凛「未央の事なんて嫌いなんだからね!」 未央「ええ……」 (14)

凛未央のSSです。ギャグです。

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とある一日。新年度も始まり、今日から心機一転といった人も多い中で、さて私はと言うと代わり映えの無い普段通りの日常を送っていた。と言っても私はアイドル、毎日が劇的で絶え間なく変わっていく世界に生きているので、もしかしたら普段通りという言葉は似つかわしくないのかも。それでもやっぱりこうやって事務所でゆったり出来る時間っていうのは私にとって大切な普段通りの日々なのだ。そう、ゆったり出来れば、だけれど。

凛「未央の事なんて嫌いなんだからね!」

未央「ええ……」

凛「っふーん、だよ」

未央「何?その、っふーん、ってやつ」

凛「未央の事なんか、好きじゃ無いんだからね!」

未央「何かさっきと言ってる事微妙に変わってない?」

凛「っっふーん!」

未央「力強くしても誤魔化されないよ」

久しぶり、と言うほどでは無いけれど、面倒なしぶりんのご来場だ。と言うのも、あまりこんな事を言うべきでは無いが、時々しぶりんは面倒臭くなる時があるのだ。原因は様々で、私としまむーの二人で遊びに行った事をしぶりんが知らなかった時とか、私がプロデューサーに晩ご飯を奢って貰った帰りに会った時とか、ポジパの先約があったから誘いを断った時とか。……まあ、何というか。可愛らしいなぁとは思うんだけど。

未央「って、違う違う。そんな事を考えてる場合じゃ無いんだった」

凛「つーん」

未央「つーん、じゃないよ。今日は一体どうしたのよしぶりん」

凛「未央の事なんて、好きじゃ無いと思ってない何て事無いんだからね!」

未央「ややこしいよ!」

凛「っふーん!!」

 この調子である。因みにだが、これは私が事務所に来てからもう三十分ほど続いていてスタッフやアイドル達等の色々な人に見られている。さっきも、私達に気を遣うように少し離れながらみゆみゆ(あ、三船美優さんね)、が通っていったし。恥を忍んで救いを求めるようにみゆみゆを見ると、凄く優しい笑顔をされてしまって余計私の羞恥心は刺激される羽目になった。

未央「ねえ、みゆみゆにも見られてたけど」

凛「……ふーん」

未央「弱ってるね、確実に」

凛「っふーん!」

未央「今更だよ!それに、しぶりんがみゆみゆに見られてちょっと顔赤くしてるのにも私気付いてるんだからね!」

凛「ふーん!?」

 明らかに動揺している。恥ずかしいならもう止めたら良いのに。ていうかさっきから意味が分からない。しぶりんは一体どうしてしまったんだろうか。今回に限っては思い当たる節が全く無いし。そんな風にしぶりんと話しながら何かあったかなと考えてる内に、ガチャリと扉が開いて助けてくれそうな、もとい頼りになる仲間が来てくれたようだ。

卯月「おはようございます!」

未央「しまむーおはよっ!早速だけど助けて!」

卯月「ええっ!?い、いきなりどうしたんですか未央ちゃん!?」

凛「卯月、おはy……っふーん、だよ」

卯月「ああ、なるほど……。今日は、どうしたんですか?」

未央「いやぁ、それがぜんっぜん分かんなくてさ」

 早くもこの状況を理解してくれたらしい。これだけの付き合いだから当然なのかも知れない。って言うより、しぶりんが結構こうなるってだけの話かも知れないけど。

凛「卯月の事なんて、す、好きじゃ、無いんだからね!」

未央「言い淀みすぎじゃ無い?」

卯月「無理して言ってますね……」

未央「え、つまり何、私には躊躇いなく言えるって事!?」

凛「ふうううん」

未央「バリエーション意外と多いんだね!?」

卯月(誤魔化されてる気がしますけど、面白いので黙っておきましょう)

未央「んで、しまむー。何か心当たり無い?」

卯月「うーん、特には思い当たりませんね……」

未央「何でも良いんだよ?もしかしたらしぶりん以外の誰かとの事で理由があるかもしれないし」

卯月「ええと、やっぱり特に……あ、そう言えば」

未央「お、何かあった?」

卯月「さっきからそこでこっそり奈緖ちゃんと加蓮ちゃんが見てますよ?」

未央「えっ」

そう言われて扉を見やると、何やら楽しげなかれんと、少し心配そうなかみやんがこっちを覗いている。あ、目があった、逃げた。

未央「しまむー、確保―!」

卯月「ええっ!?は、はい~!」

加蓮「バレちゃった!逃げるよ奈緖!」

奈緖「なんであたしまで逃げなきゃなんないんだよ!」

未央「ええい、問答無用だ!待て~い!」

加蓮「うわっ、卯月めっちゃ足早い!」

卯月「ま、待ってくださ~い!」

奈緖「待つも何も、もう追いつかれそうなんだけど!?」

凛「……。ふーん……」

――

未央「で、何か申し開きはあるのかね」

加蓮「いや~、その、ね?ちょっとした冗談のつもりだったんだけど……」

未央「冗談、まあ確かにそういう日だったね今日は。私もうっかり忘れてたけど」

 いやはや、すっかり忘れていたけれど今日は新学期、もとい四月の一日、所謂エイプリルフールという日だった。昨日の晩にかれんとしぶりんが相談して、今回の問題を引き起こした、という話である。

