宥「みんなにもポカポカしてほしい」 (29)
阿知賀女子麻雀部
ミーンミーン
穏乃「あ゛、あ゛づい……」グテーッ
憧「もう夏だもんねぇ……」
玄「クーラーつけよっか?」
灼「賛成」
憧「私もー」
穏乃「これ以上暑くなるとジャージ脱ぎたくなるよ……」
宥(私は平気なんだけどなぁ)
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玄「お姉ちゃん、クーラーつけても大丈夫?」
宥「う、うん……たぶん大丈夫」
宥(10分くらいなら)
玄「えいっ」ピッ
ゴオオオオオッ
憧「あー、いい風来るわー」
穏乃「涼しいー♪」
灼「これで麻雀も集中できるね」
玄「よーし、部活頑張るよ!」
10分後
宥(さ、寒い……)ブルブル
宥(やっぱり冷房は慣れない……)ブルブル
宥「く、玄ちゃ〜ん……」
玄「?」
宥「私、体冷えちゃったからお外ぶらついてくるね……」
玄「あ、ゴメンお姉ちゃん。クーラー止めようか?」
宥「ううん、気にしないで」
宥(皆に気をつかわせちゃ悪いからね……)
玄「そう?」タンッ
穏乃「あ、それロンです!」
玄「ズガーン!」
ガラッ
宥「はぁ……」
宥(これからずっと部室は冷房ガンガンで寒いんだろうなぁ)
宥(……)ブルブル
宥(冷えた部室を思い浮かべるだけで憂鬱になっちゃう……)
宥(はやくお外に出よう……)
宥(校庭が一番あったかいかな?)
———
——
—
ミーンミーン ギラギラッ
宥「えへへ、お日様あったかーい」
宥(体もポカポカしてきて調子よくなった気がする)
宥「……ずっとここにいたいなぁ」
宥「でも、皆待ってるだろうし部室に戻らなきゃ」ヨイショ
ヒューッ パサッ
宥「ひゃっ」
宥「な、何かが空から落ちてきたけど……」
宥「これは……チラシ?」
宥「えぇと……」
———————————
あなたは知ってますか?
———————————
効きすぎた冷房の中にいると体の調子が悪くなったことがありませんか?
激しい温度変化に繰り返し晒されたり、身体にとっての異常事態が続くと大変危険です!
自律神経が上手く動かず、血液の循環や免疫力が弱まったり、ホルモンバランスが崩れることも!
引用元:夏なのに冷える? 冷房病をやっつけろ!
私達の生活は文明の発達により暮らしやすく便利になりました
一方、機械に頼り過ぎて体力が低下してきてるのもまた事実なのです
私達はますます人類の体力は低下するのではないか、健康が損なわれるのではないかと危惧しています
この記事を読んで少しでも興味を抱いたらあなたも参加してみませんか?当日は健康にいい生姜湯も用意してあります!
あった会(熱田会) アクセスの詳細は裏面で
宥「すごくあったかそうなイベント……」
宥(行ってみようかな?)
———
——
—
数日後 会場内
宥「玄ちゃんには内緒で来ちゃった」
宥(受付の人に言われた通り講演の時間まで待機してよう)
5分後
「では、先生の登場です。拍手でお迎えしましょう!」
パチパチパチパチ
先生の話をまとめると以下の通りだった
・今は冷房機器が増えて、昔の人に比べると私達は冷房が利いてる部屋にこもりがちだ
その結果、運動不足や忍耐力の低下など生きてく上で様々な問題が生じている
・また、企業・家庭で多くの電力を使うようになった
限られたエネルギー資源を大切に使用することが大事 エコ社会を目指そう
・そのためにもまず暑さに慣れること。体も心もポカポカになろう!
自分自身があったかくなれば誰にでも優しくなれて世界は平和になるよ!
宥(なんだかすごく納得しちゃった……)
宥(私もこんな社会ならもっと元気に生きれるかなぁ?)
