このお話は平塚先生が八幡のいっこ上だった設定でお届けします。
キャラ崩壊、文章崩壊、世界観崩壊を受け入れてくれる人のみ続きを見てくれさい。
ただのギャグssです。
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平塚「抹殺のファーストブリッドぉ!!」ゴスッ
放課後。青春に似て非なる音が鳴り響く。
八幡「ごはぁ!」
みぞおちにクリーンヒットした女子高生の拳。明らかに人間の、それも女の子の出せる威力じゃない。
平塚「お前がワガママ言うからだ。比企谷」
八幡「ファーストブリッドから抹殺する気満々なのやめてくれませんかねぇ……」
肺がまともに活動してくれないながらも何とか抗議をするが、
平塚「おっ、流石比企谷、分かってるねぇ」ニヤリ
アイドル顔負けの笑顔を見せる悪魔の前では無意味だった。
八幡「もしかして奉仕部ってのはあんたのストレス発散を助けるためだけの部なのか?」
平塚「ははっ! 面白い事を言うな比企谷。消滅のセカンドブリッド喰らいたいか?」
八幡「この世からいなくなるのん!?」
平塚「冗談だ。奉仕部はその名の通り誰かの助けとなる部活動だ。決して自分達の利益の為にある場所じゃない」
八幡「信じられねェ……」
平塚静こそ生徒会長に相応しいと評価する人間がいる一方で、彼女に権限を持たせてはならないと悲痛の叫びをあげる者達もいる。
もちろん俺は後者に(強く)同意するが、彼女が有能な人間である事も認めている。
平塚「雪乃を待たせて可哀相だと思わないのかね?」
八幡「いや別に」
平塚「即答か。君は達観しているようで何も分かってないな」ハハッ
八幡「どういう意味ですか?」
平塚「美女二人と放課後をエンジョイできる価値に気付いた方が良いと言う事だ」
八幡「………」
俺は返事をしなかった。
否定か、それとも同意か。自分でもよく分からない。
平塚「遅くなったな雪乃!」バァンッ
ノックもなく軽快に扉を開ける平塚静。その先には小動物のように怯えている女子生徒が一人。
雪乃「の、ノックくらいしてくれませんか? いつもお願いしていますけど」グスッ
半泣きだ。なんなら漏らしてるんじゃねぇのかこいつ。
平塚「すまんすまん。ビックリして漏らしてしまったか?」
ストレートに聞くのか。この親父jkは。
雪乃「……少し」
えぇ…、答えるのかこいつ。
平塚「それは何と言うか……すまん。比企谷も謝れ」
八幡「えっ……」
雪乃「……えっ?」
二つの「えっ」が教室に響く。同じ言葉なのだがその意味合いが違う事にすぐ気付いた。
八幡(こいつ……俺の存在に気付いてなかったのか…っ!?)
雪乃「……ぁ………あぁ…」プルプル
顔を真っ赤にする雪ノ下。これはなんというか、……やばい。
雪乃「平塚先輩、一つ確認してもいいでしょうか?」
平塚「あ、ああ、もちろんだ」
状況を察した平塚静は気まずそうに頷く。
雪乃「この教室にいるのは私と先輩だけ、間違いないですよね?」
教室がしぃんと静まり返る。季節外れの蝉の声さえ聞こえそうな静けさだった。
破ったのは快活な声。
平塚「もちろんだ! この教室には私と君しかいない。間違いないぞ!」
ははは、と笑う頭のおかしい先輩。
雪乃「安心しました」
ふふっ、と笑う頭のおかしい同級生。
八幡「………」
存在の置き場所に困っていると、平塚静は急に振り返り、
平塚「おおっ、比企谷! 今来たのか? 遅いぞ!」
と、棒読みで俺を出迎えた。
雪乃「あら重役出勤なんて生意気ね。生意気谷君だわ」
明らかに動揺を払しょくできていない雪ノ下が震え声で俺に悪態を吐く。
八幡「………」
青春。それは綺麗な物を机に並べ、汚い物を地面に落とす選別ゲーム。
都合の悪い事は机から落とし、自分の理想像を積み重ねる。
リア充達の机は高く、ゴミを落とす量も多い。
そのゴミが落ちる先にいるのはいつだって……カースト下位の人間だ。
