【バンドリ】あなたと誰かの話【安価】 (115)
安価であなた(主人公)の特徴を決めてバンドリの誰かと仲良くなる話
あなたの
性別↓1
性格↓2
(ツンデレとか素直とか根暗とか適当に)
学年↓3
(中3~高3まで)
攻略対象↓4
(ガルパキャラ25人の中から1人)
「あなた」のプロフィールによっては羽丘と花咲川の設定を少し変えさせていただきます
キャラ崩壊したらさーせん
SSWiki : http://ss.vip2ch.com/jmp/1529419044
あなた
男性
情熱的な熱血漢
羽丘学園高等部1年生
攻略対象
宇田川巴
羽丘女子学園の設定ちょっといじります。すいません。
遅筆なのはご容赦ください
あなた(俺が宇田川巴という人を知ったのは、あるライブハウスでのことだった)
あなた(親友に誘われて、興味はあまりないけど顔を出した「CiRCLE」というライブハウス)
あなた(そいつが言うには『今かなり熱いバンド。あとメンバーがみんな可愛い』)
あなた(大層な言葉をやけに興奮した口調で言っていたが、その言葉はあまり俺の琴線に触れはしなかった。ただ、こいつがそこまで言うなら聞いてみるか、くらいの気持ちでいた)
あなた(所詮高校生のライブだ。それもガールズバンド)
あなた(どうせ小奇麗で歯の浮くような、恋がどうとか好きな人がどうとか、そんな歌詞を吐き出すだけのものだと思っていた)
あなた(……だが、それはものすごく失礼な印象だった)
「聞いて。あたしたちの歌を」
あなた(黒髪の一部に赤いメッシュを入れたボーカルの女の子。その子の凛とした声が会場に響く)
あなた(そしてその後に、ステージの最奥、ドラム担当の女の子が力強くスティックを叩き合わせ、始まりの音頭を取る)
あなた(その姿に目を奪われた)
あなた(情熱的な赤で綺麗に伸ばされた髪。気っ風のいい笑顔を浮かべて、細い腕に握られたスティックが鮮やかに動き回り、音を弾けさせる)
あなた(俺は音楽のことはあまり詳しくない。だからその演奏の上手い下手は分からない)
あなた(だが、彼女の演奏に、演奏する姿に、俺は魂を揺さぶられた)
あなた(『可愛い』や『綺麗』ではなく、汗を煌めかせながら一心不乱にドラムを叩く姿がただただ『カッコいい』)
あなた(このガールズバンド――アフターグロウの演奏が終わるまで、俺はドラムの女の子の姿から目が離せなかった)
……………………
あなた(これが俗にいう「一目惚れ」というやつなんだろうか)
あなた(あとから親友に聞いたが、彼女の名前は「宇田川巴」というらしい)
あなた(演奏を聞いて、その名を知って、あの日に感じた情熱はずっと胸の内に燻り続けていた)
あなた(そしてそれは俺が高校に入学した際に再び大きく燃え上がることになった)
――羽丘学園 校門――
あなた(少子化の影響か、今年から共学になった「羽丘女子学園」改め「羽丘学園」)
あなた(俺はその記念すべき男子一期生としてこの学園に入学した)
あなた(志望動機は「家から近いから」)
あなた(そう言った時の鳩が豆鉄砲を食ったような面接官の先生の顔がやけに印象的だった)
あなた(だが家から近いということは何においても利点が多いものだろう)
あなた(例えば電車や何やらを使って1時間、往復で2時間を毎日通学に費やすこと)
あなた(家から歩いて20分、往復で40分を毎日通学に費やすこと)
あなた(どう考えても後者の方がいい。体も動かせるし一石二鳥だ)
あなた(それに、自由に使える時間が多い方が好きなことに打ち込める)
あなた(バイトとか、アフターグロウのライブとか、そういうことに)
あなた(そんなことを語ったら合格した)
あなた「情熱1つでなんでも出来るもんだな」
あなた(そんなことを呟きながら学園に足を踏み入れようとした、その時だった)
――ドンッ
「っと、すいません」
あなた「いや、こちらこ……そ」
あなた(不意に校門の陰から出てきた女子生徒にぶつかってしまう)
あなた(謝られ、俺も謝って、相手の顔を見る)
あなた(ドクン、と心臓が大きく跳ねた)
あなた(情熱的な赤い髪。ステージの上では分からなかったが、こうして目の前にする俺と目の高さがほとんど変わらない、高身長のスレンダー)
宇田川巴「あれ、もしかして新入生か?」
あなた(あの日、ライブハウスで姿を見てからずっと胸の内に憧れを抱いていた「宇田川巴」がすぐ目の前にいた)
あなた「っ、は、はいっ!」
あなた(思わず返事が上ずる。それに少し恥ずかしい思いが募る)
巴「あっはっは。いやーなんか初々しいなぁ~。アタシも去年はこんな風だったな」
あなた(対する「宇田川巴」はそんな俺の姿を見て気っ風よく笑っている)
あなた「あの、」
巴「うん?」
あなた(何かを言おうと思い、口を開いてから何を言えばいいのか考えていなかったことに気付く)
あなた(だけど悩んでいても仕方ない。こういう時は勢いだ)
あなた「アフターグロウでドラム叩いてますよね? 確か、宇田川巴さん、ですよねっ?」
巴「おお、アタシたちのこと知ってるのか!」
あなた「はい! よくライブ、見に行ってます!」
巴「そっかそっか! ありがとな!」
あなた(ニカッとした笑顔に歯切れのいい言葉)
あなた(ステージでその姿を見て、俺が想像していた通りの人物だった)
あなた「特に宇田川先輩のドラム、いつも超カッコいいと思ってます!」
巴「お、マジで?」
あなた「はい!」
巴「へへ、なんだか照れるな。っと、そうだ。つぐに生徒会の手伝い頼まれてたんだ」
あなた(宇田川先輩はそう言い、チラリと校舎の方へ視線を送った)
巴「ぶつかっちゃって悪かったな」
あなた「いえ、こちらこそ! 邪魔してすいません!」
巴「いやいや、よそ見して歩いてたアタシが悪いんだって」
巴「そんじゃな! またライブ、見に来てくれよ!」
あなた「絶対行きます!」
巴「ははっ、元気な返事だな! 絶対だぞーっ!」
あなた(大きな声でそう言って、宇田川先輩は校舎の方へ駆けていく。その姿を見送ってから、俺は胸の内が熱くなっているのを実感する)
あなた「……知らなかった。まさか羽丘の人だったとは」
あなた(憧れの人。薄い膜を一枚隔て、双方向性のないテレビとかみたいな、一方的な関係)
あなた(そう思っていた人物とこうして話し合えたことに、体の奥から熱い感情が生まれ、全身に迸っていくような気がした)
あなた(あまりにも身近に感じてしまった宇田川先輩という憧れ)
あなた(その姿に一歩でも近づけるようになりたい)
あなた(これは愛とか恋とかなのだろうか。一目惚れ、とは思うが、実際に恋をしたことがないからよく分からない)
あなた(でも、宇田川先輩の隣に立っても見劣りしないような男になりたい)
あなた(あの『カッコよさ』に負けない男になりたい)
あなた(そう思うと心が昂り、今すぐにでも走り出したい衝動が沸き起こる)
あなた「……燃えてきたぜ!」
あなた(思い立ったが吉日。いい言葉だ)
あなた(その言葉にならい、俺は地を蹴って校舎まで駆けだすのだった)
プロローグおわり
羽丘女子学園→羽丘学園
巴たちが進級し、次の代から共学化に設定変えました
水曜と木曜の夜に書くと思います
お付き合いいただけたら幸いです
――羽丘学園 教室――
あなた(入学式も終わり、瞬く間に1週間が過ぎた)
あなた(今日は金曜日)
あなた(この1週間はほとんどすべての授業がオリエンテーションや授業内容の説明だったが、来週の月曜日からは本格的な授業が始まるらしい)
あなた(正直頭を使うのは苦手だ。だが勉強もしっかり頑張らなくては)
あなた(『今の時代は情報がものを言うんだ、頭を使わないと』と別の学校に進学した親友も言っていたし、男たるものは何事にも全力で挑んでこそだろう)
あなた(……それはそうと、入学してから気付いたことが1つ。男子生徒の数が少ない)
あなた(俺のクラスは合計25人、そのうちの20人が女子生徒だった)
あなた(何故だろうか、と頭をひねっていたが、担任の先生の話によると共学化してすぐの学校はそんなものらしい)
あなた(加えて『肩身の狭い思いをするかもしれないけど』と言われたことを思い出す)
あなた(周りがほぼ女子生徒。確かに気を遣わないといけない部分も多くあるだろう)
あなた(そういうのも苦手な部類に入ることだった。男同士なら拳で語り合えば大抵のことは解決するが、流石に女子生徒相手に手を上げるのは男としてアウトだろう)
あなた(難しいことだけど、これも勉強だ)
あなた(そんなことを考えながら、教室の壁に付けられた時計に目をやる)
あなた(時刻は15時。放課後のホームルームも終わり、そこかしこで話をする女生徒たちの声と、それに紛れて教室の隅で話をする2人の男子生徒の声が微かに聞こえる)
あなた(俗に言う花の金曜日)
あなた(胸の内にある大きな思いは、憧れの宇田川先輩に負けないような男になりたいということ)
あなた(そのために、俺はまず何をしようか……よし、決めた!)
1:宇田川先輩のことをもっと知ろう!
2:自分を磨こう!
3:その他自由安価
(R18なことや公序良俗に反することはバッドですごめんなさい)
↓1
あなた(まずは勉強だ!)
