池袋晶葉「逆悪の華」 (29)



「さようなら」


高峯のあは抑揚なく別れの言葉を告げ、物言わぬ冷たい銃口を突き付けた


 

SSWiki : http://ss.vip2ch.com/jmp/1525522337



そして、まるで吸い終わった煙草を灰皿に捨てるかのような気軽さで、一片の未練も躊躇いもなく引き金を引いた

響き渡る銃声


「え?あ・・・なん・・・で」


撃たれた?なぜ?どうして?

状況、理由、結果

それらを何一つ理解出来ないまま、荒木比奈は鉛玉に貫かれて息絶えた


「比奈!・・・しっかりしろ!比奈!!」


池袋晶葉は崩れ落ちた彼女の体に駆け寄る

即座に記憶から救命措置の知識を呼び出したが、荒木の左胸に穿たれた赤い穴を目の当たりにし

それらは全て徒労に終わるであろうことを悟り、諦めたように視線を落とした


「なせだ?なぜこんなことを・・・!?」


その答えを、池袋は知っていた

それでも問わずにはいられなかった

高峯のあが、共にアイドルの頂を目指した仲間が

こんなことをするとは信じたくなかったから


「なぜ・・・?それは私の台詞のはずよ・・・」


高峯は人を撃った直後であるにも関わらず、なおも抑揚のない口調を崩さずに続けた



「なぜ・・・みくを見捨てたの?」



高峯のかけがえのない仲間である、前川みく

否、仲間『だった』前川みく

そう、彼女はもう・・・


 



「確かに・・・みくを見捨てると判断したのは・・・私たちだ」


徐々に体温が失われてゆく荒木の手を握りしめたまま、池袋は答える


「だが、君だって理解しているはずだ。あの時彼女を切り捨てなければ、もっと多くの人間の命が犠牲になっていた」

「ええ、わかっているわ」

「それに・・・みくがこんなことを・・・君に復讐を望む人間ではないことも、知っているはずだ」

「知っているわ・・・誰よりも、ね」

「では・・・」

「陳腐な説得ね。もう言葉では、私は止められない」

「わかった・・・最期の頼みだ」


池袋は真っ直ぐに高峯を見据えて両手を上げた


「君の気が済むなら、この命は差し出そう。だから・・・私で終わりにしてくれないか?」

「それは出来ない相談ね。すべての人間に報いを受けさせるまで、終わらない」

「そうか・・・残念だよ」

「さようなら」


二発目の銃声のあと、池袋は荒木に覆い被さるように倒れ、動かなくなった

同時に扉が蹴破られ、一人の女が飛び込んできた


「晶葉殿!比奈殿!・・・くそっ、間に合わなかったか」

 



未だ硝煙を吐く拳銃を握りしめたまま高峯はその女に視線を向ける


「高峯殿・・・まだこんなことを続けるつもりなのですか?」


部屋に飛び込んできた女・・・大和亜季は腰の後ろのホルスターに納められた拳銃に手を伸ばしながらそう言った


「亜季・・・貴女はこの件には無関係。それに戦い方を教えてくれたことには感謝している」

「でも・・・邪魔をするというのなら容赦はしない」

「そうですか・・・自分は貴女の師として、貴女を止める義務があります」


大和は拳銃のグリップを握り、安全装置を解除した


「最後の警告です、銃を納めてください。自分の腕前は、ご存知でしょう?」



「自分は貴女より速い」



「知っているわ・・・でも、それは止まる理由にはならない」



勝負は一瞬

一分の無駄もないクイックドロウ

最短で照準

人差し指3センチの動作

走る撃鉄

炸裂する火薬

重なる二つの銃声


左胸に鮮血の華を咲かせて倒れたのは



高峯のあだった



「高峯殿・・・」


大和はそれきり口をつぐんだ

かけるべき言葉が何一つ思い浮かばなかったから

この戦いの勝者に栄光はない

その胸に去来するのは、ただ虚無だけであった


「悪い・・・わね」


高峯の血脈が止まり意識が消失するまでの数秒

神が与えた僅かな猶予に、彼女は呟く


「仇・・・全部・・・討てなか・・・」



最期に、愛したあの子の名を・・・



 