八幡「よぉお漏らし女」
雪乃「殺す」
平塚「待て! 落ち着け雪ノ下! 文房具をいくら凶器に使っても君の腕力で人を殺す事は出来ない! あれは西尾維○の世界だからできる事だ!」
雪乃「殺意さえあれば何とでもなるはずです。頸動脈にシャーペンを突きたてれば圧力の関係で噴水のように血が噴き出すはず……」コロスコロスコロス
平塚「学校で人を殺すなぁ!」ドゴォッ
雪乃「ふぐっ……」ガクッ
八幡「あ……」
平塚「あ……」
タイミング、殴った場所、興奮状態、全て悪かったのだろう。
下腹部に衝撃を受けた雪ノ下はがっくりと両膝を突き、そして…………いや、何も起きなかった。
何も。
平塚「まぁ色々あったが奉仕部の活動を始めたいと思う」
雪乃「………」グスッグスッ
八幡「………」
この状態で部活動を始められるのは悪魔かこの女だけだろう。まぁジャージ姿で参加する雪ノ下もちょっとあれだが。
平塚「投書箱に何か入ってるか?」
八幡「……えっと」ガサガサ
生徒会室の前に投書箱は二つある。一つは生徒会が生徒から要望を受け取る為の箱。
そしてもう一つは奉仕部が依頼を受けるための箱だ。
本来なら許可される訳がないそれを置く事が出来ているのは、平塚静が平塚静だからだろう。
八幡「一枚目、平塚静死ね」
平塚「殴られたいのか比企谷」ゴスッ
八幡「書かれてる事を! そのまま!!」
あまりにも痛かったので単語をぶつけることでしか抗議できなかった。
平塚「そうか、他には?」
八幡(謝る気はねぇのか、この雌ゴリラ……)
八幡「平塚静は人間凶器、平塚静は刑務所に行け、平塚静がいなくなることが奉仕……」
平塚「………」プルプル
これ以上はまずいと思いつつも、ぎっしりと入った恨みつらみの紙を読む事をやめる事ができない。
何が凄いって、それらの筆跡が全て違う事だ。
八幡「……ん? これは…」
珍しく女子の筆跡に目が止まる。容姿がありありと浮かぶ丸くて可愛い文字だ。きっと絶世の美少女が書いたのだろう。
八幡「テニスが上手くなりたいので、特訓して欲しいです。戸塚彩加」
戸塚彩加。はて、どこかで聞いたような。
平塚「それだ! それを受けるぞ!」バンッ
両手で思い切り机を叩く平塚。隣にいた雪乃がビクリと肩を上げる。
八幡「いや、でも何年何組かすら書いてねぇから……」
雪乃「何を言っているの? あなたのクラスメイトじゃない」
八幡「え……?」
こんな可愛い筆跡で、こんな可愛い名前の女子いたっけな……。
平塚「明日の昼休み、その子を連れてテニスコート集合だ比企谷!!」
八幡「………」
くそめんどくせぇ……。
その日の夜、雪ノ下の部屋
雪乃「……………………………………………………………………責任取ってもらうしかないかしら」ボソッ
いったん離れます
続き
昼休み。
彩加「比企谷君も奉仕部だったんだね」ニコッ
八幡「何この可愛い生物。俺と同じ星の種族?」
彩加「???」
どうやら俺はずっと女子の一部だと思って意識外に追いやっていたらしく、戸塚彩加が男の子だと知って心がぴょんぴょんしていた。
平塚「よし、では今から特訓を始める」
彩加「お、お願いします!」
テニスコートに立っているのは俺と戸塚彩加、そして平塚静だ。雪ノ下雪乃の姿は見えないが、責任感の強い彼女の事だからきっと現れるだろう。
平塚「それじゃあまずは腕立て腹筋200回!! 比企谷は500回!」
彩加「!!?」
八幡「馬鹿なの?」
俺は即答した。何故テニスの特訓を手伝う為に来たのに筋トレしなくちゃいけねぇんだ。
平塚「抵抗するのか?」
右拳を眼前で構える暴力女。残念だが義務はないぞ。
平塚「スポーツの基礎は体力だ。技術も知識も体力を前にすれば無力。1に筋トレ2に筋トレ、34は喧嘩で5に筋トレだ」
八幡「スポーツマンシップの欠片もねぇもんが間に入ってるんですが……」
