エロくならない程度にイチャイチャします
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「おい、どうしたマスター、もう泳がないのかよ? サーフィンでもいいぞ?」
燦々と照る真夏の陽光の下の凪いだ海。
サーフボードにあぐらをかいて座るモードレッドの元気のいい声が響いた。
小麦に日焼けした肌を包む赤のビキニにセーラー服を着た姿は、いつもの鎧姿よりも元気そうに見える。
「もう無理…………死ぬ……」
しかし、くたびれた顔のマスターは大きめのゴムボートの上で横になったまま呻くだけ。
自分だけでは海から上がれず、モードレッドに引き上げてもらうくらいに消耗していた。
「まだ大丈夫だろ。波がきてないならオレがどばーっておこしてやるって」
「あのね……普通は四時間も泳いで潜って波に乗ればこうなるの……お願いだから休ませて……」
疲労困憊といった様子でごろりと寝返りをうつ。
今まで波乗りサモさんに付き合いに付き合って、もう全然動けないのだ。
むしろ生身の人間が四時間もよく持ったほうと言えよう。
喉が渇いたのに、用意していた水筒の蓋を捻る力すら残っていない。
「えー……つまんねぇなぁ……」
ゆらゆらと海を漂いながら、モードレッドとマスターが沖合いになんとなく流されていく。
少し島から離れているが、潮流に乱れはない。
さざなみは静かに、陽は雲に隠れ、風は優しく吹いていて、ゆらゆらとボートは揺れていた。
「まーいっか……こうしてるのも気持ちいいしな」
こんな風に静かなのもありだなとモードレッドが思うくらいに、時は緩やかに流れていく。
「なぁ……おーい寝ちゃったのかよマスター……」
ただ得難い平穏も一人では手持ち無沙汰だ。
マスターを見ると、ゴムボートの片隅でごろんと仰向けのまま動かない。
疲れた顔のまま、目を瞑って寝息をたてていた。
「むむ……」
大きめのボートなため、一人分ぐらいの空きが隣にあるのに気づいて、なんとなく島のほうを見渡したりする。
島はわりと遠くて他のサーヴァントの視線は感じないし、ゴムボートの縁は人が軽く隠れるぐらいに厚い。
離れていては、例え千里眼のスキルがあっても誰が寝ているなんてわからないだろう。
「あー……なんだかオレも眠くなってきたなー。い、いっぱい泳いだからなー」
とてもわざとらしい声をあげながら(自分では自然なつもり)モードレッドはゴムボートへと乗り継ぎ、マスターの隣で横になる。
「へへっ……えへへへ……」
至近距離で少し頬を赤らめながら、マスターの腕を枕にして笑った。
案外大胆なのは夏の陽気のせいなのか、初めての添い寝に嬉しそう。
「マスターの腕……結構ゴツゴツして硬いのな……」
少年のような笑顔に、少し女の子らしい柔らかさが浮かぶ。
「ふやぁっ……!?」
が、しかし、ころりと寝返ったマスターとの密着度が高まり、有り体に言って抱擁されると変な声を出してしまう。
眼前に目を瞑ったマスターの顔がいっぱいにあって、胸が触れ合うほどに近い。
「ま、ま、ま、マスター……? お、お、お、おおお、い……ち、近い近いってば……」
「ぅぅっ……もーど、れっどっ……?」
寝ぼけてるのかうっすらと開いた目で呼びつつも、抱擁は止めずに目がまた重く閉じられる。
そのくせ、マスターのほうからもきゅぅっと力が入らないなりに抱きしめてくる。
「こ、こらぁ……ど、どこ触ってんだよぉ……」
触り心地がいいのか、水着越しに引き締まったお尻へと手がむにっと触れたりもしていた。
いつもなら怒っていただろうが、声に張りはない。
自分から添い寝しちゃったし、抱き締められる恥ずかしさとかで湯気が出そうなくらいに顔が赤くなっている。
(わ、わわわっ……)
目の前いっぱいにあるマスターの顔から離れようにも離れれず、近づこうにも近づけず、顔を背けたりもできない。
鼻と鼻が触れ合うぐらいの距離でモードレッドはわたわたと慌ててるばかり。
「……んんっ…………!!」
だがもう一歩、マスターの抱く力が強まってきて、ついにキスをされてしまった。
感じた事のない唇の柔らかさ。夏の陽よりも熱く感じる体温。
