ありす「今回も魔法少女で頑張ります」 (43)



『第4話 パッション爆発タチバナです』




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――河川敷

茜「うおおおおおおおおお!!!!」ドドドドドドドドドドッ!!

ありす「……」ハァ、ハァ……

文香「」

礼子「本当……元気ね、茜ちゃんは……」ハァ、ハァッ……

茜「みなさん! 運動会は近いですよ! このまま燃えていきましょう!!」ドドドドドドドドッ!!

文香「」ドサッ!

ありす「はぁ、はぁ……はっ、文香さん……文香さーん!」


……
…………

――1週間前、事務所

P「今年の事務所対抗アイドル大運動会だが、実績が良いこともあってうちの事務所にも声が掛かった」

ありす「事務所としては初参加ですね」

文香「運動……会……」

P「まあ、メディア公開もするし大手事務所の宣伝がメインっちゃメインだけど……どの事務所を優勝させようかっていう流れも特にあるわけではない」

ありす「参加アイドルの多い大きい事務所のほうが勝率が高いのも当然ですしね。自然と大きい事務所が勝つ企画でもありますし」

礼子「とはいえ、黙って企画の餌になることもない……かしらね?」

P「というわけでうちは全力でやるぞ。もちろん、他の仕事とバッティングしているメンバーは不参加となるが……」


茜「ついに……ついに! 私も運動会に参加できるんですね!! 燃えてきました!!!!」


P「茜は毎年この企画に参加したがってたからな。ようやくうちも参加できることになったし、無理やりスケジュールの調整しておいてよかったよ」

茜「ありがとうございます! 見事、うちの事務所が優勝できるように頑張ります!!」

ありす「いえいえ、参加メンバーがこの4人しかいないんですから、それは厳しいかと」

文香「……私に、他のお仕事は……ないのでしょうか」

P「ない……かな。終わった後なら予定入ってるけど、運動会の参加メンバーが少ないのも困るし」

文香「」

礼子「もう少し体を絞っておいたほうがいいかしら。収録はジャージ姿だろうけど……」

P「礼子さんは今のスタイルで十分です。まあ、当日まで日があるし、普段からレッスンしているとはいえ、競技用の体づくりもしておいたほうがいい」

P「トレーナーさんにも話して4人には普段とは違うレッスン、もといトレーニングメニューを組んでもらう予定だから、怪我しないようにな」

ありす「わかりました」

茜「さっそくトレーニングですか! 分かりました! ボンバー!!!!」ガチャッ!

バタンッ!!

ありす「……1人で走りに行きましたけど」

P「話聞いてないな……まあ、茜なら大丈夫だろう、多分」

……
…………

――現在、夜、橘家(ありすの部屋)


ありす「疲れた……」ドサッ!

ゆっこ「お帰りなさーい。そこにお菓子ありますよ」カキカキ

ありす「……どこで買ってきたんですか」モグモグ

ゆっこ「今日はムムムムーンで結構出た日だったのでおみやげです」

ありす「程々にしてくださいよ……はぁ、疲れた」

ゆっこ「そんなにため息ばかり吐いてると、幸せが逃げますよ? 今日もトレーニングだったんですか?」

ありす「もうすぐで運動会の収録ですし、調整もしておきませんと……ユッコさんは何しているんですか?」

ゆっこ「ああこれ、王国に出してる報告書作りです。さすらいの妖精の嗜みです」フッ……

ありす「ああ、あの汚い字で書いてた」

ゆっこ「うぐっ……ユ、ユッコだってちゃんとした報告書作りたいですよ! でも正規職員じゃないとツールも支給されませんし……」

ありす「その、マジカルランドってところは国としての統率はしっかりとれているんですか? 魔物と戦っているといっても、ユッコさんみたいな現場の方に丸投げしているようにも見えますし」

ゆっこ「バックアップはそれなりにしっかりしてますよ。休暇制度もちゃんとありますし……あ、そういえば申請出しておかないと」

ありす「はぁ……マジカルランドとか言いつつ、そんな現実的なお話ばかり聞かされても……」


ゆっこ「こっちもありすちゃんのような魔法少女を見つける為に命懸けですし、福利厚生くらいは……あ、マジカルランドのことならそこに新聞置いてますけど、読みます?」

ありす「えええ……いや、妖精サイズなので小さくて読めないんですけど」

ゆっこ「仕方がありませんねぇ……サイキックビックライト!」ビビビビッ!

