ルビィ「よーし! がんばルビィ!」 (71)

ルビィ「夏休みの初日に気を抜いていたら正午まで寝ちゃった!」

ルビィ「当然のようにお姉ちゃんに怒られるびぃ!」

ダイヤ「あなたという人は本当にまったく、気が抜けてますわ!」

ルビィ「(そしてお姉ちゃんのお説教の途中に船を漕ぐびぃ!)」

ルビィ「(うとうと……)」

ダイヤ「ルゥゥゥゥビィィイイイイイ!!!」

ルビィ「うゅーーーーーーーーーーー!!!」

ダイヤ「いけませんわ、ああ、いけませんわ!」

ダイヤ「黒澤家の長として、あなたを徹底的にしごきあげてみせます!」

ルビィ「お、おねえちゃぁ!」

ダイヤ「言い訳は聞きませんわ! まずは>>3 です!」

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滝に打たれる

ルビィ「た、た、たきぃぃぃぃぃ!?」

ダイヤ「ええ、古くから滝行とは、精神鍛錬に打ってつけなのです」

ルビィ「でも、この近くに滝なんて無いよね?」

ダイヤ「何を言っているのです、打ってつけの場所があるではありませんか」

ルビィ「……?」

ダイヤ「お寺の近く……滝行……Aqours……」

ルビィ「ぅゅ……! 花丸ちゃんち!」

ダイヤ「よしよし、よくわかりましたわね、それじゃあさっそく……」

ルビィ「花丸ちゃんち?」

ダイヤ「いけませんわ、ああいけませんわ! アポイントメントを取らなければ! 社会人の基本ですわ!」

ルビィ「ルビィたち、社会人じゃなくて高校生だけど……」

ダイヤ「(バァン!)」

ルビィ「お姉ちゃんが机を叩いた!」

ダイヤ「言い訳不要ですわ! さ、さっそく電話をかけるのです!」

ルビィ『もしもし、花丸ちゃん?』

花丸『あー、ルビィちゃん! ちょうどオラ暇してたんだ、お喋りしよしよ』

ルビィ『あのね、今から滝行をしたいんだけど』

花丸『い、今なんて言ったの!?』

ルビィ『え? 今から花丸ちゃんちで滝行をしたいなって』

花丸『危険ずら! ルビィちゃんのみに何かが起こったら、オラ、責任取れないずら!』

ルビィ『ええーーー!? そんなに大変なのぉ!?』

ダイヤ「何をためらっているのです! さ、そこを一押するのです!」

花丸『いま、ダイヤちゃんの声が聞こえたよ……これは罰ゲームとかで気軽に受け入れるものじゃないんだよ』

ルビィ『でも、こうなっちゃったら、お姉ちゃん、もうてこでも動かないよ?』

ダイヤ「(わくわく)」

花丸『わかったよ、お祖母ちゃんに相談してみる、ちょっと待ってて』

ルビィ『うん、通話中でいいの?』

花丸『折り返し電話するね、お祖母ちゃーん』

ツーツーツー

ルビィ「切れちゃった」

ダイヤ「国木田家の滝行は古くから高名で、それはもう何人もの死者が出たとか」

ルビィ「うゆーーーーーーーー!!」

ダイヤ「まあ、それは冗談ですが」

ルビィ「心臓に悪いよぉ」

ダイヤ「ですが、あの勢いのある滝に打たれるのは、それはたしかに厳しいでしょうね」

ルビィ「え? チョロチョロって流れてるあの滝じゃないの?」

ダイヤ「アレは一般向けに公開されているもので、修行のものではありませんわ」

ルビィ「ええーーーー!?」

ダイヤ「いちいち叫ばないでくださいます? 耳がキンキンしますわ」

ルビィ「お姉ちゃんが驚かせるようなことばかり言ってるからだよぉ」

ダイヤ「まあ、それは認めますが、ですが元々ルビィが悪いのであって……くどくど」

ルビィ「ぐー」

ダイヤ「ルゥゥゥゥビィィイイイイイ!!!」

ルビィ「ぴぎゃあ!」

ダイヤ「あ、あなたは! どれだけ寝れば気が済むんですの!」

ルビィ「昨日はアイドルの番組があって……」

ダイヤ「録画をすればいいじゃありませんの!」

ルビィ「だめ! 生で見てこそのファンだよ!」

ダイヤ「(む……この黒澤ダイヤが気圧されている……!)」

ダイヤ「ま、まあ、その意見は認めなくもありませんわ、ですが翌日に影響が出るまで夢中になるのは控えるように」

ルビィ「それは……」

ダイヤ「言い訳不要ですわ、さっ、ひとまずあなたは昼食を採らないといけませんわね」

ルビィ「う、うん」

ダイヤ「サンドイッチを作りましたわ、手軽に食べてくださいな」

ルビィ「ありがとう!」

ダイヤ「お礼は不要ですわ、私もお稽古ごとにかまけてあなたのことを気にしなかったのも悪いのです」

ルビィ「でも……ありがと!」

ダイヤ「ふふ……」

ルビィ「お腹いっぱいになったら眠くなっちゃった……」

ダイヤ「ルゥゥゥゥビィィイイイイイ!!!!」

ルビィ「あ、花丸ちゃんからの電話だ!」

ダイヤ「……むう、まだお説教は終わっておりませんが、出るのです、ルビィ」

ルビィ『うん! もしもし! 花丸ちゃん!』

花丸『念のために霊柩車を呼んでおいたよ』

ルビィ『なにかものすごく不穏な言葉が聞こえたよ!?』

花丸『ああ、ごめんねルビィちゃん、こっちの話』

ルビィ『それで済まされる話じゃなかったよね!? 黒澤ルビィ享年、みたいな話だったよ!?』

花丸『修行というのはそういうものずら、現世の雑念を払い……くどくど』

ルビィ「ぐー」

ダイヤ「ルゥゥゥゥビィィイイイイイ!!」

ルビィ「ぴぎゃ!」

花丸『今寝てた? マルのありがたいお話をスルーしようとした?』

ルビィ「ううん、聞いてたよ! 睡眠学習で!」

花丸『……』

ルビィ『聞いてた! 聞いてたよ!』

花丸『まあ、いいずら、ルビィちゃんもうちのありがたい修行をしたら、日常会話の大切さを身にしみるずら』

ルビィ「は、花丸ちゃぁん!」

花丸『でも正直、夏休みの初日から会えるなんて思ってなかったから、嬉しいよ』

ルビィ『うん、ルビィも』

花丸『これが修行じゃなければもっと良かったんだけどね……』

ルビィ『ま、まあ、それは確かに……』

花丸『でもまあ、シャッキリとしたルビィちゃんもそれはそれで素敵だよ』

ルビィ『そ、そんなに人格が変わっちゃうような修行なの!?』

花丸『お寺のことが書いてあるブログでも、地獄のような滝行と書かれていたずら』

ルビィ『じごくぅ!?』

花丸『でも安心して、帰ってこなかった人はいないから』

ルビィ『そりゃそうでしょぉぉぉぉ!!!』

ダイヤ「話は決まりましたの?」

ルビィ「う、うん!」

ダイヤ「なら車を出しますわ、準備なさい、ルビィ」

ルビィ「え? でもいま通話中……」

ダイヤ「わたくしが花丸さんに話すことがありますの(にっこり」

ルビィ「え、笑顔が恐いなあ……」

ダイヤ「少しスマホを借りますわ」

ルビィ「う、うん……」

ダイヤ「では、手はず通りにお願いしますわ」

花丸「わかってるずら……」

~車の中~

ダイヤ「ふう」

ルビィ「お姉ちゃんも来るの?」

ダイヤ「なんですの? すっかり邪魔者ですの?」

ルビィ「そ、そうじゃないけど、お姉ちゃん忙しいかなって」

ダイヤ「日々きちんと鍛錬していれば、少しの時間くらい空きますわ」

ルビィ「そ、そうなんだ……」

ダイヤ「あんまり嬉しそうではありませんわね?」

ルビィ「うゅ……め、迷惑かけちゃったかなって」

ダイヤ「あなたが習い事を全部ほっぽり出して髪の毛を切ってから総て覚悟済みですわ」

ルビィ「そ、そうなんだ……」

ダイヤ「ふう」

ルビィ「お、お姉ちゃん……」

ダイヤ「なんですの?」

ルビィ「ルビィ、がんばルビィ!」

ダイヤ「まあ、普段から頑張っていれば、こんなことをしなくても良いんですけどね」

