【モバマスSS】です
――――プロダクション、事務室
時子「そんなこと、言われなくても知っているわよ。ちひろが以前からカレンダーに書いていたもの」
つかさ「だったら早く祝いに行ってあげたほうがいんじゃね? ちょうど今、色んなメンツでパーティーしながら祝ってるようだし」
時子「あらつかさ、貴女がわざわざそんなことを気にするなんて、どういう風の吹き回しかしら?」
つかさ「いや別に。でもほら言うじゃん、親しき仲にも礼儀ありって。大事だろ、そういうのさ」
時子「礼儀が必要なほど親しくはないわよ、私とあの子は」
つかさ「えっ」
時子「なによ」
つかさ「いや、マジで言ってんの時子さん? マジならちょっと引くわ、ないわー」
時子「……躾けるわよ?」
つかさ「そいつは勘弁。でもあれだけ懐いてくれてる相手に親しくないってのはどうよ?」
時子「向こうが勝手にしているだけのことよ。私としては……正直なところ、理解できないわ」ハァ
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※財前時子様
http://i.imgur.com/j3cjKGA.jpg
※桐生つかさ
http://i.imgur.com/QgQ0VHK.jpg
つかさ「……あっ、理解出来ない。なるほどね、そういうこと。……ふむ、なら前言撤回、いいじゃんそういう仲」ニッ
時子「貴女、勝手に一人で納得してなに笑っているのよ。気持ち悪いわね」
つかさ「これでもアイドルしてる身に、気持ち悪いは少し傷つくんだけど」
時子「言われてもしょうがないわよ。今のつかさは勘違いで一人悦に入っている哀れな存在だもの」
つかさ「へぇ、アタシがどう勘違いしてるって?」
時子「まず、私は法子とは親しくないのは事実よ。あの子が私の領域に勝手に入り込んでうろついているだけ、分かるわね?」
つかさ「なるほど」
時子「目障りだから払いのけるために相手をしているだけで、あの子を大事にしているだなんて勘違いをする連中もいるけれど」
つかさ(どう見ても大事にしてるようにしか見えないことだらけなんだよなー)
時子「そもそも、あの子にはもっと相応しい場所があるのよ。仲良くするべき人物は他に大勢いるわ」
――ガタッ
つかさ(ん……?)
時子「私に構わず、持つべき友人と、愛される場所でのんきに笑っていれば、それで良いのよあの子は」
時子「それなのに、なにを思ったのか私につきまとっては楽しそうにしている。これは時間の無駄遣いではなくて?」
つかさ「あー……そう考えてんのか時子さんは」
時子「貴女だって、時間を正しく使えない相手は嫌いでしょう」
つかさ「そりゃま、アタシらの時間は有限だからな。でも、本人が無駄って思ってなきゃ悪くない選択だってあるわけだし」
時子「法子自身がどうかではなく、私が気にするのよ。あの子はもっと、やるべきことが他にたくさんあるのだから」
つかさ「つまり、法子が自分に構って大切な時間をドブに捨ててるんじゃないかって思ってんのか」
時子「ええ、そうよ」
つかさ「……時子さん、『語るに落ちる』って知ってる? やっぱ法子と超仲良いんじゃねーか」
時子「……つかさ、ぬか床を弄りすぎてとうとう脳みそまで発酵してしまったようね……」
つかさ「ぬか床バカにするのは流石の時子さんでも許せないからな!?」
時子「じゃあなに、私が今まで発言した内容を考察した結果、貴女はやはり法子と私が仲が良いと、本気で思ったということ?」
つかさ「ソレ以外にどう考えろって? アタシには、時子さんが法子のこと大事にしてる惚気話にしか聞こえなかったからな」
時子「どこをどう聞けばそうなるのか、本当に理解出来ないわ」
つかさ「なら、さっきの発言聞いて本人がどう思ったか見れば理解出来るっしょ。入り口のほう見てみなよ!」