まぁそれを言ったらスポーツマンシップとか言いながら相手チームがミスった途端に「ラッキー」とか、そもそも投げる前から「ビビってる!」とか言っちゃう奴らの決めた常識だから信用はできないか。
平塚「大体見ろ、このもやしのような腹筋を!」ガバッ
彩加「あっ///」
八幡「!!」
平塚静が何の遠慮もなく戸塚彩加の服を捲る。そこには絹のように透き通った肌がうっすらと腹筋を浮かべていた。
平塚「胸の筋肉も!」グイッ
彩加「ら、らめ!!」グググ
俺に戸塚彩加の胸を見せようと右手に力を込める平塚静。何で女子の右腕と男子の両腕の力が均等なんですかねぇ……。つーか彩ちゃんエロすぎ。
優美子「つーか誰か使ってない?」
突然、コート外から聞き覚えのある声が響く。
葉山「あれ、ほんとだ」
三浦「つーかうちらが使うからどくっしょ」
戸部「そうそう! 一人占めは良くないっしょ!!」
八幡「……は? 俺達が借りてるんだけど」
一人占めの理論で言ったらお前らだって一人占めしようとしてるじゃねぇか。
彩加「僕達が使用許可を貰ってるから……」
戸部「あれ、戸塚じゃん!」
葉山「それなら一緒に練習するってのはどうかな?」
彩加「あ……」チラッ
八幡「………」
助けを求めるようにこっちを見るな小動物。可愛すぎて助けたくなるだろうが。
葉山「決まりだね。それじゃ――「ちょっと待て」
いつもより低いトーン。あ、これ怒ってる奴。
平塚「君達は突然現れて訳の分からない事を並べたてるのが趣味なのか?」
戸部「げっ、平塚先輩!」
葉山「……っ!」
すげぇ、リア充共が顔見ただけでビビってる。
葉山「訳の分からない事と言われましても、練習するなら経験のある人が多い方が……」
平塚「それはこちら側が要請して初めて成立する関係だろう? 君達が押しつけて良い理由にはならない」
葉山「……っ」
平塚静の真骨頂は暴力にあるが、それ以前に口も達者で頭の回転も早い。将来は教師になりたいらしいが、こんな教師がいたら俺は矯正されて真面目人間になることだろう。
それに加えて葉山も戸部もどこか怯えている様子が見られる。きっと二人とも彼女の被害者なのだろう。
三浦「つーかうちらがテニスするんだからそっちがやめれば良いだけっしょ」
平塚「義務があるのか?」ギロッ
流石女王三浦優美子。平塚静に対して一歩も引く事を覚えない。
三浦「うちらが諦める理由もないっしょ」ギロッ
バチバチと目線がぶつかる。距離を詰めればキャットファイトが始まりそうだ。一人は土佐犬だから犬と猫の戦いか。
葉山「じゃあこうするのはどうだろう。僕達と君達の代表で試合をするのは」
平塚「……ふむ」
試合の言葉を聞いて平塚静の目が輝く。根っからの戦闘狂だ。特訓よりも試合の方に魅力を感じるのだろう。
三浦「うちらの圧勝っしょ」
戸部「隼人君と優美子なら一ポイントも渡さねぇんじゃね!?」
平塚「………」ゴゴゴゴゴ
あ、これ収まらないパターンだ。
彩加「じゃあゲームは一セット、コートチェンジなしで良くね」
戸塚彩加が審判台から確認をとる。高さの関係上、ズボンの中が見えそうだはぁはぁ。
平塚「邪念を捨てろバカ者」
八幡「ごほぉっ」
腹部に強烈な痛みが走る。お、俺は欲情なんかして……ないよな?
戸部「全国レベルの優美子がいる限り負ける訳ねぇっての!」
八幡「は……?」シュパッ
……え?
戸部「フィフティーンラブ!」
光の速さで通りすぎていったあれがサーブですか? 女子でもあんなに速く打てるんですか? ていうか戸塚きゅんからラブ頂きました!
平塚「ちっ、使えない奴だ」
八幡「いや、あんなんプロレベル……」
平塚「言い訳は良い! 私が手本を見せてやるからしっかりと見ておけ!」
三浦<フンッ
シュパッ
戸塚<サーティラブ!
八幡<………
平塚<………トコトコ
八幡<………?
平塚<……フンッ!
ドゴォ!
八幡<グフゥ!!
なんで!?