ルビィ「ぅぅ……」

ダイヤ「冗談ですわ」

~花丸家~

ダイヤ「来ましたわ!」

花丸「ようこそ、ダイヤちゃんは初めてだね、うちに来るの」

ダイヤ「ええですが、地理は総て把握しておりますわ、ルビィのお友達ですもの」

ルビィ「それ、喜んで良いのか怖がって良いのか……」

花丸「さてと、準備は整ってるけど、ルビィちゃん、本当に滝行するの?」

ルビィ「も、もちろん! ここまで来て逃げたりしないよ!」

ダイヤ「(その意気ですわ、ルビィ)」

花丸「くすっ、じゃあこっち、その服で滝行できないから着替えてもらわなきゃ」

ルビィ「う、うん!」

ダイヤ「しっかり励むのですよ」

~花丸家 着替え中~

ルビィ「うぅ……不安だよ……」

花丸「まあまあ、そんなに怖がらないで」

ルビィ「怖がらせるようなこと言ったのどこの誰なのかなぁ!」

花丸「冗談くらいまともに受け流せるくらいじゃないと」

ルビィ「花丸ちゃんも、お姉ちゃんも真顔で冗談言うから……」

花丸「まあ、冗談じゃないんだけどね」

ルビィ「ほらぁ!」

花丸「冗談ずら」

ルビィ「うう、滝行に移る前に軽く人間不信になりそうです……」

花丸「大丈夫だよ、マルも毎日してるけど、全然平気ずら」

ルビィ「ええ!? 花丸ちゃん毎日滝に打たれてるの!?」

花丸「ダイヤちゃんには内緒だよ、冬場じゃない限り滝行は全然怖くないよ」

ルビィ「たしかに、ちょっと涼しそう」

花丸「まあ、地獄って書いた人は夏に来たんだけどね」

ルビィ「うそぉ!?」

花丸「冗談ずら」

花丸「ルビィちゃん寒くない?」

ルビィ「全然平気、でもなんで長袖なの?」

花丸「そりゃあ……ちょっとは危険だし……」

ルビィ「危険なの!?」

ダイヤ「何をうろたえているのです」

ルビィ「だ、だって」

ダイヤ「安心なさい、死んだ人はいないと聞きます」

ルビィ「お姉ちゃんは滝行しないから良いよね!?」

ダイヤ「ええ、いたしませんわ」

ルビィ「胸張って言われても……」

ダイヤ「ですが応援することはできます、がんばルビィ!」

ルビィ「怒って良いのか、悲しんで良いのか、喜んで良いのか」

花丸「ふふっ、それじゃあ滝に行こうか」

ルビィ「……うん!」

ダイヤ「わたくしも着いてまいりますわ」

 ゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴ……

ルビィ「ひぃ!? なんかゴゴゴって言ってる!」

花丸「あらー」

ルビィ「あらー!?」

花丸「お祖母ちゃんってば張り切っちゃって水量を増やしちゃったみたいだねぇ……」

ルビィ「ええ!?」

花丸「でも大丈夫、もっと水量が多い人は骨折したから」

ルビィ「大丈夫じゃないよぉ!?」

花丸「冗談ずら」

ダイヤ「……(ちょっと軽く引いている)」

ルビィ「ほら、お姉ちゃんも何か言ってよ! ……お姉ちゃん?」

ダイヤ「励みなさいな……」

ルビィ「憔悴しきった表情で言われても!」

ダイヤ「いえ、ちょっと流石に予想外だったもので……」

花丸「ちょ、なに、マルを引きずってどこに連れて行くつもりなの!?」

ダイヤ「良いからこっちに来る!」

ルビィ「……行っちゃった」

ダイヤ「ちょっとちょっと大丈夫なんですの!?」

花丸「大丈夫ずら」

ダイヤ「何を勝手なことを……」

花丸「マルはもうちょっと強い勢いで入ってるけど全然平気だし」

ダイヤ「あなたとルビィを一緒にしないでくださいまし!」

花丸「でもキチンとしつけるようにと言ったのはダイヤちゃんだよ?」

ダイヤ「くっ!」

花丸「マルは言われたとおりにしただけなんだけどなあ……」

ダイヤ「う……」

花丸「約束を反故にするのかなあ?」

ダイヤ「む、むう……ですが!」

花丸「ですが?」

ダイヤ「ルビィの珠のようなお肌に傷をつけたら容赦しませんわよ!」

花丸「大丈夫ずら」

ダイヤ「ほんとうに大丈夫なんでしょうね?」

花丸「傷は治るものだから」

ダイヤ「大丈夫じゃありませんの!?」

花丸「冗談」

ルビィ「あ、戻ってきた」

ダイヤ「大丈夫だということが確認できましたので、安心して望みなさい」

ルビィ「ええ!? でもさっきから水の量は増えるばっかりだし……」

ダイヤ「つべこべ言わずにさっさとお済ましなさい!」

ルビィ「お姉ちゃんなんだか恐いよお!」

ダイヤ「ええい、言うことを聞かないと滝底に突き飛ばしますわよ!」

花丸「どーどー、抑えて抑えて、ルビィちゃん、安心するずら」

ルビィ「今の会話のどこに安心する要素が……?」

花丸「さっきも言ったけど水の調整は百戦錬磨のおばあちゃんだよ」

ルビィ「う、うん……」

花丸「ちょっとマルも体験したことのない水の量だけど安心して!」

ルビィ「できないよぉ!」

花丸「ふふっ、これが終わったら取っておきのごちそうを用意しているから待ってるずら」

ルビィ「花丸ちゃんも食べるの!?」

花丸「おっと、口が滑った」

ルビィ「滑らないで!」

ダイヤ「……」

ルビィ「お姉ちゃん……」

ダイヤ「わたくしは食べませんから」

ルビィ「そこは重視してないよ!」

~滝の前~

ルビィ「チャプチャプと水に入ってきたけど」

ルビィ「夏場なのに結構冷たい……」

ルビィ「水の飛沫が顔を濡らすなあ……」

ルビィ「ふたりとも本当についてこないし……」

ルビィ「ついてこない?」

悪魔ルビィ「へっへ、ここで水に濡れて滝に入ったことにしちまえよ!」

天使ルビィ「いけません! どうせどこかで監視しているはずです、誤魔化せばキツイ罰が待っていますよ!」

悪魔ルビィ「でもよぉ、こんな滝に監視カメラなんて付けられないだろ?」

天使ルビィ「……それもそうですね」

悪魔ルビィ「へへっ、どうせ二人は見ちゃいない、ついてきてもいなんだから……ルビィ!」

ルビィ「行くよ、ルビィは……二人の期待を背負ってるんだから!」

天使ルビィ「その意気です黒澤ルビィ!」

ルビィ「悪魔に負けそうになった天使がなにか言ってるけど……ルビィは行く……みんなのために!」

滝「ゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴ!!!!」

ルビィ「ひえっ!」

天使&悪魔「行っけェェェェェ!!!!」

ルビィ「……!」

ダイヤ「ああ、不安ですわ不安ですわ」

花丸「貧乏ゆすりはやめてずら、床が抜けるよ」

ダイヤ「だって! あんな勢いのある滝なんですのよ? わたくしだって入るのを躊躇しそうなほどに」

花丸「安心して、何のためにマルたちがついてこなかったと思ってるの?」

ダイヤ「それは、花丸さんが!」

花丸「マルたちがついていかなかったのは、ルビィちゃんに逃げ道を作るため」

ダイヤ「……! ですがっ!」

花丸「おそらくルビィちゃんは滝に打たれてくると思う」

ダイヤ「あの子は本当に頑張る子ですから」

花丸「マルたちの仕事は、頑張ったルビィちゃんをちゃんとお迎えすることずら!」

ダイヤ「一本取られましたわ」

花丸「ふふっ、だったらさっさとこねる!」

ダイヤ「ハンバーグなんて吐き気を催しますわ……」

ガタッ!

ダイヤ「ルビィ……!」

ルビィ「え……えへへ……が、頑張ったよ……」

花丸「ルビィちゃん! 唇真っ青! 早く服ぬいで!」

ルビィ「花丸ちゃん……」

ダイヤ「脱がしますわよ!」

花丸「合点承知!」

ルビィ「頑張ったよ、頑張った……」

ドサッ!

