【安価】地方契約兵たちの小規模な冒険【コンマ】 (121)
日々の糧を得るために、常に命を懸け続ける契約兵たち。
ゼベール王国の地方都市フォレストサイドを舞台として、そんな彼らの小規模な冒険が繰り広げられます。
選択肢や動作の成功判定に安価、コンマを取り入れています。
一つの冒険ごとに新たなキャラを作成し、様々な依頼に取り組んでいきましょう。
依頼失敗時のやり直しは有りません。
SSWiki : http://ss.vip2ch.com/jmp/1506958350
【ルール】
1、コンマ判定は、コンマ一桁の下方判定で行います。 なお、一桁が1の場合は大成功、1の場合は大失敗となり、通常よりも良い/悪い結果が出ます。
2、下ネタ、趣旨にそぐわない安価(右に行くか左に行くかを聞いている安価で空を飛ぶなど)は、再安価となります。
3、実行不可能な安価は再安価となります。
4、依頼失敗時のやり直しは有りません。
5、キャラクターは、一回の依頼ごとに新たに作成します。 ただし、場合によっては作成したキャラクターがその後のストーリーに影響を与えることも有ります。
大成功と大失敗の説明がよくわからない
舞台はとある世界に存在する王国、ゼベール王国。
この国の軍隊には、正規兵と契約兵という二種類の兵士がいた。
契約兵とは財政赤字に悩むゼベール王国が、数年前に始めた兵士の雇用形態。
ローラッド大陸の西方に位置するゼベール王国の軍隊は、他国への軍事行動、国内の治安維持、魔物対策などを包括的に担当する組織であった。
かつて王国の軍は精強で知られていたが、近年は隣国との軍事的衝突は起こっておらず、この平和の時代に於いては金食い虫でしかない軍隊に対する市民からの風当たりは高まりを見せる。
とは言え、ゼベール王国も安易な兵士数の削減は、他国の軍事的介入を招く可能性があるため避けたかった。
それを受けてゼベール王国が打ち出した制度が契約兵制度である。
王国が、毎月一定の給料を払い正規兵として雇うのは、特に優れた力を持つエリートや出自の良い者に限られ、多くの兵士は契約兵となり、国や市民から寄せられる依頼をこなし、それに応じて支払われる歩合給制となった。
ゼベール王国は、これにより無駄な支出を削減することに成功する。
契約兵は、危険度の高い依頼をこなしていけば高額の報酬が払われる上、依頼で獲得した素材などは自分の物に出来るため、上手くやれば正規兵よりも収入は多くはなる。
しかし、大部分の契約兵は安定した生活と社会的地位を求めて正規兵を目指すのであった。
>>3 あくまでも一例ですが、回避判定に大失敗すると、その後のダメージ判定で特別なペナルティを喰らったりします。
どっちも1の場合って書いてあるからどういうことなのかなって
>>7 すみません、間違えました。 大失敗の方を0に変更します。
そんな世知辛い日常を生きる契約兵たち。
まずは、この章の主人公を決めてください。
性別は?
安価下
性別は女性となりました。
次に年齢を決めてください。
少女(15~17歳)、若者(20~22歳)、大人(25~30歳)の三択です。
安価下
次は戦闘スタイルを決めます。
ですが、その前に能力値について説明いたします。
基礎能力は
『攻撃』
『耐久』
『器用』
『回避』
『観察』
『知力』
『運』のパラメータからなっています。
例えば、攻撃の命中判定では自分の器用度が高く、相手の回避が低い程、当たりやすい。
自分の攻撃の命中時のダメージ判定では、自分の攻撃が高く、相手の耐久が低い程に、大ダメージが通り易いです。
観察は、罠や魔物の痕跡の発見に関与し、知力は推理や知識量に関わります。
コンマ判定の具体的なやり方は、実際にやりながら説明していきます。
では、戦闘スタイルの候補を上げていきますので、一つを選択してください。
運のパラメータはスタイル決定後にコンマで決定します。
なお、この世界に魔法は存在しません。
戦士……重武装で身を固め、敵と正面から殴り合うスタイル。バランスが良い。
特殊能力……頑強、ダメージ判定が致命傷or重傷となった場合、一回の冒険で一回だけ二段階ダメージを軽減する。
基礎能力
『攻撃』6
『耐久』7
『器用』5
『回避』3
『観察』5
『知力』5
『運』 ?
野伏……軽装備で俊敏な動きを売りとするスタイル。 攻撃、器用、回避の能力が高いが、防御に難有り。
特殊能力……華麗なる反撃、相手の攻撃をクリティカルで回避したとき、回避不可能な反撃を行える。
基礎能力
『攻撃』6
『耐久』3
『器用』6
『回避』6
『観察』5
『知力』5
『運』 ?
狩人……狩りの技を身につけた兵士。獲物を見逃さない鋭い目と、狩りで培った器用さを持つ。
特殊能力……罠の技術、トラップを仕掛けた際に、相手に看破されづらくなる。
基礎能力
『攻撃』5
『耐久』3
『器用』6
『回避』5
『観察』7
『知力』5
『運』 ?
魔物使い……特殊な声で魔物を使役する訓練を受けた兵士。 非常に有用な技術を持つ反面、肉体的な強さでは遅れをとる。
特殊能力、絆の声……一度の冒険で一体のみ魔物を懐柔し、使役することができる。 魔物が肉体的に強く、又、知力に優れる場合は成功率が下がる。
魔物との相性も大きく関わる為、成功には運も重要になってくるだろう。 少なくとも数十秒の時間を要するので乱戦中は使えない。
基礎能力
『攻撃』3
『耐久』4
『器用』4
『回避』4
『観察』5
『知力』7
『運』 ?
闘士……攻撃に重点をおいたスタイル。戦士よりも攻撃的である反面、軽装備なので防御では劣る。
特殊能力、闘争本能……攻撃が8以上の相手と戦う場合、攻撃、耐久のステータスが+1される。
基礎能力
『攻撃』7
『耐久』4
『器用』6
『回避』4
『観察』5
『知力』5
『運』 ?
この五つのいずれかから、スタイルを決定してください。
1:15に安価をとります。
主人公の戦闘スタイルは?
安価下
では次に、運のパラメータをコンマ一桁で決定します。
但し0の場合は、運は5とします。
安価下
運は2に決定しました。
では次に、主人公の名前を決定してください。
苗字は無しで、名前のみお願いします。
安価下
名前はルミナリアに決定しました。
では次に性格の大まかな傾向を決定します。
善、中立、悪から選んでください。
但し、契約兵という職業についており悪の場合でも反社会的という程では有りません。
善:お人好しで困っている人を放っておけない。
悪:人間不信、自己中心的な面が強い。
中立:その中間。
となります。
安価下
傾向は善に決定しました。
では次に、性格を構成する要素を三つ設定してください。
例:家族思い、動物好き、悪人に対する嫌悪感が強いなど。
傾向、善に矛盾しないものでお願いします。
>>↓1~3まで
性格は善で、犬が大好き、自己犠牲が過ぎる、誰に対しても優しい、に決定しました。
では最後に能力値ボーナスを決定します。
戦闘スタイルの欄に記した能力値はあくまでも基礎値で、個人差が有ります。
コンマ一桁0~3の場合、ボーナス+1。 4~6の場合、ボーナス+2。 7~9の場合、ボーナス+3となります。
安価下
現在ルミナリアの能力値は
『攻撃』5
『耐久』3
『器用』6
『回避』5
『観察』7
『知力』5
『運』 2
となっています。
この中から、いずれかのパラメータに一ポイント足します。
どのパラメータを選びますか?