ありす「新聞が人間の読めるサイズに……えーっと、魔物との戦闘による国道被害、デレステシティで再度魔物との戦闘、他世界の魔物進行率上昇……嫌な記事しかありませんね」ペラッ

ゆっこ「そりゃあ、そういう時期ですからね。だからユッコたちもこうして頑張っているわけで」

ありす「良いお話の記事は……国王ちひろによる徴兵制度の改善、魔物による被害地域の復興動員数の増加……各世界で注目されている魔法少女……!」

ゆっこ「ああそれ、前にもお話したと思いますけど、色んな世界で協力してくれている魔法少女は王国側でも管理していまして、国民に向けて魔法少女の活躍が公開されているんですよ」

ゆっこ「それで国民から支持されている魔法少女の特集が組まれたり、そこにも書いてる人気ランキングが掲載されたりと……魔法少女は国民の希望ですからね!」

ありす「マジデ・クール・マジカ・タチバナ、マジデ・クール・マジカ・タチバナ、マジデ・クール・マジカ・タチバナ……」

ゆっこ(必死に自分の名前を探してる……)

ありす「……141位。これってどうなんですか」

ゆっこ「高いほうなんじゃないですかね? 色んな世界に魔法少女がいて、そのランキングに載ってない魔法少女もたくさんいるみたいですし」

ありす「ランキングの上位は……シュヴァリエチアキ、プリティーミユミユ、レモネードサトミン、大天使チエリエル……うぐぐ、魔法少女らしい強そうな名前がたくさん……」

ありす「……上位だけ見るのは不公平ですね。下位のほうは……プッ、魔法少女っぽい名前なのにランキングもギリギリな人が……」

ゆっこ「下を見て悦に浸るのは情けないですよー」

ありす「うぐっ……こ、これはあくまで現状調査です! 私も魔法少女なんですから」

ゆっこ「はいはい」

……
…………

――翌日、早朝、河川敷

ありす「……」タッタッタッタッ……

ゆっこ「ふわぁ……ねむ……」フワフワ

ありす「まだ寝ててもよかったんですよ。日が昇ったばかりですし」

ゆっこ「いえ……早朝ランニングでも、ありすちゃん1人で走らせるのも危ないですから……あふぁ……」

ありす「変質者が出てきても防犯ブザーは持っているから大丈夫です」

ゆっこ「早朝の人通りの少ない時間で防犯ブザーなんてあんまり役に立ちませんからね」

ありす「まったく、この妖精はああ言えばこう言う……ん?」タッタッタッ……


<ウオオオオオオオー!!!!


ありす「あれは茜さん……」


茜「うおおおおおおお!!!!」


ゆっこ「魔法少女ばりに残像を見せながら高速スクワットしてますね」

ありす「気合入っているみたいですからね。茜さーん」

茜「ん!? おや、ありすちゃんじゃないですか! おはようございます!」

ありす「おはようございます。朝から熱心ですね」

茜「運動会も明後日ですからね! 調整は怠らないようにしませんと!!」

ゆっこ『調整している間に燃え尽きそうな勢いですね』

ありす『まあ、いつも燃えているような方ですから』

ありす「程々にしないと、当日まで持ちませんよ」

茜「大丈夫です! 事務所を優勝に導くまでは立ち止まりませんよ!!」

ありす「いやいや、大手の事務所と比べてうちはメンバーも少ないですし……」

prrrrr!!

茜「もしもし!! 文香さんですか!!!! はい、河川敷にいますので待ってます!!!!!!」バキィッ!

ありす「文香さんからお電話ですか?」

茜「はい! 文香さんも少しでも動けるようになるためのトレーニングをしたいと! お話していましたので!!」

ありす(これは文香さん、明日には灰になってそうですね)

茜「ありすちゃんも一緒にトレーニングしませんか!!」

ありす「いえ、学校もありますし、朝はランニングくらいにしておきます」

茜「そうですか!! 当日は頑張りましょう!!!!」



ゆっこ「いやー、凄まじい声でしたね。眠かったのに目が覚めちゃいましたよ」ヒューンッ

ありす「元気な方ですからね。私はそこまで運動会に熱心になれませんけど」タッタッタッタッ……

ゆっこ「そうなんですか?」

ありす「まあ、頑張りはしますけど、茜さんと違ってスポーツで売っている部分はありませんし」

ありす「そういうところは茜さんみたいな運動が得意な方がメインですからね」

ゆっこ「ふーん……せっかくの運動会なんですから、頑張ればいいのに」

……
…………


――午後、駅前、パーラー『ムムムムーン』前

ジャラララララッ!!