奈緖「な!?だからあたしは関係ないだろ!?」

未央「でも一緒になって見てたよね?」

奈緖「それはほら……思ってた以上におm面倒な事になってたし……」

未央「今思いっきり面白いって言いかけたよね」

奈緖「ああ、もう!だから止めとけって言ったのに!未央は怒ると結構怖いんだから!」

未央「へええ、企画段階でかみやんも居たんだ……」

奈緖「しまった!」

加蓮「まあまあ未央、そう怒んないで、ね?」

未央「かれんがそれを言うの!?」

加蓮「だってさあ、ほら、凛ったら凄く生き生きしてるじゃん?」

卯月「加蓮ちゃん、開き直り始めましたよ……」

凛「ふーん、だよ」

未央「これは拗らせてるって言うの!普段こんな事しないから引き際が分かんなくなってるじゃん!」

卯月「寧ろ、ここまで貫徹されると一周回って尊敬しちゃいます」

奈緖「それ、褒めてないよな?」

凛「ふふーん!」

未央「褒めてないって言ってるでしょ。後それはアイデンティティの侵害になるからやめて」

加蓮「んふふふふ」

未央「何笑ってるのさ!こっちは色々大変だったんだからね!」

加蓮「いやー、ごめんごめん。今度ポテト奢るから許して?」

未央「……それも、エイプリルフール?」

加蓮「大正解~♪」

未央「はああ、もうかれんってばホントやんちゃなんだから……」

 これだから困ってしまう。かれんが楽しそうにしていると碌な事にならない、と言う事もここ最近になって知った事だった。まあ、知ったからと言って避けられるものでは無いけど。そう言って話しているとしまむーが何か閃いたかのようにぽんと手を打って、私にびしっと指を指すと、

卯月「未央ちゃんの事なんて、好きじゃ無いんですからね!」

 なんて、またしても意味の分からない事を言ってくる。……いや、待って、もしかして。

未央「ふ、ふんだ!私も、しまむーの事なんて好きじゃ無いんだからね!」

奈緖「おいおい二人とも、どうしたんだよ急に」

加蓮「……あ、なるほど。奈緖、これはちょっと黙って見てよう」

奈緖「え、で、でも」

加蓮「いいから」

卯月「私、凛ちゃんの事も、好きじゃ無いんですからね!」

未央「私も、しぶりんの事なんて好きじゃ無いんだからね!」

凛「え、ええ、あ、わ、私だって、二人の事、す、好きじゃ、無いんだからね!」

卯月「やっぱり嘘です!私凛ちゃんも未央ちゃんも大好きです!」

未央「私も嘘!しまむーもしぶりんも大好きだよ!」

凛「え!?いや、ええ!?」

卯月「じーっ」

未央「じーっ」

凛「あ、え、え?」

加蓮「んふふふふ」

奈緖「……っふふ」

凛「ちょっと、何笑ってるの!」

奈緖「だ……だって、っふふ、なあ?」

加蓮「うふふ、そうだね。ねえ、凛、エイプリルフールで吐いた嘘は、ちゃーんと嘘だって言わなきゃでしょ?」

凛「……」

凛「嘘、でした。私も、二人の事が好き、大好きっ!」

卯月「えへへ!良かったですね、未央ちゃん!」

未央「そうだね、しまむー!」

凛「……なんか、納得いかないんだけど」

加蓮「まあ良いじゃん凛」

奈緖「取り敢えず目的は果たせたんだろ?」

未央「?目的って?」

凛「え、ああいや、ちが」

加蓮「それより未央、いいの?もうすぐレッスンの時間なんじゃ無い?」

未央「えっ?あ、ほんとだ!もうこんなに経ってたの!?それじゃ、皆またね!」

凛「うん、それじゃあね、未央」

 途中、何か気になる事が聞こえた気がしたけどそれどころでは無く、私は見事レッスンに遅刻するのであった。結果、マストレさんにはとてつもないペナルティを言い渡されたので、「もしかしてエイプリルフールですか?」と尋ねたら、「どこの愚か者が何だって?私は嘘が大の嫌いでね」と言われて、さらにペナルティを増やされてしまった。どうやら私の普段通りの日常は、春風に吹かれて飛んで行ってしまったらしい。

――

卯月「それで、目的って何だったんですか?」

凛「いや、何でも無いよ、卯月」

加蓮「いやぁ、実はね」

凛「ちょっと!ダメだってば!」

奈緖「まあいいじゃんか、迷惑料だと思えばさ」

加蓮「凛ったら、未央に大好きって言いたかったらしくて~」

凛「~~~~~~!!!」

加蓮「だからさぁ、明日がちょうど四月一日だったからそれを上手く利用すればいいじゃん
って言ったの」

奈緖「そしたら凛、なるほど!とか言っちゃってさ、結果があれだよ」

卯月「ああ……、それで止め時が分からなくなってたんですね」

加蓮「そうそう、ホントはすぐに嘘ですって言えば良かったのにね。そこまで決めてなかったからパニクっちゃったのかな?」

凛「もう……やめて……」

奈緖「全く……、愚か者は誰なんだか、ってな」

短いですが終わりです。
四月末にエイプリルフールネタをする勇気。
四月一日にエイプリルフールネタを書くって言うのが嘘だという事で一つ。
それでは。

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