喪黒福造「おやおや、あなた、24歳で学生なのですか?」(21)

私の名は喪黒福造……人呼んで笑ゥせぇるすまん

ただのセールスマンじゃございません

私の取り扱う品物は「心」……人間のココロでございます

この世は老いも若きも男も女も、心の寂しい人ばかり

そんな皆さんのココロのスキマをお埋めいたします

さて、今日のお客様は――


≪24歳学生≫

――大学――


大学職員「この単位の取得状況では、今年も卒業は厳しいですよ」

学生「……そうですか」

大学職員「学生さんは、将来の展望についてどうお考えですか?」

学生「どうと言われても……」

大学職員「目標もなく留年を重ねても、卒業後のことをきちんと考えていないと前には進めませんよ」

大学職員「一度、大学を休むという選択肢も考えてみてください」

大学職員「あなた自身の人生のために、どういう選択をするのがベストなのか。自分でしっかりと考えてくださいね」

学生「はい……」

――飲み屋――

学生「んっ……んっんっ」

学生「プハ――――ッ」

学生「大将! ビール! ビール!」

大将「おい、学生。ちと飲み過ぎだろう。今日はもうこの辺でやめときな」

学生「飲まなきゃやってられないんすよぉ……ああー」

大将「ホラ見ろ、もうフラフラじゃねぇか。今日は酒代はいいから、さっさと帰れ」

学生「頭に来ますよ!」

バァン!

――路上――


学生「はぁー」

学生(人に当たるなんて最低だな……。全部自分が悪いのに……)

ドンッ!

学生「あ、すみませ」

喪黒「いえいえ、こちらこそ」

学生「ッ!?」

学生(何だこいつ……全身黒ずくめ。不審者だってはっきりわかんだね)

学生(絡まれないようにさっさと行こう)

喪黒「おや、もう行ってしまわれるのですか。学生さん」

学生「えっ……どうして僕が学生だと分かるんです?」

喪黒「その精悍な顔つきを見れば十中八九、若い学生さんだろうと思いましてね」

喪黒「どうやらまだお酒を飲み足りないご様子。どうです? 袖振りあうも他生の縁。近くのバーで一杯やりませんか?」

学生「ウーン。でもなあ……お金がないし」

喪黒「ご心配なく、ワタシがおごりますよ」

学生「あ、いいすか?」

喪黒「もちろん」

学生「しょうがねえなあ……じゃあ、ちょっとだけ」

――BAR【魔の巣】――


マスター「……」キュッキュッ


喪黒「おやおや、あなた、24歳で学生なのですか?」

学生「そうですねぇ。ダブっちゃいまして……」

喪黒「それは大変ですなあ。大学に通うにはずいぶんお金がかかると聞きますし」

学生「お金がなくて困ってます。親の仕送りも、留年したと伝えたらプッツリ途絶えちゃいましたし」

喪黒「それは困りもので。何か、バイトでもなさっているのですか?」

学生「コンビニとかでバイトをしているのですが、もっと割のいいバイト、どこかにないかなぁっていつも思ってます」

喪黒「ほほう」

学生「はぁー、でも……もし卒業できても、その先のことなんて……全然考えられないですよ」

喪黒「何をおっしゃいます。まだまだお若いあなたなら、この先何だってやっていけますよ。何か、好きなモノは無いのですか?」

学生「好きなモノですか? やっぱり王道を行くソープ系ですかね」

喪黒「ほう、ソープですか。ですが、お高いのでは?」

学生「ピンキリですよね。僕、両刀なので、どっちでもイケるタイプなんですよ」

喪黒「それは頼もしい限りですねえ。見たところ、体もよく鍛えていらっしゃるようで」

学生「そうなんですよ。体はいつも鍛えてますね。僕、できたらですけど、将来は体を使って出来る仕事がいいと思ってるんです。頭はよくないので」

喪黒「体を使う仕事ですか。具体的には、どういう?」

学生「あ、あの……。恥ずかしい話ですけど……子どもの頃の夢は俳優になることでして」

学生「こう、かっこいいアクション系のドラマに出て……有名になって……みんなの人気者になりたいって……」

学生「そんな気持ちがあって、ずっと体は鍛えてるんですけど……。現実問題、俳優なんてなれるわけがないし……ただの夢で終わっちゃいそうですけど」

学生「~~~ッ」ゴクゴクゴク

学生「アッー……」

喪黒「なるほど。あなたのお気持ち、よく分かりました」

喪黒「こちら、ワタシの名刺です」

学生「えっと、……喪黒福造さん?」

学生(あなたのココロをお埋めします……?)

