P「勘弁してほしい」
凛「今年は桜も早かったもんね」
P「そうそう。半袖で丁度いいくらいのあったかさだったからコートクリーニングに出しちゃったし」
凛「うちもこの前ヒーター片付けてたよ」
P「あれだけあったかいと、どこもそうだよなぁ」
凛「……で、この気温だから困っちゃうよね」
P「なー。事務所のストーブもこの前千川さん片付けてたし」
凛「あれ、でも灯油余ってるんじゃなかったっけ」
P「え、そうだっけ」
凛「確かそんなようなことをちひろさん言ってた気がするけど」
P「聞いてみる?」
凛「聞いてみよっか」
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○
凛「…………というわけなんですけど」
ちひろ「まだ処分していないので、倉庫にありますよ。またストーブ出すんですか?」
P「出そうかなぁ、と思いまして」
ちひろ「確かに寒いですよね。でも使い終わったらちゃんと片付けてくださいね?」
P「もちろんです」
ちひろ「空焚きもしてくださいね?」
P「……めんどくさくなってきたな」
凛「え、ちょっと」
P「冗談冗談」
○
ちひろ「そういえば、どこでストーブ使うんですか?」
P「んー。応接室って今日取材か何かで利用ありましたっけ」
ちひろ「第二でしたら、今日は空いてますよ」
P「じゃあそこで」
凛「ちひろさんも後で一緒にどうですか?」
ちひろ「あら、私もお邪魔しちゃっていいのかしら」
凛「ふふっ、待ってます」
ちひろ「じゃあ、今手を付けてる書類を片付けたら行きますね」
P「では、また後で」
ちひろ「はい。また」
○
凛「さて、準備だけど」
P「あ。力仕事は俺がやっておくからさ、凛には別のことお願いしたいんだけど」
凛「別のこと?」
P「そう。やかんでお湯を沸かしておいて欲しいのと、マグカップを3つ。あとティーバッグをいくつか」
凛「ティーパーティだね」
P「正解。優雅にいこう」
凛「ちょっと意味わかんないけど、了解。また後でね」
P「よしじゃあ競争な」
凛「私不利じゃない?」
P「なんで?」
凛「どれだけ頑張ってもお湯が沸く速度は変えられないし」
P「それもそっか」
凛「うん」
P「なら競争はナシで」
凛「うん。……この会話、意味あった?」
P「ない」
凛「だよね」
○
凛「……」
凛「…………結構お湯沸くの時間かかっちゃったな」
凛「もうプロデューサー待ってるかも」
○
P「久しぶり」
凛「……?」
P「深く考えずにツッコんで欲しかったんだけど」
凛「え、ああ。そういう……」
P「もういいや」
凛「ごめんごめん。はい、お湯沸かして来たよ」
P「ありがとう。ストーブ点けてあるからその上に置いといて」
凛「お茶請けか何か用意した方がいいかな。ちひろさん来るし」
P「千川さん来るなら用意しなくていいんじゃない?」
凛「え、なんで?」
P「千川さんに持ってきてもらえばいいか、と思って」
凛「誘ったの私たちなのに、お菓子せびるの?」
P「そういうこと」
凛「そういうこと、じゃないでしょ。もう」
P「はい、凛。両手を胸の前で合わせて」
凛「……? こう?」
P「そう。そして、物欲しそうな目をする」
凛「……こんな感じ?」
P「パーフェクト」
凛「ちょっと。何で写真撮ってるの」
P「千川さんに送っといた。お菓子が欲しいです、って」
凛「私がお願いしたみたいになるよね、それ」
P「だって俺のお願いなんて聞いてくれないだろうし」
凛「はぁ」
○
P「そうカリカリしないで。お茶淹れる?」
凛「お湯もティーバッグも持ってきたの私だからね」
P「まぁまぁ、はい。マグカップ」
凛「これも持ってきたの私」
P「ごめんって」
○
凛「でも、あったまるね」
P「ストーブにあたるの、久々な気がするよな」
凛「ね。てっきり次の冬までお別れかと思ってた」
P「あったかい紅茶とストーブで、体の内と外からぽかぽかしてくるとさ」
凛「眠くなってきたんでしょ」
P「当たり。膝借りていい?」
凛「ナチュラルに膝枕要求しないで」
P「こう、さらっと言ったらOKされるかと思って」
凛「しないから」
P「でもさ、膝枕って膝じゃないよね」
凛「言われてみれば確かにそうだね。ふとももだよね」
P「調べてみるか」
凛「どう? 分かりそう?」
P「んー、イマイチ」
凛「辞書で膝を引いてみたら?」
P「なるほど。……『膝頭から上の、腿の前面の部分』って意味もあるらしい」
凛「じゃあ膝枕で合ってるんだ」
P「たぶん。あ、万葉集にも膝枕っぽい表現あるんだってさ」
凛「1000年以上前から膝枕が日本にはあったってこと?」
P「……になるのかなぁ。ちなみに番号は810番だって」
凛「私の誕生日だ」
P「運命的だな」
