モバP「法子にドーナツ買ってくか」晴人「プレーンシュガー」 (97)

P「へぇ、こんなところに移動ドーナツ店ね……」

P「珍しいな。法子にお土産でも――」

店長「あら~、いらっしゃーい」

P(Oh、カマさんや……)

店長「どうしました? お客様?」

P「あ、いえ……なんでも……」

店長「なんと! ただいま新作ドーナツができたてなんです~」

P「新作……?」

店長「そうですそうです! なぁーんとー」

店員「これ! しょっぱいドーナツ! 塩スイーツ!」

P「へぇ……美味そうかも。じゃあそれと、チョコ系もいるかな? それから――」

P・晴人「「プレーンシュガー」」

P「……ん?」

晴人「ありゃ?」

店長「あら、ハルく~ん! どーお、新作?」

晴人「新作?」

店員「そうです。流行の塩スイーツ! 美味しいですよ」

晴人「へぇ~……」

店長「……」ニコニコ

晴人「うん、じゃあプレーンシュガー」

店長「」ズコッ

P(そこは新作じゃないのか!?)

晴人「……って、あれ?プレーンシュガー残り1個なの?」

店長「あ、そうそう。だから、ね? 今日は……」

P「あ、いいですよ。じゃあ俺の分別のにしますから」

店員「」ズコー

晴人「あ、どうも」

P「いえ。どれも美味そうですし」

晴人「じゃあ、その分ぐらいは俺につけといてよ」

店長「……新作」

晴人「今度ね」

店長「えぇー……」

P(結局チョコ系と新作っていう塩スイーツとおまけもちょっともらったちゃった。得したかな)

晴人「いや、悪いね。ありがとう」

P「いえ、あそこの常連なんですか?」

晴人「まぁそんなとこ……美味いんだ。プレーンシュガー」

P「へー。今度機会があったら買ってみるかな……」

晴人「新作も買ってあげるとたぶん喜ぶよ。店長、いろいろ凝ってるし」

P(……ならなんでプレーンシュガーなんだ?)



法子「Pさーんっ!」

椎名法子(13)
ttp://i.imgur.com/ZsWo7gn.jpg


P「ん? おぉ、法子。撮影終わったのか?」

法子「うん、オッケーもらっちゃた! えへへ、がんばったんだよ?」

P「そうか。じゃあ、ご褒美! さっきそっちで買ったドーナツだ」

法子「ドーナツ!? わぁい!」

晴人「……」モグモグ

法子「……その人は?」

P「え? あぁ、偶然会った人だよ」

法子「なるほど……ふむふむ……」

晴人「ん? なんかついてる?」

法子「あなたもなかなかのドーナツファンと見ました!」

晴人「あ、どうも……ドーナツファンって何?」

P「……さぁ?」

法子「シンプルなシュガーのみ。そういうのもいいよねー」

P「法子のはチョコドーナツだけど」

法子「それでいい……それがいいんだよ。さっすがー、わかってる♪」

P「お気に召したなら何より。休憩終わる前に戻っとこうか」

法子「はーい」

P「じゃあ、また。縁があったら」

晴人「あぁ、うん。また……」

法子「ドーナツパワー全開っ! よーし、午後もがんばれちゃいそう♪」

P「そりゃよかった」



メデューサ「……ふぅん。アイドルね」

法子「はーい、パシャッ! どうかな? このあたりでは――」


P(最近は仕事も増えてきてるし、法子も楽しそうだな……よかった)

P(俺ももっと頑張らないと。まだまだ上を目指さないと)

P(料理もできるし、そっちの仕事をとってくるのもいいな……)


法子「――以上、おさんぽブラリでした! 来週は――」


P(……と、考えてる場合じゃないか。ドーナツの残りもあるしな)

法子「えへへ、どうだった?」

P「よかったよ。ドーナツパワーのおかげかな?」

法子「そうかも……本当に美味しいよ、このチョコドーナツ!」

P「へぇ……こっちの塩ドーナツも美味いぞ。食うか?」

法子「それもいいなぁ……それじゃあ次は……」

P「あ。他にイチゴドーナツとかも――」

法子「チョコドーナツ!」

P「……だろうな」

法子「だって、美味しいんだもん……もう一個だけ。だめ?」

P「いいや、言うと思ってた。ほい」

法子「わぁーい! やった、んー♪」モグモグ

P(食べてる顔可愛いな………と?)