ダイヤ「ルビィ!」

花丸「いけない! 救急車!」

~病院~

ルビィ「ぅゅ……?」

ダイヤ「あ。目を覚ましましたわ」

ルビィ「お姉ちゃん? あれ、ルビィは滝に打たれて」

ダイヤ「ええ、見届けましたわ、確かにあなたは滝に打たれて歩いてわたくしたちのもとに帰ってきたのです」

ルビィ「そうなんだ……」

花丸「まあ、マルたちは警察の方々にこってり絞られちゃったんだけどね」

ダイヤ「やっぱり危険だったんですのよ!」

花丸「滝行はダイヤちゃんの指示ずら」

ダイヤ「ああ言えばこう言う!」

花丸「ダイヤちゃんこそ!」

ルビィ「や、やめてよ喧嘩しないで!」

ダイヤ「む」

花丸「そうでした、ごめんなさい」

ダイヤ「ルビィ、あなたは一日病院で検査をしてもらって、明日帰ることになります」

ルビィ「え、でも着替えは?」

花丸「ちゃんと持ってきたから安心する」

ルビィ「う、うん……なんだか眠いや」

ダイヤ「ゆっくりおやすみなさい、事後処理はわたくしたちに任せなさい」

ルビィ「うん……」

ダイヤ「寝ました?」

花丸「寝ました」

ダイヤ「ふう……やれやれ、黒澤家の長になろうとしているものが警察の方々に世話になるなんて」

花丸「訴えないでくださいねー」

ダイヤ「訴える訳ありませんわ」

花丸「ふふっ」

ダイヤ「ふう、やれやれですわ」

花丸「でもこのハンバーグ、どうしましょう」

ダイヤ「わたくしが食べますわ」

花丸「え、でもダイヤちゃん、ハンバーグ苦手なんじゃ」

ダイヤ「妹の不始末も姉の仕事ですわ」

花丸「いや、こればっかりは妹の不始末関係ないんじゃ……」

~翌日 正午 病院~

ルビィ「ふぁ……ふぁわ!」

ダイヤ「ずいぶん遅い起床ですわね」

ルビィ「あれ、あのまま寝て……」

ダイヤ「たるんでいるようですわね! 黒澤家の人間としていけません、ああいけませんわ!」

ルビィ「だ、だって、昨日はいろいろあって……」

ダイヤ「おだまらっしゃい!」

ルビィ「ぴぎ!」

ダイヤ「黒澤家の長として、あなたを徹底的にしごきあげてみせます!」

ルビィ「昨日も聞いたよぉ!」

ダイヤ「言い訳は聞きませんわ! ↓2です!!」

続きます

ダイヤ「人気が出るまで動画投稿ですわ!」

ルビィ「えー!」

ダイヤ「つべこべいわず、さっさと退院の準備ですわ、ほら、着替えなさいな」

ルビィ「あわ! 脱げるよー! 自分で脱げるからー!」

ダイヤ「なら、早くしなさいな」

ルビィ「うう、お姉ちゃん強引だよ……」

ダイヤ「情けない妹のために一肌脱いでいるのですわ!」

ルビィ「脱がされているのはルビィだよぉ!?」

~車内~

ダイヤ「とは言っても、動画投稿なんて荷が重いですわね」

ルビィ「……! でしょ! そうだよ、ルビィには荷が重いよ!」

ダイヤ「これは誰かのアドバイスが必要になりますわね」

ルビィ「えー、やるのー?」

ダイヤ「当たり前ですわ! 黒澤家の人間に撤退と敗北の二文字は似合いませんわ!」

ルビィ「うう……」

ダイヤ「そうだ! 確か善子さんは動画をネットにアップしてましたわね」

ルビィ「善子ちゃん?」

ダイヤ「ええ、いけますわ、ルビィの人気動画投稿者への道! いけます!」

ルビィ「ああ、車が善子ちゃんの家に向かい始めた……」

ダイヤ「そうしょげた顔をしないのルビィ、安心なさい、わたくしも協力いたしますわ」

ルビィ「(ならちょっと諦めてくれないかなあ……)」

~善子の家~

善子「へえ……夏休みも早々、何の連絡もなしに練習をサボった言い訳がそれと」

ダイヤ「ほんとう、もうしょうがないですわ、ルビィってば」

善子「(死んでも自分の罪を認めない気だなこのシスコン)」

善子「まあいいわ、動画投稿ならヨハネの得意技!」

善子「ふっ……ヨハネと堕天……してみない?」

ルビィ「でも人気投稿者の道は遠いよね? 一朝一夕じゃ身につかないよね?」

善子「話聞きなさいよ……ま、確かにそうね、でもヨハネたちはスクールアイドル、ならその理転を利用しない点はないわ」

ダイヤ「さすが善子さん、今からネットに投稿して0から始めるのは時間がかかりすぎると読んだのですわね」

善子「ヨハネ! ……ひとまずは自己紹介からはじめてみましょうか?」

ルビィ「え? もうカメラ回ってるの?」

善子「んなわけないでしょ、練習よ練習、それとも噛み噛みで天然キャラの道行くの?」

ルビィ「れ、練習する……! Aqoursの練習だって頑張るんだから!」

ダイヤ「な、なぜわたくしがインタビュアーを」

善子「協力してくれるんでしょ? 動画には撮らないであげるんだから、それくらいしなさいよ」

ダイヤ「む……まあ、一度言ったことを撤回するのはわたくし、嫌いですの。良いですわ、ルビィ、まずはネットの皆様に名前を紹介しなさい」

ルビィ「黒澤ルビィです、これでいいの?」

善子「ちっがーう!」

ダイヤ「違いますわ!」

ルビィ「ぴぎっ!」

善子「名前を紹介するというのは、自分の名前、呼ばれたいあだ名、自己アピール!」

ダイヤ「そして最後に決めポーズ!」

ルビィ「……た、大変なんだね」

善子「いい、人気投稿者になる以上、もう自分はイチコンテンツを意識しなさい! 羞恥心なんて二の次! 場合によってはキャラを演じることも!」

ルビィ「善子ちゃんみたいな?」

善子「ヨハネ! それとヨハネはキャラじゃない!」

ダイヤ「まあ、善子さんは置いておいて」

善子「おくな! そうね……堕天はもう使っちゃったから……」

ダイヤ「男装キャラで売り出します?」

善子「そうね! ルビィは胸もないし」

ルビィ「ええー……」

ダイヤ「髪の毛を後ろで縛って……そう、紅なんて名前はどうでしょう!」

ルビィ「(お姉ちゃんノリノリだなあ……)」

ルビィ「俺の名前は紅……です」

ダイヤ「カットカットカーット! もっと傲岸不遜なキャラを目指しなさい!」

ルビィ「お、俺の名前は紅……紅って読んでくれない?」

善子「千歌みたいなキャラになるんじゃないのよ!」

ルビィ「俺の名前は紅! 好きに呼んでくれ」

ダイヤ「やれば出来るんじゃありませんの!」

ルビィ「フッ……仔猫ちゃん、俺の歌のテクニックに満足してくれたかい?」

善子「でもまだちょっと声が高いわね……」

ダイヤ「そうですわね」

善子「ちょっとダイヤ、吹き替えてよ」

ダイヤ「なんでわたくしがっ!」

善子「協力してくれるんでしょ?」

ダイヤ「……むう」