初めてのキスはうっすらと潮の味がした。
「……ん、んぅ、む…………」
気づけば、キスをしたまま目を瞑りモードレッドからも抱きしめ返していた。
見た目よりも逞しい身体つきのマスターをスレンダーな肢体で受け止める。
真っ赤な顔のまま誰にも見せたことのない表情で、唇を擦れ合わせるようにしてキスを続ける。
「んんっ……ちゅ、ぉ……んんっ、んっ……!? っはっ……ま、マスター……! 絶対起きてるだろ!」
けれども舌が入り込んできたら、流石に唇を離した。
不快だからではなく、気持ちいい事に驚いたのだ。
「……そりゃあ、横で寝られたら目も覚めるよ…………んむっ……」
「ひゃっ……ん、へんな、とこな、舐める……なって……! ぁ、んんっ……」
首筋に頬ずりされたりキスされたり吸われたりとされて、ぞくぞくっと身体が震えた。
抱く手にはぎゅっと力が入って、触れたお互いの脚が絡むように擦れ合う。
「……んー…………嫌……?」
「くぅっ……ず、りぃぞっ……そんなん聞くなよぉ……」
返事なんて言うまでもない。
抱かれた子犬が甘えるかのようにマスターが擦り寄ってくるのを、懐中に掻き抱く。
敏感な首筋へ吐息が降りかかり、ちゅっと吸われるとぞくっと微電流が走った。
「……ちょっとしょっぱい…………」
「こ、こらぁ、またぁ……あ、ひぅ……!」
皮膚の薄い首筋を舐められる感覚に身悶えして、声音はか細く甘い。
猫のように身体を丸めては、マスターの責めに身じろぎするばかりだ。
「モードレッド可愛い……」
「こんな、ときだけ……言う、なよなぁ……んんっ……れおっ……」
言われ慣れなくて、嬉しいやら恥ずかしいやら何がなんだかわからない。
けれどもまたキスされれば、今度はモードレッドからも舌を絡ませる。
粘膜と粘膜が触れ合う鮮烈な快感。
目を瞑り、うっとりとした表情ですぐに夢中になった。
「あ……」
「いい……?」
マスターが横抱きの姿勢から少し身を起こし、覆い被さってくる。
見上げれば真剣さと情欲が入り混じった初めて目にする表情。
優しくセーラー服越しの胸に手が触れてきて、とくんと鼓動が強く鳴った。
(マスター……オレに興奮してるんだ……)
恥ずかしいのに、それ以上に想われ触れられる嬉しさのほうが大きくて。
「いいぜ……オレもマスターとならさ……あ、いや違う……
その……マスターがいい……マスターじゃなきゃやだ……」
マスターがにこっと笑い、目尻が下がった瞳が優しく映る。
いつも見る表情と変わらない、モードレッドの一番好きな顔だ。
伝わってくる笑みに緊張はほどけ、かろやかに微笑み返す。
より強く抱擁しようとお互いに腕を伸ばしてから
「う、ごめ……やっぱ限界……」
「はっ……?」
マスターはぐんにゃりと、糸の切れた人形のように崩れ落ちた。
言葉の通り、本来くたびれきっているのだ。
事態に追いつけないモードレッドはぽかんとした顔になっている。
「……マジきつくて眠くて……休んでからなら……」
「テ、テメェ……ムードとかどうしてくれんだよぉ! オレ……こんなんメチャメチャ恥ずかしいじゃねーか!」
モードレッドは身体に乗ってるマスターを抱えたまま真っ赤な顔で叫ぶ。
真剣に動けないマスターには続きなんてできそうにない。
もちろんモードレッドからリードするなんてのもできない。
凄くその気になってたのに、この始末。
穴があったら入りたい。いっそこのままボートごとひっくり返って沈みたい。
「ホントごめん……モーさんから誘って……くれたのに……」
「モーさん言うなっ! あと誘ったりなんかしてねぇ! 眠くなったからオレも寝ようとしただけだぁ!」
モーさん的には添い寝と腕枕しにいったのは誘ったわけではないらしかった。
今はマスターの布団と化してるのでより大胆なのだが、怒りと恥辱でそれどころではないようだ。
「じゃあ……折衷案として提案が……」
「……なんだよ」
「俺は寝てるから……元気なモーさんが上で騎乗スキルを使えば」
「下ネタかよ! 余裕あんなら海に放りだすぞ!」
実のところ、普段の会話はこんな感じだったりする。
うがーっと怒声をあげているが、マスターをどかさないのはちょっと優しい。