ゆっこ「ふぃー、今日も大量大量! サイキックパワーのおかげですね」

ゆっこ「交換所交換所……えーっと、今日は何に……ん?」

ゆっこ「はいもしもし、王国ですか?」

ゆっこ「はいはい、あ、今ですか? ちょっと現地の調達作業に……いえ、時間はありますよ」

ゆっこ「ええ、はい……え、ユッコの成績が良いと……いえそんな照れちゃいますね」

ゆっこ「え……ありすちゃんを?」

ゆっこ「うーんそうですね……学校とお仕事がお休みの日だったら大丈夫だと思いますけど……はい、それじゃ決まったら早めに教えてください」

ゆっこ「はーい、それじゃあ失礼しまーす」


ゆっこ「うーん……ビックリですね」

……
…………

――数日後、江東区、夢の島競技場

『事務所対抗アイドル大運動会』

P「ふー、着いた着いた」

礼子「あら……随分と本格的な場所なのね」

ありす「陸上競技用のトラック、芝生のフィールド、スタンドや照明、電光掲示板等一通りの設備が揃っている競技場です」

ありす「この企画は全国から芸能事務所を呼んでいますし、しっかりとした施設で行われるイベントですからね」

茜「う……う……!!」プルプルプルプル

文香「茜さん……? どう、しましたか……?」

茜「うおおおおおおお!!!!」ドドドドドドドドッ!!

ありす「興奮したのか走ってどこかに行っちゃいましたね」

P「……ま、落ち着いたら戻ってくるだろう。とりあえず受付済ませて、うちの事務所のスペースに行くか」

……
…………

――夢の島競技場内(スタンド席)

ありす「一番上の席ですけど、屋根の下で良かったですね」

文香「日差しが遮られているので……炎天下の真下にいることになったら、どうしようかと……」

礼子「椅子7つ分の席しか確保されていないけど……まあ、この人数なら丁度いいわね」

P「荷物はこっちで置いておくから、みんなは更衣室で着替えてきてくれ。ジャージは忘れてきてないよな?」

ありす「はい。それじゃ着替え終わったら――」

キィィィィンッ……

ありす「ん?」ピクッ!

P「ん、どうした?」

ありす「……」


ありす「……いえ、何でもありません。着替え終わったら少しストレッチしてから戻ってきます」

P「スタッフ証あれば外に出ても大丈夫だから、ストレッチやるなら他の事務所の人たちもいる場所でな」

ありす「わかりました」


……
…………

――夢の島競技場裏

文香「え……魔物の気配、ですか?」

ありす「はい、先程微かに感じました」

礼子「こんなところにまでいるのね……どうしたものかしら」

ゆっこ「いやーしかしどこなんでしょうね? あんまりにも気配が弱いのか、ユッコは感じませんでしたけど」

ありす「会場に現れたら厄介ですし、どうしましょうか……」

礼子「そうねぇ……うちの事務所、4人しかいないから途中で抜け出すのも難しいわね」

文香「会場に出てきたら……被害が大きく、なりそうですし……」

礼子「ありすちゃんが競技に出ているタイミングで出てこられたら困るわね……私たちのほうでも、何かできればいいけれど」

ありす「いえ、これも私の仕事みたいなものですし、お2人は何かあったらPさんと一緒に逃げてください」

ゆっこ「そうですね。それに、今のありすちゃんも結構強くなってきていますし、そこら辺の魔物程度なら楽勝ですよ!」

ありす「簡単に言ってくれますね……まあ、準備運動もしましたし、そろそろ戻りましょうか」




??「うーん……気配がするぞぉ☆ たぶんここら辺にいるのは間違いないんだけど、どうやって炙り出してやろうか?」


……
…………

――夢の島競技場

茜「うおおおおおお!!!!!」ドドドドドドドドドッ!!