のあ「ぴにゃこら太・・・」ガクッ


双葉杏「みくの仇討ちじゃないの!!?」







鷺沢文香「力なく横たわる高峯の手から拳銃が滑り落ちる。こうして、彼女の復讐は幕を閉じた」

杏「ってか文香のハードボイルドな語りって違和感ハンパないな!」

文香「やはり・・・似合いませんか?」

比奈「杏ちゃん、おはよーっス」ムクッ

杏「あ、おはよー・・・ゾンビ?」

晶葉「フフッ、まさかのぴにゃこら太でどんでん返しとはな」ムクッ

杏「ホントにまさかだよ」

杏「昼寝から目を覚ましたらなんかシリアスな雰囲気だったから黙って見てたけどさ」

杏「最後の最後で思わず突っ込んじゃったよ」

杏「で、結局この茶番はなに?」


亜季晶葉のあ比奈文香『復讐ごっこ・・・?』


杏「なんでやってる本人たちが疑問形なのさ!?」

亜季「まあその場のノリとアドリブで始めたようなものでありますから」

比奈「アタシは流れ弾に巻き込まれたた感じなんスけどね」

杏「ふーん・・・どーせアレでしょ?役作りの一環的なヤツ」

晶葉「なんだ、わかっているじゃないか」

杏「そりゃー芸能プロダクションでいいトシした連中がごっこ遊びする理由なんてそれくらいしか思い浮かばないよ」


 


今更ですがモバマスSSです。
多分に私見が入っているので異論はあるかと思います。
あとプロデューサーは複数いる設定です。



杏「それにしてもすごいワケわかんない組み合わせの面子だね」

比奈「確かにパッと見、共通点が見当たらないっスもんね」

杏「一体どういう経緯で集まったの?」

のあ「先日、私のドラマ出演が決まったのだけれど」

杏「あ、そうなんだ。おめでとー」

晶葉「そのドラマが復讐をテーマにしたなかなかハードな内容でな」

のあ「役作りとして、小道具の銃をいじっていたら・・・」

晶葉「バラした銃を元に戻せなくなってしまい私を頼ってきたというわけだ」

晶葉「ただ私も銃には詳しくなくてな、時間をかければ元に戻せなくもないだろうが万が一壊してしまってはいけないと思い・・・」

亜季「専門家である自分に援軍の要請が来たわけです!」

亜季「ついでに銃の扱い方を講義しつつドラマについての話をしていますと、丁度そこにやって来た文香殿が・・・」

文香「ドラマの原作となったピカレスク小説を読んだことがあったので、役作りのお手伝いをさせていただくことに・・・」

比奈「で、なんだかんだで一回演じてみようって話になって、たまたま最初からここにいたアタシまで巻き込まれた・・・ってところっスね」

杏「へぇ~・・・相変わらずこの事務所は人材が豊富だね」

比奈「皆の力を結集したら芸能関係以外のビジネスも出来そうな気がするっスね」

亜季「いや~それにしても高峯殿のドラマ出演、羨ましいですな~」

亜季「自分にもそういうクールに銃を使う仕事、回ってきませんかね」

杏「そこは担当プロデューサーの腕次第だね」

晶葉「ふむ・・・拳銃とはこんな構造なのか・・・」ガチャガチャ

比奈「あ、その銃、銀色のスマートなデザインでのあさんにスゴい似合うっスよね」

亜季「おお!良いところに目を着けましたな!」

亜季「自分もその銃は高峯殿にぴったりなチョイスだと思います!」

 



文香「亜季さんの太鼓判なら本当にそうなのでしょうね」

文香「小説で何度か銃についての描写を読んだことがありますが・・・実物を見るとやはり活字では得られない迫力を感じますね」

文香「少し・・・恐ろしいです」

亜季「実物と言ってもモデルガンなので弾は出ませんから大丈夫です!」

文香「そうですか、安心しました」

比奈「のあさんってこの銃以外にも色々似合いそうじゃないっスか?」

杏「あ~確かに。クラシックなのからSFっぽいのまでイケそうだね」

のあ「そう・・・かしら?」

亜季「クラシックなのと言えば、例えば西部劇に登場する古いリボルバー拳銃あたりですかな?」

晶葉「ふむ、衣装次第では持っていても違和感はないな」

のあ「・・・」クルクル!スチャ!