ルビィ「お、お姉ちゃん……が、頑張って!」

ダイヤ「ええい! わかりましたわ! わたくしの台詞に動きを合わせなさい! ルビィ!」

ダイヤ「お、俺の名前は……く、紅……」

善子「どもんな!」

ダイヤ「俺の名前は紅!」

ルビィ「(無言で眼鏡をくいっとあげる)」

ダイヤ「俺の眼差しは死の視線、だからこの眼鏡で封印を施している……」

ルビィ「(困って腰を振る)」

善子「なんでそこで腰を振るのよ! フラガールか!」

ルビィ「だって、お姉ちゃんが……」

善子「いい、今のあんたは女! でもね厨二病の男装ガール! 多少のあんたの演技は目をつむるから、必死で厨二病を演じるのよ!」

ルビィ「(無言で善子に視線を送る)」

善子「なんでヨハネを見るの!」

ダイヤ「(無言で首を振る)」

善子「いや、あんたは喋りなさいよ!」

善子「ふう、ダイヤのアテレコもまともになったし、そろそろ動画を撮りましょうか」

ダイヤ「あら、もうこんな時間ですの?」

ルビィ「あ!」

ダイヤ「困りましたわ、もう門限まで時間がありません」

善子「泊まってけばいいじゃないの」

ダイヤ「……ご迷惑ではありませんの?」

善子「いや、まあ、あんたらが来た時点でだいぶ迷惑被ってるんだけどさ」

ルビィ「でもお姉ちゃん、無断外泊は……」

ダイヤ「仕方ありませんわ、ルビィ、スマホを借りますわよ」

善子「そう来なくっちゃ」

ダイヤ「もしもし……ダイヤです……ええ……少しお喋りに夢中になってしまって、ええ、はい……お願いしますわ」

ルビィ「……」

善子「……」

ダイヤ「家からお手伝いさんが来て、着替えを持ってこさせますわ、その……善子さん」

善子「ヨハネ!」

ダイヤ「わたくし、床でも構いませんわ」

善子「ふっ、愚問ね……ヨハネに付き合うなら……今夜は寝かせない……でしょう?」

ルビィ「えー!? 不眠不休で動画を撮るのー!?」

ダイヤ「(無言で頷く)」

善子「だから喋りなさいって」

~善子の家 深夜3時~

ダイヤ「何をしているんですの?」

善子「ああ、これは画面演出よ」

ルビィ「手から光線出したりするやつ?」

善子「そうね、今までは画面演出をしてなかったんだけど、ちょっと動画にインパクトを与えようと思って」

ダイヤ「あら、良いですわね、どんな風になりますの?」

善子「紅、ちょっとカメラに向かって手をかざしてみて」

ルビィ「こう?」

善子「この何の変哲もない手をかざしただけのポーズが」

ダイヤ「あら?」

ルビィ「すごい! 手から謎のオーラが!」

ダイヤ「これ、なかなか行けるんじゃあないんですの?」

善子「やっぱりそう思う! ヨハネの案素晴らしい?」

ルビィ「うん、ちょっとルビィも衣装に凝るばかりじゃいけないかなって思ってたの!」

ダイヤ「メイクにも限界がありますわ」

善子「なんか画面演出していると色物って感じがしてさー」

ダイヤ「ああ、わかりますわ、画面演出で大したことないのをカバーしようとしているんですわよね」

善子「でもよく考えたら、うちらスクールアイドルじゃん、一般ピーポーよりもよっぽど花があると思わない?」

ルビィ「え、そ、そうかな?」

ダイヤ「そうですわ! 美少女揃いのAqoursのメンバーなら、多少画面演出をしたところで、それは本当のオーラに昇華するのですわ!」

ルビィ「えー……」

善子「よし、バリバリにやるわよ! バリバリに画面演出よ!」

ルビィ「(あ、これ翌朝思い出して、頭抱えるやつだ)」

~翌朝~

ダイヤ「さあ、シャキッとなさいな、ルビィ」

善子「ダイヤ徹夜も平気なんだ」

ダイヤ「妹は後一時間は夢の中でしょうけど」

ルビィ「きゅきゅきゅ……」

ダイヤ「ちょっと紅が入ってますわね」

善子「……そう?」

ダイヤ「さて、昨日アップした動画の調子を見ましょうか」

善子「んな、スクールアイドルネットにアップしたからって、すぐ反応が出るわけじゃ」

ダイヤ「昨日は、スクールアイドル新時代! アテレコ厨二病少女キタコレって言ってたじゃないですか」

善子「深夜テンションマックスだったの!」

ダイヤ「そうですわね、まあ、わたくしも少ししか自分を見失ってはおりませんでしたが」

善子「ダイヤが一番ノリノリだったじゃない……」

ルビィ「……ふぇ」

ダイヤ「さて、スクールアイドルのサイトを……あれ?」

善子「どったの? ああ、新人のうちはよくある話よ、ネットにアップしても全然お客さんが来なくて」

ダイヤ「ぴ、ピックアップスクールアイドルにAqoursが選ばれてますわ!」

善子「ああ、でもちょっと遅すぎたくらいよね、町のイベントでは結構歌わせてもらってたし、ネットの評判も」

ダイヤ「違います! 動画が、動画が……紅のモノになっておりますわ!」

善子「ウソッ! まだアップしてから3時間くらいしか経ってないわよ!」

ダイヤ「ルビィちゃんイメージチェンジカワイイ 吹き替えはダイヤさんか ところどころ見切れてる善子ちゃんカワイイ」

善子「さく……削除! 削除!!!!」

ダイヤ「できませんわ! もう元の動画の他にミラーもたくさん作られて……コラ画像みたくなってますわ!」

ダイヤ「と、着信ですわね……鞠莉さんから?」

善子「(うわぁ……理事長チョクの電話だよ……)」

鞠莉『ハァイ、ダイヤ、昨日はAqoursの素敵な動画を上げてくれたみたいじゃない?』

ダイヤ『と、当然ですわ、宣伝担当はわたくしと善子さんですもの』

鞠莉「ねえ、動画はちゃんと見た?」

ダイヤ『会心の出来ですわ』

鞠莉「おだまり! なぁにが会心の出来ですわよ! あんなの浦の星の恥よ! 恥!」

ダイヤ「な! そこまで言うことは無いでしょう! 実際人気も出ているようですし」

鞠莉「炎上しているのよ! 大炎上! なんでAqoursのプロモーションとして動画を取ったかなあ!」

ダイヤ「炎上……? 善子さん、炎上しておりますの?」

善子「待って、もうちょっとコメントを遡ってみる……うわぁ」

鞠莉『今すぐ動画を消して、謝罪動画を作ること! いいわね!』

 後日謝罪動画をアップして、

ルビィ「紅のやったことは、許してくれない?」

 と、千歌ちゃん流謝罪方法で謝ったところ。
 またしても大炎上。

 Aqoursに関連する動画をすべて消してもらい、
 お姉ちゃんと鞠莉ちゃんのパワーでAqoursとか紅とかをNGワードにしてもらった結果。
 事態の沈静化まで2日かかった。