時子「は? 何を言って――」
ギィィィ……
みちる「ああー扉を閉めるつもりがうっかり間違ってー!」
法子「きゃー!? み、みちるちゃんなにして……!」
時子「」
つかさ「みちる、ナイスフォローじゃん!」
みちる「あははー、なんのことかわかりませんねっ! あたしはパンに夢中で間違って扉を押しちゃっただけですから!」モグモグ
時子「……盗み聞きをしていたの?」
法子「ち、ちがうよ時子さん! ただ、みんなに誕生日プレゼントいっぱい貰ったから、カバンに入れようと思って!」アセアセ
みちる「そうそう、そのために事務室に戻ってきたら、ちょうど会話が聞こえてくるタイミングだっただけです!」
法子「だ、だからプレゼント半分持ってくれてたみちるちゃんは悪くなくて、あたしも盗み聞きなんてするつもりなくて!」アセアセ
つかさ「でも、聞こえちまったんだろ?」
法子「そ、それは、そうなんだけど……」
みちる「ちなみに聞いている間の法子ちゃんは、すごくころころ表情が変わってましたっ!」モグモグ
法子「みちるちゃん!!」カァァ///
時子「…………そう、そういうこと」
法子「え、えと、時子さん、あ、あたし、そ、その……」
時子「…………チッ……はぁ……全く、完全にタイミングが狂ったようね……」ボソッ
法子「えっ」
時子「なんでもないわ。法子、一つだけ聞くわ。貴女の誕生日パーティーの会場にちひろはいなかったの?」
法子「ち、ちひろさん……? そういえば、最初にお誕生日おめでとうございますって言ってくれたけど、その後ってたしか……」
みちる「なにかを思い出して急いで出かけられていましたね! 『取りに行くものがあったのでした』なんて言っていた気がします」
時子「……つまり『アレ』を忘れていたってことね……疲れ気味の様子だったのは嘘ではなかったと……らしくない」
法子「と、時子さん……?」
時子「……慣れないことはするものじゃないわね。私は連絡しないといけない用事が出来たから、少し失礼するわ」スクッ
法子「あ……」ションボリ
時子「……予定が狂ったから諦めて言うけれど、少し待ってなさい法子。いいわね?」
法子「……! 分かったっ♪」パァァ
つかさ「……なんだ、やっぱり素直じゃなかっただけじゃん」
みちる「二人の仲がいいことは、パンがおいしいのと同じくらい当然のことですからねっ!」モグモグ
時子「…………みちる、さっきから食べているパンと、左手に持っているパンの入った袋は、貴女にとってどれだけ大事かしら?」
みちる「もちろん、あたしにとっては生きる意味そのものかとっ!!」
時子「そう……」スッ
みちる「あれ? 時子さん鞭なんかとりだしてどうし――」
ヒュパパパパパァァン!!!
みちる「あたしのパンがーッ!!?」
つかさ「うっわ、見事に一瞬で全部ボロボロの粉にされたじゃん……」
法子「みちるちゃんに当ててないの、やっぱり時子さん優しいなぁ」
みちる「うわーんっ!! パンーッ!!」
時子「……これで私を辱めた罪は不問にしてあげるわ。腹も立つけれど……きっかけにはなったから」
つかさ「そ。ならさっさと行ってきなって。時間を無駄にする人は嫌いなんっしょ?」ニコッ
時子「……フンッ、貴女にもいずれお仕置きするべきね。まぁいいわ……法子、大人しく待っていなさい」
法子「はーいっ!」
バタンッ
みちる「うぅ……あたし、あたしのパン……いっぱい買ってたのに……こんなに粉々に……」グスッ
法子「み、みちるちゃん泣かないで……ドーナツならここにあるから!」
みちる「パンが食べたいですぅ……」グスグス
つかさ「はぁしょうがねーな。みちるのパンが犠牲になったのアタシが少しは原因だろうし、代わりの買ってやるよ」
みちる「っ!? ほ、ほんとうですか!? どれだけ買ってもいいんですねっ!!」
つかさ「……いや、限度はあるからな? アタシの財布空にしないで」