『1000m走、先頭を走るのは今回が初参加のCGプロダクション所属、日野茜ちゃん! 日野茜ちゃんです! とんでもないスピードです!』


茜「トラーイ!!!!!!」


『堂々の1位でゴールです! これは凄い、2位と半周近い差をつけてのゴールです!』


P「いやヤバいなあれ」

礼子「素人の中にプロ選手が混じってるみたいね」

ありす「ホント勝ちに来てますね」

文香「この人数で全種目に参加することになっていますが……茜さんの参加が一番多いですし……」

ありす「他の人とこれだけ差があるなら、茜さん1人でいいところまで行きそうですね」

P「そうだなぁ……ところで礼子さん、何かそのシャツ随分小さくないですか?」

礼子「そう? ふふっ、運動会だからジャージ姿なのは仕方がないけれど、撮影されているんだから、少しくらいは色気でも出しておこうかと思って、ね?」


……
…………

『次の問題です。イタリアの作曲家であり、赤毛の司祭とも呼ばれていた自分物の名前は?』

ピンポーンッ!

文香「アントニオ・ヴィヴァルディ……です」

ピンポンピンポンピンポーンッ!!

『CGプロダクションの鷺沢文香ちゃん、正解です! 橘ありすちゃんのラインニングマシーン以外の速さが1段階上がります!』

ガコンッ!

ありす「結構ガチなクイズが多いですね……文香さんがいてよかったです」ハァ、ハァ、ハァ……

ゆっこ「頑張れがんばれありすちゃーん!」



P「しっかし芝生の上にランニングマシーンとクイズ用のステージが置いてるのも施設の無駄遣いだな」

礼子「あら、シュールな絵でこれはこれで面白いじゃない」

茜「アントニオ……強そうですね!!」

P「それ多分別の人だから」


……
…………



礼子「ふっ、ふぅんっ!」ボヨンッ!


『おおっと、選手のみなさん、中々パンを咥えることが出来ない様子! 果たして最初に走り出すことが出来るのは誰だ!』


茜「ちょっと吊るされているパンの位置が高くないですか!?」

ありす「狙ったかのように全員スタイルの良い方たちが出てますね」

P「まあうちも礼子さんに出てもらってるし……やっぱ考えることはみんな同じか」

文香「このような光景で……喜ばれるものなのでしょうか……」

P「まあ……ほら、色々と凄いし、まあ」

ありす「……」

ゆっこ「ま、仕方がないですね」


……
…………

――午後

茜「いやぁ、運動会で食べるお弁当は美味しいですね!!」

文香「芝生で集まっての昼食も……撮影の時間なのですね……」モグモグ

P「どこの事務所もシート敷いて食べて、一応インタビューとかもやってるからな。うちのところにも来たら、ちゃんと受け答えしてくれよ」

ありす「わかっています……というか、周りを見ても仕出しのお弁当で済ませてるところが多いですね」キョロキョロ

礼子「お弁当作って持ってきているの、うちくらいかしら……作ったのはプロデューサーだけど」

P「いや俺だけやることほとんどないから……見栄え良い弁当くらいは作ってこようかなって」

茜「美味しいです!!」

文香「……」モグモグ

ありす『ユッコさん、ユッコさん』

ゆっこ『はい?』

ありす『どうですか。周りでおかしいところはありましたか?』

ゆっこ『うーん……やっぱり何もないですねぇ。魔物の気配、気のせいだったんじゃないですか?』

ありす『そんなはずは……』

ゆっこ『まあいつ出てくるかわかりませんし、もう少し見回りしてきますけど』

ありす『お願いします』

ゆっこ『ユッコもお昼ご飯食べたかったんですけど』

ありす『少し残しておきますから、戻ってきたら食べてください』

ゆっこ『はーい』


……
…………

――夢の島競技場裏

ゆっこ「うーん、周りを探しても何も見当たらないし、魔力の痕跡もないし……」

ゆっこ「後は向こうの建物まで――」

パアアアアアッ!!

ゆっこ「っ!? サイキックバリアー!」ビュッ!

ガキィィンッ!!

ゆっこ「これは……魔力の……ハート?」

ゆっこ「魔物の攻撃……いや、でも魔物の気配は感じなかったような……でもこれは……もう少し調べないといけませんね」キョロキョロ



??「おー、いたいた♪ それじゃテキトーなタイミングでやっちゃうぞ☆」


……
…………


――午後、夢の島競技場内

『2人3脚、戦闘を走るのはCGプロダクションの日野茜ちゃんと鷺沢文香ちゃんのペア! 文香ちゃんが苦しそうだがこのままゴールまで逃げ切れるのか!』

茜「イッチ!! ニッ!! イッチ!! ニッ!!」

文香「ぐえええええ……」

『おおっと!? 後ろから2組が猛追しているが――』

茜「はっ!? 文香さん!!」グイッ!

