【モバマス】アイドルが犯罪を未然に防ぐ話 (32)

ちくしょう、パチンコで大負けしちまった。

仕事も見つからないし、何もかも嫌になる。

こうなったら……。

どんな手段を使ってでも大金を手に入れる!

都合よくおとなしそうな子発見!



白菊ほたる(トコトコ)



親が金持ちだとありがたいんだが……とりあえず離れて後をつけよう。

そしてスキを見て誘拐だ。

SSWiki : http://ss.vip2ch.com/jmp/1505542541

閑静な住宅街に来た。他に人はいない。

どうする、やるか? 窓から誰か見ている可能性も……。

いや、どうせ失うものなんてないんだ。

素早く抱きかかえて、連れ去る。

シミュレーションバッチリだ、行くぞ!

ガシッ!

ほたる「きゃっ、な、なんですか……!?」

ガシャーン!!



……ん?

ついさっきまでこの子が立っていた場所に、壊れた植木鉢が落ちていた。

危ねーな、オイ!

ほたる「まさか、助けてくれたんですか? こんな見ず知らずの私を」

あ、いや、その……。

ほたる「ありがとうございます! ありがとうございます!」

ほたる「ああ、今日はなんて幸運な日なんでしょう」

……当然のことをしたまでだよ。ウン。

ほたる「何かお礼を……えっと、この植木鉢のかけらとか……」

お礼に1割は落とし物だ!

いや、落とし物だけど! 君のものじゃないだろ!

気にしなくていいから!





くっそー、植木鉢さえ落ちてこなければ成功したかもしれないのに。

まあ、抵抗されて失敗するよりましと思うか。

次は……おっ、タブレットに集中してる子がいる。

橘ありす「…………」

立ち止まって操作しているのは感心だが、トートバッグは軽く腕にかけているだけ。

子供の財布じゃ大金は期待できない。

しかし換金できるものがあるかもしれない。

……よし、さっきは誘拐に失敗したからな。

今度はひったくりだ。

背後から近づいて……素早く奪う!

ありす「な、なにするんですか!」

いいからよこせ!

ありす「泥棒! 誰か――」



ブゥン。



ありす「あっ? ……蜂?」

うおっ、来るな! シッシッ!

ありす「手を入れたら刺されていたかも……」

いてえ! くそ~、刺された……。

ありす「あ、あの、どうぞ」

見るとタブレット少女がイチゴ柄の絆創膏を差し出していた。

ありす「泥棒なんて言ってごめんなさい」

ありす「バッグに蜂がいたなんて気づきませんでした」

ありす「でも先に言ってくれれば誤解しなかったのに……」

あー、ははは……口下手で。

誤解じゃない、とは言えない。

ありす「だとしても……いえ、非難したいわけじゃないんです」

ありす「この話はもう止めますね」

ありす「本当にありがとうございました」

ありす「それと、刺されたときの対処法を調べました」

ありす「大きさから言ってオオスズメバチではありません」

それは何となく分かる。

ありす「なので問題ありません。たぶん」

ざっくり。

まあ、もともとヤケになってたから良いんだけど。





お礼にストロベリーチョコパイを貰った。

なーんでこうなるのかなぁ。

もぐもぐ……美味い。

気を取り直して次!

別にロリコン趣味ってわけじゃないが、抵抗されたときを考えると子供、さらに女が良い。

誘拐するかひったくるかそれ以外か……は状況を見て判断しよう。

そんなことを考えながら獲物を物色しているとポニーテールの小柄な女が通り過ぎた。

高校生……中学生か?

小学生に見えなくも……いや、体力一時間くらいしか保たなそうな身体だ。

何か嫌な予感がする。

コイツには手を出さないでおこう。

どうも上手くいかない。

次はコンビニ強盗にしよう。と思ったが武器がない。

何か刃物を買う……金も無い。

かねがね金がねぇ。

はぁ。

…………。

櫻井桃華「あの、大丈夫ですの?」

え?

桃華「気になって少し見ていたのですけど、微動だにされないので……何処か具合でも?」

いや、なんでもないよ。

桃華「そうは見えないから声をかけたんですわ」

……金がなくて困ってるんだ。

桃華「貯金をおろしては?」

おろす金もない。ついでに言うと全財産があと500円くらいしかない。

桃華「まあ……! こんな貧しい方が本当にいるなんて驚きですわ」

うるさいなぁ、君には関係ないだろ。

桃華「なんですの、その言い方! 心配して声をかけてあげたと言うのに」

桃華「ごきげんよう!」

怒って行ってしまった。

こっちだって、あんな典型的なお嬢様がいたなんて驚きだ。

……ん? お嬢様?

ってことは親は金持ちか?

しまった……!!

適当に丸め込んで誘拐すれば高額の身代金が手に入ったかもしれない!

まだ近くにいないか?

どこに行った?

おーい、さっきのお嬢様ー!





桃華「……あら、先程の方どこへ行かれたのかしら」

桃華「せっかく家の使用人になれたかもしれないのに」

桃華「お父様のお許しが無駄になってしまいましたわ」

よく考えたらどんなことでもすると決めたんだから、盗めばいいじゃないか。

というわけでデパートにやってきた。

パパーン!

店長「おめでとうございます! 当店100万人目のお客様です!」

え、俺?