あなた(身体を動かすことは好き、でも頭を使うことは苦手……)
あなた(いつまでもそんなことを言っていてはダメだ)
あなた(親友の言葉もあるし、ここはしっかり勉強をしよう)
あなた(よし、そうと決まれば図書室へ行こう)
あなた(図書室の場所は……どこだったか)
あなた(月曜日に校内を案内された気がするけど覚えていなかった)
あなた「すまん、ちょっといいか?」
「ん? なに?」
あなた(仕方ないので隣の席の帰り支度をしている女子に場所を聞いてみることにした)
あなた(確かこの子は羽丘中等部からの内部進学だと自己紹介の時に言っていたから、多分分かるはずだ)
あなた「図書室の場所を教えてくれないか?」
「うん、いーよ。えーっとね、図書室は……」
あなた「……なるほど、分かった。教えてくれてありがとな!」
「ううん、どういたしまして」
あなた(隣の席の女子生徒はニカッと笑う。それに手を振って、俺は図書室へ向かった)
図書室で出会う人物
↓1 (羽丘女子学園のキャラでお願いします)
――図書室――
あなた(さて、ここまでやってきたのはいいものの……まずは何を勉強すればいいのだろうか)
あなた(普段からあまり勉強する癖がついていないからな……よし、とりあえず貰ったばかりの教科書を読もう)
あなた(授業の予習ってやつだな)
あなた「まず国語の教科書は……」
あなた(空いている席に着き、パラリと開いたページ。その題目には「ロミオとジュリエット」という文字が書いてあった)
あなた(作者は……シェイクスピア? 聞いたことがあるようなないような)
あなた「って、短いな」
あなた(教科書に載っているのはその話の代表的な部分だけなのだろうか)
あなた(あまりにも短く、唐突な区切られ方に少しモヤモヤとした気持ちが沸き起こる)
あなた「……よし、せっかく図書室にいるんだ。この際だからこの話を全部読んでみるか」
あなた(悩んだらまず行動。悩まなくてもとりあえず行動)
あなた(案ずるより産むが易し。いい言葉だ)
あなた(そう思って席から立ち上がり、俺は配架されているだろう「ロミオとジュリエット」を探す)
あなた「……ん?」
あなた(作者五十音順で並んでいる本棚と本棚の間)
あなた(そこにやけに端正な顔立ちをした女子生徒の姿を見つけた)
「ふむ、なるほど……ああ、つまりそういうことだね……儚い……」
あなた(本を読みながらブツブツと独り言をもらしている)
あなた(見ようによっては怪しいけど、なんだろうか。まるでドラマの一幕のように、その人のその姿は絵になっていた)
あなた(ぼんやりとその姿を見つめてしまう)
「……おや?」
あなた(と、その人物は俺の存在に気付いたようだ。ゆったりと、優雅な仕草で視線がこちらへ向けられる)
「ああ、すまない。邪魔になってしまっていたね」
あなた「いえ、こちらこそ」
あなた(そう言って、その人は読んでいた本を閉じる。その表紙に目が行く)
あなた(そこには「ロミオとジュリエット」と書いてあった)
あなた「すいません、失礼を承知でお願いがあります!」
あなた(立ち居振る舞いを見るに上級生だろう。俺は失礼のないような言葉を選ぶ)
「ん、なんだい?」
あなた「……あなたが今持っている本を探していたんです。差し支えなかったら、それを貸してもらえないでしょうか?」
あなた(それとつい大きくなってしまった声を意識して抑える。ここは図書室だ。静かにするのがマナーだろう)
「ああ、そうだったんだね。もちろんいいさ」
あなた(その人が差し出してくれた本を受け取る。スラリとした綺麗な手に少しだけドキッとしてしまった)
「シェイクスピアが好きなのかい?」
あなた「ああいや、少し授業の予習をしようと思っていたんです」
「そうか。君は……新入生かい?」
あなた「はい」
「ふふ、熱心なんだね」
あなた「男たるもの、何にでも全力で挑むべきだと思っていますから」
「なるほど、いい心がけだ。シェイクスピアもこう言っている。『慢心は人間最大の敵だ』と」
あなた(さらりと出てきた言葉に少し驚く。多分シェイクスピアの格言なんだろう)
あなた「そういう言葉、覚えているんですか?」
「うん? ああ、まぁ……ね」
あなた「すごいですね。何かそういう記憶することのコツってあるんですか?」
あなた(苦手な勉強に何か生かせるかもしれない。そんなことを思いながら俺は尋ねてみる)
「そうだね……好きこそものの上手なれ、という言葉がある通り、好きになれば自然と覚えるものさ」
あなた「なるほど……」
「あとは自分の中にそういう役を下ろすこと……だね」
あなた「役?」
「そう。ああ、自己紹介が遅れたね。私は瀬田薫。演劇部員なんだ」
あなた(そう言ってその人――瀬田先輩は芝居がかった手ぶりで自分の前髪を払い、笑顔を作る)
あなた(キザな仕草だったけど、ものすごく様になっているから全然嫌味に見えなかった)
薫「例えば……君は見たところ、あまり勉強が好きではなさそうだね」
あなた「はい。座っているよりも体を動かしている方が好きです」
薫「では、自分の中に勉強が好きな人物を持ってみよう」
あなた「勉強が好きな人物を?」
薫「そう。身近な人でもいいし、映画やドラマの人物でもいい。その人になりきってみるんだ」
薫「その人物ならどうするか、きっとこうするだろう。そういう自分なりの解釈を表現するんだ」
あなた「な、なるほど……?」
薫「さぁイメージしてごらん」
あなた(勉強が好きな人物……親友がちょうど頭を使うのが好きだったな)
あなた(あいつのイメージを自分の中に下ろす……?)
あなた「……このテストの点数が95点を超えたら、俺はあの子に告白する」
あなた(中学のころ聞いた、親友の言葉を真似してみる)
薫「そう、その調子だ……」
あなた「くそ、どうしてもこの数式が頭に入らない……! でもここで挫けちゃダメだ、あの子に告白するんだ……!」
薫「もっと情熱的に!」
あなた「こんな数式程度に負けてたまるか! 俺は絶対に告白するんだ!」
薫「ああ、いいよ! その調子だ!」
あなた「告白の勝算? そんなものはない! でもそれは勝算を導き出す方程式が間違っているだけかもしれないだろ!」
あなた「それに、そんなのなくったってやるのが男ってもんだろうよぉ!!」
薫「今、君は確実にその人になりきっている! さぁ、もっとだ、もっと――」
「おほん!」
あなた(と、不意に咳払いが聞こえた)
あなた(瀬田先輩と揃ってそちらへ顔を巡らせる)
あなた(おさげの黒髪に黒ぶち眼鏡という出で立ちの図書委員らしき人物がいた)
「瀬田さん、うるさいです。演劇指導は結構ですが、やるなら部室でやって下さい」
薫「あ、ああ、すまない……つい熱が入ってしまって……」
「君も……新入生だと思うけど、図書室は勉強と読書をするところです。静かにして下さい」
あなた「はい……すいませんでした……」
あなた(瀬田先輩と揃って頭を下げる)
あなた(流石にこのまま図書室にいるのは居たたまれなかった)
あなた(俺は手にしていた本を本棚に戻して、席に戻る)
あなた(そして自分のバッグを手にして廊下に出た)
薫「……すまなかった。シェイクスピアが好きなのかと思って、ついはしゃいでしまったよ」
あなた(廊下に出ると、先に図書室から出ていた瀬田先輩に謝られた)
あなた「いえ、大丈夫です! 俺の方こそ先輩の邪魔をしてすいませんでした!」
あなた「それと、アドバイスありがとうございました!」
薫「ああいや、参考になったのなら私も嬉しいよ、子猫ちゃん……ではないか。ええと……子犬くん」
あなた(……子犬?)
薫「私は部活があるから、ここで失礼するよ。今日は本当にすまなかった」
あなた「とんでもないです! 部活、頑張って下さい!」
薫「ああ、ありがとう」
あなた(瀬田先輩はそう言い、軽やかな足取りで去っていく)
あなた(それを見届けてから、これからどうしようか考える)
あなた(時刻は16時。まだ帰るには早いような気がしないでもないが……)
1:帰る
2:まだまだ己を磨く
3:その他自由安価
↓1
あなた(よし、決めた! もう少し自分を磨こう!)
あなた(さて、そうと決まれば何をしようか。勉強……はもう今日は図書室が使えないし、家に帰ってからでも出来る)
あなた(となるとここは学校や商店街で出来るようなことだな)
あなた(よし、それじゃあ……)
1:バイトだ!
2:部活だ! あ、でも……
3:その他自由安価
↓1
あなた「やっぱり青春の汗を流す部活だ! あ、でもそういえば……」
あなた(と、部活をしようと思ったのはいいが、そこで思い出す)
あなた(共学して間もない羽丘は男子生徒の数が少ない。だから今すぐに男子が入れる体育会系の部活がないんだった)
あなた(もちろん文化系の部活動なら入れるだろう)
あなた(瀬田先輩に出会ったのも何かの縁だし、演劇部に行ったっていい)
あなた(それも悪くはない)
あなた(だけど、せっかくやるなら外でバリバリ体を動かす部活がやりたかった)
あなた「うーん……よし!」
あなた(悩んでいる時間がもったいない。この際だから、学校という括りはいっそ無視してしまおう)
あなた(外に出たら出たで、きっと何か体を動かすような活動が見つかるはずだ。多分)
あなた(そうと決まれば早速、商店街の方へ行ってみよう)
……………………
あなた(なんて意気込んだのはいいものの……)
あなた(商店街なんかを片っ端から見て回ったけど、身体を動かすような活動は見つからなかった)
あなた(代わりにアルバイトを募集してるところは色々目についたけど……)
あなた「どうしたもんかなぁ」
あなた(と、そう呟いたところで遠くから何か大きな音が聞こえてくる)
あなた(俺は立ち止まって、音のした方向へ視線を送る)
あなた(その先には、都市に分類されるだろうこの近辺では珍しい、木々が多い茂った小高い山のようなものが見えた)
あなた「……なんだろう、気になるな」
あなた(どうせ行く当てもない。俺は誘われるように、その音のする方へ歩いて行った)
……………………
あなた「ああ、神社か」
あなた(件の場所へたどり着いた俺はそんな呟きを漏らす)
あなた(一応この近所に生まれ育ってきたが、この辺りは俺の学区外だった)
あなた(そういえば昔、お祭りがある時だけこの神社に来ていたことをぼんやりと思い起こす)
あなた「音は……この上からか」
あなた(鳥居をくぐり、参道から続いている石の階段。その上からこの音は聞こえているようだった)
あなた(俺はその階段を上る。木々に挟まれたそれを登りきると、境内に辿り着く)
あなた(ずっと音が近くなった。腹の底に響いてくるような強い音だ)
あなた「音はあそこから……うん?」
あなた(と、社の一角に大きな太鼓があった)
あなた(そしてそれを叩いている人物の鮮やかな赤い髪が目に映る)
あなた(思わず俺はその近くまで小走りに寄って行ってしまう)
巴「はぁ! ソイヤ、ソイヤッ!」
あなた(……やっぱり見間違いじゃなかった)
あなた(綺麗な髪を括り、法被を着て、一心不乱に太鼓を叩く女性は宇田川先輩その人だった)
あなた(俺はしばしその姿に見入ってしまった)
巴「……ふぅ、こんなもんか。ん?」
あなた(一区切りついたのか、宇田川先輩が1つ息を吐いて、額に浮いた汗を拭う)
あなた(それから俺の存在に気づき、こちらへ視線を巡らせてきた)
巴「あれ、お前は確か……羽丘の新入生だよな」
あなた「はい!」
巴「また珍しいとこで会ったなぁ」
あなた「お久しぶりです、それと練習の邪魔してすいません!」
巴「いやいや、ちょうど休憩しようと思ってたとこだから気にすんなって」
巴「それよりお前……もしかして、和太鼓に興味があるのか?」
あなた(俺はその宇田川先輩の言葉に……)
1:あります!
