曜「アルミ缶の上にあるみかん?」 (70)
1. 果ては続くよどこまでもヨーソロー
曜「ねぇ、そこの君。この間は、ありがとうね」
曜「えっ?覚えてないの!? そんなぁ? やっと見つけたのに」グスン
曜「私はちゃんと覚えているでありますっ!」(ToT)>
曜「ほら、目が合ったよね? ライブで。ステージの上の私と、君が」
曜「ステージ? ほら知ってるでしょ。私、スクールアイドル。君、ライブにいた」
曜「え?人違いっ?おかしいなぁ。君みたいなキレーな娘を見間違えるわけないのに」
曜「キレーじゃない? 地味だし? 何それ、嫌味? 君、キレーじゃん」
曜「凹みましたでありますっ! ベコベコのアルミ缶が戻らない位に凹みましたでありますっ!」
曜「アイドルの私が羨むくらいに君はキレーなのに」
曜「お世辞はいいって? そっか。君は知らないんだね」
曜「メイクして、可愛い衣装を着て、練習した歌と踊りを魅せる」
曜「自分の精一杯を出し切るスクールアイドルなら」
曜「君なら」
曜「ステージの上なら、もっと輝ける」
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曜「まあ、いいや。君を困らせるつもりは無かったんだよ」
曜「しかし、困ったなぁ。この辺に来る事なくてさぁ。土地勘なくて」
曜「どこからかって?沼津だよ。だから静岡の街中なんて、分からないんだ」
曜「うん。夏休みだし、パァーッと遊ぼうかなって。そう、突発的。
曜「私、彼氏もいないし」
曜「あっ! 同情したっ! なにこいつ、寂しい女って」
曜「いいですよー。どうせ、寂しい女でありますっ! 一人で静岡に来る女ですよー」
曜「君も彼氏いないって? あ?、ごめんごめん。はい、この話題もう止めよう」
曜「とにかくさ、静岡県民たる一番の都会に遊びに来てさ」
曜「右も左も分からない。遊べる場所も知らなくて、このまま私、沼津に帰るのかなって」
曜「このまま私の夏は終わっちゃうのかなって、ちょっと寂しくなっちゃって」
曜「そんな時、ライブで見かけたキレーな君を見つけた。正直、嬉しかったよ」
曜「だから違うって? いいよ。そのまま聞いて」
曜「遊べる場所を教えて貰おうって。勇気を出して、声、かけたんだ」
曜「まさに渡りに船でありましたっ!あ、私、渡辺 曜。ヨーソロー」( ̄^ ̄)ゞビシッ
曜「って、知ってるよね。ほら、やってみて」
曜「ヨーソローっ!」( ̄^ ̄)ゞ<( ̄^ ̄)
曜「ふふ」
曜「でも、ありがとうね。これが私の夏の思い出、かな」
曜「えっ? 近くに美味しいお店があるから行ってみたら?」
曜「ありがとうっ! やっぱり君はキレーだね。関係ないって?君こそ、なに笑ってるのさ」
曜「どこどこ? 通り一本、向こうの道? ごめん、分からないよ」
曜「そうだっ。案内してよ。なんでって? 近いんでしょ。いいじゃん」
曜「うん? え? いいのっ! やったぁー!」
曜「さすがキレーな君は違うなぁ。もう言わないでって?呆れてる?でも認めたね、キレーだって」
曜「奢るっと言いたいけど、割り勘で。学生には厳しいであります」
曜「いいでしょ。ねぇ、寂しい女の夏の思い出に付き合ってよ」
曜「じゃあ、その後のカラオケ代は出すから。ドリンクバーも付けちゃう」
曜「最初から付いてる? へぇ、物知りだね君。ほら、私の歌と踊りを見れば、絶対思い出すから」
曜「目と目が合ったあの瞬間を思い出すから」
曜「こんな風に」ジッ
曜「存在を思い出してくれないアイドルなんて価値ないじゃん」
曜「私の夏の思い出、何もない。ついでに存在も価値ないの?はは、そっかぁ」
曜「私のことはいいや。ただ君の歌も聞いてみたいの。もっと君は輝けるから」
曜「うそうそ。もう言わない。綺麗なのは、ほんと。じゃあ、ご飯食べて、カラオケ行こ」
曜「レッツゴー、ヨーソロー」
曜「ああ、そうだ、カラオケ店は任せて。踊るなら広い部屋がいいよね」
曜「休憩もできるベッド付きで、調べてあるからさ」
曜(ふふ、チョロいな)
曜(これが私、渡辺 曜。浦の星女学院2年生)
曜(ただいま、女の娘をナンパ中であります)
曜(なんでこんなチャラいことしてるかって?)