ダイヤ「ああ、もう! これもすべてルビィがたるんでいるせいですわ!」

ルビィ「悪乗りしたお姉ちゃんと善子ちゃんが今回は悪いと思うな!」

ダイヤ「ああ! 言い訳は聞きたくありません!」

ルビィ「正当な意見だよ!」

ダイヤ「ええい! おだまらっしゃい! ルビィには↓をやってもらい、精神を鍛え直します!」

ダイヤ「ルビィにはウェブデザインをしてもらいますわ!」

ルビィ「ええ!?」

ダイヤ「何を驚いているのです、パソコンの授業は受けているでしょう?」

ルビィ「学校のパソコンの授業だけでウェブデザインって出来るの?」

ダイヤ「……」

ルビィ「お姉ちゃん!?」

ダイヤ「Aqoursでやっているブログとは違いますの?」

ルビィ「違うよぉ!? ウェブデザイナーさんっていうのはね……」

ダイヤ「ふむふむなるほど、プログラミングなどの技術もいると」

ルビィ「わかってくれた? これこそ一朝一夕じゃできないよ」

ダイヤ「たしかにそうですわね、ですが」

ルビィ「ですが?」

ダイヤ「黒澤家に敗北の二文字は許されません」

ルビィ「無茶とか無謀の文字も辞書登録しようよう!」

ダイヤ「ですが、ルビィの言うとおり無理難題をこの夏休みの間にするわけにも行きませんわ」

ルビィ「ほ……」

ダイヤ「ですから、わたくしたちはわたくしたちができることをするのです」

ルビィ「選択を変えるっていうのはないんだね」

ダイヤ「ちょうどいいですわ、Aqoursのブログのアカウントがあります、それを適当にいじって、素晴らしいものに作り変えて……」

ルビィ「どうしたのお姉ちゃん」

ダイヤ「ブログにログインできませんわ……メールアドレスもパスワードも合っているはずなのに」

ルビィ「ルビィが打ってみようか?」

ダイヤ「お願いしますわ」

ルビィ「……うん、ログインできなくなってる」

ダイヤ「ええと、ブログの管理は鞠莉さんの仕事だったはず……電話してみましょう」

鞠莉『ハァイ! マリーよ? そろそろ電話がかかってくるのではないかと思ってたわ』

ダイヤ「じゃあ。わたくしが言いたいこともわかりますわね?」

鞠莉『やぁん、そんな怖い顔しないでダイヤ、カワイイのが台無しよ?』

ダイヤ「電話越しに人の表情を思い浮かべないでくださいまし」

鞠莉『まあ、一言で言うならば』

ダイヤ「言うならば?」

鞠莉『夏休みの間はAqoursのデータ関連はいじるなってこと』

ダイヤ「聞いてませんわ!」

鞠莉『ダイヤのその小さな胸に聞いてみなさい、自分がAqoursをどうしたのか』

ダイヤ「む、ですがそれは良かれと思って!」

鞠莉『良かれと思ってやったことがあの体たらくですか!』

ダイヤ「ま、鞠莉さん……」

鞠莉『いいですか、Aqoursの名前を使ってあなたは大炎上をしました、これからスクールアイドルをするにあたって……』

ダイヤ「わ、わかりましたわ! データはいじりません!」

鞠莉『それでよし、で、今回あなたは何をするつもりだったんですか』

ダイヤ「う、ウェブデザインを……」

鞠莉『それでデータをいじって? サイトをめちゃくちゃにするつもりでしたか?』

ダイヤ「めちゃくちゃにするつもりはありませんわ!」


鞠莉『ダイヤ、あなたのシスコンっぷりはもうみんなの知るところだけど、それに付き合わされる方も考えたほうが良いわよ』

ダイヤ「ですがこれはルビィを立派にするための……!」

鞠莉『確かに、今後Aqoursの活動をするにおいて、元μ'sの矢澤にこのようにネットに強い人間がいたほうが良いのは事実よ』

ダイヤ「でしょう?」

鞠莉『でもそれは今でなくても良い』

ダイヤ「ですが! わたくしたちには……!」

鞠莉『確かにAqoursに残された時間は少ないかもしれない、マリーたちが卒業して、ルビィたちを見守ることはできなくなる』

ダイヤ「……」

鞠莉『でもそれは仕方のないことよ、それにあなた達は姉妹なんだから、学校という枠組みを外れても見守ることは出来るはずよ』

ダイヤ「鞠莉さん……」

鞠莉『ああでも、Aqoursと関係ないブログなら、マリーは関知しないわ』

ダイヤ「というのは?」

鞠莉『Aqoursに所属する黒澤姉妹とも関係ない、Aqoursの名前も出さない、ネット上に存在する一ブログならスルーしてあげるわ』

ダイヤ「それ、本当にブログとしての存在価値がありますの?」

鞠莉『ごめんなさいダイヤ、別にあなたを疑っているわけではないのよ?』

ダイヤ「いえ……わたくしも状況に流された部分はありますから」

鞠莉『でもね、ついアテレコで他校のスクールアイドルがどうのこうの言っちゃって大炎上しちゃう、かわいそうなオツムのダイヤをね』

ダイヤ「ぶん殴りに行きますわよ」

鞠莉『ドヤ顔で宙返りするスクールアイドルのマネ』

ダイヤ「いやあ、深夜のテンションで恐いですわね!」

鞠莉『そうね、ブログを作るなら、スクールアイドルとも関係のないことが良いわね』

ダイヤ「書くことがなくなってしまうのですが」

鞠莉『ウェブデザインを学ぶんでしょう? なら内容なんて二の次でいいのよ』

ダイヤ「ふふ、鞠莉さんには敵いませんわね」

鞠莉『でしょう? 伊達に理事長やってないのよ』

ダイヤ「そうだわ、じゃあ、コミックの話題をしましょう」

鞠莉『いいじゃない、スクールアイドルの話題でもないし、Aqoursとも関係なさそう……』

ダイヤ「ダイヤのエー」

鞠莉『反省するつもりはあるの、ダイヤ』

ダイヤ「冗談ですわ」

鞠莉『本当にお願いね、Aqoursに関連するようなことは本当に言わないで』

ダイヤ「わかっていますわ、ウェブデザインは水をイメージしたものにしようかと」

鞠莉『ぶっ殺すわよ、ダイヤ』

ダイヤ「じ、冗談ですわ」

鞠莉『ふう、そろそろ果南の態度が限界だから電話を切るわ』

ダイヤ「あら、一緒なんですの?」

鞠莉『書類仕事を手伝ってもらっているの』

ダイヤ「あなた書類仕事を何だと思ってますの!」

鞠莉『きゃー、こわいわー! それじゃあ、シャイニー!』

ダイヤ「ふう……」

ルビィ「お姉ちゃん、鞠莉ちゃんなんだって?」

ダイヤ「とりあえずAqoursとは関係のない、もちろんAqoursのメンバーであるわたくしたちとは関係のないブログなら良いということでしたわ」

ルビィ「それって、ルビィたちの身バレを許さないってことだよね」

ダイヤ「ですわね」

ルビィ「できるかなあ……」

ダイヤ「安心なさいな、姉に任せるのです」

ルビィ「(お姉ちゃんに任せて大炎上しちゃったんだけどなあ……)」