2:あんまりないです!
3:その他自由安価
↓1
あなた「あんまりないです!」
巴「あっはっは、まぁやっぱりそうだよなぁ」
あなた「どちらかというと宇田川先輩に興味があります!」
巴「え、アタシに?」
あなた「はい!」
巴「ははっ、なかなか面白いことを言うやつだなぁお前! ハキハキしてるやつ、アタシは好きだぜ!」
あなた(正直な気持ちを話してみると、宇田川先輩に笑い飛ばされた)
あなた(多分冗談だと思われたんだろう)
巴「さってと、こうしてこんなとこに来てくれたのも何かの縁だ」
巴「アタシはまだもう少し叩いていくけど、暇なら練習見ていくか?」
あなた「是非お願いします!」
巴「うーし。こころや香澄だって興味を持ってくれたんだ。お前にも和太鼓の魅力ってやつを教えてやるぜ!」
あなた(宇田川先輩はそう言って、再び太鼓に向き合う)
あなた(そして大きな掛け声とともに、力強くバチを振るう)
巴「ソイヤ、ソイヤ、ソイヤ!」
あなた(俺はその姿に見入っていた)
巴「ソイヤソイヤ!」
あなた(ドン、ドン、ドン、と和太鼓の野太い音が体を震わせる)
巴「ハッピー! ラッキー! ポピパパ! ソイヤぁっ!」
あなた(宇田川先輩の掛け声もどんどん大きくなっていく)
あなた(その音たちを聞いていると、体が熱くなってくる)
あなた(俺も大きな声を出したい。身体を動かして何かをしてみたい)
あなた(血がたぎる、とはこういうことを言うのだろう)
あなた(楽器を演奏した経験は一切ない。だから俺には敷居が高いものだと思っていた)
あなた(だが、こうして間近で和太鼓の迫力に触れてみると、挑戦してみたい気持ちが芽生えてくるのだった)
巴「ふぅー! やっぱ人に見られてると気合が入るなぁ!」
あなた(先ほどよりも大粒な汗を額に浮かべながら、宇田川先輩は輝かんばかりの笑顔でこちらへ顔を向ける)
巴「どうだ? 和太鼓に興味、出たんじゃないか?」
あなた「はい、血がたぎりました!」
あなた(それに素直に答える)
巴「だろ~! お前、なかなか見所がありそうだったからな、分かってくれるって思ってたぜ!」
あなた「宇田川先輩はいつもここで和太鼓を叩いているんですか?」
巴「祭りが近い時とかはな。まぁ次の祭りは6月だけど」
巴「バンドばっかで和太鼓から離れてると腕が鈍っちまうから、暇な日はこうして叩きに来てるんだ」
あなた「なるほど、そうなんですね」
巴「お前も太鼓に興味が出たなら、いつでもここに来ていいんだぞ」
あなた「本当ですか?」
巴「ああ。和太鼓なぁ、こんなにイイのに最近叩くやつが少ないんだよ」
巴「アタシは木曜と金曜のどっちかは大体ここで太鼓叩いてるからさ、もし叩きたいってんなら1から教えてやるよ」
巴「あ、もちろん見学だけでもいいぞ。友達を連れてくるのも大歓迎だ!」
あなた「分かりました! また来ます!」
巴「よし、良い返事だ!」
巴「っと、もう練習終わりの時間だ。そんじゃな! 気を付けて帰れよ!」
あなた「はい、失礼します!」
あなた(頭を下げ、神社を後にする)
あなた「和太鼓か……」
あなた(あの全身を震わせる迫力のある音)
あなた(それを思い出すたびに身体が熱くなる)
あなた(宇田川先輩に誘われたから、ということを抜きにしても、ああいうことに挑戦するのもいいんじゃないか)
あなた(そんなことを思いながら、俺は家路を辿るのだった)
……………………
――あなたの部屋――
あなた「ふぅ、今日は色んなことがあったな」
あなた(図書室で出会った、演劇部の瀬田先輩)
あなた(好きこそものの上手なれ、それと、自分の中にその物事が好きな人のイメージをもつこと)
あなた(確かにそういう風に考えると、苦手な勉強にも少し集中できるようになった気がした)
あなた「それと……宇田川先輩の和太鼓」
あなた(最初はただ先輩の姿を見ていただけだった)
あなた(だが、全身を震わせるあの音にも惹かれていった)
あなた(あの音が今も耳の奥に残っているような気がしている)
あなた(太陽の下で体を動かす部活に……と思っていたが、ああして楽器を奏でたり、瀬田先輩のように演劇に精を出すのもいいかもしれない)
あなた「自分の世界が少し広がったような気がするぜ……」
あなた(あくびを噛み殺しながら呟く)
あなた(明日明後日は休みだ。今週末は【安価↓3】をしよう)
あなた(そんなことを思いながら、俺は布団に横になった)
1:バイトの応募
2:その他自由安価
↓3
お疲れさまでした。
また明日に続きます。
あなた「うーん、今日もいい天気だ! 絶好のバイト応募日和だな!」
あなた(朝。布団から這い出て、カーテンを開くと窓の外には雲一つない青空が広がっていた)
あなた(快晴の空に気持ちが昂る。加えて、俺はバイトをすることに憧れを抱いていたから、なおのことやる気が満ちてくる)
あなた(身を粉にして……とは言い過ぎだろうが、自分で働いて金を稼ぐということ)
あなた(実に大人の男っぽいじゃあないか)
あなた(それに社会経験という見方からしてもバイトは有意義な行動だろう)
あなた(そしてバイトをすればアフターグロウのライブに気兼ねなく行ける!)
あなた(何よりもそれが重要なことだ!)
あなた(CiRCLEでのライブは相場より安い、と親友が言っていたが、それでも中学生の財布に与えるダメージは無視できない)
あなた(それに、自分で稼いだ金を自分のために使う)
あなた(それが出来るようになったんだと思うだけで、少し成長出来たような気持ちになって嬉しくなる)
あなた「よし、早速準備をしよう!」
……………………
あなた(身支度は済ませた)
あなた(そして昨日神社の帰りがてらに買った履歴書の記入も終わった)
あなた(履歴書と一緒に入っていた手本通りに書けたし、不備はないはずだ)
あなた(あってもその場で言葉で伝えればいいだろう)
あなた「さて、そしたら応募の電話をしなくちゃな。えーと、昨日商店街でバイト募集の張り紙があったのは……」
1:ファーストフード店
2:喫茶店
↓1
あなた「喫茶店だ!」
あなた(商店街の一角にあった、なんだか落ち着いた雰囲気の喫茶店)
あなた(正直、自分には合わない空気の場所なんじゃないかとは思っていた)
あなた(たが昨日の瀬田先輩や宇田川先輩とのやりとりで、今まで考えもしなかった選択肢を選ぶというのも決して悪いことではないと思えるようになっている)
あなた(何事もまず挑戦だ。やらずに後悔するよりやって後悔する方が何倍もいい)
あなた「よし、早速電話だ!」
あなた(メモしておいた電話番号をスマートフォンに打ち込み、発信のボタンをタップする)
『お待たせしました。羽沢珈琲店でございます』
あなた(呼び出し音が4回ほど鳴ったところで電話がつながった。落ち着いた男性の声だ。きっと店長さんだろう)
あなた「お忙しいところ失礼します! アルバイト募集の張り紙を見て、お電話させていただきました!」
『あ、はい。ありがとうございます。えぇと、あなたの年齢は……』
あなた「はい、15歳です! 今年の春から高校生になりました!」
あなた(それから自分の名前を伝え、電話越しの店長さんの質問にいくつか答える)
『君は元気がいいねぇ』
あなた(そうしているうちに段々とあちらの口調が砕けてくる。目上の人には畏まった口調でいられるよりも、そうして親しげに話してくれた方が良かった)
『それじゃあ面接をしたいんだけど……いつならウチに来れるかな?』
あなた「今すぐでも大丈夫です!」
『はは、本当かい? そうだね、じゃあ今日の14時くらいでどうかな?』
あなた「分かりました! その頃にお伺いします!」
『では、その時間でお願いします。ご来店、お待ちしております』
あなた「はい、失礼します!」
あなた(それから少しの空白。そして静かな通話の切れる音が聞こえてきた)
あなた「14時まで……あと4時間か」
あなた(時計を見て呟く)
あなた(あの喫茶店までは歩いて大体20分。多少の余裕をもって13時半に出ればいいだろう)
あなた「それまでの時間は……面接の練習だな!」
あなた(そう言えば志望動機もしっかりと考えていなかった)
あなた(出発の時間までスマートフォンに向き合い、俺は来たるべき面接に備えるのだった)
……………………
あなた(結果から言えば、練習した面接の内容はほとんど話さずに合格した)
あなた(喫茶店で顔を合わせた、優しい雰囲気をまとった店長さん。電話越しに聞いた声のイメージそのままの人だった)
あなた(店長さんからは『ハキハキした子は好感が持てるねぇ』という言葉を頂き、志望動機を話したあとは、ほとんど世間話のようなことを喋った)
あなた(そしてそのうちの7割ほどが一人娘の自慢だった)
あなた(俺が羽丘学園の新入生だと知ると、『いやぁ、僕の娘も羽丘に通っててね……』と始まり、気が付けば20分くらい経っていたと思う)
『ああ、もうこんな時間だ。それじゃあ、明日は時間あるかい? あれば、明日から早速来てもらいたいんだ。とは言っても、まずやるのは研修みたいなものなんだけどね』
あなた(自慢話が一区切りついたところで時計を見た店長さんは、そう言って柔らかく微笑んでいた)
あなた『はい、分かりました!』
あなた(俺はそれに二つ返事を返した)
あなた(事前に調べていたバイトの面接とはかなり違った流れだったが、その場所その場所によっていろいろなやり方があるんだろう)
あなた(ともかく、俺のバイトは順風満帆なスタートを切れたのだった)
……………………
――日曜日 羽沢珈琲店――
あなた「本日はご指導のほど、よろしくお願いします!」
あなた(翌日の日曜日の朝)
