※このSSは2018/7/14-15に開催されたイベント「氷上の観艦式」を元にしたフィクションであり、
実在のゲームと関連イベント、及び元プロフィギュアスケート選手とは一切関係ありません。
ただし性質上、同イベントのネタバレとなる描写を含みますのでご注意ください。
大淀「艦隊これくしょん運営企画部の大淀と申します。遠路はるばるお越しいただきありがとうございます」
無良選手「HIROTAクラブ所属の無良崇人です。出演のオファーということで、まずは詳しい話を伺いたいのですが」
大淀「今回企画しているのは私共の開発しているシミュレーションゲーム、『艦隊これくしょん』をモチーフとしたアイスショーでして……全体のイメージを掴んでいただきたいので、こちらの映像をご覧ください」
TV『至誠に悖る勿かりしか……』
無良選手「えーと……女の子が海面を滑ってますね」
大淀「彼女たちは船を擬人化した『艦娘』、大戦期の艦艇の魂的な何かを受け継いだり継がなかったりするサムシングです」
無良選手「説明がざっくりし過ぎじゃないですか?」
大淀「その辺りはきちんとした設定が決まっていないので。それでですね、海上を航行するのと氷上を滑走するのって似てると思いません?」
無良選手「似てないと思います」
SSWiki : http://ss.vip2ch.com/jmp/1532359659
大淀「いえ、こういう水上スキーみたいに艦隊が進む動きを氷の上で再現したいんですよ」
無良選手「……まあ、それなら何となく理解はできます」
大淀「無良さんにお願いしたいのは艦娘の上官であるプレイヤーの分身、『提督』の役どころです」
無良選手「あ、指揮官がいるんですね」
大淀「はい、艦娘は提督の指揮の下、一説には沈んだ艦の怨念とかなんかそんな感じのアレな敵、『深海棲艦』と戦っています」
無良選手「また説明があやふや過ぎません?」
大淀「特に設定がないので」
大淀「実際のショーの内容ですが、ストーリー仕立てにしようかと。まずは鎮守府所属の艦娘の紹介から入ります」
無良選手「はい」
大淀「次に深海棲艦の本拠地でのシーン」
無良選手「はい」
大淀「そして場所を戻して、弦楽奏をバックに提督のソロと続きます」
無良選手「なるほど、そこで登場するんですか……いやちょっと待ってください」
無良選手「女の子を指揮するプレイヤーということは、実際に戦うのは彼女たちということですよね?」
大淀「まあ、そうなりますね」
無良選手「……こういうことを言うのもなんですが、提督役がスケートする意味ってあんまりないんじゃ……」
大淀「……」
無良選手「あの、考えてなかったんですか?」
大淀「あ、いえ、大丈夫です。では、今回は海の上を航行できる提督という体で」
無良選手「ではって、本当に大丈夫なんですか……?」
大淀「はい、問題ありません。次に行きましょう」
大淀「提督の登場の後、再び艦娘と合流して交流を深めます」
無良選手「はい」
大淀「各艦娘と1対1のアイスダンスを踊っていただいて」
無良選手「はい」
大淀「クライマックスは戦艦姉妹とケッコンします」
無良選手「はい……はい?」
無良選手「……理解が追い付かないんですが、提督は船と結婚するんですか?」
大淀「あくまでカッコカリですので。それに金剛型四姉妹は見た目の年齢も高めですし、セーフです」
無良選手「アウトな例もあるんですか……それで、提督は姉妹の誰と結婚を?」
大淀「四人全員ですね」
無良選手「待ってください、やっぱり理解できないです」
無良選手「ナチュラルに重婚罪ですよね」
大淀「あくまでカッコカリですし、ゲームシステム上は何の問題もありません」
無良選手「何度も申し訳ないんですが、本当に大丈夫なんですか?」
大淀「大丈夫です。続けて艦娘の声を担当する声優の方に登場していただきますので」
無良選手「ああ、なんだか普通のイベントの流れだと安心しますね――」
大淀「ソリで」
無良選手「ソリ」
大淀「あ、もちろん声優さんには事前にアイススケートを練習していただいています。艦娘役のスケーターの手を借りれば、十分滑走は可能かと」
