奏(なんでこんなものが…)ﾊｯ

奏(…もしかして)


仁奈『カニさんの気持ちになるでごぜーますよ!』


奏(ってとこかしら…)

奏(…)

奏(カニの気持ちになってどうするのかしら…?)

奏(カニって言ったら…)ｽｯ←ﾀﾞﾌﾞﾙﾋﾟｰｽ

奏(…)ｽｯｽｯ←横歩き

奏(横歩きしか出来なくない?)

奏(…それともカニはカニでも生きたカニの気持ちじゃなくて調理済みのカニという可能性もあるわね…)

奏(…なんか赤いし)

奏(…赤い?)


奏「…かに道楽?」

奏(…の看板って赤だっけ?)ｽﾏﾎﾀﾞｼｰ

奏(…やっぱり赤だったわ)

奏(つまり仁奈はカニはカニでも、かに道楽のカニの気持ちになりたかったのかもしれない…?)

奏(…でも言うほどあの看板のカニっぽくはないわね、あれ結構リアルな出来だし)

奏(…)

奏(…ん?)

奏(このカニの被り物すら被らない、カニの気持ちにすらなってない私が、あたかもカニの全てを知ってるかのごとく語ってしまった…)ﾊｧ

奏「…これはエゴね」

奏(そうエゴ…まるでカニの代弁者にでもなってたつもりだったけど…)

奏(カニの気持ちにすらなってない私が語る権利なんて最初からなかった…!)

奏(なんてことをしてしまったのかしらね…我ながら迂闊だったわ)ﾌﾌｯ

奏(…)ｽｯ


奏(…いや待て私!)

奏(私にも…一応体裁やキャラはあるわけで)

奏(もしこのカニの被り物を被っている所を誰かに見られたら…!?)

奏「」ｿﾞｫｫ…

奏(LiPPSのリーダーとしても示しがつかない…それどころかアイドル生命にもかかわる由々しき問題!)

奏(まさかこんな被り物ごときに…)

奏(いや、私をそこまで追い詰めた相手だし失礼すぎるわね…)

奏(カニさん…カニさ…カニ様?)

奏(そう!カニ様!カニ様よ!)

奏「…ああカニ様よ!憐れな人間を救いたまえ!」ﾊﾞｯ


奏(…窓から差し込んだ夕日にかざしてみたけれど、より神々しく見えるわね)

奏(そう…私は今から神に…カニになるのよ!)

奏(速水奏改め、速水カニデとして!)


奏(いざ…!!)ｽﾎﾟｯ

奏「…」


奏(思いの外、圧迫感はなくて…むしろ包み込んでくれるような、やさしさがあった)

奏「」ﾂﾂｰ…

奏(気づいたら私は目から涙を流していた)

奏(カニ様のぬくもり、愛情…)

奏(両頬に一杯の…カニ様を受けとめつつ、私は感謝するのだった)


奏「ありがとうございます…カニ様」ﾀﾞﾌﾞﾙﾋﾟｰｽ


<ｶｼｬｯ


奏(カシャッ…?)

奏(…)



きらり「<◯>ω<◯>」

杏「<◯>ω<◯>」


奏「あっ」

奏「いつ、から…?」

きらり「割と最初から…だにぃ☆」ｴﾍﾍ…

杏「ﾝﾌｯw」

奏「…ははは」

奏(スマホ片手に構えたまま、それでも罪悪感からかフォローしようとするきらりに対し、全力で笑うのを堪えている杏)

奏(二人のアンバランスさと、自分の滑稽さが相まって自然と私も笑っていた)

奏(あとから聞いた話だが、カニの被り物は仁奈のものではなく、美羽のものだったらしい)

奏(カニだけに一杯くわされたってコトね…)


奏(その後LiPPSのグループLINEで速水カニデで盛り上がったことは言うまでもない)


終

ヤクルト最下位記念に書きました。

巨人はその…がんばろうな?

>>10は神宮送りになりました