あなた(店長さんに言われた通り開店前の喫茶店――いや、羽沢珈琲店にやってきた俺は、今日自分を指導してくれる方に対して頭を下げた)
羽沢つぐみ「はい、よろしくお願いしますね」
あなた(そう言って柔らかく微笑んだ、羽沢つぐみ先輩。店長さんに似た優しげな雰囲気をまとった女の子だ)
あなた(ついでに言えば、確かこの人もアフターグロウのメンバーだ。ステージの上でいつも一生懸命にキーボード弾いているような印象があった)
あなた(そのことを話そうかとも思ったが、今はバイト中だ)
あなた(そういう雑談はやることが終わってからするべきだろう)
つぐみ「早速なんですけど、今日は私たちがいつもやってることの流れを説明します」
つぐみ「分からないこととかがあればすぐに言ってくださいね?」
あなた「分かりました!」
つぐみ「はい。それじゃあ、まず厨房の方から説明しますね」
あなた「お願いします、羽沢先輩!」
つぐみ「……先輩、かぁ」
あなた「あれ? どうかしましたか、先輩?」
つぐみ「あ、ううん、なんでもないです」
あなた(羽沢先輩は少し照れたように笑うと、パタパタという軽い足音を残して厨房の方へ移動する)
あなた(俺もそのあとに続いていくのだった)
……………………
あなた(羽沢先輩は非常に手際よくアルバイトの流れを教えてくれた)
あなた(まず不慣れな俺が一番最初にやることは、厨房での皿洗いやフロアの掃除)
あなた(少し慣れて珈琲の種類やメニューを覚えてきたら、盛り付けの終わった料理やデザート、飲み物の配膳)
あなた(実際にオーダーを取ったりレジ打ちをするのは最後の最後、忙しい時間帯にも慣れ始めてから、ということだった)
あなた(一通りの流れを教えてもらったあと、今日は日曜日で、お客さんも多い日だと聞いた)
あなた(そうと聞いては是非手伝いたい、と思うのだが、実際にまったくのアルバイト未経験な俺がいては足手まといになってしまうのだろう)
あなた(羽沢珈琲店がオープンして約1時間)
あなた(羽沢先輩に教わった通り、少しお皿を洗ったり、お客さんが使ったテーブルを拭いたりしているうちに、今日の俺はお役御免ということになった)
つぐみ「短い時間だったけど、今日はお疲れさまでした」
あなた(今は従業員の控室に俺と羽沢先輩が2人。貸して頂いたエプロンをハンガーにかけ、帰り支度をしているところだった)
あなた「はい。ご指導ありがとうございました、羽沢先輩」
つぐみ「ううん。ウチのお父さんからバイトは初めてって聞いてたけど、飲み込みが早くて私も教えるのが楽しかったよ」
あなた(羽沢先輩も店長さんと同じように、しばらく俺と話しているうちに砕けた口調になっていた)
あなた(正直その方が助かる。年上の、それも女性の先輩に敬語で話されるのはどうにも落ち着かなかった)
あなた「いえいえ、それは先輩の教え方がいいからです!」
つぐみ「そ、そう? 先輩らしく振舞えてたなら良かった」
あなた「はい、完璧でした! ……あ、そうだ。それはそうと、先輩ってアフターグロウでキーボードを弾いてますよね?」
あなた(就業時間は終わった。なので、俺は朝から思っていたことを羽沢先輩に尋ねる)
つぐみ「あ、うん。私たちのバンド、知ってるんだ?」
あなた「はい! よくライブ、見に行ってますよ! みんな超カッコいいと思ってます!」
つぐみ「あ、あはは……なんかちょっと照れちゃうな」
あなた「特に宇田川先輩がカッコいいですよね! 初めて見た時からなんていうか、こう、すごく憧れてます!」
つぐみ「あー……君ってちょっと巴ちゃんに似てるもんね」
あなた「え、そうですか?」
つぐみ「うん。巴ちゃんが年下の男の子だったら、きっとこういう感じに近いんだろうなって思うよ」
あなた「…………」
あなた(その言葉に少し胸が熱くなった気がした)
あなた(ニュアンスは違うかもしれないが、似てるということは、きっと宇田川先輩に近づけているということだ)
あなた(あの人に憧れを抱いてからもう半年近く経つ)
あなた(偶然、思いがけない形で宇田川先輩に知り合えたことが嬉しい)
あなた(そして、こうして自分を磨こうと思ってやっていることも少しずつ実を結んでいるのかもしれない、と思えることが嬉しい)
あなた「燃えてきた……!」
つぐみ「え?」
あなた「羽沢先輩!」
つぐみ「は、はい?」
あなた「これからもよろしくお願いします! そして俺をビシバシしごいてください!」
つぐみ「あ、うん……よろしく……?」
あなた「ぃよーし、頑張るぞっ! それじゃあ先輩、今日はお先に失礼します!」
つぐみ「……車とかに気を付けて帰ってね?」
あなた「はい! お気遣いありがとうございます! それでは!」
あなた(やればやるだけ、きっと成果が出てくれる。成果が出なくたって、きっと何かしらの形で自分の力になってくれる)
あなた(今までにないくらいにそう強く思える気持ちが胸の奥底に芽生えて、いてもたってもいられない)
あなた(俺は羽沢珈琲店から自宅まで、その衝動のままに駆けて帰るのだった)
……………
つぐみ「……走っていっちゃった」
つぐみ「なんていうか、本当に巴ちゃんみたいな子だなぁ」
――――――――――
―――――――
――――
……
――羽丘学園 教室――
あなた(初めてのバイトをした日曜が明けた月曜日)
あなた(新しい一週間が始まる日というのは清々しいものだ)
あなた(特に土曜日から続いての快晴だとその気持ちもひとしおだ)
あなた(さて、そんな月曜日の授業もすべて終わった)
あなた(まだ慣れない高校生の授業にかなり頭を使ったが、今の俺は気力に満ちている)
あなた(今日の放課後も何かをしよう!)
あなた(よし、早速……)
1:宇田川先輩のことを知ろう!
2:和太鼓について調べよう!
3:その他自由安価
(R18なことや公序良俗に反することはバッドですごめんなさい)
↓1
あなた(宇田川先輩のことを知ろう!)
あなた(昔の偉い人が「敵を知り、己を知れば百選危うからず」なんて言っていた、と今日の授業で習った)
あなた(宇田川先輩は敵ではなく憧れだが、きっと間違いじゃないだろう)
あなた(知れば知るほどあの人に近づけるはずだ)
あなた(親友だって『現代は情報戦だ』と言っていたんだからそれが正しいだろう)
あなた「そうと決まればどう調べるかだ」
あなた(本人と直接話をするべきか、それとも宇田川先輩に詳しそうな人に話を聞くべきか……)
1:詳しそうな人に話を聞く
2:本人に会いに行く
3:その他自由安価
↓1
あなた(男なら真っ向勝負!)
あなた(回りくどいことなんかしないで直接話をしてみよう!)
あなた「……あ、そういえば宇田川先輩のクラス、知らねーや」
あなた(いや、でもあれだけ目立つ人だ。きっと羽丘に詳しい人なら知ってるはずだ)
あなた「すまん、ちょっといいか?」
「うん? どしたの?」
あなた(こういう時に頼りになるのはやはり隣の席の内部進学した子だ)
あなた(俺が声をかけると、ドラムとかを叩くスティック? を鞄に詰めていたその子がこちらへ視線を巡らせる)
あなた「宇田川巴先輩って知ってるか?」
「え、うん、知ってるけど」
あなた「どこのクラスか知らないか?」
「えーっと、確か『また蘭だけクラス分かれたんだよなぁ』って話しした時に……」
あなた「……なるほど、分かった。教えてくれてありがとな!」
「はーい、どういたしまして」
あなた(流石、頼りになるぜ!)
あなた(俺は自分の鞄を手にもって、早速教えられたクラスに足を運ぶのだった)
……………………
あなた「えぇと、あ、あったあった、この教室がそうか」
あなた(隣の席の女の子に聞いたクラスへたどり着いた)
あなた(放課後になってから少し時間が経っていた。そのクラスからも続々と先輩方が出てきている)
あなた(俺はそのうちにの1人に声をかけた)
あなた「すいません、お伺いしたいことがあるのですが!」
「うん?」
あなた(明るくて話しやすそうな人。明るい髪色と少し下がった目じりがそんな印象を抱かせた)
あなた(……というか、パッと目についたから声をかけたのだが、その姿に見覚えがあった)
あなた「あの、アフターグロウでベース弾いてますよね?」
「え、うん。弾いてるけど……」
あなた(思わず本来の目的とは違うことを聞いてしまった。そう言われた女生徒の先輩は少し何かを考えるような顔をしたあと、ハッとしたように声を出す)
「も、もしかして……私のファン!?」
あなた「え?」
「いっつもいっつも巴とか蘭ばっかり声をかけられてたけど……ついに私にもそんな出来事が!」
「まぁでも今まで羽丘には女の子しかいなかったもんね、カッコいい蘭と巴が声をかけられてばっかりなのは仕方なかったかぁ~」
「でも共学になったんだし、これからは私にもこうしてファンが増えて……うふふふ……♪」
あなた「…………」
あなた(目の前の先輩はとても嬉しそうな笑顔を浮かべて独り言を呟いている)
あなた(俺はそれにどうしたものかと少しだけ考えてから口を開く)
あなた「すいません、先輩」
「ふぇ?」
あなた「その……宇田川先輩に用事がありまして……」
「え、えぇ~!? そんなぁ、また巴なのぉ~……」
あなた「期待に応えられずすいません」
あなた(先ほどの笑顔から一転、がっくりと肩を落とした先輩を見て非常に申し訳ない気持ちになる)
「あーううん、いいよいいよ。分かってたから……慣れてるから……」
あなた(ため息とともにそんなことを口から吐き出すと、先輩は顔を上げて俺の顔を見る)
「それで、巴だっけ? 巴は今日、生徒会の手伝いを頼まれてるからもういないよ」