亜季「古いのであれば、あとはワルサーやモーゼルなども捨てがたい・・・」

比奈「ワルサーってアレっスよね、ルパン三世の」

亜季「そう!ワルサーと言えばルパン三世の愛銃P38が有名ですな!」

杏「そっち系の古い銃って蘭子が好きそうな気がするね」

比奈「あぁ~わかるっス、ソレ」

晶葉「特に薔薇などの彫刻が施された高級感があるものを好みそうなイメージがあるな」

のあ「・・・」ウンウン

 



亜季「ちなみにワルサーは他にも色々な銃を生産していまして」

亜季「かの世界的に有名なスパイ、007ことジェームズ・ボンドが使用したPPKという銃もワルサー社製なのです!」

杏「ほぇーそうなんだ」

比奈「スパイが有名ってのもどうなんスかね・・・」

杏「あ、そういやウチにもスパイいるよね」

亜季「マキノ殿ですか!ワルサーPPKはコンパクトかつスマートな銃なのできっと彼女にも似合うでしょうな~」

比奈「じゃあ続きまして、SFっぽい銃ってどんなのがあるんスかね?」

亜季「ふむ・・・ポリマーフレームの銃などが該当しそうですね」

杏「ぽりまー?」

晶葉「樹脂の一種・・・まあ要するにプラスチックの仲間だな」

亜季「お、ご存知でしたか。さすが晶葉殿です!」

晶葉「うむ、人工筋肉の材料としても注目されているのでロボットに使えないかと調べたことがあるのだ」

杏「プラスチック・・・ってそれ強度は大丈夫なの?」

亜季「あ、もちろん負荷がかかる部分はちゃんと金属製なので問題ありません!」

亜季「グリップやフレーム部分のみがポリマー製なのです」

文香「あの・・・強度に問題はないのだとしても、ポリマーを使う利点はあるのでしょうか?」

亜季「良い質問です!」

亜季「まず金属に比べてコストパフォーマンスが良いという点が挙げられますね」

亜季「材料としての原価はもちろん、成型も容易なので製造コストも低く抑えられます」

亜季「次に温度変化による影響もありますね」

晶葉「ああ、なるほど。熱容量の問題か」

亜季「その通りです!金属は熱容量が高いので一度熱を持ってしまうと中々
冷めないのです」

亜季「ですから、例えば砂漠のような高温の環境で銃を撃とうと思ったら・・・」

比奈「熱くて銃が握れない、と」

亜季「そういう問題が発生することもあるわけです」

亜季「ポリマーならばそこまで加熱することはないので安心して銃を握れます!」

 



亜季「3つ目は、成型が容易なのでデザインの自由度が高いという点ですね」

亜季「その利点を活かして、ポリマーフレームの銃は従来の物とは違った独特の形状をしているものが多いんですよ」

杏「その独特さがSFっぽいてことね」

亜季「はい。良く言えば近未来的・・・悪く言えばオモチャっぽいとも捉えられます・・・」

比奈「オモチャ?そんなの売れるんスか?」

亜季「ポリマーフレームの黎明期は、ハッキリ言って業績は奮わなかったようです」

亜季「杏殿が指摘したように強度を不安視する声も多かったようですしね」

亜季「しかし!実用性が証明された現在では警察や法執行機関向けに一大市場を築いています!」

晶葉「素材一つで市場を動かす、か・・・その発想力は見習いたいものだな」

晶葉「そうだ、近未来的な銃と言えば・・・」

晶葉「私は肘から先がパカッと開いて中から銃が飛び出してくるギミックが好きだな」

比奈「それもう銃っていうかサイボーグじゃないっスかw」

のあ「・・・」スッ キュポッ!