ギャラリー<ザワザワ
戸部「相手に1ゲームも与えずに最後まで来るなんて流石っしょ!」
三浦「弱すぎて話にならないっつーの」
葉山「ちょっとレベルが違いすぎたかな……」
平塚「………」ゴゴゴゴゴ
怒りメーターがマックスに達している平塚静の隣で、俺はどうすれば最も穏便に解決するか考えていた。
一番難しいのは俺達がここから逆転する事だろう。正直初心者の俺と平塚静じゃあ相手になっていない。
普通に考えれば俺達がコートを借りているんだと正論を振りかざす事だが、あっちはパリピだから話を聞いてくれる訳がない。平塚静の怒りも収まらないだろう。
八幡(だったら、これが一番早いか……)
――カランッ
葉山「……ヒキタニ君?」
三浦「?」
平塚「比企谷、君のサーブだぞ。ラケットをひろ……」
八幡「………」
もっとも簡単にして収まりの効く方法。
それは土下座だ。
試合が終わってからだと平塚静の怒りをぶつける場所がないが、俺がこうして終わらせれば俺に向くだろう。
葉山達だって土下座されてまでコートを奪おうとはしないはずだ。ギャラリーの目もある。
戸塚彩加の目的を果たす為にもコートを奪われる訳にはいかない。
よって、この場でこうする事が最適解であり、最善な――
雪乃「情けないわね。それでも奉仕部の一員なのかしら」
八幡「!!」
突如現れた雪ノ下雪乃は俺のやろうとしている事を全て見抜いていた。
゛見抜いていた上で”、俺を見下していた。
八幡(゛負け逃げは許さない”ってか……)
普段なら「それがどうした」と鼻で笑っていた所だが、今の俺はそれを無視できない事情があった。
平塚「………」ジッ
平塚静の目に敗北の二文字がなかったからだ。
確かに土下座をすれば事は収まるかもしれない。
形はノーゲームに出来るし、負けてないと言い張る事は出来る。
だが、負けは負けなのだ。ギャラリー達の目には平塚静の敗北が映る事だろう。
何故だかそれは認められなかった。何が何でも勝たなければ。その為には――、
【スポーツの基礎は体力だ。技術も知識も体力を前にすれば無力。1に筋トレ2に筋トレ、34は喧嘩で5に筋トレだ】
八幡「……平塚先輩、ちょっと」
平塚「?」
八幡(まともにやっても勝ち目はないです)ボソボソ
平塚(だったどうする?)
八幡(こっちの土俵に引きずり込みましょう)
平塚(土俵?)
八幡(これは立派な縄張り争い、つまりは喧嘩です。スポーツじゃない。だったら――)
平塚(……なるほど)ニヤリ
悪魔の笑みがこぼれた。
三浦「つーか早くするっしょ」
八幡「へいへい」
サーブは俺、レシーブは葉山、前衛に平塚静と三浦優美子、完璧な構図だ。
八幡(葉山のレシーブが平塚先輩に行くように出来るだけ角に打ち込む!)スッ
ワイドにスライスすれば流石の葉山でも中途半端なレシーブしかできないだろう。
八幡「……っ!!」シュパッ
渾身のサーブが決まる。
葉山「ヒキタニ君やるなっ!」パシッ
緩めのレシーブが平塚静の方向に飛んだ。想定通りだ。
平塚「………」ゴゴゴゴゴゴゴ
三浦「どうせ緩いボレーしかこないっしょ!!」
八幡「……緩いボレー、ね」
三浦優美子はあまりにも平塚静を知らなさすぎる。
葉山「抜けてもフォローは任せろ!」
葉山隼人はあまりにも楽観的過ぎる。
戸部「決まりっしょ!」
戸部とギャラリーは外野だからと言って甘すぎる。
平塚静が゛どんな人間”か、この場で知るのは――。
平塚「おおおおおっと!! 手が!! 滑っ、たぁあああああああああ!!!!」ブンッ
渾身の一撃が放たれる。
―――光速のラケット、平塚静一号が。
――ギュンッ!!