??「………」

P(……ずいぶん厚着の………女? 男……? なんか怪しいな)

法子「Pさん?」

P「……あ、いや。そうだ法子、あっち……に………」

??「……そんな露骨に逃げなくても、いいんじゃない?」

P「っ……!?」

法子「え? な、なに?」

P(今、確かに道の先のほうにいたのに……振り返ったら、後ろ!? いったい何が……)


  バサッ……

ファントム「傷ついちゃうわ、ねぇ?」

法子「お、おば、おばけぇっ!?」

※※※※

 今日のお仕事は順調で。
 美味しいドーナツももらえて、ツいてるなって思ってた。

 だけどいつもの帰り道で、食べ終えてないドーナツを落としちゃいそうなびっくりする出来事。
 目の前に……お化けがでてきちゃった! ど、どういうこと!?


P「な、なんだお前……!?」

ファントム「何って……うーん。名乗るほどのものじゃないわ……ただそこの子に、ちょっとしたプレゼントをあげたいの」


 Pさんが驚いて質問をしたら、お化けはあたしを指さした。
 プレゼント? ……ドーナツだったら嬉しいけど。あんまり食べすぎると怒られちゃうから困っちゃうな。

 ちょうど食べてるところだし。そんな、なんだか少しズレたことを考えてたら――


ファントム「そう。素敵な絶望を――」


  おばけの

        かみが     つめが      の び         て

 


ファントム「……ふぅん。イケずなんだから」

法子「え、ぁっ……」


 目の前まで来てたおばけのツメと髪が、銀色の光に弾かれた。
 動けないでいたあたしとPさんを無視して、お化けが横を向く。

 その視線の先には、さっき見たドーナツファンのお兄さん。
 和やかな好青年、みたいな感じは鳴りを潜めて、ちょっと怖い表情をして、その手には……


P「銃……?」

晴人「や、どうやら縁があったみたいだな……あいにくと、だけど」

ファントム「私としては、魔法使いさんには会いたくなかったんだけど。ご縁がなかったってことで帰らない?」

晴人「お帰り願うのは、こっちだ」


   ≪シャバドゥビタッチヘンシーン!  シャバドゥビタッチヘンシーン!≫

 お兄さんがベルトへと手をあてると、高らかに……場違いなぐらいに明るく、声が鳴り響く。
 おばけは完全にお兄さんを警戒している様子で、あたしとPさんが場違いな気がしてくる。

