【ガルパン】エリカ「鉄人定食ふたつ!」 (28)
黒森峰(みほ転校前)にて
エリカ「ばっかじゃないの!?」
みほ「でも……」
エリカ「でもじゃないわよ!何が"犬が居たから"よ。そんなふざけた理由で負けるなんて」
みほ「…………」
エリカ「練習試合だからって舐めてるわけ!?」
みほ「ち、違う!私は真剣に勝とうと……でも、あそこで止まらなきゃ……」
エリカ「もういい!"でも"、"でも"って言い訳ばっか!聞きたくない!」ガタッ
みほ「い、逸見さ……」
エリカ「ふん」スタスタ
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エリカ「(ああ、もう!何か甘いものでも食べて全部忘れよう)」スタスタ
みほ「…………」テクテク
エリカ「(ちょっと高いけど駅前の喫茶店でパフェが良いかしら)」スタスタ
みほ「…………」テクテク
エリカ「よし決定!」
みほ「っ」ビクッ
エリカ「!?」
エリカ「なんで着いて来てんの!?」
みほ「だ、だってまだ、話終わってない…から……」
エリカ「うるさいうるさい!あっちいけ!」
みほ「…………」
エリカ「(それでも、ずっと無言で西住みほは着いて来た。本当に鬱陶しくって、ウザくて、ムカつく)」
喫茶店
カランカラーン
「いらっしゃいませー」
エリカ「ふぅ」ドスッ
みほ「……あ、あのね?」
エリカ「すみません。アイスコーヒーと季節のパフェ」
「はい。アイスコーヒーと季節のパフェですね。えーっと、そちらのお客様は、お決まりで?」
みほ「あ、え、えっと、同じのでお願いしますっ」
「はい、かしこまりました。少々お待ちください」
………………
………
…
みほ「あの時に、敵車輌が来てたのも分かってたけど、野犬が飛び出してきたのが見えて」
エリカ「…………」
みほ「だから、咄嗟に「止まって」って言っちゃって……」
エリカ「…………」
みほ「わざと負けたとか、やる気がないってことは全然無くって。ホントにアクシデントで……」
エリカ「…………」
みほ「い、逸見さん?」
エリカ「…………」
「アイスコーヒーと季節のパフェになります」
エリカ「ありがとうございます」
「ごゆっくりどうぞ」
エリカ「…………」パクパク
みほ「…………」
みほ「…………」パクパク
エリカ「(こいつが居なければ、最高のひと時だったのに……)」ジロリ
みほ「…………」パクパク
エリカ「(落ち込んでるフリなのか何なのか知らないけど陰気臭いったらありゃしない。一定のリズムでロボットみたいに食べて!)」
………………
………
…
エリカ「ふぅ、ご馳走様」
みほ「ご馳走様でした」
カランカラーン
「ありがとうございましたー」
エリカ「(何だか全然食べた気にならなかった……。せっかく街に来たし、他にも食べてこうかしら……)」スタスタ
みほ「…………」テクテク
エリカ「(まだ着いて来るし……)」
………………
………
…
カフェ
エリカ「(もう、隣のは無視することにしよう)」
エリカ「カニクリームパスタひとつ」
みほ「私も同じのお願いします」
「はーい」
………
…
エリカ「(むっ、この店良いわね!量もあって味も良い、それでいて高くない)」モグモグ
みほ「敵の砲撃の音で犬は逃げちゃっただけで、嘘ってわけじゃなくて」
エリカ「(ここはまた来よっと)」モグモグ
みほ「…………」
みほ「…………」モグモグ
エリカ「(また出たロボット食い。もっと美味しそう食べりゃ良いのに)」ジロリ
………………
………
…
「ありがとうございました!」
エリカ「(さてと、まだ自由時間はあるし、どうしようかしら)」
みほ「そのね、練習試合が大切じゃないってわけじゃないけど、どうしてもその犬のことが……」
エリカ「…………」イライラ
みほ「そんな状況だったら、誰だって止めるでしょ……?」
エリカ「いい加減にしなさいよっ!」
みほ「っ!」ビクッ
エリカ「さっきから延々とぐちぐちぐちぐち!ウザいのよ!」
みほ「で、でも……」
エリカ「私は許さないし、言い訳を聞く気もない!」
みほ「…………」
エリカ「それなのに美味しいもの食べてる時まで延々と!しかも、あんたは陰気臭い食べ方してるし!」
エリカ「イライラすんのよ!美味しいとも言わずにロボットみたいに食べて!!私への当てつけ!?」
みほ「あ、え?」
エリカ「もう怒った。とことんまで行くわよっ!!」
エリカ「着いてこいッ!!!」
みほ「え?え……?」
………………
………
…
定食屋
「っしゃいぃーーー!!!」
みほ「っ!?」
「ご注文は?」
エリカ「鉄人定食ふたつ!!」
「は……?」
「い、いや、あのさ、鉄人定食ってのは」
エリカ「鉄人定食ふたつっ!!!」
ザワザワザワザワ