三浦「きゃあぁっ!?」ビクッ
葉山「優美子!!」
猛スピードで優美子の頬をかすめたラケットは降下する事無くフェンスにぶつかった。
ギャラリー達が唖然とした表情でこちらを見ている。
三浦「……あ、あぶねぇっしょ!!」
平塚「ああ、そうだな。危ないな。……だったらリタイアするか?」ニヤリ
三浦「!!」
葉山「っ!!」
戸部「き、きたねぇっしょ!」
ギャラリー達がブーイングをあげる。
だが、平塚静はしれっとした表情で、
平塚「今、私を批判した者達の中にサーブをきちんと決められる者は何人いる?」
戸部「……っ」
平塚「私を否定するほど勇気のある者達だ。“失敗すればどうなるか”……分かっているな?」ギロリ
この瞬間、ギャラリー達は思い出した。
平塚静が何者で、平塚静がどういった存在か。
――その恐怖を。
葉山「……棄権する」
三浦「はぁ!?」
八幡「……負けでも良いと言う事か?」
三浦「そんな「ああ、負けで良い」
流石は“良い人”葉山隼人。お前ならそう動いてくれると思ってたよ。
平塚「……すまんな彩加君。君の期待には――」
彩加「ありがとうございます!!」
平塚「え?」
八幡「え?」
ろくに練習もできず、スポーツマンシップを破壊するような行動に対してお礼?
彩加「僕、気付きました! スポーツとは戦い! 勝つ為に出来る事は何でもしなくちゃいけないって!」
平塚「……お、おお、そうだ、な?」
好意的解釈が過ぎて平塚静の顔が戸惑いに歪んでいる。
彩加「先輩を見習って僕も全力を尽くします!!」
平塚「そ、そうだぞ! 君なら出来る! 私みたいになるんだ!」
彩加「はいっ!!」
……もしかして俺は取り返しのつかない過ちを犯してしまったのではないだろうか。
彩加「……比企谷君もありがと」エヘヘ///
八幡「っ!!」ドキッ
彩加「これからも……よろしくね」ニコッ
八幡「お、おう……」ポリポリ///
これで良かったんだよ……な?
いったんくぎります! 色々と省いてしまったから無理やり感しかなかったすまん! 20分後くらい!
結局ラブコメに持って行ってしまいそう。続き行きます
八幡の教室。昼休み。
クラスメイト「……ちっ」ジロッ
八幡「………」
クラスメイト「………」ジトッ
八幡「………」
かつてない居心地の悪さ。
テニスコートの出来事以来、俺のクラスでの評価はこれ以上にないほど落ちていた。苛められないのが不思議なくらいだ。
八幡(ビビってるんだろうな。平塚先輩に)
そう考えると滑稽だ。女一人にビビってる高校生が俺を威嚇する。普段はパリピでカースト上位を気どっていていも、暴君の前には等しく無価値。
八幡「へっ……」
結衣「ヒッキー何笑ってるの……キモいよ」
八幡「……えっと…」
誰だこの人。
結衣「ひどっ!? クラスメイトじゃん!?」
八幡「あ、ああ、そうだったな。初めまして」
結衣「初めましてー♪ ……って違う! ずっと一緒じゃん!」
八幡「そうだったか?」
結衣「そうだよ! つーか早く優美子に謝った方が良いよ?」
八幡「謝るような事してねぇ」
厳密に言えば土下座するような事をした覚えはある。嫁入り前の娘の顔に傷をつけかけたのだ。
結衣「そりゃこっちだって調子に乗ってた所はあるかもしれないけど、あれはやりすぎだって!」
八幡「こっち? お前あっち側の人間か?」
あっち側の人間が何の用だ? また俺を騙すつもりか……ってそれは過去の話だった。
結衣「あ、それはちが……いや違わないけど……でもそう言う意味じゃなくて!」
三浦「結衣! ジュース買いに行くっしょ!!」
結衣「あ、うん!」
八幡「……ほれさっさと行け」
結衣「……早く仲直りしてね」ジッ…
八幡「……っ///」
……仲直りも何もあいつとは最初から何の関係でもない。
放課後。
平塚「ふむ、それはつまり三浦優美子は君に恋しているということだろう」
八幡「……は?」
なぜそうなる!?