「確か、花女(花咲川女子学園)から何かの資材を借りてくるのの手伝いって言ってたから、しばらく羽丘には戻ってこないんじゃないかなぁ」
あなた「なんと……そうでしたか」
あなた(思い立ったが吉日、勢いに任せてやってきたが、どうにも空振ってしまったようだ)
「それにしても年下の男の子までファンにするなんて……巴も隅に置けないなぁ~♪」
あなた(目の前の先輩は先ほどまでの落ち込みようが嘘のように、今度はどこかニヤニヤした表情でそんなことを口にしていた)
あなた「すみません、お手数をおかけしました!」
「あーいいっていいって! ……ん? あれ、もしかして君って……」
あなた「はい?」
「あれかな、巴が言ってた子かな?」
あなた「宇田川先輩が?」
「そうそう! なんかね、『和太鼓に興味を持つ見所のある男の新入生がいるんだぜ!』なーんて、熱く語ってたんだよ~。もしかして君がそうじゃないかなって」
あなた「あ、それでしたら多分俺ですね!」
あなた(神社での出来事を思い出す。確か宇田川先輩にそんなことを言われていた)
「ふーん、そっかぁー……そっかそっか~♪」
あなた(と、俺の言葉を聞いて、目の前の先輩はニンマリと笑顔を浮かべる)
「巴がねぇ~、あの巴がねぇ~、まさかねぇ~……あの様子じゃ憎からずって感じだろうし……ふふふふ……」
あなた「あの、先輩?」
「大丈夫! みなまで言うな、新入生くん! ふふ、私たちの中で一番最初に恋人が出来るのは誰かなぁっていつも考えてたけど、まさか巴が最初になりそうとはねぇ~♪」
あなた「…………」
あなた(随分とご機嫌な様子だ。俺はなんと反応すればいいのか分からずに固まってしまう)
「ここは私がキューピットになるしかないかなぁ。巴、そういうのには絶対疎そうだもんね♪ あ、そうだ。私は上原ひまり。巴の幼馴染だよ~」
あなた(目の前の先輩――上原ひまり先輩はそう名乗ってくれる。その前に何かよく分からないことを呟いていたが、きっと何か深い意味があることなんだろう)
あなた(そんなことを思いながら、俺も上原先輩に名乗り返す)
ひまり「それで、巴にどんな用事があったの?」
あなた「いえ、用事というほどのことはありません。憧れている宇田川先輩のことをもっと知ろうと思って来ました!」
ひまり「きゃーっ、だいたーん!」
あなた「だけどいないのであれば仕方ないです。また出直しま――」
ひまり「まぁまぁまぁ待ちたまえ、若人よ!」
あなた(上原先輩はそう言って、踵を返そうとした俺の肩を掴む)
ひまり「大丈夫、ここはひまり先輩を頼りなさい! 親友の恋路は私の恋路と同義なんだから!」
ひまり「巴のことだってよぉーく知ってる私が、色々教えてあげよう!」
あなた「いいんですか?」
ひまり「全然オッケーだよ!」
あなた「ありがとうございます、上原先輩!」
ひまり「それじゃ、ここで立ち話もなんだし、食堂でも行こっか♪」
あなた「分かりました!」
ひまり「よーし、私についてこーい!」
あなた「はい!」
あなた(そうして、やたらとウキウキしている上原先輩について食堂へ行き、そこで宇田川先輩のことを色々と教えてもらった)
あなた(上原先輩はアフターグロウのステージで見ていた姿と同じく、とても明るく朗らかで親切な人だった)
あなた(やっぱり良い人の周りには同じように良い人が集まるものだ)
あなた(宇田川先輩もそうだし、羽沢先輩もそうだし、上原先輩もそうだ)
あなた(憧れの先輩に近付くためには俺もそういう人間になれるように精進しなくては)
あなた(そう思うと、自分の中により気合がみなぎった)
……………………
――あなたの部屋――
あなた「今日は色んなことを知れたな……」
あなた(夜。宿題を済ませた俺は自分の部屋で独りごちる)
あなた(一番大きな情報は上原先輩に教えてもらった宇田川先輩のことだろう)
あなた(豚骨しょうゆラーメンが好きで、和太鼓のほかにもファッションが好き)
あなた(嫌いな食べ物は特にない。面倒見がよくて姉御肌の女性)
あなた(それからどうしてか『好きな男性のタイプはきっと放っておけないタイプ! 面倒見がいいからね、ちょろっと母性本能をくすぐればイチコロだよ!』なんてアドバイスまでもらった)
あなた(その情報に関しては俺の疎い分野なのでよく分からなかった。ただ、『そういう恋のことなら私に任せて!』と上原先輩が胸を張って言っていたし、きっと有益な情報なんだろう)
あなた(それと、家に帰ってきてからは和太鼓の動画を少し見てみた)
あなた(ただ叩くだけ、と思っていたが、プロの演奏となると魅せる叩き方のパフォーマンスなんかもあるようだった)
あなた(それはそれで『すごい』と思って見ていたが、やはり一番惹かれたのは大きな和太鼓をただリズムに乗って叩くシーンだった)
あなた(その動画を見るたびに、宇田川先輩が神社で叩いていた太鼓の音が頭の中に響くような気がした)
あなた(そんなことを考えていると不意にあくびが出る)
あなた(スマートフォンのデジタル時計は23時を表示していた)
あなた「……そろそろ寝るか」
あなた(少し早いと思わなくもない。だが健やかなる体を作るには成長期の睡眠が大切だとテレビで見たことがあった)
あなた(健全な魂は健全な肉体に宿るのだ)
あなた(宇田川先輩に近付くためにも、こうして早く眠れそうな時はしっかり眠った方がいいだろう)
あなた(俺は部屋の明かりを消して、布団に潜り込む)
あなた(暗い部屋でうとうと微睡みながら思う)
あなた(何にでも挑戦することはいいが、あれもこれもと手を出して、それで全てが中途半端になるのはきっと一番ダメなことだろう)
あなた(もちろん自分で始めたことにはすべて全力を注ぐ気持ちがある)
あなた(それでも、1つのことだけはより集中をして取り組んでいくべきだ)
あなた(中途半端にならないように、全力でやりきれるように)
あなた(だからしばらくは【安価↓3】に、特に力を入れていこう)
あなた(そう結論を出したところで、俺の意識は夢の中へ落ちていった)
1:羽沢珈琲店でのバイト
2:宇田川先輩との和太鼓
3:学校での勉強
↓3
お疲れさまでした
次は来週の水曜日になるかと思います
すいません
――羽丘学園 教室――
あなた(昨日の夜に決めたこと)
あなた(それは宇田川先輩との和太鼓に全力を注ぐ、ということだった)
あなた(偶然に偶然が重なった結果だったが、この学園に入学して宇田川先輩と知り合えたこと、そして和太鼓を叩いているところに出くわしたのも何かの縁だろう)
あなた(宇田川先輩と、あの力強く鼓膜を打つ太鼓の音)
あなた(それらに心を奪われた――とは言い過ぎかもしれないが、強く惹かれているのは確かなことだ)
あなた(それに目標の近くにいた方が色々と分かりやすくていい)
あなた「……よし! そうと決まれば宇田川先輩に弟子入りだ!」
あなた(金曜日に神社で話したことを思い出す)
あなた(確か、宇田川先輩は木曜か金曜にあそこで太鼓を叩いていると言っていた)
あなた(今日は月曜日。今すぐにでも宇田川先輩のクラスに足を運びたいところだが、いきなり押しかけては迷惑だろう)
あなた(それにバイトのこともある。羽沢先輩には木曜と金曜は出来るだけシフトを空けさせて欲しいということも伝えなければ)
あなた(加えて、「友達を呼んできてもいい」と宇田川先輩は言っていた。きっとそれだけ和太鼓に興味を持つ人が少ないんだろう)
あなた(クラスの男連中にも軽く声をかけてみよう)
あなた(そう決めたところで、始業のチャイムが鳴り響く)
あなた(宇田川先輩との和太鼓に全力を注ぐと決めたが、だからといって他のことを疎かにしていい訳がない)
あなた(今はしっかりと勉強に力を入れよう)
――――――――――――
あなた(そうしているうちに木曜日になった)
あなた(集中して物事に取り組んでいくと時間は早く過ぎるものだ)
あなた(それに今は毎日が新鮮だ)
あなた(初めてのバイトも、羽丘学園での生活も、全部が真新しい)
あなた(実に清々しい気分だ)
あなた(そんな気持ちを共感しようと、火曜日の昼休みに、クラスメートの男連中へ「何事も挑戦だ。和太鼓をやってみないか?」と声を掛けたら、みんな一様に「それはちょっと……」と首を横に振った)
あなた(どうやらみんなはあまり和太鼓に関心がないらしい)
あなた(「どうせ楽器をやるなら軽音楽部がいい」と、太鼓の話からそんな話に話題がズレていったのを思い出す)
あなた(興味がないなら仕方がない。放課後、宇田川先輩の元へは俺1人で向かおう)
……………………
――神社 神楽殿――
巴「おー、来たな!」
あなた(そしてその放課後、羽丘からまっすぐに神社へ向かうと、今日も法被姿に白いハチマキを巻いた姿の宇田川先輩がいた)
あなた「お疲れさまです、宇田川先輩!」
巴「ああ、お疲れ! ここに来たってことはアレか、和太鼓、やってみたくなったんだな?」
あなた「はい! 俺を宇田川先輩の弟子にしてください!」
あなた(と、宇田川先輩は期待するような表情で俺を一瞥する。それに応えられるように、俺は大きく返事をした)
巴「そうかそうか! ……って、弟子?」
あなた「俺は楽器の経験もありません! 和太鼓の教えを頂く俺にとって、宇田川先輩は師匠です!」
巴「おお、なるほど。それで弟子に師匠か。うん……いいなぁ、いい響きだ」
巴「ぃよーし、そんじゃあお前は今日からアタシの一番弟子だ!」
あなた「今日からよろしくお願いします、師匠!」
巴「おうよ! じゃ、裏手の方から神楽殿に上がれるから、こっち側に回り込んで上ってきてくれ」
あなた「はい!」
……………………