曜(先ずはそこから話そうか。そうだよね?)
曜(えっ?その前に、さっきの娘はどうしたって?)
曜(ご飯を奢らされて逃げられたであります。ちくしょうっ)
.
スレ落ちしたもののタイトル変更しての立て直しです。
十数レス分、前スレのものありますが、加筆修正して投稿していきます。
前のスレは、千歌「50年後に、また会えるかな?」
曜(ちょっと前の話。一年生の春休み時にさ、千歌ちゃんとアキバへ行ったんだよね)
曜(お察しの通り、千歌ちゃんはμ’sと運命的な出会いをするわけだけど)
曜(そのちょっと前、メイドさんが配ってたチラシが飛んで、二人で拾い集めてる時にさ)
曜(ちょうど、千歌ちゃんが秋葉原駅の反対側の出口に消えた時にさ)
曜(私も運命的な出会いをしたであります)
曜(コスプレショップと)
曜(待って待って、最後まで聞いて。でも、語らせて)
曜(だって会員になると送料無料だよ。会員専用サイトに一般販売されてないコスの型紙も落とし放題!)
曜(Tポイントも貯まっちゃう。え?いらないの?)
曜(とにかく入るしかないと思って、店内を散策してさ)
曜(千歌ちゃんに悪いなと思ったけど、ちょっと位いいかなって)
曜(もともと別々に探検して、目ぼしい所を後で二人で回るつもりだったし)
曜(そうして、声をかけられた)
金髪「ねぇ、ダメでしょ。メイドさんの仕事道具を持って来ちゃ」
曜(金髪? ロシア?あれれ?違ったかな。ちょっと記憶の自信ないや)
曜(さっき拾い集めてたチラシ持って来たままでさ。指摘されてバツが悪くなって)
デコ「私が返しておいてあげる。あら? ふふっ、あなたよく見ると」
曜(やっぱり金髪じゃなくて、背の低いおでこがチャームポイントの人だったかも)
トサカ「や~ん。かわいいですぅ。やんやん」
曜(あれあれ違う? もっと可愛さを体現した人だった?)
曜(今、思い返すと、私、あの時の記憶が曖昧なんだよね)
曜(少し会話をして、なんの話題だっけ?)
曜(足を長く見せて、コスを引き立たせる話? 背が小さくても凛々しく見える姿勢の話? いやいや衣装作りの話?)
曜(とにかく出会った人とすごく話が弾んで、嬉しくなって)
曜(東京に来て、千歌ちゃんとはぐれて、たぶん不安だったんだと思う)
曜(そこに自分の理想のショップと話題が飛び込んで興奮して、不安とごちゃ混ぜになって)
曜(ガードが甘くなった)
曜(コスも撮影もできる静かな部屋があるって奥へ連れていって貰って)
曜(缶ジュースもらってさ。開封されてないし安心かなって飲みきって)
曜(ふらっときた)
曜(あれ、すっごく甘かったけど絶対アルコール入ってた。強力なやつ)
曜(酔うと力抜けるんだね。精一杯、手に持つアルミ缶を握ったけど親指大くらいしか凹まなかった)
曜(その部屋、都合よくベッドとシャワーがあってさ)
曜(まあ、その先は分かるでしょ。致してしまったわけですよ。女同士で。乙女のままだけど)
曜(もっと具体的に? 残念。あれは言葉では表現出来ないでありますよ)
曜(今、思い出した。やっぱり金髪でもデコでもトサカでもない。全然違う女の人だ。もういいけど)
曜(2時間後、私は、秋葉原駅に戻っていた。どうやって戻って来たかもはや覚えてない)
曜(実に2時間。出会って30分。休憩時間が90分。なんてお手頃っ!)