平塚「いや青春じゃないか! 由比ヶ浜結衣というキューピッドは三浦優美子の恋心をなんとか成就させてやりたいと君に近づき、無理やりではない程度に仲直りを促す。そして君は悩み、苦しみ、次第に三浦優美子の事ばかり考えるようになる」
八幡「………」
平塚「恋とはつまり依存度なのだよ比企谷八幡。好きか嫌いかではない。浅いか、深いか。深く潜れば潜るほど、その恋は大きくなっていく」
雪乃「………」
平塚「これはもはや奉仕部案件だ! 依頼されなくても目の前の面白い事があったら手を出す! それが我ら奉仕部!」
心の声ダダ漏れじゃねぇか。
八幡「具体的には何をする気なんすか?」
平塚「そうだな…………恋はフィーリングとハプニング、そして――」
雪乃「タイミング」
雪ノ下雪乃がパタンと力強く小説を閉じた。本を大事にする彼女には珍しい行為だった。
某カラオケ屋。
三浦「ちょ……え? 何……これ」
八幡(まじかよこれ……)
十人ほど入れそうな大部屋の中心に三浦優美子はぽつりと座っていた。両腕はギュッと縄で縛られ、目隠しは何重にもされている。
平塚静はファミレスで放課後をエンジョイしていた彼女を無理やり誘拐してきたのだ。
平塚『君は何故この状況になったか分かっているか』
カラオケのボイスチェンジ機能を使って低い声を出す平塚静。
三浦「わかんねーし! つーか犯罪っしょ! これ!!」
平塚『自分に嘘をついたまま日々を過ごす。これも神は犯罪と定義している』
三浦「はぁ!?」
平塚『君には好きな人がいるな』
三浦「!?」
ビクリと肩を震わせる三浦。もはや女王の面影もない。
平塚『嘘を吐けば……』
バァンッ!!
三浦「ひっ!?」
最大音量のマイクの前で手を叩く平塚静。やはりこの人は鬼だ。
平塚『もう一度問う。恋をしているな?』
三浦「し、してるっしょ! だからなんだよ!!」
平塚『それはクラスメイト相手だね?』
三浦「そうだよ!」
平塚『身長は』
三浦「高い方だよ!」
平塚『顔は』
三浦「ジャニーズよりかっけーし!」
平塚『性格は』
三浦「めちゃくちゃ良い奴!」
平塚『……く、クラスの評価は?』
三浦「最高っしょ!」
八幡(まぁ最初から分かってた事だがな……)
三浦優美子が葉山隼人に恋していることは周知の事実だ。
そんなことはカラスだって知ってるのにここからどうするつもりなのだろうか……。
平塚『………ふむ』
平塚『つまり君は比企谷八幡に恋しているということで間違いないね?』
三浦・八幡「「馬鹿なの!?!?!?」」
八幡「あ……」
三浦「今の声、ヒキタニ!?」
平塚『声だけで誰か分かるなんて、やはり君は「んな訳ねーっしょ!!」
三浦「だれがこいつに恋するんだよ!! つーかヒキタニ! 早く放せ!!」
八幡「………」ドウスレバ…
平塚『ふむ、何故君は比企谷八幡に恋しないのかな?』
三浦「えっ……」
平塚『それなりの理由があるのだろう?」
三浦「いや……」
平塚『顔か?』
三浦「別に……顔は普通だと思うっしょ」
八幡(普通に答えていくのか……こいつ馬鹿なのか、それとも根は優しいのか)
平塚『性格か?』
三浦「中身は良く知らないっしょ」
平塚『じゃあなぜそう言いきる?』
三浦「クラスでも目立たないし、うちらのグループと仲良くないし」
平塚『ふむ、では君はクラスで目立ってて自分達と仲のいい子を好きになるんだね?』
三浦「……っ」カァ///
平塚『まぁ若い頃にありがちではあるが、君達はいずれ卒業し、バラバラになるだろう。その時に君のグループとやらは存在しているのだろうか?』
三浦「それは……っ」
平塚『もう一度問う。君は比企谷八幡に恋をする可能性は本当に0なのか?』
八幡「………」
三浦「………」
平塚『…………比企谷、彼女を放してやれ』
八幡「えっ……?」
平塚『まちが……彼女は本当の恋を知る事が出来た。もはやこれ以上の拘束は無意味だ』
普通に間違えたって言いかけたなこの人。
八幡「……ほれ」シュル
三浦「……ありがと」
八幡「お礼言われる立場じゃねぇよ」
三浦「こいつに命令されてたっしょ?」