杏「コラそこ!サインペンで腕に継ぎ目を書こうとしないの!」

のあ「ダメかしら・・・?」

文香「体質によっては肌が荒れてしまう可能性もありますので、控えたほうがよろしいかと・・・」

のあ「そう・・・」

亜季「あっはっはっ!高峯殿って意外とお茶目な方なんですね」

のあ「・・・」

 



杏「そういえば杏、この事務所は人材豊富って言ったけどさ」

杏「さすがに銃が似合う人はそんなにいないよね」

比奈「まあそこはアイドル事務所っスから・・・」

比奈「ガチの銃よりは、水鉄砲で遊んだり魔法少女のステッキで戦うのが似合う子のほうが多いっスよね」

杏「あとお空に出張したメンバーとかファンタジー系の役柄やった人は剣と魔法のイメージが定着しちゃってるな~」

晶葉「ふむ、のあの他に似合う人と言えば・・・大人組か?」

比奈「大人組・・・誰とは言いませんが、酒癖とノリが良すぎるところを考えると安易に持たせちゃいけない人はいますが・・・」

杏「あ、真奈美さんって確かアイドルになる前は海外にいたんだよね?普通に本物撃った経験ありそう」

比奈「キリッとしててカッコいいんで銃を構えるのもサマになりそうっスね」

亜季「あの方はしれっとSWATなどのスペシャルフォースに混じってても違和感ないですな~」

比奈「亜季ちゃん的には『炎陣』のメンバーはどうなんスか?」

亜季「え~っと・・・自分的にはですね、似合うとは思うのでありますが・・・」

亜季「しかしながら・・・拓海殿は古き良きツッパリ魂をお持ちなので・・・」



拓海『ケンカの基本はステゴロのタイマン!飛び道具は邪道だッ!!』



亜季「と、申されまして・・・」

杏「うわ~メッチャ言いそう・・・」

比奈「昭和のヤンキー漫画の世界っスね」

亜季「続いて夏樹殿と涼殿は・・・」



夏樹&涼『ロックンローラーは歌とギターが武器なのさ!銃は必要ないぜ!!』



亜季「・・・という感じで」

杏「イケメン過ぎる・・・」

比奈「こっちはマクロスでスか・・・」

 



亜季「里奈殿は言わずもがな・・・と思ったので聞きませんでした」

比奈「ギャル系の子は武骨な銃は興味ないでしょうからね~」

杏「でもさ、銃を渡したら渡したで『可愛くしちゃうぽよ~☆』とか言ってデコり始めそうじゃない?」

比奈「いやデコ銃って・・・」

亜季「ありますよ、デコ銃」

杏「あるの!?」

比奈「あるんスか!?」

亜季「さすがに銃器メーカーが直接販売しているものではないですが・・・」

亜季「女性サバゲーマーの中にはラメやシールを使ってそういったカスタムを楽しむ方もいます」

亜季「実銃では部品やオプションパーツを作っているメーカーが」

亜季「宝石やスワロフスキークリスタルを埋め込んだグリップやレバー類を販売してたりします」

亜季「あ、そうそう。先ほどのポリマーフレームは赤やピンクなどカラフルな物もありますね」

晶葉「そうか、ポリマーなら生産段階での着色が金属よりも容易だな」

比奈「はぁ~世の中面白いこと考える人もいるんっスね~」

 