曜(ははっ、なんだよそれ)
曜(待って待って、最後まで聞いてっていったじゃん。悲劇じゃないから)
曜(ある種の開放感と脱力感、そしてなんとも言えない喪失感を抱えたまま千歌ちゃんを見つけた)
曜(何かのPVを映す画面の前に立ち尽くしてる千歌ちゃんがそこにいた)
曜(多分、2時間ずっと見てたんじゃないかな。私に気づいてない)
曜「千歌ちゃん」
曜(ねぇ、聞いてよ。千歌ちゃん、驚くかもしれないけど)
曜(千歌ちゃん、私、汚されちゃっ―――)
千歌「よーちゃん! 私、輝きたいっ!」
曜(千歌ちゃんは、とんでもないキラキラを瞳に宿していた)
曜(陳腐? いやいや。私が水泳で五輪の選考候補に届くかもって時も、そんな眼差しを向けてくれなかった)
曜(そんなの、とんでもない、でしょ)
千歌「よーちゃん、これ、スクールアイドルって言ってね」
千歌「知ってる? ふふ、そーなんだっ! 曜ちゃんでも知らないんだっ!」
曜(スマホ片手に、調べたてホヤホヤの知識を、チラチラと画面を見ながら私に話す)
千歌「ゆーず、可愛いねっ! 私もスクールアイドルになれたらなぁ」
曜(千歌ちゃんは、私の知らない事があると嬉しそうに話す)
曜(千歌ちゃんは、私がやったことがない事を嬉しそうにやり始める)
千歌「ゆーず! 穂乃果さん!START:DASH!トサカ!かわいい!にっこにっこにー!」
千歌「にゃ! 音ノ木坂!ハラショー!ユメノトビラ!わしわし!ご飯!ババ抜き?イミワカンナイ!」
曜(結局、付け焼き刃な講義の洪水は、鈍行電車で帰路につくまで止まらなかった)
曜(だから、私は、続く言葉を知っている)
千歌「よーちゃん、私、春からスクールアイドル陪、始めるね。決めたんだ」
千歌「私、輝きたいっ!」
曜「うん、いいね」
曜(ひとつの決心をした)
曜(すっかり日も暮れ、帰路のバスには私一人)
曜(運転手さんは空気と化し、アナウンスは耳から通り抜ける)
バシンッ!
曜(両手で両腿を叩く。ついでに景気付けに両頬も)
バシンッ!!
曜(ジワリと遅れてやってくる痛みなど関係ない。おかけで、ようやく目が覚めた)
曜(さあ渡辺、ここからだ。今日という日は千歌ちゃんの門出の日だ)
>千歌「よーちゃん、私、春からスクールアイドル陪、始めるね。決めたんだ」
曜(祝福しよう。今日この日を悲劇の日にしちゃいけない!)
曜(わたしの身に起きた事?なにそれ。何かあったっけ?)
曜(ほんとは全然そんな事ないけど、要領いいって言われる私なら出来る)
曜(渡辺、おまえ天才だな、って勝手に期待する教師の言葉を真に受けろ)
曜(私なら出来る)
曜(渡辺、お前、千歌ちゃんのヒーローだろ?)
曜(そうだ、私なら出来る)
曜( わ す れ ろ っ ! )
曜(ピコーン! 電球のイメージ。別に閃いちゃいないけど。とにかくそんな感じ)
曜(私は、渡辺ヨーソロー、だ)
曜(今、この時、この瞬間から、渡辺ヨーソローは、全速前進の最高速度で、大好きな千歌ちゃんのスクールアイドル活動を応援するんだ)
曜(なぜかって?)
曜(これは千歌ちゃんの要求だからさ)
>千歌「私、輝きたいっ!」
曜(変わりたいって自らの願いであるとともに、きっとこれは要求なんだ)
曜(誰かが言ってた。『あなたが好きです』は、『好きになって』という命令だって)
曜(同じこと。千歌ちゃんの輝きたいは、きっと)
曜(ねぇ、誰かっ! 輝いている私を見てっ!って)
曜(その誰かは、他の誰でもない、私でありたい)
曜(千歌ちゃんに想いを寄せる、私であって欲しい)
曜(だからこそ、今日わたしの身に降りかかったこと程度で千歌ちゃんに躓いて欲しくない)
曜(千歌ちゃんは、きっと気にしてしまう。自分を悔やんでしまうから)
曜(どうだい?渡辺ヨーソロー、そろそろいいかい?)
曜(デリートする準備はオーケー?)