八幡「……止められなかった時点で同罪だ」
三浦「……ということは…」ジッ
八幡「……?」
三浦「あーしがヒキタニの事が好きな可能性、少し期待してたって事?」ニィッ///
八幡「……っ///」
三浦「まぁあーしが好きなのは隼人だし、ありえないんだけどさ」ノビーッ
八幡「………」
三浦「少し気付かされることもあったっしょ!」
平塚「うむ、それこそが私の「つーか黙れ犯罪者」
平塚「………しゅん」
三浦「せっかくだし、歌って帰ろうかな」ポンポン
八幡「?」
三浦「罪滅ぼしに付き合えっしょ」ニコッ
八幡「……あ、ああ…」
平塚「犯罪者……。初めて言われた……」ボソボソ
某ファミレス
雪乃「つーかつーかっしょ。あーしつーかっしょ」
戸部「あの……雪ノ下さん? 優美子は……」
雪乃「雪ノ下? つーか誰っしょつーか。あーし優美子っしょ」
葉山「……まぁ、ラインでカラオケ行ってるって来たし、ヒキタニ君が一緒なら大丈夫だろ」
雪乃「つーかつーかっしょ」ファサッ
続く
ちょい休憩。由比ヶ浜を本筋に絡めるか、林間学校に行くか迷い中
かつて。
由比ヶ浜結衣は愛犬の散歩中、平塚静が蹴り飛ばした痴漢とぶつかりそうになった事がある。その勢いは大砲のようで、愛犬と共に死を悟ったレベルだった。
結果的には一人の少年が間に割ってきたおかげで怪我ひとつしなかった。その少年は二週間ほど入院する事になり、由比ヶ浜結衣はその恩をずっと覚えている。
それと同時に由比ヶ浜結衣は平塚静への恨みも強く抱いていた。
結衣(ヒッキーを早くあの地獄から救わなきゃ……)
痴漢を蹴り飛ばした事自体は襲われていた女性を助けるためだったらしいし仕方ないと割り切っている。
だが、平塚静がいつもやりすぎる事は目に余るし、退院してきた比企谷八幡を連れ回している事は全くもって許容できない。
結衣「平塚静先輩、あなたは私の敵です」
一年間、彼女を恨み続けた。
腕力では敵うはずもなく、そもそも由比ヶ浜は好戦的な性格ではない。
彼女に出来ることと言えば――、
カーン、カーン、カーン!
丑三つ時に藁人形を叩くことぐらいだった。
結衣「あの人が呪われれば、きっと人並みの体力に堕ちるはず」カーンカーン
幽霊「………」
結衣「ヒッキー、私に任せてね。私がなんとか……」カーンカーン
幽霊(こいつ……負のオーラ出まくりで心地いい……)ニコッ
三浦「つーか結衣、あんた顔色悪過ぎじゃね?」
結衣「……え?」ゲッソリ
戸部「マジっしょ! なんかあったんなら俺達に言うっしょ!」パリピッ
葉山「悩み事があるなら言ってくれ。きっと力になれるはずだ」
結衣「う、うん……そうだね…」
全員「………」ジッ
結衣「………っ」
結衣(言えないっ! 人を呪おうとして幽霊にとりつかれたなんて!!)ウゥッ
八幡「………」
八幡(なんかあいつの近く歪んでね?)
幽霊(こっちみてる死んだ魚みたいなやつも心地良さそう)
彩加「ねぇねぇ八幡、一緒にお昼ご飯食べよう」ニコッ
幽霊(あ、ダメだ。一緒にいる奴の光が強すぎて浄化される)
結衣「……はぁはぁ」
結衣(階段昇るのもしんどい。やっぱ私……とりつかれて死ぬのかな……)ゼェゼェ
結衣「……あ」フラッ
結衣(死――――)
ガシッ
結衣「……だ、…れ?」ガクッ
??「………」フム
放課後。奉仕部教室。
八幡「……うす」ガラッ
平塚「今日は早いな比企谷」
八幡「二分で来なければ殺すってライン入れたの誰……だ…」チラッ
結衣「………」マッパ
八幡「は、はぇ!?」カァ///
八幡(な、ななな、何で教室の机の上に裸の女の子が寝ころんでるんだよ!? 怪異が出てくる物語ですかこれ!?)
平塚「どう思う比企谷」
八幡「どどど、どうって、どうってことないですよはいこれ」
平塚「……? この子、まともじゃないと思うんだ」
八幡「いやいやいや、そりゃこんな所で裸でいるんだ、まともな訳がないでしょうよ」
平塚「ああいや、それは私が脱がした。布が勝手に少女の身体を絞め殺そうとしてたからな」
八幡「はい????」
布が、絞め殺す?