比奈「『炎陣』の話にもどりますけど、もし銃を持ってもらえるならどんなのがいいんでしょうかね?」

亜季「自分としては是非ショットガンを担いでほしいですな!」

杏「ワイルドなバイク乗りってショットガン似合いそうだね」

比奈「映画『ターミネーター2』でシュワちゃんが走りながらブッ放してたみたいなイメージっスね」

亜季「ショットガンと言えば水平2連式というのがあるんですが・・・」

比奈「あ、それ知ってるっス!『北斗の拳』のジャギ様が使ってましたね」

杏「また古い漫画を・・・」

比奈「菜々さんに借・・・あぁいやいや、アレは不朽の名作っスからね、漫画描きなら一度は読んでおかないと」

亜季「他にも『北斗の拳』と似た世界観の映画『マッドマックス』にも登場しましたね」

杏「どんだけ世紀末な銃なのさ・・・」

晶葉「水平2連・・・どんな形なんだ?」

亜季「普通の銃は弾丸が通る筒・・・銃身は一つですが、水平2連は読んで字の如く銃身が2つ横並びになっています」

亜季「ですから正面から見るとかなり迫力のある凶悪な絵面になりますね」

亜季「これはレイナに持たせてみたいですな!」



麗奈『アーーーハッハッハッ・・・ゲホゲホ!愚民共!私の名を言ってみなさい!!』ジャギッ!



比奈「あぁ~あの挑発的で悪役な表情とショットガンって似合いますね」

杏「最終的に正義の味方に成敗される小物っぽさも含めてハマってるかもね」

晶葉「フフッ、酷い言い草だな」

 



文香「ところで一つ、気になることがあるのですが・・・」

亜季「はい、なんでしょう?」

文香「亜季さんがお持ちの銃に付いている凹凸と溝は、何のためにあるのでしょうか?」

比奈「あ、それアタシも気になってたんスよ。飾りってわけじゃなさそうですし」

亜季「これはピカティニーレールといいまして、スコープやレーザーサイトなどのオプションパーツを取り付けるための溝です!」

亜季「えっと・・・例えばなんですが・・・」

亜季「昔の携帯電話は、メーカーごとに充電器などの規格が違っていたので機種変更をすると手持ちの周辺機器が役に立たなくなる、ということがよくあったそうです」

晶葉「あぁ、そう言えば菜々が昔は機種変更すると色々面倒だったと話していたな」

亜季「おや?菜々殿は17歳ですからスマホ世代なのでは?」

杏「あの人はホント墓穴ばっかり掘るなぁ・・・」

比奈「あ~~まあまあ細かいことは置いといて続けて下さい」

亜季「ア、ハイ。銃も同様で、昔はこのライトはこの銃専用、あのスコープはあの銃専用という感じでオプションパーツの使い回しが出来なかったのです」

晶葉「なるほど・・・それではコストが嵩むので、取り付け規格の統一化を図ったわけか」

亜季「お察しの通りです!その統一規格がこのピカティニーレール!」

亜季「近年開発されている銃のほとんどはこのレールを標準装備しておりまして、オプションパーツの使い回しが可能となっております!」

亜季「スマートフォンや電子機器の接続端子がメーカーを問わずマイクロUSBに統一されたのも同様の理由でしょうね!」

比奈「ほぉ~よく考えられてるっスね」

のあ「・・・?」

杏「ん?どしたの、のあさん?」

 



のあ「私の小道具の銃には、そのレールがないのだけれど・・・」

杏「あ、ホントだ」

文香「古い銃だからでしょうか?」

亜季「それは恐らく、ドラマの舞台や設定の都合かと・・・」

晶葉「舞台は現代の日本で、のあは復讐のために裏社会に身を投じた人間という設定だったな」

亜季「皆さん当然ご存知でしょうが、日本では本物の拳銃は販売していません」

亜季「ですので、手に入れるなら暴力団など裏の組織が密輸したものを購入する、ということになりますね」

亜季「その手の密輸品は治安の悪い国から流れた安物や粗悪な密造銃である場合が多いので」

亜季「しっかりと生産管理されたレール付きの正規品を入手するのは難しいかと思います」

杏「なんか闇が深い話になってきた・・・」

亜季「いやまあ漫画で得た知識の受け売りでありますから、あまり真に受けないでください」

比奈「と、とにかく、ドラマにリアリティーを持たせるために敢えてレールなしの銃を選択したってことっスね!」

のあ「そう・・・理解したわ」

 



