P「そう。惚気」
凛「何? 何の惚気?」
P「いいから、いいから。とりあえず聞いて」
凛「よくわかんないけど……はい」
P「今日のことなんだけどさ、車で移動してたんだよ」
凛「うん」
P「そのときに一緒にいた相手に、お昼摂る時間作ってあげられなかったから移動中に食べて、ってサンドイッチあげたんだけど」
凛「……え」
P「ただのコンビニのサンドイッチなのにさ」
凛「……ちょっと待って」
P「わざわざごめん。ありがとね、って恭しく受け取ったんだよ」
凛「それ、私のことじゃない?」
P「で、律儀……かわいい……ってなったわけ」
凛「……ねぇ、それ私でしょ」
P「律儀かわいい……ってなるだろ、こんなの」
凛「それは、その、良くしてもらったらお礼を言うのは当たり前でしょ?」
P「そういうとこだぞ」
凛「……」
P「仕事のせいでお昼摂る時間なくなってるんだから、俺のせいみたいなもんだろ」
凛「まぁ、そうなのかもしれないけど。でも悪意があるわけではないし……」
P「さらに、それだけじゃなくて」
凛「……うん」
P「おすそわけ、とか言って笑いながらひとくちくれたんだよ」
凛「あー、うん」
P「顔には出さなかったけど、めちゃくちゃテンション上がってたし、なんなら事故りそうだった」
凛「何してるの」
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○
P「他にもあるぞ」
凛「もういいって」
P「よくない。聞いて」
凛「……何が目的なの?」
P「だから惚気だって」
凛「本人相手に惚気るの、斬新すぎないかな」
P「こないだ急にメッセージが飛んできたんだけど」
凛「……うん」
P「何て書いてあったと思う?」
凛「『ぴの』」
P「そう、たった二文字。何の脈絡もなく『ぴの』」
凛「……」
P「それで、よくわかんなかったけど買っといて事務所の冷凍庫入れといたわけ」
凛「ご丁寧にお名前シールまで貼ってね」
P「丁度入れ違いで食べてるとこは見られなかったんだけど」
凛「うん」
P「千川さんに聞いたら、めちゃくちゃにこにこしながら食べてましたよ、って言ってた」
凛「……」
P「かわいくない?」
凛「……ねぇ」
P「わ。星型のやつあった、とか小声で言ってたらしいし」
凛「ほんとに何が目的なの?」
P「だから惚気だってば」
○
凛「私、何か怒らせるようなことした?」
P「してない」
凛「じゃあなんでこんな仕打ちを受けなきゃいけないの」
P「え、もしかして嫌だった?」
凛「嫌……とは違うかもしれないけど、ほら、その、恥ずかしいでしょ?」
P「……?」
凛「何でそんな不思議そうな表情するの」
P「恥ずかしいか?」
凛「恥ずかしいよ」
P「具体的に、どんな感じで?」
凛「面と向かって、その、かわいいとか言われると普通恥ずかしいものでしょ?」
P「言われ慣れてるだろ、アイドルなんだから」
凛「それは……そうだけど、ちょっと種類が違うと思う」
P「そういうものかなぁ」
凛「そういうものだって」
○
P「じゃあ、試しにさ」
凛「うん」
P「俺のこともさっきみたいな感じでテキトーに褒めてみてよ」
凛「……なんでそうなるの」
P「だって、これで恥ずかしいと思わなかったら、凛が変ってことになるし」
凛「……いい様に騙されてる気がするけど、わかった」
P「よし。かかってこい」
凛「少し前の話なんだけど」
P「うん」
凛「とある人がみたらし団子を買ってくれたんだよね」
P「へぇ」
凛「で、一緒に食べたわけなんだけど」
P「うんうん」
凛「食べるの、めちゃくちゃ下手でさ。ほっぺに葛餡つけてて」
P「……」
凛「かっちり着込んだスーツとだらしない顔とのギャップがなんか面白くて」
P「……」