安価下
全ての設定が決まりました。
主人公は
名前:ルミナリア
性別:女性
年齢:少女(15~17歳)
傾向:善
性格:犬が大好き、自己犠牲が過ぎる、誰に対しても優しい。
戦闘スタイル
狩人……狩りの技を身につけた兵士。獲物を見逃さない鋭い目と、狩りで培った器用さを持つ。
特殊能力……罠の技術、トラップを仕掛けた際に、相手に看破されづらくなる。
基礎能力
『攻撃』5
『耐久』3
『器用』6
『回避』5
『観察』7
『知力』5
『運』 3
今日はこれで終了します。
>>22はルナミリアなんだけど誤記?
>>34 誤記でした。 情報を修正します。
主人公は
名前:ルナミリア
性別:女性
年齢:少女(15~17歳)
傾向:善
性格:犬が大好き、自己犠牲が過ぎる、誰に対しても優しい。
戦闘スタイル
狩人……狩りの技を身につけた兵士。獲物を見逃さない鋭い目と、狩りで培った器用さを持つ。
特殊能力……罠の技術、トラップを仕掛けた際に、相手に看破されづらくなる。
基礎能力
『攻撃』5
『耐久』3
『器用』6
『回避』5
『観察』7
『知力』5
『運』 3
ssを再開します。
夜が明けた。
フォレストサイドの街の人々は、窓から差し込む朝日に顔を照らされ、徐々に夢から現実へ引き戻されつつある。
そんな早朝の街のある一角。
清々しく冷たい空気の中で、響き渡る声があった。
「おはようございます、ダグラスさん! 昨日頂いたパン、美味しかったです。 ……あっ、ドロップさん、朝から清掃、ご苦労様です!」
くすんだ金髪を耳にかからない程度に短めに切った、鳶色の目をした女性が、道を歩きながら、すれ違う人々に凛とした声を張り上げて挨拶をしている
そして彼女に話しかけられた人も、概ね笑顔で応えていた。
……中には、多少頬が引きつっている者もいたが。
この光景は最早、朝の風物詩となりつつある。
付近の人々の中には、朝日や小鳥の鳴き声ではなく、彼女の挨拶の声で目を覚ます人も多い。
彼女の名は、ルナミリア。
フォレストサイド警備隊に所属する、新米契約兵であり、故郷である田舎の村から出てきて、まだ三ヶ月程しか経っていなかった。
現在彼女は出勤中であるが、勤め先であるフォレストサイド警備隊の本部は、この早朝の時間ではまだ、開いてすらいない。
ただルナミリアの性格上、時間ギリギリに出勤すると、どうしても遅刻してしまうのだ。
……今もルナミリアの視線が、とある老婆を捉える。
その老婆は窮屈そうに腰を曲げながら、ゆっくりと井戸の方へ木桶を持ちながら歩いていた。
朝食を作るための水を汲もうと言うのだろうが、木桶にロープを括りつけ、深い井戸から水を汲み出すのは老人には重労働だろう。
しかも、あの人は腰が悪そうに見える……。
そう判断したルナミリアは、急いで老婆の元へ走り寄っていった。
「そこな方、そう、貴方です。 水汲みをお手伝い致しましょう。 さっ、どうぞ水桶を」
いきなり現れたルナミリアに、老婆は面食らった様子だったが、やがてゆっくりと首を振りながら返答した。
「いや……、見ず知らずの人にそんなこたぁ頼めません。 毎朝のことですから、気にしないでください」
「そんなご遠慮なさらずに! 私もフォレストサイド警備隊の一員として、市民をお助けするのは当然ですから」
「いや、本当に大丈夫……」
「そこをなんとか! どうか手伝わせて下さい、少しでいいですから」
老婆が手伝いを断っても、ルナミリアは全く引き下がらない。
それどころか、段々と老婆に顔を近づけ、鬼気迫った調子で、手伝わせてくれと頼み込みだした。
流石に老婆も、拒絶し続けるのに疲れたのか水桶をルナミリアに手渡す。
「よーし、頑張りますよ。 何杯くらい汲んでおきましょうか? 十杯ですか? それとも二十――」
「いや、二杯で十分です。 本当にそれで結構なので……」
ルナミリアは、あっという間に水を汲み終わると、老婆に向かい敬礼する。
「では、又。 お困りのことが有りましたら、いつでも相談してください!」
「は、はい……」
そう言い残すと彼女は再び、警備隊本部へと歩き出すのであった。
……親切魔。
彼女はこの界隈では、そのあだ名で呼ばれることもある。
少しでも困っている人を見かけると、直ぐに飛んできて手助けをしようとする彼女の性格から付けられたあだ名だが、
魔、とつくように、彼女の親切にかける情熱は凄まじく、どんなに当人が遠慮しても、全く引き下がろうとしないのだ。
隣の家で夫婦喧嘩があれば勝手に飛んでいって仲裁しようとし、お金に困っている人があれば自分の食費を削ってでも、お金を恵もうとする。
まるで自分の人生を削るような異常とも思えるルナミリアの親切。
彼女の施しを受けたものの中には、有り難さを通り越して罪悪感さえ覚えるものも多い。
仲が悪くしょっちゅう大声で言い争いをしていた夫婦が、彼女を呼び寄せないように囁き声で喧嘩をするようになり、
足が悪く、四六時中不満を垂れながら痛そうに足を引きずっていた老人が、彼女の前では痛みをこらえて平然を装うようになったというくらいだ。
そしてルナミリアは、本来三十分程度で行ける道に、三倍ほどの時間をかけて、警備隊支部へとたどり着いた。
「おはようございます!」
警備隊本部の扉を、ルナミリアは挨拶と共に勢いよく開ける。
「おう、相変わらず朝から元気いいなぁ」
本部の中には既に三十人以上の人間がおり、掲示板に張り出された今日の依頼書を眺めていた。
フォレストサイド警備隊は、正規兵二百名、契約兵五百名程で構成される組織である。
このフォレストサイドの西にあるゼムの大森林には、亜人種で構成される国家が存在し、ゼベール王国とは過去に軍事衝突が発生した事もあるので、
国境を守る要であるフォレストサイドにも軍団が配置されてはいるのだが、彼らは大森林との境界の警備や、有事の際に備えた訓練が主な職務であり、
強力な魔物の発生などの非常時でもなければ、それ以外の理由では動かない。
一見兵力の無駄使いとも思えるが、国境を固める兵士達が、領内で起こる様々な小さな問題に気を取られては、敵に付け入る隙を与えるだけ。
万全の状態で配置してはいるが、普段は使用しない兵力も、それはそれで必要なのだ。
現在フォレストサイド地方の治安維持、魔物対策は警備隊が行っており、契約兵達は朝に警備隊本部でその日の仕事を請け負うことになっている。
契約兵は正規兵とは異なり、休日や出勤日などは決められていない。
極端な話、月に二三回、気が向いた時だけ依頼を受けてもいいのだが、それでは高額な報酬が約束された
危険な依頼を積極的に受けて行かなければ生活していくのは難しいだろう。
ルナミリア達多くの契約兵は、週に三、四回程の頻度で本部に顔を出し、自分の実力に見合った依頼を受けることが多かった。
早速、ルナミリアも掲示板の前に立ち、今日の依頼を物色していく。
条件のいいものから、誰かに取られていってしまうのが常。 あまり、ゆっくりはしていられない。
(これは……)
ルナミリアは二つの依頼書に目が止まった。
それらの依頼書にはこのように記されている。
【空家の物音】
市民から警備隊に以下のような要望が寄せられました。