晶葉「ところで、私にはどんな銃が似合うのだろう?」ワクワク

亜季「ふむ、そうですなぁ・・・OICWでしょうか」

杏「おーあいしーだぶりゅー?」

比奈「何かの略称っスかね?」

亜季「Objective lndivisual Combat Weapon の略です!」

亜季「日本語で『個人主体戦闘兵器』といったところですな」

文香「なんだか・・・とても物々しいですね」

亜季「はい!この銃は通常のアサルトライフルとしての機能に加えて、セミオート式20mmエアバーストランチャー・・・」

亜季「さらにレーザー測距装置、赤外線暗視装置に可変倍率スコープ、モジュール機能など、様々な先進的な要素を盛り込んだ」

亜季「次世代を担う個人兵装として設計されたものであります!」

杏「なんかよくわかんないけど凄そう!」

晶葉「ほほう、次世代を担う・・・か」

晶葉「10年進んだ技術を持つ私に相応しい銃だな!」

比奈「マッドサイエンティストといえばギミック満載のゴテゴテした武器っスよね!」

亜季「しかしこの銃、実はですね・・・」

亜季「コンセプトそのものは素晴らしいのですが実用性が置いてきぼりになってまして」

亜季「開発計画がポシャってしまい結局、生産されていません」

晶葉「ダメじゃないかっ!!?」

比奈「あっはっはっ!そういうところも含めて晶葉ちゃんにピッタリっスね!」

杏「晶葉の発明は役に立つんだか立たないんだか微妙なヤツも多いからな~」

晶葉「むぅ~選定のやり直しを要求する!」

亜季「おっと、もうこんな時間ですか!自分は次の任務があるのでこの辺で失礼します!」

晶葉「くっ!撤退を許してしまったか・・・」

 



亜季「いや~自分ばかり長々と語ってしまって申し訳ないです」

杏「まあなんだかんだで楽しめたからいいよ」

比奈「知識はどれだけあっても無駄にはなりませんから、そのうち漫画に活かさせてもらうっス」

文香「そうですね。おかげで銃が登場する小説を、また違った視点から楽しめるようになりました」

晶葉「大和軍曹、次に会うときまでにもっと私に相応しい銃を考えておいてくれたまえ」

亜季「あはは!晶葉大佐、了解しました!」

のあ「最後に、ひとついいかしら?」

亜季「はっ!なんでありましょうか、高峯殿!」

のあ「そう、それ・・・」



のあ「なぜ、私だけ苗字呼びなの・・・?」



晶葉(そこを気にしていたのか・・・)

杏(分かりにくいけど拗ねてるのかな?)

比奈(一応、歳上っスからね~)

文香(あ・・・私も苗字で呼んでいました・・・)


亜季「えっと・・・高峯殿という響きがカッコいいからそう呼ばせていただいただけで、特に深い意味はありません」

亜季「もしかして、下の名前でお呼びしたほうが良かったですか?」

のあ「いえ、別に・・・」


晶葉(名前で呼んでほしかったんだな・・・)

杏(あ、やっぱり拗ねてる)

比奈(名前で呼んで欲しかったんスね)

文香(のあさんと・・・お呼びしたほうがよいのでしょうか?)


亜季「そうですか・・・では、自分はこれにて失礼!」

亜季「ドラマのお仕事、頑張ってください!」



亜季「のあ殿!!」

のあ「・・・!」


ガチャ!バタン!


晶葉(表情はほとんど変わってないが喜んでいるな)

杏(この人、変なところで可愛らしいんだよな~)

比奈(これはクーデレに分類されるんスかね・・・?)