みちる「やりました法子ちゃん! 今日は法子ちゃんの誕生日という嬉しい日であり、あたしのパン祭りの日にもなりそうです!」
つかさ(あっ、これは覚悟しとかないとダメそうだ)
法子「え、えっと……二人共、その、ありがとう」ペコリ
つかさ「なにがだよ」
法子「偶然だったけど、時子さんの気持ちを聞けて、それで、その……」
みちる「なんのなんのっ! 先程のパーティー会場で法子ちゃんがキョロキョロされてた理由をみんなが理解してましたから」
法子「そ、そうなの!?」
みちる「ええ、だからあたしもなんとか出来て嬉しいです。あとでプロデューサーや有香ちゃん達にも報告しておきますねっ!」
法子「さ、流石にそれは恥ずかしいよ……///」
つかさ「ま、良かったじゃん。誕生日ってのは、嬉しいことがいっぱいあって良い日。なら、こういうのもアリだろ」
法子「つかささん……」
つかさ「アタシとしてはノロマが許せないとか言っといて、回りくどいことしてる時子さんをどうにか出来てよかったしさ」
みちる「お節介ですねーっ!」
つかさ「みちるが言うな。つーわけで、アタシらはこの後邪魔になるだろうし退散するわ」
みちる「あたしにはたくさんのパンも待ってますからっ!」
つかさ「……そうだな……ま、ともかく誕生日おめでと法子。時子さんと楽しくやれよ?」
法子「時子さんと一緒だといつだって楽しいから大丈夫っ♪」
みちる「うーむ、法子ちゃんのこの笑顔は強い。心配はなさそうですねっ!」
つかさ「じゃ、アタシらはこれで。あとはご自由な」ニッ
みちる「もしパンが必要になったら連絡してくださいね! すぐに駆けつけますから!」ニコニコ
バタンッ
法子「……本当にありがとう……みちるちゃん、つかささん……みんな優しいなぁ」ガサッ
法子「とにかく、時子さんに待てって言われたし、プレゼント、カバンにしまいながら待とうっと」
法子(……なんだか、すごくドキドキする……楽しみだなぁ♪)
――――1時間後、プロダクション、事務室前
ちひろ「本当に申し訳ありませんでした。私としたことが、頼まれていた物をフランスに取りに行くのを忘れていたなど……」
時子「本当ね。お陰で私は恥ずかしい思いをすることになるわ、まったく……」
ちひろ「……でも、本当は手渡すことが出来るのが嬉しいんですよね?」
ヒュパンッ!
ちひろ「いたっ!」ペシッ
時子「……なるほど、貴女は少し休むべきね。今の手加減した鞭を喰らうなんてらしくないわ」
ちひろ「大丈夫です。ハロウィンや6th Anniversaryが迫っていますし、アシスタントたるものこの程度で休んでいられませんよ」ニコッ
時子「……そう。なら私からはこれ以上言うことはないわ」
ちひろ「結構です。それにしても時子ちゃんすごいですね、フランスで最も名のある金細工師の方とお知り合いなんて……」
時子「昔の縁よ。向こうが覚えていてくれて良かったけれど」
ちひろ「『絶対忘れられない、あの素晴らしい鞭捌きを死ぬまでにもう一度味わいたい』とのことでしたよ」
時子「クククッ……なら今度コレを作ってくれた『お礼』をしに会いにいくべきかしらね」
ちひろ「スケジュールは調整しますけど?」
時子「ええ、今度頼むわね。でも今は、こちらに集中させてもらうわよ」
ちひろ「分かりました、では私はこれで。法子ちゃんを楽しませてあげてくださいね」
時子「誰に向かって――」
――シーン
時子「もういない……チッ、本当に今日は色々と……けど」
ガチャ
法子「……! おかえりなさい時子さんっ!!」パァァァ
時子(……あの顔に免じて許すべきね、今日だけは)クスッ
法子「……あれ、時子さんなにかあった? すごく嬉しそうだけど」
時子「嬉しそう? 馬鹿なことを言わないでほしいわね、貴女の気のせいよ。それより」チラッ
時子「そのぎっちり中身の詰まったカバンはなんなのかしら?」