文香「へっ――」


ドサッ! グキキキッ!!


ありす「あっ!?」


……
…………

――夢の島競技場内(スタンド席)

茜「すみません……! 2人3脚の1位を取り逃してしまって……!!」

P「そんなこと言う前に、転んで怪我してどうするんだ」マキマキ……

文香「あの……茜さん……その……」

茜「大丈夫です! 2人3脚で他のチームともつれて転ぶことはよくありますから!!」

礼子「ま、文香ちゃんは怪我しなくてよかったわね」

文香「申し訳……ありません……」


『借り物競争に出場するアイドルの皆さんは控室までお集まりください』


P「まー仕方がない……っと、次の借り物競争、茜と礼子さんが出る予定だったな……文香、茜の代わりに出てくれ。テーピング、まだ終わってないし」

文香「は、はい……」

礼子「茜ちゃんの分まで頑張りましょうか。いい絵を撮ってもらうのも忘れずに、ね?」

茜「頑張ってください、文香さん! 借り物競争なら急いで走ることもありませんし、文香さんなら大丈夫ですよ!」

ありす「無理しない範囲でお願いします」

文香「が……頑張り、ます……!」

P「頑張れよー」



ありす「……で、どうするんですか」

P「とりあえずテーピングは終わりっと。ほれ、もういいぞ」ペシッ!

茜「あうっ!? ありがとうございます!!」

P「……まあ、以降は無理せずちゃんと自分で加減してな」

ありす「え?」

茜「わかりました!!」

P「じゃ、俺は借り物競争用の待機場所に行ってるから、留守番頼む」

ありす「……」

茜「さて! 次の競技からはまた出場ですし、今のうちに文香さんと礼子さんの応援をしましょうか!!」

ありす「あの、茜さん」

茜「なんでしょうか!」

ありす「足、痛くないんですか?」

茜「もう平気です! と言いたいところですけど、無理やり体を捻ったから結構足に来てますね……!」

ありす「無理をせず、残りの競技の出場は諦めて私たちに代わったほうがいいと思います。悪くしてしまっては大変ですし」

茜「大丈夫です! 今日の為にトレーニング積み重ねましたから根性あるのみです! それに、プロデューサーからのストップもありませんでしたから!」

ありす「それがおかしいと思います。Pさんの立場であれば茜さんの今後の仕事を考えて、無理をさせないようにするべきだと思います」

ありす「そこまで大事にはならないとは思いますが、茜さんは体を動かす仕事も多いですし――」

茜「プロデューサーが……私にこう言いました! 『無理せず、加減をしろ』と!」

茜「多分プロデューサーも、私にあんまり競技には出てほしくないと思っているはずです! ですが、私が今日のためにトレーニングを重ねていたことを知ってくれているから、それだけ言ったんです!!」

茜「私にとって、今日の仕事はとっても大切です! だから、ちょっと足を捻ったくらいで出場を諦めたくないんです! 文香さんや礼子さん、ありすちゃんも、みんなみんな今日に向けてトレーニングをしました!」

茜「みんなで頑張って一緒に出ることが出来た運動会だから、私は妥協せず優勝に向けて全力で走り抜けたいんです! プロデューサーはそんな私の気持ちを汲んでくれたから……だから、絶対に大丈夫です!!」


『200m走決勝に出場するアイドルの皆さんは控室までお集まりください』


茜「おっと、午前中に私が決勝まで進んだ200m走じゃないですか! それではありすちゃん、次も燃えてきます! ボンバー!!」ドドドドドドドッ!!


ありす「……全力で、最後まで」



パァンッ! パァンッ! パァンッ!

『ゴールです! 最初にゴールに到着したのはCGプロダクションの鷺沢文香ちゃん!』

文香「ひぃ……ひぃ……」ヨタヨタ

礼子「ギリギリ1着だったわね。私は3着だったけれど」

文香「は、はひ……」ハァ、ハァ……



『ちなみに文香ちゃんが引いた借り物が書かれた紙は……辞典? よくすぐに見つけましたね』

文香「持参……していたものが、あったので……」


P「なんで文香の鞄の中に広辞苑入ってたんだ……?」

文香「重量の……ある、書を……普段から、持ち歩くことで……トレーニングに、なるのでは、ないかと……」ゼー、ハー……

P(思ったよりアホな発想に行きつくな……)

文香「茜さんに……庇って頂いた分まで……私も、頑張りませんと……」ハァ……ハァ……

P「……そうだな、よく頑張ったぞ、文香」


ありす「……」


……
…………



『それでは、200m走決勝を開始します!』


茜「むむむむ……!!」グッ……


P「茜ー、頑張れよー!」

礼子「無理しないで、気を付けてね」

文香「が、頑張って……ください……!」

ありす「……」


『用意……』

パァンッ!!