文香(のあさんとお呼びしましょう、そうしましょう)


晶葉「では引き続き役作りの特訓といこうか、のあ」

杏「まあ、のあさんならすぐにモノにできるよね」

比奈「及ばずながらアタシも手伝いますよ、のあさん」

文香「雰囲気作りはお任せください、のあさん」


のあ「ええ、よろしくお願いするわ」

 



~夜の事務所~


晶葉「新しい武器の調子はどうだ?」

のあ「悪くないわ・・・それなりに手に馴染んできた」ガチャ !ジャキ!

※ドラマのセリフ合わせ中

のあ「それよりヤツの情報は?」

晶葉「残念ながらまだ動きはない」

のあ「そう・・・」

晶葉「本当に・・・やる気なのか?」

晶葉「言うまでもないことだが、ヤツに手を出せば無事では済まないぞ?」

のあ「本気よ・・・ヤツは必ずこの手で・・・」



のあ「殺す」



ガタッ!


のあ「・・・?」

晶葉「!?」



綾瀬穂乃香「  」


 



穂乃香(忘れ物を取りに来たら・・・聞いてはいけないことを・・・!)

穂乃香(た、高峯さん・・・今、たしかに『殺す』って・・・!)

穂乃香(そ、そ、それに手に持ってるのは鉄砲!?)



晶葉「君は・・・」

のあ「綾瀬穂乃香・・・」

のあ「知ってしまったのね・・・私の正体を」ズイッ

晶葉(ドラマの役柄的な意味でな)

穂乃香「あ、あの、今・・・聞き間違いだと思うんですが・・・『殺す』って・・・」

のあ「・・・ええ、確かにそう言ったわ」ギラッ!

穂乃香(う、あ・・・なんて冷たい目!冗談を言っているようには見えません!!)

穂乃香(まさか・・・本当に誰かの命を!?)

のあ「・・・」チャキッ!

穂乃香(今の金属音は・・・鉄砲を撃つ準備!?)

のあ「自分の立場を理解できたかしら・・・?」

のあ「わかっているとは思うけれど、他言は無用よ」

晶葉(うむ、ドラマのネタバレは駄目だな)

のあ「もし約束できないというのなら・・・」

のあ「相応の『処理』をしなければならない」

穂乃香(『処理』って・・・口封じに殺される!?)

晶葉(そうだな、ネタバレするつもりなら担当プロデューサーに注意してもらわないとな)

穂乃香「は、は、はい!誰にも言いませんから!!」

のあ「まあ、いいわ・・・今日のところは見逃してあげてもいい」


のあ「ぴにゃこら太に免じて」


晶葉(ああ、そう言えばごっこ遊びの時に名前を借りていたな)


穂乃香「ぴにゃこら太(の可愛さ)に免じて・・・ですか?」


穂乃香(な、なんだかよくわかりませんが助かった!?)

穂乃香(ぴにゃこら太すごい!ぴにゃこら太さすが!)

晶葉(あ~あ~、端から見ていてわかるほど混乱しているな)


  



穂乃香(高峯さんの気が変わらないうちに逃げないと!)

穂乃香「じゃあ私はこれで失礼します!誰にも言いませんから!本当に!!」ダッシュ!

のあ「待ちなさい」

穂乃香「ひゃいっ!?」



のあ「『夜道』には、くれぐれも『気を付ける』ことね」



晶葉(そうそう、女の子の一人歩きは危険だからな)

穂乃香(油断させておいて暗闇で殺る気でしたかぁぁぁ~~!!)


穂乃香「プ、プロデューサーさぁぁぁん!!!」ドヒューン!