真夜中になると、隣の家の中から物音や唸り声が聞こえます。
隣は半年前から人が住んでいない空家の上、扉も施錠されているのに……。
不気味なので、契約兵の方に調査していただき、その原因を取り除いて欲しいです。
つきましては、通報があった空家を捜査する人員を一名募集します。
過去の事例から、恐らくは野良犬、又はジャイアントラット、ブラックバット、ジャイアントコックローチなどの魔物が住み着いているものと
考えられますので、可能であれば討伐もお願いします。
警備隊からの報酬:調査のみで3000ラム。 もし魔物などとの戦闘があった場合は、討伐実績を考慮。
【墓荒らし】
あの忌まわしい事件についての依頼です。
亡くなってまだ間もない人の遺体が、墓から持ち去られる事例が、フォレストサイド共同墓地、及び近郊の村の墓地において、この二ヶ月で三件報告されています。
フォレストサイド警備隊の威信に懸けて、この事件の犯人を必ずや逮捕しなくてはなりません。
その為に、周辺地域における主要な墓地の見張り番を募集します。
……なお、もし犯人を発見し、逮捕の際、抵抗された場合には討伐も許可されています。
警備隊からの報酬:一晩の見張りのみで5000ラム。 犯人逮捕の際は報奨金有り。
どちらの依頼を受けるかは、安価による多数決で決定します。
なお、21:40までを会議時間としますので、意見交換などが有りましたらその間にお願いします。
21:40に安価をとります。
どちらの依頼を受ける?
>>↓1~3まで、多数決。
依頼は、【墓荒らし】に決定しました。
墓荒らし、その言葉にルナミリアは眉を顰めた。
ルナミリアが警備隊に入隊し、一月も立たない内にとある事件が街中を駆け巡った。
フォレストサイド共同墓地内の墓がシャベルを使い掘り起こされた上、そこに埋葬されていた遺体が何者かに持ち去られていたのだ。
この国では大地神信仰が盛んであり、死後、魂が迷わずに大地の女神の元へと導かれるようにと、埋葬が行われている。
葬儀の形式は国家によって異なり、例えば火神信仰の強い地域では火葬。 水神信仰が強い地域では水葬が行われているが
土葬には他の方法には無い、ある問題点がある。
それは墓地を作る場所によっては、墓を掘り起こし屍肉を漁ろうとする魔物を呼び寄せてしまうということだ。
とは言え、魔物が忌避するある種の毒薬を墓土に撒くなどの対策は施されており、それを怠らない限りは魔物に死者の大地への帰還を、妨げられることは無い。
だが、流石に人間が神聖な墓を暴くという悍ましい所業が、フォレストサイドで起こるなどとは多くの市民にとって晴天の霹靂であり
当時ルナミリアも犯人に対する憤りを感じ、早く逮捕されるようにと祈ったものだ。
だが、犯人は警備隊を嘲笑うかのように周辺の村で同じような犯行を二件繰り返した上、未だに逃げおおせている。
(犯人を捕まえなければ、多くの人が不安と恐怖の中で暮らしていかなければならなくなってしまう。 少し危険だけど、この依頼を受けよう。
……犯人と遭遇する可能性は低いとは思うけど)
そう決意したルナミリアは、依頼書を掲示板から剥がして、受付へと向かった。
受付には、頭を剃り上げた禿頭の中年男が座っていた。
猛禽類を思わせるような鋭い目に、いかつい鉤鼻とガッシリとした大きい口を持つかなりの強面だが、実は彼は戦闘員ではない。
彼の名はガド、フォレストサイド警備隊、情報処理部の副部長を務めており、契約兵達への依頼の斡旋や情報の提供を行っている。
「おはようございます、ガド副部長」
「ん? おう、ルナミリア、目ぼしい依頼は見つかったか」
ルナミリアの声に、ガドは笑みを返した。
威圧感のある外見とは異なり、ガドはかなり面倒見が良く、真面目な性格だ。
ルナミリアがこの街で住処を借りる際にも、彼には大いに世話になったものである。
「はい、この墓荒らし対策の依頼を受けてみようかと思うのですが……」
「ふーん、これか………ちょっと待ってな」
そう言ってガドは、机から様々な資料が綴じられた紙の束を取り出し、素早く捲っていく。
「お、あった。 墓荒らしは……お前も知っての通り、二ヶ月前にこの街の共同墓地から遺体を盗み出したのが最初の犯行だ。
そして、最初の犯行の十日後にコルト村っていう小さな村の墓所から一体。 更にその二十日程後、パークタウンから、もう一体盗む出してやがる」
「コルト村に、パークタウン……両方とも、この街の南に位置する町村ですね」
「ああ、二つの場所の距離もそう離れてねえし、警備隊としては犯人の拠点がフォレストサイド南方面にあるんじゃねえかと考えてる。
だから今は、その方面に重点を置いて犯人を捜索しているところだな。 ……ただ、今回お前さんにやってもらいたいのは、その手伝いじゃねえ」
「えっ? ど、どういうことですか?」
ルナミリアはガドの真意を掴めずに聞き返す。
依頼書には確かに、墓地の警備と記されてあった。
ならば、犯人が遺体を盗みに来る可能性が高い地域の墓地を見張ることが自分の任務なのだと、ルナミリアはガドの話から予想していた。
ガドは少し言いにくそうにしながら、地図に記されたある村を指さした。
「実はお前さんには今夜から明後日の夜まで、この村の墓地を見張って貰う。
フォレストサイド東に存在する人口二百人程の小さな村……バード村をな。 犯人の出現地域からは離れているし……この村に犯人が出撃する可能性は
低いだろう」
>>52の下から二番目の行。
出撃⇒出現に変更します。
「どういうことですか? そんなところに兵を派遣するより、南を重点的に捜索したほうがいいのでは……」
「いや、お前の疑問は尤もだ。 だが、この事件は色々とややこしい事情が絡まり合っててな。 ……実は南には既に兵士が捜索に回されているんだ」
「どういうことですか?」
「考えてみろ。 これだけ世間を騒がしている事件なのに、契約兵に事件の捜査依頼が来たことがこれまであったか?」
「それは……」
確かに、ルナミリアの記憶では警備隊の掲示板で、墓荒らし対策の依頼を見かけたのはこれは初めてだ。
考えて見ると明らかに不自然だが、日々の糧を得ることに忙しく、これまではあまり深く考えたことは無かった。
「最初の事件が起こったときに盗まれた遺体は死後間もない若い女性の遺体っていうのは知ってるか」
「ええ、被害者の名誉の為ということで具体的な情報は出されていませんけど……噂でそれくらいは聞いたことが有ります」
絶対機密というわけではないが、大きい声で話すのがはばかられる内容なのだろう。
ガドはルナミリアに顔を近づけて周囲には聞こえない程度の声で囁いた。
「実はな……その被害者ってのが、この街の領主様の姪なんだよ」
「えっ……」
フォレストサイドの最高責任者である領主の姪の遺体が、墓荒らしの犯人に盗まれていた。
初めて知るその情報に、ルナミリアは大きな驚愕を覚えた。
「で、だ。 身内の遺体を、墓から掘り起こされて盗まれた領主様はどうなさると思う?」
「……そりゃあ、許せないですよ。 犯人に憤って何がなんでも捕まえようとすると思います」
「お前の想像通りだ。 ……で、領主様は自分の権限を使って駐屯軍の精鋭部隊を動かして、フォレストサイド南方面を血眼で捜索させてるんだよ。