曜(渡辺ヨーソローは、わすれた! ははっ、なんちゃって)
曜(そんな簡単に出来れば、苦労しないよ)
曜(でも、ああ、そんな事もあったな。ってくらいには、なった。以前、私は乙女のままだしね)
>>20
以前→依然
曜(深刻にならないで。別に前振りでもないから。それに、さ)
曜(それよりも、大きな問題がもうひとつ)
曜(あの後から、十代の旺盛な性欲を、持て余すようになったでありますよ)
曜(あの日のことは、もはや記憶の片隅になったけど、気持ち良かったって経験が身体に残ってる)
曜(ちょいちょい一人でしてたけど、もう無理。悶々とした性欲は、夏休み直前に、限界がきた)
曜(今まで、好きになった人が千歌ちゃんで、たまたま好きな子が女の娘だったって思うようにしてた)
曜(きっと周りに知れたら変だって思われるとしても、好きになったから仕方ないって)
曜(けれど最近、思うようになった)
曜(もしかして、私は、千歌ちゃんが好きで、同じくらい女の娘も好きなんじゃないかって)
曜(だから、気持ち良かったって身体が求めるんじゃないかって)
曜(もう一度、してみたら?)
曜(仮説はどこまでいっても仮説。だから確かめることにした)
続きid変わります
曜(本日は、夏休み二日目。近々、海の家合宿が近づく為、今日はみんなのプライベート優先の日)
曜(各々スケジュールは把握済み。千歌ちゃんと果南ちゃんは家の仕事。梨子ちゃんは美容院。黒澤姉妹は親族の集まり。花丸ちゃんは聖歌隊。善子ちゃんは沼津でゲーセン。鞠莉ちゃんは学校で仕事)
曜(そして、私は、電車にゆられて1時間でやって来た静岡中心の街で、ナンパ!)
曜(えっ?チャラいって? ほんとにね)
曜(でも、チャラいやつならとっくに成功してるでしょ)
曜(渡辺ヨーソロー、まさかの全戦全敗であります。友達にならすぐなれるのに)
曜(どうやら下心が見据えているのがダメらしい)
曜(でも限界。ムラムラが抑えきれない。もう誰でもいい。けれどするなら可愛い娘がいい。やっぱ重要)
曜(そして、冒頭。ご飯を奢らされた敗残兵がここにいるであります)
曜(めげるな私。チャレンジヨーソロー。あ、いい感じの娘)
曜(って、すぐ新たに声をかけた娘は、私を無残にも瞬殺して、立ち去っていった)
曜(とほほ、であります。って、え? )
曜(その時だった)
曜(すぐに今度は髪の長い娘とすれ違った)
曜(心地よいシャンプーの微香が鼻をくすぐる)
曜(すぐに振り返る。私には気にも止めず、トコトコと一人で歩いてく)
曜(背丈は私と同じくらい、か)
曜(顔は?見てない。でも分かる。すごく可愛い。だって、もう存在が可愛い)
曜(君だ。君に決めた)
曜(引き止めよう。どうやって? さあ、天才渡辺ヨーソロー)
曜(ここだ。今なんだ。今この瞬間、全てを出しきれ)
曜(もしかしたら今ナンパしてた様子、見られてた? いいや関係ない)
曜「ねぇ、君、ちょっと待って」
曜(だああああぁ~もうっ!なにしてんだ、わたしぃっ。後ろから肩を叩いて、引き止めるって)
曜(最悪の一手。警戒心しか抱かせない。経験豊富な人ならそのままスルー)
曜(けれどその娘は立ち止まってくれた。この時点で、もう好き。大好き。結婚してほしい。千歌ちゃんの次でいいなら)
曜(興味を持たれる話題にしなきゃ。アイドルで攻める? 褒めちぎる? 寂しい女でもう一回攻めてみる?)
曜(ほんの少し、顔がこちらに傾く。髪が長い所為もあって、顔はまだはっきりと見えない)
曜(ほのかに香る髪、白い肌の耳から首へ、少し見える鎖骨まで目に焼き付ける。胸元までは、惜しい。見えない)
曜「近くに美味しいお店あるんだけど、一人じゃ入りづらくって。女の娘同士、二人で、行かない?」
曜(30分前に逃げられた女と行ったばかりのお店は確かに美味しくてオシャレなお店だった)
曜(雰囲気オーケー。名前のゴロも洒落てる。最近TVでも紹介されたらしい)
曜(いけるか?最悪のレールにまだ載っている)
曜(ゼロからのスタートなんて、いつもの事。お腹はもう120%だけど)
曜(彼女が振り向く)
曜(さあ、ゼロからイチっ!)