あなた(それから2時間ほど、宇田川先輩……改め師匠に和太鼓の叩き方を教えて頂いた)
あなた(間近で見た師匠の手さばき、太鼓から発する音の力強さに改めて惚れ惚れした)
あなた(俺もその見様見真似でバチを握り、太鼓に向き合ってみたのだが、どうにも上手くいかない)
あなた(情けない音が神社を取り囲む木々に吸い込まれていくだけだった)
あなた(師匠はそんな俺を見てカラカラ笑い、「最初はそんなもんだ」と励ましてくれた)
あなた(それから「一番大切なのは楽しむこと、それと気合だ!」というアドバイスを貰った)
あなた(とてもシンプルで分かりやすかった)
あなた(そのアドバイス通り、難しいことを考えず、ただ全身に力を込めて太鼓を打った)
あなた(するとどうだろう。師匠には遠く及ばないが、段々とマシな音が出るようになっていくのだった)
巴「よし、今日はこの辺までにしとくか」
あなた「はい、ありがとうございました、師匠!」
巴「ああ。しっかし、お前はなかなか筋がいいなぁ。1日で結構いい音が出るようになったし」
あなた「それは師匠の教え方がいいからですよ! 大切なのは楽しむことと気合……分かりやすくて為になりましたから!」
巴「お、流石アタシの一番弟子。和太鼓の神髄をしっかり分かってくれたみたいだな」
あなた(師匠はそう言ってうんうんと頷いていた)
巴「あ、そうだ」
あなた「はい?」
巴「なぁ、連絡先を教えてくれないか? 木曜か金曜のどっちかってだけだと不便だし、アタシもアフターグロウのライブ前にはそっちに集中するからさ」
巴「せっかくここまで足を運んでもらったのにアタシがいない……ってんじゃ、お前に悪いからさ」
あなた「そういうことでしたら、是非」
あなた(師匠に答えて、俺は神楽殿の隅に置いたバッグからスマートフォンを取り出す。そしてトークアプリを開いて師匠に差し出した)
巴「ん、サンキュ。えーっと、じゃあこのQRコードを読んでっと……ほい、完了」
あなた「お気遣い頂いてありがとうございます、師匠」
巴「いやいや。そしたらアタシがここに来れる日は連絡するからな。お前もなんかあったら気軽に連絡してくれな」
あなた「分かりました!」
巴「これからよろしくな!」
あなた「はい!」
……………………
あなた(それから週に1度、師匠と連絡を取り合い、神社で和太鼓を叩くことが習慣になった)
あなた(師匠はいつでも気さくに笑いかけてくれて、和太鼓の魅力を楽しそうに語ってくれた)
あなた(俺は師匠の期待に応えたくて、一生懸命にバチを振り、太鼓を打ち込んだ)
あなた(そんな俺を師匠はよく褒めてくれる。それに少しの誇らしさを感じた)
あなた(加えて、なんと呼べばいいのか自分でもよく分からない、くすぐったいような感情が胸の中で疼くようになった)
あなた(最初はその得体のしれない気持ちに首を傾げていたが、それは別に不快なものではなく、むしろなんだかやる気を生み出してくれるような気がするものだった)
あなた(ならそれでいいか、と思って、その気持ちの正体は不明のままで置いておくことにした)
あなた(また、師匠との和太鼓以外にも、勉強に励み、バイトに励んだ)
あなた(瀬田先輩に教わった「その人になりきること」を勉強で実践したみて、確かにただ漫然と机に向かうよりはずっと集中が出来たこと)
あなた(羽沢先輩の指導の下、だんだんと羽沢珈琲店で自分の出来る仕事が増えていくこと)
あなた(それは充実した日々だった)
あなた(目に見えて自分が成長しているように感じられる日々だった)
あなた(集中した時は時間の流れが早いものだ、とは前にも思っていた)
あなた(しかしそう自覚していても、いつの間にか4月の終わり、ゴールデンウィークになっている)
あなた(つまりはそれだけ自分が全力で色んなことに打ち込めていたんだと思うと、師匠に褒められた時に似た誇らしさが胸の中に生まれるのだった)
……………………
――羽丘学園 教室――
あなた(月が替わった5月の1日)
あなた(今年のゴールデンウィークは変則的で、今日明日は平日だった)
あなた(朝には教室のそこかしこから聞こえてきた「めんどくさいなぁ」という声も、昼休みの時間になるともう誰も口にしなくなっていた)
あなた「今日の弁当の中身はなんだろうな……」
あなた(母さんが作ってくれた弁当の中身を考えつつ、弁当箱を手にして、いつものようにクラスメートの男連中の元へ向かおうとした時だった)
「…………」
あなた(ふと教室の入り口から見覚えのある顔が室内を覗いているのが見える)
あなた(その人物は俺と目が合うと、こちらに声をかけてきた)
教室に来た人物は
1:宇田川巴
2:上原ひまり
↓1
巴「よぉ!」
あなた「あ、師匠! どうしたんですか?」
巴「いやな、ちょっとお前に伝えることがあってさ」
「あれ、おねーちゃん?」
あなた「え?」
あなた(隣の席から聞こえた声に、素っ頓狂な声を出した)
あなた(そちらに視線を送ると、隣の席の内部進学の女子生徒――宇田川あこがいた)
巴「おー、あこ! なんだ、お前たち同じクラスだったのか」
あなた「はい……?」
あこ「うん……?」
あなた(師匠はそう言って笑うが、当の俺と宇田川は互いを見合って首を傾げた)
あこ「えーっと……そういえば君、前におねーちゃんのクラスがどこかって聞いてきてたね」
あなた「ああ。いつも羽丘のことを教えてくれて助かってるぜ」
あなた「宇田川は……あっ、そういえば師匠と名字が一緒だ!」
あなた「そうか、姉妹だったんだな」
あこ「え、今さら? てっきり知ってて聞いてるのかと思ってたよ……」
あなた「まったく気付かなかったぜ……珍しい偶然ってあるもんだな」
巴「ん? どうしたんだ、2人とも?」
あこ「ううん、何でもないよおねーちゃん」
あなた「はい。ちょっとした偶然に驚いただけです」
あなた「それで、俺に何か用が?」
巴「ああ、そうだった。今週の和太鼓のことなんだけどさ、知ってるかもしれないけど、金曜日にアフターグロウのライブがあるんだよ」
あなた「師匠、ライブが近いって言ってましたね。ということは今週の練習はなしですか?」
巴「ん、そういうことだ」
あなた「分かりました! 知らせに来ていただいてありがとうございます!」
巴「いや、実は用はそれだけじゃなくてだな……」
あなた「はい?」
巴「あー、なんだ。上原ひまりって知ってるか? アタシの幼馴染の」
あなた「はい、上原先輩にはその節ではお世話になりました!」
巴「ああ、やっぱ知り合ってたんだな。そんでな、なんかひまりの奴がアタシたちのライブのチケットを押しつけてきたんだよ」
巴「『これ、最近話題のあの子に渡してきなよ!』って」
あなた「最近話題?」
巴「それはこっちの話だから気にしないでくれ」
巴「で、どうだ? もし金曜日に暇があるなら、ライブ見に来ないか?」
あなた「それは渡りに船です! 元から行こうと思ってましたし、チケットが頂けるのであれば嬉しいです!」
巴「なら良かったぜ。一応2枚あるからな、友達も誘ってきてくれていいぞ」
あなた(師匠はそう言って笑い、俺に2枚のチケットを差し出してくる)
あなた「ありがとうございます、師匠! 楽しみにしてます!」
あなた(それを受け取って俺は礼を言う)
巴「ああ。お前の前でハンパな演奏は出来ないからな、アタシも気合入れてやってやるぜ!」
あこ「ねぇねぇおねーちゃん、お昼ご飯はどうするの?」
あなた(と、師匠の話が終わると、それを待っていたように宇田川が声を出す)
巴「ん? 特には決めてないけど……まぁ教室に戻っていつも通りって感じだな。それがどうしたんだ?」
あこ「じゃあじゃあ、あこと一緒に食べない?」
巴「そうだな。せっかくあこのクラスまで来たんだし、それもいいな」
あこ「やったー! 決まりだね!」
あなた(宇田川とそんなことを話す師匠。その顔にはいつもよりもずっと優しい笑顔が浮かんでいた)
あなた(羽丘のことを知ってて頼りになる、という印象があった宇田川の幼げな一面)
あなた(それを受け止める師匠の姉としての優しい一面)
あなた(何か特別なものが見れたような気持ちだ)
あこ「それじゃあおねーちゃん、食堂行こっ!」
巴「ああ」
あなた(相変わらず優しい顔で宇田川に頷いたあと、師匠はこちらへ顔を向ける)
巴「それじゃあな。金曜日、CiRCLEで待ってるぜ!」
あなた「はい!」
あなた(その返事を聞くと、師匠は軽く手を振ってから、宇田川とともに教室を出て行った)
あなた「……まさか師匠の方から誘って頂けるなんて、感激だ……」
あなた(残された俺は、憧れの人から、憧れのきっかけになったライブに誘って貰えたことが嬉しく、そんな呟きを漏らすのだった)
……………………
あなた(そして、金曜日)
あなた(師匠から貰ったチケットは2枚。誰を誘おうか少しだけ考えて、親友を誘った)
あなた(俺からの誘いに二つ返事で「行く」と答えたあいつとは俺の家で待ち合わせ、揃ってCiRCLEへと向かう)
あなた(その道すがら、お互いの近況を話した)
あなた(俺は魅力的な先輩方に出会えたこと、バイトをしていること、和太鼓を始めたことを話す)
あなた(その折に、「まさかアフターグロウの人たちが羽丘にいるとは思わなかった」と言ったら、親友はポカンとした顔で「てっきり知ってて羽丘に行ったんだと思ってたわ」と返してきた)
あなた(……なんでも、ガールズバンド好きの間では「羽丘女子学園のアフターグロウ」は結構有名だったらしい)
あなた(家から近かったから、という俺の志望動機を聞いた親友は「ま、その方がお前らしくていーや」なんてバカにしてるんだか褒めてるんだか分からないことを言っていた)