茜「ボンバァァァァァァァ!!!!」ズドドドドドドドドドドドッ!!


『先頭は4人……並んでいます! これはどうなる!?』


P「さすがに捻挫した足じゃこれまでの爆走は無理か……!」

礼子「他の子も必死ね。ほとんど差がないけれど……」

文香「あ、茜さん……」

茜「ぬうおおおおおおおお!!!!」ドドドドドドドドッ!!


ありす「……」

茜『絶対に大丈夫です!!』

ありす「……茜さん、頑張ってください!」


茜「トラアアアアアアアイッ!!!!」ギュンッ!

ズザザザザザザザッ!!


『おおっと!? 200m走決勝……接戦の中で1位はCGプロダクションの日野茜ちゃんです!』

茜「やりました!!」

P「おお、よく頑張ったぞ茜!」

ありす「やった……!」

文香「よかった……」

茜「はい! 頑張りましたー! 見てましたかープロデューサー!!」ブンブンブン!!

P「おーおー元気そうでまぁ……」

ありす「あ、私、タオル持っていきます」タタタタタッ!

……
…………


ありす「茜さーん」タタタタッ!

茜「おや、ありすちゃん!! わざわざタオルを持ってきてくれたんですか、ありがとうございます!」

ありす「ま、まあ……そういう気分になったからです。お疲れ様です」

茜「はい! ですが、まだまだこれからですよ!」

ありす「もう……でも、茜さんの――」


――キィィィィィンッ!


ありす「この感覚……!」ピクッ!

茜「ふぃー、いい汗を……ん、どうしましたかありすちゃん!」フキフキ

ありす「近い……もしかして、やっぱり――」

パアアアアアアッ!!

ズズズズズズ……

ありす「結界が……」

茜「おや!? 曇ってきましたね、雨でしょうか!?」



??「よし、いってこーい♪」


魔物「ぴにゃあああああああっ!!」ズドォォォォンッ!!!!

茜「うおおおおおおおっ!?」

ありす「魔物……! やっぱり、来た時に感じたのは……!」


文香「あれは……!」

礼子「ありすちゃんの茜ちゃんの近くに……他の人たちは結界で動けないけど、ありすちゃんの近くにいた茜ちゃんが……」


ありす「あ、そうです、ユッコさん!? どこですか!?」キョロキョロ

茜「あれ最近テレビで見るブサイクですよ! 危ないヤツらしいです!」

魔物「ぴにゃあああああ……!」パアアアアアッ!

ありす「危ないどころではありません! 破壊光線が来ますよ! 茜さん、逃げましょう!」

魔物「ぴにゃっ!」カッ!

ズドドドドドドドドッ!!!!

茜「ありすちゃん危ない!」ドンッ!

ありす「わわっ!?」

ドガアアアアアアンッ!!!!

茜「あ、危なかったです……!」

ありす「すみません……いたた……」



??「えーっと、動いてるヤツは1、2……4人? 誰かビンゴか早く教えて☆ 教えろ」


茜(ありすちゃんは逃げてもらいませんと……)

茜「ブサイク! 私はこっちですよー!!」タタタタタタッ!!

魔物「ぴっ!?」グルンッ!

ありす「あ、茜さん……」ググッ……

茜「こっちです! 追いかけてきてくださーい……っ!?」ズキッ!

茜(足が……! でも、少しでもありすちゃんが逃げれるように……!)タタタタタタッ!!

魔物「ぴにっ!」ズガガガガガガッ!!

茜「雷ぃ!? あわわわっ!」バッ!

ズガガガガガァンッ!!

茜「いたたた……」グググッ……


ありす「茜さん……!」

ゆっこ「ありすちゃーん!!」ヒューンッ!!

ありす「ユッコさん! どこ行ってたんですか!」

ゆっこ「すみません、ユッコも何者かの攻撃を受けて外を調査していて……って、茜ちゃんがピンチじゃないですか!」

ありす「そうです! だから早くスタージュエルをお願いします!」

ゆっこ「はいきた! スタージュエルですよ!」ビュッ!

