穂乃果「季節」 (74)
ーーーーー春。
出会いの季節でもあり、別れの季節でもある。
世界の人々は桜色に染まっていく中、1人の少女が黒に堕ちていく。
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2018年4月
「………桜…」
ベッドで横たわる私の身体の上に一枚の花びらが舞う。
どうやら、春が来てるみたいだ。
「…穂乃果。ご飯ここに置いとくね。」
お母さんが私の部屋の前で喋っている。
「うん…ありがとう」
高校を卒業して3年目、私は部屋から出れずにいた。
所謂、引きこもりって奴だ。
「あははは!まてー!」
外から煩いほどに元気な子供の声が聞こえてくる。
今の私には、本当に少し煩さ過ぎるくらい。
「…最後に外に出たのいつだったっけな。」
不意に言葉を漏らしてしまう。
最後に外に出たのは確か、3ヶ月前にことりちゃんと会った時だった…ような気がする。
この冬の間はトイレ以外で一回も部屋から出なかった。
ただひたすらに窓から見える雪を眺めていた。
ピロン♪
…ケータイの通知がなる。誰からのメッセージだろう。
ことり
【穂乃果ちゃん。元気かな、今から会いに行ってもいいかな】
ことりちゃん?急にどうしたんだろう。
穂乃果
【ごめん、今は誰にも会いたくないんだ。】
…送信と。
それにしても、急に会いに行くなんて、どうしたんだろう本当に。
少し怖い。
ピロン♪
ことり
【そっか。また気が向いたら教えてね。いつでも行くから!】
…なんでこんな私を心配してくれるんだろう。
私は心配なんてされちゃいけない人間。
独りでこのまま生きて、死んでいくだけの人間なのに。
ーーー私はそれ以上の返信をしなかった。
「あんたが悪いのよ」
…やめて
「そうだよ、穂乃果さえ居なければ私達はずっと幸せに暮らしてたのに!」
やめてやめて
「どうやって責任取ってくれるん?」
やめてやめてやめて!
「なあ!穂乃果ちゃん?!」
やめて!!!!!!!!!!!!!!
ーーーーーーーーー
「…はぁ…はぁ…」
どうやらいつのまにか眠ってしまってたみたいだ。
明るかった外は静寂に満ちて暗くなっていた。
窓を開けていたせいか、少しお腹が痛い。
…それにしても、嫌な夢を見てしまった。
いや、夢というよりは、本当にあの人達が私に対して感じてる本音なのかもしれない。
考えがネガテイブになってしまい、余計に腹痛を促進させる。
「トイレ行こうかな…」
ガチャ
「…っ」
部屋の前には湯気が立ち込めているご飯と味噌汁と、鮭の塩焼きが置いてあった。
きっとお母さんが置いてくれたんだ。
そういえばお昼ご飯も食べてなかった。
「お母さん…ごめんね」
こんな私のために毎食作ってくれるお母さんを思うと自然と涙が溢れてくる。
トイレをしに一階へ降りると、玄関に見覚えのない靴が綺麗に揃えられて置いてあった。
「…誰が来てるのかな」
居間から話し声が聞こえてくる。
「ーーーー」
なんだろう、よく聴こえない。
少しだけ居間に近付くとお母さんの姿が見えた。
「本当にわざわざ来てくれてありがとうね」
…わざわざ来てくれてありがとう?
相手は誰だろう。
「いえ、でもやっぱり穂乃果が元気なら良かったです」
…この声ってまさか…!
「でも貴女が来てくれるなんて、きっと穂乃果も喜ぶわ」
…やばいやばいやばいやばいやばい!
どうして絵里ちゃんがここに?!
バタンッ
「ーーーやばっ」
足元に置いてある新聞紙の山を焦って蹴ってしまった。
「…誰かいるのー?」
やばい、お母さんにバレた!
どうしようどうしようどうしよう!
