNSを眺めていたのですが直ぐに見終わってしまって。
どうしようかと途方に暮れていたときにいいことを思いつきました。
そうだ、今待っている相手のことを考えましょう。
彼女と会うのは久しぶりですし、これまでのことを一度思い出してみるときっと楽しい気持ちなれますよね。
それでは、いつから思い出してみましょうか。やっぱり最初からでしょうか。
ライラちゃんと初めて会ったことは今でも忘れません。あの公園でのことでした。
それまでにも目を合わせたり、会話を交わしたことはあったと思いますが、心を交わしたのはあれが初めてでした。
私は人見知りをしがちな性分なので、新しいお友達を作るのは苦手なんです。
でもライラちゃんはそんなことお構いなしで、直ぐに仲良しになってしまったことを覚えています。
それから一緒にお話をしたり、美味しいアイスを食べたり、ライラちゃんの家でご飯をご馳走になったり色々ありました。
ライラちゃんは本当に人懐っこくて、遠目で私を見かけただけで急いで此方に駆け寄って来てくれたり。
それまで同年代のお友達が多かった私には、まるで可愛い妹ができたようでした。
そんなお付き合いが半年ほど続いたころだったと思いますが、ライラちゃんに元気がない日がありました。
いつも元気で、ニコニコとしてる彼女が沈んだ顔をしていたのを初めて見ました。
そのとき、私は大事なライブのレッスンの途中でした。
私は器用な人間ではありません。自分のことに精一杯で、その時はライラちゃんとお話はできませんでした。
多分その頃からだったと思います。ライラちゃんが変わったのは。
彼女がご家庭の事情であまり有名になりたくない、というのは私も聞いていました。
なので大きい仕事はあまりやらずにアイドルをしていたライラちゃんが、突然猛レッスンを始めたのです。
しばらくライラちゃんと会えない時期が続きました。
それでも、ライラちゃんが毎日遅くまでレッスンをしているというのはプロダクションの中で噂になっていて、私も心配していました。
しばらくすると、努力が実ったのか、少しずつライラちゃんをテレビなどで見かける機会も多くなりました。
私もアイドルを続けて短くはないので、こういうアイドルを見たことがあります。
ある日突然、人が変わったみたいにアイドルとして輝き出す子たちです。
それは同じアイドルとの絆であったり、プロデューサーとの絆であったり、ファンとの絆であったり。いろんな理由があります。
ライラちゃんはどんどん有名になっていきました。
そんなある日のこと、ライラちゃんからメールが届きました。
『カエデさん、今度お時間作ってもらえませんですか? お話ししたことがありますです』
ライラちゃんとの約束はいつもお話しの中でしていました。なのでメールで改めてというのは何かある、と思ったことを覚えています。
それから二人に都合のいい時間を見繕って、久しぶりにライラちゃんと会いました。
そのときも、今いるこのカフェでした。
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久しぶりにあったライラちゃんは前とは全く違って見えました。立派なアイドルでした。
私はライラちゃんと仲良くなれたきっかけの一つに"アイドルらしくなかった"というライラちゃんの個性があります。
私たちアイドルは仲間でありライバルです。
仲良くなりたい、負けたくない。どちらも嘘偽りのない本心です。
なのでどうしても、ぶつかりあってしまうことがあります。
でもライラちゃんには他のアイドルと競い合う、そんな気持ちがあまりありませんでした。
ライラちゃんにはそういった意味で裏表がなく。私もそのような関係は楽でした。
そんな彼女が有名になるというリスクを負ってまでアイドルとして輝き始めた理由は何か。
多分、そのことを伝えに彼女はここに来たのだと思いました。
だって、こんなに緊張したライラちゃんを今まで見たことがなかったから。まるで告白でもしにきたみたいでした。
緊張したままでお話をするのはつまらないので、まずは普通におしゃべりをしていました。
そうしているうちに、ライラちゃんもいつもの調子を取り戻してきてお話しも弾みました。
やっぱりライラちゃんとのお話しは楽しくて。しばらく会えなかった時間を取り戻すようにいっぱい、おしゃべりをしました。
おしゃべりもひと段落したところでライラちゃんに尋ねてみました。
『ライラちゃん、おしゃべりするのも楽しいですけど、それが本当の目的ではないですよね……?』
『……はい、ライラさん、カエデさんに伝えたいことがありますです』
『ライラさんは、カエデさんを一番大きな目標であり、ライバルだと思っていますです』
