【モバマス】「わらしべ長者幸子」 (31)
──事務所
輿水幸子「今日は11月25日ですね」
モバP(以下P)「ん? ああそうだな」
幸子「11月25日ですね!」
P「そうだな」
幸子「…………」
P「…………」
幸子「今日は!! 11月!! 25日ですね!!!」
P「知っとるわ!!!」
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幸子「わかってるんならいいんです。プロデューサーさん、ボクになにか言うことがあるんじゃないんですか?」
P「髪切った?」
幸子「一週間前に切りましたね」
P「すまん。頭が回らなくてネタが思いつかないんだ。30秒待ってくれ」
幸子「大喜利じゃありませんよ」
P「ところで、悪い幸子。これから事務所にお客さんが来るからしばらく他のところに行っててくれるか」
幸子「……そうですか。カワイイボクをぞんざいに扱うのはよくありませんけど、お客さんなら仕方ないですね」
P「詫びといってはなんだが、幸子にこれを渡しとこう」
幸子「え!? フ、フフーン。まったくしょうがないですね。そんなにもらってほしいならカワイイボクがありがたくいただきますよ!」
幸子(なんだ。やっぱりプレゼント用意してくれてたんじゃないですか)
モバP「ほらよ」スッ
■プロ野球チップスカード
P「さっき事務所に落ちてるのを拾ってな。俺の代わりだと思って大切にしてくれよ」
幸子「いりません」
──廊下
幸子「まったくプロデューサーさんは失礼ですね」プンプン
幸子(結局もらってしまったこのカード、どうしましょうか?)
姫川友紀「おーい! 幸子ちゃん、おはよう」
小早川紗枝「あら幸子はん。奇遇やなぁ」
輝子「フヒッ。おはよう……」
小梅「おはよう幸子ちゃん」
幸子「みなさん、おはようございます! 今日はお仕事ですか?」
輝子「ま、まぁ、ちょっと。幸子ちゃんもなにか用事があるのか……?」
幸子「そうです聞いてください! みなさん、今日が何の日かもちろん知ってますよね?」
小梅「うん」
紗枝「そらもちろん」
友紀「今年も一年お勤めご苦労様!」
幸子「勤労感謝の日は一昨日ですね」
紗枝「勤労といえば幸子はん。Lunatic Showのときはリーダーとして、ほんまにがんばってたなぁ」
友紀「うんうん。幸子ちゃんがいたから小梅ちゃんや輝子ちゃんと一緒にライブもやれたしね!」
小梅「わ、私たちも、友紀さんと紗枝さんと一緒にやれて、すごく楽しかった」
輝子「それも……リーダーががんばってくれたおかげ……だな」
幸子「フフーン、そうですそうです! みなさんもっと褒めてくれてもいいんですよ!」
4人「えらいえらい」ガシガシ
幸子「ほめ方がやっぱり雑ですね!?」
友紀「ん? さ、幸子ちゃん! それって!?」
幸子「え? ああ、このカードですか?」
幸子(そういえば友紀さんは野球好きでしたね)
友紀「……」ジーッ
幸子「そんなに見つめるくらい欲しいんでしたら差しあげますよ」
友紀「え! いいの!? あとで返してっていっても返さないよ!」
幸子「そんな子供じゃないんですから……はい、どうぞ」
友紀「わぁ、ありがとう! お礼にアタシのサイン入りボールあげるね」
幸子「けっこうです」
友紀「ちぇー。……あっ、そうだ。代わりに幸子ちゃんにはこれあげよう」
幸子「へぇ。なんですか?」
■ダンベル
友紀「いやー、ここに来るときに廊下に落ちててさ。いらないし、代わりにあげるよ」
幸子「ダンベルって落ちてるものなんですか!? っていうかいらないからボクに押し付けてるだけですよね!!」
友紀「そんなことないそんなことない」
幸子「ボクの目を見て言ってください!」
輝子「フヒッ、カードがダンベルに……」
紗枝「幸子はん、わらしべ長者みたいやなぁ」
小梅「目指せ……億万長者」
幸子「いや、ダンベルいらないんですけど!! ボクがもらう前提で話すのはやめてください!?」
──事務所外の庭