「あーもう、俺は知らねえぞ」
「鉄定二丁入りましたあーーーー!!」
ーーーーーー
ーーー
ー
みほ「(なんで私は……)」
みほ「(エリカさんに、私は練習試合で間違ったことしてないって言いたくて……)」
みほ「(それで、なぜだかパフェを食べて……パスタを食べて……それから……)」
エリカ「はっ、はあっ」ズルズルッ
エリカ「…………」ギロリ
みほ「(こんな恐ろしくデカいラーメンを食べているんだろう……)」モグモグモグ
ーー無銭飲食列伝ーー
鉄人定食……¥4000
(鉄人ラーメン+鉄人餃子+鉄人中華丼)
完食されたらお代はいただきません。
途中で席を立った場合、周囲を見苦しく汚した場合は失格になります。
ーーーーーーーーーーーー
エリカ「ほら!食べなさいよ!ロボットみたく!」ズルズルッ
みほ「…………」ズッ
エリカ「根性なし!逃げるんならとっとと逃げなさいよ!」ズルズルッ
みほ「……っ!」
みほ「(そうか、この大食いメニューを食べさせて、諦めさせることで、逸見さんは私のことをすぐ逃げる、臆病者って言いたいんだ!)」
みほ「(確かに私の行動でチームが負けてしまった……反省はしてるし、後悔もしてる。だけど間違ったことはしてない!!)」
みほ「私だって……意地はあります!」ズルズルッ
エリカ「(食べきれるかは問題じゃない!こいつだけには絶対負けない!!)」」
エリカ「意地?あんたはいつだって逃げてばっかの卑怯ものよ!」ギロリ
みほ・エリカ「(まいったなんて絶対言わない!)」
………
…
エリカ「…………」ドカッ
みほ「ご馳走様でした」ドカッ
「う、嘘だろ……?あいつらあのラーメン食っちまいやがった……」ザワザワザワザワ
エリカ「…………」ギロリ
みほ「(な、なんとか食べれた……)」
みほ「はぁ……はぁ……」ウプッ
エリカ「ふん」ニヤリ
みほ「(ラーメンを食べ終わってから餃子を作り始めるんだ……。ううっ、この強制的な休憩が逆にキツい!)」
エリカ「(ふん、食べ終わった後も血糖値は上がり続けて、満腹中枢を刺激する!休憩と見せかけた地獄!あんたに耐えきれるかしら?!)」
「鉄人餃子お待ちぃーーーーー!!!」
みほ「…………」
エリカ「(餃子はたったの5個だった)」
みほ「(たった5個というのが意味するのは……)」
みほ・エリカ「(とてつもない巨大餃子!!)」
エリカ「うおおっ」バクッ
みほ「(手づかみで!?)」
みほ「えいっ!」バクバクッ
エリカ「(こいつ……!)」
みほ「(めちゃくちゃ熱くて口の中の感覚は殆どない。餃子の濃いめの味付けが気つけ剤のように働いて、なんとか口を動かす)」
エリカ「(負けない負けない!犬副隊長なんかに絶対負けない!)」バクバクッ
みほ「(負けたくない!私の全部が間違ってたなんて絶対に言わせない!)」バクバクッ
みほ・エリカ「…………」ギロリ
……………
………
…
みほ「ご、ごちそ…さ…です」グッタリ
エリカ「…………」グッタリ
みほ「(は、吐きそ……)」
エリカ「(もう、無理)」
「鉄人中華丼です!!!どうぞぉっ!!!!!」
みほ「(その中華丼は心を折るには十分な見た目をしていた)」
エリカ「(うずらでなく鶏の卵がゴロゴロ入った餡)」
みほ「(洗面器のような器に思わず頬がヒクつく)」
エリカ「(けれど……)」
みほ「(だけど……)」
みほ・エリカ「(まいったとは絶対に言わない!!)」
……………
………
…
みほ「あぅぇっ……」バタン
エリカ「!?」
エリカ「(西住みほが中華丼に顔から突っ伏した。勝った……そう思った瞬間に胃からあらゆるものが逆流しかける)」
エリカ「あっ、あぅっ……」ゴキュリ
エリカ「(ぎ、ギリギリの所で飲み込む。私もとうに限界は超えていた)」
みほ「ま、負けない……」ムクリ
エリカ「え……?」
エリカ「(西住みほは顔面に、もやしやナルトを付けて起き上がった。根性なしで、いつだって臆病で、おどおどしている副隊長の面影はすでに無かった)」
エリカ「(小学生のような負けず嫌いの子供の顔だった)」
みほ「…………!」バクバクッ
エリカ「っ……!」
エリカ「上等っ!!」バクバクッ
………………
………
…
空の食器が6つあった。
食器というにはあまりに巨大で、あまりに深いが、それでも野菜の一片すら残っていなかった。
エリカ「や、やるじゃない」
みほ「い、逸見さんも……」
みほ・エリカ「あうっ」バタリ
最後まで意地っ張りな2人の少女は倒れた。
この食事に大きな意味はない。
2人は仲良しになることはないし、練習試合のことを理解し合うこともない。
けれど、空っぽの器のように、2人は清々しい気持ちだったという。
みほ「…………」
エリカ「…………」
完
2018年なのにイリヤの空ネタ……?