『今はまだ届きませんです、でも必ずカエデさんの隣に並べるようなアイドルになりますです』
このときは本当に驚きました。ライラちゃんが変わった理由、変わりたい目標が私だったんですから。
でも嬉しかったです。
歳が近いアイドルの仲間たちは、こんな少年漫画みたいな熱いセリフを言ってくれるほど若くないです。
でもこんなことを言ってくれるような、可愛いアイドルのお友達は今までいませんでした。
それに、私はどうしても他のアイドルとはすこし路線が違うので、目標にされることもありませんでした。
大好きなライラちゃんが私を目標だと言ってくれる。隣に並びたいと言ってくれる。
家庭の事情を無視しても、今までのやり方を変えてでも。
それが本当に嬉しくて。
こんなことを言われたからには、先輩らしくカッコよく返事をしてあげないといけません。
ライバルに対して中途半端なことは言えません。
『そこまで言われたら、先輩として受けない訳にはいきませんね』
『でも私はイジワルなので待ってあげません、ライラちゃんを置いてどんどん先に進みます』
『それでも、追いついて隣まで来てくれますか?』
いま思い出すと、思わず顔が赤くなるようなセリフです。でもライラちゃんはもっと歯が浮くような返しでした。
『カエデさんが何処にいても、たどり着いてみせますですよ』
それからは表情を隠すのに必死でした。
ライラちゃんが憧れと言ってくれた私が、顔を真っ赤にして照れていたらカッコ悪いですから。
それから、もう時間も遅かったのでライラちゃんを家まで送っていきました。
そのときに、ライラちゃんの単独ライブが決まったことを彼女から聞きました。
記念にコンビニでちょっと高価なアイスを買って、二人であの公園のベンチでお祝いをしたのはいい思い出です。
それからのライラちゃんは本当に輝いていました。
さらにレッスンを増やして、ライブの宣伝で増えたお仕事もきっちりこなして。
ライブはもちろん大成功でした。
これがきっかけで人気に火がついて、破竹の勢いでファンが増えていきます。
これには私も負けていられませんでした。
正直なことを言うと、この時期の私はアイドルを引退しようと考えていたこともありました。
アイドル高垣楓のピークはすでに過ぎたものだと考えていたためです。
そんな私にも新しい目標ができました。
ライラちゃんの目標としてあり続けること。
ライラちゃんのようなポテンシャルの高いアイドルが、あれほどに努力しているのですから、きっと私は直ぐに抜かされてしまいます。
でもそのときまで、彼女の目標としてあり続けるために私はアイドルを続けます。
あれから季節が一周して今に至ります。
その間にもいろいろなことがありました。
ライラちゃんと二人で同じお仕事を頂いたり、少ないお休みを合わせて遊びにいったり。ライラちゃんのお父さんに日本にいることがばれてしまったり。
顔を合わせることは少なかったですけど、お互いを高め合うようないい関係だったと思っています。
そんなことを考えていると、お店のドアがカランコロンと鈴の音を鳴らしながら開きました。
手元の腕時計は待ち合わせの5分前を示していました。
ドアの方に目を向けると、待ち焦がれたその相手がいました。
ライラちゃんはよっぽど急いで来たのか、肩で息をしながら店内を見渡しています。
ソファーから立ち上がってライラちゃんに軽く手を振ると、目が合いました。
いつもみたいに小走りで駆け寄ってきます。
でも、少しスピードが速いような……
そのままの勢いでライラちゃんが私の胸に飛び込んできました。
「どうしましたかライラちゃん、今日は甘えん坊さんですね」
「カエデさん…… カエデさん……!」
ライラちゃんは私の名前を呼ぶばっかりで、なかなか離してくれません。
お客さんもあまりいないので、少しくらいはいいですよね。
私もライラちゃんの背中に腕を回して、もう片方の手で頭を撫でてあげます。
しばらくすると、ライラちゃんも落ち着いて離れてくれました。さすがにずっとこのままは恥ずかしいですね。
テーブルに向かい合って座って、二人分の紅茶を注文しました。
今日、ライラちゃんに会ってから最初に言うことは決めていました。
「ライラちゃん、おめでとうございます。そしてよろしくお願いします」
今日のお昼に私のプロデューサーさんから新しいお仕事についての説明がありました。
『今度の事務所の定例ライブ、トリは高垣さんとライラさんでいくことが決定しました』
定例ライブは事務所のアイドル総出で行う、年に一回だけの大きなお仕事。
これのトリを任せられるということは、私とライラちゃんが今一番輝いていると認められてたということ。
「ありがとうございますです。ライラさんからもよろしくお願いいたしますです」
テーブルの向かいには万遍の笑みのライラちゃん。