平塚「恐らくこの子……憑かれている」キリッ
本当に怪異の物語だった。
八幡「だ、だからって裸のままはまずいだろ」ヌギッ
季節は春、ブレザー着てて良かった。
平塚「……ふむ、どうやら他人の服なら絞めつけられないようだな」
八幡「暴力振るいすぎてアドレナリンにやられたんすか?」
平塚「私は至ってまともだ」ゴスッ
八幡「まともな人間は……殴ったりしねぇ……」ボロボロ
平塚「私も数々の不思議体験はしてきたつもりだが、幽霊を相手にした事はない」
八幡「そりゃそうだろ」
平塚「比企谷、この子の身体に触れてみろ」
八幡「へ、へぁ!?」
平塚「できるなら心臓に近い方が良い」グイッ
八幡「ちょっ!?」
ふに
八幡(柔らか……え?)
殺意殺意殺意殺意殺意殺意殺意殺意殺意殺意
殺意殺意殺意殺意殺意殺意殺意殺意殺意殺意
殺意殺意殺意殺意殺意殺意殺意殺意殺意殺意
殺意殺意殺意殺意殺意殺意殺意殺意殺意殺意
八幡「なんだこれ!?」ゾクッ
平塚「やはり君もダメか」ヤレヤレ
八幡「てことは平塚先輩も?」
平塚「ああ、つーか静さんと呼べ」ゴスッ
八幡「……静さんもすか?」
平塚「どうやら君は歩く負のオーラ製造機で、私は業を背負い過ぎているらしい」
八幡「どこの暗殺者だよ……」
平塚「恐らく雪ノ下もダメだろう。彼女の家もあれで明るくはないからな」
八幡「そうなんすか? ていうか何を探しているんですか?」
平塚「何を言っているんだ比企谷。
お祓いと言えば巫女さんだろう?」
八幡(自信満々すぎる……)
あまりにも突き抜けすぎて、逆に説得力さえ感じる。
八幡「あ、一人心当たりが……」
平塚「連れてこい。巫女の服はそこにあるから持って行け」
八幡「………」
彩加「ぼ、僕が巫女さんなんて無理だよぉ!」スラッ
八幡「似合っているぞ」ウゥ…///
彩加「何で泣くの八幡!?」
八幡(お前があまりに神々しいからだ)グッ
彩加「でも本当に僕にはそんな力……」
結衣『やめろぉおおおお! そいつを近づけるなぁああああ!』
彩加「………」
平塚「効いてるな」
八幡「すがすがしいほどに」
彩加「………」
結衣『やめろぉおおおおおおおお』
平塚「よし、トドメだ。比企谷、由比ヶ浜の唇を思い切り吸うんだ」
八幡「……なななな、なんで俺が!?」カァ///
平塚「こういうのは異性のキスって相場が決まってるだろう」
彩加「……あれ?」
八幡「くっ……俺しかいないのか……」
彩加「……あれ???」
八幡「……すまん見た目ビッチな女子…俺とキスすることになるなんて……」クッ
八幡(慰謝料請求されたら払う義務さえ生じる)
幽霊(結衣)『いやーキモいっす』スゥ…
平塚「八幡とキスしたくなさ過ぎて成仏したぁああああああ!!」
八幡「……………………」
結衣「……あ、あれ? 私……」
結衣(階段から落ちそうになって……それで……)
八幡「おお、起きたか」
結衣「ヒッキー?」
結衣(もしかしてヒッキーが私を……)ドキドキ
八幡「危なかったな。後少しで(呪いで)死ぬ所だったぞ」
結衣(やっぱりヒッキーが階段から落ちる私を助けてくれたんだ!)
八幡「立てるか?」
結衣「う、うん……」
結衣(身体が軽い……)
八幡「じゃあ俺も帰るけど、また暇な時に寺に行ってお祓いしてもらえ」ジャアナ
結衣「???」バイバイ
こうして、一人の幽霊が成仏し、一人の少女が救われた。
一人の少年の尊厳が失われ、一人の少年が男の娘への道を歩み始めたが、一番の原因の女は――、
平塚「全て私のおかげだな! ははははは!」
何も分かっていない様子だった。
続く。
今日はここまで! 明日は更新できないかもしれません!
林間学校行くのと川崎さんどっちが良いか意見をおねしゃす!
このSSまとめへのコメント
続きはよ。
おもろいわ