凛「かもね」
P「だから膝」
凛「だめ」
P「はい」
○
凛「それはそうと、プロデューサーはなんで事務所にいたの? 今日休みだよね?」
P「昨日凛から電話あっただろ?」
凛「うん」
P「それで、撮影上がりで荷物置きに事務所寄るって言ってたから」
凛「……私に会いに来たってこと?」
P「そう」
凛「私のこと大好きだよね。ほんとに」
P「気付いてもそういうことは言わないのがマナーだと思う」
凛「プロデューサーの休みだし、使い方には文句言わないけどさ。もうちょっと大事に使ったら?」
P「にやにやして、そんな嬉しそうに説教しても説得力ないからな?」
凛「にやにやしてないから」
P「してるしてる」
凛「してないよ」
P「さっさと帰ればいいのに、ストーブ引っ張り出してまで俺と駄弁ってる時点で」
凛「はい。この話終わり」
P「自分は攻撃する癖に仕返しされそうになると打ち切るのずるくない?」
○
ちひろ「失礼しまーす。入っても大丈夫ですか?」
P「あ、千川さん来たな。はーい、どうぞー」
ちひろ「はい、凛ちゃん。お菓子持ってきましたよ。コンビニのですけど」
凛「その、なんか、ありがとうございます」
P「うちの凛がすみません」
凛「……」
P「ヒールで人の足を踏んだらダメなんだぞ」
ちひろ「?」
凛「実は、あの写真プロデューサーに騙されて撮られたんです。それで……」
ちひろ「あー。だいたい察しました」
P「え、ちょっ。千川さん目が怖い」
○
凛「さっきも膝枕しろ、って言ってきて」
P「おい、凛。待って」
ちひろ「プロデューサーさん、それホントですか?」
P「え、いや、違う。違うんです」
ちひろ「言ったんですね?」
P「言いはしましたけど……その、ほら、コンテクスト、コンテクストを知ってもらわないとですね」
ちひろ「必死に横文字を並べても無駄ですよ?」
P「お願いですから言い分を聞いてください」
ちひろ「一応聞きましょうか」
P「まずですね。そういえば膝枕って膝じゃないよねー、って話になりまして」
凛「ちひろさん、紅茶淹れました」
ちひろ「あら、ありがとうございます。んー、凛ちゃんの淹れてくれたお茶おいしいわー」
凛「ふふっ」
P「……聞いてます?」
○
P「それで、膝枕の意味を調べたりしてたんですよ」
ちひろ「はい。凛ちゃん、チョコレート好きよね」
凛「ありがとうございます。わ、おいしい」
P「ねぇ、聞いてます?」
ちひろ「聞いてます聞いてます。それからどうなったんですか?」
P「膝の指す範囲は膝頭から上の腿の前面の部分も含むということがわかり、じゃあ膝枕で間違いじゃないー、となり」
ちひろ「膝枕を要求したんですね?」
P「……………………え、っと」
ちひろ「まごうことなきクロじゃないですか」
P「凛助けて。また晩ご飯ご馳走するから」
凛「……」
P「ケーキ。駅前の並ぶやつ」
凛「二つ?」
P「二つでも三つでもいいから」
凛「じゃあ、ちひろさんも許してくれると思うよ」
ちひろ「そうですね。凛ちゃんがそう言うなら」
凛「ケーキ、楽しみですね」
ちひろ「ふふ」
P「え、そこグルだったの」
○
P「っていうか、このちっちゃいソファに三人は狭くないですか?」
ちひろ「私だって凛ちゃんの横に座りたくて」
凛「プロデューサー、正面のソファ独り占めしていいよ」
P「なんか今日俺への当たり強くない?」
凛「いつもこんな感じでしょ?」
P「さっきは俺がわざわざ休日なのに凛に会いに出て来てる、って知ったらずっとにやにやしてたんですけどね」
凛「……」
P「ヒールで人の足踏んだらダメなんだぞ」
ちひろ「ふふふ、ほんとに仲良しですよね。プロデューサーさんと凛ちゃん」
P「わかります? いやー、かわいいやつなんですよ。凛は」
ちひろ「ええ、この前も仁奈ちゃんに狼の気持ちを教えてあげてたり面倒見もいいですもんね」
P「そう。『プロデューサー、口もとにソースついてるよ』なんて言って取ってくれたりして」
ちひろ「それはプロデューサーさんだらしないだけですよね」
P「はい」
ちひろ「しっかりしてください」
P「はい」
○
ちひろ「……からかい過ぎちゃったかしら」
P「黙っちゃった」
ちひろ「ごめんなさい。ちょっと調子に乗り過ぎました」
凛「……」
P「真っ赤な顔もかわ……ごめんって足を踏もうとしないで」
凛「プロデューサーは今からあっちのソファね」
P「もう正面ですらない」
凛「声は聞こえるから大丈夫だよ」
P「ストーブ遠いし」
凛「自業自得」
P「また急に寒くなったよな」
凛「こっちはあったかいよ」
P「勘弁してほしい」
おわり
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