 大きな指輪を手にはめて、お兄さんが構えた。


晴人「……変身!」


 ≪フレイム!  ヒー!  ヒー! ヒー ヒー ヒー!≫

  真っ赤な魔方陣が、お兄さんの伸ばした左腕の先にあらわれる。
  少しずつお兄さんへと近づいて、飲み込まれた部分は黒と赤に染まっていく。

  それは、お化けとは違ってキラキラしてて。


  まるで宝石みたいだと、思った。


ウィザード「さぁ、ショータイムだ」

ファントム「こんな昼間から? 積極的なのね……」


  お化けがからかうように笑う。
  宝石人間になったお兄さんが、無言で銃を構えた。

ウィザード「はぁっ!」

ファントム「やだ、怖い……フフ、じゃあせっかくだし一曲。躍らせてもらおうかしら?」


  何発か銃を撃ったのか、お化けの周りで銀の光が瞬く。
  あたしには、何が起こったのかわからないぐらいの速さだった。

  今度は一足飛びに距離を詰めたお兄さんが、銃だったはずのものを振りぬく。
  いつの間にか剣になってた銃をクルリと回してタイミングをずらして、また一回。

  綺麗な、だけどすごい動き。

  そんな剣を向けられているのに……
  お化けは挑発をして、優雅に……本当にダンスを踊るみたいに避けていく。


ウィザード「……大したもんだ」

ファントム「あら、息切れ?」

ウィザード「いいや」


  2人の動きが止まって、ちょっと会話をして。
  お化けのからかいが、余裕が。

    ≪シャバドゥビタッチヘンシーン!  シャバドゥビタッチヘンシーン!≫

  さっきと同じ、ベルトからの大きな声にかき消された。


      ≪ウォーター! プリーズ!≫

      ≪スイースイースイースイ―――≫

  青い魔方陣がお兄さんの足元からせりあがって、身体が青と黒に変わっていく。
  お化けに向けた剣が、まるで水みたいに自在に動く。

>>20に『ドライバーオン』と『プリーズ』入れたことに今更気づく音)
(せき)

ファントム「あらやだ、濡れちゃいそう」

ウィザード「……お望み通りにしてやるよ」


  ≪ルパッチマジックタッチゴー!  ルパッチマジックタッチゴー!≫

  お兄さんが、ベルトに手をやる。
  さっきまでの音とは別の、だけどやっぱり場違いに明るい声。

  さっきとは違い、右手をベルトにかざす。

  ≪リキッド! プリーズ≫

  お兄さんの動きが、さらになめらかに――というか、関節とかいろいろ無視した動きになって……?


法子「Pさん! お兄さん溶けちゃった!?」

P「お、おう!?」


  そう、お兄さんがドロドロに溶けちゃった!
  思わず隣で固まっていたPさんに話しかけると、ようやく気を取り直した感じでこっちを向く。

P「な、なんだアレ……に、逃げるぞ!」

法子「え、でもっ」

P「よくわからんが、狙われてたみたいだっただろ!? 早く!」

法子「あっ……」


  Pさんに手を引かれてあたしは走り出す。
  ドロドロになったお兄さんが心配で、振り返ったら――


ファントム「きゃっ!? やだ、本当に……積極的ね、魔法使いさんっ!」


  お化けにそのドロドロが何度となく降り注いで、あたしたちを追いかけようとしているのを止めているみたいだった。

  ……溶けてもお兄さんはお兄さんなんだろうか。宝石人間もそうだけど、なんだったんだろう?