ありす「いきます、マジカルチェーンジ!!」

パアアアアアアッ!!!!

シュパアアアア……


文香「間に合いました……!」

礼子「ユッコちゃん……? いま……」


パアアアアア……

ありす「クールにいきます! マジデ・クール・マジカ・タチバナ!」

ゆっこ(ダサい)

文香(ダサい)


??「へー、あっちのガキんちょが魔法少女なんだ☆ 憎たらしいぞ、おいっ♪」

茜「はっ!? あ、あれは最近テレビで見る魔法少女!? 助けに来てくれたんですか!!」

ありす「はい! なのであなたはそこから逃げてください! ストロベリーショット!」ボボボボボンッ!

ドガアアアアアンッ!!

魔物「ぴっ!?」

ありす「させませんよ! 茜さん……いえ、運動会の為に頑張ってきた人たちの為にも、これ以上ここを荒らさせるわけにはいきません!」ザッ!

ありす「ストロベリーバインド!」ビシュルルルルッ!

魔物「ぴにゃ!」ヒュッ!

ゆっこ「あの魔物、思ったより素早いですよ!」

ありす「あんな丸まるとした体でどうやって……」

茜「諦めないでください! 魔法少女さん! 1度失敗してももう1度です! 諦めずに何度でもやればきっと大丈夫です!」

ありす「はっ……! そうです、私は今日教えてもらいました。最後まで頑張ること……1度はダメでも!!」グッ!!

パアアアアアアッ!!!!

茜「ぬおおおおおおっ!? か、体が熱い!?」ゴオオオオオオオッ!!

ゆっこ「あれ、茜ちゃんめっちゃ燃えてますけど、いや、光ってるどころか燃えているようにしか……」

茜「これは……な、な……!?」

パアアアアアアッ!!

ありす「茜さんの光が、私のマジカルクローゼットに……!」ピカッ!

ありす「最後まで……全力で!」

ありす「……お借りします、茜さん!」カチッ!

『パッション!』

『セクシー!』


ありす「ヴァリアブルパフォーマンス!」

パアアアアアアッ!!!!

シュパアアアア……

茜「ぬわー!?」


『パッション・セクシー!』


ありす「お姉さんがタイホしちゃうわよ! マジデ・パッション・セクシー・タチバナ!」ボインッ!

文香「背格好は変わらないのにお姉さん……?」

礼子「確かに体つきはセクシーになったけど……お色気警察官?」

ゆっこ「なんだか頭の中に霞がかかったような何かが……うーん」

茜「おおおおおお! こ、これが魔法少女の変身ですか! カッコいいです!!」

ありす「カッコいいなんて、お姉さん照れちゃうわねぇ♪ それじゃ、サービスするわよ!」パアアアアアッ!

ありす「セクシーバインド!」ビュルルルルルッ!!

ガションッ!!

魔物「ぴにゃっ!?」ギシッ!

ゆっこ「おお! 手錠によるバインド……なんで手錠なんでしょうか」

文香「ですが……これで、相手の動きを……封じることができました……」

礼子「……」


ありす「次でトドメよ!」カチッ!

『パッション!』

ありす「ヴァリアブルパフォーマンス!」

『マジデ・パッション・マジカ・タチバナ!』

ありす「うううううボンバー!!!!」ゴオオオオオッ!!!!

茜「ボンバー!!!!」

文香「あの衣装は……以前の茜さんのステージ衣装……!」

ゆっこ「なんで茜ちゃんもボンバーしてるんですかね」

ありす「いきます! はあああああ……バーニング……ボンバー!!!!」ボオオオオオオッ!!

ゆっこ「パ、パンチ!?」

ドガアアアアアアアアンッ!!!!

魔物「びっ――」ボオオオオオオオオオッ!!!!

パアアアアアアアッ!!!!

ジャラジャラジャラッ……


ありす「燃え上がる炎で、浄化完了です!!!!」

茜「お、おおおおお……!!」

文香「燃え尽きましたね……」

ゆっこ「燃やし尽くしても浄化になるんですね……まいいや、スタージュエルの回収回収」ヒューン……

礼子「……」キョロキョロ

パアアアアアアッ!!

ありす「この衣装も疲れますね。普段の衣装が一番ですけど――」



??「へぇ……ちょーっと気になってたけど、こんなもんなら別に放っておいていいかな☆」



ゆっこ「むっ!?」ピクッ!