「どうですか?あなたも"あった会"に入会しませんか?」
宥「……」
———
——
—
松実家
玄「ただいまー!」
宥「玄ちゃん、お帰り〜」
ムワッ
玄「うっ」
玄(あ、暑い……)
玄「お姉ちゃん、クーラーつけてもいい?」
宥「玄ちゃん、もう少し我慢しよ……?」
玄「へ?」
宥「最近、ちょっと暑くなったらすぐクーラーつけるから……」
宥「お姉ちゃん、冷房に頼りっぱなしはよくないと思うの」
玄「そ、そうだね……」
玄「最近ずっとクーラーつけっぱだから身体によくないよね!」
玄「うん、私我慢するよ!」
宥「ありがとう〜」
玄(それにしても……)
玄(これだけ暑いと冷たい料理が食べたくなるなぁ)
玄「じゃあ、今日の晩御飯は冷やし中華作るよ!」
宥「あっ、私もう準備しといたよ?」
玄「へ?」
宥「はい、熱々のおでん〜♪」グツグツ
玄「……」
それから数日後
宥「こ、こんにちは〜」
「あ、松実さんいらっしゃい。今日も先生の講演を聴きにきたの?」
宥「はい」
「ほら、もうすぐ始まるから隣座って!」
宥「失礼します……」
「あったかいが正義!冷房機器は全て敵なのです!!」
宥「ふぅ〜む、なるほどなるほどなるほど〜」
講演会は夜遅くまで続いた
———
——
—
数週間後 阿知賀女子麻雀部
穏乃「そういえば、最近宥さん部室に顔出さないけどどうかしたんですか?」
灼「風邪?」
玄「風邪じゃないんだけど……」
憧「?」
玄「お姉ちゃん、最近様子が変なんだ……」
玄「部活休むようになってから夜遅くに帰ってくるし」
玄「クーラーつけさせてくれないし……」
穏乃「エコに目覚めたのかな?偉いですね!」
灼「宥さんは寒がりだからクーラーの件はともかく……」
憧「それって……」
玄「?」
憧「援交してるんじゃ……」
玄「え、えんこう?」
ガラッ
宥「こんにちは〜」
穏乃「あ、宥さん!」
宥「みんな久しぶり〜」
穏乃「もう〜、全然部室にこないから心配してたんですよ?」
宥「ごめんね〜」
宥「よいしょっと」ガタッ
穏乃「何ですかそれ」
灼(携行缶?)
宥「え〜いっ!」
ビチャビチャビチャッ!
憧「うわっ!……って宥姉、何してんの!?」
穏乃「すんすん……この匂い……ガソリン?」
宥「正解〜」
宥「なんと今から〜」
宥「クーラーがあるこの部屋を燃やしちゃいま〜す」
宥「みんなもポカポカしていってね〜」
宥「あったかくなることは体にも心にもいいんだよ?」
宥「そうだ、皆も一緒に"あった会"に入ろう?幸せになれるよ〜」
宥「あはっ……あははははははは!!」
憧「宥姉……?」
灼「宥さんの様子がおかしい……!」
穏乃「ど、どうしよう」
玄「お姉ちゃんを止めなきゃ!」ガシッ
宥「!?」
憧「ナイス、玄!」
宥「い、い、い……」
玄「?」
宥「いやぁあああああああああああああああああああああ!!」
宥「離して離して離して離して離して離してぇえええええ!!」ジタバタ
玄「うわわ、お姉ちゃん暴れないで——」
ツルッ
玄「あっ」
ゴチーン!
玄、宥「……」
穏乃「だ、大丈夫ですか!?」
玄、宥「…………」
憧「あ、頭打って気絶したの……?」
灼「と、とりあえずハルちゃん呼ばなきゃ!」
———
——
—
病院
玄「う、う〜ん……」
穏乃「玄さん!?」
玄「あれ……穏乃ちゃん?それに、憧ちゃん、灼ちゃん、赤土さんも……」
憧「もうしゃべって平気なの!?」
玄「たぶん大丈夫……あれ、ここどこ?」キョロキョロ
晴絵「病院だよ、病院」
玄「病院?」
灼「玄、憶えてない?」
灼「宥さんと玄がもみくちゃになった後、頭打って気絶したんだけど……」
憧「ほんと心配したんだからね」
穏乃「玄さん1週間も意識不明でしたから混乱するのも無理はないですよ」
玄「……」ボーッ
玄「あっ……」
玄(思い出した……)
玄「そ、それでお姉ちゃんは——」
シーン……
玄「?」
晴絵「実は……」
晴絵「宥は昨日、病院から失踪したんだ……」
———
——
—
退院してからはみんなでお姉ちゃんを探し回りました
ビラを配ったり、赤土さんのブログで呼びかけたり、捜索願も出しました
でも、お姉ちゃんは見つかりませんでした
あれから数年が経ちました
阿知賀女子麻雀部のみんなは卒業して、私は松実館で働いています
1年に1回くらいは穏乃ちゃん、憧ちゃん、灼ちゃん、赤土さん、みんなで松実館に集まって麻雀を打つことだってあるんだよ?
久しぶりにみんなの顔を見ると疲れなんて吹っ飛んで、また明日からお仕事頑張ろうって気持ちになります
……そして、同時に思い出すのです
阿知賀女子麻雀部で過ごしたお姉ちゃんとの楽しい日々を
そういえば、風の便りで最近お姉ちゃんによく似た人があやしい教団の布教活動を行っている
ってきいたけど私には難しくてよくわからないのです……
ねえ、お姉ちゃん
お姉ちゃんがいつ帰ってきてもいいように私はずっと待ってるよ
でも、やっぱり心配なんだ
だからはやく帰ってきて元気な姿を見せてよぉ……
長野
ピンポーン
「ワッハッハ、今出るぞ〜」
ガチャッ
「何の用だ?ワハハー」
「こんにちは。私は"あった会"に所属している、松実宥といいます」
「……あなたも"あった会"に入会しませんか?」
おわり
ごめんね宥姉……
ワハハオチのために犠牲になってもらっちゃった
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