  ぐるぐる回る頭に、糖分を補給したくてドーナツを食べようとして。
  ようやくそこで手に持ってたドーナツを落としてたことに気がついた。

法子「……あたしのドーナツぅ…………」

P「え? ……あぁ。あとでまた買えばいいだろ?」

法子「でもっ!」


  美味しかったのに。食べかけなのに……
  ドーナツパワーが切れそうで、ついさっき目の前で起きたことがやっぱり理解できなくて。

  どうしようか、どうすればいいのかわかんなくって。
  開けた口をどうしようか、って考えてたらPさんの驚きの表情があたしの背後に向けられてた。

  どうしたんだろう。ゆっくり振り返ると――


法子「……Pさん?」

P「……あ、あんた」

晴人「ふぃー……悪い、逃がした。こっちには来てないみたいだけど」


  さっきの宝石人間、ドロドロ指輪お兄さんがそこにいた。

※※※※※



ファントム「……ふぅ。本当、激しいんだから」

メデューサ「ずいぶん威勢が良かった割には……苦戦しているようね」


  アイドルの、ゲートがいる。
  メデューサに言われた時は簡単に絶望させられると思ったんだけれど。

  指輪の魔法使いに見つかっちゃうなんて、ツいてない。
  どうにか振り切れたようだけど、ため息が思わず出ちゃう。

  そこに現れたのはいつも通りの不愛想で、不遜な態度で嫌味をいうメデューサ。
  こんな時じゃなければ、それもまぁ愛おしいと思えるかもしれないけど。

  ちょっとばかり精神的に参ってる時には勘弁願いたい。

メデューサ「どうなの? ワイズマンにあなたは応えられるのかしら」

ファントム「さぁ、どうかしら。魔法使いさんにまで見初められるとは思ってなかったから」

メデューサ「あら。弱気ね」


  少し大げさに肩をすくめて見せる。
  優しい励ましのひとつやふたつぐらい、くれるかと思ったけど……そんなわけ、ないか。

  だったら、せめて。
  その顎へと手をあててやり、私の唇を――


メデューサ「……不快よ」

ファントム「フフ、軽いジョーク……ムキになったら可愛い顔が台無しよ?」

メデューサ「だから私、あなたのことが嫌いよ……サキュバス」

  私のファントムとしての名前。
  淫魔――サキュバス。なんとも、らしい名前……なのだろうか?

  自分では悪くないとは思っているけど。
  だけど私はその名前よりも……もっと、畏敬をこめて呼ばれる名の方が好き。


  私の名前じゃないけれど。
  もう、私のものになった名前。

  全てを失った抜け殻の名前。それで呼ばれれば、呼ばれるほど。


  私の心は、ズキズキと痛んで、ドキドキとときめく。


サキュバス「……アナタも名前で呼んでくれてもいいのよ?」

メデューサ「やめなさい……アイツじゃあるまいし」

サキュバス「あら、釣れない……だけど、それも悪くない」


   ファントムとしての、サキュバスとしての姿が掻き消えていく。
   代わりに現れるのは私じゃない、私。本当の、私。望まれている、私――

     人だったころの姿で――


奏「まぁ、次は2人きりでといきたいところね……フフ……♪」

速水奏(17)
ttp://i.imgur.com/GftUylU.jpg


―――


P「……魔法使いに、ゲート。それにファントム……」

晴人「そういうこと」

法子「……お兄さん、魔法使いだったんだ」

晴人「まぁね。……信じられないかもしれないけど、本当だ」


  とっても信じられないようなことをいうお兄さん。
  あのお化けがファントムっていう名前だとか、それにあたしが狙われているみたいだとか。

  普通に考えたら、ありえないんだけど……だけど、そのありえないことが起きちゃったわけで。

法子「……」

P「法子………いや、すみません。ちょっと、整理が……」

晴人「いや、仕方ないことだとは思うし……だけど、警護することの許可が欲しいかな」


  あたしは、整理するために考える。
  いろいろ言いたいこととか、聞きたいことがでてくる。

  Pさんは心配してくれている。だから――


法子「あの」

晴人「ん、どうした?」

法子「ドーナツをいっぱい食べたら魔法使いになれたりするかな!?」

晴人「そこォ!?」

P「お前、話を半分ぐらいしか聞いてなかっただろ!?」


  ……あれぇ? なんで2人ともそんなリアクションなの?