まあ、国民の為にもなることとは言え、個人的感情で軍を動かしたと世間に知られれば悪評となる可能性があるから、情報規制は敷いているがな。
そんな訳で、この事件に関する捜査は駐屯軍の連中が担当し、警備隊はあまり介入しない筈だったんだがな……」
「ええと、何か事情が……?」
ルナミリアが聞くと、ガドが何やらげんなりした表情になってしまった。
「いやな、バード村に住んでいた一人の爺さんがいたんだが……つい一昨日死んじまったんだ。
で、その爺さんの息子は、最近世間を騒がしている墓荒らしが出現することを心配して墓場を見張りたいらしいんだが……。
なんせ死んだ爺さんは九十歳以上の大往生だったからな。 その息子も若くは無いし凶悪な犯人と渡り合える自信はない。 かと言って村の若い連中も
その息子さんの話を心配しすぎだと笑って、見張りを手伝ってくれそうにない。
だから、フォレストサイドから警備兵を派遣してくれないかと昨日、馬でこの街まで訪ねて来たんだよ」
「そう言う事でしたか……、まあ、その息子さんも困っているのでしょうし、人助けだと思えば私に断る理由は有りません。
……でも、警備隊が良くお金を出しましたね。 契約兵は傭兵とは違い、あくまでも市民の要望の内、公共の利益となる依頼を、国の金で請け負う存在。
普段だったら、その息子さんの話も心配しすぎだと、取り合わない気が………」
「まあ……、その息子さんってのが、若い頃にフォレストサイドで働いててよ。 警備隊の……まあ名前は言わないが、とある幹部と親友だったらしいんだ。
で、その幹部が、俺の顔でこの依頼を警備隊で引き受けてやってくれって言い出して……」
「なるほど……」
警備隊も、領主の事を個人的感情で兵を動かした、などと言っていられない。
いや、殆ど無駄な心配だと分かっていて、なお税金を使って契約兵を派遣するのだから更に質が悪いかも知れない。
しかし、もし取り越し苦労でも、誰かが不安に苛まれているのであれば、それを取り除く手伝いをするのが私の仕事だ、とルミナリアは自分に言い聞かせた。
当初の興奮に水を差されはしたが、やるからには中途半端ではいけない。
万全の準備を整えて、依頼に望まなくては。
ガドに依頼について質問できます。
しかし、ガドも忙しい身なので、質問数は三つまでです。
では、一つ目の質問を決めてください。
安価下
「その村の地形はどうなっているんですか?」
ルナミリアは、ガドに尋ねる。
墓場を見張るにしても、そこが高台にあるのか、それとも平地にあるのか、草原の中か、森の中かなどで様々なやり方が考えられる。
「ちょっと待ってな、確か簡単な地図があったはずだ。 ……っと、これだ。 バード村は森の中に存在する村みたいだな。
森の中を直径五百メートル程の円形にくり抜いて、その中に四十軒程の家が固まってる。 ただ、墓場は村の中には存在しない。 村の北側から
細い道が三百メートル程伸びていて、その先に墓場がある。 ………村の外へと繋がる道は、村の南側から伸びる一本だけだな。 万が一墓荒らし
が村に侵入するとして、経路は南の道以外に考えられん。 この森は結構崖や傾斜が多いらしいから、少なくとも墓荒らしが活動する真夜中に
森の中を移動することは無理だな。 下手すりゃあ大怪我だ」
「なるほど……、つまり、南の道が侵入経路としては一番妥当ということですか」
次の質問を決めてください。
安価下
では被害者の特徴、犯人の痕跡を質問します。
なお、今日は遅くなりましたので、ここで一旦終了します。
ssを再開します。
「では、被害者の特徴とか……犯行現場に犯人の手がかりとなるようなものは無かったのですか?」
ルナミリアの質問を受け、ガドは考え込んだ。
「被害者の特徴、か。 うーむ、一人目は十代後半の女性、二人目は二十代前半の男性、三人目も二十代前半の女性……、基本的に若い人の遺体が
盗まれる傾向に有るな。 それに、三人とも死後一日程しか経過していないのも共通している。 駐屯軍の方では、異常性癖者の犯行って線で捜査を
勧めているようだ。 ………ああ、そういえば」
「何かあるんですか?」
不意にガドが何かを思い出したようだ。
彼は急いで書類の束を捲り、ある一枚の紙で手を止めた。
「現場の状況なんだけどな、一件目のフォレストサイド共同墓地で、領主様の姪の遺体が盗まれた時は、墓荒らしはそれなりに隠蔽工作をしていたらしい。
掘り返した穴をまた埋め直したり、その上に置かれていた花を元通りに配置したりな。 まあ、詰めが甘かったようで結局はバレた訳だが。
だが、二件目と三件目の事件については、そんな隠蔽工作は一切行った形跡が無いようだ……。 駐屯軍の方では、このことに大きな意味があるとは
考えていないらしいが、俺はちと引っかかるんだよな」
一件目と、それ以降の事件の犯行手口の違い。
単なる気まぐれか、それとも何らかの意味があるのか……。
現時点では何とも言えないが、ルナミリアは念の為に覚えておくことにした。
三つ目の質問を決めてください。
安価下
22:30までに、質問が決まらない場合、質問なしとして物語を進めます。
質問なしとして、物語を進めます。
「質問はそれだけだな? じゃ、依頼者の元へと向かってくれ。 今は白薔薇亭っていう宿屋に滞在しているから、バード村まで同行すればいいだろう」
「了解しました!」
ルナミリアは元気よく答え、警備隊本部から出ようとするが、その前にふと思い立ち酒保へと足を向ける。
どんな事態が起きても対応できるように、十分な準備はしておくべきだろう。
警備隊の酒保には、食料から装備まで様々な商品が並べられている。
現在ルナミリアが装備している防具は、木綿の上着の上から着ているチェインシャツ、革の胸当てと篭手、そしてズボンだ。
武器としては、刃渡り四十センチ程のショートソードと、背中にかけた短弓。 腰からは矢筒をぶら下げている。
旅の間の保存食を買ったルナミリアは、その他の雑貨品に目を向ける。
何か購入しておくと、後に役に立つかも知れない。
重すぎるものは、持ち歩くことは出来ないが……。
目を引いたのは、この3つだった。
【痺れ薬】
即効性の麻痺毒。 体内に入ってから、一~三分ほどで効果が現れるらしい。
これを塗った武器で傷を着けられれば、人間や、中型の魔物ならば行動不能にさせられるだろう。
【火蜥蜴の油】
炎を口から吐き出す、火蜥蜴という魔物から採取された油で満たされた試験管。
試験管の外側には特殊な薬品が塗布されており、試験管が割れると、その薬品が油と反応して発火する。
人を焼き殺す程の威力はないが、大抵の魔物は炎に驚く。
上手く投げつければ、大きな隙を作れるだろう。 試験管三本セット。
【催涙煙幕】
猛烈な刺激臭と催涙効果を持つ煙を発生させる煙幕弾。
人間ですら、この煙の中ではまともに呼吸できない。
特に嗅覚が敏感な魔物に大きな効果を発揮するだろう。 二個セット。
依頼の報酬との釣り合いを考えると、どれか一つしか買うことは出来ない。
どれにすればいいだろうか。
23:15まで会議時間とします。
村へと持ってゆくアイテムを決定してください。
どのアイテムを購入する?