礼子「声が……クールタチバナ、後ろの照明の上に何かいるわよ!」

ありす「っ!? ストロベリーショット!!」バッ!

ドガアアアアアアアンッ!!

ありす「……何も、いませんね」

礼子「……」

ゆっこ「……いえ、いま確かに」

ありす「……」


……
…………

――夕方、夢の島競技場前

P「惜しかったな、リレーで1位だったら優勝出来てたんだが」

茜「優勝できなかったのは悔しいですけど、全体3位で表彰されました! みんなで頑張った成果です!」

ありす「結局私たちが足引っ張ってリレーは抜かされっぱなしでしたからね」

文香「すみません……やはり、足を引っ張ってしまって……」

茜「いえいえ、私クイズやなぞなぞは苦手なので、文香さんに出てもらわない1位になれなかった競技もありました! みんなで掴んだ勝利です!」

礼子「んんっ……それにしても、トレーニングしていたとはいえ、明日は筋肉痛かしら」

P「レッスン、キャンセルしておきます?」

礼子「ふふっ、まだまだ若い子たちに負けていられないもの、明日もいつも通り頑張るわ」

茜「そうです! この後みんなで打ち上げにいきましょう! お肉が食べたいです!」

ありす「焼き肉ですか? 私は構いませんけど……」

P「それじゃありすと文香は親御さんに連絡しておくか」

ありす「それじゃあ私は近場で良い評価のお店を調べておきます」スッ、スッ……

ゆっこ「……」フワフワ

ありす『どうしましたか?』

ゆっこ『いえ、楽しそうだなーって思って』

ありす『そうですか?』

ゆっこ『ま、そうやって何事も楽しくやるのが一番ですからね。私も焼き肉貰っちゃいますかねー』

ありす『Pさんに見えないところでこっそり食べるの、難しいと思いますけど』

ゆっこ『そこはほら、プロデューサーにはゆっこが見えないのを利用して上手いことですね……』

ありす『何言ってるんだか……』


茜「ありすちゃーん! 車に乗りましょう―!!」

ありす「あ、はい。いま行きます」タタタタタッ!!



つづく


……
…………

『次回予告!』


ゆっこ「休暇の帰省ついでに、王国から特別許可が下りたんです! ありすちゃん、みんなで一緒にマジカルランドに行きませんか?」

ありす「人間が行っても問題ないところなんですか?」


――ゆっこの休暇に合わせてマジカルランドに行くことになったありすたち。


ゆっこ「この妖精がモバマスシティの町長です! 私にサイキックパワーの制御方法を教えてくれた師匠でもあります!」

町長「いやぁ、ユッコの馬鹿者がお世話になってるそうで……」

ありす「は、はあ……」

礼子「家の中の物も、全部妖精サイズなのね」

文香「私たちも、小さくならないと入れないサイズですね……」


――ゆっこの故郷、モバマスシティに訪れる一行。


??「おやおやー? お偉いさんたちがハイカキン山に行ってるから、てっきり王国の戦力はそっちに行ってるんだと思ってたけど、餌がまだいるぞぉ☆」

ありす「あなたは……もしかしてこの前の……!?」

??「口の利き方が悪いぞ☆ それにあなた、じゃなくてスゥィーティーな、シュガーはぁと、って呼んで☆ 呼べよ」

ゆっこ「ま、まさか……大神官穂乃果の幹部……!?」


――モバマスシティに攻めてくる新しい敵。


ありす「う……う、うう……」

??「いや~ん、超ザコ☆ そんな汚い面ではぁとの顔を拝むなんて許さないぞ☆」バキッ!!

ありす「あぐっ……!」ドサッ!

ゆっこ「ありすちゃん!!」

文香「いけません……あ、ありすちゃんが……」

礼子「他の魔物も……このままだとこの町が……!」


――敵の凄まじい強さに、成す術もなく倒れるありす。


??「魔法少女なんて言うくせに、真似っこしかできないヤツがはぁとに勝てるわけないだろ☆ ん?」

ありす「う、ぐ、ううう……」


――ありすの戦いの行方は……!


『第5話 どこにもいない私』


ゆっこ「町長……何やってるんですか、町長!」

町長「ユッコ……みなさんを、しっかりお守りするんじゃぞ」


『次回もお楽しみに!』


――
――――

おしまい

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