晶葉「・・・」

のあ「・・・」

晶葉「あの様子はどう考えても誤解しているぞ?」

晶葉「しかも悪い方向にな」

晶葉「まあ具体的なことは何一つ口にしていないから騙したことにはならないのかもしれないが・・・」

のあ「わざと・・・よ」

晶葉「ほほう、その心は?」

のあ「あの子はこの事務所の中では特に真面目な常識人」

晶葉「ああ、なるほど。そんな彼女を騙しおおせたなら・・・」

のあ「演技の出来は磐石・・・ということ」

のあ「晶葉・・・貴女こそ、口を挟まなかったのはどういうつもりだったのかしら?」

晶葉「ははっ、私もああいうドッキリ企画的なものは嫌いではないからな、つい見入ってしまったよ」

のあ「まあ・・・近いうちに誤解は解いておくわ」

晶葉「そうか、ならば私はお詫びの品でも作っておこうか」


 



~数日後~


「交渉の余地はないよ」


もはや譲歩も話し合いもする気はないという断固たる決意を言葉にし、少女は一歩前に出る


「うんうん!やられたらやり返す!だよね~♪」


流された血は、加害者の血でしか購えぬ

その道理を体現する好機を得たことに狂喜するもう一人の少女が並び立つ


「そうだ!彼女が味わった屈辱は我々が晴らさなきゃいけないんだ!」


そう叫んだ三人目の少女は知っていた

弱肉強食こそが倫理であるこの世界では、顔に泥を塗られたまま終わってはならぬということを


「やめてください!何もそこまでしなくても・・・!」


被害者である彼女にそう訴えさせるほどに、三人の少女は復讐への熱狂に支配されていた


「言ったはずだよ、交渉の余地はないって」

「残念ながらホーフクはもう決定事項なのだよ♪」

「それじゃあ行くよ!せーの!」


もはや誰の言葉も届かない

ただ鉄の意志を以て復讐を遂行するのみである

三人の鬨の声とともに

ついに反撃の幕が上がる



あずき・忍・柚『穂乃香ちゃん、怒りのドッキリ返し大作戦!!!』



穂乃香「だから!高峯さんに仕返しなんてしなくていいと言ってるじゃないですかぁ!?」



 



あずき「ダメ!穂乃香ちゃんを怖がらせた罪はとっても重いんだよ!」

柚「シロクジチューぴにゃこら太を抱っこしてた穂乃香ちゃんは可愛かったけどね♪」

忍「珍しくプロデューサーにべったりだった穂乃香ちゃんも可愛かったよね~」

あずき「まあドラマ見るまで殺し屋だって信じこんでたのはさすがにどうかな~って思うけど・・・」

穂乃香「なっ・・・///だって高峯さんの演技すごかったんですよ!?」


ガチャ!

のあ「ここにいたのね・・・」

忍「えっ!嘘!?もうバレた!?」

柚「いきなりラスボス登場は計算外カモ!」

あずき「えぇ~もう作戦大失敗!?」

のあ「穂乃香・・・このあいだは誤解させて悪かったわね・・・」

穂乃香「いえ・・・そんな・・・」

のあ「お詫びに、これを受け取ってほしいの」

穂乃香「こ、これは・・・!?」




のあ「晶葉特製のぴにゃこら太目覚まし時計よ」

穂乃香「許します!!みんな、作戦即中止!!!」

あずき・忍・柚『ですよねー!!』ズコー!



おわり


 



以上。
昔765のお姫ちんで銃SSを書いたのをふと思い出してまたやりたくなった次第であります。
好きな要素を出来る限り強引に詰め込んだので色々おかしかったりコレジャナイ感があるのは自覚しておりますのでご容赦を、はい。
ともあれ、池袋晶葉はトンデモ兵器が似合う可愛い、大和亜季は軍曹可愛い、高峯のあはサイバネティック美しい
綾瀬穂乃香はぴにゃこら太好き可愛い、ぴにゃこら太は可愛い、それだけ伝われば十分だ。


 



過去作宣伝


ぴにゃー!

池袋晶葉「逆襲の谷」

池袋晶葉「逆説の楽」

鷺沢文香「逆光の園」

池袋晶葉「逆調の星」

池袋晶葉「逆睹の衣」

池袋晶葉「逆賭の衣」

池袋晶葉「逆感の僕」

池袋晶葉「逆月の兎」

池袋晶葉「逆胴の道」

池袋晶葉「逆火の倣」


ぴにゃー!

貴音「触りたいのですか?」P「えっ!?」ドキッ


 

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