安価下
ルナミリアは煙幕を購入することにした。
これを使えば、もし魔物に取り囲まれたとしても、複数体を一度に混乱させることができる。
ただ使い方を誤れば、自分も巻き添えになるが……。
所持品を整えたルナミリアは本部を出て、ガドに教えてもらった、ポールという依頼主が滞在している宿屋へと向かった。
塗装などはされておらず、土がむき出しになった道路を暫く歩くと目的の宿が見え始める。
白薔薇亭はレンガで作られた二階建ての宿屋だった。
特に大きくも無ければ小さくもない、町並みに紛れてしまうような建物。
しかし、店先に置かれている花や綺麗に磨かれた看板が、その宿屋の活気を表していた。
扉を開けて宿へと入ると、そこは酒場になっている。
この場所で宿泊客は食事を取り、酒を飲みに来るこの街の人々と談笑を交わすのだろう。
カウンターの中にいた、二十代後半から三十代前半と思われる女主人がルナミリアの方に視線をよこし
次に彼女の襟に取り付けられた警備隊の記章を見た。
朝早くだというのに、しっかりと化粧が施された顔に笑みを作り、ルミナリアへ話しかける。
「あら、警備兵さんがどんな御用事かしら?」
「おはようございます! こちらにポールさんという方はいらっしゃいますか。 依頼の件で来た、と聞けばそれでご理解されるはずです」
「ポールさん……、ああ、あの人ね。 昨日は随分遅くまで飲んでいたから、まだ寝ているんじゃないかしら。 カイル、ちょっと起こしてきて!」
机を拭いていた従業員の青年が女将の支持を受け、二階への階段をトントンと上がっていった。
「多分、二日酔いになっているだろうから、起きてくるまでには時間がかかりそうね……。 警備兵さん、待っている間にホットミルクでも飲む?」
女主人の言葉にルナミリアは頷きかけるが、寸前で思いとどまった。
こういう場所の飲み物は、普通に食料品店で買った場合よりも高いお金を取られる上に、牛乳だって安い飲み物ではない。
契約兵の厳しい懐具合を考えると、無駄遣いは出来ない。
かと言って気遣いをただ断るのも失礼だろう。
「え、えっと……普通の水で結構です……」
だが女将はルナミリアの心配に気がついたのか、朗らかに笑っていった。
「大丈夫よ。 新米契約兵さんの事情はよく分かっているもの、そこまでえげつない商売はしないわ。 今回はサービスだから安心して」
「あ、ありがとうございます。 では、一杯だけ……」
ニ階からは、先ほどのカイルという青年が、ポールを起こそうとしているらしい声が響いてくる。
ルナミリアは暫し酒場のテーブルで、ホットミルクを味わいながら飲んだ。
やがて、二階から一人の男が降りてくる。
年齢は既に六十近いだろう。 短く切った白髪頭を掻き、大あくびをしながら覚束無い足取りで階段を歩いていた。
男はルナミリアに気が付くと、軽く頭を下げる。
「どうもどうも警備兵さん。 私がポールでございます。 私が要望を出した依頼を引き受けてくれたそうで、ありがとうござっ、つっ、痛てて」
ポールは頭を痛そうに抑えると、手近な椅子に腰掛けた。
「いや……、すみませんね。 気苦労が溜まっていたのか昨日は飲みすぎました。 頭がガンガン痛むし……完全に二日酔いだなぁ、こりゃ。 女主人、水をジョッキでくれ」
「はいはい」
運ばれてきた水を、あっという間に飲み干したポールは、いくらか気分がましになったらしく、大きく息を吐いた。
「あなたには今回、墓地の見張りを手伝って貰いたいんですよ。
恥ずかしいことに、私は腕っ節が強くもないし、夜の墓場で一人ってのも不気味なんで警備兵さんに手伝って欲しくて」
「ええ、伺っています。 安心してください、ポールさん。 私がいるからには墓荒らしなどという不埒な輩、お父様のお墓に指一本触れさせません!」
ルナミリアの真っ直ぐで力強い言葉を聞き、ポールは少し驚いたような顔をした。
「そうまで熱心になって頂けるとありがたいですよ……。 多分、殆どの人には、妻や村の奴と同じように心配のし過ぎだって笑われると思っていましたから。
……まあ、私も自分が根っからの心配性ってことは自覚しているんです。
でも今まで、ずっと世話になりっぱなしだった父ですし、最期は安らかに女神様の身許へと向かって欲しいんですよね。
だから、ちょっと大げさかと思いつつもラン……いや、名前はまずいんだっけ。 警備隊の方に相談して、身仕度の五日の間、墓を守ってもらおうと思ったんです。
昨日埋葬したので、明々後日の朝までですね」
身支度の五日。 それは大地に埋められた遺体はそれから五日目の夜明けと共に大地の女神の元へ旅立つという言い伝えを表す言葉だ。
すなわち、この国の宗教では土葬されて五日は遺体の中に魂が存在しているということ。
確かに、その期間中に遺体を盗まれることなど、遺族としては絶対に防がなければならないだろう。
ルナミリアは、この任務は依頼主であるポールにとって、とても重要なことなのだと再認識して気を引き締め直した。
「了解しました。 さあ、では一刻も早く村へと向かいましょう!」
「いや……、申し訳ありませんが、暫く待ってくれますか? フォレストサイドへは、二頭引きの馬車で来たんですよ。
妻に街に行くなら、村の近くで採れた薬草も売ってきてくれと頼まれまして。 でも、今馬車に乗ると吐きそうです……。
バード村までは馬車なら六時間くらいで着きますし、もうちょっと休憩してから出発させてください」
そうしてポールが回復するまで二時間程待ってから、ポールとルナミリアは馬車に乗ってバード村へと出発した。
予定よりは出発が遅れたが、まだ十分早い時間だ。
日の落ちない内には到着できるだろう。
今日はこれで終了します。
ssを再開します。
ルナミリアとポールの二人を乗せた馬車は、順調に街道を進んでいた。
もう時刻は昼過ぎになる頃か。
街道の周りには草原が広がっており、時折羊や牛の群れが草を食んでいる。
眩い夏の日差しが馬車の上に降り注ぎ、幌の中にいるルナミリアもかなりの暑さを感じていた。
「ふぅ……、今日は、随分と暑いですね。 ……そろそろ休憩を挟みましょうか、馬も少し休めなければなりませんから」
先程から直射日光を浴び続けている馬の毛は汗で濡れており、そろそろ塩と水を補給させたほうがいいだろうと、ルナミリアは判断する。
「そう、ですね。 じゃあ、この道の先に小さな森があるでしょう? あそこに小さな泉があるんですが、そこで休憩にしましょう」
ポールの示した方向には、確かに小さな森があった。
ここから五分もあれば着く距離だ。
ルナミリアは泉で水を補給しておこうと、水筒を背嚢から取り出した。
【遭遇】コンマ判定を行います。
『依存ステータス』
幸運 3
『補正項目』
なし
目標値 3
>>↓1コンマ一桁 3以下であれば、成功
【遭遇】
目標値 3
出目 0 大失敗!