あなた(そんな他愛のない話をしているうちに、CiRCLEへたどり着く)
あなた(受付でチケットを手渡して、カウンターでドリンクを頼み、会場へ足を踏み入れる)
あなた(ちょうどライブが始まったところだった)
あなた(今回のライブは師匠たちだけでなく、いくつかのバンドが出演するもので、アフターグロウの出番は最後だ)
あなた(俺は他のバンドの演奏に耳を傾けつつ、ドラムばかりを凝視していた)
あなた(太鼓とドラム。楽器の形は違えど、打楽器であるのには間違いない)
あなた(何か参考にできるものがないか、と、そんな目線でいた)
あなた(隣の親友はどのバンドの演奏にも、楽しそうに持ち込んだサイリウムを振っていた)
あなた(知らないバンドの知らない曲でもなんとなく合わせて盛り上げようとするその姿)
あなた(やっぱり良い奴だなぁ、なんて俺はぼんやりと考えていた)
あなた(そうしているうちに次から次へとバンドが入れ替わり、遂にアフターグロウの出番になった)
あなた(ステージに、ギターを下げ、黒髪の一部に赤いメッシュを入れた女の子が姿を現す)
あなた(続いて同じくギターを下げてパーカーのフードを被った女の子、それから上原先輩、師匠、羽沢先輩という順番で、アフターグロウのメンバーが登場する)
あなた(ボーカルの人と師匠の時だけやたらと黄色い歓声が上がっていた)
あなた(それに対して、上原先輩が「私には声援ないの!?」と言いたげな、不服そうな顔をしているのが何だか面白かった)
「アフターグロウです」
あなた(静かな、芯のある声が会場に響く)
あなた(ボーカルの人の声だ。観客席のざわめきが小さくなる。視線もその子に集まる)
あなた(そんな中、俺は師匠の姿をジッと見つめていた)
あなた(ステージの師匠と観客席の俺)
あなた(その距離をかなり遠いと感じてしまうのは、それだけ師匠に近づけたことの証拠、なんだろうか)
あなた(ふと思ったことによく分からない焦燥感のようなものが胸の内に生まれたような気がした)
巴「…………」ニッ
あなた(と、そこで師匠と目が合う。師匠はいつもの気っ風のいい笑顔を浮かべ、グッと握った右拳を俺の方へ突き出してきた)
あなた(それだけで先ほど生まれた得体のしれない感情がどこかへ霧散していったような気がした)
あなた(俺も同じように、握りしめた拳を掲げて師匠に応える)
あなた(それから口パクで何かを伝えられた気がした)
あなた(多分、「楽しんでいってくれよ!」という形だった、と思う)
あなた(だから俺はそれに大きく頷いた)
あなた(それから、師匠から視線を外してステージを見回してみる)
あなた(今度は上原先輩と目が合った。何かニマニマとした表情で俺と師匠とを交互に視線を送っていた)
あなた(次に羽沢先輩と目が合った。先輩は何か微笑ましいものを見るような、どこか優しい目をしていた)
「……いくよ、みんな」
あなた(そうしているうちに、最初のMCは終わっていた)
あなた(ボーカルの静かな声のあと、ギターの子が頷く姿が見えた)
あなた(続いてステージの他のメンバーが頷く。それからフードを被った女の子のギターが大きくかき鳴らされる)
あなた(このギターから始まる曲は、確か「Scarlet Sky」だった)
あなた(アンプから轟く1つのギターの音。それに一気に他の4つの楽器の音が重なる)
あなた(それに「おぉ……」と隣の親友が感嘆していた)
あなた(俺はといえば、やはり師匠から目が離せないでいた)
あなた(半年前に憧れた姿。それと変わらず、いや、もっと輝いているように見える姿)
あなた(そのカッコよさに改めて惚れ直した)
あなた(そんな心境だった)
……………………
~幕間~
――ライブ後 控室――
ひまり「うーん、今日のライブも良かったねぇ~!」
つぐみ「うん。お客さんも楽しんでくれてたね」
青葉モカ「でもひーちゃん、またあのフレーズミスってたよね~」
ひまり「うっ……や、やっぱりバレた?」
美竹蘭「うん、目立ってたね」
巴「ああ。まぁ練習の時からミスってる時の方が多かったからな。アタシは特に気になんなかったけどさ」
モカ「あー、確かにそれは言えるかもねぇ」
ひまり「ちょ、それはそれで何かヒドくない!?」
蘭「……確かにミスしてる時の音の方が耳に残ってるね」
ひまり「うぅ……蘭まで~……!」
つぐみ「え、えーっと、どんまい、ひまりちゃん」
ひまり「つぐ~! 私の味方はつぐだけだよぉ~!」
モカ「んー……でも「どんまい」としか言ってないよねぇ、つぐも。フォローになってるのかなぁ」
巴「それは言ってやるな、モカ」
ひまり「あ、そうだ。ねぇねぇ巴!」
モカ「流石ひーちゃん、もう復活した」
つぐみ「あ、あはは……」
巴「ん、どうした、ひまり?」
ひまり「あの子、ちゃんと来てたねぇ」
巴「ああ、あいつな。来てくれてたな」
つぐみ「……あれ、あの子がそうなの?」
ひまり「つぐも知ってるの?」
つぐみ「うん。ウチでバイトしてくれてるから。そっか、あの子だったんだね」
ひまり「へぇ~、なんだか意外と関りがあるんだね」
モカ「うーん……?」
蘭「……何の話してるの?」
ひまり「あ、モカと蘭は面識がないんだ。ほら、最近巴がよく話す和太鼓の……」
モカ「あー、あの話の」
蘭「なるほどね、ひまりが「チケット渡してきなよ!」って言ってた下級生……」
ひまり「そうそう! いやぁ、ちゃんと来てくれるなんて義理堅くていい子だねぇ」
ひまり「それでさ、巴」
巴「うん?」
ひまり「ぶっちゃけ、巴はあの子をどう思ってるの?」
巴「あいつのこと? そうだなぁ……うん、あいつはなかなか筋がいい。アタシのアドバイスでしっかり伝えたいことを分かってくれるしな」
巴「目に見えて叩くのも上手くなってるし、それにやっぱり男だと太鼓の音も迫力があるからな……アタシも負けてられないぜ!」
ひまり「違うよぉ~、そういうんじゃなくてさぁ~!」
巴「え、それ以外になんかあるか?」
ひまり「ほらほら、若い男女が一緒に一つのことに打ち込んでてさ、何かあるでしょ? こう、青春の甘酸っぱ~い出来事とかさぁ」
巴「そう言われてもなぁ……」
モカ「でもトモちん、その子の話する時って結構楽しそうだよねぇ~」
蘭「うん、確かに」
ひまり「でしょでしょ! 蘭とモカもそう思うでしょ! ほら、だから巴、ここは正直に白状しちゃいなって!」
巴「いや、白状もなにもないんだが」
ひまり「んー、煮え切らないなぁ。じゃあじゃあ、巴はあの子のことどう思ってるの?」
巴「あいつは、そうだな……弟?」
つぐみ「あー……」
巴「あこが弟だったらこうなのかなぁってよく思うな。それに、あいつとは結構気が合うんだよ。あとなんか放っておけないっていうか……まぁそんな感じか?」
ひまり「ホントにそれだけ~?」
つぐみ「私、なんとなく巴ちゃんの気持ちが分かるなぁ」
つぐみ「ウチでバイトしてる時のあの子を見ると、私も巴ちゃんが年下の男の子だったらこうなのかなって思うし」
つぐみ「まっすぐで、いつも元気で……なんていうか、大きなワンちゃんみたいな子だよね」
巴「だろ? アタシに似てるって部分は分からないけど、なーんか放っておけないんだよな」
モカ「ほうほう。その子はトモちんに似てると。まぁ類は友を呼ぶって言うしね~……トモちんだけに」
蘭「……モカ、それあんまり上手くない」
モカ「えぇー、モカちゃんしょっく~……」
ひまり「放っておけない……弟のような存在の中に、ふと感じる男らしさ……それに胸キュンする展開……うん、いい!」
つぐみ「……ひまりちゃん?」
巴「大丈夫か、俯いてブツブツ呟いて」
ひまり「巴!」
巴「お、おう?」
ひまり「私、恋の相談なら乗るからね!」
巴「……恋?」
ひまり「そう、恋! 大丈夫、恋愛経験が(少女漫画の知識で)豊富な私がいつでも話を聞いてあげるから!!」
モカ「おぉ、ひーちゃんが赤く燃えている……」
つぐみ「なんていうか……ひまりちゃん、世話焼きだもんね」
蘭「いや、ひまりのアレはただのお節介でしょ」
ひまり「そこ、うるさい!」
ひまり「とーにーかーくっ! 何かあったら遠慮なく相談してね、巴!」
巴「そんな相談するようなこともないと思うけどなぁ……」
――――――――――――
――羽丘学園 教室――
あなた(アフターグロウのライブも終わり、ゴールデンウィークも明けた月曜日)
あなた(また新しい週が始まる)
あなた(外は気持ちのいい青空が広がっていた。それに清々しい気持ちになる)
あなた(なるのだが、どうしてか心の中に一点の染みのような、気になる部分があった)
あなた(それは師匠に誘われたライブの中で感じた、焦燥感に似たものだ)
あなた(師匠と共にいる時は気にならないのだが、1人でこのことを考えるとどうにも落ち着かない)
あなた(正体が分からないからそんな気持ちになるのかと思い、ゴールデンウィークの間に似たような感情を列挙しては胸の中にある気持ちと見比べてみたが、未だにその手掛かりさえ掴めそうになかった)
あなた「……分からないことを考え続けても仕方ないか」
あなた(俺は頭を振った。そして思う)
あなた(悩んだらまず行動。悩まなくてもとりあえず行動)
あなた(兵は神速を尊ぶ。いい言葉だ)
あなた(1人で分からないことなら誰かに相談すればいい)
あなた(その方がずっと建設的だろう)
あなた「よし、そうと決まれば(安価↓3)に相談してみよう!」
知り合った人物(巴、ひまり、つぐみ、あこ、薫)の中から
↓3
お疲れさまでした。
多分明日に続きます。
安価が少なくてすいません。
そしてハッピーバースデーイヴちゃん。
あなた(ここは羽沢先輩に相談してみよう!)