無良選手「いや、別にそこを心配していたわけではなくてですね……というか声が仕事の方に何やらせてるんですか」
大淀「去年ステージで大根をおろしてもらったことに比べたら、まだ声優っぽいかなと思いまして」
無良選手「どっちも声優の仕事じゃないと思うんですが」
大淀「演者の挨拶が終わったら、提督の指揮で演習を行って、今度は深海棲艦との実戦に移ります」
無良選手「今度こそ普通の流れに戻るんですよね?」
大淀「BGMは和太鼓の生演奏で」
無良選手「……もうそれくらいなら普通の範疇でいいか」
大淀「インターバルの後はいよいよメインイベントですね」
無良選手「と言いますと、やはり敵勢力との総力戦ですか」
大淀「いえ、その前に全員で法被を着て艦娘音頭を踊ります」
無良選手「……それはつまり、夏祭り的な?」
大淀「瑞雲祭りです」
無良選手「瑞雲祭り」
無良選手「その、瑞雲というのはどういう船なんですか」
大淀「船ではなくて水上偵察機……飛行機の一種ですね」
無良選手「船のアニメなんですよね?」
大淀「ええ、最初に申し上げた通りです」
無良選手「……どうして飛行機の祭りがあるのか伺ってもいいですか?」
大淀「船から発着艦する航空機を祭る方が、船一隻の祭りを開催するよりお得だと思いません?」
無良選手「ごめんなさい、全く理解できないです」
大淀「まあ、そういう宗教のようなものがあると思っていただければ」
大淀「さて、ラストはいよいよ提督の指示で編成された艦隊が、深海棲艦のボスと最終決戦に向かう場面です」
無良選手「大筋だけ聞くと王道のストーリーなんだけどなぁ……」
大淀「一進一退の攻防の末、深海棲艦を追い詰めます」
無良選手「いい展開じゃないですか」
大淀「そしてトドメの一撃を放とうとしたその時」
無良選手「その時?」
大淀「伊藤みどりさん扮する深海氷翔王女が最後の敵として立ちはだかります」
無良選手「……は?」
大淀「伊藤みどりさん扮する――」
無良選手「いえ、聞こえてました、聞こえてたんですけどちょっと理解できないというか」
無良選手「伊藤みどりさんって、あのみどりさんですよね?」
大淀「はい、アルベールビル五輪銀メダリストの伊藤みどりさんです」
無良選手「どこからどうやって呼んできたんですか」
大淀「ダメ元で出演を依頼したら承諾していただけまして。せっかくですから澤山璃奈さんとお二人で深海棲艦のトップ役をお願いしようかと」
無良選手「えっ、澤山さんも出演されるんですか」
大淀「ダメ元だったんですがOKが出まして」
無良選手「行き当たりばったり過ぎません?」
大淀「まあ、結果オーライということで」
大淀「……以上が大まかなショーの流れですが……やはりこういったイベントのご出演は難しいでしょうか」
無良選手「……いえ、やりましょう」
大淀「無良さん……本当によろしいんですか?」
無良選手「現役を引退したら、今までとは違った曲、違ったジャンルに挑戦しようと思っていました」
無良提督「こうやってお話をいただけたのもご縁ということで、提督役、お受けします」
大淀「ありがとうございます! スタッフ一同、幕張特設泊地への着任を心より歓迎いたします」
無良提督「それに、今までスケートリンクに馴染みがなかった方々に、スケートを身近に感じてもらうチャンスだと思いますから。それがスケートに対する僕なりの恩返しなんです。どうかご協力よろしくお願いします」
大淀「こちらこそ。よろしくお願いします、提督!」
TV『私決めた! いつか赤城先輩の艦隊の護衛艦になる!』
無良提督「……ところでこのアニメ、提督はいつ出てくるんですか?」
大淀「あ、最後まで存在を匂わせるだけで姿は見せないですね」
無良提督「えぇ……」
以上です。
これだけ滅茶苦茶書いてもまだ現実の方が頭おかしいのはずるいと思います。
SS中の元プロスケート選手の発言は全くの捏造ですが、
最後のスケートへの思いを語る部分はある元プロの引退時のインタビューをかなり参考にしました。
このSSまとめへのコメント
このSSまとめにはまだコメントがありません