馬車は森の中の、泉のほとりで止まる。
泉は地下から湧き出す水で形成された、半径五メートル程の小さなものだが、水は一切の濁りも無く澄み切っている。
この水ならば、処理せずに飲んでも腹は壊さないだろう。
ルナミリアは、羊の胃で作られた水筒の栓を開け、泉の水を汲もうとする。
その時、不意に馬が大きく嘶いた。
まるで何かに怯えているような、甲高い声……。
ルナミリアが咄嗟に周囲を見渡すと、視界の隅、彼女の近くにあった木の上から何かが飛びかかって来た!
【回避】
『依存ステータス』
ルナミリアの回避 5
???の器用 3
ステータスの差……5-3=2(ステータス差が2~3の場合、補正値は1となります)
『補正項目』
不意打ち -2
ステータス補正 +1
目標値 4
>>↓1 コンマ一桁
【回避】
目標値 4
出目 7 失敗
樹上から飛びかかって来たものの正体は、緑色の大きな蛇だった。
木の葉に紛れていたために、発見が遅れてしまったらしい。
今となっては、攻撃を回避することは出来そうにない。
ルナミリアは己の迂闊さを後悔し、せめてダメージを軽減しようと防御の姿勢を取った。
【ダメージ判定】
『依存ステータス』
ルナミリアの耐久 3
蛇の攻撃 1 3-1=2
『補正項目』
ステータス補正 +1
基準値は5、それに補正値を加え
目標値 6
ダメージ判定の場合は他の判定とは異なり、出目が目標値よりも高いほどダメージが大きく、小さいほどダメージが小さくなります。
>>↓1 コンマ一桁
【ダメージ判定】
目標値 6
出目 2
2-6=-4 微傷
【説明】
攻撃の命中判定や、ダメージ判定をするときは、両者のステータス差からステータス補正値を算出して
一定の基準値5に加減させます。
ただ、知力や観察、運はステータス値そのものを基準値として計算します。
(痛たっ!)
ルナミリアは革の腕当てを使い、蛇の噛み付きを受け止めたものの、牙は腕当てを貫き肌へと突き刺さった。
しかし行動に支障があるレベルの傷ではない。
ルナミリアはショートソードを抜き、腕に噛み付いている蛇へと振るった。
【攻撃の命中】
『依存ステータス』
ルナミリアの器用 5
蛇の回避 2
5-2=3
『補正項目』
ステータス補正 +1
腕への噛み付き +2
目標値 5+3=8
>>↓1 コンマ一桁
【攻撃の命中】
目標値 8
出目 2 成功
【ダメージ判定】
『依存ステータス』
ルナミリアの攻撃 5
蛇の耐久 1
1-5=-4
『補正項目』
ステータス補正 -2
目標値5-2=3
自分の攻撃の場合は、出目が目標値を上回る程、大ダメージを与えられます。
>>↓1 コンマ一桁
【ダメージ判定】
目標値 3
出目 1 1-3=-2 微傷
ダメージ判定の場合は、大成功や大失敗はありません。
ただ、0は10として計算します。
少なからず気が動転していたルナミリアは、蛇に攻撃する際に、少し手元が狂う。
蛇の首を跳ね飛ばすつもりで放った斬撃は狙った場所には命中せず、蛇の表皮を僅かに傷つけるに留まった。
だが、蛇はその斬撃に驚いた様子で激しく身をくねらせ、ルナミリアの腕から牙を離す。
不意打ちさえされなければ、この程度の相手は、まともに戦う必要すらない。
地面に落ちていた大きな石を拾うと、蛇と十分な距離をとりつつ、思い切り投げつける。
そして蛇が石に胴体を押しつぶされ、のたうち回っている隙に、ショートソードで蛇の頭を、今度は確実に跳ね飛ばした。
「び、びっくりしました……。 大丈夫でしたか? その、腕を噛まれておりましたが……」
「そうですね……」
ルナミリアが腕当てを外すと、手には小さな二つの刺し傷が出来ていた。
これは、蛇の牙によるものだろう。
傷自体は全く大したことが無いが……、もし蛇に毒があれば厄介なことになる。
この蛇は毒のある種類だっただろうか?