曜「……」
梨子「曜ちゃん? やっぱり、声、聴いて、もしかしたらって」
曜「梨子、ちゃん」
曜(振り返らないでよ。そんなチョロい娘じゃないでしょ。絶対音感?こんな時まで。才能か)
曜「な、んで、ここに?」
梨子「言ったでしょ。今日は美容院に行くって。この近くなの。ふふ、どう?」
曜(手で髪を梳く。そんな仕草も可わi、ってそうじゃない。これ不味くない?)
梨子「曜ちゃんこそ、なんで静岡にいるの? 今日は水泳部の自主練でしょ?」
曜(そうでしたっー。そう言ってきた。というか、45秒前の他の女へのナンパ、聞かれてる?)
曜(いや、まだ私とナンパさんとが一致してないのかも。さて、どうやってごまk)
梨子「今さっきの女の人に、なにしてたの? それに私って気づいていないで声かけたよね」
曜「梨子ちゃんって気づいて声かけたでありますっ!よーs」
梨子「声のトーンで分かるの」
梨子「思い返せば、さっきの女の人にかけた声、無理してる曜ちゃんの声だった。半音上ずってる声」
曜(なにそのウソ発見器。絶対音感凄すぎぃっ! って、梨子ちゃんジト目だ。バレてるな、これ)
梨子「ねぇ、私に何しようとしてたの?」
曜(クスクスと、微笑で顔が崩れる様も蠱惑的。よく見たら前髪がいつもとちょっと違う)
曜(ほら、美容院でセットしてもらって、当日しかできないやつ)
曜(翌日、自分でセットを試みても、再現不可能なやつ。つまり可愛さ200%)
曜(答えは、決まっていたであります)
曜「……」
梨子「ねぇ、曜ちゃん、聞いてるの? 怒らないから正直に」
曜「ナンパ」
梨子「残念、私でした」
曜「当たりだよ、梨子ちゃんだったから」
梨子「へ?」
曜「だから、ナンパしてる」
梨子「えっと、私、女の子だよ」
曜「うん、女の子をナンパしてる」
曜「ううん、もう女の子だからじゃない。梨子ちゃんだから、ナンパ」
梨子「ご飯に行くって事でしょ?」
曜「ご飯はさっき済ませたんだ。こじつけ、分かるでしょ?」
梨子「一緒に帰るってことよね」
曜「休憩できるとこ。言わなきゃ分からない?」
梨子「えーっと、どこでしょう。カラオケかなぁ、はは」
曜「ホテル」
梨子「よ、曜ちゃん、な、なに言って」///
曜(千歌ちゃんに私の本性がバレるかもしれない)
曜(女の子を好きな変態と蔑まれるかもしれない)
曜(スクールアイドルを続けられないかもしれない)
曜(でもね? 梨子ちゃん)
曜(君とすれ違った時にさ)
曜(君の髪も、綺麗な白い肌も、噛みつきたい首筋も、折れそうな鎖骨も、柔らかそうな胸も、ああもう、縋り付きたいくびれも、挟まれたい太腿も)
曜(ああ、唆 る な )
曜(って、他のことがどうでもよくなるくらい、心底そう思ったんだ)
曜(不道徳? 倫理観? いいさ明日考えるよ」
曜「さ、行こう」ギュ
曜(ちょっと強引に。梨子ちゃんの手を握って歩き出した)
曜(こうして私は進みだした。果てなんてあるのかな。どこまでも続く大海原を、ヨーソロー)
2.アルミ缶の上にあるミカン
梨子(憧れの同人誌と同じシュチュに遭遇した時、人はどうするのだろう?)
梨子(理想にときめく? 現実に幻滅する? )
梨子(いえいえ、答えは簡単。戸惑う、でしょ)
梨子(なぜなら私が今、その憧れのシュチュの只中にいて、そう思っているから)
曜「梨子ちゃん、いい?」
梨子(ここまでしておいて、何を今更。いーや、答えてやらない)
梨子(ううん、正確には決まっていない。え? ホントにいいの? 私。って、さっきから問い続けている)
梨子(依然、私の両手首は曜ちゃんの両手に掴まれたまま。そう、ベッドに押し倒されたまま)
梨子(通称、床ドン。いえ、ベッドの上だから、ベッドドン? えーっとラブホだからラブホベッドドン?)