ガチャ
「…穂乃果!!!」
無慈悲にもお母さんに見つかってしまった。
実はお母さんとまともに会うのもこれが久しぶりだった。
今まで家族みんなが寝た深夜にトイレやお風呂とか入ってたから、こうしてお母さんに会うのも3ヶ月ぶりだ。
「あ、あはは…ひ、久しぶり、おかあ、さん…」
どうしようドア越しには喋れてたのに顔を見てだとまともに喋れない。
「本当に…!元気そうで本当に良かった…っ」
同じ家に住んでいるというのに。
なんておかしな会話なんだろうと自分でツッコミたくなる。
「そうだ、今ね、絢瀬さんが来てるのよ。貴女に会いたいって」
「そ、そうなんだ…」
「折角だから、会ってあげたらどう?」
絶対に無理。私は絵里ちゃんに会う資格なんて無い。
「ごめん、会いたくない…かな、」
お母さんは「そう…」と哀しげに返事をしていた。
のだけど、お母さんの後ろから
「久しぶりね、穂乃果」
絵里ちゃんが居間から出て来てしまった。
「………」
私は返事ができない。
「また会えて嬉しいわ。【元気そう】でなによりね」
「…!」
返事をしない私に絵里ちゃんは話を続ける。
「みんな会えなくて心配してるわよ。少しづつでいいからみんなにも連絡してね」
…そんな訳がない。
皆んなが私なんかを心配してくれる訳がない。
こんな事を言っておきながら、きっと私を嵌めるつもりなんだろう。
「…じゃあ今日は私はこれで帰ります。お母さん。急にお邪魔して失礼しました」
「あ、いえいえ!またよかったらいらっしゃいね!」
…良かった。帰ってくれる。
「あ、そうだ穂乃果」
…なにかまだあるの。出来れば早く帰って欲しいのだけど…
「にこも、穂乃果の事待ってるわよ」
…やめて。
その名前を出さないで。
また思い出してしまう。
「それじゃ、これで失礼します。」
ガチャ
絵里ちゃんは何が目的で来たんだろう。
きっと、きっと私に復讐をしに来たんだ!
あんなことに、なったから
私があんなことをしてしまったから!
絵里ちゃんの恋人のにこちゃんに!
あんな風にしてしまったから!
2017年 4月
私は大学2年生に進級し、それなりに楽しく生活していた。
「おーい!穂乃果ちゃーん!」
向こうからことりちゃんが走りながらやってくる。
「もー、遅いよ~」
私は笑いながら彼女と話す。
「あはは、ごめんごめん!前の講義長引いちゃったー」
私はことりちゃんと同じ大学に通っている。
彼女は大学に入ると綺麗で長く透き通っていたロングヘアーを一新し、可愛らしいショートボブにしていた。
それでも可愛いことには変わらないのだけれど。
「それにしても、一年ぶりかぁ。海未ちゃん元気かな~」
「うんっ!きっと元気だよ!今日の飲み会楽しみだね♪」
今日は飲み会だ。
私とことりちゃんと海未ちゃんの3人。
実は高校を出て以来3人が揃うのは初めてだ。
「海未ちゃん、きっともっと綺麗になってるだろうなぁ」
ことりちゃんが空を見上げながら言葉を漏らす。
「うん、なってるに決まってるよ!」
私も期待しつつ、集合場所の音乃木坂高校前に向かった。
「あ、あれじゃないかな、海未ちゃん」
ことりちゃんが指差した先には確かに見覚えのあるストレートの長い髪の綺麗な女性が立っていた。
桜の花びらが舞っていて、ただ立っているというだけたのにすごく画になっていた。
「おーい!海未ちゃーん!」
私が遠くから大声で呼ぶと、漸くこちらに気付き手を振り返してくる。
私達は走って海未ちゃんのところへ向かう。
「久しぶりですね、穂乃果。ことり。」
ああ、久しぶりに聞く海未ちゃんの声。
凛としていて、ハリのあるカッコいい声。
「…やっぱり、カッコいいなぁ」
「…穂乃果ちゃん?」
ことりちゃんと海未ちゃんが私の顔を覗き込むように見てくる。
「あっ、やばっ、なんでもない!今の無し!」
思わず口に出してしまっていたのかもしれない。
「ふふ、相変わらず変な穂乃果ですね、それじゃあ行きましょうか!」
「もー、相変わらずってなんなのさー!」
「あはは!」
こんなやりとりも懐かしく感じながらお店へと向かう。
ちょっと、明日も仕事なんで寝ます。
読みにくかったりしたら言ってください!
多分長くなるので、改善して行きます。
なんて青春してるんだろうこの人達は…
「それで、希ちゃんは2人が付き合ってること知ってるの?」
「勿論知ってるわ、ただまぁ、少し揉めたりはしたけどね」
そういえばことりちゃんもそんな事言ってたような気がした。
もしかして私とことりちゃんと海未ちゃんも揉めたり…それはないか。
「でも今は希も私達のことを応援してくれてるわ。そんな事より」
そんな事より…なんだろう。
「穂乃果はことりと海未、どちらと付き合っているのかしら」
きゅ、急に私の話?
