青年「提督になるらしい」【安価】 (7)


提督になるらしい。

ポストを開けると提督養成所の資料と招集状が入っていた。資料を流し見すると想像していた職の養成が書かれている。天涯孤独のこの身が誰かの助けになるのなら喜んで提督になろう。戦果を挙げ、国の為、国民の為に前戦に出るのも吝かではない。

だがなぜ私なのだろうか?

提督とは子供達にとって憧れの職業だ。艦娘達を統べ、失われた制海権を取り戻す。実情はどうあれ国民からは憧れた存在なのは間違いない。

その提督に私はなぜ選ばれた?

優秀な覚えはない。人よりも効率が良いだけで誰でもできることをして生きてきた。特筆したモノは何もない…はずだ。だが提督に選ばれた。

選ばれたからには理由があり、思惑があるのではないかと考えてしまう。考えた所で答えが湧いてくるわけもなくインターホンが鳴る音で思考の海から抜け出した。

「はい、どちらさまでしょう?」

選択肢

1.「私よ、わ、た、し」
2.「あ、あの隣のものです」
3.「……」
4.「アドミラル」

下1

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「アドミラール!ディナーに行きましょう!」

隣に引っ越してきた留学生だ。初対面から私のことをアドミラールと呼び、苗字で呼ばない。文化の差かボディータッチが激しく、それを断ると涙目になる。嫌いではないが異国の文化は慎みを持ってほしいものだ。

「すいません、今日は考え事をするのでいけません」

「かんがえごと?Meが相談に乗るわ!」

相談に乗る…たしかにこれは聞いてみてもいいかもしれない。他人からの私の評価を聞き、これが詐欺なのかどうかを検討する。

「ありがとうございます。ドアを開けるので待っていてください」

「Yes!Meのスプリングも近いわね!」

玄関を開け、彼女を招き入れる。武士道と書かれたTシャツが目に入ったが聞かない。よくテレビで見る旅行者と同じなのだろ。

「それで悩みは…oh」

机の上の資料を見てアイさんは固まった。そして交互に私と資料を見る。顔を上げる度にその口角は上がっている。

「アドミラールもついにアドミラールになるのね!?」

「アドミラールではありません。提督と呼ばれる職です」

「どっちでもノープロブレム!……もしかしてなりたくない?」

アイさんは私の表情を見て察したのか声色が変わる。なりたくないわけではない。だがなれる理由がわからない職になっていいのかがわからない。

「私は……提督の器でしょうか?」

「オフコース。アドミラールは提督の器よ。私が保証する。だって私のアドミラールですもの!」

説得力が無いはずなのに彼女の言葉は響く。この際だから、もう一つの疑問を彼女に聞くことにした。

「前から思っていたのですがそのアドミラールとは友人ってことでしょうか?」

「え?アドミラールはこれのことよ?」

彼女がパンフレットに指を指す。余計にわからない。

「提督とアドミラールは同じ意味なの」


アイさん、Iowaさんの話から一月の間は一瞬で過ぎ去って行きました。Iowaさんは本国に転属の為の申請を行う為に帰国。私は私で養成所に入るための準備に追われた。

その期間に考えていた事があった。

国民を守る事よりもIowaさんが傷付く事に耐えれるのか。顔の知らない誰かよりも私が知る人が傷付く事に耐えられるのだろうか?

堪える耐えないではないとわかっている。だが答えを出さなければ取り返しのつかない事になる気もする。

「……」

上を見上げれば変わらない空があった。教官との待ち合わせの為、養成所の外で人を待っている。教官ならこの問いに答えてくれるのだろうか?

教官役

1.お艦
2.香取
3.有明の女王
4.ママ

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