法子「……でも、だって。あたしが絶望なんてしないよ! ドーナツ食べてる魔法使いさんにも会えたし、ねっ♪」

P「はぁ……まったく。 とりあえず、他の人にどう説明するかは置いといて……お願い、できますか?」

晴人「あぁ、大丈夫。約束する……俺は、希望を守るから」


  魔法使いのお兄さん――晴人さん、はそういって笑った。
  なんとなく、大丈夫な気がする。これも魔法かも、なんて思ったら思わず吹き出した。


晴人「………そんな変なこと言ったかな」

P「法子……」

法子「い、今のはノーカンで。ね?」

――――



俊平「えぇぇぇぇぇぇ!? アイドルゥウウウ!?」

晴人「うるさっ……あ。そういうことだから」

法子「どうも、椎名法子です。ドーナツいかがですか?」

俊平「ありがとうございます! 大事にします!」

凛子「……腐るわよ?」

俊平「あっ! ……そっかぁ……」

法子「やっぱり美味しく食べてもらえるのが一番ですから。これ、お気に入りのお店で買ったんです!」

輪島「へぇー、アイドルのお気に入りのねぇ……」

P「……賑やかだなぁ………」

俊平「晴人さんは食べないんですか?」

晴人「俺? 俺はもう『はんぐり~』の食べてきちゃったしね」

俊平「へぇー……こんなにおいしいのに」

仁藤「まったくだな。もったいねぇ」

凛子「そうそう………」

晴人「………」

P「………」

仁藤「……まっよねーずー」ダバー

法子「えぇっ!? マヨネーズ……ドーナツにマヨネーズは流石のあたしも試したことなかったなぁ……」

晴人「仁藤!? お前、なんでここにいるんだ!?」

仁藤「いや、皆まで言うな。腹が減っては戦はできぬ……そうだろ?」

法子「……うーん、でも油分がアイドルには大敵かも………試すべきか、それとも……」

P「法子、お前は一回帰って来い」

晴人「……この子がゲートだ」

仁藤「なるほどな。ドーナツ友達でもできたかと思ってたぜ」

晴人「なんだそりゃ」

法子「あ、いいね。晴人さんも食べればいいのに」

晴人「それは店長にも悪いしね」

P「……悪いと思うなら、新作も食べてあげたらいいんじゃないですか?」

凛子「ところで、そのファントムの特徴とか……わからないのかしら」

P(あっれー?)

P(まぁ、いいか………ん?)

コヨミ「ふぅ………」

P(……可愛い子だな。だけどなんであんなところに………)


法子「あっ、そこの子も食べる?」

コヨミ「っ!?」ビクッ

P(人見知りってことか? 止めたほうが……)

法子「ドーナツ。美味しいよ?」

P(……いや、いいか。ヤボなことはよそう)


俊平「あ、あの。アイドルのプロデューサーさんってことは……」

P「え? あぁはいはい――」

コヨミ「……何?」

法子「ドーナツ。食べない?」

コヨミ「…………」

法子「ひょっとして甘いもの苦手とか? だったら……うーん、しまった。お惣菜ドーナツは買ってないや」

コヨミ「……何、それ?」

法子「お惣菜ドーナツはね、ほうれん草のお浸しが入ったドーナツだよ」

コヨミ「おいしいの?」

法子「…………ドーナツはね、幸せのわっかだから」

コヨミ「ねぇ、味は?」

法子「いっしょに食べたら、幸せになれるかなって思うんだ。なーんて……えへへっ」

コヨミ「………味………」

コヨミ「……」

法子「ダメ、かな?」

コヨミ「私、食べられないから」

法子「え?」

コヨミ「…………部屋に戻るわ」

法子「ちょ、ちょっと待って――つめたっ!?」

コヨミ「晴人。ゲートのこと、調べてみる」

晴人「ん? あぁ……そうだな。プロデューサーさん、仕事とかは大丈夫なの?」

P「え? 仕事――あぁっ!? しまった、いくぞ法子! 遅れたらまずい!」

法子「えぇっ!? そんなに時間たってたの!?」

――――

――


晴人「とりあえず、グリフォンをつけといた。異常があればわかるはず」

俊平「僕たち、中には入れませんもんね」

凛子「……あれ? 攻介は?」

晴人「え? アイツ……」


仁藤「いや、関係者だって」

警備員「困りますから」



晴人「なにやってんの?」

凛子「はァ……」

俊平「……やっぱり入れないんですかねぇ。気になるんですけど」

晴人「お前はアイドルの仕事自体が気になってるんじゃないの?」

俊平「い、いやいや。そんなことは……ない、ですよ?」

――

――――


法子(うぅん……このちっちゃいのがいるから大丈夫って本当なのかな?)

法子(でも可愛いなぁ……ドーナツ、食べる?)