ダイヤ「Aqoursに関連することは禁止ですから、当然スクールアイドルに関連することは禁止です」

ルビィ「身バレも禁止だから、自分自身に関することも書けないね」

ダイヤ「ええ、ということは演じるしか無いのですわ」

ルビィ「紅みたいに?」

ダイヤ「まあ、紅は炎上してしまったので使えませんが、演じるという……」

ルビィ「お姉ちゃん?」

ダイヤ「いるではありませんか、演じるという点において打ってつけの人物が!」

ルビィ「もしかして、善子ちゃん? でも2日連続で善子ちゃんのお世話になるのは……」

ダイヤ「ぶっぶーですわ! 確かに善子さんとは仲が良いですが」

ルビィ「……? あ、もしかして」

ダイヤ「さっそくアポを取って、桜内梨子さんの家に向かいますわ!」

ダイヤ「もしもし、桜内梨子さんの携帯電話でよろしいでしょうか?」

梨子『は、はい! 桜内です!』

ダイヤ「ふふっ、緊張なさらないでも大丈夫ですわ、わたくしと梨子さんの仲ではありませんか」

梨子『……ダイヤさんと私ってそんなに交流ありましたっけ』

ダイヤ「Aqoursのメンバーとして一緒ですわ」

梨子『一緒に遊んだ経験とか、と言うか、通話してくるのも初めてですよね』

ダイヤ「こ、これから交流を深めればよいのですわ」

梨子『それはまあ、たしかに』

ダイヤ「そこで」

梨子『あ、あんまり変なことには巻き込まないでくださいね、紅とか……』

ダイヤ「ご安心なさいな、今日は徹夜などいたしません」

梨子『変なことを否定してくれないんですね』

ダイヤ「いいですの? あなたは地味で控えめな美術部員」

梨子『それはオトノキにいた頃の話で……』

ダイヤ「しかし今はAqoursのセンターを務めることもある輝くアイドル!」

梨子『うう、それは、千歌ちゃんに背中を押されて』

ダイヤ「その高い歌唱力と抜群の音楽センスで、皆を引っ張る活動家!」

梨子『だ、ダイヤさん……何かふらちなことを考えてません?』

ダイヤ「地味で控えめから、華麗なるアイドルに変貌したその姿……わたくしたちに享受していただけませんか?」

梨子『いや、それは千歌ちゃんに背中を押されて……今も、自分なんかがって思ってますよ?』

ダイヤ「ステージに上がればみんなアイドル……そういうことですわね」

梨子『話を聞いてます? 私の本質は地味なのは変わらないですよ』

ダイヤ「そう! それ!」

梨子『え?』

ダイヤ「地味な自分を華麗に変貌させたその過程を私達に教えていただきたいのです!!」

梨子「ええ……?」

梨子『まあ、過程というのは良くは分かりませんが、こんな私にできることがアレば……』

ダイヤ「ええ、ええ、よろしくお願い致しますわ」

梨子『それではまた後で』

ダイヤ「はい」

ルビィ「お姉ちゃん、梨子ちゃん協力してくれるって?」

ダイヤ「わたくしの権謀術数があればこんなものですわ、豚も木に登るというものです」

ルビィ「(お姉ちゃんの紅モードがまだ微妙に取れてない件)」

ダイヤ「いいですのルビィ、今回はあくまで控えめな梨子さんから、華麗なるアイドルに変貌した梨子さんにインタビューをして、変身術を学ぶのです」

ルビィ「でも梨子さん、そういうの詳しくなさそうだけど良いの?」

ダイヤ「ちょっとでもきっかけをつかめれば……あ、そうだ! 梨子さんからウェブデザインを学ぶ方法もありますわね!」

ルビィ「(お姉ちゃんまだウェブデザインに誤解がありそう……)」

ダイヤ「あら、美術センスはウェブデザインにも必要なんですのよ、うふふ」

ルビィ「あれ? ルビィ声に出てた!?」

ダイヤ「妹の考えていることくらい手に取るようにわかりますわ、うふふ」

ルビィ「(うふふじゃないよー! 怖いよー!)」

~梨子の家~

ダイヤ「お邪魔いたしますわ」

ルビィ「お邪魔します……」

梨子「どうぞいらっしゃい、二人は初めてね?」

ダイヤ「ええ、今度自宅にも招待いたしますわ」

梨子「ドレスコードとか必要じゃないですよね」

ダイヤ「普通の家ですわ、千歌さんの家よりも少し大きいくらい」

ルビィ「(少し……?)」

梨子「(あえてツッコまずにいよう)」

ダイヤ「さて、本日ココに来たのは他でもない、梨子さんにしかできないことを頼むのですわ」

梨子「は、はあ……電話ではよくわからない内容でしたけど」

ダイヤ「有り体に言えば……そうですわね、変身するコツでしょうか」

梨子「変身……ですか?」

ダイヤ「自称地味の梨子さんが、アイドルになって輝くまでを教えていただきたいのです」

梨子「は、はあ……自称ではなく私は地味なタイプだと思いますけど……」

ダイヤ「まあまあ、そこは認めていただかないと話が進みませんわ」

梨子「でもなんでその、輝く云々の話に?」

ダイヤ「わたくしたち、ウェブデザインをするんですの」

梨子「……なんでまた突然」

ダイヤ「元々はルビィがふぬけているのを治すために色々していたのですが」

梨子「ルビィちゃんはそれほどだらしないとは思いませんけど……」

ダイヤ「滝行をして、人気投稿者になった今、何が出来るのかと考えたのです」

梨子「それで、ウェブデザインを? それなら、適任が他にいるんじゃ……」

ダイヤ「わたくしたち、身を偽らねばなりませんの」

梨子「え?」

ダイヤ「鞠莉さんに釘をさされてしまいました、何かをするのは良いけど、Aqoursや黒澤家のことは使うなと」

梨子「(それは遠回しに何もするなって言われたんじゃ……)」

ダイヤ「そこでですわ、普段から自分を偽って輝いている梨子さんに、自分を偽装するすべを聞きたいのです」

梨子「それはそれで、よっちゃんという適任がいるような……」

ダイヤ「善子さんはだめですわ、昨日行ってしまいましたし」

梨子「な、何のしばりなんだろう……」

ダイヤ「ウェブデザインを学ぶために、いえ、するために、自分を偽装する方法を教えて下さいまし」

梨子「は、はあ……」

ダイヤ「というわけでさっそくご教授いただきますわ」

梨子「それは良いんですけど、私そんなにキャラクターを偽ってます?」

ダイヤ「偽ってますわ」

梨子「そんなに断言されるとちょっと傷つきます……」

ルビィ「梨子ちゃん、がんばルビィ!」

ダイヤ「この振り付けを見て下さい」

梨子「これって、千歌ちゃんに見せられた、μ'sのPVですか」

ダイヤ「この黒髪の、園田海未にご注目を」

梨子「はあ……」

ダイヤ「いま、今ですわ!」

梨子「投げキッスしましたね」

ダイヤ「園田海未は、ファンから大和撫子の鏡、リアル金剛力士像と呼ばれる堅物の人物として知られていますわ」