「大体、今のオレは騎乗スキル持ってねーの! サーフィンスキルになってんだ!」
「えー、じゃあ波乗りする方向でいいやもう」
「なんでマスターがめんどくさがってんだよ! もっとこう、なんつーかさぁ……!」
「そうだね……モーさんもラブラブエッチしたかったよね……」
「ラ、ブ……!? くっぅうううぅ……バーカ! あーもう……! マスターのバカ! バーカ!」
語彙力ない罵倒。
怒ってるものの、マスターは抱いたままだし今一歩迫力がない。
顔が近いのにも慣れてきて、ごくごく自然な様子。
「あ……喉渇いて死にそうだから……水筒開けて……お願い」
「マースーター…………ちっ……しゃーねーなーもう……」
手を伸ばし、転がっていた水筒の口を片手で開ける。
なんだかんだ言いつつもお願いを聞いてくれるのはやっぱり優しい。
「起こしてやるから、ほら」
「だるいから口移しして」
「……調子乗ってるとホント落としちまうぞマスター……」
「モーさんとまたキスしたくてさ、嫌……?」
「だからぁ……わかっていってんだろクソ……」
半眼で睨みながらも顔はさっきよりも怒っていない。
最初のキスは不意打ちだったし、ちょっと恥ずかしいけど自分だってキスをしたいのだ。
水筒から冷たい水を含む表情は、憮然としている風で少し喜んでいる。
目を瞑り顔を寄せていくモードレッドの表情はいつになく女の子っぽい。
「んっ……んぅ、ちゅっぉ……」
口づけし、舌を橋にして、マスターの口内へと水を注いでいく。
自分からするのはぎこちなく、唇からは少しこぼれる。
伝わせた舌からこくっこくっと嚥下する音を聴いて、頬に赤みが差した。
「ふぇ、んんっ……ちゅぅ、んぇ……ちゅっぽっ……ちゅくっ、んっ……」
また水筒を傾け、口移しする時に舌を絡み合わせるようにすると、しゃぶられるみたいに
舌を吸われ、唾液混じりの水をマスターが飲み込んでいく。
(わわっ……スゲェ、なんかこれスゲェドキドキする……それに嬉しいぞ……)
気持ちいいのもあるが、マスターを潤しているとわかるのが幸せな気分。
モードレッドも舌を伸ばして吸いやすくさせると、こぼれた水が喉を伝ってお互いの身体を濡らしていく。
ただそんな些細な事に気づかないくらい夢中になって水を飲ませていた。
「ん、れおっ……ちゅぅ、ん、ぷはぁっ……は、もうないって……」
「……残念」
唇が離れていき、唾液が糸となってつーっと離れる。
最後にはキスのほうがメインになっていたが、マスターの瞳には幾らか元気が戻っていた。
とはいえ疲労は抜け切れていないらしく、眠そうな目つきだ。
「それじゃ続きでも」
「いいから寝てろって。まだ疲れてんだろ。……今日はムリさせちまってごめんなマスター。はしゃぎ過ぎちまった」
今しがたまで女の子顔でキスしてたとは思えないきっぷの良い表情は、実にモードレッドらしい。
「やだ……モーさんイケメン」
「からかうんじゃねぇつーの。もーコイツはよー……ほら一休みしようぜ」
呆れながらもにかっと笑い、両手両足をぐっと伸ばしてからごろんと横になる。
「……わかった。じゃ昼寝しようか」
「おう」
二人して横になると、雲の隙間からうっすらと陽射しが覗いた
きらきらと海面が陽を照り返して、優しく撫でるような風が火照った身体を覚ましていく。
なんとなくお互いに身を寄せ合うようにしてくっついて。
「またデートしようね……モードレッド……」
「……え、……で、でーと……? あ、ああっ……そ、そそそ、そうだな!?」
寝言のように呟いてから寝息を立てるマスターと、これデートだったんだ!? と今更のように気づくモードレッド。
慌てた顔には先程の精悍さはなくて、見開いた目は驚愕と恥ずかしさで宙を泳ぐ。
(つ、次はほどほどに遊ぼう……)
そんな風にと思いながらも、うとうとと睡魔は押し寄せてきて、微睡みは深くなっていくのだった。
友達というより長い付き合いの幼馴染以上恋人未満みたいなモーさんとの関係がよかったんですねー
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