「な、なんで海未ちゃんとことりちゃんなのさー!あ、あはは!」
私は下手な口調で質問を質問で返す。
「あら、貴方は絶対その2人のどちらかと付き合うものだと思ってたのだけれど…」
まあ、実際ことりちゃんと付き合ってるし…
「もー、それでもし他の人と付き合ってたりしたらどーするの!」
「そーなの?それは申し訳ない事言ったわね」
「いや…ことりちゃんと付き合ってるけどさ…」
私はしょうがなくカミングアウトした。
「ふーん、そうなのね」
あれ、意外に微妙な反応。
予想通りだったのかな。
「なんで、『海未』とは付き合わなかったの?」
「え?それってどういう…」
「そのままの意味」
「ごめん、意味がよくわからないんだけど…」
「言い方を変えるわね、何故「ことり」と付き合ったの?」
…
「それは…同じ大学で…ずっと一緒にいる内に…」
…あれ?
「へえ、じゃあ例えば同じ大学にいるのがことりじゃなく、海未だったら付き合ってたの?」
「そ…れは」
…なんだろうこの気持ち
「高校まで3人でずっと一緒にいたはずなのに、大学入ってからの一年でことりだけ好きになっちゃった訳?」
「…何が言いたいの?私がことりちゃん好きなのは本当の気持ちじゃ無いとか言いたいの?」
「そんなんじゃないわ。きっと貴方は本気でことりが好きなんだと思うわ。でも同様に海未の事も好きなんじゃないかしら」
頭を直接叩かれたような衝撃を受けた。
いや、きっと自分でもどこか分かっていたのだとおもう。
それでも、幼馴染2人を好きになってしまうなんて許されないと、少しだけ離れていた海未ちゃんへの気持ちを心の奥底にしまっていたのかもしれない。
「まあ、あくまでこれは高校まで見てきた私個人の観点だけどね。違ったらごめんなさい」
「いやっ…きっと、違く、ない、とおもう…」
ことりちゃんにだけ向けてきた感情を一気に海未ちゃんにも向けてしまいそうになる。
「私…どうすればいいのかな」
「まあそんな暗くならないでね、ほら、お酒でも飲みましょうとりあえず!」
人の気持ちを乱しておいてなんでそんなこと言えるんだろう。
店のドアが勢いよく開く。にこちゃんのお帰りだ。
「ただいま。外にいたら少し酔い冷めたわ。で、どこまで話した訳?」
さっきまでとは別人のように落ち着いてる。
「にこが、もう甘えてきてしょうがないのよねー、って話をしてたの。ね、穂乃果」
「えっ?!あ!うん、もー、にこちゃん可愛いよね~」
「は、はぁ?!甘えてなんかいないじゃない!寧ろ甘えてきてるのは絵里の方じゃ!」
「あら、そうだったかしら。てへぺろ」
「てっ、また古いわねあんたはー!」
「あはは」
急に始まる夫婦漫才…まあ面白いからいいのだけど。
「あ、すいませーん、ウーロン茶ください」
「あれ、にこちゃんお酒もう飲まないの?」
「流石にもう飲まないわよ。明日休みとはいえもうアルコールはたりてるわ。」
「そうなんだ、じゃあ私は生一つください!絵里ちゃんは?」
「うーん、私も生でいいかしら」
店員さんに生2つと伝えるとにこちゃんが口を開いた。
「穂乃果…そんなに飲んで大丈夫なの?顔めっちゃ赤いわよ」
えっ、にこちゃんに言われるほど?