梨子「ええ!? でも今たしかに、いい笑顔で投げキッスしましたよ?」

ダイヤ「梨子さんは普段とアイドル時のギャップがこれくらいありますわ」

梨子「ええー……?」

ルビィ「でも梨子ちゃんは普段からキラキラ輝いていると思うんだぁ……」

梨子「いやいやいやいや、ルビィちゃんのその評価は嬉しいけど、私って地味なタイプだし」

ダイヤ「梨子さんを地味なタイプと仮定して」

梨子「か、仮定なんですか」

ダイヤ「例えば、恋するの衣装を見るに」

梨子「……?」

ダイヤ「潜在的に露出癖がありますわ!」

梨子「あ、ありません! ていうかみんな同じような衣装です!」

ダイヤ「では、この曲のPVをご覧頂きましょう」

梨子「や、やめて、今のフリだとすごく恥ずかしい……!」

ルビィ「きれいなところだよねー」

ダイヤ「ええ、よくロケハンを許可してくださいましたわ、もっともμ'sは空港でPVを撮ってますが」

梨子「空港て」

ダイヤ「見てくださいまし、梨子さんが足を大股開きに!」

梨子「してません! ルビィちゃんもまるでそうであるかのように頷かないで!」

ルビィ「衣装を手伝っておいてなんだけど、ちょっとエッチだよね」

梨子「ああ、もう、変なこと言うと帰ってもらいますよ!」

ダイヤ「では真面目に、本当に地味なタイプだったら、こんな風にAqoursで踊れませんわ!」

梨子「な!」

ルビィ「確かに、こんなにノリノリで踊れないかも……」

梨子「ルビィちゃんまで!」

ダイヤ「さあ、どうなんですの、まだ、梨子さんは地味なタイプだとおっしゃるつもりですか!」

梨子「い、いや、地味は地味なりに全力を尽くそうと頑張っているんです!」

ダイヤ「おだまらっしゃーい!」

梨子「ふええ!?」

ダイヤ「アイドル時に輝いているのは紛れもない事実ですわ、それは認めなさい」

梨子「は、はあ……」

ダイヤ「それで、PVや作曲をしている時に、何を考えているんです?」

梨子「え? いい曲にしようとか、みんなの足を引っ張らないようにしようとか?」

ダイヤ「ふむふむなるほど」

梨子「あとはとにかく必死さですね」

ルビィ「梨子さんも必死なんだ……必死さん仲間だね!」

ダイヤ「なるほど、演じるにおいて必要なのは必死さなのですわね」

~1時間後~

梨子「ふっ……くくく……!」

ダイヤ「ひえっ……」

梨子「必死さが、必死さが足りませんよダイヤさん!」

ダイヤ「キャラが変わりすぎですわ!」

梨子「キャラが変わりすぎですぅ!」

ダイヤ「きゃ、キャラが変わりすぎですぅ!」

ルビィ「キャラが変わりすぎだわ」

梨子「そう! ルビィ……じゃない。真紅! いい、だわわ加減だわ!」

ルビィ「(だわわ加減って)」

梨子「金剛石! あなたは一番の人気キャラ! もっとあざとく! 男性に媚びを売るように!」

ダイヤ「ですぅ!」

梨子「おー、よちよち、よくできまちたわねー」

ダイヤ「あったかいですぅ、人肌が恋しいですぅ」

梨子「……それで次の指令はウェブデザイン! そのキャラのままブログを作れば招待が露見することはないわ!」

ダイヤ「ですぅ!」

ルビィ「そうなのだわ!」

誤字訂正 ×招待 ○正体

~黒澤家~

ダイヤ「ひどい目に遭いましたわ……」

ルビィ「まさか梨子ちゃんが演技のことになると人が変わるなんて……」

ダイヤ「自称地味なんて言って申し訳なかったですわ、あれ素だわ、絶対」

ルビィ「お姉ちゃん口調!」

ダイヤ「おっと、いけませんわ」

ルビィ「Aqoursと黒澤家と関係ない、真紅と金剛石のブログ……でも内容がよくわからないね」

ダイヤ「内容はひとまず、政治、宗教、スポーツの話題は避けましょう、荒れますわ」

ルビィ「紅みたいに?」

ダイヤ「よもや、ミッドナイトキャッツやイーストハート、ミュータントガールズにあそこまでのファンが居るとは……正直μ'sageの噛ませだとばかり……」

ルビィ「不覚だったね、μ's専のお姉ちゃんとしてはUC_Gを散々バカにしたのがいけなかったね」

ダイヤ「まあ、スクールアイドルは今回は触れないのだから、関係ありませんわ」

ルビィ「だね、スクールアイドルってことはアイドルの話題もなしかな」

ダイヤ「ふむ……なかなか難しいですわね、わたくしのお稽古ごとのブログなどつまらないですし、何より黒澤家関係ですわ」

ルビィ「ルビィも趣味って言ったら服飾とかアイドルの追っかけとか……」

ダイヤ「まさか、ウェブデザイン以前にブログの内容で悩むとは思いもしませんでしたわ」

ダイヤ「……ふむ、では幼少期の頃を思い出してみましょうか」

ルビィ「子どもの頃?」

ダイヤ「今のことを書けと言われても無理なら、過去から記憶を引っ張り出すしかありませんわ」

ルビィ「子どもの頃かあ……お稽古事ばっかりだったなあ……」

ダイヤ「あら、花丸さんや善子さんとよく遊んでいたではありませんか」

ルビィ「花丸ちゃんはいたけど?」

ダイヤ「男の子みたいな格好をした女の子が善子さんですわ」

ルビィ「ふぇぇぇ!?」

ダイヤ「あなたもしかして性別を勘違いしておりましたの?」

ルビィ「だって小学校では離れちゃったし……」

ダイヤ「まーったく、あなたには観察眼というものがありませんわね」

ルビィ「今度善子ちゃんに謝らないと……」

ダイヤ「そういえば、あの頃はアニメ番組なども観ておりましたわね」

ルビィ「公共放送くらいしか観た記憶ないよぉ!?」

ダイヤ「アニメ……そうだわ、アニメのブログにしましょう!」

ルビィ「アニメ!?」

ダイヤ「アニメと言えば……そうですわねえ……」

ルビィ「善子ちゃん? また善子ちゃんのところに行くの?」

ダイヤ「いえ、流石にそれは悪いですから、ネット検索で調べてみましょう」

ルビィ「そうだね!」

ダイヤ「えーっと、パソコンを起動させて……ルビィ、あなたはスマホで情報を」

ルビィ「がんばルビィ!」

ダイヤ「そうですわね……適当にアニメ、感想で検索しますか」

ルビィ「ルビィはアニメ、ブログで検索するね!」

ダイヤ「えーっと……? これは、なんですの?」

ルビィ「どうしたの?」

ダイヤ「いえ、たしかにブログの体をしているのですが、名無し? という人の書き込みが中心ですわ」

ルビィ「ああ、それはまとめブログだよ」

ダイヤ「まとめブログ?」

ルビィ「簡単に言えば地下掲示板の書き込みを取捨選択して、それをブログに載せるんだよ」

ダイヤ「……書き込みに著作権みたいなものは存在しませんの?」

ルビィ「(無言で目をそらす)」