法子「ええっと……みんなから貰ったプレゼントを詰めてたら……こんなことになっちゃって……」
時子「他に適当な袋を持ってきてそっちに移しなさいよ」
法子「そうしたのがこれだよっ。全部で3つも袋使っちゃった……」ドサッ
時子「……なるほど、ほんと愛されてるわね貴女」
法子「あたしもみんなのこと大好きだからかなっ♪」
時子「はいはい、そうね」ポイッ
法子「わわっ!?」ギュッ
時子「なら、そんな貴女にそれを上げるわ。大きさ的にも邪魔にならないでしょう?」
法子「これ……時子さんからのプレゼント……?」
時子「……一応、誕生日になにも用意しないのは可哀想でしょう? 本当はちひろから貴女に渡る予定だったのに、こんな」
法子「ありがとう時子さん! あたし、時子さんから直接貰えてすっごく嬉しいっ♪」ニコニコ
時子「……フンッ」
法子「ねぇ時子さん、このプレゼント、今開けてもいいよねっ」
時子「好きになさい」
法子「やったっ♪ それじゃあ――」ゴソゴソ
――キランッ
法子「……!? わ……ぁ……すごく、キレイなペンダント……こんなの、初めてみた……」
時子「また少し大人に近づいたのだから、そろそろ一つくらいちゃんとしたジュエリーを持っていて良い頃でしょう。貴女でも」
法子「け、けど時子さん、あたしこんな、高そうなの……」
時子「事情を話したらタダで作りたいと言うのがいたからお金は掛かっていないわ、安心しなさい」
法子「そ、そうなんだ……でもあたし、似合うかな……」
時子「あら、ドーナツをあんなに好きな法子からそんな言葉が出るなんて意外だわ。ちゃんとペンダントを見たの?」
法子「えっ? ――あっ! よく見たら、飾りの真ん中部分、これ、ドーナツになってるんだ……すごい……!」キラキラ
時子(一見しただけではそうとは見えず、至近距離から細工を見れる者だけがドーナツに気付く……難しい注文に良く応えてくれたわ)
法子「こんなキレイなドーナツのペンダントがあったんだ……時子さん、着けてみてもいい?」
時子「それはもう貴女にあげたのよ、どうするかは法子の自由でなくて?」
法子「うんっ! それじゃあ……んしょ……んっ……」ゴソゴソ
法子「あ、あれ……うまく着けられ……っ……んっ……うーっ」
時子「……ククッ、やっぱり一つ年齢が上がったところで、急に大人らしくはなれないものねぇ」
法子「時子さぁん……」グスッ
時子「チッ、今日だけよ。ほら、ペンダントを貸しなさい」
法子「お願いしまーす!」
時子「ちょっと腕を回すわよ……じっとして」ゴソゴソ
法子「あっ……」
法子(……時子さんが……ちかい……)ドキドキ
時子「――ほら、着けれたわよ」
法子「……わぁー! ねぇ時子さん! あたし似合ってる!? 似合ってるよね♪」
時子「そうね……離れて見ると……まだまだペンダントの雰囲気に負けているわ、残念ね」
法子「あぅ! そっか……」ションボリ
時子「でも、貴女ならいずれちゃんとそのペンダントに似合った女性になれるはずよ」
法子「そ、そうかな……そうだといいなっ!」
時子「ええだから今は……一度しか言わないわよ? ――お誕生日おめでとう、法子」ニコッ
法子「……ぁ……うんっ! ありがとう、時子さんっ♪」
――その後、貰ったペンダントが嬉しかった法子は誕生日の間、出会う友人達全員に
ペンダントを自慢し、時子はその度に温かい視線に晒されて微妙に不機嫌になるのであった。
〈終〉
今日はドナキチ……いえ、法子ちゃんの誕生日です、めでたい!
そしてドーナツで調べ物をしていたらドーナツモチーフの綺麗なペンダントを見かけて、
気づけばこれが出来ていた
読んでくださった方ありがとうございました
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