モバP「おしぶ」渋谷凛「……何」 (20)
P「おしぶ」
凛「……それ、私のこと?」
P「そうだけど」
凛「そうだけど、じゃないでしょ」
P「あっ、不愉快だった?」
凛「不愉快……とはちょっと違うけど、ほら、普段は普通に名前で呼ぶでしょ?」
P「うん」
凛「ほら」
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○
P「だめだったか」
凛「だめとは言ってないけど……そもそもどうして急に呼び方を変えようと思ったの?」
P「普段は凛のこと、凛って呼ぶだろ?」
凛「うん」
P「で、先方の前なんかでは渋谷とか」
凛「そうだね」
P「何かしら、オンリーワンの呼び方が欲しいなぁ、なんて」
凛「未央のしぶりん、みたいな?」
P「そうそう。それで考えてみたんだけど」
凛「おしぶはないでしょ。おしぶは」
P「そうかなぁ。かわいいと思ったのに」
○
凛「じゃあ試しに今日一日その呼び方で過ごしてみたら?」
P「え、いいの?」
凛「まぁ、うん。プロデューサーがやりたい、って言うのなら」
P「やりたい」
凛「食い気味に言わないでよ。それと」
P「それと?」
凛「他の人の前ではいつも通り呼ぶこと」
P「……了解した」
凛「ほんとにわかってる?」
P「わかってるわかってる」
○
P「おしぶ」
凛「……うん」
P「おしぶはもう上がりだったよな」
凛「……うん」
P「俺も今やってる作業終わったら上がりなんだけどさ」
凛「うん」
P「おしぶ、このあと暇?」
凛「暇だけど」
P「おしぶ、一緒にご飯どう?」
凛「……ちょっと待ってもらってもいい?」
P「? はい」
凛「これ、やっぱり違和感すごい気がする」
P「おしぶが?」
凛「うん」
P「そうかなぁ」
凛「そうだって」
○
P「うーん。まぁいいや、とりあえずご飯どうする?」
凛「何食べに行くの?」
P「んー。おしぶと行くならイタリアンで、一人ならラーメン」
凛「ちょっと家に電話してくるね。もしかしたらもうご飯作っちゃってるかもだから」
P「ああ、うん。言うの遅くてごめんな」
○
ちひろ「あの」
P「へ? ああ、千川さん」
ちひろ「何ですか。さっきの」
P「さっきの?」
ちひろ「凛ちゃんのことを、おしぶ、って……」
P「ああ。聞こえてました?」
ちひろ「何度も言ったはずですけど、隣のデスクですからね」
P「なるほど」
ちひろ「で、何ですか? あれ」
P「なんとなく、思いつきで。本田さんのしぶりんみたいに、二人だけのあだ名があったら楽しいかなぁ、と」
ちひろ「それ、私に聞かれたらだめだったんじゃないですか?」
P「あ」
ちひろ「あ、って」
P「聞かなかったことにしてもらうとか、できます?」
ちひろ「こんなインパクトあること、忘れたくても忘れられないです」
P「なるほど……」
ちひろ「あ、帰ってきましたよ。凛ちゃん」
P「ホントだ。おしぶ帰ってきた」
ちひろ「その、おしぶってやつ、何なんですか」
○
凛「ただいま」
P「おかえり。どうだった?」
凛「まだ作ってなかったみたい。行けるよ」
P「よし。じゃあ決まりだな」
凛「そういえば、ちひろさんと何か喋ってたよね。お仕事のこと?」
P「いや、おしぶのこと」
凛「…………ちひろさんに話したの?」
P「そもそも隣のデスクだし」
凛「あー……」
ちひろ「え、っと。私はそんなに悪くはないかなー、って」
凛「いえ、その。すみません。大丈夫……です」
ちひろ「……」
凛「……」
P「これ、俺のせいですか?」
○
ちひろ「……ごほん。それはそうと、このあとは二人でご飯行くんですか?」
P「ええ。な、おしぶ」
凛「……うん。千川さんも一緒にどうですか?」
ちひろ「あら、私もお邪魔しちゃっていいのかしら」