ガルーダ「~♪」

グリフォン「――」

法子「あ、食べれるんだ……すごーい」

P「……本番前だぞー?」

法子「あ、ごめんなさいっ! でもほら、すごいよ! かわいいなぁって、思うでしょ?」

P「いや、確かに思うが……」

>>65
晴人の使い魔はグリフォンじゃなくてレッドガルーダだね
ガルちゃんに脳内変換でもしてくだしあ

法子「だったら……ねっ。だめ?」

P「……まぁ緊張がほぐれてるならいいか」

法子「えへへ、やった♪ 2人も、ありがとーって」

ガルーダ「~♪」

グリフォン「――♪」

P「お、おう……」

法子「今日の収録も、頑張っちゃうぞーっ!」

P「うん、頑張れ……」

法子「……そこはいっしょに、おーっ! って言ってほしかったなぁ」

P「え? お、おー」

法子「うんうん、そんな感じ! えへへ、なんだか楽しくなってきちゃった」

P「だけど油断は禁物だぞ? 狙われてるかもしれないんだから」

法子「うん。わかってる……気を付けるよ。あんなに、怖いの……もう、ヤだし……」

P「……法子」

法子「なーんて、えへへ。あたしらしくないか! ドーナツ食べて、がんばっちゃうぞー!」


  コンコンコン

         ガチャッ

P「ん? はーい……どちらさまです……か……?」

奏「……すみません。今日のお仕事で御一緒する速水奏ですが」

P「えぇっ!?」

法子「わわっ!?」

奏「ご挨拶だけでも先にと思って。今日はよろしくお願いします」

法子「こ、こちらこそ!」

奏「フフ……えぇ、楽しい収録に……しましょう……?」

 