幸子「まったく、なんでカワイイボクが、こんなもの持たなくちゃ、いけないんですか」
幸子(というかすごく重い)
向井拓海「おっ、幸子。なにやってんだよそんなところで」
大和亜季「幸子ちゃん。お久しぶりであります!」
幸子「拓海さんに亜季さん。それに笑美さんに鈴帆さんも。珍しい組み合わせですね」
難波笑美「さっきそこでばったりあったんや」
上田鈴帆「幸子しゃん、ダンベルなんか持ってなんばしよっと?」
幸子「友紀さんに押し付けられたんですよ! まったくなんで今日主役のボクがこんな目に……」
拓海「あ? 主役? 今日なんかあんのかよ?」
幸子「そうですよ! みなさんは今日が何の日か知ってますよね?」
鈴帆「突然やけど、うちら結婚するばい」
笑美「幸せになるさかい、応援してな!」
幸子「夫婦の日が語呂合わせなの知ってます?(22日)」
拓海「ダンベルっていえば、前に亜季にトレーニングつって思いっきりしごかれてたよな」
亜季「そのあと拓海のバイクにもがんばって乗っていましたな」
笑美「うちらのお笑いレッスンも最後までこなしてたなぁ」
鈴帆「幸子しゃんはほんとに根性あってたいしたもんばい」
幸子「みなさん……フフーン。まぁ、ボクはカワイくてカンペキですからね。それくらいはできて当然です!」
拓海「よし! じゃあいまからアタシのバイクでまたどっかに連れてってやるよ。乗んな!」
幸子「ちょっと急用を思い出したので失礼してもいいですか?」
亜季「……ところで気になっていたのですがそのダンベル。もしよかったら見せてもらってもよろしいでしょうか?」
幸子「まだダンベルのくだりやるんですね ……どうぞ」
亜季「……」ジー
鈴帆「亜季しゃん。それがどうかしたと?」
亜季「……間違いありません。この前落とした自分のダンベルです! まさかこんなところにあったとは」
鈴帆「ダンベルって落とすもんちゃうやろ!?」
幸子(よかった。やっぱり誰でも驚きますよね)
亜季「ありがとうございます幸子ちゃん。この御恩は決して忘れません!」
幸子「大げさですね。落とし物が見つかってよかったです」
亜季「なにかお礼ができればいいのですが……」
鈴帆「それやったら、うちから幸子はんにプレゼントしたるわ」
幸子「………………なんでしょうか?」
鈴帆「すっごく嫌そうな顔しとるばい!」
幸子(これまでの流れと鈴帆さんということを考えれば何が出てくるかわかったもんじゃないですからね)
鈴帆「心配せんでも大丈夫やって。ほらこれや!」
■小説
幸子「……おお」
幸子(やっとまともなものが! いったいどんな本なんでしょう)チラリ
■(ホラー)小説
幸子「 」
鈴帆「なんや、お化け怖いんか」
幸子「こ、こ、怖いわけないじゃないですか! ただボクのカワイさにお化けがいっぱい集まってきたら大変だなと思ってるだけです!」
亜季「お化けなんて殴り倒せばいいであります!」
拓海「今度はお化け克服にむけて歌鈴に頼んで特訓だな」
幸子「不安しかないんですけど!?」
──カフェ
イラッシャイマセー
幸子(ふぅ。とりあえず休憩しますか)
本田未央「ん? おーいさっちーじゃん。おはよーう」
新田美波「幸子ちゃん、おはよう」
鷺沢文香「おはようございます」
佐久間まゆ「幸子ちゃん、その本はなんですか?」
幸子「おはようございます! 落ちてたダンベルを渡したらもらったホラー小説ですよ」
美波「ダンベルって落ちてるものなの!?」
幸子「そのくだりはもうやりました」
幸子「……一応ついでに聞いておきますけど、11月25日が何の日かご存知ですか?」
未央「子供のころから好きなんだ、クリスマスパーティー!」
幸子「本田家のサンタさんは一か月前に来るんですね」
まゆ「ホラーといえば幸子ちゃん。この前のアニバーサリーでプロデューサーさんからご褒美でお化け屋敷チケットももらってましたね」
文香「あれから三か月近くも経つのですね。まるで昨日のことのように覚えています」
美波「思い出すだけで体が火照ってきちゃうくらい、楽しかったね」