凛「私のことを変なあだ名で呼べないように、今日はたくさん食べたい気分なので協力して欲しいんです」
ちひろ「そういうことなら喜んで」
P「……俺が奢る流れになってます?」
凛「プロデューサーがこんな素敵な女性捕まえて割り勘だなんて言うケチな人だとは思わなかった」
ちひろ「こんなにかわいい女の子とご飯に行けるのにいつもお金出させてるなんて知りませんでした」
P「ちょっと。それにいつも奢ってますって。財布出させたことなんてないですし」
ちひろ「そこはしっかりしてるんですね。プロデューサーさん」
P「当たり前でしょう。もう、わかりました! 今日は俺が持ちますから!」
凛「ごちそうさま。プロデューサー」
ちひろ「ご馳走様です」
P「立つ瀬がない」
○
ちひろ「では、私も早くお仕事終わらせちゃいますね! また後ほど!」
P「ええ」
ちひろ「凛ちゃんもまた後でね」
凛「はい。またあとで」
P「行っちゃったな」
凛「うん。プロデューサーもお仕事終わらせなくていいの?」
P「ああ。俺はもうほとんど終わってるようなもんだから、あとは消化試合だよ」
凛「そっか」
P「それにしても、千川さんめっちゃ嬉しそうだったよな」
凛「うん。誘ってよかったよね」
P「いつも隣の席でわちゃわちゃしてるのを聞かせるばっかりだったし」
凛「ね。……あ。あれ」
P「?」
凛「コピー機のとこ」
P「ん、ああ。千川さんがどうしたの」
凛「さっき書類まとめながらくるくる回ってた」
P「浮かれてるなぁ」
○
凛「ちひろさんとプロデューサーってさ、私がこの事務所に来る前から同僚だったわけだよね」
P「まぁ、うん」
凛「私がいないときはどんな感じだったのかな、って今ふと思って」
P「あー。まぁ、今ほど話さなかったよ。業務連絡くらいで」
凛「そうなの? 結構親しげだから仲良かったのかと思ってた」
P「全然。凛が来てからかなぁ。今以上に俺も未熟でさ。いろいろキャパオーバーしちゃったときに助けてくれたりして」
凛「え、じゃあきっかけって私?」
P「そうなる……のか。改めて考えたら、そうだなぁ」
凛「なんか、わかんないものだね。こういう繋がりって」
P「なー。ともあれ、おしぶのおかげで毎日楽しいよ」
凛「……だったら、いいんだけど」
○
凛「そういえば、結局その呼び方はどうするの」
P「おしぶ?」
凛「そう」
P「んー。飽きてきたかなぁ」
凛「……はぁ」
P「確かにかわいいんだけどさ、こう……」
凛「こう?」
P「凛は凛って感じするし」
凛「何それ」
P「でも、たまにはアリだとも思う」
凛「じゃあ、たまには呼んでもいいんじゃないかな」
P「そうする」
○
ちひろ「お待たせしました。プロデューサーさんの方もお仕事、終わってますか?」
P「ええ。丁度今さっき。行けますよ」
ちひろ「凛ちゃんも待たせちゃってごめんね。お待たせしました」
凛「いえ、プロデューサーと遊んでたので」
P「じゃあ行きますか。凛、忘れ物ない?」
凛「うん。大丈夫」
ちひろ「あれ、もうあの呼び方はやめたんですか?」
P「やっぱりいつものがしっくりくるな、と思って」
ちひろ「そうなんですか。私は結構かわいいな、って思ったんですけど」
P「あ、でも封印するんじゃなくて、たまに呼ぶことにしました」
ちひろ「なるほど」
P「おしぶ」
凛「……何」
P「こんな感じで」
ちひろ「凛ちゃん、律儀よね。ちゃんと反応してあげて」
P「でしょ。かわいいですよね」
ちひろ「ほんとに。かわいいです」
凛「……」
P「照れてる」
ちひろ「かわいいですね」
凛「もう、ほんとにそういうのいいですから。それとプロデューサーは後で覚えといて」
P「俺にだけ当たりキツくない?」
おわり
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