梨子( いやいや、あくまで健全な?女子高生が利用する休憩所のはずだから)
梨子(JK休憩所ベッドドン、これね)
梨子(そう、今や私はこんな思考の顛末。私自身、この状況に戸惑っているんだ)
梨子(対する曜ちゃんはというと)
梨子(さっきまでの高海しいたけばりの顔はどうしたの? ちょっとおどおど。うん、はっきりと戸惑っている、はい)
梨子(YESと言えば、どこまでも優しく扱ってくれそうな。しかし、NOと言えば、叱られるのを待っている子供のような、そんな顔)
梨子(そんな、初めて見せる曜ちゃんの顔に、私の答えはようやく決まった)
梨子(ゆっくりと目を瞑って、頷いた)
梨子(いいの?私?)
梨子( うん、いいよ。これが私の答え)
梨子(流されてるなぁ。そう、曜ちゃんに、流された。それでいい)
梨子「曜ちゃん」
梨子(いいよ、来て)
曜「その前に、ナース服のコス、脱いで。皺になる」
梨子(うん、ナンパが成功しなかったのは、そういう所だと思うよ)
梨子(これが私、桜内梨子。浦の星女学院2年生)
梨子(え? チョロすぎるって?ほんとにね)
梨子(先ずはそこから話しましょうか。そうよね? )
梨子(曜ちゃんを意識したのは、いつ頃だろう?)
梨子(待って。意識してるっていうと、まるで恋してるみたい)
梨子(そうじゃなくて、曜ちゃんに対して、とても気になることが出来たのはいつ頃だろう)
梨子(友達の友達から始まって、すぐに友達になって、部活仲間で、スクールアイドル同士で)
梨子(いつの間にか、段々と。これが正解だと思う)
梨子(けれど、分かりやすい出来事を挙げるなら、東京のスクールアイドルワールド)
梨子『私、緊張している』
曜『おはヨーソロー! 緊張している時のおまじない』ニコッ
梨子(これだと思う)
梨子(みんなに話したら、え? なにそれって言われそう)
梨子(でもね。この時の私は、勝手ながら思ってしまったの)
梨子(きっと曜ちゃんは、この程度の事なんて、乗り越えちゃうんだって)
梨子(私が、東京でピアノが弾けなくなってしまったこと。海の音を探していたこと。私が小さいことでも悩んでしまうことなんて)
梨子(ヨーソロー! と一声で、ひとっ飛び)
梨子(私の躓きなんて飛び越えちゃうんでしょ?)
梨子(そんな完璧超人ヒーロー)
梨子(もちろん、そんな超人はどこにもいない)
梨子(曜ちゃんは、どこにでもいる女の子で、花を恥じらう乙女)
梨子(だからこそ余計に、意識せずにはいられなくなった)
梨子(じゃあ、どんな事で悩むんだろう? )
梨子(元気一杯でヨーソローな曜ちゃんじゃない、他の曜ちゃんは、どんな顔をするんだろう?)
梨子(悩んでる曜ちゃん?悲しそうな曜ちゃん?怒っている曜ちゃん?)
梨子(誰かの助けを必要としてる、曜ちゃん?)
梨子(そんな曜ちゃんを見てみたい、ってそう思った)
梨子(嘘。そんな曜ちゃんは見たくない。悲しんで欲しくない。苦しんで欲しくない)
梨子(だからせいぜい、心の底から驚いた曜ちゃんをみるだけに留めておこう)
梨子(不思議と曜ちゃんに目を向ける日が増していった)
梨子(でも、すぐに気づいた)
梨子(色んな曜ちゃんを引き出す人はたった一人しかいないことに)
梨子(簡単に分かっちゃったんだ)
千歌「ねぇ梨子ちゃん。いっそ髪型を短めにしてみようよ」
梨子「え? その方が似合うの?」
千歌「うーん。そうすれば2年生3人がセミロング。セミロンガールズって新たな個性とユニットに」
梨子「却下」
千歌「えぇー、せっかく3年生のロングカッターズに対抗できると思ったのにー」
梨子(色んな曜ちゃん製造機こと千歌ちゃんは相変わらず迷走していた)
梨子「よ、曜ちゃんは、どんな髪型が私に似合うと思う?」
曜「えっ?私? えーっと、梨子ちゃんなら美人だし何でも似合うと思うけど」
梨子(それほどでもあるって、違う。聴きたいのは、そうじゃない。好みの話だ)
梨子「衣装担当として、メンバーの髪型の把握はある程度、必要でしょ?」