凛「ちょっと抜けてるのもまた、かわいいな、って思ったよ」
P「これ、恥ずかしいな」
凛「だから言ったでしょ」
○
ちひろ「何してるんですか」
P「あ、ちひろさんお疲れ様です」
凛「お疲れ様です」
ちひろ「お疲れ様です、じゃないです」
P「?」
ちひろ「二人して何をしてるんですか」
P「え、聞いてたんですか」
ちひろ「隣のデスクですよね?」
P「なるほど」
ちひろ「凛ちゃんも凛ちゃんで、なんで律儀に付き合ってるんですか」
凛「その……律儀かわいいらしいので」
ちひろ「それはさっき聞きました」
○
P「あ、ちひろさんも混ぜて欲しいんですか?」
ちひろ「なんでそうなるんですか」
P「……いや、そうなのかなぁ、と思って」
ちひろ「だいたい、プロデューサーさんお仕事はどうしたんですか」
P「明日の会議用の資料は既に。予備分も含めてホチキス留めして第二会議室へ搬入済みです」
ちひろ「……例の打ち合わせで先方に渡す予定の資料も」
P「作ってあります」
ちひろ「……」
○
凛「その……なんかすみません」
ちひろ「いえ、凛ちゃんが悪いわけじゃないので……」
P「アイス食べます? また買って来てあるんですよ」
ちひろ「……ピノですか?」
P「パルムです」
ちひろ「ピノじゃないんですね」
P「実は今日、凛とピノの話をしててですね」
ちひろ「はい」
凛「パルムって大きいピノじゃない? って話になったんですけど」
ちひろ「それで、買って来たわけなんですか」
P「はい」
ちひろ「……仲、良いですよね」
P「?」
ちひろ「プロデューサーさんと凛ちゃん」
P「ああ。そうですね。それなりには」
ちひろ「それなり……それなり?」
P「え、何か?」
ちひろ「お互い多忙の身なのに、オフに一緒に遊んでるような間柄で、それなりですか?」
P「あー」
ちひろ「仲良いですよね」
P「凛は仲良いと思う?」
凛「さぁ……っていうか私に振らないでよ」
○
P「じゃあ、パルム持ってきますね」
ちひろ「あっ、はい。ありがとうございます」
凛「……」
ちひろ「プロデューサーさん、いつも凛ちゃんのことばっか話すのよ?」
凛「え、私のことですか?」
ちひろ「ええ。ほら、デスクが隣だと普段話す機会も増えるじゃない?」
凛「そこで私の話を」
ちひろ「そうなの。いつも『千川さん聞いてくださいよ。凛がですね』って嬉々として」
凛「恥ずかしい……」
ちひろ「プロデューサーさん、いつもあんな感じだけど、凛ちゃんとお仕事するの本当に楽しそうだから、愛想尽かさないであげてね」
凛「それは、その。私もプロデューサーとお仕事するのは楽しいので」
ちひろ「ふふ、私もそんな二人のサポートができるのが楽しいです」
凛「いつもお世話になってます。ふふっ」
○
P「俺の話、してた?」
凛「うん」
P「あれ? ホントに?」
ちひろ「ええ、プロデューサーさんについて少し」
P「え、どういう話を?」
凛「あんまりちひろさんに迷惑かけちゃダメだよ」
P「……ホントに何の話をしてたの?」
凛「ほら、アイス溶けちゃうよ」
P「あ、はい。これ、千川さんと凛の」
ちひろ「ありがとうございます」
凛「ありがと。プロデューサーも半分いる?」
P「半分、って言ったって棒アイスをどうやって」
凛「切ればいいよ。給湯室に包丁あるし」
P「じゃあもらおうかな」
凛「ん。切ってくるね」
P「ついてくよ」
凛「なんでついてくるの」
P「なんとなく」
凛「はぁ、もう。好きにしたら?」
P「じゃあ、千川さん、お騒がせしましたー」
ちひろ「え、あっ、はい。アイスごちそうさまです」
ちひろ「仲、いいなぁ」
おわり
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