「そうかなあ?」
「まあ、明日土曜日だし、学校ないとおもうからいいと思うけど。それより」
…またそれよりだ。この2人は逆説が好きなのか。
「それより、なに?」
「海未とことりって付き合ってるの?」
「うええ?!どーして?!」
「だって、さっき仲よさそうに外へでてったじゃない。あれはねー、只の幼馴染の関係じゃないわね!」
にこちゃんが得意げに推理している。
…そっか、にこちゃんからはそういう風に見えてたんだ。
「違うわよにこ。あの2人が付き合ってるんじゃなくてね、ことりと穂乃果が付き合ってるのよ」
「えっ?!そーなの?!」
「う、うん…まあ、あはは」
…確かに側から見ればあの2人が付き合ってる方がお似合いなのかもしれない。
「ま、まあーでもあれよね!ことりも穂乃果と付き合ってるのに少し海未とベタベタしすぎだわね!」
「にこちゃん…励ましてくれるのは嬉しいけど語尾変になってるよ」
「い、いいじゃないそんなのどうでも!」
「でも、確かにことりちゃんいちゃつきすぎだよね…ちょっと嫉妬しちゃうなぁ」
「…」
あっ、やば、この雰囲気まずいですよ!
「あ、あはは!でも海未ちゃんとも仲良くしてほしいし、穂乃果的には全然いいんだけどね!」
口ではそう言ったものの、考えきれない程複雑な感情が私の心を痛めつけていた。
「まあでも、なにがあるか知らないけど、今はことりと付き合ってるんだから、ことりの事を信じてあげて、精一杯愛してあげるのが、筋じゃない?」
「え、絵里ちゃん。なんだか大人っぽいアドバイスだね!」
見た目もすごい大人だし、対してにこちゃんは…言うのはやめておこう。
「ちょっと!あんた今なんか失礼なこと考えてないでしょうね?!」
「ぎくっ」
「ぎくってなによ!」
「あはは、ごめんにこちゃん!あはは!お腹痛い!」
「まあでも、絵里ちゃんの言う通りだね。なんか気持ちが楽になった気分。ありがとう!」
「そんな大したことしてないわよ。それじゃあそろそろ行きましょうか」
「そうね。もう3時だし。穂乃果は家この辺なの?」
「穂乃果は実家から通ってるよ、だから歩いて帰ろうかなって」
「実家って…バカ遠いじゃないの!私達の家くる?」
「え、いいの?!」
って、え、2人は一緒に暮らしてるの?
今日はなんだか色々驚くことが沢山ありますなぁ。
「別にいいわよ、ね、にこ」
「私も構わないわ」
「ありがとー!じゃあお呼ばれしちゃおっかな!でも2人が一緒に住んでるなんてびっくりだな」
あれ?でもさっき『2人の都合が偶々合ったから飲んでる』って言ってたけど…
「まあでも、私もにこも色々あって家にいることは殆ど無いんだけどね、今日は偶然よ本当に」
そういうことか。納得。…納得?
「じゃあ行きましょう。お会計は私とにこでするから先外出てて穂乃果」
「えっ、悪いよ、私も出す!」
「いいのよ、引き止めた私達が悪いんだからこれくらい出させて頂戴。それにいろんな話できたし」
「ええー…でも…」
「ほら!絵里が出してくれるって言ってるんだから!先輩に甘えなさいよもう!」
「うん…ありがと!じゃあそうするね!外で待ってる!」
「…にこ?貴方も出すのよ…?」
「ひ、ひい!すみません!」
あはは、絵里ちゃんはやっぱり、怒ると怖いね。
お言葉に甘えて私は外で待ってるとしますか。
ガラガラ
うっ…さむ…四月って言ってもやっぱ夜中は寒いなぁ…
星はーーーー………見えるわけないか。
はあーさむい。
こんな夜なのに車いっぱい走ってる…すごいなぁ…
ってか眠くなってきた……
ガラガラ
「お待たせ穂乃果、行きましょうかって、凄く眠そうね」
ん…あ、絵里ちゃんか。
「うん…大丈夫…眠くないよ…」
「そう…家着いたらすぐ布団敷いて上げるからもう少しだけ我慢してね」
「流石絵里ちゃん…頼りになる…」
「じゃあ、にこ、穂乃果行きましょうか」
ああ…眠いなぁ…。
どんどん思考回路が停止していくのがわかる。
お酒ちょっと飲みすぎたかなぁ。
「穂乃果、歩ける?おんぶする?ってもまあ、私じゃ無理だけど。」
「あはは…大学生にもなっておんぶは恥ずかしいよにこちゃん…」
おんぶかぁ…懐かしいなぁ…
「あれ、穂乃果」
「なあに?絵里ちゃん」
「あそこの反対側の道路の公園にあるのって、ことりと海未…じゃない?」
…え?ことりちゃんと、海未ちゃん…?