実家が狩りを生業にする家だった為に、野生動物に精通しているルナミリアは、蛇の亡骸を観察し記憶を呼び覚まそうとした。
【鑑定】
『依存ステータス』
ルナミリアの知力 5
『補正項目』
森の知識 +2
目標値 7
>>↓1 コンマ一桁
【鑑定】
目標値 7
出目 9 失敗
ルナミリアは必死に記憶を呼び覚まそうとするが、蛇の種類を断言することは出来なかった。
恐らく、グリーンボアかベルリーフの内、どちらかだと思うのだが……。
グリーンボアは無毒だが、ベルリーフの場合、炎症を引き起こす毒を持っている。
命に関わったり、後遺症が残るような毒ではないが、数日間は噛まれた左手が腫れてしまうかもしれない。
「これって、グリーンボアかベルリーフだと思うのですが……、どちらか分かりますか? ポールさん」
ルナミリアに言われ、ポールが蛇の亡骸を見るが、暫く見つめた後に首を振った。
「いや……、あの二種は似ていますからね。 ただ、ベルリーフはグリーンボアよりも小型の物が多いと聞いたことは有ります。
サイズからして……、多分グリーンボアかと思うんですけどねえ」
「……そうですか」
もしも、この蛇が毒蛇ならば依頼の遂行に支障をきたすが、どちらかといえば、そうでない可能性が高い……。
ルナミリアは悩んだが、結局そのまま村へと行くことにした。
多少左手が腫れたとしても、全く動かせなくなる訳ではない。
それに今から街に戻って替りの見張りを募集、そして今日の夜までに、ポールがバード村へ着くことは不可能だろう。
ルナミリアは口で傷口の血を吸い出し、泉の水でよく洗うと、背嚢から取り出した布の切れ端を巻きつけた。
村までは後、三時間程度。
休憩を終えたルナミリア達は、再びバード村へと進みだした。
今日はこれで終了します。
ssを再開します。
夕方というにはまだ早いが、日が徐々に傾き始めた頃、ルナミリア達は森の中の一本道を進んでいた。
道の両脇の森には、様々な種類の広葉樹が密集して生えており、所々に苔むした倒木が横たわっていた。
また幾重にも重なり合う葉のカーテンに遮られ、地面には殆ど日の光は入っておらず、例え昼でもこの森の中を歩くときは十分な注意が必要だろう。
「バード村へは森の中を通る一本道を通っていくしかない。 あらかじめそう聞いてはいましたが……、随分と長い道ですね」
ルナミリアは思わず呟いた。
「ええ、大体二キロ程度はありますが、もうすぐ村が見えるはずです。
バード村は林業と薬草の採取で生計を立てている村ですから、森の中に村を作ったほうが何かと都合がいいのですよ。
……それに、亜人種対策の意味合いも含まれていた、と祖父から聞いたことがあります」
「亜人種、ですか?」
ポールの言葉にルナミリアは疑問を感じた。
亜人種とは、人間と似通った身体的特徴を持つ他種族の総称である。
一括りに亜人種と言っても、ゴブリンやコボルトなどの様に、知能が比較的低く性格も粗暴である為、しばしば人間から略奪を行う種族。
リザードマンや巨人の様に、高い知能を持ち、場合によっては人間と友好的関係を築くこともある種族。
バンパイアやハルピュイアの様に、人間を襲うことが最早生態に組み込まれていて、人類の天敵として恐れられる種族など様々なものがある。
その内、この辺りで脅威となる可能性がある種族はゴブリンやコボルトなど、小規模な集団を構成し、村や旅人を襲って生計を立てる
種族だろう。
ただ、その手の種族は大抵は人目の届かない森などに住む家を作るもの。
もしも亜人種の脅威から逃れたいのならば、森の中に村をつくるのは逆効果の気がするが……。
ルナミリアの声色から彼女の考えを察したポールは補足して説明をする。
「まあ普通の森の中に村を作るのは、かなり危ないことでしょうね……、でもここは例外なんですよ。
この……赤目の森はね」
「赤目の……森? どういう意味でしょうか? ただの森に付けるには、ちょっと不気味な名前だと思うのですが……」
「ええ、実はですね、この辺りの森にはとある魔物が多く住んでいるのですよ。 ……そしてその魔物を恐れて、ゴブリンなどの低い知能しか持たない亜人は
この森には近寄らないのです」
「魔物とは……、穏やかな話では無いですね」
魔物……、それは人間に対して特に攻撃的であったり、危険な存在とされている生物のことだ。
野犬やカラス、そして数時間前に泉で倒した蛇も人間に害を与えるという意味では同じだが、それらは魔物と呼ばれることはない。
魔物とは、過去に人類に大きな被害を出した、恐るべき生物に対して付けられる名称である。
「いえ、対処法さえ知っていればそこまで物騒な魔物ではありませんよ。
ブラッドスライム、又の名をブレイン・イーターという魔物なのですが……ご存知ですか?」
【知識】
『依存ステータス』
ルナミリアの知識 5
『補正項目』
なし
目標値 5
>>↓1 コンマ一桁
【知識】
目標値 5
出目 5 成功
その魔物は、赤黒い粘液に覆われた核を持つスライムの一種だ。
普段は、小さな洞窟などに隠れ潜んでおり、冬季、動物が冬眠をしようと、その洞窟へ入ると活動を活発化させる。
獲物が寝ている間に鼻の穴から頭蓋骨内へと侵入。 最終的には獲物の脳を食い荒らし、自分の核と粘液を獲物の頭蓋骨内部へすっぽりと収めてしまうのだ。
しかし、それだけではブレイン・イーターが魔物と呼ばれることは無かっただろう。
かの生物が魔物と呼ばれる所以は、ブレイン・イーターの持つ、獲物となった動物の脳機能の一部を再現し、体を乗っ取る能力にある。
ブレイン・イーターに乗っ取られた生物は、次なる獲物を求めて彷徨い歩き、獲物となりうる動物を見つけると、その動物を殺し、死体が新鮮な内に
獲物の頭蓋内に自分の核の欠片を送り込む。
そして、その核の欠片は獲物の脳を養分として成長した後、体を乗っ取り、次の獲物を探して彷徨う……、というプロセスで繁殖を繰り返す。
しかも、乗っ取られた動物の肉はブレイン・イーターの分泌物に汚染され、毒性を持つようになってしまうのだ。
過去、牧場でブレイン・イーターが大量に繁殖し、牛や羊などの家畜数千頭が生ける屍となったことさえあり、この生物が経済に及ぼしうる
脅威の大きさから魔物に分類されるようになった。
唯一の救いは、ブレイン・イーターの能力では人や亜人種など、特に高度な知能を持つ生物を乗っ取ることは難しい為か
こちらが危害を加えようとしなければ、直接襲って来ることは無いという点だった。
少し早いですが、今日はここまでにします。
ssを再開します。
「あの魔物ですか……。 私の故郷でも、数年に一度は、誰かの家畜がブレイン・イーターにやられたという話は聞きました。
……確かに、ブレイン・イーターならば人間は襲わないでしょうが、村の家畜などは被害に遭うのでは? それに、森の生態系も崩れてしまいませんか?」
「ああ、その辺は大丈夫ですよ。 ごく稀にブレイン・イーターが大量発生してしまうのは、元々自然にいた物が、牧場などの人為的な環境下に迷い込むことで
混乱してしまうからだと言われています。 森などに居ついているブレイン・イーターは、何らかの方法で意思疎通でもしているのか
