カブトムシ「うるせーな、ナメクジの分際で!」
ナメクジ「なぜ、そんなくだらん砂糖水に固執する?」
カブトムシ「樹液を分けてやれば、みんながオレ様に感謝する! 敬うようになる! 色んな場面で融通が利くのよ!」
ナメクジ「マウンティングのためか……ますますもってくだらん。私の新事業の方が遥かに面白い」
カブトムシ「ナメクジ如きに何ができるんだよ」
ナメクジ「私の友人にサザエがいてね。今も文通をしたりするのだが、彼から提案されたのだよ」
ナメクジ「森の樹液しか知らない昆虫に、海水の塩辛さを教えたいと……」
カブトムシ「海水だってぇ? なんだそりゃ」
ナメクジ「フッ……やはり食いついたか……。キミには昆虫達に集まってもらうよう、呼びかけてほしい。営業のプロフェッショナル・カブトムシ君……」
カブトムシ「面倒くせぇが、コイツに賭けてみっか……」
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ナメクジ「ぐぎゃあああああああッ!!!!」
ナメクジ「い、い、いだいいいいいぎいいいいいッ!!!」
ナメクジ「あッハッ! ゲェエエェ……アァアアアアァァァアア!!!! バババッ!!!」
サザエ「あれ~おかしいなぁ……なんで……」
カブトムシ「結局こうなりやがった……だからナメクジは嫌いなんだ。身の丈に合わないことを考えなしに始めやがる」
カブトムシ「それも、これだけの人を巻き込んで!」
ナメクジ「ヒューッ……ヒューッ……」
ゲジゲジ「グロッ! 身体溶けてるし……」
ダンゴムシ「この殿方は、一体何がしたかったのですか?」
クモ「塩水の販売促進活動らしいけど……これじゃ塩水なんか、到底売れるはずないの……」
ウデムシ「ボクらは大丈夫でも、マイナスイメージついちゃったからね。立派なボツ案だよ。やっぱキミら昆虫には、樹液が合ってる」
カブトムシ「そうか……やっぱそうだよな!」
ナメクジ「う、うぐぅ……」
孔子「……というわけで、あなたはナメクジのようになってはいけませんよ。それをしたらどうなるか、結果をよく考えてから行動しなさい。分かりましたね?」
青年「なるほど……発言には責任が伴うのですね」
子貢「以上で、孔子先生の体験授業を終了致します」
青年「徳の高い授業でした……しかし未熟者の私には理解できませんでした。失礼します……」
孔子「待ちなさい、甘露屋」
青年「は、はい」
孔子「あなたは、一生砂糖水を売って過ごすつもりですか?」
青年「え……」
孔子「私と一緒に、世界を変えてみないか?」
鈍色の曇天が青く晴れ渡り、一陣の涼風が吹き抜けた。
青年「先生……!」
彼の名は孟軻。後に孟子として性善説を唱える男である!
完!
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