法子「……綺麗だったね」

P「そうだな……人気急上昇中のアイドル、速水奏……か」

法子「あたしもあんな感じなれるかな?」

P「それは……どうかなぁ。法子はああいうクールビューティタイプじゃないと思うが」

法子「そんなことないよ? あたしだって本気になれば……」

P「本気になれば?」

法子「………ふっ」キリッ

P「……」

法子「…………」キリリッ

P「クールだったらドーナツ断ちもできるよな? きっとクールさアップに一躍買ってくれるぞ」

法子「やっぱりあたしクールは無理!」

P「そうか」

法子「ちぇっ、Pさんのイジワル」

P「法子は今のままのほうがいいんだよ。さ、いってこい!」

法子「……はい、いってきますっ!」

P「まったく………ふぅ。だけどこの仕事がステップになれば法子も……」

P「俺も、休んでられないな! 売り込みしてかなきゃ」


奏「………フフ。本当、カワイイのね………」

法子「今日の番組はお料理ですっ! オムパスタ……」

奏「法子ちゃんは料理、得意なのかしら?」

法子「えーっと、結構作ります。一番好きなのはドーナツですけれど」

奏「ドーナツ……ドーナツね。あんまり食べないかも」

法子「えぇー!? 美味しいのに」

奏「それなら、今度オススメのでもいただこうかしら? ……法子ちゃんがいいのなら、だけど」

法子「本当っ!? うんうん、絶対持ってくる……持ってきますっ!」

奏「それは楽しみ……あら、横道にそれすぎ? そんなに急かさなくったってキチンと作るから安心して……見てて。ね?」

法子「えーっと、じゃあ調理に入りますよー! 卵と、パスタ。ソースは今回はクリーム系で――」

法子「パパパっと、簡単に済ませちゃうのもテクニック……ですよっ!」

奏「本当、ほれぼれしちゃう手際……年下なのに、大人びて見えるし。素敵ね」

法子「そ、そうかな……えへへ。でも奏さんも17歳なのにすっごく大人っぽくて……綺麗だな、って思いますよ!」

奏「あら、嬉しい……いろいろ、経験してるからかもね? オトナなのも……」スッ…

法子「ひゃぁっ!?」

奏「ふふ、ごめんなさい? オトナになり切れない年頃だから、オトナっぽいのかもしれないわね」

法子「……うーん? よくわからないです」

奏「そう……そうよね。さて、ソースの具合はこれぐらいかしら?」

法子「え? ……あ、いい感じかも」

奏「なら、よかった……」

奏「ん、はいっ」クルンッ

法子「おぉー……」

奏「料理が得意なわけじゃないけれど、手先は割と器用なのよね」

法子「すごいですね。今度、いっしょにお菓子も作ってみたいなぁ」

奏「縁があったら、ね。私も楽しかったしまた作りたいわ」

法子「えへへっ、期待しちゃいますよ?」

奏「えぇ、待っててね? きっと……とびきりのプレゼントをあげるから……♪」

法子「……?」

奏「鮭とほうれん草のクリームオムパスタ。完成ね」

法子「わぁ、美味しそう……こういう形のオムレツを割るのってなんだかドキドキするよねっ」

奏「綺麗なものに傷をつける……取り返しのつかないことだけど、だからこそ惹かれるのかもね」

法子「……?」

奏「なーんて。さ、いただきましょう?」

法子「あ、はいっ! いただきまーす……」

奏「いただきます」


――――

――

奏「今日の収録、楽しかったわ。またね?」

法子「あ、はいっ! あたしも楽しかったです!」

奏「料理、今度教えてもらっちゃおうかしら……」

法子「あたしでいいなら、ぜひ! えへへ……」

P「あ、速水さん。ありがとうございました、今日は……」

奏「プロデューサーさんも頑張ってくださいね……? 応援してますから、ね」

P「あ、はい……」

法子「……本当、キレーだよね。うぅん、あんなふうには……ちょっと、なれないかも」

P「……そうかもなぁ」

法子「あっ、そこはフォローしてくれるんじゃないの? もーっ」

P「い、いやいや。すまんすまん」

法子「許してほしかったら……あのドーナツ買ったお店、教えてっ?」

P「あの……あぁ、だけどまたファントムが出たら……」

法子「魔法使いのお兄さんがいるし、きっと大丈夫だよ。ね?」

P「――というわけで」

晴人「来たよ」

店長「1日に2回も……!? しまった! さらに新作はできてないのにぃ~」

晴人「うん、プレーンシュガー」

法子「あたしチョコドーナツ!」

店長「あ、はい」

P(……なんだか、ずいぶんゆったりとしてて……これでいいのかな)

法子「おいしー♪」モグモグ

晴人「凛子ちゃんは仕事があるっていって帰っちゃったし、お土産買って帰るかな」

店長「!!」ガタッ

晴人「プレーンシュガー3つ」

店長「……」ガクッ

P「あ、こっちもお土産かってくんで適当にもらえますか?」

店長「……! はいよろこんでぇ~! サービスしちゃって!」

店員「え、いいんですか?」

店長「だって、だって……ねぇ? アレ、しょっぱすぎるって言われちゃうし……」

法子「んー、確かにそれはあるかも……ドーナツ生地だからいいけどね」

店長「そう……改善しなきゃ。がんばっちゃうわっ」

法子「しょっぱいとちょっとベーグル思い出すけどさ。ベーグルはドーナツと同じみたいな見た目だからガクってくるよね」

店員「あ、それわかるかも」

法子「本当!? ベーグルは悪くないってわかってるけど、でもドーナツとは違いすぎるんだよ……」

P「ははは……法子、帰るぞ?」

法子「はーいっ」

晴人「異常があればすぐに連絡してくれ。こっちはこっちでいろいろ探してみる」

P「はい。ありがとうございます」

― 2週間後 ―


P(……結局、あれからファントムが襲ってくることもなし)

P(警戒してはいるけど、何もない……)


俊平「へぇー、そんなことが……」

法子「あと、かな子ちゃんとはいっしょにお菓子をよくつくるんだけどね? ケーキだけじゃ物足りなさそうだったから……」

凛子「おかわりでも用意したとか?」

法子「ううん。ドーナツを乗せたよ」

晴人「……マジで?」

法子「マジだよ!」

俊平「ケーキにドーナツ……晴人さん! 僕、ちょっとコンビニで買ってきて試します!」

晴人「俊平はもうちょっと落ち着いたほうがいいと思うけどな、俺」

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