おっくれってるぅーーーー!!
というわけでイリヤの空、ufoの夏ネタでした。
以下おまけ
ミカ「無銭飲食烈伝」
所持金は220円
牛丼すらも買えない
ミカ「…………」
ぐぅうーっとお腹が1鳴きする
この絶望的状況においてもミカは微笑していた
その理由は無銭飲食にある
そう、無銭飲食をすれば良いのである
勘違いしないで貰いたいが、万引き・食い逃げなどのことではない
いわゆる"チャレンジメニュー"を食べることでお代をただにするのことを指す
ミカはこれまでも何度もこの手で無銭飲食を繰り返している
主に激辛メニューを主体のスタイルで、敗北は未だゼロ
大食いメニューにも自信はある
ミカは意気揚々と、ある定食屋の戸を叩いた
「っしゃいぃーーーー!!!」
腹から叫ぶような店員の声
男性客ばかりの店内
咽せ返りそうになるほどの強烈な中華の匂い
ジャッジャッと絶え間なく振られる中華鍋の音
ミカは思わず口を緩ませる
美味い店の大食いメニューほど楽なものはないからだ
ーー無銭飲食列伝ーー
鉄人定食……¥4000
(鉄人ラーメン+鉄人餃子+鉄人中華丼)
完食されたらお代はいただきません。
途中で席を立った場合、周囲を見苦しく汚した場合は失格になります。
ーーーーーーーーーーーー
ミカ「あれをひとつ」
ミカはひと際目を引く広告を指差し、そう言った
その瞬間に店員の顔に緊張が走る
「て、鉄人定食ですか?」
ミカ「うん」
店員は頬を一度二度ヒクヒクとさせてから
「鉄人定食一丁ぉおおおーーー!!!」
とヤケクソのように叫んだのだった
ミカは食事を待ちながらポケットを探る
100円が2枚に10円が2枚
間違いなく220円しか持っていない
背水の陣というにはあまりにも情けない戦いが始まろうとしていた
「鉄人ラーメンお待ちぃっ!!!」
店員の叫び声とともに、洗面器のような丼が置かれる
レンゲすらバカでかいせいで、箸がとてつもなく小さく感じる
割り箸をパキッと割り、開戦のゴングを鳴らす
ミカ「いただきます」
スっと大量の野菜を分け入って、麺を掴む
そしてグイっと強引に野菜と麺の位置を反転させる
そして麺をひたすらに口に放り込む
ミカ「うん。美味しい」
5分も経つと、ラーメンは2/3ほどになっていた
ミカ「ふふ、余裕だね」
そしてスープを啜った瞬間、突如として満腹感がこみ上げた
ミカ「っ!」
やばい
ミカは冷や汗を流す
思えば大食いメニューに挑戦したのはアキやミッコと3人で一緒に食べれるメニューだけ
実はミカ自身はそこまで大食いで無かったのだ
ミカ「あっ、あう」
もはや涙目である
ラーメンと一緒に鼻水をすする
所持金は220円
鉄人定食は4000円
ミカは人生の意味について考え始めた
人間が生きる意味ってなんだろう
ラーメンは減らない
私のこれまでの十数年に何の意味があるんだろうか
麺が汁を吸ってラーメンはむしろ増える
ああ、なんで私は産まれてきたんだろう
店員に言って、店長を呼んでもらう
ミカは涙で濡れた目を、一度だけ拭うと決意のこもった眼差しで店長を見た
ミカ「お皿を洗わせてくれないかな?」
完
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