鷹富士茄子「私ですか?」

店長「えー……お二人ということで。恋人でしょうか、それともご夫婦?」

いや、連れじゃない。

茄子「偶然同時になったみたいですねー」

店長「それは失礼いたしました」

店長「しかしそうなると……うーん、景品はお二人で分けていただくということで良いでしょうか」

まあ、別に文句はないけど。もともとタダで貰えたものだし。

茄子「景品ってなんですか?」

店長「当店のレストランで使えるお食事券1万円分です」

茄子「わあ、ありがとうございますー」





食事券貰ったのに万引きするのは、なんかなぁ……。

茄子「あの、すいません」

あれ、さっきの。

茄子「これあげます」

って……さっき貰った食事券。どうして?

茄子「こういうことよくあるんですよ。私、運が良いので」

茄子「だから私のせいで、あなたがもらえる景品が半額になってしまったんです」

それなら逆だろ。俺のせいできみの景品が半額になったんだ。

茄子「ああ、その可能性もありますねー」

茄子「でも誰かと同時なんて初めて。それに私、これから新しいことを始めるんです」

茄子「だから験担ぎと言うか……今までしてないことをしたくなったんです」

茄子「いらないなら捨てちゃいますよー?」

分かった、そこまで言うならもらうよ。

茄子「せっかくなのでこれも。私の強運をおすそ分けしちゃいますー」





お守りをもらった。

……刃物の万引きはやめよう。強盗も。

なんかそういう気が起きない。

遊佐こずえ「……ふわぁ……あなた、だぁれぇー? ……えぇー……かわいいー?」

こずえ「……あいどる? うんいいよー……こずえ、あいどるやるぅー」

お小遣いやお菓子で釣るのはあまりにもテンプレなので、アイドルのスカウトを装ってみたが。

ここまであっさり信用されると心配になってくる。

Prrrr

こずえ「あー、まま……もしもし」

キッズケータイ!? ポケットに入れていたのか!

こずえ「うん……うん。……うん、わかったー……じゃあねー」

こずえ……ちゃん? それ首から下げた方が良いんじゃない? ストラップ付いてるよ。

こずえ「んー……くび、かゆくなるから……いや」

首から下げなさいって言われない?

こずえ「いわれる……。だから、いえのちかくだけ……そうしてるー」

それだけで抑止力になるから下げたほうが良いぞ。

俺の言えたことじゃないけどな。

こずえ「あのねー、まま……かえるのおそくなるって。ぱぱも」

遅くなるってどれくらい?

こずえ「7じぐらい、だって。それまでにあいどる……なれる?」

アイドルはそんなに簡単なものじゃないよ。

こずえ「ふーん……」

たぶん。

一緒に住んでるのはパパとママだけ?

こずえ「そうだよー」

じゃあどちらか帰ってくるまで家に入れないの?

こずえ「かぎもってるから……へいきー」

確実に留守、鍵はこの子が開けてくれる、時間的余裕もある……。

ついでに金目の物盗めるんじゃないか?

ママは宝石とか持ってる?

こずえ「うん、いっぱいある……」

家行っても良い?

こずえ「いいよー。こっち……」





こうしてこずえの家までやってきた。

やば。人生で一番緊張してるかも。

こずえが鍵を開け、家の中に入ると。

荒れた部屋に土足の男がいた。

……は?

こずえ「…………どろぼー?」

チッと舌打ちして男逃げる!

どうする、俺!? なんて考える間もなく、駆け出していた。

正義感というより、逃げたから追っただけだ。





捕まえた泥棒を警察に引き渡したり、帰宅したこずえの両親から感謝されたり。

そんなこんなでアイドルスカウトの件は有耶無耶になった。

俺としてもありがたい。もともと嘘だし。

だが一つはっきりした。

俺には悪事を働く才能(?)が無いんだ。

やはり仕事探すしかないのか……。

ドンッ!

千川ちひろ「あっ、すみません!」

急いでいたのか走って行ってしまった。

ん? 何か落としていったぞ。



入館証 千川ちひろ
346プロダクション



これは……紛失したらやばいやつじゃないのか。

すぐそばのビルだ。誰か入館するのを待ってみよう。

……。

センサーにタッチするだけらしい。

少なくとも正面玄関で警備員が顔を確認したりはないようだ。

つまり今なら簡単に侵入して機密情報を盗むことも……。

……。

…………。

あ、戻ってきた。あたりを探している。

よく気付いたな。

……届けるか。





ちひろ「ほんっとおーーーにありがとうございます!!」

ちひろ「失くしたらクビになるところでした!」

やっぱり。

ちひろ「改めてお礼しますので、ぜひ明日事務所にいらしてください!」

翌日、事務所にて。

ほたる「あなたは!」

ありす「あなたは!」

桃華「あなたは!」

茄子「あなたは!」





1年後。

こずえの大型ライブ出演が決まった。いやー、順風満帆だなぁ。

そういえば初めてこずえに声かけたときは誘拐するつもりだった。

我ながら馬鹿なことを考えていたもんだ。

あっ、あの子すごく可愛い。声かけてみよう。

こんにちは~、きみ小学生?

アイドルに興味ある? そう、歌って踊るアイドル。

可愛いからきっと人気出るよ。

よかったらもう少し詳しく話を……あっ、お父様ですか?

えっ、警察?

いや、違うんです。待ってください、やましいことは何も……!

終わり
最後の子は残念ながらアイドルの才能はないようです

このSSまとめへのコメント

このSSまとめにはまだコメントがありません

名前:
コメント:


未完結のSSにコメントをする時は、まだSSの更新がある可能性を考慮してコメントしてください

ScrollBottom