「本当におめでとうございます。遂にライラちゃんに並ばれてしまいましたね」
「そんなことはないです。まだまだカエデさんはライラさんの目標でございますから」
「謙遜しなくてもいいんですよ。プロデューサーさんやファンの方々が私とライラちゃんならこの仕事を任せられると思ってくださっているんですよ」
「ライラちゃんは今、私と同じところにいるんです」
「……本当でございますか?」
「もちろん、嘘なんてつきません」
その次の日からレッスンの毎日でした。
他のお仕事はセーブして、ライブに向けて一直線でした。
そんなレッスンの中で一番充実していたのは、もちろんライラちゃんとのレッスンです。
隣同士でレッスンをして、ライラちゃんがここまで努力してきたことがよくわかりました。
もともと歌もダンスも上手な彼女ですが、それがアイドルのものとしてさらに洗練されている。そう感じました。
それ以上に驚かされたのは彼女の体力です。
レッスンの合間を縫って、ライブに先駆けて二人のCDが発表されたり、テレビで宣伝のお仕事をしたりハードな毎日。
ライラちゃんは全く動じないどころか、楽しくて仕方がないようでした。
そんなレッスンが本格的になる前の頃でした。
曲も振り付けもステージの構成もまだ原案で、スタッフの皆さんと私たち二人で話し合っていろんなことを決める段階。
そんなときに初めてライラちゃんと喧嘩をしてしまいました。
その理由は単純で、二人のステージに対する考え方の違いです。
私はの考えはこうでした。
ライラちゃんはダンスが得意で、私は歌が得意。それなら役割を分担してそれぞれの持ち味を生かそう。
それに対してのライラちゃんの考えはこうでした。
二人で歌もダンスも全力で取り組みたい。難易度が上がっても二人でならできる。
どちらの考えも間違ってはいません。もちろんライラちゃんの意見が達成できるならそれに越したことはないのですが、時間には限りがあります。
他のユニットやソロでのレッスンもあるので、二人のステージに当てられるレッスンの時間はあまり多くありません。
中途半端なステージを見せるぐらいなら、役割を分けて一定レベル以上のステージを作りたい。それが私の考えでした。
このときは私も周りが見えておらず、結局意見が合わないままその日のミーティングはお開きになりました。
家に帰って少しだけお酒を飲みました。少しずつ頭も冷えてきていきます。
そういえば、ライラちゃんと喧嘩をするなんて初めてです。意見の食い違いももしかしたら初めてかもしれません。
ライラちゃんはあまり争いを求めない人です。自分の意見よりも相手の意見を尊重するような優しい女の子です。
そんなライラちゃんが喧嘩してでも貫きたいもの、それはライラちゃんにとって大事なものなんですよね。
それはアイドルとしての誇りであったり、私とのステージにかける願いであったり。
なんだか、悩んでいる自分が恥ずかしくなってきました。
こんな熱い思いを持っているアイドル、ライラちゃん。
そんな子が目標と慕ってくれている高垣楓がこんな弱気なことを考えているなんて。
私はあの子の目標なんです。そんな私が弱気な姿を見せたから、ライラちゃんも怒っていたのですよね。
それからのレッスンは熾烈でした。
二人での時間は1秒も無駄にしたくありません。
二人レッスンで課題を見つけて、それを自主練で修正して。次のレッスンでまた擦り合わせて。
その間に他のステージのレッスンもあります。体力的には限界に近いです。
でも止まりたくはありませんでした。
ライブを目前に控えた日、遂にトレーナーさんからの合格を頂きました。
その一言を聞いた瞬間、疲れなんて忘れてライラちゃんに抱きついてしまいました。
一つの曲が完成しただけでこんなに喜ぶなんていつ以来でしょうか。
遂にライブ当日です。
宵乙女、瑞樹さんと、ソロで、沢山歌って踊ってもうクタクタです。
ライラちゃんもソルカマル、ニューイヤースタイル、そしてソロで沢山がんばっていました。
ライブはもう佳境です。
ステージではLiPPSの皆さんが会場を盛り上げています。
これが終わると、遂に最後の演目。私とライラちゃんのステージです。
舞台袖にスターリースカイ・ブライトを着た私とライラちゃんがいます。
「ライラちゃん疲れてませんか?」
「大丈夫ですよー、ライラさんカエデさんとならいつまででも踊れますです」
「それは頼もしいです。それじゃあ最高のステージ作りましょう」
二人で手をつないで、光さす舞台へと駆け出しました。
きっと二人でなら、どんなところにもたどり着けます。
以上です。楽しんでいただけたなら幸いです。
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