千歌「確かに、花丸ちゃんが突然『出家したずら」って坊主になったら困るよね」
曜「ウィッグしやすくなるから。まって。意外と髪型の幅は広がるかも」
梨子「曜ちゃんが考える、私に似合う髪型は?」
曜「そうだなー、うーん。そのままでいい、ってダメ?」
梨子「だーめ」
曜「次の衣装のイメージになっちゃうけど、もうちょっと前髪を短くして、えーと、」
梨子「なるほど。前髪を短くね」
梨子(はい、決まり。私の髪型は決まった)
千歌「なら曜ちゃんも前髪短くしよう!」
曜「なんで?」
千歌「ピカッ!2年生スリーデコーズっ!ACT3!」
曜「ちょっと桜内さん、目の前のデコが乙女に向かってデコでありますよ」
梨子「あらあら渡辺さん、これはちょっとお仕置きが必要ね」
千歌「うん、この話題はやめようって、あれれ?二人とも?」
曜「おや、なぜかわたしの手に千歌ちゃんサイズの際どいミニスカ衣装が」
梨子「あら、なぜかLINEのAqours(9)のグループトークで『撮影する』に」
曜「これはこれは、千歌ちゃんを可愛くデコる天啓ですな」
梨子「それはそれは、露光補正も目元の調整も可愛くデコらなきゃね」
千歌「私は、携帯でもプリクラでもなぁーいって、ゆーるーしーてー」
梨子(そんなこんなで曜ちゃんの好みの髪型を聞き出した私)
梨子(ちょっと奮発して評判のいい静岡の美容院を予約して)
梨子(『梨子ちゃん、今日用事ある?』って聴いてきた曜ちゃんの、きっと遊びの誘いだろうを断って)
梨子(そして、私は、電車に揺られて一時間でやって来た静岡中心の街でメイクアップ!)
梨子(ふふ、見てなさい曜ちゃん)
梨子( 絶 対 に 最 高 で、
最 強 に 最 可 愛 な私になって
驚かせやるんだから)
曜『おはよーそ、って、えっ?梨子ちゃんっ?』
梨子『どうしたの?曜ちゃん』カミノケファサァ
曜『え、あ、えっと、か、可愛ぃ……ょ』
梨
子(ふふ、ふふふ)
梨子(ふふふふふふふふふふふふ)
>>51
梨子(ふふ、ふふふ)
シュチュで草
梨子(あれ?これって私が曜ちゃんに恋してるみたいじゃない?)
梨子(まさかそんな。女の子同士だよ?お気に入りの同人誌じゃあるまいし)
梨子(これは、そう。もっと仲良くなりたい友達と共通の話題を必死で探すような感覚)
梨子(これに近い。そのはず)
梨子(それを、ほんの少し。ちょっとだけ。ほんの100億倍濃縮した、だけ)
梨子(だから、誰か分かって欲しい)
梨子(不慣れな街で一人、後ろから声をかけられた不安を)
梨子(でもそれがお目当の人で、運命だろうが吊り橋だろうが、確かに揺さぶられて振り切れた感情メーターを)
梨子(ナンパと言われて痛みを覚えた哀しさを)
梨子(ホテルへと手を引かれていることの戸惑いを)
梨子(『女子会プランあります』の掲示に、ここは健全な休憩所だという言い訳を)
梨子(部屋選びに戸惑う曜ちゃんが『こういうとこ初めてなんだもん』って小さく呟いたことへの安堵を)
梨子(強引な曜ちゃんも、戸惑う曜ちゃんも、私だけを見ている曜ちゃんも、全て私が引き出しているという嬉しさを)
梨子(誰か分かって欲しい)
梨子(ううん。本当は誰にも分かって欲しくない)
梨子(湧き上がった確かな感情を、誰にも知られてはいけない)
梨子(産声をあげた瞬間に、永遠に飛び立つことが出来ないと決定された命を)
梨子(叶うはずのない、この想いを)
梨子(誰にも知られずにひっそりと潰えるのを見ているしかないのだろう)
梨子(ああ、でもこれだけは分かって欲しいかな)
梨子(『先にシャワー浴びて来て』って流されるまま浴びて、バスルームから上がった私を待っていたのが)
梨子(ナース服のコスプレだった時の私のため息を)
梨子(ね?)
続きます。また書いたら投下します。エロなしです。
まだ2章途中です。
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