不思議と生態系を壊さない程度に個体数を抑えているようですよ。 家畜に関しても、ブレイン・イーターが忌避するハーブ、ミナヨモギを飼料に
混ぜておけば、寄生を防げますし」
かなり詳細に、ブレイン・イーターの特徴を話してくれたポールの知識にルナミリアは少なからず驚いた。
普通、魔物との戦闘を生業にするものでもなければ、ここまで詳しい知識は仕入れない筈だ。
「でも、それがどうして、亜人が森に住み着かないことに繋がるのですか?」
「ゴブリンやコボルトなどの知能の低い亜人は、間違って寄生された動物の肉を食べてしまうことが多いんですよ。 なんせ、目が赤くなる他は外見で
見分けは付きませんし、寄生された動物は動きが、少し遅くなるので狩りやすいんでしょうね。 そうして何体もの仲間が毒で倒れる内に
彼らの間にこの森は危険だという認識が生まれて、亜人は寄り付かなくなった……、こんなところだろうと言われています」
(つまり……、バード村は、ブレイン・イーターから多大な恩恵を受けているということですか。 魔物とは人間に害を及ぼすだけの生物だと思っていたけど……
こんな場合もあるんですね)
「もうそろそろ、着きますよ」
話している内に、馬車はかなり進んでいたようだ。
ルナミリアが進行方向に目をやると、薄暗い木々のトンネルの先から、明るい光が差し込んでいるのが見えた。
遂に、バード村へ到着したようだ。
幸い、蛇に噛まれた手にも、特に以上は現れていない。
あの蛇は、毒蛇では無かったのだろう。
ルナミリアはこれから始まる依頼を思い、気を引き締め直した。
森の先はバード村の広場へと繋がっていた。
森を円形にくり抜いた広場の周りを囲むように、四十軒程の家が建っている……、事前にガドに聞いたとおりだ。
村の様子に特に変わったところは無い。
並ぶ家々は、木で骨組みを作り、上から土を塗りつけただけであろう土壁、そして藁葺きの屋根という至って簡素な作りだった。
それぞれの家の周囲には、狭い畑が作られており、幾つかの作物が実っている。
事前に林業の村だと聞いていた通り、広場の一角には枝が落とされた丸太が積み上げられており、新鮮な木の匂いが風に乗って漂ってきた。
「まだ、日暮れまでには時間がありますね……。 一度私の家によりましょう。 この村には宿なんかありませんので、仕事の間は
私の家に止まってください。 部屋は息子が使っていたものがありますから。 ……息子は首都で働いていましてね。 私の父……あの子の祖父が
亡くなったと、手紙は書いたのですが、少なくとも一ヶ月は帰って来ないでしょう」
ルナミリア達は、広場を馬車で横切り一軒の家の前に止まる。
そして扉を開けると、丁度炊事中だったようで、美味しそうな匂いが漂ってきた。
「あんたかい、割と早かった……って本当に警備兵さんを連れてきちまったのかい」
奥から出てきた、ポールよりも少し若そうな五十代と思われる奥さんは、ルナミリアを見るなりそう呟いた。
その顔は、まさかこの村に、本当にフォレストサイドの警備兵が来るとは思っていなかった、と雄弁に語っている。
「はは、そんな意外そうにすることは無いだろう。 明々後日までは、この家に泊まっていただくことになったから、よろしく頼む」
「ああ、分かった。いやー、それにしても本当に出世していたんだねぇ、ランディくんは。
昔は特に腕っ節の強い方でも無かったのに」
「ちょっ、ちょっと、名前はまずい! あー、と、ルナミリア殿、今の話は忘れていただけると……」
例の警備隊幹部と、何か約束でもしていたのだろう。
慌てるポールにルナミリアは苦笑いをしながら頷いた。
「ああ、まずいこと言っちまったかね……。 ……それより、えーとルナミリアさん。 息子の部屋はそこの扉を開けたところなんで
荷物を下ろして来てくださいよ。 晩飯は今作っているけど、もう少し待っていてくださいね」
ルナミリアは勧められた通りに、この家の息子が使っていたという部屋に向かった。
荷物を置いたルナミリアは防具と下着を脱ぐと、奥さんから借りた水桶で濡らした布で汗を拭った後に、足の汚れを洗った。
居間に出ると、ポールが椅子に座り、テーブルの上に並べられたランプや松明などの手入れをしていた。
「ああ、ルナミリアさん。 墓地の見張りは夕食を食べ終わってからにしましょう。 今、見張りに必要になる光源の準備をしているところです」
「そうですか……、しかし夕食まではもう少し時間が有りますね。 何かお手伝いすることは有りませんか?」
「うーん……、ああ、そうだ。 実は昨日の夜の見張りは、村の狩人をしているゴードンさんに無理を言って、一晩だけ頼んでいたんです。
さっき、そのお礼を言いに行ったときは、昨日、墓荒らしらしい者を見かけたなどとは当然言っていなかったのですが……。
詳しく聞けば、墓地の警備をする上でのアドバイスなんかを聞けるかも知れません。 又は、家の納屋を探してランプや松明以外に使えそうだと
思うものがあるか探して頂いても……」
村の狩人ゴードンに、昨日の話を聞きに行く。
もしくは、ポール家の納屋を探し、役立ちそうな物を物色する。
この二つから、最初の警備前の行動を、一つ選択してください。
23:05までを会議時間とします。
ルナミリアはどうする?
>>↓1
ゴードンに話を聞きに行くに、決定しました。
ルナミリアは、狩人のゴードンに話を聞きに行くことにした。
墓荒らしについての情報はルナミリアも期待していないが、何か役に立つことを聞けるかも知れない。
ルナミリアは、ゴードンの家を直ぐに見つけた。
軒先の日陰で干し肉を作っており、家からは独特の獣の匂いが漂ってきている。
狩人の家に生まれた彼女にとっては、慣れ親しんだものだ。
ドアをノックして暫く待つと、中から髭面の三十歳程の男が姿を現した。
「んん? 誰だ、嬢ちゃん。 この辺りじゃ、見ねえ顔だが……」
「はい! 明々後日まで墓地を警備することになりました、フォレストサイド警備隊のルナミリアと申します。
ゴードンさんは、昨晩墓地を警備したということで……、何かお話を聞けないかと思い伺ったのですが……」
「ああ、そういえばポールのおっさんがそんなこと言ってたな……。 まあ、上がれよ。 大した話も出来ないと思うけどな」
そう言ってゴードンが、家の奥へとルナミリアを案内してくれる。
だが、その時。
ルナミリアの前を歩いていたゴードンの体が、唐突にぐらりと揺れた。
「っ……おっと」
「どうしました?」
ルナミリアが心配し、声を掛けると、ゴードンは笑いながら、何でもないと手を振った。
「心配はいらねえよ。 何かここ最近、立ち眩みが多くなってな。 別に具合悪いとかではないんだが……、もしかしたら変な風邪でも貰ったかね。
村の奴らにも、同じように急に目眩がして蹲ったりしてしまう奴が結構いるみたいだし……」
「そう、ですか」
確かに心配はいらないという、ゴードンの言葉通り、彼の顔に体調を崩しているような兆候は見られない。
ルナミリアは、ゴードンに勧められた椅子に座り、昨晩の警備についての話を聞き始めた。
今日はこれで終了します。
このSSまとめへのコメント
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