未央「さっちーも嬉しくて小躍りしてたもんね」
幸子「未央さんがやらせただけですよ! ……楽しかったのはほんとうですけど」
4人「……」ニコニコ
文香「ところで幸子ちゃん。もしよろしければその小説を見せてもらってもよろしいでしょうか?」
幸子「待ってました。どうぞ! ボクからのプレゼントです! お礼はいらないですからね!」
文香「よいのですか? ありがとうございます。なにかお礼をしないといけませんね」
幸子「ボクの話を聞いてました?」
未央「なら、未央ちゃんが代わりに褒美を授けよう!」
幸子「このくだりもついさっき見ましたね」
未央「じゃじゃーん。この前手に入れた映画のチケット2枚! 私は見に行けなくなったからさっちーにあげるよ」
美波「未央ちゃん。太っ腹!」
まゆ「よかったですね、幸子ちゃん」
幸子「……確かにここ最近映画観てませんね。ありがとうございます、未央さん」チラッ
■ホラー映画のチケット×2
幸子「わざとですよね!! わざとこれを渡しましたよね!!」
──事務所前
幸子「まったく! 自分から追い出しておいて事務所に戻ってきてくれなんてプロデューサーさんは失礼ですね!」
幸子(というよりちょっと疲れましたね)ドアガチャ
パン! パン! パン!
全員「幸子(ちゃん)! お誕生日おめでとう!!」
幸子「……」
P「お客さんと言ったな。あれは嘘だ!」
小梅「幸子ちゃんがいない間に、お誕生日会の飾りつけ、してたんだよ」
輝子「そ、その間にみんなに頼んで時間を稼いでもらってたんだ」
友紀「いやートップバッター引いたときはどうなるかと思ったよ」
笑美「うちらの演技もなかなかやったな」
未央「どうださっちー! 驚いたでしょ!」
幸子「まぁなんとなく予想はしてましたけど」
全員「!?」
幸子「あんなに都合よくみなさんとばったり会うわけありませんし。いろいろボケてきましたし。わらしべの流れも不自然すぎましたし。それに……」
全員「それに?」
幸子「ダンベルが落ちてるわけ! ありませんから!!!」
──誕生日会終了後、車中
幸子「ふぅ」
P「楽しかったか?」
幸子「サプライズは必要だったのかわかりませんけど……楽しかったし、うれしかったですよ」
P「……そうか。よかったな」
幸子「はい」
P「……」
幸子「……」
幸子「……プロデューサーさん」
P「……ん?」
幸子「今日わらしべ長者ごっこをして思ったことがあるんです。ボクはいままでいろいろな人に助けられてきたんだってこと」
P「……」
幸子「今日だけじゃありません。アイドルになって、みなさんからいろいろなものをもらって。元からボクはカワイイかったですけど、もっとかわいくなれて」
P「……」
幸子「こんなにたくさんのものをもらっているのに。ボクはみなさんになにかお返しできているんでしょうか?」
P「幸子……」
P「きょう幸子がいろいろもんをもらったときに、幸子もみんなにいろんなもんを渡しただろ?」
幸子「……」
P「みんなも同じさ。幸子がいつもいろんなものをもらってるって思っているように。みんなも幸子からいろんなもんをもらってるって思ってるよ。もちろん俺も」
幸子「プロデューサーさん」
P「幸子。改めて、お誕生日おめでとう」
幸子「……」
幸子「……ふふっ。あはは。やっぱりこんな湿っぽい話、カワイイボクには似合いませんね! 今日はありがとうございました!
誉めてあげます!」
P「おう! また明日からがんばろうな」
幸子「はい! ……あっ、そうだ。プロデューサーさん」
■映画のチケット×2
幸子「今度の日曜日付き合ってください! プロデューサーさんはなにと交換してくれるんですか? フフーン♪」
以上となります。読んでいただきありがとうございました。
幸子お誕生日おめでとう!
>>25
×今度の日曜日
〇今度の休みに に訂正します。
締まらなくて申し訳ない。
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