「どこ…?」
「ほら、あそこよ」
…暗くて見えないが目をじーっとこらす。
…確かに2人の人影が見える…けど、暗くてよく見えない。
車道を走っている車のライトを頼りに判別するしかないけど…
改めて、目をこらす。
……!
本当にことりちゃんと海未ちゃん…だ!
こんな所でなにをやっているの…?
海未ちゃんは電車で帰ったんじゃないの?
なんで2人でベンチで座っているの?
たっ
たったったっ…
「あの馬鹿ッーーーー
ブオオオオオオオオオオオオオオオッッッ
ーーーーーーーーーーーーー
ーーーーーーーーーーー
ーーーーーーーーー
目が覚めたら私は見知らぬ部屋のベッドに横たわっていた。
身体が重い…横に目を流すとお父さんとお母さんと雪穂が泣きながら座っていた。
「穂乃果…!穂乃果ッ!!!よかった!」
お母さん…?どうしてそんなに泣いているの?
「お姉ちゃん!!!もう!!心配したんだからね!!!!」
「雪穂…どうしたの?」
「…覚えてないの?」
「…ごめんなんにも」
「…お姉ちゃんがね、急に道に飛び出したの。それで車に轢かれそうになった所をμ'sのにこさんがお姉ちゃんを、庇ったんだ」
頭がいたい。
思い出ししまう。
あの夜見たものすべてを。
「にこ…ちゃんは」
「…幸い命は取り止めたけど、意識が戻ってないって…」
「そ、そんな…」
私のせい…?
いや、私のせいだ。
私が道路に飛び出してすらいなかったら!!!
仕事行ってくるンゴ
……なにも考えられない。
ガラガラ
「雪穂ちゃん!穂乃果の意識が戻って本当?!」
「………みんな」
病室…の玄関を勢いよく開けた先にはにこちゃんを除くμ'sの7人が居た。
「穂乃果ちゃん…っよかった…っ、よかったよ本当に…」
…ことりちゃん、ありがとう。
「貴方って人は…なんでいつもみんなに心配かけるのですか!でも…無事でよかったです…っ」
海未ちゃん…いつもごめんね。
花陽ちゃんも凛ちゃんも真姫ちゃんも希ちゃんもごめんね。心配かけて。
「………絵里ちゃん…あの…」
「お父様、お母様、雪穂ちゃん。少し私達だけで話しさせた貰っても宜しいですか?」
「…わかったわ。じゃ、お父さん、雪穂。行きましょう」
ガラガラ
「…えりち、どうしたん?急に」
「…穂乃果」
きっと私を憎んでいる。多分それはもう怖いほどに。
そう、私はこの人の恋人を酷い目に遭わせた。
みんなから心配される資格なんてない。
「…ごめん、やっぱり出てって…」
「穂乃果、聞いて」
「申し訳ないけど、今はみんなの顔をまともに見れない」
何言ってるんだ高坂穂乃果、折角みんなが来てくれたのに。
「穂乃果、私はね」
「早く出てってよ!!!!!本当は誰も心配なんてしてないくせに!!!」
やめて、何を言ってるの私!皆んなはそんなこと思うような人じゃない!
「……絵里。穂乃果も今は不安定です。1人にさせてあげましょう」
「…わかったわ。」
…絵里ちゃんのあの目……
「じゃあ、穂乃果。また日を改めて来ます。おやすみなさい」
ガラガラ
………
一週間後
ーーーー
「…雨」
外は雨が降って居た。
私は退院し、部屋で安静にしていた。
少し気持ち的にも落ち着き、今日は海未ちゃんとことりちゃんと絵里ちゃんが真姫ちゃんが面会というか、話をしに来る予定になっている。
「穂乃果、皆さんがいらっしゃったわよ」
「…わかった」
階段を降り、みんなが待っている玄関へと足を運ぶ。
「…久しぶり、みんな…この前は怒鳴ってごめんね」
私がずっと心に留めていた謝罪の気持ちを皆んなはスッと受け止めてくれた。
「いえ、私達も少し時間を置くべきでした。こちらこそすみません」
「そ、そんな!顔あげてよ海未ちゃん!心配して来てくれたって事分かってるからちゃんと」
…うん。わかっている。
「まあここで話すのもあれだし、早速部屋上がってよ、お菓子とかお茶持ってくからさ」
そう私が伝えると「お邪魔します」と一礼してから足を揃えて私の部屋へと向かって行った。
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