喪黒「明日、名刺の裏に載せている住所にぜひお立ち寄りください」

学生「はあ」

喪黒「俳優になりたいというあなたの望み、ワタシが力添えして差し上げましょう。当面必要となるお金も稼ぐことができて一石二鳥ですよ」

学生「本当ですか? えっでも……これって何かの詐欺なんじゃ。俳優にしてやるって言ってお金をだまし取るとか、そういう」

喪黒「いいえ、ワタシはお金をいっさい受け取りません。お客様に喜んでいただければ、それが何よりの報酬でございます……ホッホッホッホ」

――廃ビル――


学生「この建物みたいだな……」

学生「……古びたビルだけど、大丈夫なのか?」

学生「やっぱり騙されたんじゃ……」

喪黒「学生さん」

学生「うわっ! も、喪黒さん」

喪黒「そろそろ来られる頃合いと思いまして、見に来ました。さあさあ、中へ入ってください、どうぞ」

ざわ・・      ざわ・・

学生「あれ、さっきまで静かだったのに……中に人がたくさんいる」

学生「これ……撮影スタジオ?」

学生「喪黒さん、これはいったい?」

学生「あれ、喪黒さん?」

監督「君が学生くんだね?」

学生「え、誰ですか?」

監督「何だね。その口のきき方は。私が監督だ。君の出演作品の監修も務めさせてもらう」

学生「監督って……」

監督「君の演技には期待をしているよ。さっそく演技指導に入るから、準備するように」

学生「僕が……演技を?」

監督「そうさ。君の演技がこの作品の出来を決めるんだ。役者として誇りを持って演じてほしい」

学生(僕が……俳優に!)

学生「はい! 頑張ります!」

――――――――
――

――まず「家さあ」だ
『まずうちさぁ……』

『お前のことが好きだったんだよ!』

『イキすぎィ!』

『この辺にぃ、美味いラーメン屋の屋台、あるらしいですよ』

『菅野美穂』

――じゃあ、オナニーとか?
『やりますねえ!』

『出そうと思えば(王者の風格)』

『ブッチッパ!』

喪黒「学生さんの出演作品が店頭にも並ぶようになりましたねえ」

学生「お久しぶりです。喪黒さん」

喪黒「おや、学生さん」

学生「喪黒さんのおかげで、僕は俳優としてデビューできました。好きなことをやって、お金までもらえて、本当に幸せです。ありがとうございました」

喪黒「ホホホ……それはよかった。おっと、一つだけ言い忘れていたことがありました」

学生「はい? 何です?」

喪黒「いいですか学生さん。今後もこのお仕事を続けていくおつもりならば、もう二度と、ソープを利用してはいけませんよ」

喪黒「これは約束です。よろしいですね」

学生「おかのした」

――――――
――


「ホラホラホラホラホラホラホラホラホラホラ!」
「ひゃあっ・・あっあっあんっ・・・・・らめぇーっ」


学生「フゥー、気持ちいいー」

学生(喪黒さんはああ言ってたけど、やっぱり王道のソープ系はやめられねえな)

学生(約束破っちゃったけど)

学生「ま、多少はね」


喪黒「学生さん」


学生「ファッ!?」

喪黒「あれほど約束したのに……これはもう仕方がありませんなあ」

学生「わ、悪気はなかったんですよ! ヤバイと思ったけど性欲を抑えきれなくて……」

喪黒「言い訳は無用です」

学生「喪黒さん許して!」


喪黒「ドーーーーン!!!!」


学生「ぬああああああああああああああああああんッ」

――――――
――

カタカタカタカタ

野獣先輩『イキすぎィ!』

「くさい」
「キモい」
「汚物」
「うんこの擬人化」
「野獣死ね」
「ステハゲ」
「一生ネットの晒し者」
「元はホモビ」
……

カタカタ

元学生「死にてえなあ……」

カタカタ


『うぃいいいいいいいいいいい↑っす!どうも、シャムで~す!』


元学生「ぷっ」

元学生「……明日も頑張ろう」

喪黒「オーホッホッホ……、これで元学生さんも有名な人気俳優としてインターネット上でひっぱりだこ」

喪黒「とはいえ、常に世間の目に晒され、言いたい放題言われて飽きられたら見向きもされなくなる俳優業」

喪黒「何とも因果な商売でありますなあ……」

喪黒「ホッホッホ……オーーーホッホッホッホ……」


おわれ

このSSまとめへのコメント

このSSまとめにはまだコメントがありません

名前:
コメント:


未完結のSSにコメントをする時は、まだSSの更新がある可能性を考慮してコメントしてください

ScrollBottom