あなた(羽沢先輩はバイトの時にいつも優しく指導してくれる)
あなた(丁寧で穏やかな先輩のことだ、きっととても為になることを教えてくれるだろう)
あなた(ちょうど今日はバイトが入っていた。バイトが終わったら、先輩の手の空いた時間を見て相談してみよう)
……………………
――羽沢珈琲店 従業員控室――
つぐみ「今日も1日お疲れ様でした」
あなた「お疲れ様でした、それと今日もご指導ありがとうございました、羽沢先輩!」
あなた(放課後。羽沢珈琲店でのバイトを終えた俺は、控室で羽沢先輩と話をしていた)
あなた(教室で考えていたことを相談するにはもってこいの場面だった)
つぐみ「ううん。もうずいぶんとウチの仕事にも慣れたね。このままなら私が教えることもすぐ無くなっちゃうよ」
あなた「いえいえ、まだまだ俺には先輩の教えが必要ですよ!」
つぐみ「そ、そうかな?」
あなた「はい! いつも頼りにしてます!」
つぐみ「そう言ってくれると嬉しいな。ありがとう。……やっぱり人懐っこいワンちゃんみたい」
あなた「先輩? 何か言いましたか?」
つぐみ「ううん、こっちの話だから気にしないで?」
あなた「分かりました!」
つぐみ「……素直でいい子だし、巴ちゃんが放っておけないって言うのも分かるなぁ」
あなた「あ、そうだ。羽沢先輩、今ってお時間ありますか?」
つぐみ「え?」
あなた(と、羽沢先輩は壁に付けられた時計に目をやる。釣られて俺も時計を見る)
あなた(時刻は19時を少し過ぎたところ。流石に一ヵ月もバイトをしていると、この時間はお店が忙しくないことは分かっていた)
あなた(ただ、先輩には先輩の用事があるだろう。もし何かやることがあるなら、俺の相談は後回しにしよう)
つぐみ「……うん、大丈夫だよ」
あなた(先輩はそう言ってニコリと微笑む。それにホッと胸を撫でおろしたい気持ちになった)
あなた「そうしたら、手前勝手なことだとは思うんですが、少し相談に乗って頂けませんか?」
つぐみ「相談?」
あなた「はい。羽沢先輩を人生の先輩と見込んで、聞いてもらいたい話があるんです」
つぐみ「じ、人生の先輩として……そんなに重大な相談が……」
あなた(俺の言葉を聞いた先輩は、居住まいを正し、コホンと1つ咳ばらいをする)
つぐみ「その、私で答えられることかは分からないけど、頑張って聞くよ」
あなた「ありがとうございます!」
つぐみ「う、うん。それで、どんな悩みが……?」
あなた「はい。実は、俺……」
つぐみ「…………」
あなた「自分の中にある気持ちの名前が分からないんです」
つぐみ「気持ちの名前が分からない?」
あなた「はい。得体の知れない気持ちがあって、これは一体何だろうと考えてしまうんです」
つぐみ「……もしかしてそれ、巴ちゃん絡み?」
あなた「!? 羽沢先輩、もしかしてエスパーですか!?」
つぐみ「ち、違うよ? ただ、なんとなくそうなんじゃないかなって」
あなた(口にしようと思っていたことを見透かされて驚いてしまう。羽沢先輩はそんな俺を見て少しホッとした顔をしていた)
つぐみ「でも、よかった。生活に行き詰ったとか、そういう重い話かと思っちゃったよ」
つぐみ「それで、どういう気持ちになるのかな?」
あなた「えぇと……寂しいというか、焦りというか、その2つがごちゃごちゃに混ざったような、というか……本当によく分からない気持ちなんです」
つぐみ「それってどんな時になるの?」
あなた「この前、アフターグロウのライブがあったじゃないですか。あっ、羽沢先輩、遅れましたけどライブお疲れ様でした! ステージの先輩、輝いててカッコよかったです!」
つぐみ「あ、うん、ありがと」
あなた「それで、えーっと……なんだったっけか……」
あなた「そう、それで、ステージに立った師匠を見て、なんだか遠いなって思ったんです。その時に特に強く感じました」
つぐみ「師匠って、巴ちゃんのこと?」
あなた「はい! 宇田川先輩は和太鼓の師匠ですから!」
つぐみ「なるほどね。ステージの巴ちゃんが遠く感じて、それで寂しいとか焦りがごちゃごちゃに混ざった気持ちになったんだ」
あなた(と、そこで何故だか羽沢先輩は慈愛に満ちた表情で俺を見つめてくる)
あなた(それに何だか気恥しい思いがして、ややそっぽを向きながら言葉を発する)
あなた「ええ、そうなんです」
つぐみ「そっか……ふ、ふふ……」
あなた「先輩?」
つぐみ「あ、ごめんね。ちょっと、なんていうか微笑ましくて……私もひまりちゃんのこと言えないなって」
あなた「は、はぁ……?」
あなた(羽沢先輩はちょっと困ったように頬を掻く。それから俺を優しい目で見つめてきた)
つぐみ「君が巴ちゃんに対して抱える名前の分からない気持ち。それはね、巴ちゃんの傍にずっといれば分かることだと思うよ」
あなた「そういうものなんですか?」
つぐみ「うん、そういうものだと思う」
つぐみ「それにね、多分私や他の人がその答えを教えてあげることが出来るけど、きっとそれは自分で考えて出さなきゃいけないものだと思うんだ」
あなた「な、なるほど……?」
つぐみ「ピンと来ない?」
あなた「……はい。すいません」
つぐみ「ううん、謝る必要なんてないよ。えーっと、君に分かりやすく伝えるには……」
あなた(羽沢先輩は少し思案顔をしたあと、うん、と1つ頷いてから再び口を開く)
つぐみ「分からないことがあったら、きっと君は調べたり人に聞いたりするよね? バイトの時も何かあったら周りの人にすぐに聞きに行くし」
あなた「はい。自分で考えて分からないことはそうした方が手っ取り早いですから」
つぐみ「それと同じだよ。巴ちゃんに関わることが分からないなら、巴ちゃんの傍にいればいいんだよ」
あなた「あ、確かに」
つぐみ「ね?」
あなた「はい、言われてみればその通りですね!」
あなた(本当にそうだ。師匠が関係することでそんな気持ちになるなら、師匠の近くにいればいい)
あなた(実に単純明快な話だ。そうすれば答えもすぐに分かりそうだった)
あなた「ありがとうございます、羽沢先輩! 迷いが晴れました!」
つぐみ「ううん、君の力になれたなら良かった」
あなた「よーし、早速明日から、出来るだけ師匠の傍にいてみよう!」
つぐみ「ふふ、頑張ってね」
あなた「はい! 相談に乗ってくれてありがとうございました、先輩!」
つぐみ「はーい。……私もお節介焼きだなぁ」
あなた「それじゃあ、俺はこれで失礼します!」
つぐみ「うん。車に気を付けてね?」
あなた「いつもお気遣いありがとうございます! それでは!」
あなた(先輩に頭を下げて、羽沢珈琲店をあとにする)
あなた(例の感情の正体を考えるとまだモヤモヤとした気持ちにはなる)
あなた(だが、やるべきことが見えている分、朝よりもずっと気持ちが軽かった)
あなた(……羽沢先輩に相談して本当に良かったぜ!)
――――――――――――
――羽丘学園 教室――
あなた(羽沢先輩に相談に乗ってもらった翌日の火曜日)
あなた(昨日よりもずっと落ち着いた気持ちで俺は考える)
あなた(師匠に関することが知りたいなら師匠の傍にいればいい)
あなた(実に単純な答えだった)
あなた(羽沢先輩のアドバイスを早速生かしていこう)
あなた(そうと決まれば師匠の近くに居れる時間を作ろう)
あなた(確かしばらくはバンドの練習もないと言っていたし、師匠も自由な時間があるだろう)
あなた(さて、どうしようか……)
1:昼食を一緒に、と誘う
2:放課後どこかへ行かないか、と誘う
(出来れば場所もお願いします)
3:その他自由安価
(R18なことや公序良俗に反することはバッドですごめんなさい)
↓1
あなた(よし、昼飯に誘ってみよう!)
あなた(早速師匠に連絡だ!)
あなた(ええと……)
あなた『お疲れ様です、師匠! もしよかったら、昼飯を一緒に食べませんか?』
あなた「送信、と」
あなた(それからしばらく待っていると、スマートフォンが震える。師匠からの返信だ)
巴『ああいいぜ。したらお前の教室に行けばいいか?』
あなた『いえ、師匠のお手を煩わせる訳にはいきません! 俺から向かいます!』
巴『ん、オッケー。じゃあ待ってるぜ』
あなた「よし、約束は取り付けた。昼休みが楽しみだぜ!」
……………………
――昼休み――
あなた「こんにちは! 師匠、いますかー!」
巴「おー。悪いなぁわざわざアタシの教室まで」
あなた「いえいえ! 俺から誘ったことですから!」
あなた(言いつつ、師匠の教室からいくつかの視線を感じて、そちらへ目をやる)
ひまり「…………」
つぐみ「…………」
あなた(上原先輩がニマニマした顔で、羽沢先輩が『頑張って!』と言いたげな表情で俺を見つめていた)
「おー、あれが噂の……」
あなた(それからアフターグロウのギターの先輩が、よく感情の掴み取れない表情で俺を見ていた)
巴「んじゃ、ちょっとこいつと飯食ってくるわ」
ひまり「んーん、ごゆっくりぃ~♪」
つぐみ「こっちは気にしないでね」
「行ってらっしゃ~い」
あなた「じゃあ……食堂でいいですか?」
巴「ああ。行こうぜ」
……………………
――食堂――
巴「それで、どうしたんだ?」
あなた「はい?」
あなた(食堂に着いて、俺は自前の弁当を広げ、師匠は注文したラーメンを持って席についたところで、不意に尋ねられた)
巴「急に飯を食おうだなんて、アタシに何か用があったんじゃないのか?」
あなた「用といえばこれ自体が用ですね」
巴「ん? なんだそりゃ?」
あなた「えぇと……」
1:師匠と一緒にいたかったから、と言う
2:羽沢先輩に相談に乗ってもらって、と言う
3:その他自由安価
↓1
あなた「羽沢先輩に相談に乗ってもらったんです」
巴「つぐに? なんて?」
あなた「この前ライブの時にですね、ステージの師匠を見て……こう、変な気持ちになったんです」
巴「変な気持ち?」
あなた「はい。寂しいというか、急かされるような感じというか……なんだか師匠が遠いような気がしたんです」
巴「……なんかよく分からん感情だな」
あなた「俺もまったく分からないです」
巴「それで、その気持ちをつぐに相談したって感じか?」
あなた「はい。そうしたら、『師匠のことで分からないなら師匠の傍にいればいい』とアドバイスを頂きました」
巴「んーなるほどなぁ……」
あなた「すいません、手前勝手な理由でお誘いして」
巴「いやいや、気にすんなって。お前となら飯くらいいつでも行ってやるって」
巴「可愛い後輩の悩みがそれでなくなるなら安いもんだ」
あなた「師匠……ありがとうございます!」
巴「はは、やっぱお前は悩んでる顔より明るい顔してる方がずっとイイな」
あなた「はい! 俺も悩むより笑ってる方がずっと好きです!」
あなた(師匠はニカッと笑顔を浮かべる。俺もそんな風に笑う)
あなた(そうしているとあの気持ちも気にならない。それもなんだか不思議だった)
巴「あ、そうだ。そういやさ、6月の最初の日曜って、ヒマか?」
あなた「6月の最初の日曜……ええと、そこならバイトも入ってなかったですし、平気だと思います」
巴「そっか、なら良かった。ほら、前に神社で6月に祭りがあるって話したよな?」
あなた「はい。あ、祭りってことは……」
巴「そう、和太鼓を叩くんだ。予定がないならそこがお前の祭りデビューになるんだが、どうだ?」
あなた「何を差し置いてもやります!」
巴「お前ならそう言うと思ってたぜ! したら今月の終わりからは太鼓の練習が増えるから、ワリィけどそのつもりでいてくれるか?」
あなた「望むところです! 師匠、これからもご指導よろしくお願いします」
巴「ああ! ビシバシしごいてやるからな、そのつもりでいろよ!」
あなた「はい!」
あなた(それから昼飯を食べ終え、予鈴が鳴るまで師匠と他愛のない話をした)
あなた(そうしていると、あの気持ちの名前やなんだなんてそんなに気にしなくてもいいことか、と思えた)
あなた(案ずるより産むが易し。きっと、師匠といればそのうち分かることなんだろう)
……………………
――教室――
あなた(師匠を昼飯に誘った日から、なんとなく師匠との距離が近くなったような気がする)
あなた(学校ですれ違えば立ち止まって会話をするし、師匠の方から飯を食べないかと誘ってくれることもあった)
あなた(今日は金曜日。太鼓の練習がある日だ)
あなた(本格的に練習を増やすのは再来週の木曜日から、と師匠は言っていた)
あなた(それまではいつも通り、短い時間の練習になるんだろう)
あなた「…………」
あなた(太鼓の練習も師匠と一緒の時間になる訳だが、それ以外の時間も師匠と過ごしてみたい)
あなた(羽沢先輩のアドバイスを抜きにして、そんなことをよく考えるようになった)
あなた「……寄り道に誘おうか」
あなた(今週の土日はバイトだ。直近で誘えるのは練習後、だろう)
あなた(よし、そうしたら……)
1:練習終わりに寄り道しないか、と誘う
(出来れば場所も)
2:何もせず練習に打ち込む
3:その他自由安価
↓1
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