ダイヤ「なるほど……ですが、検索の一番上に出る以上、これは注目を集めているブログなのですわね」

ルビィ「そうだね、でもあくまでも一次ソースじゃないから、扱いには注意が……」

ダイヤ「これならわたくしたちでもできそうな気がしません?」

ルビィ「え?」

ダイヤ「地下掲示板の書き込みを適当にかき集めて、ブログに載せれば良いんでしょう?」

ルビィ「いや、まあ……そ、そうかな?」

ダイヤ「それに数多くの広告収入があると観ますわ、通販サイトのリンクはたくさん貼ってありますし」

ルビィ「いや、でもね、お姉ちゃん、まとめブログは人によっては嫌悪の対象で」

ダイヤ「ふむ……ならば人の役に立つブログを目指せばよいのでは?」

ルビィ「どういうこと?」

ダイヤ「まとめブログという時点で嫌われる対象であるのなら、それを解消するような善意のブログを作れば良いのですわ!」

ルビィ「なるほど! さすがお姉ちゃん!」

ダイヤ「ではわたくしはしばらく地下掲示板に潜ってみます、ルビィはブログの用意を」

ルビィ「えっと、まとめサイトを参考にすればいいから……適当に上位のブログを参考にすればいいよね……」

ダイヤ「ウェブデザインをしっかり考えるのですよ」

ルビィ「でもルビィ、通販サイトの人気商品なんてわからないよ……」

ダイヤ「偉大なる先人は言いましたわ、凡人は模倣し、天才は盗む、と」

ルビィ「凡人は模倣し……天才は盗む……」

ダイヤ「天才になるのです……ルビィ……」

ルビィ「わかった! 盗む! スティールするよ! がんばルビィ!」

ダイヤ「ふふ、その意気ですわ」

ルビィ「ええと、盗むってことは自分のものにするってことだから……ええと、適当にリンクを踏んで、URLをコピペして」

ダイヤ「さて、わたくしも。地下掲示板には雑多な書き込みがありますから、本当に取捨選択をしなければいけませんわね」

ルビィ「それじゃあお姉ちゃん、アニメ会社にとって都合の良い書き込みを集めたらどうかな?」

ダイヤ「なるほど! 公式のアンテナブログとして集客をすれば、広告収入も……Aqoursの衣装代不足も解消ですわ!」

ルビィ「そしたらそしたら、公式から依頼が来たりしちゃうかも!」

ダイヤ「なるほど!」

ルビィ「ああでも最初のうちはお客さんが来ないよね……」

ダイヤ「ふむ、たしかにそうですわね」

ルビィ「何かいい方法はないかな?」

ダイヤ「ふーむ……先程の言葉に従えば、盗む……そうですわ!」

ルビィ「!?」

ダイヤ「最初のうちは王手のまとめブログの記事を拝借するふりをすれば良いのです」

ルビィ「そ、それって著作権侵害じゃないの!?」

ダイヤ「どうせ他のブログも地下掲示板の書き込みの無断転載をしているのですから、自分のサイトを転載されたって文句はいえませんわ」

ルビィ「たしかにそうだよね!」

ダイヤ「さ、今すぐ始めますわよ! どうせならブログ自体も大手のまとめブログを模写すれば良いのですわ!」

ルビィ「がんばルビィ!」

ダイヤ「さて、じゃあ私は各アンテナサイトにリンクを貼ってもらい……そうだわ!」

ルビィ「!?」

ダイヤ「地下掲示板にわたくしたちのブログをひたすら宣伝するのですわ! そうすればサイトに来る閲覧者も増えます!」

ルビィ「たしかに! じゃあ、さっそくAqoursのLINEに書き込みをしてもらうように連絡するね!」

ダイヤ「頼みましたわ!」

~AqoursのLINE~

黒澤ダイヤ『ブログを作りましたわ! 皆で宣伝してくださいまし!』

Chika『宣伝? お客さんにこんなサイトってアピールすればいいの?』

YOU!『あはは、ダメだなー千歌ちゃんは、こういうのはスクールアイドルのブログで大々的にURLを貼れば良いんだよ』

LIKO『そ、そんなことをしたら荒れに荒れるんじゃあ……』

果南『それで、どんなブログを作ったの?』

黒澤ダイヤ『ふふん。まとめブログですわ!!』

卍ヨハネ十『はあ!?』

Chika『まとめブログって何?』

YOU!「さあ?」

マリー『これはお仕置きが必要ですねぇ……』

ダイヤ『なんですの! わたくしたちは合法的に儲けようと』

マリー『今から行くから早まるんじゃないわよ!』

ダイヤ「まずいですわ……鞠莉さんが来る……!」

ルビィ「どどど、どうしよう! せっかくブログを作ったのに!」

ダイヤ「ええい! ブログの非公開設定を今すぐ公開にするのですわ!」

ルビィ「でも!」

「動くな」

ルビィ「ぴぎぃ!?」

ダイヤ「なっ、狼藉者!」

「動けばその顔に穴が開く」

ルビィ「お、お姉ちゃん……」

ダイヤ「鞠莉さんのところから来た刺客ですわね……! 何が目的ですの!」

「……」

ダイヤ「お答えなさいな!」

「戦場ではお喋りなやつほど死ぬものだ」

ダイヤ「なっ、ここは黒澤家で戦場ではありませんわ!」

ルビィ「ツッコむところはそこじゃないよ!」

オゥオゥオゥオゥ……

ダイヤ「はっ! これは鞠莉さんのヘリコプターの音!」

ルビィ「風圧で窓がガタガタ揺れてるよぉ!」

鞠莉「ご苦労様」

「……」

ダイヤ「何をしているんですの! 非常識ですわ!」

鞠莉「非常識はどちらなの!」

ルビィ「鞠莉ちゃんの口調が……」

ダイヤ「わ、わたくしのどこがおかしいっていうんですの!」

鞠莉「滝行! ウェブデザイン! 人気投稿者! 全てがおかしい!」

ダイヤ「どれも単体で見れば何もおかしくありませんわ!」

鞠莉「ダイヤ! もとに戻りなさい!」

ダイヤ「わたくしは何も変わってはいませんわ!」

鞠莉「仕方ない……やりなさい!」

「悪いな」

ダイヤ「なっ、その銃で何を……!」

パァン!

鞠莉「ルビィ」

ルビィ「……」

鞠莉「今見たことはすべて忘れるのよ」

ルビィ「お、お姉ちゃん……!」

鞠莉「安心して、空砲よ」

ルビィ「え?」

鞠莉「恐怖が限界まで来て、緊張の糸が斬れたのよ、ちょっと目覚めたときに暗示をかければちょっとおかしなダイヤはもとに戻るわ」

ルビィ「で、でも、お姉ちゃんはルビィの為を思って」

鞠莉「でも、今回の件は全部ルビィのためになってないわ」

ルビィ「それはそうだけど」

鞠莉「そんなしょげた顔しないの、大丈夫よ、目覚めたダイヤは硬度10って言うくらい、お硬いダイヤだから」

ルビィ「……」

~1週間後~

ダイヤ「ワレワレハヒトツ」

ルビィ「ま、鞠莉ちゃーん!!!!!!」

鞠莉「……ちょっと強化しすぎちゃったみたいねえ」

BADEND

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